説明

エレベータの防振構造

【課題】大がかりな構造変更なしに防振性能を向上させることができるエレベータの防振構造を提供する。
【解決手段】乗りかご11の昇降に伴って振動を発生させる振動発生源16を弾性体41,42を介して支持手段に支持することにより建物側への振動の伝播を減少させる防振構造であって、前記弾性体を種類が異なる第1の弾性体41および第2の弾性体42を並列に配置したものとする。第1の弾性体のばね定数を高いものとして耐荷重性を確保しつつ、第2の弾性体のばね定数を低くして振動発生源から支持手段への振動の伝播を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの防振構造に関し、より詳しくは、乗りかごの昇降に伴って巻上機やそらせシーブ等に発生する振動が建物側に伝播しないように防振する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、昇降路の上方に機械室を持たない、いわゆるマシンルームレスエレベータが開発されている。
例えば、図6に示したマシンルームレスエレベータにおいては、乗りかご1が左右一対のかご側ガイドレール2L,2Rに案内されて昇降路内を昇降し、釣合錘3が左右一対の錘側ガイドレール4L,4Rに案内されて昇降路内を昇降する。
また、昇降路の下部において左側の各ガイドレール2L,4L間に掛け渡されている巻上機支持梁5には、防振ゴム(図示せず)を介して巻上機6が支持されている。
さらに、昇降路の頂部において各ガイドレール2L,4L,4Rに掛け渡されているシーブ支持梁7には、かご側そらせシーブ8および錘側そらせシーブ9がそれぞれ防振ゴム(図示せず)を介して支持されている。
そして、巻上機6によって回転駆動されるメインシーブ6aに巻き付けられている主ロープ10は、その一方がかご側そらせシーブ8,かご側シーブ6a,6bに巻き付けられてヒッチ部2aに係止され、その他方が錘側そらせシーブ9,錘側シーブ3aに巻き付けられてヒッチ部7aに係止されている(下記特許文献1を参照)。
【0003】
図7に示したマシンルームレスエレベータにおいては、乗りかご11が左右一対のかご側ガイドレール12L,12Rに案内されて昇降路内を昇降し、釣合錘13が前後一対の錘側ガイドレール14f,14rに案内されて昇降路内を昇降する。
また、昇降路の頂部において錘側ガイドレール14f,14rに掛け渡されている巻上機支持梁15には、防振ゴム(図示せず)を介して巻上機16が支持されている。
そして、巻上機16によって回転駆動されるメインシーブ17に巻き付けられている主ロープ18は、その一方がかご側シーブ19L,19Rに巻き付けられてヒッチ部12aに係止され、その他方が錘側シーブ13a,13bに巻き付けられてヒッチ部14aに係止されている(下記特許文献2を参照)。
【0004】
一方、図8は従来のガイドレール固定構造を示しており、昇降路の内壁面(建物)20には建物側ブラケット21がボルト22によって固定され、ガイドレール23にはガイドレール側ブラケット24がレールクリップ25およびボルトナット26によって固定されている。
そして、両ブラケットを溶接によりあるいはボルトナットを用いて一体に接続することにより、ガイドレール23は建物に堅固に固定されている。
【0005】
他方、図9に示したガイドレール固定構造においては、巻上機31がガイドレール32に支持されているとともに、ガイドレール側ブラケット33が平面視でコ字形に形成されている。
そして、昇降路の内壁面(建物)34に固定されている建物側ブラケット35には、ガイドレール側ブラケット33が防振ゴム36を介して接続されている(下記特許文献3を参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−137487号公報
【特許文献2】特開2004−115161号公報
【特許文献3】特開2003−160285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した巻上機、そらせシーブ,ガイドレールの支持構造においては、乗りかごや釣合錘の昇降に伴って巻上機やそらせシーブ、ガイドレールに発生する振動が建物側に伝播しないように、振動伝播経路の途中に防振ゴムが介装されている。
しかしながら、巻上機やそらせシーブから負荷される荷重に耐えるために、防振ゴムのばね定数を高くせざるを得ず、その固有振動数が高くなって低周波の振動が建物側に伝播するおそれがある。
【0008】
この問題を解決するために、介装する防振ゴムの数を増加させて防振ゴム一つあたりの荷重負荷を低減し、固有振動数を低下させて防振性能を向上させる方法が考えられる。
しかしながら、介装する防振ゴムの数を増加させるためには、巻上機支持梁やシーブ支持梁、ガイドレールブラケット等の形状を変更せざるを得ず、これらの構造部品の再設計や寸法変更、配置構造の見直し、昇降路側の設備変更等、大がかりな構造変更が発生してしまう。
【0009】
そこで本発明の目的は、上述した従来技術が有する問題点を解消し、大がかりな構造変更なしに防振性能を向上させることができるエレベータの防振構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための請求項1に記載した手段は、乗りかごの昇降に伴って振動を発生させる振動発生源を弾性体を介して支持手段に支持することにより前記支持手段からの振動の伝播を減少させる防振構造であって、
前記弾性体は、種類が異なる第1の弾性体および第2の弾性体を並列に配置したものであることを特徴とする。
なお、振動発生源には巻上機、そらせシーブ、ガイドレールが含まれるとともに、支持手段には巻上機支持梁やそらせシーブ支持梁、ガイドレールブラケットが含まれ、かつ第1および第2の弾性体には防振ゴムや、コイルばね、皿ばね、板ばね等の金属ばねが含まれる。
