説明

エチレンの重合用の方法と装置

何れかの相互順序で、次の工程:a)エチレンを、任意に1以上の3〜12の炭素原子を有するα−オレフィン系コモノマー類と共に、気相反応器中水素の存在下で重合させ、 b)エチレンと1以上の3〜12炭素原子を有するα−オレフィンコモノマー類とを、他の気相反応器中、工程a)より少ない水素の量の存在下で共重合させ、そこで、前記気相反応器中の少なくとも1つで、成長するポリマー粒子が、急速な流動化または移送条件下で第1の重合ゾーンを通って上方に流動し、その上昇管を出て、ポリマー粒子が重力の作用下で下方に流動する第2の重合ゾーンに入る、ことからなるエチレンの重合触媒の存在下で重合させることによる広い分子量のポリエチレンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エチレンの気相重合法、特に広い分子量分布、ことに多峰(multimodal)分子量分布を有する高密度ポリエチレン(HDPE)を得る気相重合法に関する。得られたポリエチレンは、特に、耐応力亀裂性の賦与された物品、例えば、パイプ、吹込と射出成形物品を生産するのに適している。
【0002】
ポリオレフィン類と特にポリエチレンに対し、分子量(MW)と分子量分布(MWD)は、ポリマーの物理および特に機械特性そしてその応用に影響する基本的な特性である。分子量が高ければ高いほど機械特性が高いことが当該分野で一般的に認識されている。しかしながら、高分子量のポリオレフィン類は、その流動特性が貧弱なことから加工を困難にしている。
【0003】
このことは、高い剪断速度で例えば、吹込と押出技術で急速な転移(transformation)を必要とする全てのこれらの応用において重大な欠点となる。最終製品の優れた機械特性を維持しつつ、流動特性を改良するために、当該分野で、ポリエチレンの分子量分布を拡げることが知られている。すなわち、高分子量(HMW)画分が機械特性を増強するのに貢献し、低分子(LMW)画分がポリマーの加工性を助ける。
【0004】
分子量分布は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で得られる曲線によって完全に定義できる。一般にMWDは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散指数Dとして知られたパラメータで定義される。この分散指数は、MWDの巾の目安である。殆どの応用で、分散指数は10と30の間で変動する。
【0005】
分子量分布を規定するのに普通に使用される他のパラメータは異なる条件下で得られるメルトインデックスの比である。例えば、パイプまたはフィルム応用のHDPEに関して、22より高いメルトインデックスF (ASTM-D 1238、190℃/21.6 Kg)とメルトインデックスP (ASTM-D 1238、190℃/5 Kg)との比は、有意に広い分子量分布の指標である。
【0006】
高い靭性、強度と応力亀裂耐性が、多くの高密度ポリエチレン(HDPE)応用で必要とされる。これらの優れた機械特性に加えて、エネルギーの使用を制限し、加工収率を増大させて、生産コストをコントロール下に保つことが重量である。2峰または多峰MWDを有する高分子量HDPE、すなわちポリマーが2以上の明白な範囲の分子量を有すると、顧客の要求に対する最良の答となる。この種のポリマーは、パイプ、フィルム、吹込と射出成形品を生産するのに特に適している。
【0007】
2峰性が低分子量エチレンポリマーと高分子量エチレンポリマーを単に溶融ブレントで作られる場合、非均一性のさけられない問題が起こることが当該分野で周知である。そのため、他の方法、すなわち一連の2つの反応器中、結局各反応器で異なる触媒で、あるいは二重部位で触媒が供給される単一反応器が示唆されている。残念ながら、一連の2つの通常の反応器で使用される異なる触媒は、依然として均一性の欠けるポリマーになる。
【0008】
二重部位触媒での方法も同様の欠点を示す。すなわち、事実、比較的低分子量画分と比較的高分子量の画分との生産分流の制御が非常に困難である。その上、異なる触媒が、異なる製品を得るのに必要で、それ故操作上の柔軟性が非常に低いことが確かである。
【0009】
クロム触媒は、ポリオレフィン類のMWDを拡げる傾向があり、かつある場合に2峰分布を生産できるが、低分子量画分は少量のコモノマーを含有し、これが全体の機械特性、特に耐応力亀裂性を低下させる。
【0010】
チグラー・ナッタ触媒系で一連の2つの反応器を用い、かつ方法条件を調整して、高いMWD特に2峰MWDを有する広範囲の高密度ポリエチレンを生産することが可能である。事実、各反応器を、触媒、圧力、温度、モノマー(類)と分子量調整剤(類)の濃度に関して、異なる重合条件で操作できる。
【0011】
米国特許第6,221,982号は、連続で2つの液体完全ループ反応器中、チグラー・ナッタ触媒系の存在下でのHDPEの生産方法を開示している。第1の反応器中で、エチレンが単独重合されるか、3〜8の炭素原子を有するα−オレフィン性モノマーと共重合され、第1の反応器に一連に結合した第2の反応器で、第1の反応器の生成物が、エチレンおよびC3〜C8α−オレフィン性コモノマーと共重合される。この方法は、さらに第1の反応器の下流で脱水素工程を加える必要があり、従って脱水素触媒が第1の反応器の下流で反応剤に導入される。
【0012】
ヨーロッパ特許第0503791号は、2つの気相、一連の流動床反応器により、比較的高分子量ポリマーと比較的低分子量ポリマーの混合物とからなる2峰エチレンポリマー組成物の生産方法を記述している。満足すべき加工性を維持するために、第1反応においてポリマーの生産性を低下させ、第2反応で上げる。従って、各反応器においてエチレン分圧が設定される。
【0013】
しかしながら、米国特許第6,221,982号とヨーロッパ特許第503791の両方法は、均一性が乏しい最終ポリマーとなる。事実、そのカスケード方法の各反応器において、分子量、化学組成と結晶度に関して異なるポリマーが発生するので、最終ポリマーは、滞留時間分布に原因して、固有の不均一性を示す。連続の反応器中ポリマー粒子の滞留時間によって、ポリマー粒子は、比較的低分子量ポリエチレンで作られた大きいかまたは小さなコアと、比較的高分子量ポリエチレンで作られた大きいかまたは小さなコア(または逆もまた同様)を示す。吹込成形製品、特にフィルム用、およびパイプの押出用の材料の均質性が重要であり、少量でも非不均質の材料が存在すると未溶融粒子(フィシュアイ)の存在をもたらす。
【0014】
従来技術の改良が、気相重合法を記載する本出願人の先のEP-B-1012195にある。その方法は、2つの相互連結した重合ゾーンで行われ、生産するポリマー粒子が急速な流動化条件下で第1の重合ゾーン(上昇管)を流れ、この上昇管を出て、密度が高められた形態で、重力の作用で流動して通る第2の重合ゾーン(降下管)に入り、その降下管を出て上昇管に再導入され、かくして2つの重合ゾーン間でのポリマーの循環が確立される。上昇管に存在するものから異なる組成のガスが降下管に導入され、上昇管から入るガス混合物にバリヤーとして作用する。2つの重合ゾーンで重合条件を適当に調整することにより、低および高分子量ポリマーの画分の間で直接の関係を有する広範囲の2峰(bimodal)ポリマーを生産することが可能であるので、MWDを拡げ、同時に最終ポリマーの均質性のレベルを増大することが達成できる。
