説明

エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよびそれらの硬化物

【課題】本発明は熱伝導性に優れた樹脂組成物、半導体封止材料、プリプレグ及び硬化物を提供することを目的とする。
【解決手段】
ジヒドロキシナフタレン類とエピハロヒドリンとを反応させることにより得られるエポキシ樹脂、アミン系化合物、またはカテコールとアルデヒド類、ケトン類若しくは下記A群に記載の化合物との縮合物からなる群から選択される少なくとも1種の硬化剤及び熱伝導率20W/m・K以上の無機充填材を含有してなるエポキシ樹脂組成物及び溶剤を含むワニス。
A群:
ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、(4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱伝導率が高いエポキシ樹脂と熱伝導率が高い無機充填材とを混合した高熱伝導性エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂組成物は、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。近年、前記分野のエポキシ樹脂の硬化物には高純度化を始め、難燃性、耐熱性、耐湿性、強靭性、低線膨張率、低誘電率特性など諸特性の一層の向上が求められている。
【0003】
その中でも、電気・電子産業は多機能化、高性能化、コンパクト化が著しく進展しており、半導体の高密度実装、プリント配線板の高密度配線化が進んでいる。極度な高密度実装や高密度配線は内部で発生する熱を逃がしきれず、誤作動の原因となりうる。そのため、発生した熱をいかにして効率よく外部に放出させるかということがエネルギー効率、機器設計の上からも重要な課題となっている。
現在、その熱対策としてはメタルコア基板を使用したり、設計の段階で放熱しやすい構造を組んだり、使用する高分子材料(エポキシ樹脂)に高熱伝導フィラーを細密充填したりするなど、様々な工夫がなされている。しかしながら、高熱伝導部位を繋げるバインダー役のエポキシ樹脂の熱伝導率が低いため、エポキシ樹脂の熱伝導スピードが律速となり、効率的な放熱ができていないのが現状である。
【0004】
エポキシ樹脂の高熱伝導化を実現する手段としては、メソゲン基を構造中に導入することが特許文献1に報告されている。同文献にはメソゲン基を有するエポキシ樹脂として、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂などが記載されている。またビフェニル骨格以外のエポキシ樹脂としてはフェニルベンゾエート型のエポキシ樹脂が記載されているが、該エポキシ樹脂を製造する際には酸化によるエポキシ化反応を行う必要があることから、安全性やコストに難があり実用的とは言えない。ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を用いた例としては特許文献2〜4が挙げられ、中でも特許文献4には高熱伝導率を有する無機充填材を併用する手法が記載されている。しかしながら、これら文献に記載の手法により得られる硬化物の熱伝導性は市場の要望を満足するレベルでは無く、比較的安価に入手可能なエポキシ樹脂を用いた、より高い熱伝導率を有する硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物が求められている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−323162号公報
【特許文献2】特開2003−137971号公報
【特許文献3】特開2004−2573号公報
【特許文献4】特開2006−63315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような問題を解決すべく検討の結果なされたものであり、その硬化物が高い熱伝導性を有する、特定構造のエポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は
(1)ジヒドロキシナフタレン類とエピハロヒドリンとを反応させることにより得られるエポキシ樹脂、硬化剤及び熱伝導率20W/m・K以上の無機充填材を含有してなるエポキシ樹脂組成物、
(2)半導体封止用途に用いられる(1)に記載のエポキシ樹脂組成物、
(3)請求項1記載のエポキシ樹脂組成物及びシート状の繊維基材からなるプリプレグ、
(4)(1)もしくは(2)に記載のエポキシ樹脂組成物、または請求項3に記載のプリプレグを硬化してなる硬化物、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、その硬化物が熱伝導に優れているため、半導体封止材料、プリプレグを始めとする各種複合材料、接着剤、塗料等に使用する場合に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、ジヒドロキシナフタレン類のエポキシ化物、硬化剤及び熱伝導率20W/m・K以上の無機充填材を含有する。
【0010】
本発明に用いられるジヒドロキシナフタレン類とはナフタレン環に2つの水酸基を有する化合物であり、水酸基の置換位置は特に限定されない。また、水酸基の存在する位置以外は水素原子、もしくは炭素数1〜8の炭化水素基を有する。炭素数1〜8からなる炭化水素基としては飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基のどちらでも良く、その構造も直鎖状、分岐状、環状等何ら限定されない。これら炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等のアリール基等が挙げられる。
本発明におけるジヒドロキシナフタレン類はエポキシ樹脂の配列を阻害しない点から前記のよう置換基を有しないジヒドロキシナフタレンが好ましい。
本発明において使用できるジヒドロキシナフタレンとして、例えば1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレンなどが挙げられる。
ジヒドロキシナフタレン類は先に挙げた条件を満たす構造の化合物であれば、2種以上の化合物を含んでいても構わないが、硬化時の配列のしやすさを考慮すると単一の化合物が好ましい。
【0011】
本発明のエポキシ樹脂組成物が含有するジヒドロキシナフタレン類のエポキシ化物はジヒドロキシナフタレン類とエピハロヒドリンとを反応させ、エポキシ化することにより得られる。以下、本発明のエポキシ樹脂組成物が含有するジヒドロキシナフタレン類のエポキシ化物を「本発明のエポキシ樹脂」という。
