説明

エチレン性不飽和化合物からのニトリル官能基含有化合物の合成方法

ポリオレフィン組成物を提供するためにメタロセンを含む触媒の存在下で反応条件下において水素ガス及び1種又はそれより多くのモノマー(エチレンモノマーを含む)を含有する気体流を流動床を含む反応器中に通すことを含むポリオレフィン組成物を製造するための気相重合法が記載される。この方法では、1つの具体例においては流動化嵩密度が沈降嵩密度の60%又はそれより高く(或は空隙率が40%又はそれ未満であり);前記空隙率は、ある具体例においては(a)反応器温度を100℃又はそれ未満に保ち;(b)反応器中に導入される水素ガス対エチレンのモル比を0.015又はそれ未満にする:ことを含めて多くのファクターによって調節される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン性不飽和有機化合物をヒドロシアン化してニトリル官能基を少なくとも1つ有する化合物にする方法に関する。
【0002】
より特定的には、本発明は、ブタジエンのようなジオレフィンのヒドロシアン化又はアルケンニトリル(例えばペンテンニトリル)のような置換オレフィンのヒドロシアン化に関する。
【背景技術】
【0003】
フランス国特許第1599761号明細書には、ニッケル触媒及び亜リン酸トリアリールの存在下でエチレン性二重結合を少なくとも1つ有する有機化合物にシアン化水素酸を付加させることによるニトリルの調製方法が記載されている。この反応は、溶媒の存在下でも不在下でも実施することができる。
【0004】
従来技術のこの方法において溶媒を用いる場合には、これはベンゼンやキシレンのような炭化水素又はアセトニトリルのようなニトリルであるのが好ましい。
【0005】
用いられる触媒は、ホスフィン、アルシン、スチビン、ホスファイト、アルセナイト又はアンチモナイトのようなリガンドを含有する有機ニッケル錯体である。
【0006】
この特許明細書には、該触媒を活性化するための促進剤、例えばホウ素化合物や金属塩(一般的にはルイス酸)を存在させることも、推奨されている。
【0007】
一般的に有機リンリガンド及び触媒活性金属(より特定的にはニッケル)を含み、さらにより一層高い性能を示す触媒系を見出すために、多大なる研究が行われてきている。
【0008】
触媒系の性能は、いくつかの特徴、例えば特に系の触媒活性の安定性、反応の収率及び有利な生成物の合成における選択性(本件の場合には直鎖状ペンテンニトリル又はアジポニトリルについての選択性)を測定することによって評価される。
【0009】
かくして、以前には、リン原子を1個だけ有する有機リガンド(単座リガンドと称される)にニッケルが結合したものを触媒系として用いることが推奨されていた。この類の物質の内の工業的に用いられる化合物は、トリトリルホスファイト(TTP)である。この系は、ブタジエンのヒドロシアン化によるペンテンニトリルの合成において非常に許容できる性能を有するが、しかしペンテンニトリルのヒドロシアン化によるアジポニトリルの合成については性能改善の必要性がある。
【0010】
さらに、この触媒系は安定性及び反応媒体中における溶解性が良好である。かかる触媒系は、例えば米国特許第3496215号、ドイツ国特許第19953058号、フランス国特許第1529134号、同第2069411号、米国特許第3631191号、同第3766231号及びフランス国特許第2523974号の各明細書のような数多くの特許明細書に記載されている。
【0011】
触媒性能を得るため、特にアルケンニトリル(より特定的にはペンテンニトリル)のジニトリルへのヒドロシアン化工程において高い選択性を得るために、新規の類の有機リンリガンド(特定的にはニッケルと結合させることが予定されるもの)が提唱されている。この新規の類のリガンドは、リン原子をいくつか有する有機リン化合物を含み、多座リガンドと称される。これらの中でも提唱されている化合物は、一般的に2個のリン原子を含む化合物であり、これは二座リガンドと称される。
【0012】
かかる化合物及び触媒系は、数多くの特許によって保護されている。例として、国際公開WO99/06355号、同WO99/06356号、同WO99/06357号、同WO99/06358号、同WO99/52632号、同WO99/65506号、同WO99/62855号の各パンフレット、米国特許第5693843号明細書、国際公開WO96/1182号、同WO96/22968号の各パンフレット、米国特許第5981772号明細書、国際公開WO01/36429号、同WO99/64155号及び同WO02/13964号の各パンフレットを挙げることができる。
【0013】
これらの化合物の構造は、特にリン原子が有する基及び2個のリン原子同士に結合する構造の点で、多少複雑である。
【0014】
この類の二座リガンドにより、特にアルケンニトリルのヒドロシアン化プロセスにおける直鎖状ジニトリルの生産の点でより良好な選択性を有する触媒系を得ることが可能になる。
【0015】
しかしながら、構造がより複雑なこれらの二座リガンドは合成するのがより一層困難であり、そのためそれらのコストがより高くなる。従って、経済上の観点から、工業プロセスにおいて利用できるようにするためには、反応媒体中におけるそれらの安定性が非常に高いことが必要であり、重要である。さらに、それらの複雑な構造を考慮に入れると、反応媒体中におけるそれらの溶解性が低下することがあり、このことは触媒活性の低下及びヒドロシアン化反応の全体収率の低下につながることがある。
【特許文献1】フランス国特許第1599761号明細書
【特許文献2】米国特許第3496215号明細書
【特許文献3】ドイツ国特許第19953058号明細書
【特許文献4】フランス国特許第1529134号明細書
【特許文献5】フランス国特許第2069411号明細書
【特許文献6】米国特許第3631191号明細書
【特許文献7】米国特許第3766231号明細書
【特許文献8】フランス国特許第2523974号明細書
【特許文献9】国際公開WO99/06355号パンフレット
【特許文献10】国際公開WO99/06356号パンフレット
【特許文献11】国際公開WO99/06357号パンフレット
【特許文献12】国際公開WO99/06358号パンフレット
【特許文献13】国際公開WO99/52632号パンフレット
【特許文献14】国際公開WO99/65506号パンフレット
【特許文献15】国際公開WO99/62855号パンフレット
【特許文献16】米国特許第5693843号明細書
【特許文献17】国際公開WO96/1182号パンフレット
【特許文献18】国際公開WO96/22968号パンフレット
【特許文献19】米国特許第5981772号明細書
【特許文献20】国際公開WO01/36429号パンフレット
【特許文献21】国際公開WO99/64155号パンフレット
【特許文献22】国際公開WO02/13964号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の1つの目的は、不安定性及び溶解性レベルに関連した欠点を低減させながら、多座リガンドをベースとする触媒系(特に高い選択性の特徴を有するもの)を用いることを可能にする解消策を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的のために、本発明は、触媒活性を有する金属元素にオルガノホスホナイト、オルガノホスフィナイト、オルガノホスフィン、オルガノホスファイト及びオルガノホスホルアミドを含む群から選択される有機リンリガンドが結合したものを含む触媒系の存在下で、エチレン性不飽和を少なくとも1つ含む化合物をシアン化水素との反応によってヒドロシアン化する方法であって、前記触媒系が少なくとも2個の有機リンリガンドを含み、その内の第1のリガンドが単座オルガノホスファイト化合物の群から選択され、第2のリガンドが多座有機リンリガンドの群から選択されることを特徴とする、前記方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の好ましい特徴に従えば、リン原子として表わした第2リガンドのモル数対金属元素の原子数の比は少なくとも1であり、1〜6の範囲であるのが好ましく、1〜5の範囲であるのが有利であり、1〜4の範囲であるのがより一層好ましい。
【0019】
本発明の別の特徴に従えば、リン原子の数として表わした有機リンリガンドの合計モル数対金属元素の原子数の比は2〜100の範囲である。しかしながら、この比は臨界的なものではない。「有機リンリガンドの合計モル数」とは、第1リガンドのモル数と第2リガンドのモル数との合計を意味するものであると理解されたい。
【0020】
本発明のさらに別の好ましい特徴に従えば、第1リガンドのモル数と第2リガンドのモル数との比は、0.1より大きいのが有利であり、0.5又はそれより大きいのがより一層有利である。
【0021】
第1リガンドとして好適な有機リンリガンドは、次の一般式(I)の化合物のような単座オルガノホスファイト化合物を含む群から選択される。
【化1】