【0015】
しかしながら、EP-B-1012195では、高い耐応力亀裂性を有する物品を生産するのに適する高密度ポリエチレン(HDPE)をどのように得るのか教示していない。実施例によって、パイプを生産するのに適当なHDPEが広い分子量分布を賦与されており、そこでは低分子量画分が高い結晶度のエチレンホモポリマーで、高分子量画分がコモノマーで修飾されている。それ故、重合は、コモノマー(類)を高分子量ポリエチレン画分に導入するように行われるべきである。このような特徴を賦与されたポリマーはEP-B-1012195によれば得ることができない。それは、コモノマーが降下管に供給され、そこでは高分子量ポリマーが生産され、低分子量ポリマーが生産される上昇管に入ることが避けられないからである。結果として、上昇管で、高結晶度で、低分子量ホモポリマーを生産することができない。
【0016】
従って、EP-B-1012195の重合方法を、広い分子量分布のHDPEの製造に採用し、上で説明したように、従来技術で知られた気相方法で得られるエチレンポリマーの貧弱な均質性の欠点を克服する必要がある。
【0017】
今回、重合触媒の存在下でエチレンを重合させて、広い分子量のポリエチレンを製造する方法が見出され、この方法は、何れかの相互順序で、次の工程:
a)エチレンを、任意に1以上の3〜12炭素原子を有するα−オレフィンコモノマー類と共に、気相反応器中、水素の存在下で重合させ、
b)エチレンと1以上の3〜12炭素原子を有するα−オレフィンコモノマー類とを、他の気相反応器中、工程a)より少ない水素の量の存在下で共重合させ、
そこで、前記気相反応器中の少なくとも1つで、成長するポリマー粒子が、急速な流動化または移送条件下で第1の重合ゾーン(上昇管)を通って上方に流動し、その上昇管を出て、ポリマー粒子が重力の作用下で下方に流動する第2の重合ゾーン(降下管)に入り、その降下管を出て、上昇管に再導入されて、前記2つの重合ゾーン間でポリマーの循環を確立する、
ことからなる。
【0018】
この発明による方法は、工程b)から得られるエチレンコポリマーより低い分子量を有するエチレンポリマーが工程a)から得られることを可能にする。特に、最終ポリマーは工程a)で形成される高い結晶度で比較的低分子量エチレンポリマーを含み、それは、工程b)で生産される高い分子量のエチレンコポリマーと密に混合されている。この発明の重合方法は、コモノマーの増加した量を比較的高分子量ポリマー分にのみ結合させ、したがって特に、機械特性が増強され耐応力亀裂性が改良されたエチレンポリマーを得ることができる。この発明の方法で示されるさらなる利点は、分子量分布のより効果的制御が達成できることである。
【0019】
この発明の方法で得られるエチレンポリマーの耐応力亀裂性は、フルノッチクリープテスト(FNCT)を用いて評価できる。このフルノッチクリープテスト(FNCT)は、主にヨーロッパで、開発目的で樹脂生産者が使用している。選択したテスト条件により破断時間が、他のテスト方法より顕著に減少でき、そのため情報が、高耐性材料に関して短い時間で得ることができる。テスト装置はシンプルで、引張クリープテストの通常の構成である。ポリマーのサンプルを、80℃または95℃で水または特定の界面活性剤溶液に浸漬する。このサンプルを応力方向に垂直に4つのサイドにノッチし、サンプルに定荷重を付加する。破断の時間は付加応力の関数として記録する。この発明の方法で得られるエチレンポリマーは高い破断時間値を示し、これは比較的高い量のコモノマーが低分子量ポリエチレン画分に結合しているからである。
【0020】
この発明によれば、上記の物理的−機械特性はエチレンの重合を、2つの連続的に相互連結した気相反応器で行うことにより得ることができる。これらの反応器はEP-B-1012195に記載されており、2つの相互連結した重合ゾーンで、ポリマー粒子が異なる流動化条件と反応材組成で流動することで特徴付けられる。
【0021】
第1の反応ゾーン(上昇管)で、急速な流動化条件が、ポリマー粒子の移送速度より高い速度で、1以上のα−オレフィン類からなるガス混合物を供給することにより確立される。このガス混合物の速度は、好ましくは0.5〜15 m/秒の間、より好ましくは0.8〜5 m/秒の間である。用語“移送速度(transport velocity)”と“急速な流動化条件(fast fluidization conditions)”は当該分野でよく知られている。その定義は、例えば“D. Geldart, Gas Fluidisation Technology, 155頁以降参照、J. Wiley & Sons Ltd., 1986”を参照。
【0022】
第2の重合ゾーン(降下管)では、ポリマー粒子は、密度が高められた形態で、重力の作用で流動し、そのため固体の密度の高い値に達し(反応器の容量当りのポリマーの塊)、ポリマーの嵩密度に近づく。換言すれば、ポリマーはプラグ流れ(パック流れモードpacked flow mode)で降下管を垂直に下に流れ、それ故少量のガスのみポリマー粒子間に同行される。
【0023】
この発明の第1の具体例によれば、上記の配置を備えた連続の2つの気相反応器が使用される。このことは、前記気相反応器の両方で、成長するポリマー粒子が、急速な流動化または移送条件下、上昇管を通って上方に流れ、その上昇管を出て、重力の作用で下方に流れる降下管に入り、その降下管を出て、上昇管に再導入されることを意味する。
【0024】
この発明の第2の具体例によれば、重合工程a)は気相流動床反応器で行われる。
【0025】
比較的低分子量エチレンポリマーを生産するためのエチレンの重合(工程a)は、比較的高分子量エチレンコポリマーを生産するためのエチレンとα−オレフィン系コモノマーの共重合(工程b)の上流で行われるのが好ましい。この目的に工程a)では、エチレン、水素と不活性ガスを含むガス混合物が第1の気相反応器に供給される。重合は、チグラー・ナッタまたはメタロセンタイプの高活性触媒の存在下で行われる。コモノマーが第1の気相反応器に供給されず、高結晶性エチレンホモポリマーが工程a)で得られるのが好ましい。しかし、最少量のコモノマーが供給できるが、但し、工程a)の共重合の度合が、工程a)で得られるエチレンポリマーの濃度が0.955 kg/dm3以上、好ましくは0.960 kg/dm3以上である様に制限され、さもないと工程a)で生産される比較的低分子量ポリマーと工程b)で生産される比較的高分子量ポリマーの区別ができない。
【0026】
