説明

エレクトロニクステキスタイル用接点構造及びその製造方法

【課題】フレキシブルな物理的接続、電気的接続を維持する機能性織布を提供する。
【解決手段】長さ方向に配線を備えた繊維基材をよこ糸及びたて糸として織り込み、交差箇所で両者の物理的結合を行うとともに、よこ糸用繊維基材1及びたて糸用繊維基材2の少なくとも一方に形成した機能素子4を、両繊維基材の配線間で電気的接続を行う結合部を備えた機能性織布において、結合部を、よこ糸用繊維基材1及びたて糸用繊維基材2の交差箇所において、これらの繊維基材の少なくとも一方に導電性カンチレバーを形成する。このカンチレバーの先端にはナノピラーが形成されており、他方に形成されたナノピラーを互いに接触させて係合させることにより、カンチレバーで両繊維基材の物理的結合及び電気的接続を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に電気的機能素子を形成したフレキシブルな繊維基材を織布化したエレクトロニクステキスタイル、すなわち機能性織布に関し、特に繊維基材をたて糸、よこ糸として織布化する際の両者の接点構造及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
センサーやアクチュエータ等に代表される微小電気機械システム(MEMS)デバイスを、PET等の繊維基材に成膜、パターニング、エッチング、インプリント等により形成し、こうした繊維基材同士をたて糸及びよこ糸として織り込んで、柔軟で所定の面積を有する機能性織布とするためには、たて糸及びよこ糸としての位置決めと物理的接続、そしてこれらを電気的に接続する電気的接点が必要となる。
【0003】
下記特許文献1には、有機LEDが表面に形成された帯状の繊維基材と、RAMが表面に形成された帯状の繊維基材とをたて糸及びよこ糸として織り込んで機能性織布を形成することが記載されており、両繊維基材が接触する対向箇所に、凹凸の表面接点構造を形成し、両者を嵌合することにより、物理的接続と電気的接続を実現している。
【0004】
また、下記特許文献2には、発光素子などの電気的素子とその接点が配列された機能性繊維基材に対し、接点部分で導電性繊維基材を交差させることにより、電気素子に電力を供給することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公開2008/0178453号公報
【特許文献2】米国特許7,592,276(B2)明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした機能性織布は、使用形態に応じて様々な曲率に湾曲されるが、その際、繊維基材のたて糸とよこ糸間に300μm程度のギャップが生じる可能性があり、上記特許文献1にみられるような構造では、このようなギャップを吸収することができず、凹凸の表面接点構造が離脱してしまい、繊維基材に形成された機能素子の電気的接続が断線され機能劣化を招くことになる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、機能性織布が様々な曲率で湾曲されても、たて糸とよこ糸間の接続部が柔軟に伸縮して、物理的接続、電気的接続を維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上記の目的を達成するため、長さ方向に配線を備えた繊維基材をよこ糸及びたて糸として織り込み、交差箇所で両者の物理的結合を行うとともに、よこ糸用繊維基材及びたて糸用繊維基材の少なくとも一方に形成した機能素子を、両繊維基材の配線間で電気的接続を行う結合部を備えた機能性織布において、前記結合部は、前記よこ糸用繊維基材及びたて糸用繊維基材のそれぞれに形成した導電性のナノピラーからなり、該ナノピラーは、前記繊維基材の少なくとも一方に設けた導電性カンチレバーの先端部に形成され、両ナノピラーを互いに接触させて係合させることにより、両繊維基材の物理的結合及び電気的接続を行うようにした。
【0009】
