説明

エッチング液、補給液及び銅配線の形成方法

【課題】サイドエッチングを抑制し、かつ銅配線の直線性を向上させた上、未エッチング箇所の残存を抑制できるエッチング液とその補給液、及び銅配線の形成方法を提供する。
【解決手段】本発明のエッチング液は、銅のエッチング液であって、酸と、第二銅イオンと、アゾール化合物と、脂環式アミン化合物とを含む水溶液であることを特徴とする。本発明の補給液は、前記本発明のエッチング液を連続又は繰り返し使用する際に、前記エッチング液に添加する補給液であって、酸と、アゾール化合物と、脂環式アミン化合物とを含む水溶液であることを特徴とする。本発明の銅配線(1)の形成方法は、銅層のエッチングレジスト(2)で被覆されていない部分をエッチングする銅配線(1)の形成方法であって、前記本発明のエッチング液を用いてエッチングすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅のエッチング液とその補給液、及び銅配線の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造において、フォトエッチング法で銅配線パターンを形成する場合、エッチング液として塩化鉄系エッチング液、塩化銅系エッチング液、アルカリ性エッチング液などが用いられている。これらのエッチング液を使用すると、サイドエッチングとよばれるエッチングレジスト下の銅が配線パターンの側面から溶解する場合があった。即ち、エッチングレジストでカバーされることによって、本来エッチングで除去されないことが望まれる部分(即ち、銅配線部分)が、エッチング液により除去されて、当該銅配線の底部から頂部になるに従い幅が細くなる現象が生じていた。特に銅配線パターンが微細な場合、このようなサイドエッチングはできる限り少なくしなければならない。このサイドエッチングを抑制するために、アゾール化合物が配合されたエッチング液が提案されている(例えば下記特許文献1等参照)。
【0003】
特許文献1に記載のエッチング液によれば、サイドエッチングについては抑制することができる。しかしながら、このようなエッチング液を通常の方法で使用すると、銅配線の側面にがたつきが生じるおそれがあった。銅配線の側面にがたつきが生じると、銅配線の直線性が低下して、プリント配線板の上方から銅配線幅を光学的に検査する際に、誤認識を引き起こすおそれがあった。
【0004】
上記課題を解決するため、下記特許文献2では、特定の官能基を有する重合体を配合したエッチング液が提案されている。このエッチング液によれば、エッチングの際、銅配線の側面に緻密な保護皮膜が形成されるため、がたつきを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−330572号公報
【特許文献2】特開2009−221596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
両面プリント配線板や多層プリント配線板を製造する場合、銅層と銅層の間の導通を確保するために、製造過程でスルーホール内やブラインドビア内に電解めっきが施される。この電解めっきの前処理として行われる、無電解めっき処理のパラジウム触媒がパターン形成を行う銅層の中に残存し、エッチングされない箇所(未エッチング箇所)が残存する場合があり、ショートの原因となっている。
【0007】
上記特許文献2に記載のエッチング液によれば、サイドエッチングやがたつきについては抑制できるが、上記パラジウム触媒に起因する未エッチング箇所の残存を抑制するのは困難であることが本発明者らの検討により判明した。以下、本発明者らの検討結果について説明する。
【0008】
図2Aは、電気絶縁基材上に厚み9μmの銅箔をプレス成形にて積層させた後、該銅箔上にパラジウム触媒を用いて無電解銅めっき層(厚み:0.3μm)を形成し、更に厚み10μmの電解銅めっき層を形成した積層板を、上記特許文献2に記載のエッチング液でエッチングすることによって形成した銅配線パターンを示す上面写真である。図2Aにおいて、銅配線Lの幅は30μmであり、隣り合う銅配線L間のスペースは30μmである。図2Aに示すように、隣り合う銅配線L間に未エッチング箇所Xが少し見られる。
【0009】
図2Bは、図2Aで使用した積層板において、パラジウム触媒の付着量を約1.5倍にしたこと以外は同様に形成した積層板を用いて、同様にエッチングすることによって形成した銅配線パターンを示す上面写真である。図2Bでは、隣り合う銅配線L間に未エッチング箇所Xが顕著に見られる。
【0010】
このように、従来のエッチング液では、サイドエッチングを抑制し、かつ銅配線の直線性を向上させた上、未エッチング箇所の残存を抑制するのは困難であった。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、サイドエッチングを抑制し、かつ銅配線の直線性を向上させた上、未エッチング箇所の残存を抑制できるエッチング液とその補給液、及び銅配線の形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のエッチング液は、銅のエッチング液であって、酸と、第二銅イオンと、アゾール化合物と、脂環式アミン化合物とを含む水溶液であることを特徴とする。
