説明

エレクトロフュージョン継手用クランプ装置

【課題】 持ち運びが容易なうえ保管スペースを縮小でき、取り外しや組み立て等の段取りが不要となり、作業能率を向上させることができるエレクトロフュージョン継手用クランプ装置を目的とするものである。
【解決手段】 関節部2を一方のアーム5の連結体3と他方のアーム6の連結体4とを角度調整自在に枢着したものとするとともに、前記各アーム5,6にチェンバイス9,9を取り付けたクランプ本体7,7をスライド固定自在に取り付けた折り畳み自在なエレクトロフュージョン継手用クランプ装置であって、各クランプ本体7,7に折り畳んだ各アーム5,6を介入させる切欠部11,11を形成したものであり、各クランプ本体7,7に折り畳んだ各アーム5,6を介入させる切欠部11,11を形成することにより、折り畳んだ時、アーム5,6に取り付けられているクランプ本体7,7同士が干渉しないように位置をずらすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電熱線を内蔵させたエレクトロフュージョン継手とポリエチレン管等の樹脂管とを所定の角度で融着接合時に用いられるエレクトロフュージョン継手用クランプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電熱線を内蔵したエレクトロフュージョン継手の接続口部に挿し込まれたポリエチレン管等の樹脂管を所定の角度で融着接合する際、溶融した樹脂が硬化するまでの間、両者を固定するためにエレクトロフュージョン継手用クランプ装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。このエレクトロフュージョン継手用クランプ装置は接合するエレクトロフュージョン継手が大きくなるほど大型化する。しかし、大型化したエレクトロフュージョン継手用クランプ装置は大きく持ち運びが厄介となる問題がある。そこでクランプ装置を支持棒から外して折り畳むことにより保管スペースを小さくするものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
しかし、折り畳むことにより保管時や持ち運び時の労力やスペースを低減できても、クランプ装置の取り外しや組み立て等の段取りに手間と時間を要するうえに、取り外したクランプ装置の管理が不十分だと紛失事故が発生するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−230548号公報
【特許文献2】特開2008−23950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は持ち運びが容易なうえ保管スペースを縮小でき、取り外しや組み立て等の段取りが不要となり、作業能率を向上させることができるエレクトロフュージョン継手用クランプ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、関節部を一方のアームの連結体と他方のアームの連結体とを角度調整自在に枢着したものとするとともに、前記各アームにチェンバイスを取り付けたクランプ本体をスライド固定自在に取り付けた折り畳み自在なエレクトロフュージョン継手用クランプ装置であって、各クランプ本体に折り畳んだ各アームを介入させる切欠部を形成したことを特徴とするものである。
【0007】
なお、切欠部がクランプ本体固定用のノブ付締付ボルトと略同じ高さで並設される脚辺を形成したものとしたり、切欠部がチェンバイスのチェン係止側のチェン係止位置よりも内側に形成されるものとしたり、関節部が枢着中心の同心円上に角度調整及び折り畳み用のピン穴を形成した連結体と、前記ピン穴に係脱自在とされるロックピンを張出形成した連結体と、関節部の枢着中心に設けられて前記各連結体を接離固定自在とする締付ボルトとからなるものとしたりしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、関節部を一方のアームの連結体と他方のアームの連結体とを角度調整自在に枢着したものとするとともに、前記各アームにチェンバイスを取り付けたクランプ本体をスライド固定自在に取り付けた折り畳み自在なエレクトロフュージョン継手用クランプ装置であって、各クランプ本体に折り畳んだ各アームを介入させる切欠部を形成することにより、折り畳んだ時、アームに取り付けられているクランプ本体同士が干渉しないように位置をずらすことができる。また、切欠部を形成したからよりコンパクトに折り畳むことができ、保管スペースを縮小できるうえに持ち運びが容易となる。
【0009】
また、切欠部がクランプ本体固定用のノブ付締付ボルトと略同じ高さで並設される脚辺を形成したものとすることにより、各クランプ本体を上下反転させ、各クランプ本体の脚辺と並設されるノブ付締付ボルトとを脚としてクランプ本体を立たせてエレクトロフュージン継手と樹脂管をクランプさせることができるので、床面でエレクトロフュージン継手と樹脂管との融着接合を行なうことができる。
【0010】
切欠部がチェンバイスのチェン係止側のチェン係止位置よりも内側に形成されるので、アームの枢動軌跡と干渉しない位置までチェン係止位置を下げることができ、アームの折り畳みを邪魔することがない。
【0011】