水素は、触媒系に従属し、かつ何れの場合にも工程a)で、平均分子量が20,000〜60,000 g/molと溶融流量(ASTM D1238、条件190℃/2.16 Kg)が10〜400 g/10分の範囲を有するエチレンポリマーを得るのに適する量で供給される。溶融流量は通常メルトインデックスMIとして言及され、ポリマーの分子量を逆比例して示す。換言すれば低いメルトインデックスは、ポリエチレンの高い分子量を示し、および逆もまた同じである。上記のMIE範囲を得るため、工程a)で水素/エチレンモル比は、0.5〜5、好ましくは1.0〜3.0の間であり、エチレンモノマーは第1の重合反応器中に存在するガスの全容量に対し5〜50容量%、好ましくは5〜30容量%含まれる。
【0027】
供給混合物の残部は、不活性ガスと、もしあれば1以上のC3〜C12α−オレフィンコモノマー類である。重合反応で発生した熱を放熱させるのに必要である不活性ガスは、通常、窒素または飽和炭化水素、最も好ましくはプロパンから選択される。
【0028】
工程a)の反応器での操作温度は50〜120℃、好ましくは80〜100℃の間から選択され、一方操作圧は0.5〜10 MPa、好ましくは2.0〜3.5 MPaの間である。
【0029】
工程a)で得られるエチレンポリマーは、全工程、すなわち、第1と第2の一連の連結した反応器中で生産される全エチレンポリマーに対し、40〜65重量%、好ましくは45〜55重量%である。
【0030】
次に、工程a)からのエチレンポリマーと同行ガスは、第1の重合反応器からのガス混合物が工程b)(第2の気相反応器)に入るのを避けるため固体/気体分離工程を通過させられる。そのガス混合物は第1の重合反応器に帰してリサイクルでき、一方分離したエチレンポリマーは、工程b)の反応器に供給される。ポリマーの第2反応器へ供給する適当な点は、降下管と上昇管の結合部位であり、そこでの固体濃度は、特に低く、それ故流動条件がマイナスに影響されない。
【0031】
工程b)の操作温度は、65〜95℃の範囲で、圧は1.5〜4.0 MPaの範囲である。第2の気相反応器は、エチレンと3〜12炭素原子のα−オレフィン系コモノマーとの共重合により比較的高分子量のエチレンコポリマーを生産することを目的とする。その上、最終エチレンポリマーの分子量分布を拡げるため、工程b)の反応器は、上昇管と降下管内でのモノマー類と水素濃度の異なる条件を確立することにより簡便に操作できる。
【0032】
この目的に、工程b)において、ポリマー粒子を同行し上昇管から来るガス混合物は、部分的または全体的に降下管に入るのを防止でき、そのため2つの異なるガス組成ゾーンが得られる。これは、ガスおよびまたは液体混合物を降下管に、降下管の適当な点好ましくは降下管の上部に設置された管路を通して供給することにより達成できる。そのガスおよび/または液体混合物は、上昇管に存在するガス混合物とは異なる適当な組成を持つべきである。そのガスおよび/または液体混合物の流れは、ポリマー粒子の流れに対するガス対流の上方流れが、特にその先端で発生し、上昇管から来るポリマー粒子に同行されたガス混合物のバリヤーとして作用するように制御できる。特に、低含量の水素を有する混合物を、降下管での高分子量ポリマー画分を生産するために供給するのが有利である。1以上のコモノマー類が、工程b)の降下管に、任意にエチレン、プロパンまたは他の不活性ガスとともに供給できる。コモノマーは、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテンおよび1-オクテンから選択できる。コモノマーは、1-ブテン、1-ヘキセンと1-オクテンが好ましく、より好ましくはコモノマーは1-ヘキセンである。
【0033】
工程b)の降下管での水素/エチレンモル比は0.005〜0.2の間で、エチレン濃度は、降下管中の存在するガスの全容量に関して1〜20容量%、好ましくは3〜10容量%で、コモノマーの濃度は、同じく、0.3〜5容量%である。残りは、プロパンまたは類似の不活性ガスである。水素のごく低いモル濃度が降下管に存在することから、この発明の方法を行うことにより、比較的高い量のコモノマーを高分子量ポリエチレン画分に結合させることができる。
【0034】
降下管からのポリマー粒子は、工程b)の上昇管に再導入される。ポリマー粒子は反応性を保持し、かつコモノマーが上昇管にそれ以上供給されないことから、そのコモノマーの濃度は、上昇管中に存在するガスの全容量に関して0.1〜3容量%の範囲に低下する。実際に、コモノマー含量は、最終ポリエチレンの所望密度を得るため調節できる。工程b)の上昇管において、水素/エチレンモル比は、0.05〜0.3の範囲で、エチレン濃度はその上昇管に存在するガスの全容量に対し、5〜15容量%の間で含まれる。残りは、プロパンあるいは他の不活性ガスである。
【0035】
工程b)の反応器において、比較的高分子量ポリマーの画分が生産される。すなわち、平均分子量は、10,000〜1,000,000 g/mol、好ましくは300,000〜600,000 g/molの間に含まれる。
【0036】
上記のように、2つの異なる組成が、工程b)の反応器に存在し、そのため、比較的高いおよび非常に高い分子量ポリマーの画分を得ることができる。
【0037】
第2の反応器の降下管の底部に設けられた管路を介して排出される最終ポリマーは、工程a)と工程b)の反応器での重合の結果である。従って、この発明の重合方法は、比較的低い、高いとごく高い分子量を、工程a)の反応器で、工程b)の上昇管と工程b)の降下管でそれぞれ得られる少なくとも3峰分子量分布を賦与されたエチレンポリマーを得ることを可能にする。
【0038】
この発明のさらなる具体例によれば、工程a)の反応器もまたコモノマー類と水素濃度の異なる条件を確立して操作されるように重合方法を行うことが可能である。そのため、工程a)の降下管に、上昇管に存在のガス混合物と異なる組成のガスおよびまたは液体を供給することが可能である。上昇管で生産されるより高い平均分子量のエチレンポリマーを生産するため、降下管の上部に、比較的低い水素含量を有する混合物を供給するのが有利である。この場合に、工程a)は、最終ポリマーが、少なくとも4峰(quadrimodal) MWDを賦与されるよう2峰ポリエチレンを生産する。
【0039】
この発明の方法で得られるポリエチレンは、メルトインデックスMIF (ASTM D 1238、条件190/21.6)が5〜40 g/10分、好ましくは10〜15 g/10分の範囲で、メルトインデックスMIP (ASTM D 1238、190/5)が0.1〜1 g/10分、好ましくは0.15〜0.6 g/10分の範囲で特徴付けられ、そのためMIF/MIP比は20〜50、好ましくは25〜40の範囲である。MIF/MIP比の類似の範囲は、広い分子量分布を有するポリマーを示すことが知られている。最終ポリエチレンは、0.935〜0.955 kg/dm3、好ましくは0.945〜0.952 kg/dm3の間に含まれる高い密度を有するのが代表的である。
【0040】
この発明の方法が、ここに同封の図面を参照して詳細に記述されるが、クレームした方法の範囲を例証するものであり、限定されるものではない。
【0041】
図1は、工程a)とb)の気相反応器が重合ゾーンを相互に連結しているこの発明の第1の具体例を示す。その上で定義した工程a)は、工程b)の前に行われる。