前記ナノピラーの外周面に凹凸部を形成し、両ナノピラーを互いに接触させて係合させる際、双方の凹凸部を互い違いに接触させて係合させるようにしてもよい。
【0010】
また、前記導電性カンチレバーは、前記機能素子のそれぞれに対し複数設けられ、他方の繊維基材に、前記導電性カンチレバーの先端部に形成されたナノピラーのそれぞれに対応したナノピラーを形成してもよい。
【0011】
さらに、前記導電性カンチレバーは、前記よこ糸用繊維基材及びたて糸用繊維基材の双方に設けられ、該カンチレバーのそれぞれの先端に形成したナノピラーを互いに係合させることにより、両繊維基材の物理的結合及び電気的接続を行うようにしてよい。
【0012】
一方、本発明では、上記の機能性織布を効率よく製造するため、長さ方向に配線を備えた繊維基材をよこ糸及びたて糸として織り込み、交差箇所で両者の物理的結合を行うとともに、よこ糸用繊維基材及びたて糸用繊維基材の少なくとも一方に形成した機能素子を、両繊維基材の配線間で電気的接続を行う結合部を備えた機能性織布の製造方法において、
前記繊維基材に均一なアモルファスフッ素樹脂層を塗布する工程と、該アモルファスフッ素樹脂層にインプリントすることにより、前記結合部の基部を形成する工程と、前記基部が形成されたアモルファスフッ素樹脂層の上面にポリメタクリル酸メチル樹脂層を塗布する工程と、前記ポリメタクリル酸メチル樹脂層の上面にさらに導電性ポリマー層を塗布する工程と、ポリメタクリル酸メチル樹脂層と前記導電性ポリマー層の積層部をインプリントし、前記基部及び該基部の上端から前記繊維基材の表面に対し、所定厚さのアモルファスフッ素樹脂層を介して平行に延びるレバー部を形成する工程と、前記レバー部上面の導電性ポリマー層の表面にインプリントすることによりナノピラーを形成する工程と、
前記アモルファスフッ素樹脂層を除去する工程とにより機能性織布を製造した。
【0013】
その際、前記基部をよこ糸用繊維基材及びたて糸用繊維基材の両方に形成するとともに、前記レバー部をよこ糸用繊維基材及びたて糸用繊維基材の一方のみに形成する工程と、レバー部上面の導電性ポリマー層の表面と、他方の繊維基材に形成した前記基部の上方に積層された導電性ポリマー層の表面にナノピラーを形成する工程を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の機能性織布によれば、さまざまな曲率に湾曲されても、よこ糸とたて糸の交差箇所が、先端のナノピラーで互いに結合されている導電性カンチレバーで結合されているため、カンチレバーが水平状態から直立状態になるまで追随し、物理的接続、電気的接続を確実に維持することが可能になる。
【0015】
また本発明の機能性織布の製造方法によれば、繊維基材に均一に塗布したアモルファスフッ素樹脂層にインプリントすることにより、結合部としてのカンチレバーの基部を形成させるとともに、この基部に対応して、アモルファスフッ素樹脂層の上層に、インプリントによりポリメタクリル酸メチル樹脂層及び導電性ポリマー層の積層部からなるレバー部を形成した上で、アモルファスフッ素樹脂層を除去することにより、上記のカンチレバーを効率よく製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による機能性織布の一例を示す図
【図2】カンチレバーによる結合構造を示す図
【図3】繊維基材に積層されるアモルファスフッ素樹脂層、ポリメタクリル酸メチル樹脂層、導電性ポリマー層を示す図
【図4】ナノピラー構造の実例を示す図
【図5】ナノピラーモールドの製造工程を示す図
【図6】ナノピラーの係合を示す図
【図7】接点の電気的接続を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、機能性織布の一例を示しており、よこ糸用繊維基材1及びたて糸用繊維基材2は、例えば、2〜3mm程度の幅を有するPET製の帯状繊維基材3などからなり、交互に交差するよう織り込まれている。よこ糸用繊維基材1には、センサデバイスなどの機能素子4がたて糸用繊維基材2との交差部分近傍の上面に形成されている。この機能素子4は、機能性薄膜を印刷、あるいはダイコート等の手法で塗布したり、半導体製造工程を用いて直接形成されており、各機能素子4は、よこ糸用繊維基材1の上面に長さ方向に連続的に形成された配線5−1により電気的に接続されている。なお、機能素子4を予め半導体製造工程で多数製造しておき、配線5−1に電気的に接続されるよう、よこ糸用繊維基材1に貼付してもよい。