{ここで、R1、R2及びR3は同一であっても異なっていてもよく、1〜12個の炭素原子を有し且つヘテロ原子を含有していてもよい直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル基、又は置換若しくは非置換の芳香族若しくは環状脂肪族基(この芳香族若しくは環状脂肪族基は、ヘテロ原子を含有していてもよく、また、1個の環を含有するものであってもよく、2個以上の縮合若しくは非縮合形態の環を含有するものであってもよい)を表わし、
基R1、R2及びR3は2つずつ互いに結合していてもよい。}
【0022】
本発明にとって好適な単座オルガノホスファイト化合物の例としては、トリフェニルホスファイト、トリトリルホスファイト及びトリチモールホスファイトを挙げることができる。
【0023】
トリトリルホスファイトは反応媒体中における溶解性が良好であり且つ比較的安価であるので、好ましい化合物である。
【0024】
第2リガンドにとって好適な有機リン化合物は、特に次の一般式(II)の二座有機リン含有化合物(organophosphorated compound)である。
【化2】

{ここで、R1、R2、R3及びR4は同一であっても異なっていてもよく、1〜12個の炭素原子を有し且つヘテロ原子を含有していてもよい直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル基、置換若しくは非置換の芳香族若しくは環状脂肪族基(この芳香族若しくは環状脂肪族基は、ヘテロ原子を含有していてもよく、また、1個の環を含有するものであってもよく、2個以上の縮合若しくは非縮合形態の環を含有するものであってもよい)、アルキルアリール基又はアリールアルキル基を表わし、基R1とR2とが、及び/又はR3とR4とが互いに結合していてもよく、
1、X2、X3、X4、X5及びX6は同一であっても異なっていてもよく、共有結合、酸素原子又は二価−NR5−基を表わし、ここで、R5は水素原子又はアルキル、アリール、スルホニル、シクロアルキル若しくはカルボニル化基を表わし、そして
Lは共有結合、1〜12個の炭素原子を有し且つヘテロ原子を含有していてもよい直鎖状アルキル二価基、置換若しくは非置換の環状脂肪族若しくは芳香族二価基(この環状脂肪族若しくは芳香族二価基は、ヘテロ原子を含有していてもよく、また、2個以上の縮合若しくは非縮合形態の環を含有するものであってもよい)又はアルキルアリール若しくはアリールアルキル二価基を表わす。}
【0025】
二座有機リン化合物の例としては、上に挙げた特許明細書や国際公開パンフレットに記載された化合物を挙げることができる。
【0026】
同様に、国際公開WO95/30680号、同WO96/11182号、同WO99/06358号、同WO99/13983号、同WO99/64155号、同WO01/21579号及び同WO01/21580号の各パンフレットに例示された化合物を第2リガンドとして特に挙げることができる。
【0027】
例として、次の構造を挙げることができる。ここで、Phはフェニルを意味する。
【化3】

【0028】
これらの化合物は、上記の第1リガンドより複雑な構造を有し、反応媒体中における溶解性が低く、不安定さが大きい場合がある。しかしながら、これらの第2リガンド(即ち二座リガンド)は、触媒特性(特にニトリル又はジトリルに対する選択性に関する触媒特性)がより良好である。
【0029】
本発明の方法に従えば、単座及び多座(二座)の2種のリガンドの混合物を用いることによって、多座(二座)化合物の触媒特性(特に選択性に関するもの)を維持することができるのと同時に、反応媒体中におけるそれらの安定性を改善することができる。
【0030】
本発明に従えば、前記触媒系は、次の一般式(III)によって記号として規定することができる。
【化4】

