説明

エネルギの流れの計算を備える多変数プロセス流体の流れの装置

プロセス流体の流れの装置(12)は、電源モジュール(24)、プロセス通信回路(20)、プロセッサ(26)及び測定回路(28)を含む。プロセス通信回路(20)は、電源モジュール(24)と、プロセッサ(26)とに結合される。測定回路(28)は、差圧、静圧及びプロセス流体温度の表示を得るために、複数のプロセス変数センサに動作可能に結合可能である。プロセッサ(26)は、プロセス流体の質量流量を演算し、静圧及びプロセス流体温度を用いて、プロセス流体に関連する単位質量値当たりのエネルギを得て、エネルギの流れの表示を提供するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
工業的な設定では、制御システムを用いて、工業及び化学プロセス等の在庫を監視して制御する。通常、制御システムは、工業用プロセスの主要な地点に分散されて、プロセス制御ループによって制御室内の制御回路に結合されたフィールド装置を用いて、これらの機能を実行する。用語「フィールド装置」は、工業用プロセスの測定、制御及び監視で用いられる、分散された制御又はプロセス監視システムで機能を実行する任意の装置を意味する。通常、フィールド装置は、長期間、たとえば数年にわたって屋外で動作するその能力によって特徴付けられる。このように、フィールド装置は、過酷で極端な温度及び極端な湿度を含む、多様な極端な気候で動作することが可能である。さらに、フィールド装置は、著しい振動、たとえば近傍の機械からの振動の存在下で機能することが可能である。さらに、フィールド装置は、電磁干渉の存在下でも動作することもできる。
【背景技術】
【0002】
フィールド装置の一例は、多変数のプロセス流体の流れの装置、たとえばModel 3051 SMV Multivariable Transmitterの商品名で、Chanhassen, MinnesotaのEmerson Process Managementより販売されているものである。多変数のプロセス流体の流れの装置は、液体及び気体用の差圧発生器を通して、質量流量を演算することができる。いくつかの流れの用途には、質量流量に加えて、またはそれに代えて、エネルギ流量を知ることが望ましい。特に、これらの要望は、天然ガス流及び、蒸気又は水流の領域で生じる。天然ガスについては、流体のエネルギ量、すなわち発熱量は、気体組成によって完全に特定され、天然ガスが完全に燃焼した場合に利用可能であるエネルギの量を表す。通常、そのような用途に望ましい単位は、Btu/単位時間、又はメガジュール/単位時間である。蒸気又は水流については(エネルギ収支の計算に有用である)、流体のエネルギ量、すなわちエンタルピは、蒸気又は水を、流れの圧力及び温度条件に持っていくために必要なエネルギの量を表す。エンタルピは普通、圧力及び温度条件の特定のセット、たとえば大気条件での水の融点を基準とする。通常、そのような用途のために望ましい単位は、やはりBtu/単位時間、又はメガジュール/単位時間である。
【発明の概要】
【0003】
プロセス流体の流れの装置は、電源モジュール、プロセス通信回路、プロセッサ及び測定回路を含む。プロセス通信回路は、電源モジュールと、プロセッサとに結合される。測定回路は、差圧、静圧及びプロセス流体温度の表示を得るために、複数のプロセス変数センサに動作可能に結合可能である。プロセッサは、プロセス流体の質量流量を演算し、静圧及びプロセス流体温度を用いて、プロセス流体に関連する単位質量値当たりのエネルギを得て、エネルギの流れの表示を提供するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】流れの装置の初期構築のために、コンピュータに結合されたプロセス流体の流れの装置の概略図である。
【図2】本発明の実施態様が実施可能である、プロセス流体の流れの装置のブロック図である。
【図3】本発明の実施態様のプロセス流体の流れの装置を動作させる方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
一般的に、本発明の実施形態は、単位質量当たりの汎用エネルギの関係を使用し、これを質量流量と組み合わせて、プロセス流体の流れの装置により汎用エネルギの流れの表示を提供することができる。エネルギの流れは、流れの情報が求められる多様な異なる流体に与えられることができる。
【0006】
天然ガス用途の発熱量は、Btu/標準立方フィート(あるいはBtu/lb)、又はメガジュール/通常立法メートル(あるいはメガジュール/kg)の単位で一定である。そのような用途でのエネルギ流量を演算するためには、質量流量に一定の発熱量を乗算することが必要とされる。この単純な乗算は、プロセス流体の流れの装置においては自明であり、今日の多変数の流れの装置では容易に達成されることができる。