【0013】
本発明の補給液は、前記本発明のエッチング液を連続又は繰り返し使用する際に、前記エッチング液に添加する補給液であって、酸と、アゾール化合物と、脂環式アミン化合物とを含む水溶液であることを特徴とする。
【0014】
本発明の銅配線の形成方法は、銅層のエッチングレジストで被覆されていない部分をエッチングする銅配線の形成方法であって、前記本発明のエッチング液を用いてエッチングすることを特徴とする。
【0015】
なお、上記本発明における「銅」は、銅からなるものであってもよく、銅合金からなるものであってもよい。また、本明細書において「銅」は、銅又は銅合金をさす。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、サイドエッチングを抑制し、かつ銅配線の直線性を向上させた上、未エッチング箇所の残存を抑制できるエッチング液とその補給液、及び銅配線の形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のエッチング液によりエッチングした後の銅配線の一例を示す部分断面図である。
【図2】A,Bは、従来のエッチング液を用いて形成した銅配線を示す上面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のエッチング液は、銅のエッチング液であって、酸と、第二銅イオンと、アゾール化合物と、脂環式アミン化合物とを含む水溶液である。図1は、本発明のエッチング液によりエッチングした後の銅配線の一例を示す部分断面図である。銅配線1上には、エッチングレジスト2が形成されている。そして、エッチングレジスト2の端部の直下における銅配線1の側面に、保護皮膜3が形成されている。この保護皮膜3は、エッチングの進行とともにエッチング液中に生成する第一銅イオン及びその塩と、アゾール化合物と、脂環式アミン化合物とにより主に形成される。本発明のエッチング液によれば、上記脂環式アミン化合物を含むため、均一な保護皮膜3が形成されると考えられる。これにより、銅配線1のがたつきが軽減されるため、銅配線1の直線性を向上させることができると考えられる。更に、エッチング前において、エッチングレジスト2で覆われていない部分の銅層(図示せず)中にパラジウム触媒が含まれていても、本発明のエッチング液には脂環式アミン化合物が含まれているため、パラジウム触媒の周囲に強固な保護皮膜が形成されることを防止できると考えられる。これにより、パラジウム触媒等のパラジウムに起因する未エッチング箇所の残存を抑制できると考えられる。なお、前記パラジウムは、金属パラジウムだけでなく、酸化パラジウムや塩化パラジウム等の状態で銅層中に残存している場合でも、本発明の上記効果は発揮される。
【0019】
本発明において、エッチングの進行とともに保護皮膜3が形成される仕組みは以下のとおりである。まず、エッチングレジスト2で覆われていない部分の銅層(図示せず)が第二銅イオンと酸によってエッチングされる。このとき、エッチング液中では第二銅イオンとエッチングされる金属銅との反応により第一銅イオンが生成する。この第一銅イオンは、低濃度の時にはエッチング液中に溶解、拡散するが、エッチングが進むにつれて高濃度になると、エッチング液中に含まれるアゾール化合物等と結合して結合体が生じる。この結合体を主成分とする不溶物が保護皮膜3として銅配線1の側面に付着し、この部分のエッチングを抑制する。なお、保護皮膜3はエッチング処理後に除去液による処理で簡単に除去することができる。上記除去液としては、過酸化水素と硫酸の混合液や塩酸などの酸性液、あるいはジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの有機溶媒などが好ましい。
【0020】
本発明のエッチング液の酸成分は、無機酸及び有機酸から適宜選択可能である。酸の濃度は、好ましくは7〜180g/Lであり、より好ましくは18〜110g/Lである。7g/L以上の場合は、エッチング速度が速くなるため、銅を速やかにエッチングすることができる。また、180g/L以下とすることにより、銅の溶解安定性が維持されるとともに、銅表面の再酸化を防止できる。前記無機酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。前記有機酸としては、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、安息香酸、グリコール酸などが挙げられる。前記酸の中では、エッチング速度の安定性及び銅の溶解安定性の観点から、塩酸が好ましい。
【0021】
