説明

エリスロマイシン塩の水和物、その製造方法及び使用

本発明はマクロライド誘導体並びにその製造方法及び使用に関する。本発明のマクロライド誘導体、すなわち、エリスロマイシン塩の水和物は、分子式がC3767NO13・A・nH2O、n=1.0〜11.0(式中、Aはラクトビオン酸、チオシアン酸、マレイン酸、フマル酸、チオシアン酸、酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ニコチン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、アスパラギン酸、グルタミン酸及びリン酸から選択される有機酸又は無機酸である)であり、本水和物は水への溶解度が良好であると共に、保存安定性がより良好であるため、グラム陽性細菌又はグラム陰性細菌によって引き起こされるヒト又は動物での感染性疾患を治療及び予防する薬剤の製造に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬技術分野、具体的にはマクロライド誘導体であるエリスロマイシンの塩の水和物、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術においては、ラクトビオン酸エリスロマイシン[C3767NO13・C122212、CAS番号:3847−29−8]及びチオシアン酸エリスロマイシンC3767NO13・HCNS(CAS番号:7704−67−8)等並びにそれらの使用しか報告されておらず、現在のところ、マクロライド誘導体であるエリスロマイシンの塩の水和物及びその製造方法を開示する文献は全く発表されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
第一の態様において、本発明は、分子式がC3767NO13・A・nH2O(式中、n=1.0〜11.0、例えば、nは1、1.5、2、2.5、3、4、4.5、5、5.5、6、6.2、7、8、10、11であり、Aは薬学的に許容可能な酸である)であることを特徴とする、エリスロマイシン塩の水和物に関する。
【0004】
第二の態様において、本発明は、本発明に係るエリスロマイシン塩の水和物と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む、医薬組成物に関する。
【0005】
第三の態様において、本発明は、本発明に係るエリスロマイシン塩の水和物を製造する方法に関する。
【0006】
第四の態様において、本発明は、薬剤の製造における本発明に係るエリスロマイシン塩の水和物の使用、又は本発明に係るエリスロマイシン塩の水和物を用いてエリスロマイシンに対して感受性のある細菌、マイコプラズマ若しくはクラミジアによって引き起こされる疾患を治療する方法に関する。
【0007】
第一の態様に係る一実施の形態において、本発明は、分子式がC3767NO13・A・nH2O、n=1.0〜11.0(式中、Aは薬学的に許容可能な酸である)であるエリスロマイシン塩の水和物であって、薬学的に許容可能な酸がラクトビオン酸、チオシアン酸、マレイン酸、フマル酸、チオシアン酸、酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ニコチン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸(光学活性酒石酸及びラセミ酒石酸を含む)、(L−アスパラギン酸、D−アスパラギン酸、DL−アスパラギン酸を含む)、グルタミン酸(L−グルタミン酸、D−グルタミン酸、DL−グルタミン酸を含む)又はリン酸である、エリスロマイシン塩の水和物を提供する。
【0008】
第一の態様に係る別の実施の形態において、本発明は、ラクトビオン酸エリスロマイシン11水和物である、エリスロマイシン塩の水和物を提供する。
【0009】
第一の態様に係る別の実施の形態において、本発明は、ラクトビオン酸エリスロマイシン6水和物である、エリスロマイシン塩の水和物を提供する。
【0010】
第一の態様に係る別の実施の形態において、本発明は、ラクトビオン酸エリスロマイシン5水和物である、エリスロマイシン塩の水和物を提供する。
【0011】
第一の態様に係る別の実施の形態において、本発明は、ラクトビオン酸エリスロマイシン3.5水和物である、エリスロマイシン塩の水和物を提供する。
【0012】
第一の態様に係る別の実施の形態において、本発明は、ラクトビオン酸エリスロマイシン3水和物である、エリスロマイシン塩の水和物を提供する。
【0013】
第一の態様に係る別の実施の形態において、本発明は、チオシアン酸エリスロマイシン3水和物である、エリスロマイシン塩の水和物を提供する。
【0014】
第一の態様に係る別の実施の形態において、本発明は、チオシアン酸エリスロマイシン2水和物である、エリスロマイシン塩の水和物を提供する。
【0015】
第一の態様に係る別の実施の形態において、本発明は、チオシアン酸エリスロマイシン1.5水和物である、エリスロマイシン塩の水和物を提供する。
【0016】
第一の態様に係る別の実施の形態において、本発明は、リン酸エリスロマイシン2.5水和物である、エリスロマイシン塩の水和物を提供する。
【0017】
本発明に係るエリスロマイシン塩の水和物は種々の結晶形態で存在し得るが、いずれの場合においても、特徴的に、本発明の水和物が高温で脱水されると、そのサーモグラム(TG−DTA/DSC)は明らかな吸熱ピークを示し、その吸湿性は概して無水物よりも低い。水和物の中には、安定に保存することができ、固形製剤の製造又は生産及び製剤の無菌充填に都合がよいという利点を有するものもある。
【0018】
カール・フィッシャー法によって測定される含水量の結果は熱重量分析による結果に一致する。熱重量分析の結果から以下の水和物が実証される:ラクトビオン酸エリスロマイシンの結晶3水和物、4水和物、5水和物、6水和物、11水和物(C3869NO13・C122212・3H2O、C3869NO13・C122212・4H2O、C3869NO13・C122212・5H2O、C3869NO13・C122212・6H2O、C3869NO13・C122212・11H2O)並びにチオシアン酸エリスロマイシンの結晶水和物(1.5水和物、2水和物、2.5水和物、3水和物)及び(C3869NO13・H3PO4・2.5H2O)を含むリン酸エリスロマイシン水和物。
【0019】
