説明

エポキシ化合物、及びその製造方法ならびにエポキシ樹脂組成物、及びその硬化体

【課題】常温で液状であり且つ耐熱性の優れた硬化体を与える芳香族多官能エポキシ化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるエポキシ化合物。


(一般式(1)において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アリル基、アラルキル基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基の何れかを示し、Rは、Rの少なくとも1つはグリシジルオキシ基またはβ−アルキルグリシジルオキシ基を示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基の何れかを示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ化合物、及びその製造方法ならびにエポキシ樹脂組成物、及びその硬化体に関する。耐熱性に優れた硬化物を与える新規なエポキシ化合物及びその製造方法、エポキシ樹脂組成物及びその硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、接着性、耐熱性、機械的特性など種々の優れた特性があり、電気・電子材料、塗料、接着剤、各種複合材料、土木建築材料などで使用されている。その中でも、高い耐熱性が要求される分野では、多官能型芳香環含有エポキシ樹脂(一般的にはノボラック型エポキシ樹脂)が広く使用されている。ノボラック型エポキシ樹脂は繰り返し構造を基本とするため、耐熱性の高い硬化物を得るためには、その繰り返し数を上げる必要がある。しかし、繰り返し数を上げるとエポキシ樹脂の溶融粘度が上昇して作業性に問題が生じる。例えば、ジオキシナフタレンと所定のアルデヒドから誘導され且つ分子中にナフタレン核を2個以上含むノボラック樹脂の上記ジオキシナフタレンに由来する水酸基の少なくとも一部がグリシジルエーテル化されたポリグリシジルエーテルが提案されている(特許文献1)。しかし、このようにグリシジルエーテル化されたノボラック型エポキシ樹脂は、高い耐熱性を有するものの、常温では固体であり、硬化させるには加熱して溶融させるか或いは溶剤に溶解させて使用しなければならず、作業性に問題がある。
【0003】
一方、多官能で且つ常温で液状のエポキシ化合物の代表例として、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルのような脂肪族エポキシ化合物が知られている。しかし、斯かる脂肪族エポキシ化合物は作業性は優れているものの耐熱性に問題がある。また、少数であるが、常温で液状の芳香族多官能エポキシ化合物が報告されている(例えば、特許文献2)。しかし、上記と同様に耐熱性に問題がある。
【0004】
このように、耐熱性および作業性に優れた液状の芳香族多官能エポキシ化合物は、未だ提案されていない状況にある。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−69826号公報
【特許文献2】特開平8−311154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、常温で液状であり且つ耐熱性の優れた硬化体を与える芳香族多官能エポキシ化合物、当該エポキシ化合物の製造方法、当該エポキシ化合物を必須成分とするエポキシ樹脂組成物、及び当該エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を鑑み、鋭意検討した結果、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン誘導体を還元して得られる1,2,4−トリヒドロキシナフタレン誘導体をグリシジル化することにより得られるエポキシ化合物は、常温で液状であり且つ耐熱性に優れた硬化体を与えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の要旨は、下記一般式(1)で表されるエポキシ化合物に存する。
【0009】
【化1】

【0010】
(一般式(1)において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アリル基、アラルキル基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基の何れかを示し、Rは、グリシジルオキシ基、β−アルキルグリシジルオキシ基、ヒドロキシ基の何れかであることを条件とし、かつ、Rの少なくとも1つはグリシジルオキシ基またはβ−アルキルグリシジルオキシ基を示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基の何れかを示す。)
【0011】
本発明の第2の要旨は、塩基性化合物の存在下、下記一般式(4)で表される1,2,4−トリヒドロキシナフタレン誘導体を下記一般式(5)で表されるエピハロヒドリン化合物と反応させることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のエポキシ化合物の製造方法に存する。
【0012】
【化2】

【0013】
(一般式(4)において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アリル基、アラルキル基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基の何れかを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基の何れかを示す。)
【0014】
【化3】