【0012】
本発明のエポキシ樹脂を得る反応において、エピハロヒドリンとしてはエピクロルヒドリン、α-メチルエピクロルヒドリン、β-メチルエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が使用でき、本発明においては工業的に入手が容易なエピクロルヒドリンが好ましい。エピハロヒドリンの使用量はジヒドロキシナフタレン類の水酸基1モルに対し通常2〜20モル、好ましくは4〜10モルである。
【0013】
上記反応において使用できるアルカリ金属水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、固形物を利用してもよく、その水溶液を使用してもよい。水溶液を使用する場合は該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に減圧下、または常圧下連続的に水及びエピハロヒドリンを留出させ、更に分液して水を除去し、エピハロヒドリンを反応系内に連続的に戻す方法でもよい。アルカリ金属水酸化物の使用量はジヒドロキシナフタレン類の水酸基1モルに対して通常0.9〜3.0モルであり、好ましくは1.0〜2.5モル、より好ましくは1.1〜2.0モルである。
【0014】
反応を促進するためにテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加することが好ましい。4級アンモニウム塩の使用量としてはジヒドロキシナフタレン類の水酸基1モルに対し通常0.1〜15gであり、好ましくは0.2〜10gである。
【0015】
また、エポキシ化の際に、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが反応進行上好ましい。
【0016】
上記アルコール類を使用する場合、その使用量はエピハロヒドリンの使用量に対し通常2〜50質量%、好ましくは4〜20質量%である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はエピハロヒドリンの使用量に対し通常5〜100質量%、好ましくは10〜80質量%である。
【0017】
反応温度は通常30〜90℃であり、好ましくは35〜80℃である。反応時間は通常0.5〜10時間であり、好ましくは1〜8時間である。
反応終了後、反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下でエピハロヒドリンや溶媒等を除去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、回収したエポキシ樹脂をトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて反応を行ない、閉環を確実なものにすることも出来る。この場合アルカリ金属水酸化物の使用量は前述のジヒドロキシナフタレン類の水酸基1モルに対して通常0.01〜0.3モル、好ましくは0.05〜0.2モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜2時間である。
【0018】
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に加熱減圧下溶剤を留去することにより本発明のエポキシ樹脂が得られる。また、本発明のエポキシ樹脂が結晶として析出する場合は、大量の水で生成した塩を水に溶解し、濾過することにより得らることもできる。
【0019】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のエポキシ樹脂は単独でまたは他のエポキシ樹脂と併用して使用することができる。併用する場合、本発明のエポキシ樹脂の全エポキシ樹脂中に占める割合は20質量%以上が好ましく、特に30質量%以上が好ましい。
【0020】
本発明のエポキシ樹脂と併用できる他のエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、ビスフェノールAD及びビスフェノールI等)やフェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン及びジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド及びシンナムアルデヒド等)との重縮合物、キシレン等の芳香族化合物とホルムアルデヒドの重縮合物とフェノール類との重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物(ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン及びイソプレン等)との重合物、フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン及びベンゾフェノン等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ジメタノール類(ベンゼンジメタノール及びビフェニルジメタノール等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ジクロロメチル類(α,α’−ジクロロキシレン及びビスクロロメチルビフェニル等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ビスアルコキシメチル類(ビスメトキシメチルベンゼン、ビスメトキシメチルビフェニル及びビスフェノポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等が挙げられるが、通常用いられるエポキシ樹脂であればこれらに限定されるものではない。これらは、1種類のみ使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂組成物が含有する無機充填材としては、20W/m・K以上の熱伝導率を有するものであれば何ら制限はない。無機充填材の熱伝導率の上限は3000W/m・K、好ましくは500W/m・Kが好ましい。尚、ここでいう熱伝導率とは、ASTM E1530に準拠した方法で測定した値である。この様な特性を有する無機充填材の具体例としては、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化チタン、酸化亜鉛、炭化タングステン、アルミナ、酸化マグネシウム等の無機粉末充填材、合成繊維、セラミックス繊維等の繊維質充填材、着色剤等が挙げられる。これら無機充填材の形状は、粉末(塊状、球状)、単繊維、長繊維等いずれであってもよいが、特に、平板状のものであれば、無機充填材自身の積層効果によって硬化物の熱伝導性がより高くなり、硬化物の放熱性が更に向上するので好ましい。また、無機充填材の熱伝導率が30W/m・K以上であればエポキシ樹脂組成物の硬化物の熱伝導率が更に向上するので好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物における無機充填材の使用量は、エポキシ樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対して通常2〜1000質量部であるが、熱伝導率を出来るだけ高める為には、本発明のエポキシ樹脂組成物の具体的な用途における取り扱い等に支障を来たさない範囲で、可能な限り無機充填材の使用量を増やすことが好ましい。これら無機充填材は1種のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0022】