【0007】
蒸気又は水の用途向けには、流体のエネルギ量、すなわちエンタルピは、流体の圧力及び温度両方の関数である。エネルギ流量を演算するためには、可変のエンタルピで質量流を乗算することが必要とされる。蒸気又は水のエンタルピを演算するための式は複雑であり、通常、比較的低電力のフィールド装置で使用できる演算能力に重い負担がかかる。そのため、エンタルピを近似させて、演算を単純化することが好ましい。このことは、二次元多項式近似を用いて、又はより好ましくは、二次元チェビシェフ多項式近似を用いて行うことができる。蒸気又は水のエネルギ流量の演算に依然として質量流量が必要とされるのは、レイノルズ数が、一次要素流量係数計算に必要とされるためであることに留意すべきである。このように、蒸気のエネルギ流量を演算するためのプロセスは、既存の多変数トランスミッタ及びエンタルピの独立計算(Btu/lb)で行われているように、質量流量(単位lb/単位時間)の演算を必要とする。これら2項目の乗算は、Btu/単位時間でのエネルギ流量を与える。
【0008】
エネルギの流れを計算するプロセスを、できるだけ単純かつ一般的に維持するために、天然ガスのエネルギ流量演算は、蒸気に対して行われるのと同じように行われる。すなわち、圧力及び温度の関数としてエンタルピ(エネルギ)を含む一般的プロセスを、すべてのケースに用いる。そして、天然ガス用途のエネルギの流れのより単純なケースでは、一定エネルギ値(発熱量)が、より広範なプロセスの自明な実施となる。蒸気の用途では、エンタルピは通常、Btu/単位時間の単位が望ましい。このことは、エネルギを計算する最も効率的な方法は、単位質量当たりのエネルギ(すなわち、Btu/lb又はメガジュール/kg)であることを意味する。そして、エネルギ流量は、質量流量(lb/単位時間)でエネルギ(Btu/lb)を乗算することによって得られる、単位時間当たりのエネルギである。天然ガス産業では通常、エネルギの発熱量及び単位/標準体積(すなわち、Btu/標準立方フィート又はメガジュール/通常立法メートル)が好まれるため、内部計算は質量流量単位で行われるが、発熱量の表示は、フィールド装置によってBtu/標準体積の単位に変換される。このことは、プロセスの汎用性を維持する。
【0009】
図1は、リンク14を通してプロセス流体の流れの装置12に動作可能に結合された汎用コンピュータ10の概略図である。汎用コンピュータ10は、任意の好適なコンピュータ装置、たとえばデスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、又はモバイル装置であることができる。コンピュータ10は、インストールされてフィールド装置の初期構築を容易にするソフトウェアを含む。そのようなソフトウェアの一例は、商品名Engineering Assistantで、Chanhassen, MinnesotaのEmerson Process Managementより販売されている。Engineering Assistantソフトウェアは、プロセス通信アダプタ、たとえばHART(登録商標)モデム、又はFOUNDATION(商標)フィールドバス(Fieldbus)通信カードを使用する。コンピュータ10のアダプタは、プロセス通信リンク14を作り出し、これを通して、コンピュータ10によってユーザ又は技術者が流れの装置12と情報交換することが可能になる。流れの装置12は、複数のプロセスフィールド変数を測定することが可能である多変数フィールド装置である。好ましくは、圧力はマニホールド16を介して測定され、プロセス流体温度は、温度トランスデューサ18を介して測定される。好適な差圧発生器、たとえばオリフィスプレートに結合されているので、プロセス流体がオリフィスプレートを通って流れる間にその反対側で測定された圧力は、既知の技術に従ってプロセス流体流量に関連づけることができる。
【0010】
流れの装置12のセットアップ中に、技術者は通常、フィールド装置の多数の機能を構築する。そのような機能は、先行技術のEngineering Assistantソフトウェアで予め構築されたすべての機能を含むことができる。加えて、所定のプロセス変数出力に所定の流れ特性をマッピングすることができることが意図されている。たとえば、流量は、第1のプロセス変数出力として提供されることができ、差圧は、第2のプロセス出力として提供されることができ、静圧は、第3のプロセス出力として提供されることができ、さらにエネルギの流れは、第4のプロセス出力として提供されることができる。さらに、プロセス流体の流れの装置12の構築中に、技術者は、質量流量及び/又は体積流量のための各種の単位を選択することができる。さらにまた、技術者は、エネルギの流れのための所望の単位、たとえばBtu/h、Mjourle/h、Therms/d等を選択することができる。加えて、プロセス流体の流れの装置12に設けられている場合、任意の好適な量、たとえばエネルギの流れ、質量流量、体積流量、差圧、ゲージ圧、絶対圧力、プロセス温度等に、ディジタル表示をマッピングすることができる。
