説明

エッチング液再生装置

【課題】エッチング液から高い除去率でケイ素化合物を除去することができ、エッチング液を処分することなく再利用する。
【解決手段】取り出されたエッチング液を霧化する霧化手段11と、霧化によって析出および/または凝集されるエッチング液中のケイ素化合物を、エッチング液から分離除去して再生エッチング液を得る分離手段12を備えている。また、エッチング液の温度調整を行う温度調整手段23を備えて、エッチング液が霧化手段11によって霧化されたときのケイ素化合物の析出および/または凝集を制御して分離手段12によるケイ素化合物のエッチング液からの分離除去が制御された残留濃度に調整し、ケイ素化合物濃度を任意に調整し得るようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエットエッチング処理を行った後のエッチング液を再生するためのエッチング液再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエットエッチング処理は、エッチング液の化学的な溶解作用を利用して、基板上(表面)に形成されている膜を除去する技術であり、各種の技術分野で利用されている。特に、半導体工学の分野では、半導体ウエハ上に形成されている酸化膜などの薄膜に、フォトレジストでパターンを形成した後にエッチング液によって薄膜を選択的に除去している。
例えば、窒化ケイ素(Si)膜と酸化ケイ素(SiO)膜が形成されているシリコンウエハから窒化ケイ素膜を除去する場合においては、80〜175℃に加熱されたリン酸水溶液(HPO+HO)がエッチング液として用いられている。
【0003】
図1は、特許文献1に記載されているエッチング処理装置を示す説明図である。
エッチング処理装置100の基本的な構造は、図1に示されているように、エッチング処理槽1内のエッチング液を循環させるように構成されている。
エッチング処理槽1は、複数枚のシリコンウエハWを垂直並列状に収容し得る容積を有するとともに、側部にヒータ1Hを備えている内槽1Aと、この内槽1Aの外周を包囲するように形成されているオーバーフロー槽1Bとからなる内外二槽構造を形成されている。そして、内槽1Aとオーバーフロー槽1Bの底部が循環ポンプ2、濾過フィルタ3、ラインヒータ4を有する循環経路5によって接続されている。
【0004】
エッチング処理槽1内のエッチング液は、ヒータ1Hによって80〜175°Cに加熱コントロールされており、オーバーフロー槽1Bに溢れたエッチング液が循環ポンプ2によって圧送されるとともに、濾過フィルタ3によってゴミなどの異物の除去がなされたた後、ラインヒータ4によって前記の温度に再加熱されて内槽1Aに戻される。
エッチング処理槽1内に浸漬されたシリコンウエハWは、前記したように温度コントロールがなされ、かつ、異物の除去がなされたエッチング液によってエッチング処理される。これにより、窒化ケイ素膜および酸化ケイ素膜が形成されたシリコンウエハW上から窒化ケイ素膜が選択的に除去されるエッチング処理が行われる。
【0005】
このようにしてエッチング処理を繰り返すと、窒化ケイ素膜のケイ素化合物がエッチング液中に生成し徐々に蓄積増大するため、エッチング液中のケイ素化合物濃度が高くなる。これによって、ケイ素化合物がエッチング液中に析出して異物となり、循環経路5中の濾過フィルタ3の目詰まりを引き起こし、また、エッチング液中のケイ素化合物濃度の変動により、処理ロット毎に窒化ケイ素膜と酸化ケイ素膜それぞれの単位時間あたりのエッチング量の比で表されるエッチング選択比が変わってしまい、複数処理ロットにわたって一定の選択比でエッチング処理を行うことができない、という問題が生じる。
【0006】
そこで、従来では、この問題を解消するために、図1に示すように、前記した循環経路5の分岐させた別の循環経路にエッチング液中に溶け込んでいる(生成される)ケイ素化合物を強制的に析出させて分離除去するための除去装置6を接続して備えている。これによると、エッチング処理槽1におけるエッチング処理中に取り出されて循環されるエッチング液のケイ素化合物濃度が増大するのをある程度抑えることができる。
【特許文献1】特許第3842657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記した従来技術の除去装置6では、ケイ素化合物を高い除去率で除去することができないため、エッチング液中のケイ素化合物の増大をある程度抑えることは可能であるが、大量のシリコンウエハWをエッチング処理する過程では、徐々にエッチング液中にケイ素化合物が蓄積されることは避けられない。
したがって、従来技術によっても、最終的には、定期的にエッチング液を新しいエッチング液に交換せざるを得なくなる。そうすると、新しいエッチング液を用いることによる処理コストの増大が問題になるとともに、産業廃棄物となるエッチング液の処分が問題になる。