また、充填材全体としての熱伝導率を20W/m・K以上に維持できる範囲であれば、熱伝導率が20W/m・K以上の無機充填材に熱伝導率が20W/m・K以下の充填材を併用しても構わないが、出来るだけ熱伝導率の高い硬化物を得るという本発明の目的からして、熱伝導率が20W/m・K以下の充填材の使用は最小限に留めるべきである。併用し得る充填材の種類や形状に特に制限はない。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂組成物を半導体封止用途に用いる場合、硬化物の耐熱性、耐湿性、力学的性質などの点から、エポキシ樹脂組成物中において80〜93質量%を占める割合で熱伝導率が20W/m・K以上の無機充填材使用するのが好ましい。この場合、残部は本発明のエポキシ樹脂、硬化剤及びその他必要に応じて添加される添加剤であり、添加剤としては他のエポキシ樹脂、併用しうる他の無機充填材及び硬化促進剤等である。
【0024】
本発明のエポキシ樹脂組成物が含有する硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物及びフェノール系化合物等が挙げられる。これら各硬化剤の具体例を下記(a)〜(e)に示す。
(a)アミン系化合物
ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン及びナフタレンジアミン等
(b)酸無水物系化合物
無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルヘキサヒドロ無水フタル酸等
(c)アミド系化合物
ジシアンジアミド、若しくはリノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂等、
【0025】
(d)フェノール系化合物
多価フェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン及び1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等);フェノール類(例えば、フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン及びジヒドロキシナフタレン等)と、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド及びフルフラール等)、ケトン類(p−ヒドロキシアセトフェノン及びo−ヒドロキシアセトフェノン等)、若しくはジエン類(ジシクロペンタジエン及びトリシクロペンタジエン等)との縮合により得られるフェノール樹脂;前記フェノール類と、置換ビフェニル類(4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル及び4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル等)、若しくは置換フェニル類(1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン及び1,4−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等)等との重縮合により得られるフェノール樹脂;前記フェノール類及び/又は前記フェノール樹脂の変性物;テトラブロモビスフェノールA及び臭素化フェノール樹脂等のハロゲン化フェノール類
(e)その他イミダゾール類、BF-アミン錯体、グアニジン誘導体
これら硬化剤の中ではジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン及びナフタレンジアミンなどのアミン系化合物、並びにカテコールとアルデヒド類、ケトン類、ジエン類、置換ビフェニル類又は置換フェニル類との縮合物などの活性水素基が隣接している構造を有する硬化剤がエポキシ樹脂の配列に寄与するため好ましい。
上記の硬化剤は単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0026】
本発明のエポキシ樹脂組成物において硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.5〜2.0当量が好ましく、0.6〜1.5当量が特に好ましい。
【0027】
本発明のエポキシ樹脂組成物には硬化促進剤を含有させることもできる。使用できる硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール及び2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、トリエタノールアミン及び1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン及びトリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート及びテトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート及びN−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。硬化促進剤は、エポキシ樹脂100部に対して0.01〜15部が必要に応じ用いられる。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物には必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤及び顔料等種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂並びに各種熱可塑性樹脂等を添加することができる。熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の具体例としてはビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、シアナート樹脂、イソシアナート化合物、ベンゾオキサジン化合物、ビニルベンジルエーテル化合物、ポリブタジエンおよびこの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物、インデン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリエチレン、ジシクロペンタジエン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂は本発明のエポキシ樹脂組成物中において60質量%以下を占める量が用いられる。
