説明

エポキシ系接着剤

【課題】エポキシ系接着剤において、CKD輸送における高温多湿の条件に十分に対応するために水分吸収剤を多量に配合しても、優れた接着性と硬化性とを確保できるエポキシ系接着剤の提供。
【解決手段】室温で液状の汎用エポキシ樹脂と、変性エポキシ樹脂と、硬化剤と、ゲル化剤と、水分吸収剤とを含有するエポキシ系接着剤であって、前記汎用エポキシ樹脂100重量部に対して前記変性エポキシ樹脂が20重量部〜100重量部の範囲内で含有され、前記汎用エポキシ樹脂及び前記変性エポキシ樹脂の合計100重量部に対して前記ゲル化剤が5重量部〜100重量部の範囲内で含有され、前記エポキシ系接着剤100重量%中に前記水分吸収剤が10重量%〜70重量%の範囲内で含有されることを特徴とするエポキシ系接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等のドアやフード等の蓋物部品のヘミング加工部分に使用されるエポキシ系接着剤に関するものであり、特に、CKD(Complete Knock Down )輸送等の高温多湿条件下に置かれた場合においても接着性及び硬化性が低下することのないエポキシ系接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国から海外に輸出される自動車等の車両は、従来は国内で完全に生産され(CBU:Complete Built Up )、完成車として輸出されていたが、近年における国際環境の変化にしたがって日本の自動車メーカーによる海外生産が拡大し、これに伴ってノックダウン(KD:Knock Down)生産のための未完成車の輸出が次第に増加してきた。特に、分解の程度の大きいCKD(Complete Knock Down )輸出においては、ドアやフード(ボンネット)等の蓋物部品についても、そのまま梱包されてコンテナ輸送されている。
【0003】
これらの蓋物部品においては、ヘミング加工部分に熱硬化性の接着剤が未硬化の状態で塗布されているが、CKD輸出先の国や地域によっては、かかる未硬化の接着剤が高温多湿の条件下に長期間放置される場合がある。このような場合には、未硬化の接着剤中に水分が吸収されて、CKD輸出先において加熱硬化される際に、この水分が急激に蒸発して発泡を生じてしまうことになり、これによって性能面で問題が生ずることがあった。
【0004】
そこで、かかる水分の吸収の問題を解決するために、特許文献1においては、エポキシ系樹脂、硬化剤に加えて、充填剤としての酸化カルシウムを1重量%〜32重量%含有した異材接合用接着剤を用いた異材接合方法の発明について開示している。これによって、接着剤の吸湿を抑えて変質を防ぐとともに、加熱による発泡を未然に防ぐことができるとしている。
【特許文献1】特開2007−136497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においては、充填剤としての酸化カルシウムの含有量が32重量%を超えると、剥離強度が低下して目標とする接合強度を達成することができないという結果が出ている。したがって、高温多湿の条件に十分に対応するために水分吸収剤を多量に配合した場合には、十分な剥離強度を得ることができないという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであって、CKD輸送における高温多湿の条件に十分に対応するために水分吸収剤を多量に配合しても、優れた接着性と硬化性とを確保することができるエポキシ系接着剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係るエポキシ系接着剤は、室温で液状の汎用エポキシ樹脂と、変性エポキシ樹脂と、硬化剤と、ゲル化剤と、水分吸収剤とを含有するエポキシ系接着剤であって、前記汎用エポキシ樹脂100重量部に対して前記変性エポキシ樹脂が20重量部〜100重量部の範囲内で含有され、前記汎用エポキシ樹脂及び前記変性エポキシ樹脂の合計100重量部に対して前記ゲル化剤が5重量部〜100重量部の範囲内で含有され、前記エポキシ系接着剤100重量%中に前記水分吸収剤が10重量%〜70重量%の範囲内で含有されるものである。
【0008】
ここで、「室温で液状の汎用エポキシ樹脂」としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を始めとする種々の汎用エポキシ樹脂がある。また、「変性エポキシ樹脂」としては、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂を始めとする種々の変性エポキシ樹脂がある。更に、「硬化剤」としては、ジシアンジアミドとエポキシ樹脂アミンアダクト化合物、ジシアンジアミドとエポキシ樹脂イミダゾールアダクト化合物を始めとして、種々の硬化剤を用いることができる。また、「水分吸収剤」としては、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)を始めとして、種々の水分吸収剤を用いることができる。