本発明に用いられる第二銅イオンは、第二銅イオン源を配合することによって、エッチング液中に含有させることができる。前記第二銅イオン源の具体例としては、塩化銅、硫酸銅、臭化銅、有機酸の銅塩、水酸化銅などが挙げられる。特に、塩化銅(塩化第二銅)を用いた場合は、エッチング速度が速くなるため好ましい。前記第二銅イオンの濃度は、好ましくは4〜155g/Lであり、より好ましくは6〜122g/Lである。4g/L以上の場合は、エッチング速度が速くなるため、銅を速やかにエッチングすることができる。また、155g/L以下とすることにより、銅の溶解安定性が維持される。なお、塩化第二銅を用いる場合、塩化第二銅の濃度は、好ましくは8〜330g/Lであり、より好ましくは13〜260g/Lである。
【0022】
本発明のエッチング液には、サイドエッチングを抑制するためにアゾール化合物が配合される。前記アゾール化合物としては、特に限定されないが、サイドエッチングを効果的に抑制する観点から、環内にある異原子として窒素原子のみを有するアゾール化合物が好ましい。
【0023】
環内にある異原子として窒素原子のみを有するアゾール化合物としては、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物等が挙げられ、これらのアゾール化合物の2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、サイドエッチングをより効果的に抑制する観点から、テトラゾール化合物を用いるのが好ましい。
【0024】
前記イミダゾール化合物としては、例えばイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール化合物、ベンゾイミダゾール、2−メチルベンゾイミダゾール、2−ウンデシルベンゾイミダゾール、2−フェニルベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどのベンゾイミダゾール化合物が挙げられる。この中ではベンゾイミダゾールが好ましい。
【0025】
前記トリアゾール化合物としては、例えば1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1−メチルベンゾトリアゾール、1−アミノベンゾトリアゾール、トリルトリアゾールなどが挙げられる。この中ではベンゾトリアゾール、1−アミノベンゾトリアゾールが好ましい。
【0026】
前記テトラゾール化合物としては、例えば1H−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、5−メチル−1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール、5−メルカプト−1H−テトラゾール、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、1−シクロヘキシル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、5,5'−ビス−1H−テトラゾール・ジアンモニウム塩などが挙げられる。この中では1H−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール、5,5'−ビス−1H−テトラゾール・ジアンモニウム塩が好ましく、1H−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾールがより好ましい。
【0027】
本発明のエッチング液中のアゾール化合物の濃度は、0.1〜50g/Lが好ましく、0.1〜15g/Lがより好ましく、0.2〜10g/Lがさらに好ましい。この範囲内であれば、エッチング速度を低下させない程度にサイドエッチングの抑制機能を充分に発揮させることができる。
【0028】
本発明のエッチング液には、銅配線の直線性を向上させ、かつパラジウムに起因する未エッチング箇所の残存を抑制するために、脂環式アミン化合物が配合される。同様の観点から、本発明のエッチング液中の脂環式アミン化合物の濃度は、0.01〜10g/Lが好ましく、0.02〜5g/Lがより好ましく、0.05〜3g/Lが更に好ましい。
【0029】
前記脂環式アミン化合物としては、上記本発明の効果が得られる限り特に限定されないが、パラジウムに起因する未エッチング箇所の残存を効果的に抑制するには、分子量が43〜500程度の脂環式アミン化合物を用いるのが好ましく、ピロリジン化合物、ピペリジン化合物及びピペラジン化合物から選択される1種以上の脂環式アミン化合物を使用するのがより好ましい。
【0030】
なかでも、サイドエッチングを効果的に抑制し、かつ銅配線の直線性をより向上させるには、ピペラジン等のピペラジン化合物を使用するのが好ましく、下記式(I)に示すピペラジン化合物を使用するのがより好ましい。
【化1】

[式中、R及びRは、それぞれ独立に水素又は炭素数1〜6の炭化水素誘導基を示す。ただし、R及びRの少なくとも一方は炭素数1〜6の炭化水素誘導基を示す。]
【0031】
