説明

エレベータのドアシステム

【課題】ドアパネルに組み込まれたモータに非接触で効率的に給電し、そのときの電力を使用してドアを開閉動作させる。
【解決手段】乗りかご11に設けられたドアパネル21aにモータ26を組み込み、このモータ26の動力でドアパネル21aを開閉動作させるエレベータのドアシステムにおいて、乗りかご11には給電装置40と第1の制御装置20とが設けられ、ドアパネル21aには受電装置41とバッテリ31とインバータ装置32と第2の制御装置22とが設けられる。ここで、第1の制御装置20は、乗りかご11が目的階に着床する手前でドアパネル21aの開閉に必要な電力を推測し、この推測された電力をドアパネル21aに給電するように給電装置40を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータの乗りかごのドアパネルにモータを組み込んで開閉駆動するエレベータのドアシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベータのドア(かごドア)には、左右のドアパネルを結合するプーリを駆動する方式が用いられている。すなわち、2枚のドアパネルは、それぞれに上端部に取り付けられたハンガを介してベルトに連結されている。ベルトは、一対のプーリに架設させており、一方のプーリには動力源となるモータが取り付けられている。モータが駆動されると、一方のプーリが回転してベルトが移動する。このベルトの移動に伴い、2枚のドアパネルが開閉動作する。
【0003】
近年、このような駆動方式とは別に、ドアパネルにモータを組み込んで開閉駆動するエレベータのドアシステムが考えられている。これは、2枚のドアパネルの一方に駆動源であるモータを設置しておき、そのモータの駆動により2枚のドアパネルを開閉動作させるものである。この場合、モータへの電源供給は有線となり、配線が困難になるため、非接触で給電することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−139242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドアパネル自体は、乗りかご本体に比べて小さいため、そこに大容量のバッテリを搭載させることは難しい。したがって、ドアパネルに組み込まれたモータに非接触で給電する構成とした場合に、バッテリ容量や充電状況を考慮して効率的に給電することが望まれる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ドアパネルに組み込まれたモータに非接触で効率的に給電し、そのときの電力を使用してドアを開閉動作させることのできるエレベータのドアシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係るエレベータのドアシステムは、乗りかごの出入口に設けられたドアパネルにモータを組み込み、このモータの動力で上記ドアパネルを開閉動作させるエレベータのドアシステムにおいて、上記乗りかごに設けられ、上記ドアパネルに対して非接触で給電を行う給電装置と、この給電装置の給電動作を制御するための第1の制御装置と、上記ドアパネルに設けられ、上記給電装置と対向した状態で上記給電装置から非接触で給電される電力を受ける受電装置と、この受電装置で受けた電力を蓄えるバッテリと、このバッテリに蓄えられた電力で上記モータを駆動するインバータ装置と、上記バッテリおよび上記インバータ装置を制御するための第2の制御装置とを具備し、上記第1の制御装置は、上記乗りかごが目的階に着床する手前で、上記ドアパネルの開閉に必要な電力を推測する開閉電力推測手段と、この開閉電力推測手段によって推測された電力を上記ドアパネルに給電するように上記給電装置を駆動する電源制御手段とを備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は第1の実施形態に係るエレベータの構成を示す図である。
【図2】図2は同実施形態におけるドアパネルの駆動方式としてハンガローラ一体型のモータを用いた構成を示す図である。
【図3】図3は同実施形態におけるドアパネルの駆動方式としてリニアモータを用いた構成を示す図である。
【図4】図4は同実施形態におけるエレベータのドアシステムの構成を示すブロック図である。
【図5】図5は同実施形態におけるエレベータのかご制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【図6】図6は同実施形態におけるエレベータのかご制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】図7は第2の実施形態におけるエレベータのドア制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【図8】図8は同実施形態におけるエレベータのドア制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】図9は第3の実施形態におけるエレベータのドア制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図10】図10は同実施形態における過充電時の電力消費の別の方法を説明するための図であり、電圧と電流の位相が一致している場合の電力状態を示す図である。