【0011】
図2は、本発明の実施形態が特に適用可能であるプロセス流体の流れの装置12のブロック図である。装置12は、プロセス通信ループ14に動作可能に結合可能である通信回路20を含む。通信回路10は、装置12が好適なプロセス工業用通信プロトコル、たとえば上述のHART(登録商標)プロトコル、FOUNDATION(商標)フィールトバス(Fieldbus)プロトコル、又は任意の他の好適なプロセス工業用プロトコルに従って通信することを可能にする。また、装置12は、好ましくはプロセス通信ループ14にさらに結合可能である電力モジュール22を含む。プロセス通信ループ14に結合することにより、装置12は、プロセス通信ループを通して電力を受けると、全体として動作することが可能になり得る。しかし、いくつかの実施形態では、電力モジュール22は、蓄電装置、たとえばバッテリ又はスーパーキャパシタであってもよく、そのような実施形態では、電力モジュール22は、プロセス通信ループ14に結合する必要がない。電力モジュール22は、参照番号24で図示されるように、装置12のすべての構成要素に好適な電力を提供するように構成される。また、装置12はプロセッサ26を含み、これは好ましくは、通信回路20及び電力モジュール22に動作可能に結合されたマイクロプロセッサである。マイクロプロセッサ26は、メモリに記憶された命令を実行し、測定回路28から測定値を得て、そのような測定値に基づいて情報を計算する。たとえば、プロセッサ26は、好ましくはプロセス流体静圧(SP)、プロセス流体差圧DP、及びプロセス流体温度Tに関する測定値を得て、差圧発生器を通って流れるプロセス流体に関連する質量流量を提供するかあるいは計算することができる。図2に図示されるように、プロセッサ26は好ましくはメモリ30を含み、これはプロセッサ26の一部であるか、あるいはプロセッサ26に結合された電気部品かである。好ましくは、メモリ30は、測定された圧力及び温度が、プロセス流体のエネルギ量に関連づけられることが可能になる情報を記憶する。したがって、メモリ30は、二次元多項式近似係数、又は単に、測定された静圧(SP)及び温度(T)を、プロセス流体のエネルギ量に関連づけることができるルックアップテーブルを含んでいてもよい。言い換えると、メモリ30は、SP及びTの関数としてのエネルギの演算を可能にするための情報を含む。プロセス流体のエネルギ量をルックアップするかあるいは近似させて、質量流量を計算することによって、プロセッサ26は、通信回路20を通してプロセス流体に関連するエネルギの流れを伝達することが可能である。本発明の実施形態とともにチェビシェフ多項式を利用することが好ましく、その理由はそのようなチェビシェフ多項式近似が、整数演算を用いてディジタル信号処理(DSP)チップで実施されることができることであり、このため低電力のフィールド装置用途の優れた候補となる。
【0012】
図3は、本発明の実施形態の、プロセス流体の流れの装置を動作させる方法のフロー図である。方法100は、ブロック102で開始し、このときプロセスの流れの装置は、差圧及び静圧DP、SPと、プロセス流体温度とを測定する。本発明の実施形態は、DP及びSPの測定に関して説明されている一方で、本発明の実施形態は、2つの絶対圧力を測定し、差圧を計算することによって実施されることができる。方法100は、ブロック104に続き、ここでプロセスの流れの装置は、プロセス流体の質量流量を計算する。この計算は、従来技術のものを含む任意の既知の技術又は方法に従って行うことができる。方法100は、ブロック106に続き、ここでプロセス流体のエネルギ量が得られる。ステップ106は、各種圧力及び温度での各種プロセス流体のエネルギ量を記憶するルックアップテーブル108の利用を含むことができるか、又はステップ106は、近似計算110の利用を含むことができる。近似計算の一例は、チェビシェフ近似に関して先に挙げたものである。流れに関連する値の演算にチェビシェフ多項式を利用することは既知である。Lowell A. Klevenらに対する米国特許第6,643,610号を参照されたい。本発明の実施形態は、全体として、天然ガス及び蒸気の両方に関して本明細書に記載されている一方で、本発明の実施形態は、エネルギ量が静圧又はライン圧力及び温度の観点から表現されることができる場合の任意のプロセス流体(単位質量当たりのエネルギ量が、圧力及び温度の変化を通して一定である場合の流体を含む)に適用可能であり、適切な基準点を画定することができることに留意すべきである。