なお、上記炭化水素誘導基とは、炭素及び水素からなる炭化水素基にて、一部の炭素や水素が、他の原子や置換基に置き換わっていてもよいものを指す。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、ジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジメチルアミノプロピル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アリル基、アセチル基、フェニル基、ヒドロキシエトキシメチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、ヒドロキシエトキシプロピル基等が例示できる。
【0032】
上記式(I)に示すピペラジン化合物の具体例としては、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、N,N−ジメチルピペラジン、N−アリルピペラジン、N−イソブチルピペラジン、N−ヒドロキシエトキシエチルピペラジン、N−フェニルピペラジン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、1−(2−ジメチルアミノエチル)−4−メチルピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン等が例示できる。このうち、サイドエッチングの抑制、及び銅配線の直線性向上の観点から、前記式(I)において、R及びRの少なくとも一方がアミノ基を有するピペラジン化合物が好ましい。このようなピペラジン化合物としては、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、1−(2−ジメチルアミノエチル)−4−メチルピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン等が例示できる。
【0033】
前記ピロリジン化合物としては、ピロリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、1−(2−アミノエチルピロリジン)、N−メチルピロリジン、N−ホルミルピロリジン、3−アミノピロリジン、N−ベンジル−3−アミノピロリジン等が例示でき、パラジウムに起因する未エッチング箇所の残存を効果的に抑制するという観点から、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、1−(2−アミノエチルピロリジン)、3−アミノピロリジン、N−ベンジル−3−アミノピロリジンが好ましい。
【0034】
前記ピペリジン化合物としては、ピペリジン、N−ピペリジンエタノール、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、4−アミノピペリジン、4−ピペリジンカルボン酸、4−アミノメチルピペリジン等が例示でき、パラジウムに起因する未エッチング箇所の残存を効果的に抑制するという観点から、N−ピペリジンエタノール、4−アミノピペリジン、4−アミノメチルピペリジンが好ましい。
【0035】
本発明のエッチング液には、サイドエッチングをより効果的に抑制し、かつ銅配線の直線性及びエッチファクタを向上させるために、アミド化合物を配合してもよい。同様の観点から、前記アミド化合物を配合する場合、エッチング液中のアミド化合物の濃度は、0.01〜20g/Lが好ましく、0.05〜10g/Lがより好ましく、0.1〜5g/Lが更に好ましい。なお、エッチファクタとは、銅配線の厚み(高さ)をT、銅配線の頂部の幅をW1、銅配線の底部の幅をW2とした場合、2T/(W2−W1)で算出される値をいう。
【0036】
前記アミド化合物としては、N−メチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン化合物や、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−ビニルホルムアミド等のホルムアミド化合物、あるいは、1−メチル尿素、1,1−ジメチル尿素、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピペリドン、グルタルイミド、2−オキソヘキサエチレンイミン等が例示できる。なかでも、エッチファクタをより向上させるには、ピロリドン化合物、ホルムアミド化合物が好ましい。
【0037】
本発明のエッチング液には、上述した成分以外にも、本発明の効果を妨げない程度に他の成分を添加してもよい。例えば、成分安定剤、消泡剤などを添加してもよい。前記他の成分を添加する場合、その濃度は0.001〜5g/L程度である。
【0038】
上記エッチング液は、上記の各成分を水に溶解させることにより、容易に調製することができる。上記水としては、イオン性物質や不純物を除去した水が好ましく、例えばイオン交換水、純水、超純水などが好ましい。
【0039】
上記エッチング液は、各成分を使用時に所定の濃度になるように配合してもよく、濃縮液を調製しておき使用直前に希釈して使用してもよい。上記エッチング液の使用方法は、特に限定されないが、サイドエッチングを効果的に抑制するには、後述するようにスプレーを用いてエッチングすることが好ましい。また、使用時のエッチング液の温度は、特に制限はないが、生産性を高く維持した上で、サイドエッチングを効果的に抑制するには20〜55℃で使用することが好ましい。