【0015】
(一般式(5)において、Rは、水素原子、アルキル基の何れかを示し、Yはハロゲン原子を示す。)
【0016】
本発明の第3の要旨は、成分として上記のエポキシ化合物を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物に存し、本発明の第4の要旨は第3の要旨に係るエポキシ樹脂組成物を硬化させて成る硬化体に存する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、常温で液状であり且つ耐熱性の優れた硬化体を与える芳香族多官能エポキシ化合物、当該エポキシ化合物の製造方法、当該エポキシ化合物を必須成分とするエポキシ樹脂組成物、及び当該エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
(エポキシ化合物)
本発明のエポキシ化合物は下記一般式(1)で表される。
【0020】
【化4】

【0021】
(一般式(1)において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アリル基、アラルキル基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基の何れかを示し、Rは、グリシジルオキシ基、β−アルキルグリシジルオキシ基、ヒドロキシ基の何れかであることを条件とし、かつ、Rの少なくとも1つはグリシジルオキシ基またはβ−アルキルグリシジルオキシ基を示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基の何れかを示す。)
【0022】
本発明においては、一般式(1)が下記一般式(2)であるエポキシ化合物が好ましい。この化合物は、一般式(1)のRの2個がグリシジルオキシ基またはβ−アルキルグリシジルオキシ基であるエポキシ化合物である。
【0023】
【化5】

【0024】
(一般式(2)において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アリル基、アラルキル基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基の何れかを示し、Rは、水素原子、アルキル基の何れかを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基の何れかを示す。)
【0025】
また、本発明においては、一般式(1)が下記一般式(3)であるエポキシ化合物が好ましい。この化合物は、一般式(1)のRの3個がグリシジルオキシ基またはβ−アルキルグリシジルオキシ基であるエポキシ化合物である。
【0026】
【化6】

【0027】
(一般式(3)において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アリル基、アラルキル基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基の何れかを示し、Rは、水素原子、アルキル基の何れかを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基の何れかを示す。)
【0028】
前記の一般式(1)〜(3)におけるRの置換基(水素以外)の具体例は次の通りである。すなわち、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;アリル基、メタリル基、クロチル基などのアリル基;ベンジル基、p−メチルベンジル基、o−メチルベンジル基、p−クロロベンジル基、o−クロロベンジル基、p−メトキシベンジル基、o−メトキシベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基,n−プロポキシ基,n−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基などのアルコキシ基;フェノキシ基、p−メチルフェノキシ基、o−メチルフェノキシ基、p−クロロフェノキシ基、o−クロロフェノキシ基などのアリールオキシ基などが挙げられる。
【0029】
前記の一般式(1)〜(3)におけるXの置換基(水素原子以外)の具体例は次の通りである。すなわち、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、2−エチルヘキシル、ドデシル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基,n−プロポキシ基,n−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基などのアルコキシ基;フェノキシ基、p−メチルフェノキシ基、o−メチルフェノキシ基、p−クロロフェノキシ基、o−クロロフェノキシ基などのアリールオキシ基などが挙げられる。
【0030】
前記の一般式(2)及び(3)におけるRの置換基(水素原子以外)の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基などのアルキル基が挙げられる。
【0031】
一般式(1)〜(3)で表される化合物の具体例としては次の化合物が挙げられる。すなわち、1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン、1,4−ジグリシジルオキシ−2−ヒドロキシナフタレン、2,4−ジグリシジルオキシ−1−ヒドロキシナフタレン、1,2−ジグリシジルオキシ−4−ヒドロキシナフタレン、3−フルオロ−1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン、3−クロロ−1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン、3−ブロモ−1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン、3−ヨード−1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン、3−アリル−1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン、1,2,4−トリグリシジルオキシ−3−メタリルナフタレン、3−クロチル−1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン、3−ベンジル−1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン、1,2,4−トリグリシジルオキシ−3−p−メチルベンジルナフタレン、1,2,4−トリグリシジルオキシ−3−o−メチルベンジルナフタレン、3−p−クロロベンジル−1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン、3−o−クロロベンジル−1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン、1,2,4−トリグリシジルオキシ−3−p−メトキシベンジルナフタレン、1,2,4−トリグリシジルオキシ−3−o−メトキシベンジルナフタレン、1,2,4−トリグリシジルオキシ−3−フェネチルナフタレン、1,2,4−トリグリシジルオキシ−3−メチルナフタレン、3−エチル−1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン、1,2,4−トリグリシジルオキシ−3−n−プロピルナフタレン、1,2,4−トリグリシジルオキシ−3−n−プロピルナフタレン、3−n−ブチル−1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン、3−n−ブチル−1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン、1,2,4−トリグリシジルオキシ−3−n−ペンチルナフタレン、1,2,4−トリグリシジルオキシ−3−n−ヘキシルナフタレン、3−シクロヘキシル−1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン、1,2,4−トリグリシジルオキシ−3−n−ヘプチルナフタレン、3−(2−エチルヘキシル)−1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン、3−ドデシル−1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン等が挙げられる。
【0032】
以下の式(A)及び(B)で示される化合物は本発明の代表的なエポキシ化合物である。
【0033】
【化7】