【0008】
また、他の従来技術として、エッチング液の再生プロセスにおいて、エッチング液にフッ化水素酸や超純水を混入する工程を含むものが提案されている。
しかしながら、この他の従来技術では、フッ化水素酸が残留すると酸化ケイ素膜のエッチングを促すため、その除去が非常に重要であるが、エッチング液からフッ化水素酸の除去を行い、どの程度除去されているかを確認するのは極めて困難な作業になる。
また、超純水は窒化ケイ素膜のエッチング処理工程に必須の成分ではあるが、混入する超純水の量が多くなるため、エッチング液として再利用する前に、過剰の超純水を除去することが必要になり、その際のエネルギーロスが問題になる。
【0009】
一方、エッチング液を新しいリン酸水溶液に交換した直後には、新しいリン酸水溶液によって単位時間あたりの酸化ケイ素膜のエッチング量が大きくなるため、所望のエッチング選択比(ケイ素化合物濃度)でエッチング処理を行うことができない場合がある。
これを避けるために、従来では、窒化ケイ素膜の生成されているダミーウエハをエッチング液に浸漬して故意にエッチング液中のケイ素化合物濃度を高くするダミーエッチングが行われることがある。これによると、ダミーエッチングによる処理時間が長引き、生産性の高いエッチング処理を行うことができない問題がある。
【0010】
ダミーエッチングを行わないようにするためには、ケイ素化合物濃度を計測・調整しながら、エッチング液を一部排出して、新規エッチング液を所定量補充することも考えられているが(例えば、特開2001−23952号公報参照)、これによっても、新規エッチング液追加による処理コストアップと産業廃棄物となるエッチング液の処分という根本的な問題が解決されておらず、自然環境を悪化させないエッチング液の処理を行いながら、エッチング液のケイ素化合物濃度を調整することが望まれている。
【0011】
本発明はこのような問題に対処することを課題とするものであって、エッチング液から規定の高い除去率でケイ素化合物を除去することができ、簡易にエッチング液を処分することなく再利用すること、また、エッチング液中のケイ素化合物を高い除去率で除去した再生エッチング液を得てこれを循環することで、エッチング処理装置の停止時間を極力少なくし、生産性の高いエッチング処理を実現するとともに、大量の処理時にも一定のエッチング選択比での均一な処理を実現すること、さらに、自然環境を悪化させないエッチング液の再生処理を行いながら、エッチング液のケイ素化合物濃度を任意に調整できること、などが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するために、本発明によるエッチング液再生装置は、以下の各独立請求項に係る構成を少なくとも具備するものである。
エッチング処理装置から取り出されたエッチング液を霧化する霧化手段と、前記霧化手段による霧化によって前記エッチング液中に析出および/または凝集されるケイ素化合物を、該エッチング液から分離して再生エッチング液を得る分離手段とを備えて構成されていることを特徴とする。
また、エッチング処理装置から取り出されたエッチング液の温度調整を行う温度調整手段と、前記温度調整手段によって温度調整された前記エッチング液を霧化する霧化手段と、前記霧化手段による霧化によって前記エッチング液中に析出および/または凝集されるケイ素化合物を、該エッチング液から分離して再生エッチング液を得る分離手段とを備えて構成されていることを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、エッチング処理装置から取り出されたエッチング液が、霧化手段によって霧化されることで、エッチング液中に溶け込んでいる(生成されている)ケイ素化合物が析出および/または凝集される。これにより、分離手段によるケイ素化合物の分離除去を高い除去率で行うことが期待できる。
また、エッチング処理装置から取り出されたエッチング液の温度を、温度調整手段によって調整した後に、霧化手段によるエッチング液の霧化に移行させることで、霧化によるケイ素化合物の析出および/凝集を制御することができる。これにより、分離手段によるケイ素化合物のエッチング液からの分離除去が制御された残留濃度に調整することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエッチング液再生装置は、以上のように構成されていることで、エッチング処理装置から取り出されたエッチング液から規定の除去率でケイ素化合物を分離除去することができる。これにより、簡易にエッチング液を処分することなく、エッチング液を再生しながら再利用することができる。
