説明

エネルギー貯蔵装置及びこれを用いた圧力差発電システム

【課題】太陽熱等の新エネルギーや、廃熱等の未利用エネルギーの有効利用に好適なエネルギー貯蔵装置及びこれを用いた圧力差発電システムを提供する。
【解決手段】圧力差発電システム1は、圧力容器2と、圧力容器2に太陽熱エネルギーを与える太陽光集光装置5と、圧力容器2の下流側配管L4に接続する膨張タービン3と、膨張タービン3の回転軸に連結する発電機4と、を主要構成として備えている。圧力容器2は、メタンを主成分とする都市ガス高圧ラインL1の分岐配管L3に接続されている。圧力容器2内部には吸着材10が充填されている。分岐配管L4経路内には圧力センサ11、閉止弁12が配設されている。膨張タービン3の出口側は配管L5に接続しており、圧力調整弁8を介して分岐配管L2に合流するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着材の吸着・脱着特性を利用したエネルギー貯蔵装置及びこれを用いた圧力差発電システムに係り、特に、太陽熱等の新エネルギーや、廃熱等の未利用エネルギーの有効利用に好適なエネルギー貯蔵装置及びこれを用いた圧力差発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エネルギー分野における吸着材の利用に関しては、燃料ガスの発熱量変動抑制を目的とする吸着塔貯蔵技術が公知である(例えば特許文献1)。また、吸着材の吸着熱、脱着熱を利用してヒートポンプサイクルを稼動させるデシカント空調システムも提案されている(例えば特許文献2)。さらに、吸着材を用いて太陽熱を集熱・蓄熱し、温水、暖房等に利用する技術も提案されている(例えば特許文献3)。
特許文献3のソーラーヒートポンプシステム100は、太陽熱を集熱する集熱器101、内部に吸着材を備え揮発性熱媒体を吸脱着させる吸放熱器102、熱媒体を凝縮貯蔵する貯蔵部104、蒸発器105a・放熱器(凝縮器)105bを備えた冷凍サイクル105、冷凍サイクル105から受熱する蓄熱部106、を主要構成とする。
【0003】
日射時には、吸着材に吸着されていた吸放熱器102内の揮発性熱媒体は蒸発し、貯蔵部104との圧力差により連絡配管103を経由して貯蔵部104に移動する。熱媒体は、冷凍サイクル105側の蒸発器105aの冷媒に放熱して凝縮し、液状態で貯蔵部5に貯蔵される。一方、冷凍サイクル105側の放熱器(凝縮器)105bでは、冷媒が蓄熱部106内の水に放熱して蓄熱部106内の水を加熱する。蓄熱部106内の温水は給湯、暖房等に用いられる。
また、非日射時には、貯蔵部104と吸放熱器102の温度差により圧力差が生じ、揮発性熱媒体は気相状態で吸放熱器102側に輸送される。さらに、低外気温時等、貯蔵部104と吸放熱器102の温度差が小さい場合には、熱交換器106aを介して蓄熱部106aの熱を貯蔵部104に与えて、圧力差を生じさせる。
ソーラーヒートポンプシステム100は上記作用により、太陽熱エネルギー利用を図るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−331948号公報
【特許文献2】特開2008−151388号公報
【特許文献3】特開2005−257140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記各先行技術文献に開示されていない、吸着材を用いた新たな熱エネルギー貯蔵技術を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の内容を要旨とする。すなわち、本発明に係るエネルギー貯蔵装置は、
(1)内部に吸着材を充填した圧力容器と、該圧力容器に外部から熱を供給する熱源と、該吸着材に対して吸着、脱着能力を有するガスを、該圧力容器に送入及び該圧力容器から送出する手段と、を備え、該熱源該圧力容器内を高温状態にして、該吸着材に吸着されているガスの脱着による圧力上昇を利用可能に構成したことを特徴とする。
【0007】
図3は本発明の作用を示す図であり、(a)吸着材を充填した圧力容器に吸着、脱着能力を有するガスを封入し、外部から加熱した場合と、(b)圧力容器にガスのみを封入して加熱した場合の、容器内温度―圧力の関係を比較したものである。吸着材充填容器の場合は、温度上昇に伴ってガスの脱着量が増加するため圧力上昇が大きく、常温では両者はほぼ同一であるが、50℃では吸着材充填容器の圧力は約2.3倍高くなっている。
本発明は、吸着材充填容器のこのような特性を利用して、熱エネルギーを圧力エネルギーとして貯蔵し、放出時の外気との圧力差を仕事として取り出し可能に構成したものである。
【0008】
本発明に用いる吸着材としては、加熱された際に吸着している媒質を、大量に脱着する性質を持つことが重要である。脱着したガスによって容器内の圧力を高めるため、吸着時の温度における被吸着物質の吸着能力が高いことも重要である。
また、吸着材形状については容器に充填できるものであればよく、一般的な活性炭形状である粒状・破砕状でもいずれでもよい。ただし、容器に大量の吸着材が充填されることが望ましく、充填密度が高いものが有利である。
吸着材と被吸着物質であるガスの組み合わせは、利用形態により選択することができる。例えば、下記(4)のような都市ガス供給設備に付設される圧力差発電に利用する場合には、メタンをはじめとする炭化水素を吸着する吸着材が望ましい。また、例えばヒートポンプシステム等の一般的な設備に利用する場合には、不活性で安全な二酸化炭素や、空気を圧縮して貯蔵する場合の窒素等が想定され、これらに対する吸着能力が高い吸着材が望ましい。さらに、フロンや代替フロン等も対象となりうる。