【0018】
一方、たて糸用繊維基材2にも配線5−2が形成されており、よこ糸用繊維基材1の各機能素子4の裏面とたて糸用繊維基材2の交差部分には、各機能素子4と配線5−2とを物理的かつ電気的に接続する接点構造6と接点構造7とが互いに対向するよう形成され、両接点構造6、7が結合することにより、よこ糸用繊維基材1の配線5−1、各機能素子4及びたて糸用繊維基材2の配線5−2が電気的に接続されることになる。なお、各機能素子4とよこ糸用繊維基材1側の接点構造とは、よこ糸用繊維基材1の側方を回り込む配線5−3により電気的に接続されている。
また、この例に示すように、よこ糸用繊維基材1及びたて糸用繊維基材2の間に、機能素子、配線、接点構造などをまったく備えていない繊維基材3そのものを交互に織り込み、機能性織布としての強度や屈曲性を強化するようにしてもよい。
【0019】
また、各機能素子4については、どのよこ糸用繊維基材1とどのたて糸用繊維基材2の交差部分に配置されたものであるかを特定する必要があるため、各機能素子4毎に、よこ糸用繊維基材1、たて糸用繊維基材2に専用の配線5−1、5−2を複数本形成してもよいが、両繊維基材にそれぞれ1本の配線5−1、5−2に並列に接続し、各配線5−1、5−2からの信号を所定の周波数で繊維基材毎にスキャニングすることにより、各機能素子4の位置を特定するようにしてもよい。
【0020】
この接点構造6、7は、図2に示されるように、導電性を備えた樹脂から形成されたカンチレバー8からなり、このカンチレバー8は、図3(a)に示されるように、繊維基材3から垂直方向に延びる基部9と、該基部9の上端部から繊維基材3に所定の間隙を介して平行に延びるレバー部10とからなるL字状のものである。
【0021】
以下、よこ糸用繊維基材1、たて糸用繊維基材2の製造工程について説明する。
(1)帯状のPETフィルムからなるよこ糸用繊維基材1の上面には、機能性薄膜の印刷等により機能素子4が形成されており、また、この機能素子4に電気的に接続するよう、よこ糸用繊維基材1の長さ方向にわたり配線5−1が形成されている。なお、この配線5−1は、導電性インクを凸版印刷、グラビア印刷、ダイコートあるいはインクジェットなどにより印刷することにより形成することができる。
【0022】
(2)よこ糸用繊維基材1の裏面(図3では上面)に、例えばCYTOP(登録商標)等のアモルファスフッ素樹脂層11を均一に塗布する。
【0023】
(3)よこ糸用繊維基材1上の機能素子4の裏側に対応して、カンチレバー8の基部9に対応する凹部をアモルファスフッ素樹脂層11にインプリントすることにより形成する。なお、この凹部は、機能素子4の接点に表裏で対応するよう、よこ糸用繊維基材1裏面に形成されている。
【0024】
(4)この基部9に対応する凹部を含む表面上に、導電性ポリアニリンなど、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)層12を塗布し、さらにその上面に導電性ポリマー(PEDOT−PSS等)層13を塗布して積層する。
【0025】
(5)この基部9に対応する凹部に充填されたポリメタクリル酸メチル樹脂層12と組み合わされて、その上面によこ糸用繊維基材1の表面と平行に延びるレバー部10をインプリントにより形成し、それ以外のアモルファスフッ素樹脂層11、ポリメタクリル酸メチル樹脂層12及び導電性ポリマー(PEDOT−PSS等)層13をすべて除去する。これにより、ポリメタクリル酸メチル樹脂層12より形成される基部9と、その基部9からよこ糸用繊維基材1に平行に延びるポリメタクリル酸メチル樹脂層12と導電性ポリマー層13との積層物からなるレバー部10が形成される。
【0026】