【0034】
(エポキシ化合物の製造方法)
本発明に係るエポキシ化合物の製造方法は、塩基性化合物の存在下、下記一般式(4)で表される1,2,4−トリヒドロキシナフタレン誘導体を下記一般式(5)で表されるエピハロヒドリン化合物と反応させることを特徴とする。
【0035】
【化8】

【0036】
(一般式(4)において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アリル基、アラルキル基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基の何れかを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基の何れかを示す。)
【0037】
【化9】

【0038】
(一般式(5)において、Rは、水素原子、アルキル基の何れかを示し、Yはハロゲン原子を示す。)
【0039】
一般式(4)におけるRの置換基(水素原子以外)及びXの置換基の具体例は、前述の一般式(1)におけるのと同じである。また、一般式(5)におけるRの置換基(水素原子以外)としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基などのアルキル基が挙げられ、Yの具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0040】
一般式(4)で表される1,2,4−トリヒドロキシナフタレン誘導体は、例えば2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン誘導体を還元して得ることが出来る。従って、本発明のエポキシ化合物は、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン誘導体を還元する第1反応、得られた1,2,4−トリヒドロキシナフタレン誘導体を塩基性化合物の存在下、エピハロヒドリン化合物により3つの水酸基のうち2つをグリシジル化又はβ−アルキルグリシジル化する第2反応、及び得られたジグリシジルオキシヒドロキシナフタレン誘導体を塩基性化合物の存在下、エピハロヒドリン化合物により残りの水酸基をグリシジル化又はβ−アルキルグリシジル化する第3反応により得られる。
【0041】
【化10】