第二の態様に係る一実施の形態において、本発明は、本発明に係るエリスロマイシン塩の水和物と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む、医薬組成物を提供する。
【0020】
本発明に係るエリスロマイシン塩の水和物を含む医薬組成物又は薬剤は製剤化して、凍結乾燥粉末注射剤、無菌充填粉末注射剤、小容量注射剤、腸内投与用剤形、経皮投与用軟膏及びゲル、発泡錠又は膣内若しくは直腸投与用坐剤にすることができる。
【0021】
第三の態様に係る一実施の形態において、本発明は、本発明に係るエリスロマイシン塩の水和物を製造する方法であって、
方法A:反応容器において、クロロホルム、C3〜C6ケトン、C2〜C6エステル、水及びC1〜C5アルコール若しくはそれらの混合物のうちの1つを溶媒として用い、エリスロマイシンを添加し、撹拌し、有機酸を添加し、次いで反応終了後にC3〜C6ケトン、クロロホルム、C1〜C5アルコール、C2〜C6エーテル、C2〜C6エステル及びベンゼンのうちの1つ若しくは複数を添加し、冷却し、濾過し、得られた固体を有機溶媒であるC1〜C5アルコール、C3〜C6ケトン、C2〜C6エーテル及びクロロホルムのうちの1つ若しくは複数で洗浄し、減圧下で濾過し、乾燥させることにより、エリスロマイシン塩の水和物を得ること;又は
方法B:薬学的に許容可能な酸の溶液を所望のモル比でエリスロマイシン及び水、C1〜C5アルコール及びC3〜C6ケトンのうちの1つ若しくは複数を溶媒として含有する反応容器に添加し、撹拌し、−10℃〜30℃の間の温度に0.5時間〜24時間維持し、活性炭で脱色するか若しくは限外濾過膜で濾過し、−70℃〜−30℃の間の温度に冷却し、真空下で乾燥させることにより、エリスロマイシン塩の水和物を得ること;又は
方法C:薬学的に許容可能な酸若しくはその溶液を所望のモル比でエリスロマイシン及び水を含有する反応容器に添加し、撹拌し、−5℃〜20℃の間の温度に0.5時間〜24時間維持し、活性炭で脱色するか若しくは限外濾過膜で濾過し、噴霧乾燥させることにより、エリスロマイシン塩の水和物を得ること、
を含む、方法を提供する。
【0022】
第四の態様に係る一実施の形態において、本発明は、薬剤の製造における本発明に係るエリスロマイシン塩の水和物の使用であって、薬剤が、エリスロマイシンに対して感受性のある細菌、マイコプラズマ又はクラミジアによって引き起こされるヒト又は動物での感染症の治療において有用である、使用を提供する。
【0023】
第四の態様に係る別の実施の形態において、本発明は、本発明に係るエリスロマイシン塩の水和物を用いてエリスロマイシンに対して感受性のある細菌、マイコプラズマ又はクラミジアによって引き起こされるヒト又は動物での感染症を治療する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ラクトビオン酸エリスロマイシン11水和物のサーモグラムを示す図である。
【図2】ラクトビオン酸エリスロマイシン6水和物のサーモグラムを示す図である。
【図3】ラクトビオン酸エリスロマイシン5水和物のサーモグラムを示す図である。
【図4】ラクトビオン酸エリスロマイシン3水和物のサーモグラムを示す図である。
【図5】チオシアン酸エリスロマイシン3水和物のサーモグラムを示す図である。
【図6】チオシアン酸エリスロマイシン2水和物のサーモグラムを示す図である。
【図7】チオシアン酸エリスロマイシン1.5水和物のサーモグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明者らは検討により、本発明に係るエリスロマイシン塩の水和物が驚くべき技術的効果を有することを見い出した。具体的には、本発明に係るエリスロマイシン塩の水和物は、対応する無水物よりも吸湿性(湿分吸収性)が概して低く、通常安定である。例えば、水に溶けにくいエリスロマイシン及び吸湿性のより高いラクトビオン酸エリスロマイシン無水物とは異なり、結晶水を有するラクトビオン酸エリスロマイシン等は水に可溶であり、室温で保存する際の安定性が良好であり、溶けやすく吸収性である製剤の製造に都合がよく、かつ保存及び輸送に都合がよい。さらに、無水物は吸湿する可能性があるため、付着しないように空気を遮断して取り扱わなければならない一方で、水和物は流動性が良好であるため、製剤の加工が向上し、医薬製剤の製造が容易になる。
【0026】
本発明に係るエリスロマイシン塩の水和物は安定に保存することができる。上記水和物のサンプルをバイアルに封入し、加速安定性試験を30℃で行い、HPLC法によって含有量及び関連物質の変化を測定した(C18逆相カラム、移動相として0.01M KH2PO4−アセトニトリル(60:40)、検出波長:215nm、カラム温度:35℃、流速:1.0ml/分)(種々のエリスロマイシン塩の水和物、例えば、チオシアン酸エリスロマイシンの結晶水和物等に対し、移動相のpHを調整することができ、KH2PO4をNaH2PO4に変えることができ、検出波長を210nmに変えることができ、カラム温度を分析及び測定のために35℃〜55℃、例えば、50℃等に設定することができる)。驚くべきことに、本発明に係るエリスロマイシンの有機酸塩の水和物の含有量及び関連物質は有意な変化を全く示さない。中国薬局方CP2005に従って、エリスロマイシン塩の水和物のサンプル5gを25℃及び相対湿度75%での吸湿性試験で試験したところ、驚くべきことに、本発明の有機酸塩の水和物は、吸湿によって引き起こされる重量増加の割合が比較的小さいことが分かった。エリスロマイシン塩の無水物と比較して、本発明に係るエリスロマイシン塩の水和物は吸湿性がより低く、すなわち、吸湿安定性がより良好であるため、その包装及び保存が容易であり、すなわち、無水物に比べて保存により有利な安定形態である。結果を以下の表に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
【表4】

【0031】
【表5】

【0032】
【表6】

【0033】
【表7】

【0034】
【表8】

【0035】
エリスロマイシン塩の水和物を水又はエタノール水溶液に溶解させた後、NaHCO3若しくはNa2CO3若しくはアンモニア又は他の塩基性溶液を添加し、得られた沈殿物を濾過し、水で洗浄し、水又はメタノール、エタノール若しくはアセトンのうちの1つ又は複数により再結晶化する。得られた結晶は比旋光度及びMS等のデータ又はスペクトルの点でエリスロマイシンに一致する。
【0036】