(6)レバー部10表面の導電性ポリマー層13のうち、先端側の表面に、図3(a)に示されるように、紫外線透過ガラスの裏面に貼付したナノピラーモールドに導電性ポリマーをコーティングし、導電性ポリマー層13の上面に密着させた後、図3(b)に示されるように、紫外線を照射し、UV硬化によりナノピラー14を形成する。なお、このナノピラー14は、図4に示されるように略円筒型で、この実施例ではその外周面には軸線方向に微小な凹凸が形成されている。
なお、ナノピラー14をインプリントする際の型としては、図5に示されるように、シリコンモールドにPDMS樹脂を真空キャスティングにより塗布し、硬化後にパーマネントボンディングによりガラス基板に固着し、シリコンモールドに予め形成した微小な凹凸を有するナノピラー形状を転写して、ナノピラーモールドを形成することができる。
【0027】
(7)ポリメタクリル酸メチル樹脂層12及び導電性ポリマー層13はインプリント温度からの冷却時に収縮するが、レバー部10を形成するポリメタクリル酸メチル樹脂層12の下方には、アモルファスフッ素樹脂層11が所定の厚さで残存し、これにより保持され、レバー部10は、図3(c)に示されるように、ポリメタクリル酸メチル樹脂層12及び導電性ポリマー13のインプリント温度から冷却に伴い、異種材料間の熱膨張率等の相違により内部応力を蓄積した状態で水平を維持している。
なお、基部9及びレバー部10を備えたカンチレバー8は機能素子4毎に設けられ、図2に示されるように、長手方向に直交する方向に櫛状に形成されている。
【0028】
(8)そして、高圧空気を吹き込みことにより、レバー部10下面のアモルファスフッ素樹脂層11を除去すると、導電性ポリマー層13は、インプリント温度からの冷却時に蓄積した内部応力により、図3(c)の状態から、図2に示されるようにカンチレバー部10は基部9を基点として弓状に屈曲する。なお、この屈曲率は、レバー部10の長さと幅の比やポリメタクリル酸メチル樹脂、導電性ポリマーの熱膨張率などにより様々な値にすることができる。
【0029】
以上のように、配線5−1に電気的に接続される機能素子4毎に、電気的に接続されるカンチレバー8をよこ糸用繊維基材1となる繊維基材3に一挙に形成することができる。
なお、たて糸用繊維基材2についても、同様の製造工程で配線5−2に電気的に接続されるカンチレバー8を形成し、よこ糸用繊維基材1とたて糸用繊維基材2を織り込んで織布を形成する際、両カンチレバー8の端部を対向させ、図6に示されるように、両者のナノピラー14が互いの間隙に入り込ませることにより、よこ糸用繊維基材1とたて糸用繊維基材2を物理的かつ電気的に強固に接続する接点構造6及び7とすることができる。
【0030】
すなわち、よこ糸用繊維基材1とたて糸用繊維基材2を織り込む際、一方のカンチレバー8に形成されたナノピラー14を他方のナノピラー14の間隙に押し込むことにより、一方のナノピラー14の外周面に形成された凹凸部が、これを取り囲む他方側のナノピラー14のいずれかと互いの凹凸部で互い違いに接触して係合し、繊維基材3がさまざまな曲率に湾曲されても、いずれかのナノピラー14との接触した係合状態が維持され、双方のカンチレバーが水平状態から直立状態になるまで追随し、物理的接続、電気的接続を確実に維持することが可能になる。
【0031】
よこ糸用繊維基材1とたて糸用繊維基材2の双方に、その長手方向に対し直交する方向にカンチレバー8を形成した場合、両カンチレバーは直交する方向で交差することになるが、図2あるいは図7(b)に示されるように、よこ糸用繊維基材1とたて糸用繊維基材2の一方には、長手方向に直交する方向にカンチレバー8を形成し、他方には、長手方向にカンチレバー8を形成すれば、両カンチレバー8を直線上で対向させることができる。その際は、アモルファスフッ素樹脂層11あるいはポリメタクリル酸メチル樹脂層12及び導電性ポリマー13の積層部をインプリントする型として、一方には繊維基材3の長手方向に直交する櫛状の凸部あるいは凹部を有するものを使用し、他方には、繊維基材3に対し長手方向の櫛状の凹部あるいは凸部を、繊維基材3の長手方向に断続的に複数有するものを使用すればよい。
【0032】