【図11】図11は同実施形態における過充電時の電力消費の別の方法を説明するための図であり、電圧と電流の位相がずれている場合の電力状態を示す図である。
【図12】図12は第4の実施形態におけるエレベータのドア制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【図13】図13は第4の実施形態におけるエレベータのドア制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係るエレベータの構成を示す図であり、ここでは建物の中に1:1ローピング形式のエレベータが設置された例が示されている。
【0011】
エレベータの昇降路10内に乗りかご11とカウンタウエイト12が昇降可能に設けられている。メインロープ13は、巻上機14に巻回されており、一端に乗りかご11、他端にカウンタウエイト12が連結されている。
【0012】
巻上機14は、エレベータ制御装置15と共に建物の機械室に設置されている。なお、機械室を無くしたマシンルームレスタイプのエレベータでは、巻上機14とエレベータ制御装置15が昇降路10内に設置される。
【0013】
エレベータ制御装置15は、巻上機14の駆動制御を含め、エレベータ全体の制御を行うものであり、「制御盤」と呼ばれることもある。エレベータ制御装置15からの駆動指示により巻上機14が回転すると、メインロープ13を介して乗りかご11とカウンタウエイト12がつるべ式に昇降動作する。
【0014】
乗りかご11には、かご呼びの登録制御など、かご側の制御を行うかご制御装置20が設けられている。このかご制御装置20は、図示せぬ伝送ケーブルを介してエレベータ制御装置15と電気的に接続されている。また、乗りかご11の出入口には、2枚の独立したドアパネル21a,21bが2枚戸両開き方式で左右方向に開閉自在に取り付けられている。なお、ドアパネル21a,21bのことを単に「ドア」という呼び方もする。
【0015】
ここで、ドアパネル21a,21bの構成について説明する。
図2はドアパネル21a,21bの駆動方式としてハンガローラ一体型のモータを用いた構成を示す図である。
【0016】
ドアパネル21a,21bは、それぞれハンガ22a,22bに支持され、駆動ベルト23に連結される。ドア用プーリ24a,24bは、駆動ベルト23を介して連結される。また、ハンガ22a,22bには、ローラ25,25bが回転自在に取り付けられている。ハンガ22a,22bは、レール27の上にローラ25,25bを載せた状態で駆動ベルト23に吊り下げられている。
【0017】
ここで、一方のドアパネル21aにはドアモータ26が組み込まれている。このドアモータ26は三相交流モータからなり、ハンガ22aに取り付けられたローラ25aに一体化されている。ドアモータ26の動力によりローラ25aが回転すると、ハンガ22aを介して駆動ベルト23が移動し、ドアパネル21a,21bが開閉動作する。なお、ドアパネル11a,11bは、乗りかご11の着床時に図示せぬ乗場ドアのパネルに係合した状態で一緒に開閉動作する。
【0018】
ここで、ドアモータ26に対する給電は、乗りかご11に設置された給電装置40とドアパネル21aに設置された受電装置41との間で非接触で行なわれる。図2の例では、ドアパネル21a,21bが戸閉した状態で給電装置40と受電装置41とが対向し、給電装置40から非接触で給電される電力を受電装置41で受ける構成になっている。この受電装置41で受けた電力は、後述するようにドアパネル21aに搭載されたバッテリ31に蓄えられ、ドアモータ26の動力源として使用される(図4参照)。
【0019】
なお、非接触給電の方式としては、例えば電磁誘導方式が用いられる。「電磁誘導方式」は、2つの隣接するコイルの一方(給電側コイル)に電流を流したときに発生する磁束を媒介として他方のコイル(受電側コイル)に送電する方式である。この他に、電流を電磁波に変換し、アンテナを介して送電する「電波方式」や、電磁界の共鳴現象を利用した「電磁界共鳴方式」などがあるが、本発明ではこれらの方式に特に限定されるものではない。
【0020】
また、図2の例では、ドアパネル21a,21bの戸閉位置で、乗りかご11に設けた給電装置40からドアパネル21aに設けた受電装置41へ給電する構成としたが、ドアパネル21a,21bの戸開位置で給電する構成としても良い。