また、エッチング液中のケイ素化合物を高い除去率で除去した再生エッチング液を得てこれを循環することで、エッチング処理装置の停止時間を極力少なくし、生産性の高いエッチング処理を実現することができる。また、大量のエッチング処理時においても一定のエッチング選択比での均一な処理を実現することができる。
さらに、自然環境を悪化させないエッチング液の再生処理を行いながら、エッチング液のケイ素化合物濃度を任意に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、適宜図面を参照して説明する。
本発明のエッチング液再生装置の使用としては、前記の背景技術の欄において詳述の図1に示すエッチング処理装置100のエッチング処理槽1、または、循環経路5の途中などからエッチング液の一部を直接取り出しながらその再生処理を行う使用法、あるいは、エッチング処理装置から一旦再生処理槽などに取り出し貯留されたエッチング液を、再生処理層から取り出してその再生処理を行う使用法などを挙げることができ、本実施形態では、エッチング処理槽1、または、循環経路5の途中部位から分岐させるなどによってエッチング液の一部をエッチング処理装置100から直接取り出しながら再生処理を行う使用法を一例にあげて説明する。本実施形態では、図1を適宜参照しながら説明する。
【0016】
≪第1の実施形態に係るエッチング液再生装置の構成≫
図2は、本発明の第1の実施形態に係るエッチング液再生装置を示す説明図である。
エッチング液再生装置10は、図1に示すエッチング処理装置100のエッチング処理槽1、または、循環経路5の途中などから取り出されるエッチング液を霧化する霧化手段11と、この霧化手段11による霧化によって析出および/または凝集されるエッチング液中のケイ素化合物を、エッチング液から分離して再生エッチング液を得る分離手段12とを備えて構成されている。
【0017】
≪霧化手段の構成≫
霧化手段11は、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液に対して霧化処理を行うもので、図2に示すように、霧化槽11Aと、この霧化槽11A内に配備される混合霧化部11Bと、この混合霧化部11Bに設定流量で気体を供給する気体供給部11Cとを備えている。
【0018】
混合霧化部11Bは、図2に示すような外部混合方式や、図示省略の内部混合方式などの各種構造の噴霧ノズルによって構成されている。そして、この混合霧化部11Bには、エッチング処理装置100からの液取出し経路13と、気体供給部11Cからの気体供給経路14とがそれぞれ接続されており、気体供給部11Cから設定流量で供給される気体をエッチング液に混合させて、霧化したエッチング液を噴霧するものである。
ここで、供給気体の種類としては特に限定されないが、乾燥したドライガスや除塵したクリーンガスが適し、窒素N、酸素Oなどが適する。
そして、混合霧化部11Bによる霧化の状態(微細化の状態)は、気体供給部11Cからの気体の供給流量とエッチング液の供給流量によって設定することができる。気体の供給流量は、気体供給経路14に備えられている開閉バルブ15の開閉調整などによって設定することができ、エッチング液の供給流量は、液取出し経路13に備えられている供給ポンプ16の吐出量などによって設定することができる。
【0019】
なお、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液の混合霧化部11Bへの供給は、供給ポンプ16を介して行われる場合と、供給ポンプ16を介さずに行われる場合とがある。そのために、本実施形態では、図2に示すように、液取出し経路13を二経路とし、その一方の経路13a側に供給ポンプ16と切替えバルブ17を備え、もう一方の経路13b側には切替えバルブ18のみを備えている。
つまり、エッチング処理装置100からのエッチング液の取り出しが、循環ポンプ2近傍の循環経路5から分岐させて行われる場合は、循環ポンプ2の圧送力をもって所定の供給流量にてエッチング液を混合霧化部11Bに供給することができるために、供給ポンプ16を通さずに行うことができる。他方、エッチング処理槽1(オーバーフロー槽1Bの底部など)に接続されて行われる場合には、エッチング液の混合霧化部11Bへの所定の供給流量を得るために供給ポンプ16を通して行う必要がある。
【0020】
≪分離手段の構成≫
分離手段12は、フィルタなどからなる分離器12Aと、分離器12Aを通過してきたエッチング液を一時貯留するための貯留槽12Bとを備えている。
これにより、霧化槽11A内のエッチング液が、霧化槽11Aと分離器12Aとを連絡する連絡経路19の圧送ポンプ20で分離器12Aに送られ、霧化手段11による析出および/または凝集によって結晶が肥大化されたケイ素化合物が分離器12Aによってエッチング液中から分離除去される。ケイ素化合物が取り除かれて、ケイ素化合物濃度の低い再生エッチング液(リン酸水溶液)は、貯留槽12Bに貯留(収集)される。そして、貯留槽12Bに貯留された再生エッチング液は、貯留槽12Bとエッチング処理装置100(エッチング処理槽1)とを連絡する液戻し経路21の液戻しポンプ22によってエッチング処理装置100に戻される。