また、図7(a)に示されるように、カンチレバー8をよこ糸用繊維基材1あるいはたて糸用繊維基材2の一方のみに設け、他方に、このカンチレバー8のナノピラー14のみを形成して、両ナノピラー14を嵌合させるようにしてもよい。その際は、他方については、アモルファスフッ素樹脂層11あるいはポリメタクリル酸メチル樹脂層12及び導電性ポリマー13の積層部をインプリントする型として、基部9のみを形成する凸部あるいは凹部を有するものを使用し、この基部9の最表面にナノピラー14を形成すればよい。なお、ナノピラー14の外周面に意図的に凹凸を形成しなくても、インプリントの際に必然的に発生する微少な凹凸でも十分な保持力を得ることができる。
【0033】
さらにたて糸用繊維基材2となる繊維基材3については、図2に示されるようにカンチレバー8の基部9を繊維基材3の長さ方向に連続させ、カンチレバーカップリング接点として基部9自体を配線5−1として利用することもできる。
【0034】
よこ糸用繊維基材1及びたて糸用繊維基材2となる繊維基材3に形成するカンチレバー8の構造については、その他さまざまな態様が可能である。すなわち、
(1)よこ糸用繊維基材1及びたて糸用繊維基材2の双方に、機能素子4を形成し、それぞれに他方の機能素子4に接続される配線5を別個に設けるとともに、カンチレバー8を表裏交互に配置して、よこ糸用繊維基材1とたて糸用繊維基材2の交差箇所のすべてに、互いに対向する接点構造6、7を形成する。
【0035】
(2)一つの機能素子4に対し、同方向、あるいは図2、図7(b)に示されるように互いに対向するカンチレバー8を複数設けるとともに、他方の繊維基材3側に、これらのカンチレバー8のナノピラー14と接触して係合するナノピラー14を複数設け、複数のカンチレバー8でより確実な接点構造とする。その際、他方の繊維基材3にも対応するカンチレバー8を複数設け、これらの端部にナノピラー14を形成してもよいし、カンチレバー8を設けず、基部9のみにナノピラー14を形成してもよい。
【0036】
(3)よこ糸用繊維基材1及びたて糸用繊維基材2の双方に両カンチレバー8を設け、これらを直線上で対向させるように配置する場合、両者の基部9を上下方向に同じ位置に配置し、同じ方向に延びるレバー部10の先端に設けたナノピラー14を互いに接触して係合するようにしてもよいし、両者の基部9の位置をずらし、レバー部10を互いに対向する向きに伸ばし、両レバー部10の先端に設けたナノピラー14を互いに嵌合するようにしてもよい。
【0037】
(4)カンチレバー8の基部9を形成する際、よこ糸用繊維基材1に関しては、インプリントにより機能素子4の接点を露出させるとともに、ポリメタクリル酸メチル樹脂層12及び導電性ポリマー13の積層部をインプリントする際、この積層部を貫通する穴を形成して、導電性樹脂等を充填することにより、カンチレバー8の導電性ポリマー13と機能素子4の電極とを電気的に接続するようにしてもよい。なお、たて糸用繊維基材2に関しては、導電性ポリマー13の上面からたて糸用繊維基材2の裏面まで貫通する穴を形成して、導電性樹脂等を充填することにより、カンチレバー8の導電性ポリマー13とたて糸用繊維基材2の配線5−2とを電気的に接続するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上説明したように本発明の機能性織布によれば、さまざまな曲率に湾曲されても、よこ糸とたて糸の交差箇所が、先端のナノピラーで互いに結合されている導電性カンチレバーで結合されているため、カンチレバーが水平状態から直立状態になるまで追随し、物理的接続、電気的接続を確実に維持することが可能になり、機能性織布の耐久性を高めその利用範囲を飛躍的に拡大することができる。
【0039】
また、本発明の機能性織布の製造方法によれば、インプリントによりポリメタクリル酸メチル樹脂層及び導電性ポリマー層を形成した上で、アモルファスフッ素樹脂層を除去することにより、上記のカンチレバーを効率よく製造することが可能になり、機能性織布の製造コストを低減することが可能になる。
【符号の説明】
【0040】
1 よこ糸用繊維基材
2 たて糸用繊維基材