【0021】
図3はドアパネル21a,21bの駆動方式としてリニアモータを用いた構成を示す図である。この例では、ドアパネル21aのハンガ22aにリニアモータ28が設けられており、ガイドレール29から浮上させた状態でドアパネル21a,21bを開閉動作させる構成になっている。
【0022】
このリニアモータ28に対する給電についても、図2と同様に、ドアパネル21a,21bが戸閉した状態で、乗りかご11に設置された給電装置40とドアパネル21aに設置された受電装置41との間で非接触で行なわれる。
【0023】
以下では、図2のドア構成を例にして説明する。
図4は第1の実施形態におけるエレベータのドアシステムの構成を示すブロック図である。
【0024】
乗りかご11側には、給電装置40と、かご制御装置20とが設けられる。給電装置40は、ドアパネル21aに対して非接触で給電を行う。かご制御装置20は、この給電装置40の給電動作を制御するための第1の制御装置として用いられる。
【0025】
一方、ドアパネル21a側には、受電装置41と、バッテリ31と、インバータ装置32と、ドア制御装置33とが設けられる。受電装置41は、給電装置40と対向した状態で給電装置40から非接触で給電される電力を受ける。バッテリ31は、この受電装置41で受けた電力を蓄える。インバータ装置32は、このバッテリ31に蓄えられた電力でドアモータ26を駆動する。ドア制御装置33は、バッテリ31およびインバータ装置32を制御するための第2の制御装置として用いられる。
【0026】
ここで、第1の実施形態では、かご制御装置20に各階床毎に戸開閉に必要な電力を推定し、その推定された電力を給電装置40から給電する機能を備えている。
【0027】
図5はそのかご制御装置20の機能構成を示すブロック図である。第1の実施形態において、かご制御装置20には、開閉電力推測部51、記憶部52、電源制御部53が備えられる。
【0028】
開閉電力推測部51は、乗りかご11が目的階に着床する手前で、ドアパネル21a,21bの開閉に必要な電力を推測する。詳しくは、各階床毎にドアパネル21a,21bを開閉するときの負荷情報が記憶部52に記憶されている。なお、負荷情報とは、各階床の乗場ドアの重量や仕様、ドアレールの摩擦抵抗などである。
【0029】
開閉電力推測部51は、この記憶部52に記憶された各階床の中の上記目的階に対応した負荷情報に基づいて、ドアパネル21a,21bの開閉に必要な電力を推測する。電源制御部53は、開閉電力推測部51によって推測された電力をドアパネル21a,21bに給電するように給電装置40を駆動する。
【0030】
次に、第1の実施形態の動作を説明する。
図6は第1の実施形態におけるエレベータのかご制御装置20の動作を説明するためのフローチャートである。
【0031】
今、乗りかご11が乗場呼びあるいはかご呼びに応答して目的階に移動中であるとする。このときの乗りかご11の運転情報(目的階、運転方向、現在位置等)は、エレベータ制御装置15から図示せぬ伝送ケーブルを介してかご制御装置20に与えられる。
【0032】
ここで、乗りかご11が目的階に着床する手前で(ステップA11のYes)、かご制御装置20に設けられた開閉電力推測部51は、記憶部52から目的階の負荷情報を取得する(ステップA12)。そして、開閉電力推測部51は、この目的階の負荷情報に基づいてドアパネル21a,21bの開閉に必要な電力を推測する(ステップA13)。すなわち、目的階の負荷情報からドアパネル21a,21bを規定の速度で開閉するのに必要な電力を求める。この場合、当然の事ながら、負荷が大きいほど、その分、電力を多く必要とする。
【0033】
この開閉電力推測部51によって推測された電力の値は電源制御部53に与えられる。乗りかご11が目的階に着床すると(ステップA14のYes)、電源制御部53は、上記推測された電力をドアパネル21a,21bに給電するように給電装置40を駆動する(ステップA15)。このとき、ドアパネル21a,21bは戸閉した状態にあり、給電装置40と受電装置41とが対向位置にあるので、給電装置40から受電装置41に対して上記推測された電力が非接触で給電されることになる。この給電された電力は、受電装置41を通じてバッテリ31に蓄積され、ドアパネル21a,21bを開閉するための電力として使用される。
【0034】
このように第1の実施形態によれば、非接触給電を用いたエレベータのドアシステムにおいて、各階床のドアの負荷情報から開閉動作に必要な電力を推定して、その推定された電力を非接触で給電する。これにより、各階床の負荷に応じて常に適切な量の電力を効率的に給電できる。その結果、ドア側のバッテリの容量を削減でき、また、無駄な充電を抑制してバッテリ寿命を延ばすことができる。
【0035】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