(ここで、Mは触媒活性を有する遷移金属を表わし、
1は第1の単座有機リンリガンドを表わし、
2は第2の多座有機リンリガンドを表わし、そして
x及びyは触媒系中のそれぞれのリガンドのモル数に対応する小数を表わす。)
【0031】
本発明の好ましい特徴に従えば、触媒活性を有する金属元素Mは、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム及びセリウムを含む群から選択される。
【0032】
この式は単に指標として与えられたものに過ぎず、それぞれの金属原子Mが2つのリガンドと配位結合していることを意味するわけではない。かくして、金属原子Mの一部が第1リガンドのみと配位結合し、該原子の別の部分が第2リガンドと配位結合し、最後の部分が様々な割合の2種のリガンドに配位結合していることも可能である。上記の式は指標として及び明瞭化のために与えられたものに過ぎず、用いた化合物の量に基づくものであって、得られる触媒系の構造分析に基づくものではない。
【0033】
上記金属系を形成する有機金属錯体の調製は、選択した金属の化合物の溶液を各リガンド(第1若しくは第2)の溶液又はこれら2種のリガンドの溶液と接触させることによって行うことができる。
【0034】
前記の金属化合物は、溶媒中に溶解させることができるものである。
【0035】
用いられる化合物中の前記金属は、有機金属錯体中においてそれが有する予定の酸化度又はそれより高い酸化度で存在することができる。
【0036】
例えば、本発明の有機金属錯体中において、ロジウムは酸化度(I)にあり、ルテニウムは酸化度(II)にあり、白金は酸化度(0)にあり、パラジウムは酸化度(0)にあり、オスミウムは酸化度(II)にあり、イリジウムは酸化度(I)にあり、そしてニッケルは酸化度(0)にあることを示すことができる。
【0037】
有機金属錯体の調製の際により高い酸化状態にある金属を用いる場合には、その場で還元してもよい。
【0038】
遷移金属としては、遷移金属の化合物、より特定的にはニッケル、パラジウム、鉄又は銅の化合物を用いるのが好ましい。
【0039】
上に挙げた化合物の中で最も好ましい化合物は、ニッケルのものである。
【0040】
非限定的な例として、以下のものを挙げることができる:
・ニッケルの酸化度が0である化合物、例えばテトラシアノニッケル酸カリウムK4[Ni(CN)4]、ビス(アクリロニトリル)ニッケル0、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(Ni(cod)2とも称される)、及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル0のようなリガンド含有誘導体;
・カルボン酸塩(特に酢酸塩)、炭酸塩、重炭酸塩、ホウ酸塩、臭化物、塩化物、クエン酸塩、チオシアン酸塩、シアン化物、ギ酸塩、水酸化物、亜リン酸水素塩、亜リン酸塩、リン酸塩及び誘導体、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、アリール−及びアルキルスルホン酸塩のようなニッケル化合物。
【0041】
ニッケルの酸化状態が0より大きいニッケル化合物を用いる場合には、反応条件下においてニッケルと優先的に反応するニッケル還元剤を反応媒体に添加する。この還元剤は、有機物であっても無機物であってもよい。非限定的な例としては、NaBH4若しくはKBH4のようなホウ水素化物、Zn粉末、マグネシウム又は水素を挙げることができる。
【0042】
ニッケルの酸化状態が0であるニッケル化合物を用いる場合にも、上に挙げたタイプの還元剤を添加することができるが、この添加は必須ではない。
【0043】
鉄化合物を用いる場合には、同じ還元剤が好適である。
【0044】
パラジウムの場合、還元剤はさらに反応媒体の成分(有機リン含有化合物、溶媒、オレフィン)であることができる。
【0045】
第1リガンドの溶液及び第2リガンドの溶液は、同時に添加してもよく、順次添加してもよい。さらに、それぞれのリガンドを持つ有機金属錯体を別々に調製し、次いで2つの系を反応媒体中に導入する前に混合してもよく、それらを前記媒体中に直接導入してもよい。
【0046】
本発明の方法において用いられるエチレン性二重結合を少なくとも1つ有する有機化合物は、より一層特定的には、ジオレフィン類、例えばブタジエン、イソプレン、1,5−ヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン;エチレン性不飽和脂肪族ニトリル類、特に3−ペンテンニトリル又は4−ペンテンニトリルのような直鎖状ペンテンニトリル類;スチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセンのようなモノオレフィン類;及びこれらの化合物の内のいくつかのものの混合物である。前記ペンテンニトリル類は特に、2−メチル−3−ブテンニトリルや2−メチル−2−ブテンニトリル、2−ペンテンニトリル、バレロニトリル、アジポニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2−エチルスクシノニトリル、ブタジエンのようなその他の化合物(例えばブタジエンを不飽和ニトリルにするための先のヒドロシアン化反応から生じたもの)を所定量(一般的には少量)含有していてもよい。
【0047】
実際、ブタジエンのヒドロシアン化の際には、直鎖状ペンテンニトリルと共に取るに足らない量ではない量の2−メチル−3−ブテンニトリル及び2−メチル−2−ブテンニトリルが生成する。本発明の方法に従うヒドロシアン化のために用いられる触媒系は、反応帯域に導入する前に、例えば、第1リガンドと第2リガンドとの混合物(それらだけのものであっても溶媒中に溶解させたものであってもよい)に適量の選択した遷移金属化合物及び随意としての還元剤を添加することによって、又は上記の方法に従って、調製しておくことができる。また、ヒドロシアン化すべき化合物を添加する前又は後にヒドロシアン化反応媒体に第1リガンド及び第2リガンド並びに遷移金属化合物を単純に添加することによって、「現場で」触媒系を調製することもできる。
【0048】
ニッケルの化合物又は別の遷移金属の化合物の使用量は、ヒドロシアン化又は異性化すべき有機化合物1モル当たりのニッケル又は遷移金属のモル数としての濃度が10-4〜1の範囲、好ましくは0.0003〜0.5の範囲になるように選択される。
【0049】
触媒を形成させるために用いられる有機リンリガンドの合計量は、遷移金属1モルに対するこれらの化合物のモル数が0.5〜500、好ましくは2〜100になるように選択される。
【0050】