【0040】
本発明の補給液は、本発明のエッチング液を連続又は繰り返し使用する際に、前記エッチング液に添加する補給液であって、酸と、アゾール化合物と、脂環式アミン化合物とを含む水溶液である。前記補給液中の各成分は、上述した本発明のエッチング液に配合できる成分と同様である。前記補給液を添加することにより、前記エッチング液の各成分比が適正に保たれるため、上述した本発明のエッチング液の効果を安定して維持できる。なお、本発明の補給液には、更に塩化第二銅などの第二銅イオン源が第二銅イオン濃度で14g/Lの濃度を超えない範囲で含まれていてもよい。また、本発明の補給液には、前記成分以外に、添加するエッチング液に含まれている成分が配合されていてもよい。
【0041】
前記補給液中の各成分の濃度は、添加するエッチング液の各成分の濃度に応じて適宜設定されるが、上述した本発明のエッチング液の効果を安定して維持するという観点から、酸の濃度が7〜360g/L、アゾール化合物の濃度が0.1〜50g/L、脂環式アミン化合物の濃度が0.01〜10g/Lであることが好ましい。
【0042】
本発明の銅配線の形成方法は、銅層のエッチングレジストで被覆されていない部分をエッチングする銅配線の形成方法において、上述した本発明のエッチング液を用いてエッチングすることを特徴とする。これにより、上述したように、サイドエッチングを抑制し、かつ銅配線の直線性を向上させることができる。また、無電解銅めっき層を含む銅層のような、除去される銅層がパラジウムを含む場合でも、未エッチング箇所の残存を抑制することができる。
【0043】
本発明の銅配線の形成方法では、上記銅層のエッチングレジストで被覆されていない部分に、上記エッチング液をスプレーにより噴霧することが好ましい。サイドエッチングを効果的に抑制できるからである。スプレーする際、ノズルは特に限定されず、扇形ノズルや充円錐ノズル等が使用できるが、特に、扇形ノズルを用いると、エッチング液が被エッチング材表面を一定方向に流れるように噴霧できるため、銅配線間の中央付近のエッチング液中の第一銅イオン濃度よりも、銅配線の側面付近のエッチング液中の第一銅イオン濃度を高くできる。その結果、銅配線間においては保護皮膜が形成されずにエッチングが進む一方、銅配線の側面付近では保護皮膜が形成されてエッチングが抑制されることになる。よって、エッチングレジストの直下では、常にエッチングが抑制されており、サイドエッチングを確実に防止できる。なお、扇形ノズルについては、例えば、特開2004−55711号公報、特開2004−19002号公報、特開2002−359452号公報、特開平7−273153号公報などに記載されたものが使用できる。
【0044】
スプレーでエッチングする場合、スプレー圧は、0.04MPa以上が好ましく、0.08MPa以上がより好ましい。スプレー圧が0.04MPa以上であれば、保護皮膜を適切な厚みで銅配線の側面に形成できる。これにより、サイドエッチングを効果的に防止できる上、未エッチング箇所の残存を抑制できる。なお、上記スプレー圧は、エッチングレジストの破損防止の観点から0.30MPa以下が好ましい。
【実施例】
【0045】
次に、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0046】
表1〜3に示す組成の各エッチング液を調製し、後述する条件でエッチングを行い、後述する評価方法により各項目について評価した。なお、表1〜3に示す組成の各エッチング液において、残部はイオン交換水である。また、表1〜3に示す塩酸の濃度は、塩化水素としての濃度である。
【0047】
(使用した試験基板)
厚み3μmの銅箔(三井金属鉱業社製、商品名:Micro Thin EX)を積層した銅張積層板を用意し、前記銅箔をパラジウム触媒含有処理液(奥野製薬社製、商品名:アドカッパーシリーズ)で処理した後、無電解銅めっき液(奥野製薬社製、商品名:アドカッパーシリーズ)を用いて、厚み0.3μmの無電解銅めっき膜を形成した。次いで、電解銅めっき液(奥野製薬社製、商品名:トップルチナSF)を用いて、前記無電解銅めっき膜上に厚み15μmの電解銅めっき膜を形成した。得られた電解銅めっき膜上に、ドライフィルムレジスト(旭化成エレクトロニクス社製、商品名:SUNFORT SPG-102)を用いて、厚み10μmのエッチングレジストパターンを形成した。この際、エッチングレジストパターンは、ライン/スペース(L/S)=25μm/25μmのレジストパターンと、L/S=50μm/150μmのレジストパターンとが混在したパターンとした。
【0048】
(エッチング条件)
エッチングは、扇形ノズル(いけうち社製、商品名:ISVV9020)を使用して、スプレー圧0.12MPa、処理温度40℃の条件で行った。処理時間は、各エッチング液について、L/S=25μm/25μmのレジストパターン領域におけるエッチング後の銅配線の底部幅が、22〜26μmの範囲内となるように調整した。エッチング後、水洗、乾燥を行って、以下に示す評価を行った。
【0049】
(走査型電子顕微鏡(SEM)による画像計測)