【0042】
第1の反応器(工程a)は、上昇管1と降下管2からなり、ポリマー粒子は、それぞれ、矢印14の方向に沿って急速流動化条件下に上方に流れ、かつ矢印15の方向に沿って重力の作用で下方に流れる。上昇管1と降下管2は連結部位3と5で適切に相互に連結されている。第1反応器で、エチレンは、水素の存在下で重合され、比較的低分子量のエチレンホモポリマーを作る。この目的に、エチレン、水素とプロパンを含有するガス混合物が、当業者の知識に従いリサイクル系の何れかの点に適切に設けられる1以上の管13を経て第1の反応器に供給される。エチレン、プロパン(または他の不活性)と水素の適当な組成の混合物は、1以上の管18を経て降下管2に供給もされ、そのためこのゾーンでの反応材組成の良好なコントロールが達成される。重合は、チグラー・ナッタまたはメタロセンタイプの高度活性触媒系の存在下で行われる。各種の触媒成分が、管路12を経て上昇管1の下部に供給される。ポリマー粒子とガス混合物は上昇管1を通過した後で、上昇管1を出て、固体/気体分離ゾーン4に運ばれる。固体/気体分離は、例えば、軸方向、スパイラル、螺旋、または接線タイプの遠心分離機(サイクロン)のような通常の分離手段を使用して行うことができる。
【0043】
分離ゾーン4から、ポリマーは降下管2に入る。分離ゾーン4を出るガス混合物は、圧縮7と冷却8の手段を備えたリサイクル管6によって、上昇管1にリサイクルされる。分離ゾーン4を出るガス混合物の一部は、圧縮され冷却された後に、管路9を介して連結部分5に移送され、上昇管1の急速流動化条件を確立するためポリマーを降下管2から上昇管1と管路10を経て上昇管1の底部への移送され得る。
【0044】
工程a)で得られるポリマーは、降下管2の底部から排出され、管路11を経て固体/気体分離器19に供給され、第1の重合反応器からのガス混合物が工程b)の反応器に入るのを避ける。そのガス混合物は管路20を経てリサイクル管路6に戻される。一方分離したエチレンポリマーは第2反応器に供給される。
【0045】
第2反応器は、上昇管1'と降下管2'とからなり、そこでポリマー粒子は、それぞれ、矢印14'の方向に沿って急速流動化条件下に上方に流れ、かつ矢印15'の方向に沿って重力の作用下に下方に流れる。2つの重合ゾーン1'と2'は連結部分3'と5'によって適宜相互に結合される。
【0046】
気体/固体分離器19を出るポリエチレンポリマーは、管路21を経て第2の気相反応器の結合部分5'に供給される。
【0047】
前記第2の気相反応器において、エチレンが、プロパンと水素の存在下でコモノマーと共重合され、比較的高分子量エチレンコポリマーを作る。エチレン、水素とポリマーからなるガス混合物は、当業者の知識に従ってリサイクル管路6'の何れかの点に適当に設けられた1以上の管路13'を通って第2の気相反応器に供給される。その上、エチレンとコポリマーからなる適当な組成のガス混合物が、1以上の管路29を経て降下管2'に供給され、そのためそのゾーンでの反応材組成の良好なコントロールが達成できる。
【0048】
第1の反応器と同様に、成長するポリマー粒子とガス混合物は、上昇管1'を出て、固体/気体分離ゾーン4'に運ばれる。
分離ゾーン4'から、ポリマーは降下管2'に入り、一方ガス混合物は、圧縮手段7'により圧縮され、2つに分けられ、管路6'を通して集められる。その混合物の第1の部分は、管路28を通って濃縮器22に送られ、そこでモノマーと任意の不活性ガスが部分的に濃縮される温度に冷却される。その混合物の第2の部分は、冷却手段8'により冷却され、ついで管路9'を通って連結ゾーン5'と管路10'を通って上昇管1'の底部に供給される。分離容器24が濃縮器22の下流に設けられる。水素が多い分離されたガス混合物は、管路26を通ってリサイクル管路6'に循環される。一方、分離した液体は管路27を通って降下管2'に供給される。その液体は、容器24を便宜な高さに設け重力によるかまたはポンプ25のような何れかの適する手段により降下管2'に供給される。
【0049】
降下管2'に存在すべきであり上記した量での仕上げ成分は、液体の状態で直接管路23を介して容器24に供給できる。液体を供給する管路27は降下管2'の上部に設けられ、2つの異なるガス組成ゾーンが得られるように、上昇管1'から来るガス混合物が降下管2'に入るのを部分的にあるいは全体的に防止させる。工程a)とb)の重合で得られる最終エチレンポリマーは、管路11'を介して排出される。
【0050】
図2は、重合工程a)を流動床反応器に行うこの発明の第2の具体例である。
【0051】
図2の流動床反応器30は、生成するポリマー粒子の流動床31、流動化プレート32と減速ゾーン33からなる。この減速ゾーン33は、一般に、反応器の流動床部分の直径に比較して直径が増大している。減速ゾーン33の頂部を出るガス流は、リサイクル管路35を介して圧縮器37に、次いで熱交換器38に移送される。
【0052】
リサイクル管路35は、エチレン、水素、不活性ガスおよび任意にコポリマーを供給する管路36を備える。ガス流は、熱交換器38を通過して、冷却され次いで流動床反応器30の底部に供給される。このように、上方に流れるガスが、流動化条件下でポリマー粒子31の床を連続的に維持する。
【0053】
一般に、各種触媒成分は、流動床31の低部に設けられるのが好ましい管路34を通して反応器に供給される。
【0054】
工程a)で得られるポリマーは、流動床31の下部から排出され、第1の重合反応器から来るガス混合物が、工程b)の反応器に入るのを避けるため、固体/ガス分離器19に管路39を介して供給される。そのガス混合物は、管路20を通ってリサイクル管路35に戻され、一方分離したエチレンポリマーは、管路21を介して工程b)の反応器に供給されるが、これは図1ですでに記載したのと同じ配置を有する。
【0055】
この発明の重合方法は、チグラー・ナッタまたはメタロセンタイプの高活性触媒系の存在下で行うことができる。
【0056】
チグラー・ナッタ触媒系は、元素周期律表(新版)の4〜10属の遷移金属化合物と、元素周期律表の1、2または13属の有機金属化合物との反応で得られた触媒からなる。
【0057】
特に、遷移金属化合物は、Ti、V、Zr、CrおよびHfの化合物群から選択される。好ましい化合物は、式Ti (OR)nXy-n(式中nは0とyとの間からなり、yはチタンの原子価であり、Xはハロゲンであり、Rは炭素原子1〜10を有する炭化水素基またはCOR基である)の化合物である。その中で、チタンのテトラハライドまたはハロゲンアルコレート(halogenalcoholate)のような少なくとも1つのTi-ハロゲン結合を有するチタン化合物が特に好ましい。
【0058】
好ましい有機金属化合物は、有機Al化合物特にAl-アルキル化合物である。アルキル-Al化合物は、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウムのようなトリアルキルアルミニウム化合物から選択するのが好ましい。また、AlEt2ClとAl2Et3Cl3のようなアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムヒドリドまたはアルキルアルミニウムセスキクロリドを、任意に前記トリアルキルアルミニウム化合物との混合で使用することも可能である。