この反応は溶媒なしで実施するのが一般的であるが、不活性有機溶媒を添加するのが有利な場合もある。この溶媒は、前記触媒に対する溶媒であってヒドロシアン化温度においてヒドロシアン化すべき化合物を含む相と混和性のものであってよい。かかる溶媒の例としては、芳香族、脂肪族又は環状脂肪族炭化水素を挙げることができる。
【0051】
ヒドロシアン化反応は、一般的に10℃〜200℃の温度、好ましくは30℃〜120℃の温度において実施する。この反応は、1つの相を含む媒体中で実施することもでき、2つの相を含む媒体中で実施することもできる。
【0052】
本発明の方法は、連続式で実施することもでき、不連続式で実施することもできる。
【0053】
用いるシアン化水素は、金属シアン化物、特にシアン化ナトリウムから、又はシアノヒドリン類、例えばアセトンシアノヒドリンから調製することもでき、他の任意の既知の合成方法によって調製することもできる。
【0054】
シアン化水素は、気体又は液体の形で反応器中に導入される。また、前もって有機溶媒中に溶解させてもよい。
【0055】
不連続式の実施に関しては、前もって不活性ガス(例えば窒素やアルゴン)でパージしておいた反応器に、ヒドロシアン化すべき化合物、式(I)及び(II)の化合物、遷移金属化合物、随意としての還元剤並びに溶媒のような各種成分の全部又は一部を含有させた溶液を装填することもでき、また、これら成分を別々に装填することもできる。一般的には、次いで反応器を所定の温度にする。次いでシアン化水素を単独で、好ましくは連続的に且つ一様に導入する。
【0056】
反応(その進行はサンプルを分析することによって追跡することができる)が終了したら、反応混合物を冷却後に取り出し、反応生成物を例えば蒸留によって単離する。
【0057】
本発明に従うエチレン性不飽和化合物のヒドロシアン化方法はまた、上で得られたエチレン性不飽和ニトリル化合物をシアン化水素との反応によってヒドロシアン化することにも関し、本発明に従う触媒系を少なくとも1種のルイス酸から成る助触媒と共に用いることから成る。
【0058】
この工程において用いることができるエチレン性不飽和化合物は、一般的には上記の基本方法について挙げたものである。しかしながら、より特定的には、エチレン性不飽和脂肪族ニトリル(特に3−ペンテンニトリル、4−ペンテンニトリル及びそれらの混合物のような直鎖状ペンテンニトリル)をヒドロシアン化してジニトリルにする反応にこれを適用するのが有利である。
【0059】
これらのペンテンニトリルは、先のブタジエンのヒドロシアン化反応及び/又は2−メチル−3−ブテンニトリルのペンテンニトリルへの異性化から生じたその他の化合物(例えば2−メチル−3−ブテンニトリルや2−メチル−2−ブテンニトリル、2−ペンテンニトリル、バレロニトリル、アジポニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2−エチルスクシノニトリル、ブタジエン)を所定量(一般的には少量)含有していてもよい。
【0060】
エチレン性不飽和脂肪族ニトリルのヒドロシアン化の場合、ルイス酸を助触媒として用いることによって、得られるジニトリルの直鎖度、即ち生成する全ジニトリルに対する直鎖状ジニトリルの百分率を向上させ且つ/又は触媒の活性及び耐用寿命を高めることが特に可能になる。
【0061】
本明細書において「ルイス酸」とは、通常の定義、即ち電子対受容体である化合物を意味するものとする。
【0062】
特に、G. A. Olah編集「Friedel-Crafts and Related Reactions」、第1巻、第191〜197頁(1963)に挙げられたルイス酸を用いることができる。
【0063】
本発明の方法において助触媒として用いることができるルイス酸は、元素周期表第Ib、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VIb、VIIb及びVIII族の元素の化合物から選択される。これらの化合物は、大抵の場合は塩、特にハロゲン化物(例えば塩化物又は臭化物)、硫酸塩、スルホン酸塩、ハロゲノアルキルスルホン酸塩又はペルハロゲノアルキルスルホン酸塩(特にフルオロアルキルスルホン酸塩又はペルフルオロアルキルスルホン酸塩)、ハロゲノ酢酸塩、ペルハロゲノ酢酸塩、カルボン酸塩及びリン酸塩である。
【0064】
かかるルイス酸の非限定的な例としては、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化マンガン、臭化マンガン、塩化カドミウム、臭化カドミウム、塩化第一錫、臭化第一錫、硫酸第一錫、酒石酸第一錫、塩化インジウム、トリフルオロメチルスルホン酸インジウム、トリフルオロ酢酸インジウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ハフニウム、エルビウム、タリウム、イッテルビウム及びルテチウムのような希土類元素の塩化物又は臭化物、並びに塩化コバルト、塩化第一鉄及び塩化イットリウムを挙げることができる。
【0065】
ルイス酸としてはまた、トリフェニルボラン及びチタンイソプロピラートのような化合物を用いることもできる。
【0066】
もちろん、数種のルイス酸の混合物を使用することもできる。
【0067】
ルイス酸の中では、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化第一錫、臭化第一錫、トリフェニルボラン、トリフルオロメチルスルホン酸インジウム及び塩化亜鉛/塩化第一錫混合物が特に好ましい。
【0068】
用いるルイス酸助触媒は、一般的には遷移金属化合物(より特定的にはニッケル化合物)1モル当たりに0.01〜50モルを占める。
【0069】
本発明の基本方法を実施する場合と同様に、ルイス酸の存在下におけるヒドロシアン化のために用いられる触媒系も、反応帯域に導入する前に調製しておいてもよく、その場で例えば触媒系の各種成分を反応帯域に添加することによって調製してもよい。
【0070】
また、シアン化水素の不在下で、本発明のヒドロシアン化方法の条件下において、特に少なくとも1種の単座リガンド及び二座リガンド並びに少なくとも1種の遷移金属化合物を含む上記の触媒系の存在下で操作することによって、2−メチル−3−ブテンニトリルのペンテンニトリルへの異性化、より一般的には分枝鎖状不飽和ニトリルの直鎖状不飽和ニトリルへの異性化を実施することもできる。
【0071】
本発明に従って異性化に付される2−メチル−3−ブテンニトリルは、単独で用いることもでき、別の化合物との混合物として用いることもできる。
【0072】
かくして、2−メチル−3−ブテンニトリルは、2−メチル−2−ブテンニトリルや4−ペンテンニトリル、3−ペンテンニトリル、2−ペンテンニトリル、ブタジエン、アジポニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2−エチルスクシノニトリル、バレロニトリルとの混合物として用いることができる。