【0042】
(第1反応)
第1反応において、還元反応は貴金属を触媒とする水素還元が使用される。使用可能な貴金属触媒としては、パラジウム担持活性炭、パラジウム担持アルミナ、白金担持活性炭などが挙げられる。特に、5%パラジウム/カーボンは好適に使用される。
【0043】
2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン誘導体に対する貴金属触媒の添加量は、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%である。触媒の添加量が0.01重量%未満の場合は水素化速度が遅く、10重量%を超える場合は副反応で芳香環の水素化が併発する傾向がある。
【0044】
また、他の還元剤も利用可能である。使用される還元剤としては、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン誘導体のカルボニル基を還元するものであればよく、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、亜ジチオン酸ナトリウム、過酸化チオ尿素などが使用される。
【0045】
使用する溶媒としては、特に制限されないが、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;水などが挙げられる。これらの溶媒は2種以上を併用してもよい。
【0046】
溶媒の使用量は、原料である2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン誘導体を溶解し得る量を添加してもよいし、また、スラリー状態であっても、生成する1,2,4−トリヒドロキシナフタレン誘導体を溶解させるに足る量の溶媒を添加すればよい。具体的な使用量は、溶媒中の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン誘導体の濃度として、通常1〜30重量%、好ましくは5〜20重量%である。
【0047】
水素還元に使用する水素の圧力は、通常2〜10気圧、好ましくは3〜7気圧である。水素圧力が余りに低すぎる場合は水素還元の反応時間が長くなり、水素圧力が余りに高すぎる場合は副反応で芳香環の水素化が起こる可能性がある。
【0048】
水素還元の反応温度は、使用する溶媒にもよるが、通常0〜100℃、好ましくは20〜80℃である。反応温度が0℃未満の場合は水素還元が遅くて反応に長時間要し、100℃より高い場合は、副反応で芳香環の水素化が併発して副生成物が生成し、目的化合物である1,2,4−トリヒドロキシナフタレン誘導体の純度が低下する。このような反応条件での水素還元の反応時間は、通常0.5時間から3時間程度である。
【0049】
(第2反応)
第2反応では、第1反応で得られた1,2,4−トリヒドロキシナフタレン誘導体の溶液が入った反応器内を不活性ガスで置換し、常圧、塩基性化合物の存在下、溶媒の存在または非存在下で、一般式(5)で示されるエピハロヒドリン化合物と反応させることにより、相当するジグリシジルオキシヒドロキシナフタレン誘導体又はジ(β−アルキルグリシジルオキシ)ヒドロキシナフタレン誘導体を得る。反応条件によっては1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン誘導体又は1,2,4−トリ(β−アルキルグリシジルオキシ)ナフタレン誘導体も生成する。
【0050】
(第3反応)
第3反応では、第2反応で得られたジグリシジルオキシヒドロキシナフタレン誘導体あるいはジ(β−アルキルグリシジルオキシ)ヒドロキシナフタレン誘導体を再度第2反応と同様の方法で反応させることにより、相当する1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン誘導体あるいは1,2,4−トリ(β−アルキルグリシジルオキシ)ナフタレン誘導体を得ることが出来る。
【0051】
第2及び第3反応で使用する不活性ガスは、例えば、窒素、アルゴン等であり、不活性ガス存在下で反応を行うことが好ましい。空気などの分子状酸素の存在下で第2反応を行うと、原料である1,2,4−トリヒドロキシナフタレン誘導体が酸化され、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン誘導体が生成する恐れがある。反応容器内部の酸素濃度は、特に限定されないが、通常2vol%以下とされる。
【0052】
第2反応において、原料として使用できる1,2,4−トリヒドロキシナフタレン誘導体としては次の化合物が挙げられる。すなわち、1,2,4−トリヒドロキシナフタレン、3−フルオロ−1,2,4−トリヒドロキシナフタレン、3−クロロ−1,2,4−トリヒドロキシナフタレン、3−ブロモ−1,2,4−トリヒドロキシナフタレン、3−ヨード−1,2,4−トリヒドロキシナフタレン、3−アリル−1,2,4−トリヒドロキシナフタレン、1,2,4−トリヒドロキシ−3−メタリルナフタレン、3−クロチル−1,2,4−トリヒドロキシナフタレン、3−ベンジル−1,2,4−トリヒドロキシナフタレン、1,2,4−トリヒドロキシ−3−p−メチルベンジルナフタレン、1,2,4−トリヒドロキシ−3−o−メチルベンジルナフタレン、3−p−クロロベンジル−1,2,4−トリヒドロキシナフタレン、3−o−クロロベンジル−1,2,4−トリヒドロキシナフタレン、1,2,4−トリヒドロキシ−3−p−メトキシベンジルナフタレン、1,2,4−トリヒドロキシ−3−o−メトキシベンジルナフタレン、1,2,4−トリヒドロキシ−3−フェネチルナフタレン、1,2,4−トリヒドロキシ−3−メチルナフタレン、3−エチル−1,2,4−トリヒドロキシナフタレン、1,2,4−トリヒドロキシ−3−n−プロピルナフタレン、1,2,4−トリヒドロキシ−3−n−プロピルナフタレン、3−n−ブチル−1,2,4−トリヒドロキシナフタレン、3−n−ブチル−1,2,4−トリヒドロキシナフタレン、1,2,4−トリヒドロキシ−3−n−ペンチルナフタレン、1,2,4−トリヒドロキシ−3−n−ヘキシルナフタレン、3−シクロヘキシル−1,2,4−トリヒドロキシナフタレン、1,2,4−トリヒドロキシ−3−n−ヘプチルナフタレン、3−(2−エチルヘキシル)−1,2,4−トリヒドロキシナフタレン、3−ドデシル−1,2,4−トリヒドロキシナフタレン等が挙げられる。