【0059】
特に適する高収率Zn触媒は、チタン化合物が、活性型のマグネシウムハライド、好ましくは活性型のMgCl2に支持されているものである。内部電子供与化合物として、エステル類、エーテル類、アミン類とケトン類から選択される。特に、1,3-ジエーテル類、フタレート類、ベンゾエート類とサクシネート類に属する化合物の使用が好ましい。
【0060】
固形成分に存在する電子供与体に加えて、アルミニウムアルキル助触媒にまたは重合反応器に加えられる外部電子供与体(ED)を使用してさらなる改良を得ることができる。外部電子供与体は、アルコール類、グリコール類、エステル類、ケトン類、アミン類、アミド類、ニトリル類、アルコキシシラン類とエーテル類から選択できる。電子供与化合物(ED)は、単独または相互の混合物で使用できる。ED化合物は、脂肪族のエーテル類、エステル類とアルコキシシラン類から選択するのが好ましい。好ましいエーテル類は、C2〜C20の脂肪族エーテル類で、特にテトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンのような、好ましくは3〜5の炭素原子を有する環状エーテル類である。
好ましいエステル類は、C1〜C20の脂肪族カルボン酸のアルキルエステル類、特に酢酸エチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチルのような脂肪族モノカルボン酸のC1〜C8アルキルエステル類である。
【0061】
好ましいアルコキシシラン類は、式Ra1Rb2Si(OR3)c(式中、aとbは0〜2の整数であり、Cは1〜3の整数でであり、(a+b+c)の和は4であり;R1、R2とR3は炭素原子1〜18を有するアルキル、シクロアルキルまたはアリール基である)。特に、aが1であり、bが1であり、cが2であり、R1とR2の少なくとも1つが炭素原子3〜10を有する分枝アルキル、シクロアルキルまたはアリール基から選択され、R3がC1〜C10のアルキル基、特にメチルである)シリコン化合物が好ましい。このような好ましいシリコン化合物の例は、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチル-t-ブチルジメトキシシランとジシクロペンチルジメトキシシランである。
その上、aが0であり、cが3であり、R2が分枝アルキルまたはシクロアルキル基であり、R3がメチルであるシリコン化合物も好ましい。このような好ましいシリコン化合物の例は、シクロヘキシルトリメトキシシラン、t-ブチルトリメトキシシランとテキシルトリメトキシシランである。
【0062】
上記ED化合物が新鮮な反応材として直接共重合工程b)に添加されると、この発明の方法で得られるエチレンポリマーの機械特性に関して、最良の結果が達成されることが認められた。特に、ED化合物の直接工程b)に供給される量は、工程a)に使用される量より多くあるべきである。工程b)に使用されるEDの量と、工程a)に使用される量の重量比は、2またはそれ以上であることが好ましい。好ましいED化合物はTHFである。
【0063】
上記触媒は、高重合活性に加えて、この発明の気相重合方法での使用に適するものにする良好な形態学特性も示す。
【0064】
また、メタロセンベースの触媒系がこの発明の方法に使用でき、その触媒系は、次を含む。
【0065】
a)少なくとも1つのπ結合を含有する少なくとも1つの遷移金属化合物、
b)少なくともアルモキサン又はアルキルメタロセンカチオンを形成し得る化合物、
c)および任意に有機アルミニウム化合物。
【0066】
少なくとも1つのπ結合を含有する金属化合物の好ましい群は、次式(I)に属するメタロセン化合物である。
【0067】
Cp(L)qAMXp (I)
[式中、Mは元素周期律表の4、5属またはランタノイドあるいはアクチノイド属に属する遷移金属であり:好ましくはMはジルコニウム、チタニウムまたはハフニウムであり;
【0068】
置換基Xは、互いに同一または異なり、水素、ハロゲン、R6、OR6、OCOR6、SR6、NR62とPR62(ここで、R6は1〜40の炭素原子を含有する炭化水素基である)からなる群より選択されるモノアニオン性シグマリガンドである;好ましくは置換基Xは-Cl、-Br、-Me、-Et、-n-Bu、-sec-Bu、-Ph、-Bz、-CH2SiMe3、-OEt、-OPr、-OBu、-OBzと-NMe2からなる群より選択され;
pは金属Mの酸化状態マイナス2に等しい整数であり;
nは0または1であり;nが0のときには、ブリッジLは存在せず;
Lは1〜40の炭素原子を含有し、任意に5つまでの珪素原子を含有し、CpとAを橋かけする2価の炭化水素分子であり;
【0069】
好ましくはLは2価の基(ZR72)n(ZはC、またはSiであり、R7基は互いに等しいか異なって水素または1〜40の炭素原子を含有する炭化水素基である);
より好ましくはLはSi(CH3)2、SiPh2、SiPhMe、SiMe(SiMe3)、CH2、(CH2)2、(CH2)3またはC(CH3)2から選択され;
Cpは任意に、1以上の置換あるいは非置換、飽和、不飽和または芳香族環と結合した、置換または非置換シクロペンタジエニル基であり;
AはCpと同一意味であるか、またはNR7 (ここで、R7は1〜40の炭素原子含有の炭化水素基である)、-O、S分子である]。
【0070】
成分b)として使用されるアルモキサン類は、タイプ:
【化1】

[式中、置換基Uは同一または異なって、上記で定義したとおりである]
の少なくとも1つのグループを含有する線状、分枝状または環状化合物であることが考えられる。
【0071】
特に式:
【化2】

[式中、n1は0または1〜40の整数であり、置換基Uは同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20-アルキル、C3〜C20-シクロアルキル、C6〜C20-アリール、C7〜C20-アルキルアリールまたはC7〜C20アリールアルキル基でであり、これらは任意にケイ素またはゲルマニウム原子を含有し、但しUの少なくとも1つはハロゲンとは異なり、jは0〜1の範囲で非整数でもある]
のアルモキサン類が線状化合物の場合に使用でき、また、式:
【0072】
【化3】

[式中、n2は2〜40の整数であり、置換基Uは上記で定義したとおりである]
のアルモキサン類が、環状化合物の場合に使用できる。
【0073】
この発明の方法で得られるエチレンポリマーは、機械特性と加工特性の優れたバランスを達成するので広い範囲の製品を作るのに適している。特に優れたレベルの均質性が、耐応力亀裂性の高い値と組合されており、その上、分子量分布の拡大が良好な加工性を改良された流動性と剪断応答を達成するのを助けている。これらの特性の観点で、この発明の方法で得られるエチレンポリマーは、物品への射出または吹込み成形、フィルムへの押出または吹込み、またはパイプへの押出ができる。