関節部が枢着中心の同心円上に角度調整及び折り畳み用のピン穴を形成した連結体と、前記ピン穴に係脱自在とされるロックピンを張出形成した連結体と、関節部の枢着中心に設けられて前記各連結体を接離固定自在とする締付ボルトとからなるものとすることにより、アームを所定角度にロックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好ましい実施形態を示す一部切欠平面図である。
【図2】同じく一部切欠正面図である。
【図3】同じく側面図である。
【図4】クランプ本体のチェン係止側をアームの内側に配置させてエレクトロフュージョン継手と樹脂管とを保持した状態を示す平面図である。
【図5】クランプ本体のチェン係止側をアームの外側に配置させてエレクトロフュージョン継手と樹脂管とを内方で保持した状態を示す平面図である。
【図6】関節部を緩めてアームの枢動可能な状態を示す一部正面図である。
【図7】アームを折り畳んだ状態を示す側面図である。
【図8】クランプ本体を脚辺とノブ付締付ボルトで立脚させた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の好ましい実施形態を図に基づいて詳細に説明する。
図1はエレクトロフュージョン継手用クランプ装置の平面図であり、図2、3はその正面図と側面図である。
1は装置本体であり、該装置本体1は関節部2の連結体3,4に接続されるアーム5,6と、該アーム5,6に取り付けられるクランプ本体7,7と、該クランプ本体7,7に取り付けられるチェンバイス9,9とからなる。
【0014】
前記関節部2は枢着中心の同心円上に角度調整及び折り畳み用のピン穴3aを複数形成するとともに、アーム接続部3bを形成した連結体3と、前記ピン穴3aに係脱自在とされるロックピン4aを張出形成するとともにアーム接続部4bを形成した連結体4と、関節部2の枢着中心に設けられて前記各連結体3,4を接離固定自在としてピン穴3aとロックピン4aとの係脱を行なうノブ付きの締付ボルト2aとからなる。締付ボルト2aは連結体3に形成された雌ねじ3cに螺挿されて締緩を行なう。
【0015】
また、前記クランプ本体7,7は樹脂管Pを締付保持するチェンバイス9,9が設けられるとともに、アーム5,6にスライド固定自在に取り付けられる。チェンバイス9,9は一端をクランプ本体7,7に枢動自在に螺挿されるチェン締付ボルト13,13と樹脂管P径に応じる複数の係止用張出ピン9a,9aを形成したチェン9b,9bとからなるもので、樹脂管P径に基づいて腕辺11aに係止される係止用張出ピン9a,9aを変えることによりチェン9bの長さを調整できるようにしてある。また、クランプ本体7,7は下面に山形の樹脂管受け7a,7aを形成するとともに、チェン係止側に切欠部11,11が形成されている。
【0016】
前記切欠部11,11はアーム5,6の枢動軌跡上に形成される鉤形の凹部であり、折り畳んだ際、回転されて一方のクランプ本体7の切欠部11は逆向きの鉤形となり、アーム5,6の枢動軌跡上に開口が向くようになる。鉤形の切欠部11,11は側方に延設される腕辺11a,11aと上方に延設される脚辺11b,11bとからなり、腕辺11a,11aの上面には係止用張出ピン9a,9aを係止する凹溝11c,11cが形成されている。
【0017】
また、クランプ本体7,7のチェン係止側の反対側にはクランプ本体7,7に軸止される枢動軸15,15に螺挿されて揺動自在とされるノブ付きのチェン締付ボルト13,13が設けられている。
【0018】
17,17はクランプ本体7,7にアーム5,6を締付固定するノブ付締付ボルトであり、該ノブ付締付ボルト17、17はアーム5,6を締付けた状態において、ノブ付締付ボルト17、17のノブの高さと前記した脚辺11b,11bの高さは略等しいものとしている。このため、クランプ本体7,7を上下ひっくり返して使用する際、ノブ付締付ボルト17,17と脚辺11b,11bとは4点の支持点となって立脚できるので、エレクトロフュージョン継手Eと樹脂管Pとを自立保持させることができる。
【0019】
20はクランプ本体7,7のアーム挿通孔に形成されるアーム5,6の回止用バイス、21は連結体3,4の表面に刻印されるアーム角度及び折り畳み角度を示す表示部であり、該表示部21を連結体3,4の表面に刻印するのは装置本体1を裏返して使用する際にも、角度を視認することができるようにするためである。22は連結体3,4の表面に刻印される角度合わせ用の指針であり、該指針22は前記表示部21の角度と合わせることによりアームを所定の角度に枢動させたり、折り畳んだりすることができる。
【0020】
このように構成されたものは、例えば、図4に示されるようなエルボのエレクトロフュージョン継手Eの両接続口部に樹脂管Pの端部を挿し込む。次に、ノブ付きの締付ボルト2aを緩めて締付けられて一体化している連結体3,4を離隔させて折り畳み用のピン穴3aからロックピン4aを抜き出す。そして、エレクトロフュージョン継手Eの角度、即ち90°に基づいてアーム角度表示部21の90°を指針22と合わせてアーム5,6の角度を90°に設定する。
【0021】
角度設定後、締付ボルト2aを締付ければ、90°位置にあるピン穴3aにロックピン4aは挿入されてアーム5,6の角度はロックされる。続いて、ノブ付締付ボルト17を緩めて図4に示されるように、関節エレクトロフュージョン継手Eの両接続口部に挿し込まれる樹脂管Pが保持できる位置までアーム5,6上のクランプ本体7,7をスライドさせる。スライド後、ノブ付締付ボルト17、17を締付けてクランプ本体7,7をアーム5,6に固定する。
【0022】