3 帯状繊維基材
4 機能素子
5 配線
6、7 接点構造
8 カンチレバー
9 基部
10 レバー部
11 アモルファスフッ素樹脂層
12 ポリメタクリル酸メチル樹脂
13 導電性ポリマー層
14 ナノピラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向に配線を備えた繊維基材をよこ糸及びたて糸として織り込み、交差箇所で両者の物理的結合を行うとともに、よこ糸用繊維基材及びたて糸用繊維基材の少なくとも一方に形成した機能素子を、両繊維基材の配線間で電気的接続を行う結合部を備えた機能性織布において、
前記結合部は、前記よこ糸用繊維基材及びたて糸用繊維基材のそれぞれに形成した導電性のナノピラーからなり、該ナノピラーは、前記繊維基材の少なくとも一方に設けた導電性カンチレバーの先端部に形成され、両ナノピラーを互いに接触させて係合させることにより、両繊維基材の物理的結合及び電気的接続を行うようにしたことを特徴とする機能性織布。
【請求項2】
前記ナノピラーの外周面に凹凸部を形成し、両ナノピラーを互いに接触させて係合させる際、双方の凹凸部を互い違いに接触させて係合させることを特徴とする請求項1に記載の機能性織布。
【請求項3】
前記導電性カンチレバーは、前記機能素子のそれぞれに対し複数設けられ、他方の繊維基材に、前記導電性カンチレバーの先端部に形成されたナノピラーのそれぞれに対応したナノピラーを形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の機能性織布。
【請求項4】
前記導電性カンチレバーは、前記よこ糸用繊維基材及びたて糸用繊維基材の双方に設けられ、該カンチレバーのそれぞれの先端に形成したナノピラーを互いに係合させることにより、両繊維基材の物理的結合及び電気的接続を行うようにしたことを特徴とする請求項1ないし3に記載の機能性織布。
【請求項5】
長さ方向に配線を備えた繊維基材をよこ糸及びたて糸として織り込み、交差箇所で両者の物理的結合を行うとともに、よこ糸用繊維基材及びたて糸用繊維基材の少なくとも一方に形成した機能素子を、両繊維基材の配線間で電気的接続を行う結合部を備えた機能性織布の製造方法において、
前記繊維基材に均一なアモルファスフッ素樹脂層を塗布する工程と、
該アモルファスフッ素樹脂層にインプリントすることにより、前記結合部の基部を形成する工程と、
前記基部が形成されたアモルファスフッ素樹脂層の上面にポリメタクリル酸メチル樹脂層を塗布する工程と、
前記ポリメタクリル酸メチル樹脂層の上面にさらに導電性ポリマー層を塗布する工程と、
ポリメタクリル酸メチル樹脂層と前記導電性ポリマー層の積層部をインプリントし、前記基部及び該基部の上端から前記繊維基材の表面に対し、所定厚さのアモルファスフッ素樹脂層を介して平行に延びるレバー部を形成する工程と、
前記レバー部上面の導電性ポリマー層の表面にインプリントすることによりナノピラーを形成する工程と、
前記アモルファスフッ素樹脂層を除去する工程とからなる機能性織布の製造方法。
【請求項6】
前記基部をよこ糸用繊維基材及びたて糸用繊維基材の両方に形成するとともに、前記レバー部をよこ糸用繊維基材及びたて糸用繊維基材の一方のみに形成する工程と、
レバー部上面の導電性ポリマー層の表面と、他方の繊維基材に形成した前記基部の上方に積層された導電性ポリマー層の表面にナノピラーを形成する工程を備えた請求項5に記載の機能性織布の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−26064(P2012−26064A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168284(P2010−168284)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(ロボット・新技術イノベーションプログラム)「異分野融合型次世代デバイス製造技術開発プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】