本発明に係るエリスロマイシン塩の水和物は、エリスロマイシンの製造又は精製、エリスロマイシンオキシムの製造、マクロライド、例えば、ロキシスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ジリスロマイシン、架橋エリスロマイシン、セスロマイシン等の中間体及びそれらの薬剤のさらなる合成に用いることができる。
【0037】
経腸投与用剤形を製造するための錠剤、カプセル、粉末、粉薬、プレミックス、可溶粉末、顆粒は、薬学的に許容可能な充填剤、例えば、デンプン、変性デンプン、ラクトース、微結晶セルロース、シクロデキストリン、ソルビトール、マンニトール、リン酸カルシウム、アミノ酸等;薬学的に許容可能な崩壊剤、例えば、デンプン、変性デンプン、微結晶セルロース、カルボキシメチルデンプンナトリウム、架橋ポリビニルピロリジノン、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、界面活性剤等;薬学的に許容可能な湿潤剤及び接着剤、例えば、アルファ化デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ポリビニルピロリジノン、アルギン酸及びその塩等;薬学的に許容可能な滑沢剤及び流動助剤、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール4000〜6000、タルク粉末、微粉化シリカゲル、ラウリル硫酸マグネシウム等;薬学的に許容可能な甘味料及び着香料、例えば、アスパルテーム、シクラミン酸ナトリウム、サッカリンナトリウム、スクロース及び食用香料等を含み得る。
【0038】
本発明の水和物は、水に溶けにくいエリスロマイシンとは異なるため、その固体剤形の溶解速度は製剤化プロセスによって有意に影響を受ける。エリスロマイシンの有機酸塩又は無機酸塩の水和物は水に溶けやすいため、それらの固体剤形は溶解性が良好であり、容易に吸収されて血液循環に入ることができ、バイオアベイラビリティが向上し、それらの抗菌効果の迅速な発現が促進される。
【0039】
本発明に係るエリスロマイシン塩の水和物のプレミックスは、水和物と、動物が摂取可能な薬物又は飼料(トウモロコシ飼料を含む)、飼料添加剤(アミノ酸、ビタミン、香味エッセンスを含む)、結合剤とを混合することによって得ることができる。本発明に係るエリスロマイシン塩の水和物の粉薬又は可溶粉末は、他の薬学的に許容可能な充填剤、崩壊剤、湿潤剤及び結合剤を用いて従来の方法及び装置によって製造することができる。
【0040】
本発明に係る坐剤及びゲルは、エリスロマイシン坐剤又は軟膏とは異なる。エリスロマイシンは水に溶けにくいため、通常は油溶性の賦形剤を添加するが、これは清浄化することが難しいことがある汚染を容易に引き起こすおそれがある。しかしながら、エリスロマイシン塩の水和物は水により可溶であるため、その坐剤及びゲルは放出性が良好であり、容易に吸収されて血液循環に入ることができ、それによりバイオアベイラビリティが向上し、抗菌効果の迅速な発現が促進される。油溶性の賦形剤が全く必要とされないため、汚染は通常引き起こされず、容易に清浄化することができる。
【0041】
エリスロマイシン塩の水和物の坐剤はエリスロマイシン塩の水和物5%〜50%及び坐剤基材50%〜95%から成る(ここで基材はエタノール、グリセロール、グリセロールゼラチン、ポリエチレングリコール200〜8000、ポロキサマー、半合成脂肪酸エステル、Carbomer(931、934、940、974、AA−1、1342等)及びTween 60〜80であり得る)。製造方法:活性成分と基材とを混合し、水浴中で加熱し、撹拌し、溶融し、均一に撹拌し、滑沢剤でコーティングした坐剤型に僅かに坐剤型からオーバーフローするまで迅速に注ぎ、冷却及び平滑化し、金型を取り外すことにより、坐剤を得る。
【0042】
エリスロマイシン塩の水和物のゲルを製造する方法:エリスロマイシン塩の水和物(エリスロマイシン換算量で投入)と、基材50%〜95%(ここで基材はエタノール、グリセロール、トリエタノールアミン、グリセロールゼラチン、ポリエチレングリコール200〜8000、ポロキサマー、ポリビニルピロリジノン、半合成脂肪酸エステル、水溶性モノグリセリド、Carbomer(931、934、940、974、AA−1、1342等)及びTween 60〜80であり得る)とを均一に混合する。ゲルは薬学的に許容可能な防腐剤及び安定化剤を含んでもよい。製剤化の際、Carbomerを水に分散させることができ、次いでグリセロール及びポリエチレングリコール200〜8000を添加し、加熱し、撹拌及び混合し、規定量のラクトビオン酸エリスロマイシン水和物を添加し、撹拌し、薬学的に許容可能な無機塩基又は有機塩基を添加してpHを約5.0〜7.0に調整した後、体積が一杯になるまで水を添加する。混合物を均一に撹拌し、充填することにより、ゲルを得る。
【0043】
凍結乾燥粉末注射剤を製造する方法:エリスロマイシンの有機酸塩の水和物(エリスロマイシン換算量)及び任意選択の薬学的に許容可能な凍結乾燥助剤又は賦形剤を注射用水に溶解させ、薬学的に許容可能な酸/塩基をpHが5.0〜7.5になるように添加し、必要であれば、活性炭0.005%(W/V)〜0.5%(W/V)を添加し、15分間〜45分間撹拌し、濾過し、濾液に水を補充し、無菌条件下で濾過し、25mg〜250mg/ボトル(活性成分換算)で充填し、凍結乾燥し、栓をすることにより、製品を得る。
【0044】
エリスロマイシンの有機酸塩の水和物の小容量注射剤を製造する方法:エリスロマイシンの有機酸塩の水和物を、注射用水及び薬学的に許容可能な添加剤、例えば、薬学的に許容可能なpH調節剤、薬学的に許容可能な酸化防止剤、不活性ガス等と混合した後、濾過し、濾液を滅菌することにより、pH5.0〜7.5の小容量注射剤を得る。
【0045】