【0073】
ブタジエンのヒドロシアン化からの反応混合物を、式(I)の化合物と式(II)の化合物との少なくとも1種の混合物及び少なくとも1種の上で定義したような遷移金属化合物(より一層好ましくは、酸化度0のニッケルの化合物)の存在下においてHCNで処理するのが、特に有利である。
【0074】
この好ましい別態様においては、触媒系をすでにブタジエンのヒドロシアン化反応のために存在させてあるので、異性化反応を進行させるためにはシアン化水素の導入を停止するだけで充分である。
【0075】
もしも必要ならば、依然として存在するかも知れないシアン化水素を追い出すために、窒素やアルゴンのような不活性ガスによって反応器を穏やかにパージすることができる。
【0076】
異性化反応は、一般的に10℃〜200℃の温度、好ましくは60℃〜180℃の温度において実施する。
【0077】
ブタジエンのヒドロシアン化反応の直後に異性化を行う好ましい場合においては、ヒドロシアン化を実施した温度において操作を行うのが有利である。
【0078】
エチレン性不飽和化合物のヒドロシアン化の場合と同様に、異性化のために用いられる触媒系も、すでに媒体中に存在しているものであってもよく、すでに上に記載した態様に従って調製してもよい。
【0079】
異性化反応は溶媒なしで実施するのが一般的であるが、不活性有機溶媒を添加するのが有利な場合もあり、この不活性有機溶媒は、その後の抽出のための溶媒であってもよい。これは特に、異性化反応に付される媒体を調製するのに役立つような溶媒をブタジエンのヒドロシアン化反応に用いた場合のことである。かかる溶媒は、ヒドロシアン化について上に挙げたものから選択することができる。
【0080】
しかしながら、上記の不飽和ニトリルの生成工程及び上記の異性化工程のための本発明に従う触媒系を用いて、ブタジエンのようなオレフィンをヒドロシアン化することによるジニトリル化合物の調製を実施することができ、その際、不飽和ニトリルをジニトリルにするヒドロシアン化反応は、本発明に従う触媒系を用いて実施してもよく、また、この反応のためにすでに周知の任意のその他の触媒系を用いて実施してもよい。
【0081】
同様に、オレフィンを不飽和ニトリルにするヒドロシアン化反応及び後者の異性化を本発明の触媒系とは異なる触媒系を用いて実施し、不飽和ニトリルをジニトリルにするヒドロシアン化工程を本発明に従う触媒系を用いて実施することもできる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例によって本発明を例示する。
【0083】
これら実施例において用いた略号は、以下に示す意味を持つ。
cod:1,5−シクロオクタジエン
eq:当量
3PN:3−ペンテンニトリル
4PN:4−ペンテンニトリル
3+4PN:3PN+4PN
TT(Y):ヒドロシアン化すべき物質Yの転化度であり、転化したYのモル数対初期のYのモル数の比に相当する
直鎖度(L):生成したアジポニトリル(AdN)のモル数対生成したジニトリルのモル数(アジポニトリル(AdN)、エチルスクシノニトリル(ESN)及びメチルグルタロニトリル(MGN)の合計モル数)の比
選択性(%):転化した3+4PNのモル数から計算したAdNの理論モル数に対する生成したAdNのモル数
CPG:気相クロマトグラフィー
ml:ミリリットル
mol:モル
mmol:ミリモル
Ph:フェニル。
【0084】
例1〜12
これらの実験は、ペンテンニトリルをアジポニトリルにするヒドロシアン化に関する。これらの実験は、以下に記載する4通りの操作態様に従って行なった。
【0085】
操作態様1:
セプタムストッパーを備えた60mlのショット(Schott)ガラス管に不活性雰囲気下で以下のものを順次装填する:
・リガンド(単座リガンドについては、6モル当量リガンド/Ni、二座リガンドについては3モル当量リガンド/Ni);
・3−ペンテンニトリル(1.25g、400eq/Ni);
・ビス(1,5−シクロオクタジエン)2ニッケル(21mg);
・ルイス酸(1eq/Ni)。
【0086】
この反応媒体を撹拌しながら70℃に加熱する。この媒体に、アセトンシアノヒドリンを圧力シリンジによって0.45ml/時間の供給量で供給する。3時間の注入の後に、アセトンシアノヒドリンの導入を停止する。この混合物を周囲温度まで冷まし、アセトンで希釈し、気相クロマトグラフィーによって分析する。
【0087】
操作態様2:
セプタムストッパーを備えた60mlのショットガラス管に不活性雰囲気下で以下のものを順次装填する:
・二座リガンド(1モル当量リガンド/Ni);
・単座リガンド(4モル当量リガンド/Ni);
・3−ペンテンニトリル(1.25g、400eq/Ni);
・ビス(1,5−シクロオクタジエン)2ニッケル(21mg);
・ルイス酸(1eq/Ni)。
【0088】
この反応媒体を次いで撹拌下で70℃に加熱する。この媒体に、アセトンシアノヒドリンを圧力シリンジによって0.45ml/時間の供給量で供給する。3時間の注入の後に、アセトンシアノヒドリンの導入を停止する。この混合物を周囲温度まで冷まし、アセトンで希釈し、気相クロマトグラフィーによって分析する。
【0089】
操作態様3:
100ミリリットルのステンレス鋼反応器中に不活性雰囲気下で以下のものを順次装填する:
・リガンド(単座リガンドについては6モル当量リガンド/Ni;二座リガンドについては3モル当量リガンド/Ni);
・3−ペンテンニトリル(30g、75eq/Ni);
・ビス(1,5−シクロオクタジエン)2 ニッケル(1.30g);
・ルイス酸(1eq/Ni)。
【0090】
次いでこの反応媒体を撹拌下において55℃に加熱する。この反応媒体に液状HCNを圧力シリンジによって1.92ml/時間の供給量で添加する。5時間の注入の後に、HCNの導入を停止する。この混合物を周囲温度まで冷まし、アセトンで希釈し、気相クロマトグラフィーによって分析する。
【0091】
操作態様4:
100ミリリットルのステンレス鋼反応器中に不活性雰囲気下で以下のものを順次装填する:
・二座リガンド(1モル当量リガンド/Ni);
・単座リガンド(4モル当量リガンド/Ni);
・3−ペンテンニトリル(30g、75eq/Ni);
・ビス(1,5−シクロオクタジエン)2 ニッケル(1.30g);
・ルイス酸(1eq/Ni)。
【0092】
次いでこの反応媒体を撹拌下において55℃に加熱する。この反応媒体に液状HCNを圧力シリンジによって1.92ml/時間の供給量で添加する。5時間の注入の後に、HCNの導入を停止する。この混合物を周囲温度まで冷まし、アセトンで希釈し、気相クロマトグラフィーによって分析する。
【0093】
得られた結果を下記の表1にまとめる。
【表1】