【0074】
特に好ましい応用は、高圧に耐えうるパイプの製造である。ポリエチレン(または他の熱可塑性樹脂)で作られたパイプが、テスト環境として水を使用して20℃の周囲温度で50年耐えることが期待される(ISO/TR 9080:1992)フープ応力によってポリエチレン(または他の熱可塑性樹脂)について応力下の性能を表すことが通常である。
【0075】
この前に記載した方法により、PE80とPE100パイプ、すなわち、20℃の周囲温度で8 MPaと10 MPaの圧のそれぞれで50年耐えうるポリエチレンパイプを得ることが可能である。
【0076】
この発明の方法を次の実施例を参照してより詳細に記述するが、発明の目的を限定するものではない。
【実施例】
【0077】
特徴付け
記述された性質は、次の方法に従って測定された。
【0078】
メルトインデックスE(MIE):ASTM-D 1238、条件190/2,16
メルトインデックスF(MIF):ASTM-D 1238、条件190/2,16
メルトインデックスP(MIP):ASTM-D 1238、条件190/2,15
度合の比(F/P):メルトインデックスFとメルトインデックスPとの比
密度:ASTM-D 792
曲げ弾性率(MEF):テストはASTM-D 790に従って行われた。
【0079】
極限粘度数(I.V.):135℃でテトラヒドロナフタレン中。
フルノッチクレープテスト(FNCT)による耐応力亀裂性:応力方向に垂直に4つの側面(side)にノッチしたポリマーサンプル(小さな棒10×10×100mm)を95℃でARCOPALの水溶液(2モル%)に浸した。4.5 MPaの一定負荷をサンプルに長手方向に付加し、破断時間を測定する。
【0080】
実施例1〜3
固体触媒成分の製造
重合は、EP541760の7頁、1〜16行に記載の手法で作られた固形触媒成分を含むチグラー・ナッタ触媒の存在下で行われる。
【0081】
助触媒としてトリエチルアルミニウムと電子供与体としてメチルシクロヘキシルジメトキシシランを、上記の固体触媒成分に、EP541760の実施例1、25〜29行での教示に従って接触させた。TEAL/Tiモル比は100であった。
【0082】
方法構成
実施例1〜3で、この発明の方法は、図1に示した2つの一連に結合した気相反応器からなるプラント中で連続条件下で行った。
【0083】
実施例1
プロピレンと予備重合した触媒を、図1の第1の気相重合反応器に管路12を介して供給した。エチレンは、第1反応器中で、分子量調整剤としてH2を使用し、不活性希釈材としてプロパンの存在下で重合させた。エチレン、水素とプロパンの量は、表1に特定される。第1反応器にコモノマーは供給されない。仕上げプロパン、エチレンと分子量調整剤としての水素が管路13を介して供給された。エチレンと水素も管路18を介して降下管2に直接供給された。第1反応器で作られたポリエチレン樹脂の性質を分析した。ポリエチレン樹脂は、約120 g/10分のメルトインデックスMIEを有しており、これはポリマーの比較的低分子量と0.968 kg/dm3の比較的高い密度を表している。第1反応器は、第1と第2反応器の両方で作られた最終ポリエチレン樹脂の全量に対し、約45重量%(スプリットwt%)を生産した。
【0084】
重合は、約90℃の温度で、約3.0 MPaの圧で行われた。
【0085】
第1反応器で得られたポリマーは、連続的に管路11を介して排出され、気体/固体分離器19で気体から分離され、管路21を介して第2の気相反応器の連結部分5'に再導入される。第2の反応器は、第1の反応器で使用されたものより約75℃の低い温度と約2.1 MPaの低い圧の重合条件下で操作された。
【0086】
コモノマーとして、1-ヘキセンが表2に特定した量で第2の反応器に導入される。仕上げプロパン、エチレンと水素が管路13'を通してリサイクル系に供給され、一方1-ヘキセンとエチレンは、管路29を通って降下管2'に直接供給された。
【0087】
最終エチレンポリマーの分子量分布を拡げるため、第2の反応量は、上昇管と降下管内のモノマー類と水素の濃度を異の条件に確立して操作された。これは、管路27を介して、液体流(液体バイヤー)を降下管2'の上部に供給して達成される。この液体流は、上昇管に存在するガス混合物の組成と異なる組成を有する。第2の反応器の上昇管と降下管内のモノマー類と水素の異なる濃度は、表2に示し、液体バリヤーの組成は、表3に示す。
【0088】
管路27の液体流は、50℃で2.1 MPaの操作条件で、リサイクル流の一部が冷却されかつ部分的に濃縮される濃縮器22での濃縮工程から来る。液体流27は1-ヘキセンを、管路23を通して供給して豊富化できる。
【0089】
最終ポリマーは、管路11'を介して連続的に排出された。
【0090】
第2の反応器での重合方法は、比較的高分子量のポリエチレン画分を生産した。表5に最終製品の性質が特定化される。最終製品のメルトインデックスは、第1の反応器で生産されたエチレン樹脂に比較して減少し、第2の反応器での高分子量画分の形成を示していることを見ることができる。同時に、得られたポリマーは、25.7に等しいMIF/MIP比で証明されるように広い分子量分布を賦与されている。次いで最終製品は、小さな棒(10×10×100mm)にされ、4.5 MPaの負荷と95℃の温度でフルノッチクリープテスト(FNCT)に付した。サンプルは約130時間後にテストに落ち、かくして高い耐応力亀裂性を示す。
【0091】
実施例2〜3
この発明の方法を実施例と同じ構成と同じ重合触媒で行った。
【0092】
第1の反応器中、エチレンとプロパンの量を実施例1に対し変化させ、高い量のポリエチレン樹脂を生産した(スプリット%)。第1の反応器中の操作条件は表1に示される。
【0093】
第2の反応器の降下管への1-ヘキセンコモノマーの量を実施例1に対し僅かに増加させる。第2の反応器での操作条件は表2に示し、バリヤー流の組成は表3に示される。最終ポリマーの性質は表5に示される。得られたポリエチレン樹脂を小さな棒(10×10×100mm)にし、次いで、実施例1のようにフルノッチクリープテスト(FNCT)に付した。サンプルは約207時間後(実施例2)と約140時間後(実施例3)にテストに落ち、かくして高い耐応力亀裂性を示す。
【0094】
実施例4(比較)
相互連結した重合ゾーンを有する正に1つの気相重合反応器からなる装置を利用した。その反応器は、図1に示した題2の気相反応器と同じ構成を有する。
【0095】
実施例1に使用した同じ触媒を上記反応器の上昇管に供給した。反応器を通しての温度は約90℃に、圧は約3.0 MPaに保った。最終エチレンポリマーの分子量分布を拡げるため、その気相反応器は、上昇管と降下管内にモノマー類と水素の濃度について異なる条件を確立して操作する。これは、降下管の上部中に液体流(液体バリヤー)を供給して達せられる。上昇管と降下管内の異なる操作条件と液体バリヤーの組成は表4に示される。最終ポリマーの性質は表5に示される。得られたポリエチレン樹脂は小さい棒(10×10×100mm)にし、次いで実施例1のようにフルハッチクリープテスト(FNCT)に付した。サンプルはわずか6.1時間後にテストに落ち、かくして貧弱な耐応力亀裂性を示す。