【0053】
第2及び第3反応において、使用される一般式(5)で示されるエピハロヒドリン化合物としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロロヒドリン等が挙げられるが、好ましくはエピクロロヒドリン又はβ−メチルエピクロロヒドリンであり、更に好ましくは入手が容易なことからエピクロロヒドリンである。なお、エピハロヒドリン化合物は溶媒として兼用することも出来る。
【0054】
第2及び第3反応において、1,2,4−トリヒドロキシナフタレン化合物に対するエピハロヒドリン化合物の仕込モル比は、通常2.0〜30、好ましくは3.0〜15である。前者に対する後者の仕込モル比が2.0未満の場合は未反応のヒドロキシナフタレン誘導体が残り、また、仕込モル比が30を超える場合は、未反応のエピハロヒドリン化合物の除去に時間がかかり、非効率的である。
【0055】
第2及び第3反応において、脱ハロゲン化水素剤として使用する塩基性化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ピペリジン、ピリジン、α−ピコリン、γ−ピコリンのような有機塩基;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムのような無機塩基などが挙げられる。これらの中では、入手が容易なことから水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましい。
【0056】
塩基性化合物の使用量は、1,2,4−トリヒドロキシナフタレン誘導体に対する仕込モル比として、通常2.0〜9である。この仕込モル比が2.0未満の場合は1,2,4−トリヒドロキシナフタレン誘導体が未反応のまま残存し、一方、塩基性化合物が余りに多すぎる場合は、エピハロヒドリン化合物あるいはエポキシ基の重合や開裂が起こり、反応中の急激な発熱や製品の純度低下の原因となる。
【0057】
第2及び第3反応では、必要に応じて溶媒を使用するが、使用できる溶媒としては、エタノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒は2種以上組み合わせてもよい。
【0058】
第2及び第3反応では、必要に応じて触媒を使用する。使用できる触媒としては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム塩;トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の3級アミン類;2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン等のホスフィン類などが挙げられる。
【0059】
次に、第2及び第3反応の反応条件について説明する。第2反応の反応温度は、通常、溶媒あるいはエピハロヒドリン化合物の沸点以下である。例えば、エピクロロヒドリンを使用した場合は10〜100℃の範囲である。上述の脱ハロゲン化水素剤として無機塩基の水溶液を添加する場合は、急激な反応を防ぐため、無機塩基の水溶液を1〜8時間かけて少量ずつ連続的あるいは断続的に添加することが好ましい。
【0060】
反応終了後、塩基性化合物や副生塩を水洗除去及び/又は濾別する。次いで、溶媒及び未反応のエピハロヒドリン化合物を減圧留去して除去することにより、第2反応ではジグリシジルオキシヒドロキシナフタレン誘導体が得られ、第3反応では1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン誘導体が得られる。得られたジグリシジルオキシヒドロキシナフタレン誘導体又は1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン誘導体は必要に応じてシリカゲルカラムクロマトグラフィー等により分離精製を行ってもよい。
【0061】
一方、第2反応において、塩基性化合物に水酸化ナトリウム等の無機塩基の水溶液と共に触媒を使用する場合は、4級アンモニウム塩などの前記の触媒の存在下、反応温度が10〜50℃で無機塩基を添加することにより、1,2,4−トリヒドロキシナフタレン誘導体の3つのヒドロキシ基のうち、2つがグリシジル化又はβ−アルキルグリシジル化されたジグリシジルオキシヒドロキシナフタレン誘導体又はジ(β−アルキルグリシジルオキシ)ヒドロキシナフタレン誘導体を選択的に製造することが出来る。また、触媒を使用しない場合は、反応温度が10〜60℃で無機塩基を添加することにより、同様に製造できる。触媒を使用して反応温度を50℃以上とした場合、または触媒を使用しないで反応温度を60℃以上とした場合、1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン誘導体又は1,2,4−トリ(β−アルキルグリシジルオキシ)ナフタレン誘導体が増加する傾向がある。
【0062】
(エポキシ樹脂組成物)
本発明のエポキシ樹脂組成物は、成分として前記のエポキシ化合物を含有することを特徴とする。
【0063】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じてその他のエポキシ樹脂を併用することが出来る。併用するエポキシ樹脂としては、特に限定されず、従来公知のエポキシ樹脂を全て使用することが出来る。例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールAノボラック型、フェノールアラルキル型、ナフタレン型などのエポキシ樹脂や、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は2種以上を併用してもよい。
【0064】