薬学的に許容可能なpH調節剤は、薬学的に許容可能な無機酸又は有機酸、無機塩基又は有機塩基並びに一般的なルイス酸又はルイス塩基であり得、塩酸、リン酸、プロピオン酸、酢酸及び酢酸ナトリウム等の酢酸塩、乳酸及び薬学的に許容可能な乳酸塩、薬学的に許容可能なクエン酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸塩、酒石酸及びその薬学的に許容可能な塩、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸、コハク酸、カプロン酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、トリヒドロキシアミノメタン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)1,3−プロパン−1,3−ジオール−アミン、ヘキサン−1,2−ジアミン、N−メチルグルカミン、ジイソプロピルアミン及びその塩、ポリヒドロキシカルボン酸及びその塩、例えば、グルクロン酸、グルコン酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸、トレオン酸、グルコヘプトン酸等、アミノ酸及びアミノ酸の塩から成る群から選択される1つ又は複数であり得る。
【0046】
薬学的に許容可能な酸化防止剤及び安定剤は、スルフィン酸、亜硫酸塩、ヒドロ亜硫酸塩、ピロ亜硫酸塩、次亜硫酸塩、チオ硫酸塩、有機硫黄化合物、例えば、チオ尿素、グルタチオン、ジメルカプトプロパノール、チオグリコール酸及びその塩、チオ乳酸及びその塩、チオジプロピオン酸及びその塩等、フェノール化合物、例えば、没食子酸及びその塩、コーヒー酸、コーヒー酸塩、フェルラ酸、フェルラ酸塩、ジ−tert−ブチル−p−フェノール、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸塩、フェノール及び誘導体、サリチル酸及びその塩等;アミノ酸及びその塩;アスコルビン酸及びアスコルビン酸塩、イソアスコルビン酸及びイソアスコルビン酸塩、ニコチンアミド、酒石酸、硝酸塩、リン酸塩、薬学的に許容可能な酢酸塩、クエン酸塩、EDTA及びEDTA塩、例えば、EDTA二ナトリウム、EDTA四ナトリウム等、N−ジ(2−ヒドロキシエチル)グリシンのうちの1つ又は複数であり得る。
【0047】
薬学的に許容可能な等張性調節剤は、グルコース、フルクトース、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、転化糖、マルトース、デキストラン、塩化ナトリウム、塩化カリウム、乳酸ナトリウムのうちの1つ又は複数であり得る。
【0048】
パイロジェン及び細菌を除去する方法は、活性炭を0.005%〜3%添加してパイロジェンを除去すること、微小孔フィルタを用いて細菌を除去すること及びオートクレーブを用いて細菌を死滅させること並びに限外濾過装置を用いて細菌及びパイロジェンを除去することを含み得る。限外濾過において、用いる限外濾過装置はプレート、ロール、チューブ、中空繊維又は丸いボックスの形態、好ましくはロール及び中空繊維の形態であり得る。相対分子量カットオフが50000〜300000である濾過膜を用いて発熱物質及び細菌の殆どを除去した後、残留するパイロジェンを相対分子量カットオフが4000〜60000である限外濾過膜、好ましくは相対分子量カットオフが6000〜30000である限外濾過膜を用いて除去する。
【0049】
乳酸エリスロマイシンの水和物は、品質の高いエリスロマイシン塩基若しくは他のエリスロマイシンの有機酸塩又はそれらの水和物の製造に用いることができ、チオシアン酸エリスロマイシンの水和物は、エリスロマイシン塩基若しくはエリスロマイシンオキシム若しくはエリスロマイシンAオキシム又はそれらの塩の製造に用いることができる。エリスロマイシンオキシム又はその塩はさらに、マクロライド、例えば、ロキシスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ジリスロマイシン、架橋エリスロマイシン、セスロマイシン等の中間体及び薬剤の合成に用いることができる。例えば、チオシアン酸エリスロマイシンの水和物、ヒドロキシアミン又は塩酸ヒドロキシアミン、水酸化ナトリウム若しくは炭酸水素アンモニウム若しくは他のルイス塩基又はそれらの水溶液、メタノール又はイソプロパノールを反応ボトルに添加し、約20℃〜60℃で6時間〜72時間撹拌しながら反応させ、20℃以下まで冷却し、濾過し、濾過ケーキをイソプロパノール又はアセトンに添加し、アンモニア又は炭酸ナトリウム又はNaOH溶液でpHが9.5〜12になるように調整し、撹拌し、冷却して沈殿物を沈殿させ、これを濾過して取り出すことにより、エリスロマイシンオキシムを得る。
【0050】
エリスロマイシン塩の水和物の抗菌活性は、臨床的に得られた細菌を培養し、薬理学的試験法(試験管二重希釈法)に従って測定することによって求めることができる。結果を以下の表9、表10、表11及び表12に示す。
【0051】
【表9】

【0052】
【表10】

【0053】
【表11】

【0054】
【表12】

【0055】
本発明に係るエリスロマイシン塩の水和物の臨床適用
本発明のマクロライド誘導体であるエリスロマイシンの塩の水和物は、抗菌薬として広い抗菌活性スペクトルを有し、エリスロマイシンに対して感受性のある細菌、マイコプラズマ又はクラミジアによって引き起こされるヒト及び動物での感染症、例えば、A.鼻咽腔の感染症:扁桃炎、咽頭炎、副鼻腔炎;B.下気道の感染症:急性気管支炎、慢性気管支炎の急性発症及び肺炎;C.皮膚及び軟組織の感染症:膿痂疹、丹毒、毛嚢炎、せつ及び創傷感染症;D.急性耳炎、マイコプラズマ肺炎、クラミジア・トラコマチスによって引き起こされる尿道炎及び子宮頸管炎;並びにE.レジオネラ感染症、トリ結核菌:マイコバクテリウム・アビウム)感染症、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)感染症等を治療又は予防する薬剤において有用である。
【0056】
概して、体重10kg〜70kgの動物又はヒトに対して、筋肉内注射:25mg〜500mg(エリスロマイシン換算);静脈内投与:本発明の注射剤25mg〜500mg(エリスロマイシン換算)を輸液用0.9% NaCl溶液又は5%グルコース溶液50ml〜500mlに混合、静脈内注射、1日1回〜2回。
【0057】
経口投与に関する用量及び用法(エリスロマイシン換算):概して、体重10kg〜70kgの動物又はヒトに対して、50mg〜500mg/日、6時間〜8時間に1回。
【0058】
坐剤に関する用量及び用法(エリスロマイシン換算):概して、50mg〜500mg/日。
【実施例】
【0059】
以下に実施例を示して本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0060】
実施例1:ラクトビオン酸エリスロマイシン11水和物の製造