【0009】
請求項2の発明に係るエポキシ系接着剤は、請求項1の構成において、前記室温で液状の汎用エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/またはビスフェノールF型エポキシ樹脂であるものである。ここで、「及び/または」とは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のみでも良いし、ビスフェノールF型エポキシ樹脂のみでも良いし、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂を混合して用いても良いという意味である。
【0010】
請求項3の発明に係るエポキシ系接着剤は、請求項1または請求項2の構成において、前記変性エポキシ樹脂は、ウレタン変性エポキシ樹脂及び/またはゴム変性エポキシ樹脂であるものである。ここで、「及び/または」とは、ウレタン変性エポキシ樹脂のみでも良いし、ゴム変性エポキシ樹脂のみでも良いし、ウレタン変性エポキシ樹脂及びゴム変性エポキシ樹脂を混合して用いても良いという意味である。
【0011】
ここで、「ウレタン変性エポキシ樹脂」として、より具体的には、例えば(株)ADEKA製のEPU−78−11等を用いることができる。また、「ゴム変性エポキシ樹脂」として、より具体的には、例えば(株)ADEKA製のEPR−1395等を用いることができる。
【0012】
請求項4の発明に係るエポキシ系接着剤は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記硬化剤は、ジシアンジアミドとエポキシ樹脂アミンアダクト化合物、またはジシアンジアミドとエポキシ樹脂イミダゾールアダクト化合物であるものである。
【0013】
請求項5の発明に係るエポキシ系接着剤は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つの構成において、前記ゲル化剤は、アクリル樹脂粉末であるものである。ここで、「アクリル樹脂」とは、広くアクリル樹脂及びメタクリル樹脂を含むものであって、アクリル酸アルキルエステルやメタクリル酸アルキルエステル等から選ばれるモノマーの単一重合体や共重合体を意味するものであり、これらのモノマーとして具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル等を始めとして、種々のモノマーを用いることができる。
【0014】
請求項6の発明に係るエポキシ系接着剤は、請求項1乃至請求項5のいずれか1つの構成において、前記水分吸収剤は、酸化カルシウム(CaO)であるものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明に係るエポキシ系接着剤は、100重量%中に水分吸収剤を10重量%〜70重量%の範囲内で含有するため、ドア、フード等の蓋物部品にエポキシ系接着剤が塗布された状態でCKD輸送の高温多湿条件に曝されても、水分吸収剤によって水分が除去されるため、CKD輸送後における加熱硬化時に水分の急激な蒸発に起因する発泡が確実に防止される。ここで、水分吸収剤の添加量が10重量%未満であると、水分吸収効果が小さく発泡してしまい、一方、水分吸収剤の添加量が70重量%を超えると、粘度が高くなって接着剤としての塗布が困難となる。
【0016】
そして、汎用エポキシ樹脂100重量部に対して変性エポキシ樹脂が20重量部〜100重量部の範囲内で含有されることから、水分吸収剤が10重量%〜70重量%の範囲内で含有されていても、高い剥離強度を示し、優れた接着性を保持する。ここで、変性エポキシ樹脂が20重量部未満であると剥離強度が大きく低下し、一方、変性エポキシ樹脂が100重量部を超えると、加熱硬化後の硬度が低下して軟らかくなってしまう。
【0017】
更に、汎用エポキシ樹脂及び変性エポキシ樹脂の合計100重量部に対してゲル化剤が5重量部〜100重量部の範囲内で含有されているため、CKD輸送の高温多湿条件に曝された後の加熱硬化時においても、汎用エポキシ樹脂及び変性エポキシ樹脂が発泡することなくゲル化して、良好な硬化性を示すエポキシ系接着剤となる。ここで、ゲル化剤が5重量部未満であると、加熱硬化時にゲル化せずに発泡してしまい、一方ゲル化剤が100重量部を超えると粘度が高くなって接着剤としての塗布が困難となる。
【0018】
このようにして、CKD輸送における高温多湿の条件に十分に対応するために水分吸収剤を多量に配合しても、優れた接着性と硬化性とを確保することができるエポキシ系接着剤となる。