【0021】
[作用説明]
このように構成されている第1の実施形態に係るエッチング液再生装置10によると、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液中に溶け込んでいる大半のケイ素化合物を、霧化手段11の混合霧化部11Bにおける気体との混合による霧化によって効率的に肥大化析出および/または凝集されることができる。これにより、分離手段12の分離器12Aによるケイ素化合物(成分結晶)のエッチング液中からの分離除去を高い除去率で行うことができる。
【0022】
実施例1
エッチング液としてリン酸水溶液(HPO+HO)を用い、エッチング液の霧化手段11の混合霧化部11Bへの供給流量を200cc/minとし、霧化手段12の気体供給部12Aでは窒素Nを供給気体として、混合霧化部11Bへの供給流量を60Nl/minとした場合、エッチング液の再生前と再生後におけるエッチング液中のケイ素化合物濃度を調べる再生処理実験を行った。その処理結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
≪第2の実施形態に係るエッチング液再生装置の構成≫
図3は、本発明の第2の実施形態に係るエッチング液再生装置を示す説明図である。
この第2の実施形態では、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液の温度調節を行う温度調整手段23を備えている。他の構成要素においては、前記の第1の実施形態と基本的に同じことから、同じ構成要素に同じ符号を付することで重複説明は省略する。
すなわち、図3に示すように、エッチング処理装置100と霧化手段11との間に温度調節手段23を備えて、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液を所定の温度に調節した後に、霧化手段11へと供給されるようにしている。
【0025】
≪温調調整手段の構成≫
温度調整手段23は、図3に示すように、エッチング処理装置100から液取出し経路13によって取り出されたエッチング液が一旦貯められる温調槽23Aと、この温調槽23Aの底部から該温調槽23A内にエッチング液が戻されるように配管される温調経路24に備えられている温調・循環ポンプ23Bと、同じく温調経路24に備えられる加熱と冷却との双方の機能を兼ね備えている温度調整器23Cとを備えている。
これにより、温調槽23Aに貯められたエッチング液が、温調・循環ポンプ23Bによって温度調整器23Cに送られ、温度調整器23Cを経由して、温調槽23Aに戻される循環が繰り返されることで、エッチング液の温度が、霧化手段11の混合霧化部11Bにおける析出および/または凝集を促進させる温度に調整されるようにしている。
【0026】
また、温調経路24における温調・循環ポンプ23Bと温度調整器23Cとの間から分岐されて霧化手段11の混合霧化部11Bにわたり接続される液供給経路25が配管されており、この液供給経路25の分岐部と温度調整器23Cとの間の温調経路24、液供給経路25にはそれぞれ切替えバルブ26,27が備えられている。
これにより、切替えバルブ26を開き、切替えバルブ27を閉じた状態で温調槽21Aに貯められたエッチング液が温調・循環ポンプ23Bによって温度調整器23Cに送られ、温度調整器23Cを経由して、温調槽23Aに戻される温調循環が繰り返される。そして、切替えバルブ27を開き、切替えバルブ26を閉じることで、霧化手段11における析出および/または凝集に適した一定の温度に調整された温調槽23A内のエッチング液が温調・循環ポンプ23Bによって霧化手段11の混合霧化部11Bに所定の供給流量にて送られるようにしている。
【0027】
[作用説明]
このように構成されている第2の実施形態に係るエッチング液再生装置10−1によると、温度調整手段23と霧化手段11を効果的に組み合わせて、一定の温度状態で霧化処理を行うことで、ケイ素化合物の過飽和成分の大半をより一層効果的に肥大化析出および/または凝集させることができる。これにより、分離手段12の分離器12Aによるケイ素化合物(成分結晶)のエッチング液からの分離除去を制御された残留濃度に調整することができる。
【0028】
実施例2
エッチング液としてリン酸水溶液(HPO+HO)を用い、エッチング液を温度調整手段11で90°C〜30°Cの範囲で温度調整(温調)した後、霧化手段11の混合霧化部11Bへの供給流量を200cc/minとし、霧化手段12の気体供給部12Aでは窒素Nを供給気体として、混合霧化部11Bへの供給流量を60Nl/minとした場合、エッチング液の再生前と再生後におけるエッチング液中のケイ素化合物濃度を調べる再生処理実験を行った。その処理結果を表2に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