(1)転化率が低すぎて選択性を測定することができなかった。
InTFA3:トリフルオロ酢酸インジウム。
【0094】
L/Ni比は、ニッケル原子当たりの燐原子として表わされる。最初の比は第2リガンドによって提供されるリン原子の比に関し、2番目の比は第1リガンドによって提供されるリン原子に関する。
リガンドA:トリトリルホスファイト。
リガンドB:トリチモールホスファイト。
【化5】

【0095】
例13
次式のリガンドの混合物の加水分解:
【化6】

【0096】
グローブボックス中で、30mlのショットタイプの管中にリガンドC(270mg)、リガンドA(2eq)、3−ペンテンニトリル(1.0g)及び塩化亜鉛(2eq)を順次導入する。透明な均質混合物が得られ、これを不活性雰囲気下において撹拌し、これに水2eqを添加する。この混合物の組成を次いで31P−NMRによって分析する。
【0097】
次の結果が得られた。
【表2】

【0098】
これらの結果は、二座リガンド又は第2リガンドの加水分解に対する保護を示し、かくして、第2リガンドを含む系の触媒活性レベルを維持しながら、加水分解速度を低下させることによって高価なリガンドを節約することができ、しかも金属元素に対する二座リガンドの量を減少させることができることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒活性を有する金属元素にオルガノホスホナイト、オルガノホスフィナイト、オルガノホスフィン、オルガノホスファイト及びオルガノホスホルアミドより成る群から選択される有機リンリガンドが結合したものを含む触媒系の存在下で、エチレン性不飽和の部位を少なくとも1つ有する化合物をシアン化水素との反応によってヒドロシアン化する方法であって、前記触媒系が単座オルガノホスファイトの中から選択される少なくとも1種の第1リガンド及び多座有機リンリガンドの中から選択される少なくとも1種の第2リガンドを含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記の第2有機リンリガンドが二座リガンドであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の第2リガンドがオルガノホスファイト、オルガノホスフィン、オルガノホスフィナイト、オルガノホスホナイト及びオルガノホスホルアミド化合物より成る群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
リン原子として表わした第2多座リガンドの数対金属元素の原子数の比が0.5より大きい、好ましくは1〜5の範囲であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
リン原子の数として表わした第1リガンド及び第2リガンドの合計モル数対金属元素の原子数の比が1〜100の範囲であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
第1リガンドのモル数対第2リガンドのモル数の比が0.1より大きい、有利には0.5より大きいことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記の第1単座リガンドが次の一般式(I)を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【化1】

(ここで、R1、R2及びR3は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ1〜12個の炭素原子を有し且つヘテロ原子を含有していてもよい直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル基、又は置換若しくは非置換の芳香族若しくは環状脂肪族基を表わし、この芳香族又は環状脂肪族基は、ヘテロ原子を含有していてもよく、また、1個の環を含有するものであってもよく、2個以上の縮合若しくは非縮合形態の環を含有するものであってもよく、
基R1、R2及びR3は2つずつ互いに結合していてもよい。)
【請求項8】
前記の第2リガンドが次の一般式(II)を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【化2】

{ここで、R1、R2、R3及びR4は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ1〜12個の炭素原子を有し且つヘテロ原子を含有していてもよい直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル基、置換若しくは非置換の芳香族若しくは環状脂肪族基(この芳香族若しくは環状脂肪族基は、ヘテロ原子を含有していてもよく、また、1個の環を含有するものであってもよく、2個以上の縮合若しくは非縮合形態の環を含有するものであってもよい)、アルキルアリール基又はアリールアルキル基を表わし、基R1とR2とが、及び/又はR3とR4とが互いに結合していてもよく、
1、X2、X3、X4、X5及びX6は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ共有結合、酸素原子又は二価−NR5−基を表わし、ここで、R5は水素原子又はアルキル、アリール、スルホニル、シクロアルキル若しくはカルボニル化基を表わし、そして
Lは共有結合、1〜12個の炭素原子を有し且つヘテロ原子を含有していてもよい直鎖状アルキル二価基、置換若しくは非置換の環状脂肪族若しくは芳香族二価基(この環状脂肪族若しくは芳香族二価基は、ヘテロ原子を含有していてもよく、また、2個以上の縮合若しくは非縮合形態の環を含有するものであってもよい)又はアルキルアリール若しくはアリールアルキル二価基を表わす。}
【請求項9】
前記の第1単座リガンドがトリフェニルホスファイト、トリトリルホスファイト及びトリチモールホスファイトより成る群から選択され、そして前記の第2二座リガンドが次式の化合物より成る群から選択されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【化3】

【請求項10】
前記反応を単相媒体中で実施することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記触媒が次の一般式(III)を有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【化4】

