説明

エレベータのかご内カメラの点検方法

【課題】防犯窓つきエレベータにおいてカメラが動作しているか否かを簡単かつ正確に点検することができる、エレベータのかご内カメラの点検方法の提供。
【解決手段】かご内にカメラが設けられた防犯窓付きエレベータのかご内カメラの点検方法は、階間移動工程と、消灯状態画像入手工程と、点灯状態画像入手工程と、診断工程とを備える。階間移動工程は、かご7を、乗場3と乗場3の間に移動させる。消灯状態画像入手工程は、乗場と乗場の間にかごがあるときに、かご内照明を消灯し、カメラで消灯状態のかご内画像を撮影する。点灯状態画像入手工程は、乗場と乗場の間にかごがあるときに、かご内照明を点灯し、カメラで点灯状態のかご内画像を撮影する。診断工程では、消灯状態のかご内画像と、点灯状態のかご内画像とを比較し、カメラが動作しているか否かを点検する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのかご内カメラの点検方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、構造物の異なる階に設けられた複数の乗場と、それら複数の乗場にわたって上下に延びる昇降路と、その中を移動可能に設けられたかごとを備えている。かご内には、防犯カメラあるいは監視カメラと称されるカメラが設けられており、かかるカメラを通してかご内の様子を監視あるいは記録している。
【0003】
例えば、特許文献1には、かかるかご内カメラを点検する装置が開示されている。特許文献1の装置では、点検時にカメラを介して入手した点検時画像データと、予め用意されていた基準画像データとを比較することで、かご内カメラの故障の有無を判断していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−263421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エレベータのなかには、いわゆる防犯窓つきのものがあり、そのような防犯窓つきエレベータでは、各階の乗場における乗場ドアと、かごドアとに、ガラス窓が付いており、乗場ドアの防犯窓と、かごドアの防犯窓とが重なった状態で、かご内から外部が、また、外部からかご内が視認できるようになっていた。しかし、こうした防犯窓つきエレベータでは、夜間の乗場側の照明や西日等の影響で、上記の点検時画像データや基準画像データが好適に得られていなかったり、比較条件が揃わなかったりすることがあり、正確な故障診断が行えないおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、防犯窓つきエレベータにおいてカメラが動作しているか否かを簡単かつ正確に点検することができる、エレベータのかご内カメラの点検方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明は、かご内にカメラが設けられた防犯窓付きエレベータのかご内カメラの点検方法であって、前記かごを、乗場と乗場の間に移動させる階間移動工程と、乗場と乗場の間に前記かごがあるときに、かご内照明を消灯し、前記カメラで消灯状態のかご内画像を撮影する消灯状態画像入手工程と、乗場と乗場の間に前記かごがあるときに、かご内照明を点灯し、前記カメラで点灯状態のかご内画像を撮影する点灯状態画像入手工程と、前記消灯状態のかご内画像と、点灯状態のかご内画像とを比較し、前記カメラが動作しているか否かを点検する診断工程とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエレベータのかご内カメラの点検方法によれば、防犯窓つきエレベータにおいて簡単かつ正確にカメラが動作しているか否かを点検することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態を適用するエレベータの概要を示す図である。
【図2】本実施の形態のエレベータのかご内カメラの点検方法に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るエレベータのかご内カメラの点検方法の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。
【0011】
図1は、エレベータの概要を示す図である。エレベータ1は、構造物に設置された複数の乗場3と、それら乗場3にわたって上下に延びる昇降路5と、昇降路5内を昇降可能に設けられたかご7とを備えている。かご7には、ロープ9の一端が接続されており、ロープ9の他端には釣り合い錘11が接続されている。また、昇降路5の上方には、巻上機13が設けられており、前述のロープ9は、巻上機13によって駆動され、かご7及び釣り合い錘11が相互に反対向きに昇降される。
【0012】
さらに、昇降路5の上部には、制御盤15が設けられている。巻上機13は、制御盤15によってその駆動が制御されている。本実施の形態のエレベータ1は、いわゆる防犯窓つきエレベータである。よって、模式的に示された各乗場3における乗場ドア17には、ガラス窓が設けられており、また、模式的に示されたかご7におけるかごドア19にも、ガラス窓が設けられている。そして、かごドア19の防犯窓が対応する乗場ドア17の防犯窓と重なった状態で、かご7内から外部が、また、外部からかご内7が視認できるようになっている。
【0013】
かご7内には、防犯カメラあるいは監視カメラとしてのかご内カメラ21が設けられている。かご内カメラ21は、かご7内の後部上側に前方を向けて設置されている。かご内カメラ21で撮影された画像は、図示省略する周知の態様で、診断部23に送られる。
【0014】
診断部23は、特に限定されるものではないが一例として、制御盤15の近傍または制御盤15内に取り付けられ、あるいは、制御盤15内の回路の一機能として実現されている。すなわち、診断部23は、ハードウェア上で追加されていてもよいし、ソフトウェア上で追加されていてもよい。また、診断部23は、適当な公衆回線25等を介して、あらかじめ定められた保守会社27に接続されている。
【0015】
次に、本実施の形態に係るエレベータのかご内カメラの点検方法について説明する。図2は、その点検方法に関するフローチャートである。まず、ステップS1として、あらかじめ設定された点検開始時間内か否かがチェックされ、続いて、エレベータが利用者にサービスを提供すべき状態にあるか否かがチェックされる。具体的には、ステップS2として、エレベータが無方向(昇降すべき方向のない)状態で、且つ、戸の全閉状態にあるか否かがチェックされ、さらに、ステップS3として、あらかじめ設定された待ち時間が経過したか否かがチェックされる。すなわち、無方向且つ戸全閉状態で所定の待ち時間を経過すれば、ひとまず利用者の要求がないものとして本点検方法に移行してもよいものと考えている。