【0009】
(2)上記発明において、前記熱源が太陽光集光装置であることを特徴とする。
本発明に用いる太陽光集光装置としては、タワー型、トラフ型、ディッシュ型等の公知の集光装置を適用することができる。
【0010】
また、本発明に係る圧力差発電システムは、
(3)上記(1)、(2)のエネルギー貯蔵装置の高圧ガスを利用する圧力差発電システムであって、前記エネルギー貯蔵装置と、膨張タービンと、該膨張タービンに連結する発電機と、を備え、かつ、前記エネルギー貯蔵装置から送出されるガスを、該膨張タービン入口に導入する手段を備えて成ることを特徴とする。
本発明は、エネルギー貯蔵装置で昇圧したガスを膨張タービンに導入し、タービン内部でガスが膨張する際の内部エネルギー減少を軸回転出力として取り出し、発電に供するものである。
【0011】
(4)上記(3)の圧力差発電システムを、都市ガス供給ライン経路中に組み込んだ圧力差発電システムであって、高圧ガス供給ラインから分岐した減圧ライン経路中の減圧手段の上流側のガスを、前記エネルギー貯蔵装置の前記圧力容器に導入する手段と、前記膨張タービンを出たガスを、該減圧ラインの減圧手段の下流側に戻す手段と、を備えて成ることを特徴とする。
現在、都市ガス供給においては、工場から高圧(1.5MPa〜7MPa)で供給されるガスを、各拠点で中圧以下(1MPa未満)に減圧して需要家に供給している。
本発明は、減圧ラインに至る経路中に上記圧力差発電システムを組み込むことにより、従来利用されていなかった減圧時の圧力差エネルギーを有効利用可能とするものである。
本発明によれば、高圧ガスを直接又は予熱後に膨張タービンに導入する圧力差発電システムと比較して、エネルギー貯蔵装置においてさらに昇温・昇圧されるため、より高効率の発電システムが実現できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、未利用エネルギー、再生可能エネルギー等を有効に回収して、圧力エネルギーの形で効率的に貯蔵することができる。
また、本発明による圧力差発電システムによれば、上記エネルギー貯蔵装置に貯蔵された圧力エネルギーにより高効率の圧力差発電システムが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第一の実施形態に係る圧力差発電システム1の全体構成を示す図である。
【図2】第二の実施形態に係る圧力差発電システム20の全体構成を示す図である。
【図3】吸着材充填の有無による圧力容器内ガスの温度―圧力の関係を比較した図である。
【図4】従来の吸着材を用いたソーラーヒートポンプシステム100の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図1、2を参照してさらに詳細に説明する。なお、重複記載を回避するため、各図において同一構成には同一符号を用いて示している。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0015】
(第一の実施形態)
図1は、本実施形態に係る圧力差発電システム1の全体構成を示す図である。圧力差発電システム1は、圧力容器2と、圧力容器2に太陽熱エネルギーを与える太陽光集光装置5と、圧力容器2の下流側配管L4に接続する膨張タービン3と、膨張タービン3の回転軸に連結する発電機4と、を主要構成として備えている。
圧力容器2は、メタンを主成分とする都市ガス高圧ラインL1の分岐配管L2からさらに分岐する分岐配管L3に接続されている。圧力容器2内部には吸着材10が充填されている。吸着材としては、炭化水素に対する吸着能力の高い、例えば石炭原料活性炭を用いることができる。分岐配管L4経路内には圧力センサ11、閉止弁12が配設されており、制御部13が、圧力センサ11の計測値に基づいて閉止弁12を開閉できるように構成されている。膨張タービン3の出口側は配管L5に接続しており、圧力調整弁8を介して分岐配管L2に合流するように構成されている。また、圧力容器2の入口側には、容器内圧上昇時の逆流防止のための閉止弁14が配設されている。
一方、分岐配管L2経路内には高圧整圧器6a、流量調整弁6bを含む整圧部6が配設されている。このような配管系統により、膨張タービン3、圧力調整弁8を経由して所定の圧力に減圧されたガスは、分岐配管L2、整圧部6を経由する減圧ガスと合流してガスホルダ9に一旦貯蔵され、需要に応じて配管L6を介して供給される。
【0016】
圧力差発電システム1は以上のように構成されており、次に圧力差発電システム1における太陽熱エネルギーの貯蔵及び発電形態について説明する。
まず、エネルギー貯蔵段階においては、閉止弁12は閉に設定されている。圧力容器2内に導入される高圧(例えば、1.0MPa)の都市ガスは吸着材10に吸着されるが、吸着量は容器内温度、圧力における平衡吸着量となる。その後、圧力容器2は太陽光集光装置5を介して供給される熱エネルギーにより加熱される。容器内温度上昇により吸着材10に吸着されていたガスは脱着し、容器内圧力は通常の温度−圧力の関係を超えて上昇する。
次に、発電段階においては、圧力センサ11の計測値が閾値以上となると、制御部13により閉止弁12が開弁される。これに伴い容器内のガスは膨張タービン3に導入され、いずれも不図示のノズルから翼部に吹き付けられ、被駆動機である発電機4を駆動させて発電が行われる。発電機4内で発生した電力は、商用電力系統に売電される。