更に、本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて硬化剤を使用することが出来る。硬化剤としては、特に限定されず、エポキシ樹脂の硬化剤として一般に使用されている化合物を全て使用することが出来る。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、チオジフェノール、ハイドロキノン、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン等の多価フェノール類;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂など種々のアルデヒド類との縮合反応で得られるフェノール樹脂類;メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメット酸、メチルナジック酸などの酸無水物類;ジシアンジアミド、イミダゾール、グアニジン誘導体などの潜在性アミン系硬化剤類;メタフェニレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族アミン類が挙げられる。これらの硬化剤は2種以上を併用してもよい。
【0065】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂と硬化剤の配合割合は、特に限定されないが、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対する硬化剤の活性水素基の量として、通常0.3〜2.0当量、好ましくは0.7〜1.2当量である。
【0066】
更に、本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化促進剤を使用することが出来る。硬化促進剤としては、特に限定されず、エポキシ樹脂の硬化促進剤として一般に使われている化合物を全て使用することが出来る。例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等のホスフィン類;2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;4−ジメチルアミノピリジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミン類、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン等のジアザビシクロ化合物;ルイス酸、アミン錯塩などが挙げられる。これらの硬化促進剤は2種以上を併用してもよい。
【0067】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂と硬化促進剤の配合割合は、特に限定されないが、エポキシ樹脂に対し、通常0.1〜7.0重量%、好ましくは0.2〜5.0重量%である。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。
【0069】
合成例1(1,2,4−トリヒドロキシナフタレンの合成):
2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン20g(0.11モル)、水100g、5%パラジウム−カーボンを200mlオートクレーブに仕込み、攪拌下、0.4MPaの圧力で容器内を窒素で3回置換し、反応器を加熱して70℃に昇温した。その後、攪拌を止めて、0.4MPaの圧力で容器内を水素で3回置換した後、攪拌して水素還元反応を開始した。2時間反応後、容器内の水素を放圧し、0.4MPaの圧力で容器内を窒素で置換し、窒素雰囲気下で5%パラジウム−カーボンを濾過した。濾液にエピクロロヒドリン127.4g(1.38モル)、メチルイソブチルケトン20gを加えて1,2,4−トリヒドロキシナフタレンを有機層に抽出し、水層を分離して1,2,4−トリヒドロキシナフタレン溶液約167gを得た。
【0070】
合成例2(ジグリシジルオキシヒドロキシナフタレンの合成):
窒素雰囲気下、滴下ロート、冷却管、温度計を備えた反応器に、合成例1で得た1,2,4−トリヒドロキシナフタレン溶液約167gを加えた後、テトラブチルアンモニウムブロミド1.8g(0.006モル)の50重量%水溶液を溶液に添加し、攪拌下、室温(20℃)で水酸化ナトリウム15.1g(0.38モル)の40重量%水溶液を2時間かけて滴下した。このとき反応器内の温度は40℃を超えないようにコントロールした。更に、3時間攪拌後、メチルイソブチルケトン80g、水100gを加えて2層に分離させ、水層を抜き出してさらに水50gで有機層を水洗した。有機層のメチルイソブチルケトン、未反応のエピクロロヒドリンを減圧留去し、褐色、液状の粗製ジグリシジルオキシヒドロキシナフタレン20.8gを得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)純度は59%であった。この粗製品をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/1〜2/3(vol/vol))で精製し、薄黄色、液状の精製ジグリシジルオキシヒドロキシナフタレン(E−1)を得た。GPC純度は92%、エポキシ当量は299g/eqであった。
【0071】
GPC測定は、分離カラム:TSKgel G1000+G2000+G3000HXL(7.8mmI.D.×300mm、3本、東ソー(株)製)、溶離液:テトラヒドロフラン、検出器:示差屈折計(日本分光(株)製)を使用した。溶離液の条件は、流速:1.0mL/min、温度:40℃とした。また、エポキシ当量測定は、JIS K 7236:2001に準拠した。
【0072】
上記で得られた化合物について、次の物性を測定した。
(1)赤外線(IR)分光光度計(日本分光社製、型式:IR−810)によるIRスペクトル
【0073】
(2)核磁気共鳴装置(NMR)(日本電子社製、型式:GSX FT NMR Spectorometer)によるH−NMR分析
【0074】
(3)Massスペクトル(島津製作所社製、質量分析計、型式:GCMS−QP5000)
【0075】
物性測定の結果は次のとおりであり、合成例2で得られた化合物はジグリシジルオキシヒドロキシナフタレンであることを確認した。
【0076】
(1)IR(KBr、cm−1):3440,3075,3010,2934,2888,1637,1605,1471,1459,1420,1397,1362,1350,1278,1259,1142,1102,1092,1055,1025,912,865,840,765.
【0077】