【0029】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記各成分を均一に混合することにより得られ、その好ましい用途としては半導体封止材やプリント配線版等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られているのと同様の方法で容易にその硬化物とすることが出来る。例えば、本発明のエポキシ化物、硬化剤及び熱伝導率が20W/m・K以上の無機充填材、並びに必要により硬化促進剤、配合剤、各種熱硬化性樹脂や各種熱可塑性樹脂等を必要に応じて押出機、ニーダ又はロール等を用いて均一になるまで充分に混合して得られた本発明のエポキシ樹脂組成物を、溶融注型法あるいはトランスファー成型法やインジェクション成型法、圧縮成型法などによって成型し、更にその融点以上で2〜10時間加熱することにより本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得ることが出来る。前述の方法でリードフレーム等に搭載された半導体素子を封止することにより、本発明のエポキシ樹脂組成物を半導体封止用途に用いることができる。
【0030】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は溶剤を含むワニスとすることもできる。該ワニスは、本発明のエポキシ樹脂、硬化剤及び熱伝導率が20W/m・K以上の無機充填材、並びに必要に応じてその他の成分を含む混合物を、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のエステル類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ及びソルベントナフサ等の石油系溶剤等の有機溶剤と混合することにより得ることが出来る。溶剤の量はワニス全体に対し通常10〜95質量%、好ましくは15〜85質量%である。
上記のようにして得られるワニスをガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維及び紙などの基材に含浸させた後に加熱によって溶剤を除去すると共に、本発明のエポキシ樹脂組成物を半硬化状態とすることにより、本発明のプリプレグを得ることが出来る。尚、ここで言う「半硬化状態」とは、反応性の官能基であるエポキシ基が一部未反応で残っている状態を意味する。該プリプレグを熱プレス成型して硬化物を得ることが出来る。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例で更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。合成例、実施例、比較例において部は質量部を意味する。なお、エポキシ当量、融点、軟化点は以下の条件で測定した。
・エポキシ当量
JIS K−7236に記載された方法で測定し、単位はg/eq.である。
【0032】
合成例1
1,5−ジヒドロキシナフタレン80部にエピクロルヒドリン370部、ジメチルスルホキシド92.5部を加えて溶解後、45℃まで昇温し、フレーク状水酸化ナトリウム(純度99%)40部を90分かけて添加した。その後、45℃で90分及び70℃で30分間反応を行い、室温まで冷却した。析出した結晶および無機塩を濾過、次いで水洗を繰り返し、無機塩を除去した後、得られた結晶を真空乾燥した。その結果、エポキシ樹脂(E1)130部を得た。
【0033】
合成例2
合成例1の1,5−ジヒドロキシナフタレンを2,6−ジヒドロキシナフタレンに変更する以外は同様の操作手順によりエポキシ樹脂(E2)130部を得た。
【0034】
合成例3
1,4−ジヒドロキシナフタレン80部にエピクロルヒドリン370部、ジメチルスルホキシド92.5部を加えて溶解後、45℃まで昇温し、フレーク状水酸化ナトリウム(純度99%)40部を90分かけて添加した。その後、45℃で90分及び70℃で30分間反応を行った。
反応終了後、油層からロータリーエバポレーターを用いて130℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン220部を加え溶解し、水洗を行なった。70℃にまで昇温した。撹拌下で30質量%の水酸化ナトリウム水溶液3部を加え、1時間反応を行なった後、洗浄水が中性になるまで水洗を行ない、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することにより本発明のエポキシ樹脂(E3)130部を得た。
【0035】
合成例4
合成例3の1,4−ジヒドロキシナフタレンを1,6−ジヒドロキシナフタレンに変更する以外は同様の操作手順により本発明のエポキシ樹脂(E4)130部を得た。
【0036】
合成例5
合成例3の1,4−ジヒドロキシナフタレンを2,7−ジヒドロキシナフタレンに変更する以外は同様の操作手順により本発明のエポキシ樹脂(E5)130部を得た。
【0037】
実施例1〜5、比較例1
各種成分を表1の割合(部)で配合し、ミキシングロールで混練、タブレット化後、トランスファー成形で樹脂成形体を調製し、160℃で2時間、更に180℃で8時間加熱を行い、本発明のエポキシ樹脂組成物及び比較用樹脂組成物の硬化物を得た。これら硬化物の熱伝導率を測定した結果を表1に示す。なお、熱伝導率は以下の要領で測定した。
熱伝導率:ASTM E1530に準拠した方法で測定
【0038】
【表1】

【0039】
注)
(E1):合成例1で得られたエポキシ樹脂(エポキシ当量139g/eq.)
(E2):合成例2で得られたエポキシ樹脂(エポキシ当量146g/eq.)
(E3):合成例3で得られたエポキシ樹脂(エポキシ当量142g/eq.)
(E4):合成例4で得られたエポキシ樹脂(エポキシ当量144g/eq.)