≪第3の実施形態に係るエッチング液再生装置の構成≫
図4は、第3の実施形態に係るエッチング再生装置を示す説明図である。
この第3の実施形態では、図4に示すように、濃度制御部28を備えている。他の構成要素においては、前記の第2の実施形態と基本的に同じことから、同じ構成要素に同じ符号を付することで重複説明は省略する。
すなわち、図4に示すように、濃度制御部28は、設定入力によって、温度調整器23C、温調・循環ポンプ23B、あるいは、気体供給部11Cの供給速度を調整する気体供給調整部29を選択的に制御できるようにしている。
【0031】
[作用説明]
このように構成されている第3の実施形態に係るエッチング液再生装置10−2によると、例えば、温度調整手段23の温度調整器23Cの温度の制御、または、温調・循環ポンプ23B、による霧化手段11の混合霧化部11Bへのエッチング液の供給流量の制御、あるいは、気体供給調整部29による混合霧化部11Bへの気体の供給流量の制御をすることで、霧化手段12の混合霧化部11Bにおけるエッチング液の霧化状態を制御することができる。そして、これらの一方または両方を制御することで、再生エッチング液のケイ素化合物濃度を制御することができる。
つまり、濃度制御部20への設定入力によって、再生エッチング液のケイ素化合物濃度を任意に制御することが可能になる。このケイ素化合物濃度の制御によって、新規なエッチング液の追加やエッチング液の一部廃棄を行うことなく、任意にケイ素化合物濃度を調整することができる。例えば、シリコンウエハWのエッチング処理を行う各処理業者のエッチング選択比に応じたそれぞれのケイ素化合物濃度に調整することが可能となる。
【0032】
≪第4の実施形態に係るエッチング液再生装置の構成≫
図5は、第4の実施形態に係るエッチング再生装置を示す説明図である。
この第4の実施形態では、図5に示すように、分離手段12によるエッチング液からのケイ素化合物の分離を数回繰り返すようにしている。他の構成要素においては、前記の第2の実施形態と基本的に同じことから、同じ構成要素に同じ符号を付することで重複説明は省略する。
すなわち、図5に示すように、霧化手段11の霧化槽11Aと分離手段12の分離器11Aとを接続する連絡経路19の途中部位と、分離手段12の貯留槽12Bからエッチング処理装置への液戻し経路21の途中部位とを分離循環経路30によって接続している。
【0033】
分離循環経路30は、連絡経路19における圧送ポンプ20と分離手段12の分離器12Aとの間においてその一端側が分岐接続されており、他端側が液戻し経路21における液戻しポンプ22よりエッチング処理装置100側において分岐接続されている。
そして、図5に示すように、連絡経路19からの分離循環経路30の分岐接続部近傍における両経路19,30と、液戻し経路21からの分離循環経路30の分岐接続部近傍における両経路21,30とにはそれぞれ切替えバルブ31〜34が備えられている。
これにより、切替えバルブ31,33を閉じ、切替えバルブ32,34を開いた状態で、液戻しポンプ22を作動させることで、分離器12Aを通して貯留槽12Bに貯留されているエッチング液が、分離循環経路30を通って再度分離器12Aを送られて貯留槽12Bに戻されることが繰り返されるようにしている。つまり、分離器12Aによるエッチング液からのケイ素化合物の分離除去が繰り返されるようにしている。
【0034】
[作用説明]
このように構成されている第4の実施形態に係るエッチング液再生装置10−3によると、前記した各実施形態のように、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液を、霧化手段11の混合霧化部11Bによる霧化によって、該エッチング液中に溶け込んでいる大半のケイ素化合物を析出および/または凝集させ、析出されたケイ素化合物を分離手段12の分離器12Aによってエッチング液から分離除去する再生処理がなされて分離手段12の貯留槽12Bに貯留されているエッチング液を、分離循環経路30を通して循環させることを繰り返すことで、析出および/または凝集されたケイ素化合物をエッチング液から分離除去することを繰り返すことができる。
これにより、霧化手段11によってエッチング液中の析出および/または凝集されたケイ素化合物の除去率を100%に近づけることが可能となる。
【0035】
≪第5の実施形態に係るエッチング再生装置の構成≫
図6は、第5実施形態に係るエッチング再生装置を示す説明図である。