【0096】
実施例5〜7
固形触媒成分の製造
約3モルのアルコールを含有するマグネシウムクロリドとアルコールとの付加物を、米国特許第4,399,054号の実施例2に記載の方法に従い、しかし1000RPMの代わりに2000RPMで操作し作った。付加物は、アルコールの重量含量が25%に達するまで、窒素気流中、50〜150℃の温度範囲での熱処理に付した。
【0097】
窒素で排気した500mlの四頸丸底フラスコに、TiCl4 250mlを0℃で入れた。次いで同温度で、上記のごとくして作った25重量%のアルコール含有の球状MgCl2/EtOH付加物17.5 gを撹拌下に添加した。1時間で130℃に温度を上げ、60分間維持した。次に、撹拌を止め、固形生成物を沈殿させ、上澄み液体をサイホンで除いた。60℃で固体を無水ヘキサンで6回(5×100ml)、と25℃で一回洗浄した。最後に、固体を真空乾燥し分析した(Ti=4.9重量;Mg=19.4重量%)。得られた固体を加圧釜に注入し、窒素気流下無水ヘキサン中(固形物濃度は40 g/l)撹拌下に30℃に保った。懸濁液をヘキサン中トリエチルアルミニウム(TEA)の10重量%溶液と、TEA/固形物比=0.5重量/重量に達する量で処理した。次に当初の固形物量に等しいプロピレン量を30℃の一定の温度に保つに適当な速度でゆっくり供給した。30分後に、重合を停止した。
【0098】
機械撹拌器を備え窒素で排気した500mlの四頸丸底フラスコに、無水ヘキサン200mlと上記で得たプレポリマーの10 gを室温で充填した。同温度で、内部供与体として酢酸エチル(AcOEt)の量を撹拌下に、AcoEt/Tiモル比が8になるように滴下した。温度を50℃に上げ、混合物を3時間撹拌した。次に、撹拌を止め、固形物を沈降させ、上澄み液体をサイホンで除いた。25℃で固形物を無水ヘキサンで3回(3×100ml)洗浄し、回収し、真空乾燥した。
工程構成
実施例5〜7で、流動床反応量と図2に示した相互連結した重合ゾーンを有する気相反応器からなるプラント中連続条件下で行った。
【0099】
実施例5
プロピレンで予備重合した触媒を、管路34を介して流動床反応器に供給した。その反応器中、エチレンを不活性希釈剤としてプロパンの存在下に水素で重合した。エチレン、水素とプロパンの量は表1に特定される。第1の反応器にコモノマーは供給しなかった。仕上げプロパン、エチレンと分子量調整剤としての水素を、管路36を介して供給した。
【0100】
第1の反応器で作られたポリエチレン樹脂の性質を分析した。表1から、ポリエチレン樹脂は、約120 g/10分のメルトインデックスMIEを有し、これはポリマーの比較的低分子量を表し、かつ0.9681 kg/dm3の比較的高い密度を有したことが判る。第1の反応器は、第1と第2の反応器の両方で作られた最終ポリエチレン樹脂の全量に対して約57重量%(スプリット重量%)を生産した。重合は約80℃の温度と約2.4 MPaの圧で行われた。
【0101】
得られたポリマーは管路39を介して流動床反応器から連続的に排出され、気体/固体分離器19でガスから分離され、管路21を介して第2の気相反応器の結合部位5'に導入された。第2の反応器は、約80℃の温度と約2.1 MPaの圧での重合条件下で操作された。
【0102】
コモノマーとして、1-ヘキセンを表2に特定した濃度値を得るのに第2の反応器に導入した。仕上げのプロパンエチレンと水素を管路13'を経てリサイクル系に供給し、一方1-ヘキセンとエチレンは管路29を経て降下管2'に直接供給した。
【0103】
最終エチレンポリマーの分子量分布を拡げるため第2の反応器は、上昇管と降下管内のモノマー類と水素濃度の異なる条件を確立して操作した。これは、液体流(液体バリヤー)を降下管2'の上部に管路27を介して供給して達成される。その液体流は、上昇管中に存在のガス混合物から異なる組成を有する。第2の反応器の上昇管と降下管内のモノマー類と水素の異なる濃度は表2に示され、一方液体バリヤーの組成は表3に示される。管路27の液体流は、53℃と2.1 MPaの作動条件での濃縮器22での濃縮工程から由来し、リサイクル流の一部はそこで冷却され部分的に濃縮される。液体流27は管路23に1-ヘキセンを供給して豊富できる。
【0104】
テトラヒドロフラン(THF)は、THF/TEAの重量化0.02で降下管2'に管路23を介して供給もされた(TEAは触媒活性化に使用されるトリエチルアルミニウムである)。
【0105】
最終ポリマーは、管路11'を介して連続的に排出された。
【0106】
第2の反応器中の重合方法は、比較的高分子量ポリエチレン画分を生産した。表5に、最終生成物の性質が特定される。最終生成物のメルトインデックスは第1の反応器で作られたエチレン樹脂に比較して減少しているが、第2の反応器中で高分子量画分の形成を示す。同時に、得られたポリマーは、MIF/MIP比が34.5に等しいことで証明されるように広い分子量分布が賦与されている。次いで最終製品は、小さい棒(10×10×100mm)にされ、4.5 MPaの負荷と95℃の温度でフルノッチクリープテストに付された。サンプルは約308時間後にテストを落ち、これは高い耐応力亀裂性を示す。
【0107】
実施例6
この発明の方法を実施例5と同じ装置と重合触媒で行った。
【0108】
流動床反応器で、エチレンとプロパンの量を実施例5と変化させ、少ない量のポリエチレン樹脂を作った(スプリット%)。第1の反応器での操作条件は表1に示す。
【0109】
1-ヘキセンコモノマーの第2の反応器の降下管への量は、実施例5に対して僅かに増加させ、僅かに低い密度の最終製品を得る。第2の反応器での操作条件は表2に示し、バリヤー流の組成は表3に示す。THFは、実施例5と同じ重量比で管路23を介して降下管2'に供給した。
【0110】
最終ポリマーの性質は表5に示される。変化したスプリットと僅かに変化した分子量が、27.4に等しいMIF/MIP比で証明されるようにいくらか狭い分子量分布となった。得られたポリエチレン樹脂は、小さな棒(10×10×100mm)に形成し、先の実施例でのようにフルノッチクリープテストに付した。サンプルは約425時間後にテストを落ち、かくして非常に高い耐応力亀裂性を示した。
【0111】
実施例7
この発明の方法を実施例5と同じ装置と重合触媒を用いて行った。
【0112】
流動床反応器中に、実施例5と6に類似のエチレンとプロパンの量を用いた。第1の反応器の生産スプリットは実施例6のものと類似であった。第1の反応器の操作条件は、表1に示す。1-ヘキセンの代わりに、1-ブテンが第2の反応器中のコモノマーとして、表2に特定した濃度値を得るため導入された。第2の反応器の操作条件は表2に示し、バリヤー流の組成は、表3に示される。THFを実施例5と同じ重量比で管路23を介して降下管2'に供給した。最終ポリマーの性質は表5に示す。再び得られたポリエチレン樹脂を小さな棒(10×10×100mm)に形成し、次いで、前の実施例でのようにフルハッチクリープテストに付した。サンプルは約152時間後にテストに落ち高い耐応力亀裂性を示した。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