(E5):合成例5で得られたエポキシ樹脂(エポキシ当量148g/eq.)
(E6):下記式(1)及び(2)で表されるエポキシ樹脂を等モル含有するビフェニル型エポキシ樹脂(商品名:YL−6121H ジャパンエポキシレジン製 エポキシ当量175g/eq.)
【0040】
【化1】

【0041】
【化2】

【0042】
(H1):1,5−ナフタレンジアミン(東京化成工業製、アミン当量40g/eq.)
(F1):球状アルミナ(商品名:DAW−100 電気化学工業製、熱伝導率38W/m・K)
(F2):窒化ホウ素(商品名:SGP 電気化学工業製、熱伝導率60W/m・K)
【0043】
実施例6
ジメチルホルムアミド1000部に合成例2で得られたエポキシ樹脂100部を70℃で溶解させた後、室温に戻した。
ジメチルホルムアミド48部に硬化剤である1,5−ナフタレンジアミン(東京化成製、アミン当量40g/eq.)27部を70℃で溶解させた後、室温に戻した。上記のエポキシ樹脂溶液と硬化剤溶液を、撹拌羽タイプのホモミキサで混合・撹拌して均一なワニスにし、さらに無機充填材として窒化ホウ素(商品名:SGP 電気化学工業製、熱伝導率60W/m・K)242部(樹脂固形分100体積部に対し50体積部)、およびジメチルホルムアミド100部を加えて混合・撹拌し、本発明のエポキシ樹脂(ワニス)を調製した。
このエポキシ樹脂組成物のワニスを、厚さ0.2mmのガラス繊維織布(商品名:7628/AS890AW 旭シュエーベル製)に含浸させ、加熱乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ4枚とその両側に配した銅箔を重ね合わせた後、温度175℃、圧力4MPaの条件で90分間加熱加圧成型して一体化し、厚さ0.8mmの積層板を得た。この積層板の熱伝導率を測定したところ、4.6W/m・Kであった。
【0044】
実施例6
ジメチルホルムアミド1000部に合成例2で得られたエポキシ樹脂(E2)100部を70℃で溶解させた後、室温に戻した。
ジメチルホルムアミド48部に硬化剤である1,5−ナフタレンジアミン(東京化成製、アミン当量40g/eq.)27部を70℃で溶解させた後、室温に戻した。上記のエポキシ樹脂溶液と硬化剤溶液を、撹拌羽タイプのホモミキサで混合・撹拌して均一なワニスにし、さらに無機充填材として(商品名:SGP 電気化学工業製、熱伝導率60W/m・K)242部(樹脂固形分100体積部に対し50体積部)、およびジメチルホルムアミド100部を加えて混合・撹拌し、本発明のエポキシ樹脂(ワニス)を調製した。
このエポキシ樹脂組成物のワニスを、厚さ0.2mmのガラス繊維織布(商品名:7628/AS890AW 旭シュエーベル製)に含浸させ、加熱乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ4枚とその両側に配した銅箔を重ね合わせた後、温度175℃、圧力4MPaの条件で90分間加熱加圧成型して一体化し、厚さ0.8mmの積層板を得た。この積層板の熱伝導率を測定したところ、4.6W/m・Kであった。
【0045】
比較例2
実施例6のエポキシ樹脂(E2)100部をYL−6121H100部、1,5−ナフタレンジアミンの量を23部、窒化ホウ素の量を234部に変更する以外は実施例6と同様の操作手順により積層板を得た。この積層板の熱伝導率を測定したところ、3.6W/m・Kであった。
【0046】
以上の結果より、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、優れた熱伝導性を有することが確認できた。したがって本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、電気・電子部品用絶縁材料及び積層板(プリント配線板など)等に使用する場合に極めて有用である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、従来のエポキシ樹脂の硬化物と比較して優れた熱伝導性を有する。従って、封止材、プリプレグ等として電気・電子材料、成型材料、注型材料、積層材料、塗料、接着剤、レジスト、光学材料などの広範囲の用途に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジヒドロキシナフタレン類とエピハロヒドリンとを反応させることにより得られるエポキシ樹脂、アミン系化合物、またはカテコールとアルデヒド類、ケトン類若しくは下記A群に記載の化合物との縮合物からなる群から選択される少なくとも1種の硬化剤及び熱伝導率20W/m・K以上の無機充填材を含有してなるエポキシ樹脂組成物及び溶剤を含むワニス。
A群:
ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、(4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン

【公開番号】特開2013−60607(P2013−60607A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−567(P2013−567)
【出願日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【分割の表示】特願2008−311752(P2008−311752)の分割
【原出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】