【0036】
第2の実施形態では、バッテリの充電状態を検出して、充電量が不足している場合に電力で抑えてモータを駆動するものである。
【0037】
図7は第2の実施形態におけるエレベータのドア制御装置33の機能構成を示すブロック図である。第2の実施形態において、ドア制御装置33には、充電状態検出部61、駆動制御部62が備えられる。
【0038】
充電状態検出部61は、バッテリ31の電圧から充電状態を検出する。駆動制御部62は、この充電状態検出部61によってバッテリ31の充電量が不足している状態が検出された場合に、ドアパネル21a,21bの開閉速度を通常速度よりも下げてドアモータ26を駆動する。
【0039】
図8は第2の実施形態におけるエレベータのドア制御装置33の動作を説明するためのフローチャートである。
【0040】
乗りかご11が目的階に着床してドアパネル21a,21bを開閉するとき(ステップB11のYes)、ドア制御装置33に設けられた充電状態検出部61は、バッテリ31の電圧から現在の充電量を検出し、その検出結果を駆動制御部62に与える(ステップB12)。
【0041】
ここで、バッテリ31の充電量が予め設定された値以下(例えば、全容量の半分以下)であった場合には(ステップB13のYes)、駆動制御部62は、インバータ装置32のスイッチング動作を制御することにより、ドアパネル21a,21bの開閉速度を通常速度よりも下げてドアモータ26を駆動する(ステップB14)。この場合、例えばドアパネル21a,21bの開閉速度を例えば通常速度の半分に落としても良いし、そのときのバッテリ31の充電量に応じて段階的に開閉速度を調整しても良い。
【0042】
一方、バッテリ31の充電量が予め設定された値より多くあれば(ステップB13のNo)、駆動制御部62は、ドアパネル21a,21bを通常速度で開閉するようにドアモータ26を駆動する(ステップB15)。
【0043】
このように第2の実施形態によれば、非接触給電を用いたエレベータのドアシステムにおいて、バッテリが充電不足であった場合に開閉速度を下げてモータを駆動することで、何らかの原因でバッテリ電力が少ない状態にあってもドアを開閉することができる。
【0044】
なお、上記第1の実施形態と組み合わせることも可能である。これにより、ドアパネルに組み込まれたモータに対する給電をより効率的に行って、ドアを正常に開閉動作させることができる。
【0045】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
【0046】
上記第2の実施形態では、バッテリが充電不足の場合を対処方法について説明したが、第3の実施形態では、バッテリが過充電の場合を対処方法について説明する。
【0047】
ドア制御装置33の構成については上記図7と同様であるため、ここでは図9を参照して処理動作を説明する。
【0048】
図9は第3の実施形態におけるエレベータのドア制御装置33の動作を説明するためのフローチャートである。
【0049】
乗りかご11が目的階に着床してドアパネル21a,21bを開閉するとき(ステップC11のYes)、ドア制御装置33に設けられた充電状態検出部61は、バッテリ31の電圧を検出し(ステップC12)、過充電の状態にあるか否かを判断する(ステップC13)。
【0050】
過充電の状態とは、バッテリ31が容量一杯に充電された状態でさらに充電が続いている状態を言う。このような過充電の状態が続くと、バッテリ31の寿命が短くなり、故障の原因にもなる。
【0051】
ここで、バッテリ31が過充電の状態であった場合には(ステップC13のYes)、駆動制御部62は、インバータ装置32のスイッチング動作を制御することにより、ドアパネル21a,21bの戸開あるいは戸閉したときにドアモータ26に供給する保持電流を増加させる(ステップC14)。
【0052】
すなわち、ドアパネル21a,21bを戸開したとき、その戸開状態を一定時間保持するためにドアモータ26に電流を流す。これが保持電流である。このときの保持電流を増やすことで、バッテリ31の電力を通常よりも多く消費させることができる。ドアパネル21a,21bを戸閉したときも同様であり、そのときの保持電流を増やすことで、バッテリ31の電力を通常よりも多く消費させることができる。
【0053】
一方、バッテリ31が過充電の状態でなければ(ステップC13のNo)、駆動制御部62は、通常の電流をドアモータ26に流してドアパネル21a,21bを開閉動作させる(ステップC15)。
【0054】
このように第3の実施形態によれば、非接触給電を用いたエレベータのドアシステムにおいて、バッテリが過充電の状態にあった場合に戸開あるいは戸閉の保持電流を増加させて強制的に電力を多く消費させることで、バッテリを通常の充電状態に戻すことができる。これにより、バッテリの寿命を延ばすことができ、また、過充電による故障を防ぐことができる。