エッチング処理した各基板の一部を切断し、これを冷感埋め込み樹脂に埋め込み、銅配線の断面を観察できるように研磨加工を行った。そして、SEM画像の画像計測により、銅配線の頂部幅、及び銅配線の底部幅を測定した。また、L/S=25μm/25μmのレジストパターン領域におけるサイドエッチング量及びエッチファクタを以下の式により算出した。
サイドエッチング量(μm)={25(μm)−銅配線の頂部幅(μm)}/2
エッチファクタ=2×18.3(μm)/{銅配線の底部幅(μm)−銅配線の頂部幅(μm)}
【0050】
(光学顕微鏡による画像計測)
エッチング処理した各基板を3重量%水酸化ナトリウム水溶液に60秒間浸漬し、エッチングレジストを除去した。その後、塩酸(塩化水素濃度:7重量%)を用い、扇形ノズル(いけうち社製、商品名:VP9020)で、スプレー圧0.12MPa、処理温度30℃、処理時間30秒で保護皮膜を除去した。そして、試験基板上面から光学顕微鏡により、L/S=50μm/150μmのレジストパターン領域におけるエッチング後の銅配線頂部の画像を撮影し、該銅配線頂部の配線幅を画像計測した。この計測の際、配線幅を5μm間隔で10点測定し、その標準偏差をパターン直線性(μm)とした。更に、光学顕微鏡観察により未エッチング箇所の有無を確認した。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
表1及び2に示すように、本発明の実施例によれば、いずれの評価項目についても良好な結果が得られた。一方、表3に示すように、比較例については、一部の評価項目で実施例に比べ劣る結果が得られた。この結果から、本発明によれば、サイドエッチングを抑制し、かつ銅配線の直線性を向上させた上、未エッチング箇所の残存を抑制できることが分かった。
【符号の説明】
【0055】
1 銅配線
2 エッチングレジスト
3 保護皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅のエッチング液であって、
酸と、第二銅イオンと、アゾール化合物と、脂環式アミン化合物とを含む水溶液である、エッチング液。
【請求項2】
前記酸が、塩酸である、請求項1に記載のエッチング液。
【請求項3】
前記脂環式アミン化合物の濃度が、0.01〜10g/Lである、請求項1又は2に記載のエッチング液。
【請求項4】
前記脂環式アミン化合物が、ピロリジン化合物、ピペリジン化合物及びピペラジン化合物から選択される1種以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエッチング液。
【請求項5】
前記ピペラジン化合物が、下記式(I)に示す化合物である、請求項4に記載のエッチング液。
【化1】

[式中、R及びRは、それぞれ独立に水素又は炭素数1〜6の炭化水素誘導基を示す。ただし、R及びRの少なくとも一方は炭素数1〜6の炭化水素誘導基を示す。]
【請求項6】
前記式(I)において、R及びRの少なくとも一方がアミノ基を有する、請求項5に記載のエッチング液。
【請求項7】
前記アゾール化合物が、テトラゾール化合物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のエッチング液。
【請求項8】
前記酸の濃度が、7〜180g/Lであり、
前記第二銅イオンの濃度が、4〜155g/Lであり、
前記アゾール化合物の濃度が、0.1〜50g/Lである、請求項1〜7のいずれか1項に記載のエッチング液。
【請求項9】
アミド化合物を更に含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のエッチング液。
【請求項10】
前記アミド化合物の濃度が、0.01〜20g/Lである、請求項9に記載のエッチング液。
【請求項11】
前記アミド化合物が、ピロリドン化合物及びホルムアミド化合物から選択される1種以上である、請求項9又は10に記載のエッチング液。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のエッチング液を連続又は繰り返し使用する際に、前記エッチング液に添加する補給液であって、
酸と、アゾール化合物と、脂環式アミン化合物とを含む水溶液である、補給液。
【請求項13】
銅層のエッチングレジストで被覆されていない部分をエッチングする銅配線の形成方法であって、
請求項1〜11のいずれか1項に記載のエッチング液を用いてエッチングする、銅配線の形成方法。
【請求項14】
前記銅層のエッチングレジストで被覆されていない部分が、パラジウムを含む、請求項13に記載の銅配線の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−104104(P2013−104104A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248884(P2011−248884)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000114488)メック株式会社 (49)
【Fターム(参考)】