(ここで、Mは触媒として活性な遷移金属であり、
1は第1単座有機リンリガンドであり、
2は第2多座有機リンリガンドであり、そして
x及びyは触媒系中のそれぞれのリガンドのモル数に対応する小数である。)
【請求項12】
前記金属元素がニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム及び水銀より成る群から選択されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
反応媒体が触媒に対する溶媒であってヒドロシアン化温度においてヒドロシアン化すべき化合物を含む相と混和性である前記溶媒を含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記遷移金属の化合物がニッケルの化合物であって、
・テトラシアノニッケル酸カリウムK4[Ni(CN)4]、ビス(アクリロニトリル)ニッケル0、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル0のようなリガンド含有誘導体のような、ニッケルの酸化度が0である化合物;
・ニッケルのカルボン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、ホウ酸塩、臭化物、塩化物、クエン酸塩、チオシアン酸塩、シアン化物、ギ酸塩、水酸化物、亜リン酸水素塩、亜リン酸塩、リン酸塩及び誘導体、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、アリール−及びアルキルスルホン酸塩のようなニッケル化合物:
より成る群から選択されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記のエチレン性二重結合を少なくとも1つ有する有機化合物がブタジエン、イソプレン、1,5−ヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエンのようなジオレフィン類;エチレン性不飽和を有する脂肪族ニトリル類、特に3−ペンテンニトリル又は4−ペンテンニトリルのような直鎖状ペンテンニトリル類;スチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセンのようなモノオレフィン類;並びにこれらの化合物の内のいくつかのものの混合物より成る群から選択されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
ニッケル又はその他の遷移金属の化合物の使用量が、ヒドロシアン化又は異性化すべき有機化合物1モル当たりに用いられるニッケル又はその他の遷移金属が10-4〜1モルの範囲で存在するように選択されること、及び式(I)又は式(II)の化合物の使用量が、遷移金属1モルに対するこの化合物のモル数が0.5〜100になるように選択されることを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記ヒドロシアン化反応を10℃〜200℃の温度において実施することを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載の触媒系及び少なくとも1種のルイス酸を含む助触媒の存在下で実施することを特徴とする、エチレン性不飽和ニトリルをシアン化水素との反応によってヒドロシアン化してジニトリルにする方法。
【請求項19】
前記エチレン性不飽和ニトリルが3−ペンテンニトリル、4−ペンテンニトリル及びそれらの混合物のような直鎖状ペンテンニトリルを含むエチレン性不飽和脂肪族ニトリルの群から選択されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記直鎖状ペンテンニトリルが2−メチル−3−ブテンニトリル、2−メチル−2−ブテンニトリル、2−ペンテンニトリル、バレロニトリル、アジポニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2−エチルスクシノニトリル又はブタジエンより成る群から選択される別の化合物を所定量含有することを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ルイス酸助触媒が元素周期表第Ib、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VIb、VIIb及びVIII族の元素の化合物から選択されることを特徴とする、請求項18〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
ルイス酸がハロゲン化物、硫酸塩、スルホン酸塩、ハロゲノアルキルスルホン酸塩、ペルハロゲノアルキルスルホン酸塩、ハロゲノ酢酸塩、ペルハロゲノ酢酸塩、カルボン酸塩及びリン酸塩の中から選択されることを特徴とする、請求項18〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
ルイス酸が塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化マンガン、臭化マンガン、塩化カドミウム、臭化カドミウム、塩化第一錫、臭化第一錫、硫酸第一錫、酒石酸第一錫、塩化インジウム、トリフルオロメチルスルホン酸インジウム、トリフルオロ酢酸インジウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ハフニウム、エルビウム、タリウム、イッテルビウム及びルテチウムのような希土類元素の塩化物又は臭化物、塩化コバルト、塩化第一鉄及び塩化イットリウム、トリフェニルボラン及びチタンイソプロピラート並びにそれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項18〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
使用するルイス酸が遷移金属化合物1モル当たりに0.01〜50モルを占めることを特徴とする、請求項18〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
シアン化水素の不在下で、請求項1〜17のいずれかに記載の触媒の存在下で操作することによって、ブタジエンのヒドロシアン化からの反応媒体中に存在する2−メチル−3−ブテンニトリルのペンテンニトリルへの異性化を実施することを特徴とする、方法。
【請求項26】
異性化すべき2−メチル−3−ブテンニトリルを単独で、又は2−メチル−2−ブテンニトリルや4−ペンテンニトリル、3−ペンテンニトリル、2−ペンテンニトリル、ブタジエン、アジポニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2−エチルスクシノニトリル、バレロニトリルとの混合物として用いることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記異性化反応を10℃〜200℃の温度において実施することを特徴とする、請求項25又は26に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒活性を有する金属元素にオルガノホスホナイト、オルガノホスフィナイト、オルガノホスフィン、オルガノホスファイト及びオルガノホスホルアミドより成る群から選択される有機リンリガンドが結合したものを含む触媒系の存在下で、エチレン性不飽和の部位を少なくとも1つ有する化合物をシアン化水素との反応によってヒドロシアン化する方法であって、前記触媒系が単座オルガノホスファイトの中から選択される少なくとも1種の第1リガンド及び多座有機リンリガンドの中から選択される少なくとも1種の第2リガンドを含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記の第2有機リンリガンドが二座リガンドであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の第2リガンドがオルガノホスファイト、オルガノホスフィン、オルガノホスフィナイト、オルガノホスホナイト及びオルガノホスホルアミド化合物より成る群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
リン原子として表わした第2多座リガンドの数対金属元素の原子数の比が0.5より大きいことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
リン原子として表わした第2多座リガンドの数対金属元素の原子数の比が1〜6の範囲であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
リン原子の数として表わした第1リガンド及び第2リガンドの合計モル数対金属元素の原子数の比が1〜100の範囲であることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
第1リガンドのモル数対第2リガンドのモル数の比が0.1より大きいことを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
第1リガンドのモル数対第2リガンドのモル数の比が0.6より大きいことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記の第1単座リガンドが次の一般式(I)を有することを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【化1】

(ここで、R1、R2及びR3は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ1〜12個の炭素原子を有し且つヘテロ原子を含有していてもよい直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル基、又は置換若しくは非置換の芳香族若しくは環状脂肪族基を表わし、この芳香族又は環状脂肪族基は、ヘテロ原子を含有していてもよく、また、1個の環を含有するものであってもよく、2個以上の縮合若しくは非縮合形態の環を含有するものであってもよく、
基R1、R2及びR3は2つずつ互いに結合していてもよい。)
【請求項10】
前記の第2リガンドが次の一般式(II)を有することを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【化2】