【0013】
方法100は、ブロック112に続き、ここで、ブロック104で計算された質量流量が、ブロック106で得られたエネルギ量と組み合わせられて、エネルギの流れの値を提供する。ブロック114では、エネルギの流れの値は、プロセス装置構築中に技術者によって選択された単位での出力として提供される。この出力は、有線プロセス通信ループを通して、無線で、又はこれらの任意の組み合わせを通して、装置のディスプレイによってローカルに提供されることができる。
【0014】
好ましい実施形態を参照して本発明を説明してきたが、当業者においては、本発明の本質及び範囲から逸脱することなく、形状及び詳細に変更を加えてもよいことが認識されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源モジュールと、
電源モジュールに結合されたプロセス通信回路と、
プロセス通信回路及び電源モジュールに結合されたプロセッサと、
差圧、静圧及びプロセス流体温度の表示を得るために、複数のプロセス変数センサに動作可能に結合可能である測定回路とを含み、
プロセッサが、プロセス流体の質量流量を演算し、静圧及びプロセス流体温度を用いて、プロセス流体に関連する単位質量値当たりのエネルギを得て、エネルギの流れの表示を提供するように構成される、プロセス流体の流れの装置。
【請求項2】
プロセッサが、マイクロプロセッサである、請求項1記載のプロセス流体の流れの装置。
【請求項3】
プロセッサが、単位質量当たりのエネルギに対するプロセス流体静圧及び温度に関するデータを含むメモリに動作可能に結合される、請求項1記載のプロセス流体の流れの装置。
【請求項4】
データが、ルックアップテーブルを含む、請求項1記載のプロセス流体の流れの装置。
【請求項5】
データが、単位質量当たりのエネルギの多項式近似のための多項式係数を含む、請求項1記載のプロセス流体の流れの装置。
【請求項6】
多項式が、チェビシェフ多項式である、請求項5記載のプロセス流体の流れの装置。
【請求項7】
プロセス流体の単位質量当たりのエネルギが一定である、請求項1記載のプロセス流体の流れの装置。
【請求項8】
通信回路が、プロセス通信ループを経由して、エネルギの流れの表示を提供するように構成される、請求項1記載のプロセス流体の流れの装置。
【請求項9】
プロセス通信ループが、有線プロセス通信ループである、請求項8記載のプロセス流体の流れの装置。
【請求項10】
差圧発生器で流管内に差圧を発生させることと、
流管の両端で差圧を測定することと、
流管内のプロセス流体の静圧を測定することと、
流管内のプロセス流体の温度を測定することと、
差圧、静圧及び温度に基づいて、流管内を流れるプロセス流体の質量流量を計算することと、
測定されたプロセス流体の静圧及び温度を用いて、プロセス流体の単位質量当たりのエネルギの量を求めることと、
プロセス流体の質量流量と、単位質量当たりのエネルギとに基づいて、プロセス流体のエネルギの流れを計算して伝達することと、
を含む、流管内のプロセス流体のエネルギの流れを測定する方法。
【請求項11】
プロセスのエネルギの流れを計算することが、プロセス流体の流れの装置のプロセッサを用いて行われる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
プロセス流体の単位質量当たりのエネルギの量を求めることが、プロセス流体の流れの装置のコンピュータ可読メモリに記憶されたルックアップテーブルを用いて実行される、請求項10記載の方法。
【請求項13】
プロセス流体の単位質量当たりのエネルギの量を求めることが、近似計算を用いて実行される、請求項10記載の方法。
【請求項14】
近似計算が、チェビシェフ多項式計算である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
プロセス流体のエネルギの流れを伝達することが、プロセス通信ループを経由して行われる、請求項10記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−524517(P2011−524517A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510729(P2011−510729)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/045016
【国際公開番号】WO2009/143447
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(597115727)ローズマウント インコーポレイテッド (240)
【Fターム(参考)】