【0055】
また、上記第1、第2の実施形態と組み合わせることも可能である。これにより、ドアパネルに組み込まれたモータに対する給電をより効率的に行って、ドアを正常に開閉動作させることができる。
【0056】
なお、上記第3の実施形態では、バッテリが過充電のときに、戸開あるいは戸閉の保持電流を増加させて強制的に電力を多く消費させる構成したが、別の方法として、戸開または戸閉するときの電流の位相を変化させて無効電力を増加させることでも良い。
【0057】
すなわち、図10に示すように、電力は電圧と電流の位相が同じときにもっと高くなる。このときに得られる電力が有効電力として働く。一方、図11に示すように、電圧と電流の位相がずれている場合、同相の部分だけが有効電力として働き、位相がずれている部分は無効電力となる。
【0058】
そこで、充電状態検出部61によってバッテリ31の過充電状態が検出された場合に、駆動制御部62では、インバータ装置32を制御することにより、図11の例のように、電流の位相をずらして無効電力を増やすようにする。これにより、バッテリ31の電力を通常よりも多く消費させることができる。
【0059】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
【0060】
第4の実施形態では、ドア側に給電された電力(受電量)を監視し、異常があった場合に外部に発報するものである。
【0061】
図12は第4の実施形態におけるエレベータのドア制御装置33の機能構成を示すブロック図である。なお、上記第2の実施形態における図7の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明を省略するものとする。
【0062】
第4の実施形態において、ドア制御装置33には、充電状態検出部61、駆動制御部62に加え、電力監視部63、記憶部64、異常発報部65が設けられている。
【0063】
電力監視部63は、各階床毎にドアパネル21a,21bの開閉時に受電装置41で受電した電力量を検出する。記憶部64は、この電力監視部63によって検出された電力量を階床情報と共に記憶する。異常発報部65は、記憶部64に記憶された前回同じ階床で受電した電力量と今回の電力量とを比較し、両者に一定値以上の差があった場合に外部に異常発報を行う。
【0064】
なお、ここで言う外部とは、例えば建物内の管理室あるいは遠隔地にあるエレベータの監視センタである。管理室には建物の管理者がいて、エレベータに異常が生じた場合に保守員に連絡する。監視センタは、通信ネットワークを介して各エレベータの運転状態を遠隔監視しており、何らかの異常を検出すると、保守員を現場に派遣して対処する。
【0065】
次に、図13は第4の実施形態におけるエレベータのドア制御装置33の動作を説明するためのフローチャートである。
【0066】
いま、上記第1の実施形態で説明したように、乗りかご11が目的階に着床後、ドアパネル21a,21bを戸開するタイミングで給電を行う場合を想定する。
【0067】
乗りかご11が目的階に着床後、ドアパネル21a,21bを戸開するときに、乗りかご11に設けられた給電装置40からドアパネル21aに設けられた受電装置41に対して電力が給電される。ドア制御装置33に設けられた電力監視部63は、そのときに受電した電力量を検出する(ステップD11)。そして、電力監視部63は、記憶部64から同じ階床で前回受電した電力量をチェックし、今回受電した電力量との間に一定値以上の差があるか否かを判断する(ステップD13)。
【0068】
ここで、何らかの原因で給電装置40と受電装置41との位置ズレが生じた場合や、給電装置40あるいは受電装置41の不具合で正常な給電がなされないことがある。正常な給電がなされていないと、バッテリ不足となり、それ以降の運転でドアパネル21a,21bを正常に開閉できない。
【0069】
そこで、前回受電した電力量と今回受電した電力量との間に一定値以上の差があった場合には(ステップD13)、電力監視部63は、ドア異常と判断し、異常発報部65に対して発報指示を出す。これにより、異常発報部65では、例えば建物の管理室あるいは監視センタに対してドア異常を発報する(ステップD14)。なお、例えば乗場に設置した異常灯を点灯することで、ドア異常を知らせるようにしても良い。
【0070】
このように第4の実施形態によれば、非接触給電を用いたエレベータのドアシステムにおいて、各階床でドアに給電される電力を監視し、前回と同じ電力を得られない場合に異常発報することで、非接触給電に何らかの異常が生じた場合に速やかに対処することができる。
【0071】
また、上記第1乃至第3の実施形態のいずれかと組み合わせることも可能である。これにより、ドアパネルに組み込まれたモータに対する給電をより効率的に行って、ドアを正常に開閉動作させることができる。