【0019】
請求項2の発明に係るエポキシ系接着剤においては、室温で液状の汎用エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/またはビスフェノールF型エポキシ樹脂であることから、入手が容易であり、しかも安価であるため、エポキシ系接着剤をより低コストで製造することができる。
【0020】
請求項3の発明に係るエポキシ系接着剤においては、変性エポキシ樹脂が、ウレタン変性エポキシ樹脂及び/またはゴム変性エポキシ樹脂であることから、入手が容易であり安価であるため、エポキシ系接着剤を低コストで製造することができる。更に、加熱硬化時の発泡をより確実に抑えることができ、より確実に優れた接着性と硬化性とを得ることができる。
【0021】
請求項4の発明に係るエポキシ系接着剤においては、硬化剤が、ジシアンジアミドとエポキシ樹脂アミンアダクト化合物、またはジシアンジアミドとエポキシ樹脂イミダゾールアダクト化合物であることから、入手が容易であり安価であるため、エポキシ系接着剤を低コストで製造することができる。
【0022】
請求項5の発明に係るエポキシ系接着剤においては、ゲル化剤がアクリル樹脂粉末であることから、入手が容易であり、しかも安価であるため、エポキシ系接着剤をより低コストで製造することができる。
【0023】
請求項6の発明に係るエポキシ系接着剤においては、水分吸収剤が酸化カルシウムであることから、入手が容易であり、しかも安価であるため、多量に配合した場合でもエポキシ系接着剤を低コストで製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るエポキシ系接着剤の膨れ抑制性の評価方法を示す説明図である。まず、本発明の実施の形態に係る紫外線硬化型シーリング材の配合成分と配合比について説明する。
【0025】
本実施の形態に係るエポキシ系接着剤においては、「室温で液状の汎用エポキシ樹脂」として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた。また、「変性エポキシ樹脂」としてはウレタン変性エポキシ樹脂またはゴム変性エポキシ樹脂を使用し、より具体的には、ウレタン変性エポキシ樹脂として(株)ADEKA製のEPU−78−11を用いて、ゴム変性エポキシ樹脂として(株)ADEKA製のEPR−1395等を用いた。これらの「変性エポキシ樹脂」は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂60重量部に対して、40重量部の配合比で添加した。
【0026】
更に、本実施の形態に係るエポキシ系接着剤においては、「ゲル化剤」としてアクリル樹脂粉末を使用し、より具体的にはガンツ化成(株)製のゼフィアックF351を用いた。この「ゲル化剤」は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂60重量部に対して、10重量部の配合比で添加した。また、「硬化剤」としてはジシアンジアミドとエポキシ樹脂アミンアダクト化合物を使用し、ビスフェノールA型エポキシ樹脂60重量部に対して、合計で10重量部の配合比で添加した。
【0027】
そして、「水分吸収剤」としては酸化カルシウムを、ビスフェノールA型エポキシ樹脂60重量部に対して、30重量部の配合比で添加した。他には、「充填剤」として炭酸カルシウムを、ビスフェノールA型エポキシ樹脂60重量部に対して、20重量部の配合比で添加した。また、「着色顔料」としてカーボンを、ビスフェノールA型エポキシ樹脂60重量部に対して、2重量部の配合比で添加した。
【0028】
これらの配合物を混合して、実施例1及び実施例2の2種類の本実施の形態に係るエポキシ系接着剤を作製した。また、比較のために、実施例1と配合物は同じであるが配合比を変えて、比較例1乃至比較例3までの3種類の比較用のエポキシ系接着剤を作製した。本実施の形態に係る実施例1及び実施例2、並びに比較例1乃至比較例3の5種類のエポキシ系接着剤の配合成分と配合比(重量部)を、表1にまとめて示す。
【0029】
【表1】

【0030】
表1に示されるように、実施例1に係るエポキシ系接着剤は、室温で液状の汎用エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を60重量部用いて、変性エポキシ樹脂としてウレタン変性エポキシ樹脂を40重量部、ゲル化剤としてアクリル樹脂粉末を10重量部、水分吸収剤として酸化カルシウムを30重量部、硬化剤としてジシアンジアミドを8重量部及びエポキシ樹脂アミンアダクト化合物を2重量部用いたものである。更に、充填剤として炭酸カルシウムを20重量部、着色顔料としてカーボンを2重量部添加している。