【0016】
まず、ステップS4として、かご7内の照明を消灯する。また、ステップS5として、かご7をあらかじめ設定された階間の位置に移動させる。例えば、図1の図示は、3階と2階の階間にかご7を移動させた状態である。そして、ステップS6として、かご7内の照明消灯状態で、かご内カメラ21によりかご7内を撮像し、消灯状態画像(A)を記録する。
【0017】
すなわち、上記ステップS4,S5,S6をとおして、かご7を、乗場3と乗場3の間に移動させる階間移動工程と、乗場3と乗場3の間にかご7があるときに、かご内照明を消灯し、かご内カメラ21で消灯状態のかご内画像を撮影する消灯状態画像入手工程とが実施される。なお、ステップS4の消灯と、ステップS5の移動とは、何れを先に行ってもよく、要するに、ステップS6の撮像の際に、かご7が階間に移動されており且つかご7内が消灯されていればよい。
【0018】
ステップS6で入手した消灯状態画像(A)は、診断部23に保持されている。次に、ステップS7として、かご7を移動させずに、すなわち、かご7が階間にある状態で、かご7内の照明を点灯する。さらに、ステップS8として、かご7内の照明点灯状態で、かご内カメラ21によりかご7内を撮像し、点灯状態画像(B)を記録する。すなわち、このステップS7,S8をとおして、乗場3と乗場3の間にかご7があるときに、かご内照明を点灯し、かご内カメラ21で点灯状態のかご内画像を撮影する点灯状態画像入手工程が実施される。ステップS8で入手した点灯状態画像(B)もまた、診断部23に保持される。
【0019】
続いて、消灯状態のかご内画像と、点灯状態のかご内画像とを比較し、かご内カメラ21が動作しているか否かを点検する診断工程が実施される。すなわち、ステップS9として、診断部23において、消灯状態画像(A)と、点灯状態画像(B)との間に、変化があるか否かが検討される。つまり、階間にあり且つ照明を消灯した状態のかご7内はかなり暗い状態にあるため、本来、消灯状態画像(A)と点灯状態画像(B)との間には相当に大きな違いが存在する。よって、ステップS9において、両画像に変化がみられない場合、ステップS10においてカメラ異常として保守会社への通報を実施する。一方、ステップS9において、両画像に変化がみられたならば、かご内カメラ21は適正に動作しているものとして、ステップS11において、エレベータを通常のサービス運転へと復帰させ、本点検を終了する。
【0020】
なお、図2において点線で示したように、上記ステップS4,S5,S6,S7,S8,S9,S10においては、利用者がエレベータを利用しようとした場合にはいつでも、点検を中断し、かご7内照明を点灯させて通常のエレベータサービス運転に復帰するように構成されているものとする。具体例としては、何れかの乗場3において呼びボタンが操作されたりした場合を挙げることができる。また、非常に考えにくいケースであるが、かご7内に人がいて相当に長い時間、何らの操作が行われなかった場合、ステップS4の処理が開始されるが、この場合でも、かご7内で何らかのボタン操作等がなされた場合には、直ちに、点検を中断し、かご7内照明を点灯させて通常のエレベータサービス運転に復帰するように配慮されている。
【0021】
このような本実施の形態に係るエレベータのかご内カメラの点検方法によれば、防犯窓つきエレベータにおいてカメラが動作しているか否かを簡単かつ正確に点検することができる。すなわち、防犯窓つきエレベータにおいて、前述した特許文献1に開示のように、基準画像を用意しておき、その基準画像と点検時画像との比較を行おうとしても、点検時得られる画像は、防犯窓からかご内に侵入する光線の影響や防犯窓のガラスにうつりこむ光や景色等の影響で、季節、天候、時間等の条件によるばらつきがあり、比較条件が揃えることは困難であり、正確な故障診断が行えないおそれがある。また、基準画像を極めて多数用意したり、点検時のみ防犯窓を塞ぐような設備を用意したりすることも考えられるが、その場合でも比較条件を正確に揃えるのは難しく、また、余計な設備による作業の煩雑化やコストアップが生じる。これに対し、本実施の形態では、階間においてかご内側の照明を変化させるだけなので、防犯窓の影響を排除して光の変化による画像の比較でカメラが作動していることを確認できる。よって、余分な画像を用意したり、余分な設備や作業の追加を伴うことなく、既存の防犯窓つきエレベータそのままで簡単且つ正確にカメラが動作しているか否かを点検することができる。
【0022】
以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。例えば、消灯状態画像(A)と点灯状態画像(B)との何れを先に得るかは上記実施の形態に限定されるものではなく、先に、点灯状態画像(B)を獲得し、その後、消灯して、消灯状態画像(A)を獲得する順序で実施することも可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 エレベータ、3 乗場、5 昇降路、7 かご、17 乗場ドア、19 かごドア、21 かご内カメラ、23 診断部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご内にカメラが設けられた防犯窓付きエレベータのかご内カメラの点検方法であって、
前記かごを、乗場と乗場の間に移動させる階間移動工程と、
乗場と乗場の間に前記かごがあるときに、かご内照明を消灯し、前記カメラで消灯状態のかご内画像を撮影する消灯状態画像入手工程と、
乗場と乗場の間に前記かごがあるときに、かご内照明を点灯し、前記カメラで点灯状態のかご内画像を撮影する点灯状態画像入手工程と、
前記消灯状態のかご内画像と、点灯状態のかご内画像とを比較し、前記カメラが動作しているか否かを点検する診断工程と
を備えたエレベータのかご内カメラの点検方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−28440(P2013−28440A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166231(P2011−166231)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】