三つ口フラスコにおいて、アセトン50ml及びエリスロマイシン8gを添加し、撹拌し、ラクトビオン酸又はその水溶液を添加し、5℃〜35℃で撹拌した。反応終了後、無水アセトンをゆっくりと添加し、混合物を約−30℃〜5℃に冷却した。固体を沈殿させ、濾過して取り出した後、固体を無水アセトンで洗浄し、減圧下で濾過することにより、水に非常に溶けやすいオフホワイト色の結晶粉末を得た。HPLC:サンプルの主ピークの保持時間はエリスロマイシン対照に一致し、ここでエリスロマイシンの含有量は56.79%(56.88%)であった;融点:95.1℃〜116.3℃(補正なし)、カール・フィッシャー法による含水量は15.53%(理論値:15.36%)であった、TG:200℃までのプラットホームでの重量減少は約15.56%であった(図1参照)、MS(ESI)m/z:1092、734、358。元素分析:実測値:C 45.73、H 8.54、N 1.15;理論値:C 45.61、H 8.67、N 1.09。
【0061】
実施例2:ラクトビオン酸エリスロマイシン6水和物の製造
三つ口フラスコにおいて、アセトン50ml及びエリスロマイシン10gを添加し、等モルのラクトビオン酸又はそのアセトン−水溶液を撹拌しながら10℃〜40℃で添加し、0.2時間〜4時間反応させた。反応終了後、1倍量〜8倍量の無水アセトンをゆっくりと添加した。混合物を−45℃〜−10℃の温度に冷却し、濾過し、得られた固体をアセトンで洗浄し、減圧下で濾過し、約80℃で乾燥させることにより、水に非常に溶けやすいオフホワイト色の粉末を得た。HPLC:サンプルの主ピークの保持時間はエリスロマイシン対照に一致し、ここでエリスロマイシンの含有量は61.91%(理論値:62.08%)であった;融点:132.6℃〜137.7℃(補正なし);含水量(カール・フィッシャー法による):9.16%、TG:200℃までのプラットホームでの重量減少は約9.09%(理論値:9.01%)であった(図2参照)、MS(ESI、FAB)m/z:1092、1091、734、733、358、357;元素分析:実測値:C 49.11、H 8.55、N 1.21;計算値:C 49.03、H 8.48、N 1.17。得られたサンプルを水に溶解させ、飽和Na2CO3溶液を添加して沈殿物を生成し、沈殿物を濾過して取り出し、水で洗浄し、水−エタノールから再結晶化したところ、生成物は比旋光度及びMSデータの点で原料エリスロマイシンに一致した。
【0062】
実施例3:ラクトビオン酸エリスロマイシン3水和物の製造
ラクトビオン酸及びエリスロマイシン10gを1:1のモル比で反応ボトルに添加し、水を添加し、撹拌し、温度を5℃〜40℃に維持しながら溶解させた。反応終了後、得られた混合物1mlを各20mlボトルに充填し、−50℃に0.5時間〜6時間冷却した。冷却器温度を−55℃に冷却し、真空引きした後、温度を棚板によって約−16℃に徐々に上昇させた。混合物を約−16℃に約28時間保持し、温度をさらに約30℃に上昇させ、約10時間保持することにより、オフホワイト色の粉末を収率99%で得た。得られたサンプルは水に非常に溶けやすかった。HPLC:サンプルの主ピークの保持時間はエリスロマイシン対照に一致した;融点:137.2℃〜138.7℃(補正なし);カール・フィッシャー法による含水量は4.67%(理論値:4.72%)であり、TG−DTA:200℃までの重量減少は約4.39%であり、これは3個の結晶水を含有するサンプルの誤差範囲内であった(図4参照)、MS(ESI、FAB)m/z:1092、1091、734、733、358、357。得られたサンプルを水に溶解させ、炭酸ナトリウム溶液を添加して沈殿物を生成し、沈殿物を水で洗浄し、水−エタノールから再結晶化したところ、生成物は比旋光度及びMSデータの点で原料エリスロマイシンに一致した。元素分析:実測値:C 51.21%、H 8.43%、N 1.17%;計算値:C 51.34%、H 8.35%、N 1.22%。
【0063】
実施例4:ラクトビオン酸エリスロマイシン5水和物の製造
三つ口フラスコにおいて、無水アセトン50ml及びエリスロマイシン12gを添加し、溶解させた後、エリスロマイシンと等モルのラクトビオン酸水溶液を添加し、10℃〜60℃で撹拌を継続した。反応終了後、無水アセトン60ml〜400mlをゆっくりと添加した。混合物を−45℃〜−10℃の間の温度に冷却した。濾過後、得られた固体をアセトン又はクロロホルムで洗浄し、減圧下で濾過し、80℃の真空下で約4時間〜10時間乾燥させることにより、水に非常に溶けやすいオフホワイト色の結晶粉末を得た。HPLC分析:サンプルの主ピークの保持時間はエリスロマイシン対照に一致し、ここでエリスロマイシンの含有量は61.78%(理論値:62.08%)であった;融点:142.2℃〜145.9℃(補正なし)、カール・フィッシャー法による含水量は7.68%(理論値:7.62%)であり、TG−DTA:200℃までの重量減少は約7.62%であり、これは5個の結晶水を有するサンプルの誤差範囲であった(図3参照)、MS(ESI、FAB)m/z:1092、1091、734、733、358、357;元素分析:実測値:C 49.66、H 8.57、N 1.12;計算値:C 49.78、H 8.44、N 1.18。得られたサンプルを炭酸ナトリウム溶液に添加して沈殿物を生成し、沈殿物を水で洗浄し、水−エタノールから再結晶化したところ、生成物は比旋光度及びMSデータの点で原料エリスロマイシンに一致した。
【0064】
実施例5:ラクトビオン酸エリスロマイシン3.5水和物の製造
三つ口フラスコにおいて、エリスロマイシン12gを添加し、アセトンを添加して溶解させた後、エリスロマイシンと等モルのラクトビオン酸水溶液を添加し、0℃〜30℃で撹拌を継続した。反応終了後、無水アセトン60ml〜400mlをゆっくりと添加した。混合物を−45℃〜−10℃の間の温度に冷却した。濾過後、得られた固体をアセトン又はクロロホルムで洗浄し、減圧下で濾過し、100℃の真空下で約4時間乾燥させることにより、水に非常に溶けやすいオフホワイト色の結晶粉末を得た。HPLC分析:サンプルの主ピークの保持時間はエリスロマイシン対照に一致し、ここでエリスロマイシンの含有量は63.07%(理論値:63.53%)であった;融点:159.0℃〜161.2℃(補正なし)、カール・フィッシャー法によって測定した含水量は5.62%(理論値:5.46%)であり、TG−DTA:200℃までの重量減少は約5.36%であり、これは3.5個の結晶水を有するサンプルの誤差範囲内であった、MS(ESI、FAB)m/z:1092、1091、734、733、358、357;元素分析:実測値:C 50.82、H 8.52、N 1.13;計算値:C 50.94、H 8.38、N 1.21。得られたサンプルを炭酸水素ナトリウム溶液に添加して沈殿物を生成させ、沈殿物を水で洗浄し、水−エタノールから再結晶化したところ、生成物はMSデータの点で原料エリスロマイシンに一致した。