この第5の実施形態では、霧化手段11―1として、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液に圧力を付与することで、エッチング液を霧化する圧縮霧化部11−1を備えている。他の構成要素においては、前記の第2の実施形態と基本的に同じことから、同じ構成要素に同じ符号を付することで重複説明は省略する。
すなわち、図6に示すように、霧化槽11−1Aと、この霧化槽11−1A内に配備され、エッチング液が送り込まれる圧縮霧化部11−1Bと、この混合霧化部11−1Bに設定された圧力を掛けてエッチング液を供給する液加圧ポンプ11−1Cとを備えている。
【0036】
圧縮霧化部11−1Bは、各種構造のスプレーノズルあるいはオリフィスなどによって構成されている。そして、この圧縮霧化部11−1Bには、液加圧ポンプ11−1Cと切替えバルブ27とを備えている温調経路24から分岐させた供給経路25が接続される。
これにより、温度調整手段23により温調された後に、液加圧ポンプ11−1Cによって圧力が付与されて圧縮霧化部11−1Bに送り込まれたエッチング液は、該圧縮霧化部11−1Bによって霧化される。
【0037】
[作用説明]
このように構成されている第5の実施形態に係るエッチング再生装置10−4によると、温度調整手段23と霧化手段11−1を効果的に組み合わせて、一定の温度状態で霧化処理を行うことで、ケイ素化合物の過飽和成分の大半をより一層効果的に肥大化析出および/または凝集させることができる。これにより、分離手段12の分離器12Aによるケイ素化合物(成分結晶)のエッチング液からの分離除去を制御された残留濃度に調整することができる。
【0038】
≪第6の実施形態に係るエッチング再生装置の構成≫
図7は、第6の実施形態に係るエッチング再生装置の霧化手段を示す説明図である。ここでは、図3を適宜参照しながら説明する。
この第5の実施形態では、霧化手段11―2として、エッチング処理装置100から取り出されたエッチング液に超音波振動を付与することで、エッチング液を霧化する超音波霧化部(12−2B〜12−2C)を備えている。他の構成要素においては、前記の第2の実施形態と基本的に同じことから、同じ構成要素に同じ符号を付することで重複説明は省略する。
すなわち、霧化手段11−2は、図7に示すように、霧化槽12−2Aに、超音波振動子12−2Bと、この超音波振動子12−2Bを駆動させる駆動源12−2Cおよびエッチング液供給部12−2Dとを備えて構成されている。
【0039】
[作用説明]
このように構成されている第6の実施形態に係るエッチング液再生装置10−5によると、図3に示す温度調整手段24から供給されたエッチング液がエッチング液供給部12−2Dに供給されると、そのエッチング液に超音波振動子12−2Bによって超音波振動が付与されることで、エッチング液が霧化される。霧化されたエッチング液は霧化槽12−2Aに一旦貯留されて、図3に示すポンプ20によって分離手段12に送られる。
つまり、超音波振動を利用してエッチング液の微細粒子の霧化を実現することができる。これにより、効率よくエッチング液中に溶け込んでいるケイ素化合物を効率よく析出および/または凝集させることができる。また、駆動源12−2Cの駆動周波数を適宜に変更することで、最適な霧化状態を駆動周波数の調整によって得ることができる。
また、霧化手段11−2の霧化状態は、霧の微細化を制御することを含み、前記の第2および第3の実施形態では、混合霧化部12Bに供給される気体の供給流量によって制御することができるが、第6の実施形態では、超音波振動子12−2Bの振動周波数とその印加エネルギーによって制御することができる。
【0040】
以上のように構成されている各実施形態に係る本発明のエッチング液再生装置によると、エッチング処理装置100の循環経路5から分岐させて、該循環経路5にエッチング液再生装置10の液取出し経路13を接続して、エッチング液再生装置10をエッチング処理装置100の循環経路5の途中に直接組み込んだ場合には、エッチング処理によってエッチング液中に溶け込んでいるケイ素化合物を、エッチング処理中に容易、かつ、高い精度でリン酸水溶液から除去することができる。
したがって、図1に示したようなエッチング処理装置100に適用した場合には、濾過フィルタ3の目詰まりが無く、大量の継続処理に対してもエッチング処理装置を連続運転させることができるので、エッチング処理装置100の作業効率を向上させることができる。
【0041】
また、エッチング処理装置100の循環経路5に組み込むことで、エッチング処理時におけるリン酸水溶液のケイ素化合物濃度を一定に維持することができ、一定のエッチング選択比で大量のロットを連続的にエッチング処理することができる。したがって、均一性の高いエッチング処理を多数ロットに亘って継続することが可能になる。
【0042】