【0031】
これと比較して、実施例2に係るエポキシ系接着剤は、変性エポキシ樹脂としてウレタン変性エポキシ樹脂の代わりにゴム変性エポキシ樹脂を、同じく40重量部用いた点が異なるのみで、他は実施例1に係るエポキシ系接着剤の配合と全く同じである。
【0032】
これに対して、比較例1のエポキシ系接着剤においては、「室温で液状の汎用エポキシ樹脂」としてのビスフェノールA型エポキシ樹脂を60重量部から90重量部に増やして、その分「変性エポキシ樹脂」としてのウレタン変性エポキシ樹脂を40重量部から10重量部に減らしている。すなわち、比較例1においては、エポキシ樹脂の合計量は実施例1に係るエポキシ系接着剤と同じく100重量部であるが、ウレタン変性エポキシ樹脂の割合を大幅に減らしている。
【0033】
また、比較例2のエポキシ系接着剤においては、「ゲル化剤」としてのアクリル樹脂粉末を10重量部から2重量部に減らしている。その他の配合物及び配合比は、実施例1に係るエポキシ系接着剤と全く同じである。更に、比較例3のエポキシ系接着剤においては、「水分吸収剤」としての酸化カルシウムを30重量部から5重量部に減らし、その分充填剤としての炭酸カルシウムを20重量部から45重量部に増やしている。
【0034】
このような配合組成を有する実施例1及び実施例2並びに比較例1乃至比較例3の5種類のエポキシ系接着剤について、常態時において硬化させた場合の剪断強度及び剥離強度、並びにCKD輸送想定条件(温度:50℃×湿度:95%RH×期間:10日間)に曝された後に硬化させた場合の剪断強度及び剥離強度を測定して、接着剤としての性能評価を実施した。それらの評価結果を、表2にまとめて示す。
【0035】
【表2】

【0036】
表2に示されるように、常態時において硬化させた場合の剪断強度(MPa)は、実施例1が26、実施例2が25という値に対して、比較例1が29、比較例2が26、比較例3が25であって、殆ど有意な差は見られない。また、常態時において硬化させた場合の剥離強度(N/25mm)についても、実施例1が150、実施例2が140という値に対して、比較例1が120、比較例2が140、比較例3が150であって、殆ど有意な差は見られない。
【0037】
これに対して、表2に示されるように、CKD輸送想定条件に曝された後に硬化させた場合の剪断強度(MPa)については、実施例1,2がともに22という値に対して、比較例1が21、比較例2が18、比較例3が16であって、比較例2,3においては、明らかに剪断強度が低下している。更に、CKD輸送想定条件に曝された後に硬化させた場合の剥離強度(N/25mm)については、実施例1が140、実施例2が125という高い値であるのに対して、比較例1が60、比較例2が70、比較例3が40であって、比較例1乃至比較例3においては、明らかに剥離強度が大幅に低下している。
【0038】
特に、比較例3のエポキシ系接着剤の剥離強度が40[N/25mm]と大きく低下しているのは、比較例3において「水分吸収剤」としての酸化カルシウムを30重量部から5重量部へと大幅に減らしたことが原因と考えられ、比較例3のエポキシ系接着剤においては加熱硬化時に水分による発泡が起きているものと推定される。
【0039】
これらの比較例1乃至比較例3のエポキシ系接着剤における剥離強度の低下に対して、本実施の形態の実施例1及び実施例2に係るエポキシ系接着剤においては、剥離強度がそれぞれ140[N/25mm]及び125[N/25mm]であって、常態時において硬化させた場合の剥離強度に比較しても、殆ど低下していない。
【0040】
このようにして、本実施の形態の実施例1及び実施例2に係るエポキシ系接着剤においては、CKD輸送における高温多湿の条件に十分に対応するために水分吸収剤を多量に配合しても、優れた接着性と硬化性とを確保することができる。
【0041】
このように、本実施の形態に係るエポキシ系接着剤においては、ヘミング加工部分に熱硬化性の接着剤が未硬化の状態で塗布されて、CKD輸送想定条件に曝された後に硬化された場合でも、十分な接着性と硬化性を有するものとなる。したがって、本明細書には、特許請求の範囲の請求項1乃至請求項6に係る発明が記載されているのみならず、「請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載されたエポキシ系接着剤を、ヘミング加工部分に塗布してCKD輸送した後に、加熱硬化してヘミング加工部分を接着することを特徴とするCKD製造方法」の発明も記載されている。
【0042】