【表3】

【0116】
【表4】

【0117】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1は、工程a)とb)の気相反応器が重合ゾーンを相互に連結しているこの発明の第1の具体例を示す。その上で定義した工程a)は、工程b)の前に行われる。
【図2】図2は、重合工程a)を流動床反応器に行うこの発明の第2の具体例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
何れかの相互順序で、次の工程:
a)エチレンを、任意に1以上の3〜12の炭素原子を有するα−オレフィン系コモノマー類と共に、気相反応器中水素の存在下で重合させ、
b)エチレンと1以上の3〜12炭素原子を有するα−オレフィンコモノマー類とを、他の気相反応器中、工程a)より少ない水素の量の存在下で共重合させ、
そこで、前記気相反応器中の少なくとも1つで、成長するポリマー粒子が、急速な流動化または移送条件下で第1の重合ゾーン(上昇管)を通って上方に流動し、その上昇管を出て、ポリマー粒子が重力の作用下で下方に流動する第2の重合ゾーン(降下管)に入り、その降下管を出て、上昇管に再導入されて、前記2つの重合ゾーン間でポリマーの循環を確立する、
ことからなるエチレンの重合触媒の存在下で重合させることによる広い分子量のポリエチレンの製造方法。
【請求項2】
工程a)が工程b)の上流で行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)で得られるエチレンポリマーが0.955 kg/dm3より高い密度を有する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程a)で得られるエチレンポリマーが、10〜400 g/10分の範囲の溶融流量MIEを有する請求項1〜3の何れか1つに記載の方法。
【請求項5】
MIEが100〜200 g/10分である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程a)で、水素/エチレンモル比が0.5〜5.0の間で、エチレンモノマーが5〜50容量%の間である請求項1〜5の何れか1つに記載の方法。
【請求項7】
工程a)での操作温度が50〜120℃の間で選択される請求項1〜6の何れか1つに記載の方法。
【請求項8】
工程a)での操作圧が0.5〜10 MPaの間である請求項1〜7の何れか1つに記載の方法。
【請求項9】
工程a)が流動床反応器で行われる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程a)とb)が一連の2つの気相反応器で行われ、そこで成長するポリマー粒子は急速流動化条件下で上昇管を通して上方に流れ、その上昇管を出て、降下管に入り、そこを通して前記粒子が重力の作用で下方に流れ、降下管を出て、上昇管に再導入される請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程a)で得られるエチレンポリマーが、全工程で生産される全エチレンポリマーに対して40〜65重量%である請求項1〜10の何れか1つに記載の方法。
【請求項12】
工程a)から得られるエチレンポリマーと同行ガスが固体/気体分離器を通過させられ、分離したポリマーが工程b)の反応器に供給される請求項1〜11の何れか1つに記載の方法。
【請求項13】
工程b)の操作温度が65〜95℃の範囲である請求項1〜12の何れか1つに記載の方法。
【請求項14】
工程b)の操作圧が1.5〜4.0 MPaの範囲である請求項1〜13の何れか1つに記載の方法。
【請求項15】
工程b)のα−オレフィンコモノマーが、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテンと1-オクテンから選択される請求項1〜14の何れか1つに記載の方法。
【請求項16】
工程b)の反応器が、前記上昇管と前記降下管内でモノマー類とH2濃度の異なる条件を確立して操作される請求項1〜15の何れか1つに記載の方法。
【請求項17】
前記異なる条件が、ガス及び/又は液体混合物(この混合物は、前記上昇管に存在するガス混合物の組成とは異なる組成を有する)を前記降下管に供給して達成される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程b)の前記降下管中の水素/エチレンモル比が0.005〜0.2の間であり、エチレン濃度が1〜20容量%である請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
工程b)の前記降下管中のコモノマー濃度が前記降下管中に存在するガスの全容量に基づいて、0.3〜5容量%である請求項16〜18の何れか1つに記載の方法。
【請求項20】
工程b)の前記上昇管中の水素/エチレンモル比が0.05〜0.3の間であり、エチレン濃度が5〜15容量%である請求項16〜19の何れか1に記載の方法。
【請求項21】
工程b)の前記上昇管中のコモノマー濃度が前記上昇管中に存在するガスの全容量に対して0.1〜3.0容量%である請求項16〜20の何れか1つに記載の方法。
【請求項22】
少なくとも3峰分子量分布を賦与されたエチレンポリマーが得られる請求項1〜21の何れか1つに記載の方法。
【請求項23】
前記エチレンポリマーが5〜40 g/10分の範囲のメルトインデックスMIFと0.1〜1 g/10分の範囲のメルトインデックスMIPを有する請求項22に記載の方法
【請求項24】
MIF/MIP比が20〜50の範囲である請求項22〜24の何れか1つに記載の方法。
【請求項25】
前記エチレンポリマーが、0.935〜0.955 kg/dm3の間の密度を有する請求項22〜25の何れか1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−502874(P2007−502874A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523548(P2006−523548)
【出願日】平成16年7月19日(2004.7.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008063
【国際公開番号】WO2005/019280
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(501468046)バセル ポリオレフィン イタリア エス.アール.エル. (33)
【住所又は居所原語表記】Via Pergolesi 25,20124 Milano,Italy
【Fターム(参考)】