更に、エッチング処理中に高純度のリン酸水溶液への再生を行うことができるので、新しいリン酸水溶液への交換作業を少なくし、エッチング処理装置100の停止時間を減らすことができ、生産性の高いエッチング処理を実現することができる。特に、エッチング液の再利用によって、エッチング液の廃棄を減らすため、自然環境保護の観点からも好ましく、新たなエッチング液への交換が少ないので経済的にも有利な作業が可能になる。
【0043】
また、エッチング液をバッチ処理で再生処理する場合には、濃度制御部28による制御によって、ケイ素化合物濃度を最適化した再生エッチング液を生成することができる。これによって、ダミーエッチングを行わなくても所望のエッチング選択比で当初からのエッチング処理を行うことができることになり、エッチング処理作業の効率化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】従来技術のケイ素化合物の除去装置を備えているエッチング処理装置を示す説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るエッチング液再生装置を示す説明図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るエッチング液再生装置を示す説明図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るエッチング液再生装置を示す説明図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係るエッチング液再生装置を示す説明図である。
【図6】本発明の第5の実施形態に係るエッチング液再生装置を示す説明図である。
【図7】本発明の第6の実施形態に係るエッチング液再生装置の霧化手段を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
10,10−1,10−2,10−3,10−4,10−5 エッチング液再生装置
11,11−1,11−2, 霧化手段
11A,11−1A,11−2A 霧化槽
11B 混合霧化部
11−1B 圧縮霧化部
11−2B 超音波振動子(超音波霧化部)
11−2C 駆動源(超音波霧化部)
11−2D エッチング液供給部(超音波霧化部)
12 分離手段
12A 分離器
12B 貯留槽
23 温度調整手段
28 濃度制御部
100 エッチング処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング処理装置から取り出されたエッチング液を霧化する霧化手段と、
前記霧化手段による霧化によって前記エッチング液中に析出および/または凝集されるケイ素化合物を、該エッチング液から分離して再生エッチング液を得る分離手段と、を備えて構成されていることを特徴とするエッチング液再生装置。
【請求項2】
エッチング処理装置から取り出されたエッチング液の温度調整を行う温度調整手段と、
前記温度調整手段によって温度調整された前記エッチング液を霧化する霧化手段と、
前記霧化手段による霧化によって前記エッチング液中に析出および/または凝集されるケイ素化合物を、該エッチング液から分離して再生エッチング液を得る分離手段と、を備えて構成されていることを特徴とするエッチング液再生装置。
【請求項3】
前記霧化手段は、設定流量で供給される気体を前記エッチング液に混合させて、該エッチング液を霧化する混合霧化部を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエッチング液再生装置。
【請求項4】
前記霧化手段は、前記エッチング液に超音波振動を付与することで、該エッチング液を霧化する超音波霧化部を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエッチング液再生装置。
【請求項5】
前記霧化手段は、前記エッチング液に圧力を付与することで、該エッチング液を霧化する圧縮霧化部を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエッチング液再生装置。
【請求項6】
前記再生エッチング液のケイ素化合物濃度を調整するための濃度制御部を備えていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のエッチング液再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−71296(P2009−71296A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210624(P2008−210624)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(592073938)株式会社ケミカルアートテクノロジー (4)
【Fターム(参考)】