(2)H−NMR(CDCl,ppm):δ2.25(bs,1H,OH),2.80−3.48(m,2H,メチレン),3.95−4.44(m,7H,メチレン×3,メチン),6.52(s,1H,ナフタレン環),7.32−7.52(m,2H,ナフタレン環),8.00(d,1H,ナフタレン環),8.16(d,1H,ナフタレン環).
【0078】
(3)Massスペクトル:(EI−MS)m/z=288(M+)
【0079】
また、遠隔H−H COSY測定において、ナフタレン環3位のプロトンと4位のグリシジルオキシ基のメチレンプロトンとの遠隔カップリングが観測されたことから、1,4−ジグリシジルオキシ−2−ヒドロキシナフタレン又は2,4−ジグリシジルオキシ−1−ヒドロキシナフタレンと推定した。
【0080】
合成例3(1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレンの合成):
上記の化合物の合成は、以下に説明するように、1,2,4−トリヒドロキシナフタレンをジグリシジル化する工程−1と、工程−1で得たジグリシジルオキシヒドロキシナフタレンを更にグリシジル化する工程−2及び工程−3の計3工程からなる。
【0081】
<工程−1>
合成例2と同様の方法により、粗製ジグリシジルオキシヒドロキシナフタレン20.8gを得た。
【0082】
<工程−2>
粗製ジグリシジルオキシヒドロキシナフタレン20.8gをメチルイソブチルケトン20gに溶解させ、滴下ロート、冷却管、温度計を備えた反応器に入れ、エピクロロヒドリン63.8g(0.69モル)、テトラブチルアンモニウムブロミド0.7g(0.002モル)の50%水溶液を加えて攪拌し、室温(20℃)で水酸化ナトリウム10.2g(0.26モル)の40%水溶液を1時間かけて滴下した。更に4時間攪拌後、工程−1と同様の方法で分離、水層抜出、減圧留去した。
【0083】
<工程−3>
工程−2で得られた粗1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン中には未反応のジグリシジルオキシヒドロキシナフタレンが残存している。そこで、工程−2と同様に、反応、分離、水層抜出、減圧留去することにより、茶褐色液体の粗製1,2,4−トリグリシジルナフタレン(E−2)21.0gを得た。GPC純度は52%、エポキシ当量は211g/eqであった。この粗製品をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/1(vol/vol))で精製し、薄黄色液体の精製1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン(E−3)を得た。GPC純度は87%、エポキシ当量は179g/eqであった。
【0084】
得られた化合物は、IR、H−NMR及びMassスペクトルにより、1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレンであることを確認した。各物性測定の結果は次のとおりである。
【0085】
(1)IR(KBr、cm−1):3075,3010,2938,2896,1640,1607,1475,1460,1420,1396,1365,1349,1377,1360,1215,1150,1109,1057,978,916,842,768
【0086】
(2)H−NMR(CDCl,ppm):δ2.58−2.95(m,4H,メチレン×2),3.14−3.20(m,1H,メチン),3.41−3.51(m,2H,メチン×2),3.75−4.47(m,8H,メチレン×4),6.47(s,1H,ナフタレン環),7.25−7.38(m,1H,ナフタレン環),7.44−7.50(m,1H,ナフタレン環),8.00(d,1H,ナフタレン環),8.16(d,1H,ナフタレン環)
【0087】
(3)Massスペクトル:(EI−MS)m/z=344(M+)
【0088】
試験例1(ジグリシジルオキシヒドロキシナフタレン(E−1)の硬化方法と硬化物の評価):
【0089】
合成例2で得たジグリシジルオキシヒドロキシナフタレン(E−1、エポキシ当量299g/eq)100重量部に、硬化剤としてメチルテトラヒドロ無水フタル酸を混合し(無水物/エポキシ価の当量比が0.9/1)、更に、硬化促進剤として4−ジメチルアミノピリジン1.0重量部を混合してエポキシ樹脂組成物を得た。次いで、100℃で2時間、150℃で2時間、180℃で2時間加熱して硬化物を得た。得られた硬化物のガラス転移温度(Tg)を表1に示した。Tgの測定は、JIS K 7121に準拠し、DSCにより測定した(以下、同じ)。
【0090】
試験例2(粗製1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン(E−2)の硬化方法と硬化物の評価):
試験例1において、E−1の代わりに合成例3で得た粗製1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン(E−2、エポキシ当量211g/eq)を使用する以外は、試験例1と同様の操作により、エポキシ樹脂組成物および硬化物を得た。得られた硬化物のTgを表1に示した。
【0091】
試験例3(精製1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン(E−3)の硬化方法と硬化物の評価):
試験例1において、E−1の代わりに合成例3で得た精製1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン(E−3、エポキシ当量179g/eq)を使用する以外は、試験例1と同様の操作により、エポキシ樹脂組成物および硬化物を得た。得られた硬化物のTgを表1に示した。
【0092】
比較試験例1(トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルの硬化方法と硬化物の評価):
試験例1において、E−1の代わりにトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(E−4、エポキシ当量145g/eq、シグマアルドリッチジャパン(株)製試薬)を使用する以外は、試験例1と同様の操作により、エポキシ樹脂組成物および硬化物を得た。得られた硬化物のTgを表1に示した。
【0093】
【表1】