続いて、図4に示されるように両樹脂管Pの上面をクランプ本体7,7で受けさせるとともに、クランプ本体7,7の一端に取り付けられているチェン締付ボルト13,13に装着されているチェン9b,9bを樹脂管Pに巻き付け、チェン9b,9bの他端を樹脂管P径に応じた係止用張出ピン9a,9aを腕辺11a,11aの凹溝11c,11cに係止させる。
【0023】
係止用張出ピン9a,9aの係止後、チェン締付ボルト13,13を締付方向に回動させて巻き付けられているチェン9b,9bを緊張させて樹脂管Pをクランプ本体7,7とチェン9b,9b間で締付固定する。このようにしてエレクトロフュージョン継手Eと樹脂管Pがクランプされたら、エレクトロフュージョン継手Eの電熱線に通電して熱融着を行い樹脂の冷却硬化後、チェン締付ボルト13,13を緩めてチェン9b,9bを樹脂管Pより外してクランプを解けばよい。
【0024】
図4ではアーム5,6をエレクトロフュージョン継手Eの外側に配置させたものとしているが、図5に示されるように、アーム5,6をエレクトロフュージョン継手Eの内側に配置させてもよく、これはエレクトロフュージョン継手Eがさらに大型となってアーム5,6長が足りなくなったときに行なう配置で、同じ大きさのエレクトロフュージョン継手Eで示されるように内側にアーム5,6を配置させることにより、図5に示されるようにアーム5,6の長さに余裕ができることとなる。さらに大きなエレクトロフュージョン継手Eのクランプが可能となることが分かる。また、この配置は作業空間上、装置本体1の設置に制約が生じた場合にも適用できることはいうまでもない。
【0025】
このようなエレクトロフュージョン継手用クランプ装置を持ち運んだり、保管したりする場合は、締付ボルト2aを緩めて、連結体3,4を離隔させてピン穴3aとロックピン4aとの係合を解いたうえ、折り畳み時、クランプ本体7,7が干渉しないように、ノブ付締付ボルト17,17を緩めてアーム上の一方のクランプ本体の位置を若干ずらす。
【0026】
この状態で装置本体1を折り畳めば、図7に示されるようにアーム5,6はクランプ本体7,7の切欠部11,11に介入されるので、二つ折りされて長さが半分となり、持ち運びは勿論、狭い保管場所でも収納が可能となる。また、クランプ本体7,7はアーム5,6から取り外すことなく持ち運んだり保管収納するので、落としたり、他物に紛れ込んだりして紛失する恐れがなくなるうえに、現場に持ち運べば即座に作業に移ることができるので作業能率が向上するものとなる。
【0027】
図8は装置本体1を上下反転させたもので、装置本体1はクランプ本体7,7の脚辺11bとノブ付締付ボルト17により立脚されてエレクトロフュージョン継手Eと樹脂管Pとを保持することができる。これはエレクトロフュージョン継手Eと樹脂管Pとを地面等独立させた融着接合する場合に適用されるものである。
【符号の説明】
【0028】
1 装置本体
2 関節部
2a 締付ボルト
3 連結体
3a ピン穴
3b アーム接続部
3c 雌ねじ
4 連結体
4a ロックピン
4b アーム接続部
5 アーム
6 アーム
7,7 クランプ本体
7a,7a 樹脂管受け
9,9 チェンバイス
9a 係止用張出ピン
9b チェン
11 切欠部
11a 腕辺
11b 脚辺
11c 凹溝
13 チェン締付ボルト
15 枢動軸
17 ノブ付締付ボルト
20 回り止めバイス
21 アーム角度表示部
22 指針
E エレクトロフュージョン継手
P 樹脂管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節部を一方のアームの連結体と他方のアームの連結体とを角度調整自在に枢着したものとするとともに、前記各アームにチェンバイスを取り付けたクランプ本体をスライド固定自在に取り付けた折り畳み自在なエレクトロフュージョン継手用クランプ装置であって、各クランプ本体に折り畳んだ各アームを介入させる切欠部を形成したことを特徴とするエレクトロフュージョン継手用クランプ装置。
【請求項2】
切欠部がクランプ本体固定用のノブ付締付ボルトと略同じ高さで並設される脚辺を形成したものであることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロフュージョン継手用クランプ装置。
【請求項3】
切欠部がチェンバイスのチェン係止側のチェン係止位置よりも内側に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のエレクトロフュージョン継手用クランプ装置。
【請求項4】
関節部が枢着中心の同心円上に角度調整及び折り畳み用のピン穴を形成した連結体と、前記ピン穴に係脱自在とされるロックピンを張出形成した連結体と、関節部の枢着中心に設けられて前記各連結体を接離固定自在とする締付ボルトとからなることを特徴とする請求項1または2または3または4に記載のエレクトロフュージョン継手用クランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−200997(P2012−200997A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67704(P2011−67704)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000146135)株式会社松阪鉄工所 (17)
【Fターム(参考)】