【0065】
実施例6:チオシアン酸エリスロマイシン3水和物の製造
三つ口フラスコにおいて、水50ml及びエリスロマイシン10gを添加し、撹拌した後、エリスロマイシンと等モルの2M乳酸水溶液を添加し、5℃〜40℃で撹拌した。反応終了後、混合物を濾過し、エリスロマイシンに対するモル比が1:1〜1.2の10%チオシアン酸ナトリウム溶液を滴下により添加し、−15℃〜10℃の間の温度に冷却し、得られた固体を水で洗浄し、減圧下で濾過し、室温で48時間乾燥させることにより、オフホワイト色の結晶粉末を得た。HPLC分析:サンプルの主ピークの保持時間はエリスロマイシン対照に一致し、ここでエリスロマイシンの含有量は86.61%(理論値:86.65%)であった;融点:161.9℃〜165.1℃(補正なし)、カール・フィッシャー法によって測定した含水量は6.42%(理論値:6.38%)であり、サーモグラムTG−DTA:140℃までの重量減少は約6.39%であり、これは3個の結晶水を有するサンプルの誤差範囲内であった(図5参照)、MS(ESI、FAB)m/z:793、792、734、733、59、58。元素分析:実測値:C 53.95、H 8.88、N 3.39、S 3.70;計算値:C 53.88、H 8.81、N 3.31、S 3.79。
【0066】
実施例7:チオシアン酸エリスロマイシン2水和物の製造
三つ口フラスコにおいて、エリスロマイシン12gを酢酸ブチル又はアセトンに溶解させ、2M酢酸水溶液及び10%チオシアン酸ナトリウム溶液(エリスロマイシンに対するモル比1:1:1〜1.2)を添加し、15℃〜60℃で撹拌を継続した。反応終了後、混合物に水を添加し、−25℃〜10℃の間の温度に冷却し、濾過し、得られた固体を水で洗浄し、減圧下で濾過し、60℃で約4時間乾燥させることにより、オフホワイト色の結晶粉末を得た。HPLC分析:サンプルの主ピークの保持時間はエリスロマイシン対照に一致し、ここでエリスロマイシンの含有量は88.46%(理論値:88.54%)であった;融点:165.8℃〜169.8℃(補正なし)、カール・フィッシャー法による含水量は4.62%(理論値:4.35%)であり、TG−DTG:140℃までの重量減少は約4.51%であり、これは2個の結晶水を有するサンプルの誤差範囲内であった(図6参照)、MS(ESI、FAB)m/z:793、792、734、733、59、58。元素分析:実測値:C 54.93、H 8.87、N 3.29、S 3.76;計算値:C 55.05、H 8.75、N 3.38、S 3.87。得られた2個の結晶水を有するサンプルを炭酸ナトリウム溶液に添加して沈殿物を生成し、沈殿物を水で洗浄し、水−エタノールから再結晶化したところ、生成物は比旋光度及びMSデータの点で原料エリスロマイシンに一致した。
【0067】
実施例8:チオシアン酸エリスロマイシン1.5水和物の製造
三つ口フラスコにおいて、エリスロマイシン0.02mol及び水20mlを添加し、懸濁させ、撹拌しながら0℃〜30℃で2M酢酸水溶液を添加して懸濁液を透明にした。混合物を濾過し、撹拌しながら濾液に2Mチオシアン酸ナトリウム又はチオシアン酸アンモニウム溶液(エリスロマイシンに対するモル比1〜1.2)を滴下によりゆっくりと添加し、−10℃〜10℃の間の温度に冷却し、濾過し、得られた固体を水で洗浄し、減圧下で濾過した。得られた固体をメタノールに溶解させ、水60mlを添加し、完全に結晶化及び沈殿するまで−15℃〜10℃の間の温度に冷却し、60℃の真空下で約3時間乾燥させることにより、オフホワイト色の結晶粉末を得た。HPLC分析:サンプルの主ピークの保持時間はエリスロマイシン対照に一致し、ここでエリスロマイシンの含有量は89.66%(理論値:89.51%)であった;融点:162.4℃〜165.7℃(補正なし)、カール・フィッシャー法による含水量は3.47%(理論値:3.30%)であり、TG−DTA:125℃までの重量減少は約3.45%であり、これは1.5個の結晶水を有するサンプルの誤差範囲であった(図7参照)、MS(ESI、FAB)m/z:793、792、734、733、59、58。IR(KBr)(cm-1)3400〜3600(b、s)、978(s)、2879(s)、2046(s)、1681(s)、1467(s)、1380(s)、1175(s)、1095(s);元素分析:実測値:C 55.58、H 8.82、N 3.35、S 3.84;計算値:C 55.66、H 8.73、N 3.42、S 3.91。
【0068】
実施例9:ラクトビオン酸エリスロマイシン6水和物の製造
20%ラクトビオン酸溶液を或るモル比でエリスロマイシン及び水を含有する反応容器に滴下により添加し、混合物を撹拌し、温度を−2℃〜10℃の間に制御した。pHを6.4〜7に制御しながら0.5時間〜4時間反応させ、活性炭で脱色するか又は限外濾過膜によって濾過し、入口温度103℃〜115℃、出口温度78℃〜88℃及び噴霧圧1.1kg/cm2〜1.3kg/cm2で噴霧乾燥させることにより、ラクトビオン酸エリスロマイシン6水和物を得た。
【0069】
実施例10:ラクトビオン酸エリスロマイシン3.5水和物の製造
20%ラクトビオン酸溶液を或るモル比でエリスロマイシン20kg、水100L及びアセトン10Lを含有する反応容器に滴下により添加した。温度を0℃〜10℃に制御しながら混合物を撹拌し、pHを6.4〜7に制御しながら1時間〜8時間反応させ、活性炭で脱色するか又は限外濾過膜によって濾過し、入口温度108℃〜120℃、出口温度80℃〜90℃及び噴霧圧1.2kg/cm2〜1.5kg/cm2で噴霧乾燥させることにより、ラクトビオン酸エリスロマイシン5水和物を得た;融点:139.6℃〜143.7℃(補正なし)、HPLC分析:サンプルの主ピークの保持時間はエリスロマイシン対照に一致した;力価:626u/mg、pH=7.0、カール・フィッシャー法による含水量は7.72%(理論値:7.62%)であり、TG−DTAスペクトル:198℃までの重量減少は約7.856%であり、これは5個の結晶水を有するサンプルの誤差範囲内であった(図3参照)、MS(ESI、FAB)m/z:1092、1091、734、733、358、357;サンプルを約100℃で約4時間乾燥させることにより、ラクトビオン酸エリスロマイシン3.5水和物を得た。得られたサンプルを水に溶解させ、飽和炭酸ナトリウム溶液を添加して沈殿物を生成し、沈殿物を水で洗浄し、水−エタノールから再結晶化したところ、生成物はMSデータの点で原料エリスロマイシンに一致した。