【0094】
表1から次のことが明らかである。すなわち、本発明の1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレン(E−2、E−3)の硬化物のガラス転移温度は、比較例1で得られたエポキシ化合物(E−4)の硬化物のガラス転移温度よりも高いことから、耐熱性に優れている。そして、前述のとおり、1,2,4−トリグリシジルオキシナフタレンは常温で液状であり、取扱いが容易である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるエポキシ化合物。
【化1】

(一般式(1)において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アリル基、アラルキル基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基の何れかを示し、Rは、グリシジルオキシ基、β−アルキルグリシジルオキシ基、ヒドロキシ基の何れかであることを条件とし、かつ、Rの少なくとも1つはグリシジルオキシ基またはβ−アルキルグリシジルオキシ基を示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基の何れかを示す。)
【請求項2】
一般式(1)が下記一般式(2)である請求項1に記載のエポキシ化合物。
【化2】

(一般式(2)において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アリル基、アラルキル基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基の何れかを示し、Rは、水素原子、アルキル基の何れかを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基の何れかを示す。)
【請求項3】
一般式(2)のR、R、及びXが水素原子である請求項2に記載のエポキシ化合物。
【請求項4】
一般式(1)が下記一般式(3)である請求項1に記載のエポキシ化合物。
【化3】

(一般式(3)において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アリル基、アラルキル基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基の何れかを示し、Rは、水素原子、アルキル基の何れかを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基の何れかを示す。)
【請求項5】
一般式(3)のR、R、及びXが水素原子である請求項4に記載のエポキシ化合物。
【請求項6】
塩基性化合物の存在下、下記一般式(4)で表される1,2,4−トリヒドロキシナフタレン誘導体を下記一般式(5)で表されるエピハロヒドリン化合物と反応させることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のエポキシ化合物の製造方法。
【化4】

(一般式(4)において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アリル基、アラルキル基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基の何れかを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基の何れかを示す。)
【化5】

(一般式(5)において、Rは、水素原子、アルキル基の何れかを示し、Yはハロゲン原子を示す。)
【請求項7】
請求項6に記載のエポキシ化合物の製造方法であって、一般式(2)のR、R、及びXが水素原子であるエポキシ化合物の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載のエポキシ化合物の製造方法であって、一般式(3)のR、R、及びXが水素原子であるエポキシ化合物の製造方法。
【請求項9】
成分として請求項1〜5の何れかに記載されたエポキシ化合物を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
請求項9に記載されたエポキシ樹脂組成物を硬化させて成る硬化体。

【公開番号】特開2009−209117(P2009−209117A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56330(P2008−56330)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000199795)川崎化成工業株式会社 (133)
【Fターム(参考)】