一方、膨張タービン3内で膨張し、減圧されて出口を出たガスは、圧力調整弁8により圧力調整された後に分岐配管L2に合流して、ガスホルダ9に貯蔵される。
【0017】
なお、本実施形態では、容器の昇温・昇圧手段として太陽熱エネルギーを用いる例を示したが、これに替えて他の熱源を用いる形態とすることもできる。
また、圧力容器2を分岐配管L2から取り出した分岐配管L3に接続する例を示したが、直接高圧ラインL1に接続する形態とすることもできる。
【0018】
(第二の実施形態)
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図2は、本実施形態に係る圧力差発電システム20の全体構成を示す図である。圧力差発電システム20が上述の圧力差発電システム1と異なる点は、並列に接続される複数の圧力容器21a〜21cを備えており、また、各圧力容器とそれぞれ熱的に接続する太陽光集光装置22a〜22cを備えていることである。さらに、各圧力容器の下流側配管L8a〜L8cには、圧力センサ23a〜23c及び切替弁24a〜24cを備えており、各圧力センサの計測値に基づいて制御部26が各切替弁を適宜、開閉可能に構成されていることである。また、圧力容器21a〜21cの入口側には、それぞれ逆流防止用閉止弁27a〜27cが配設されている。その他の構成は圧力差発電システム1と同一であるので、重複説明を省略する。
【0019】
次に、圧力差発電システム20における発電制御について説明する。エネルギー貯蔵段階については、上述の実施形態と同様であるので説明を省略する。次に、発電段階においては、まず切替弁24a開、24b及び24c閉とすることにより、容器21a内のガスが膨張タービン3に導入され、被駆動機である発電機4を駆動させて発電が行われる。膨張タービン3を出たガスの挙動は、上述の実施形態と同様であるので説明を省略する。
圧力容器21aの圧力が下限値(膨張タービン3の能力に合わせて設定される)を下回ったときは、切替弁24b開、24c及び24a閉のように切り替えて、容器21bから容器21b内のガスを膨張タービン3に導入する。このように、順次ローテーションさせることにより、所定圧力以上のガスを連続的に膨張タービン3に導入することが可能となる。
【0020】
なお、本実施形態では圧力容器3台を用いる例を示したが、吸着材充填量、膨張タービン能力等に合わせて適切な台数に設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は発電に限らず、例えば供給ガスの昇圧装置としても応用可能である。現状圧力より高い圧力にすることにより、昇圧に必要なエネルギーをセーブすることができる。
さらに、圧縮空気自動車への応用も可能である。本発明による貯蔵装置により昇圧した圧縮空気を供給源として、駆動源(エンジン、タービン等)に供給することができる。
このように、圧力差を利用してエネルギーを取り出す装置・システムに広く応用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1、20・・・・圧力差発電システム
2、21a〜21c・・・・圧力容器
3・・・・膨張タービン
4・・・・発電機
5、22a〜22c・・・・太陽光集光装置
9・・・・ガスホルダ
6・・・・整圧部
8・・・・圧力調整弁
10・・・・吸着材
11、23a〜23c・・・・圧力センサ
12、14、27a〜27c・・・・閉止弁
24a〜24c・・・・切替弁
L1・・・・都市ガス高圧ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に吸着材を充填した圧力容器と、
該圧力容器に外部から熱を供給する熱源と、
該吸着材に対して吸着、脱着能力を有するガスを、該圧力容器に送入及び該圧力容器から送出する手段と、を備え、
該熱源該圧力容器内を高温状態にして、該吸着材に吸着されているガスの脱着による圧力上昇を利用可能に構成したことを特徴とするエネルギー貯蔵装置。
【請求項2】
前記熱源が、太陽光集光装置であることを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエネルギー貯蔵装置の高圧ガスを利用する圧力差発電システムであって、
前記エネルギー貯蔵装置と、膨張タービンと、該膨張タービンに連結する発電機と、を備え、かつ、
前記エネルギー貯蔵装置から送出されるガスを、該膨張タービン入口に導入する手段を備えて成ることを特徴とする圧力差発電システム。
【請求項4】
請求項3に記載の圧力差発電システムを、さらに都市ガス供給ライン経路中に組み込んだ圧力差発電システムであって、
高圧ガス供給ラインから分岐した減圧ライン経路中の減圧手段の上流側のガスを、前記エネルギー貯蔵装置の前記圧力容器に導入する手段と、
前記膨張タービンを出たガスを、該減圧ラインの減圧手段の下流側に戻す手段と、
を備えて成ることを特徴とする圧力差発電システム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−261416(P2010−261416A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114332(P2009−114332)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】