【0070】
実施例11:ラクトビオン酸エリスロマイシン水和物の凍結乾燥粉末の製造
ラクトビオン酸エリスロマイシン水和物20Kg(エリスロマイシン換算)にキシリトール0Kg〜5Kg及び新鮮な注射用水700L〜1000Lを添加し、混合物を撹拌し、溶解させた。pH値を測定し、pHが5.0〜7.0であった場合には、何も調節する必要はなく、pHがこの範囲外であった場合には、1M NaH2PO4及び1M Na2HPO4をpHが5.0〜7.0になるように添加した。混合物に活性炭を0.01%(W/V)〜0.5%(W/V)添加し、15分間〜45分間撹拌し、濾過し、800L〜1200Lになるように水を補充し、0.22μmの微小孔濾過膜又は相対分子量カットオフが1000〜8000である限外濾過膜で濾過し、62.5mg/ボトル又は125mg/ボトル(エリスロマイシン換算)で充填し、凍結乾燥し、栓をすることにより、製品を得た。
【0071】
実施例12:ラクトビオン酸エリスロマイシン水和物の注射剤の製造
無菌ラクトビオン酸エリスロマイシン水和物又はクエン酸エリスロマイシン水和物又はリン酸エリスロマイシン水和物25Kg(エリスロマイシン換算)を秤量し、無菌充填プロセスによって125mg/ボトル又は250mg/ボトル又は500mg/ボトル(エリスロマイシン換算)で充填した。ボトルに栓をし、アルミニウムキャップで蓋をすることにより、製品を得た。
【0072】
実施例13:チオシアン酸エリスロマイシン水和物錠剤の製造
チオシアン酸エリスロマイシン2水和物又はラクトビオン酸エリスロマイシン3水和物の錠剤(250mg/錠剤、エリスロマイシン換算)
処方:
チオシアン酸エリスロマイシン2水和物
又はラクトビオン酸エリスロマイシン3水和物 250g(エリスロマイシン換算)
微結晶セルロース 200g
カルボキシメチルデンプンナトリウム 20g
アスパルテーム 2g
ポリビニルピロリジノン、5% 適量
ステアリン酸マグネシウム 2g
【0073】
チオシアン酸エリスロマイシン2水和物又はラクトビオン酸エリスロマイシン3水和物微結晶セルロース、カルボキシメチルデンプンナトリウム及びアスパルテームを100メッシュの篩に通し、5%ポリビニルピロリジノンで加工処理することにより、軟材料を得た。この材料を18メッシュ〜24メッシュの篩に通して顆粒を形成した。顆粒を乾燥させ、14メッシュ〜20メッシュの篩に通し、仕上げ加工し、微粉化シリカゲル及びステアリン酸マグネシウムを添加し、混合し、錠剤化した。
【0074】
実施例14:ラクトビオン酸エリスロマイシン3水和物カプセルの製造
処方:
ラクトビオン酸エリスロマイシン3水和物 125g(エリスロマイシン換算)
微結晶セルロース 100g
ラクトース 20g
糊化デンプン、10% 適量
ステアリン酸マグネシウム 2g
【0075】
ラクトビオン酸エリスロマイシン3水和物、微結晶セルロース及びラクトースを100メッシュの篩に通し、10%糊化デンプンで加工処理することにより、軟材料を形成した。この材料を18メッシュ〜24メッシュの篩に通して顆粒を形成した。顆粒を乾燥させ、14メッシュ〜20メッシュの篩に通し、仕上げ加工し、ステアリン酸マグネシウムを添加し、混合し、カプセルに充填した(125mg/カプセル、エリスロマイシン換算)。
【0076】
実施例15:エリスロマイシン塩水和物顆粒の製造
ラクトビオン酸エリスロマイシン水和物又は乳酸エリスロマイシン水和物又はニコチン酸エリスロマイシン水和物又はクエン酸エリスロマイシン水和物又はチオシアン酸エリスロマイシン水和物(125mg/包、エリスロマイシン換算)等の顆粒は以下のように製造する。
処方:
エリスロマイシンの有機酸塩の水和物 125g(エリスロマイシン換算)
マンニトール 100g
ラクトース 20g
シクラミン酸ナトリウム 2g
固体食用香料 1g
ポリビニルピロリジノン、5% 適量
【0077】
エリスロマイシンの有機酸塩の水和物、マンニトール、ラクトース、シクラミン酸ナトリウム及び固体食用香料を100メッシュの篩に通し、5%ポリビニルピロリジノンで加工処理することにより、軟材料を形成した。この材料を18メッシュ〜24メッシュの篩に通し、60℃未満の温度で乾燥させ、14メッシュ〜20メッシュの篩に通し、仕上げ加工し、充填した。
【0078】
実施例16:エリスロマイシン塩水和物坐剤の製造
ラクトビオン酸エリスロマイシン水和物又は乳酸エリスロマイシン水和物又はニコチン酸エリスロマイシン水和物又はクエン酸エリスロマイシン水和物又はチオシアン酸エリスロマイシン水和物等の坐剤は以下のように製造する。
処方:
エリスロマイシンの有機酸塩の水和物 25g(エリスロマイシン換算、坐剤100個分)
ポリエチレングリコール4000 80g
プロピレングリコール 60ml
ポロキサマー 80g
水 100ml
【0079】
グリセロール、ポリエチレングリコール4000、ポロキサマー及びプロピレングリコールを混合した。混合物を水浴中で加熱し、撹拌して融解させ、エリスロマイシンの有機酸塩の水和物を添加し、均一に撹拌し、滑沢剤で予めコーティングした坐剤型に僅かに坐剤型からオーバーフローするまで迅速に注ぎ、冷却後平滑化し、型を取り外すことにより、製品を得た。
【0080】
実施例17:ラクトビオン酸エリスロマイシン水和物ゲルの製造
処方:
ラクトビオン酸エリスロマイシン水和物 25g(エリスロマイシン換算)
ポリエチレングリコール6000 50g
ポリエチレングリコール400 10g
グリセロール 5ml
Carbomer 934 8g
Carbomer 1342 2g
水 400ml〜500ml
【0081】
Carbomer 1342及びCarbomer 934を水に別個に分散させ、グリセロール、ポリエチレングリコール6000及びポリエチレングリコール400を添加し、撹拌及び混合し、ラクトビオン酸エリスロマイシン水和物を添加し、加熱し、均一に撹拌し、Na2HPO4及びNaH2PO4溶液を添加してpHを約5.0〜7.0に調整し、充填することにより、製品(250mg/用量、エリスロマイシン換算)を得た。
【0082】