本実施の形態においては、汎用エポキシ樹脂としてのビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部に対して、変性エポキシ樹脂が66.7重量部含有され、汎用エポキシ樹脂及び変性エポキシ樹脂の合計100重量部に対してゲル化剤としてのアクリル樹脂粉末が10重量部含有され、エポキシ系接着剤100重量%中に水分吸収剤としての酸化カルシウムが17.44重量%含有されたエポキシ系接着剤について説明したが、各成分の配合比はこれに限られるものではなく、汎用エポキシ樹脂100重量部に対して変性エポキシ樹脂が20重量部〜100重量部の範囲内で含有され、汎用エポキシ樹脂及び変性エポキシ樹脂の合計100重量部に対してゲル化剤が5重量部〜100重量部の範囲内で含有され、エポキシ系接着剤100重量%中に水分吸収剤が10重量%〜70重量%の範囲内で含有されるものであれば良い。
【0043】
また、本実施の形態においては、室温で液状の汎用エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用しているが、これに限られるものではなく、他にもビスフェノールF型エポキシ樹脂を始めとする種々の汎用エポキシ樹脂を用いることが可能である。更に、硬化剤としてジシアンジアミドとエポキシ樹脂アミンアダクト化合物を使用しているが、これに限られるものではなく、他にもジシアンジアミドとエポキシ樹脂イミダゾールアダクト化合物を始めとして、種々の硬化剤を用いることができる。
【0044】
更に、本実施の形態においては、水分吸収剤として酸化カルシウム(CaO)を用いているが、これに限られるものではなく、他にも酸化マグネシウム(MgO)を始めとして、種々の水分吸収剤を用いることができる。また、ゲル化剤としてアクリル樹脂粉末を使用した場合について説明したが、これに限られるものではなく、他にも種々のゲル化剤を用いることができる。
【0045】
また、本実施の形態においては、更に「充填剤」として炭酸カルシウムを、「着色顔料」としてカーボンを、それぞれ添加した場合について説明したが、これらは本発明に必須の配合成分ではない。更に、充填剤や着色顔料以外にも、種々の添加剤を含有したものとすることもできる。
【0046】
本発明を実施するに際しては、エポキシ系接着剤のその他の部分の構成、組成、配合、成分、形状、数量、材質、大きさ、製造方法等についても、本実施の形態及び各実施例に限定されるものではない。なお、本発明の実施の形態で挙げている数値は、その全てが臨界値を示すものではなく、ある数値は実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温で液状の汎用エポキシ樹脂と、変性エポキシ樹脂と、硬化剤と、ゲル化剤と、水分吸収剤とを含有するエポキシ系接着剤であって、
前記汎用エポキシ樹脂100重量部に対して前記変性エポキシ樹脂が20重量部〜100重量部の範囲内で含有され、前記汎用エポキシ樹脂及び前記変性エポキシ樹脂の合計100重量部に対して前記ゲル化剤が5重量部〜100重量部の範囲内で含有され、前記エポキシ系接着剤100重量%中に前記水分吸収剤が10重量%〜70重量%の範囲内で含有されることを特徴とするエポキシ系接着剤。
【請求項2】
前記室温で液状の汎用エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/またはビスフェノールF型エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ系接着剤。
【請求項3】
前記変性エポキシ樹脂は、ウレタン変性エポキシ樹脂及び/またはゴム変性エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエポキシ系接着剤。
【請求項4】
前記硬化剤は、ジシアンジアミドとエポキシ樹脂アミンアダクト化合物、またはジシアンジアミドとエポキシ樹脂イミダゾールアダクト化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のエポキシ系接着剤。
【請求項5】
前記ゲル化剤は、アクリル樹脂粉末であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載のエポキシ系接着剤。
【請求項6】
前記水分吸収剤は、酸化カルシウムであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載のエポキシ系接着剤。

【公開番号】特開2010−132732(P2010−132732A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307709(P2008−307709)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000100780)アイシン化工株式会社 (171)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】