【0072】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、ドアパネルに組み込まれたモータに非接触で効率的に給電し、そのときの電力を使用してドアを開閉動作させることのできるエレベータのドアシステムを提供することができる。
【0073】
なお、上記各実施形態では、2枚戸両開きタイプのかごドアを例にして説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば2枚戸片開きタイプ、1枚戸タイプなど、様々なタイプのドアに適用可能である。
【0074】
また、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
10…昇降路、11…乗りかご、12…カウンタウエイト、13…メインロープ、14…巻上機、15…エレベータ制御装置、20…かご制御装置、21a,21b…ドアパネル、22a,22b…ハンガ、23…駆動ベルト、24a,24b…ドア用プーリ、25,25b…ローラ、26…ドアモータ、27…レール、28…リニアモータ、29…ガイドレール、31…バッテリ、32…インバータ装置、33…ドア制御装置、40…給電装置、41…受電装置、51…開閉電力推測部、52…記憶部、53…電源制御部、61…充電状態検出部、62…駆動制御部、63…電力監視部、64…記憶部、65…異常発報部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごの出入口に設けられたドアパネルにモータを組み込み、このモータの動力で上記ドアパネルを開閉動作させるエレベータのドアシステムにおいて、
上記乗りかごに設けられ、上記ドアパネルに対して非接触で給電を行う給電装置と、
この給電装置の給電動作を制御するための第1の制御装置と、
上記ドアパネルに設けられ、上記給電装置と対向した状態で上記給電装置から非接触で給電される電力を受ける受電装置と、
この受電装置で受けた電力を蓄えるバッテリと、
このバッテリに蓄えられた電力で上記モータを駆動するインバータ装置と、
上記バッテリおよび上記インバータ装置を制御するための第2の制御装置とを具備し、
上記第1の制御装置は、
上記乗りかごが目的階に着床する手前で、上記ドアパネルの開閉に必要な電力を推測する開閉電力推測手段と、
この開閉電力推測手段によって推測された電力を上記ドアパネルに給電するように上記給電装置を駆動する電源制御手段と
を備えたことを特徴とするエレベータのドアシステム。
【請求項2】
上記第1の制御装置は、
各階床毎に上記ドアパネルを開閉するときの負荷情報が設定された記憶手段を備え、
上記開閉電力推測手段は、
上記記憶手段に記憶された各階床の中の上記目的階に対応した負荷情報に基づいて、上記ドアパネルの開閉に必要な電力を推測することを特徴とする請求項1記載のエレベータのドアシステム。
【請求項3】
上記第2の制御装置は、
上記バッテリの充電状態を検出する充電状態検出手段と、
この充電状態検出手段によって上記バッテリの充電量が不足している状態が検出された場合に上記ドアパネルの開閉速度を通常速度よりも下げて上記モータを駆動する駆動制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項1記載のエレベータのドアシステム。
【請求項4】
上記第2の制御装置は、
上記バッテリの充電状態を検出する充電状態検出手段と、
この充電状態検出手段によって上記バッテリが過充電の状態にあることが検出された場合に上記ドアパネルの開閉時の電力を通常よりも多く消費させて上記モータを駆動する駆動制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項1記載のエレベータのドアシステム。
【請求項5】
上記駆動制御手段は、
上記ドアパネルの戸開状態または戸閉状態を保持するための電流を増加させることを特徴とする請求項4記載のエレベータのドアシステム。
【請求項6】
上記駆動制御手段は、
上記ドアパネルを戸開または戸閉するときの電流の位相を変化させて無効電力を増加させることを特徴とする請求項4記載のエレベータのドアシステム。
【請求項7】
上記第2の制御装置は、
各階床毎に上記受電装置で受電した電力量を検出する電力監視手段と、
この電力監視手段によって検出された電力量を階床情報と共に記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶された前回同じ階床で受電した電力量と今回の電力量とを比較し、両者に一定値以上の差があった場合に外部に異常発報を行う異常発報手段と
を備えたことを特徴とする請求項1記載のエレベータのドアシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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