実施例18:チオシアン酸エリスロマイシンAオキシム及びエリスロマイシンオキシムの製造
無水メタノール20ml及び塩酸ヒドロキシアミン9gを室温で250ml容の三つ口フラスコに添加した。混合物を撹拌しながら炭酸水素アンモニウム7.8gを数回に分けてゆっくりと添加し、チオシアン酸エリスロマイシンA水和物20g(無水物換算)を添加し、温度を40℃〜80℃、pHを6〜7に保持し、10時間〜40時間反応させ、−10℃〜10℃に冷却し、濾過し、得られた濾過ケーキに氷水40ml〜60mlを2回添加し、オーブンで乾燥させることにより、生成物16gを得た(融点:160℃(分解))。イソプロパノール15g及びチオシアン酸エリスロマイシンAオキシム8gを室温で100ml容の三つ口フラスコに添加した。温度を40℃〜70℃に保持しながら混合物を撹拌し、アンモニアを滴下により添加してpHを9.5〜12に保持し、30分間〜90分間撹拌し、水を50ml添加し、0℃〜15℃に冷却し、0.5時間〜1時間撹拌し、濾過し、乾燥させることにより、生成物6.2gを得た(収率83%、エリスロマイシンA(E)オキシム含有量92%、融点:154℃〜157℃)。
【0083】
実施例19:本発明のエリスロマイシン塩水和物の熱重量分析
方法及び条件:Setaram Company製のSetsys 16、昇温速度:10K/分、N2流速:50ml/分、室温〜約400℃、サンプル量約5mg。
【0084】
実施例20:本発明のエリスロマイシン塩水和物の含水量の測定
測定方法:中国薬局方2005年版(CP2005)に従い、カール・フィッシャー法によって含水量を測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子式がC3767NO13・A・nH2O、n=1.0〜11.0(式中、Aは薬学的に許容可能な酸である)であることを特徴とする、エリスロマイシン塩の水和物。
【請求項2】
前記薬学的に許容可能な酸がラクトビオン酸、チオシアン酸、マレイン酸、フマル酸、チオシアン酸、酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ニコチン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、アスパラギン酸、グルタミン酸又はリン酸である、請求項1に記載のエリスロマイシン塩の水和物。
【請求項3】
ラクトビオン酸エリスロマイシン11水和物である、請求項1に記載のエリスロマイシン塩の水和物。
【請求項4】
ラクトビオン酸エリスロマイシン6水和物である、請求項1に記載のエリスロマイシン塩の水和物。
【請求項5】
ラクトビオン酸エリスロマイシン5水和物である、請求項1に記載のエリスロマイシン塩の水和物。
【請求項6】
ラクトビオン酸エリスロマイシン3.5水和物である、請求項1に記載のエリスロマイシン塩の水和物。
【請求項7】
ラクトビオン酸エリスロマイシン3水和物である、請求項1に記載のエリスロマイシン塩の水和物。
【請求項8】
チオシアン酸エリスロマイシン3水和物である、請求項1に記載のエリスロマイシン塩の水和物。
【請求項9】
チオシアン酸エリスロマイシン2水和物である、請求項1に記載のエリスロマイシン塩の水和物。
【請求項10】
チオシアン酸エリスロマイシン1.5水和物である、請求項1に記載のエリスロマイシン塩の水和物。
【請求項11】
リン酸エリスロマイシン2.5水和物である、請求項1に記載のエリスロマイシン塩の水和物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のエリスロマイシン塩の水和物と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のエリスロマイシン塩の水和物を製造する方法であって、
方法A:反応容器において、クロロホルム、C3〜C6ケトン、C2〜C6エステル、水、C1〜C5アルコール及びそれらの混合物のうちの1つを溶媒として用い、エリスロマイシンを添加し、撹拌し、有機酸を添加し、反応終了後にC3〜C6ケトン、クロロホルム、C1〜C5アルコール、C2〜C6エーテル、C2〜C6エステル及びベンゼンのうちの1つ若しくは複数を添加し、冷却し、濾過し、得られた固体をC1〜C5アルコール、C3〜C6ケトン、C2〜C6エーテル及びクロロホルムのうちの1つ若しくは複数の有機溶媒で洗浄し、減圧下で濾過し、乾燥させることにより、前記エリスロマイシン塩の水和物を得ること;又は
方法B:薬学的に許容可能な酸溶液を所望のモル比でエリスロマイシン並びに前記溶媒として水、C1〜C5アルコール及びC3〜C6ケトンのうちの1つ若しくは複数を含有する反応容器に添加し、撹拌し、−10℃〜30℃の間の温度で0.5時間〜24時間反応させ、反応終了後に活性炭で脱色するか若しくは限外濾過膜で濾過し、−70℃〜−30℃の間の温度に冷却し、真空下で乾燥させることにより、前記エリスロマイシン塩の水和物を得ること;又は
方法C:薬学的に許容可能な酸又はその溶液を所望のモル比でエリスロマイシン及び水を含有する反応容器に添加し、撹拌し、−5℃〜20℃の間の温度で0.5時間〜24時間反応させ、反応終了後に活性炭で脱色するか若しくは限外濾過膜で濾過し、噴霧乾燥させることにより、前記エリスロマイシン塩の水和物を得ること、
を含む、方法。
【請求項14】
エリスロマイシンに対して感受性のある細菌、マイコプラズマ又はクラミジアによって引き起こされるヒト又は動物での感染症を治療する薬剤の製造における、請求項1〜11のいずれか一項に記載のエリスロマイシン塩の水和物の使用。
【請求項15】
前記薬剤を製剤化して、凍結乾燥粉末注射剤、無菌充填粉末注射剤、小容量注射剤、経腸投与用剤形、経皮投与用軟膏及びゲル、発泡錠又は膣内若しくは直腸投与用坐剤にする、請求項14に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−527292(P2011−527292A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516951(P2011−516951)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【国際出願番号】PCT/CN2009/000787
【国際公開番号】WO2010/003319
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(511009019)
【Fターム(参考)】