{ここで、R1、R2、R3及びR4は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ1〜12個の炭素原子を有し且つヘテロ原子を含有していてもよい直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル基、置換若しくは非置換の芳香族若しくは環状脂肪族基(この芳香族若しくは環状脂肪族基は、ヘテロ原子を含有していてもよく、また、1個の環を含有するものであってもよく、2個以上の縮合若しくは非縮合形態の環を含有するものであってもよい)、アルキルアリール基又はアリールアルキル基を表わし、基R1とR2とが、及び/又はR3とR4とが互いに結合していてもよく、
1、X2、X3、X4、X5及びX6は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ共有結合、酸素原子又は二価−NR5−基を表わし、ここで、R5は水素原子又はアルキル、アリール、スルホニル、シクロアルキル若しくはカルボニル化基を表わし、そして
Lは共有結合、1〜12個の炭素原子を有し且つヘテロ原子を含有していてもよい直鎖状アルキル二価基、置換若しくは非置換の環状脂肪族若しくは芳香族二価基(この環状脂肪族若しくは芳香族二価基は、ヘテロ原子を含有していてもよく、また、2個以上の縮合若しくは非縮合形態の環を含有するものであってもよい)又はアルキルアリール若しくはアリールアルキル二価基を表わす。}
【請求項11】
前記の第1単座リガンドがトリフェニルホスファイト、トリトリルホスファイト及びトリチモールホスファイトより成る群から選択され、そして前記の第2二座リガンドが次式の化合物より成る群から選択されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【化3】

【請求項12】
前記反応を単相媒体中で実施することを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記触媒が次の一般式(III)を有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【化4】

(ここで、Mは触媒として活性な遷移金属であり、
1は第1単座有機リンリガンドであり、
2は第2多座有機リンリガンドであり、そして
x及びyは触媒系中のそれぞれのリガンドのモル数に対応する小数である。)
【請求項14】
前記金属元素がニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム及び水銀より成る群から選択されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
反応媒体が触媒に対する溶媒であってヒドロシアン化温度においてヒドロシアン化すべき化合物を含む相と混和性である前記溶媒を含むことを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記のエチレン性二重結合を少なくとも1つ有する有機化合物がブタジエン、イソプレン、1,5−ヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエンを含む群から選択されるジオレフィン類;3−ペンテンニトリル又は4−ペンテンニトリルを含む群から選択されるエチレン性不飽和を有する脂肪族ニトリル類;スチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセンを含む群から選択されるモノオレフィン類;並びにこれらの化合物の内のいくつかのものの混合物より成る群から選択されることを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
ニッケル金属又は前記金属元素の使用量が、ヒドロシアン化又は異性化すべき有機化合物1モル当たりに用いられるニッケル金属又は前記金属元素が10-4〜1モルの範囲で存在するように選択されること、及び式(I)又は式(II)の化合物の使用量が、前記金属元素1モルに対するこの化合物のモル数が0.5〜100になるように選択されることを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記ヒドロシアン化反応を10℃〜200℃の温度において実施することを特徴とする、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載の触媒系及び少なくとも1種のルイス酸を含む助触媒の存在下で実施することを特徴とする、エチレン性不飽和ニトリルをシアン化水素との反応によってヒドロシアン化してジニトリルにする方法。
【請求項20】
前記エチレン性不飽和ニトリルが3−ペンテンニトリル、4−ペンテンニトリル及びそれらの混合物を含む群から選択されるエチレン性不飽和脂肪族ニトリルの群から選択されることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記直鎖状ペンテンニトリルが2−メチル−3−ブテンニトリル、2−メチル−2−ブテンニトリル、2−ペンテンニトリル、バレロニトリル、アジポニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2−エチルスクシノニトリル又はブタジエンより成る群から選択される別の化合物を所定量含有することを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ルイス酸助触媒が元素周期表第Ib、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VIb、VIIb及びVIII族の元素の化合物から選択されることを特徴とする、請求項1921のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
ルイス酸がハロゲン化物、硫酸塩、スルホン酸塩、ハロゲノアルキルスルホン酸塩、ペルハロゲノアルキルスルホン酸塩、ハロゲノ酢酸塩、ペルハロゲノ酢酸塩、カルボン酸塩及びリン酸塩の中から選択されることを特徴とする、請求項1922のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
ルイス酸が塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化マンガン、臭化マンガン、塩化カドミウム、臭化カドミウム、塩化第一錫、臭化第一錫、硫酸第一錫、酒石酸第一錫、塩化インジウム、トリフルオロメチルスルホン酸インジウム、トリフルオロ酢酸インジウム、希土類元素の塩化物又は臭化物、塩化コバルト、塩化第一鉄及び塩化イットリウム、トリフェニルボラン及びチタンイソプロピラート並びにそれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項1923のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
使用するルイス酸が遷移金属化合物1モル当たりに0.01〜50モルを占めることを特徴とする、請求項1924のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
シアン化水素の不在下で、請求項1〜18のいずれかに記載の触媒の存在下で操作することによって、ブタジエンのヒドロシアン化からの反応媒体中に存在する2−メチル−3−ブテンニトリルのペンテンニトリルへの異性化を実施することを特徴とする、方法。
【請求項27】
異性化すべき2−メチル−3−ブテンニトリルを単独で、又は2−メチル−2−ブテンニトリルや4−ペンテンニトリル、3−ペンテンニトリル、2−ペンテンニトリル、ブタジエン、アジポニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2−エチルスクシノニトリル、バレロニトリルとの混合物として用いることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記異性化反応を10℃〜200℃の温度において実施することを特徴とする、請求項26又は27に記載の方法。

【公表番号】特表2006−511591(P2006−511591A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566993(P2004−566993)
【出願日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【国際出願番号】PCT/FR2003/003690
【国際公開番号】WO2004/065352
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(598051417)ロディア・ポリアミド・インターミーディエッツ (14)
【Fターム(参考)】