また、第1の弾性体を金属ばねとし、第2の弾性体を防振ゴムとすることができる。
さらに、第1の弾性体を皿ばねとし第2の弾性体をコイルばねとするなど、種類の異なる金属ばねを組み合わせることもできるし、2種類のばねの組み合わせに限らず3種類のばねを組み合わせることもできる。
加えて、支持手段を制振鋼板から成形し、あるいは支持手段に制振塗料を塗布することができる。
【0011】
すなわち、請求項1に記載したエレベータの防振構造は、振動発生源と支持手段との間に種類が異なる第1および第2の弾性体を介装するものであるから、第1の弾性体のばね定数を高いものとして耐荷重性を確保しつつ、第2の弾性体のばね定数を低くして振動発生源から支持手段への振動の伝播を低減することができる。
また、第1および第2の弾性体のばね定数を異ならせることにより、振動発生源から支持手段への振動の伝播を広い周波数範囲にわたって絶縁することができる。
【0012】
さらに、上記の課題を解決するための請求項6に記載した手段は、エレベータのガイドレールを建物側に固定するための一対のブラケットの間に弾性体を介装することにより、ガイドレールから建物側への振動の伝播を減少させる防振構造であって、
前記弾性体のばね定数を調整するためのばね定数調整手段を備えることを特徴とする。
なお、弾性体が防振ゴムである場合に、ばね定数調整手段は、一対のブラケットを貫通してこれらのブラケットを一体に連結するねじ部材と、このねじ部材と一対のブラケットとの間にそれぞれ介装される、ばね定数が異なる複数の防振ゴムとを組み合わせたものとすることができる。
また、弾性体が金属製のコイルばねである場合に、ばね定数調整手段は、その基端が前記一対のブラケットの一方に固定されるとともにその先端が前記コイルばねの伸縮方向の途中の部分に係合してその有効巻数を変化させる係合部材とすることができる。
加えて、一対のブラケットを制振鋼板から成形し、あるいは一対のブラケットに制振塗料を塗布することができる。
【0013】
すなわち、請求項6に記載したエレベータの防振構造は、エレベータのガイドレールを建物側に固定するための一対のブラケットの間に介装する弾性体のばね定数を、ばね定数調整手段によって調整できるようにしたものである。
これにより、ガイドレールから建物側へ伝播する振動のうち、その伝播を遮断したい振動の周波数に合わせて弾性体のばね定数を最適に調整することができる。
【0014】
また、上記の課題を解決するための請求項11に記載した手段は、エレベータの構成要素を支持する支持梁に防振手段を装着することにより前記構成要素からの振動の伝播を減少させる防振構造であって、
前記支持梁は、前記防振手段を収納可能な空間を有しており、
前記防振手段は、前記空間の内部において前記支持梁に装着されることを特徴とする。
なお、エレベータの構成要素とは、例えば巻上機、かご側シーブ、そらせシーブであり、これらの構成要素を支持する支持梁は巻上機支持梁やシーブ支持梁である。
また、防振手段として動吸振器、フードダンパー、アクティブ制振装置を用いることができる。
さらに支持梁は、隙間を空けて互いに平行に延びる一対の梁部材から形成することもできるし、断面形状C字形やコ字形等の形鋼の様に、その内部に空間を有する鋼材を用いることもできる。
【0015】
すなわち、請求項11に記載したエレベータの防振構造は、巻上機やシーブ等を支持する支持梁の内部の空間に防振手段を装着するものである。
これにより、巻上機やシーブの配置に影響を与えることなく防振手段を配設することができる。
また、乗りかごや釣合錘の昇降に伴って巻上機やシーブに振動が発生したときには、巻上機やシーブ等を支持している支持梁において振動を減衰させることができるから、支持梁からかご枠、ガイドレール、建物側への振動の伝播を減少させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、大がかりな構造変更なしに防振性能を向上させることができるエレベータの防振構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図1乃至図5を参照し、本発明に係るエレベータの防振構造の各実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、前述した従来技術を含めて同一の部分には同一の符号を用いて重複した説明を省略する。
【0018】
第1実施形態
まず最初に図1および図2を参照し、第1実施形態のエレベータの防振構造について説明する。
【0019】
図1に示したエレベータの防振構造40は、図7に示したエレベータにおける巻上機16の防振構造を改良したもので、巻上機16の基台16aと巻上機支持梁15との間には、第1の弾性体としてのコイルばね41と、第2の弾性体としての防振ゴム42とが並列に介装されている。
なお、コイルばね41および防振ゴム42は、巻上機16の基台16aと巻上機支持梁15との間の既存のスペースに配置することができるから、巻上機16や巻上機支持梁15の形状や構造、寸法を変更する必要がない。
【0020】
このとき、第1の弾性体としてのコイルばね41のばね定数を高いものとして耐荷重性を確保しつつ、第2の弾性体としての防振ゴム42のばね定数を低くしているから、図2に示したような2種類の周波数帯を持つ伝達関数を得ることができる。
これにより、振動発生源としての巻上機16から支持手段としての巻上機支持梁15への振動の伝播を、低い周波数から高い周波数にわたる広い範囲において絶縁することができる。
なお、第1の弾性体としてのコイルばね41のばね定数を低いものとし、第2の弾性体としての防振ゴム42のばね定数を高くすることも、一つの方法である。
【0021】
また、第1の弾性体41には、コイルばねの他に皿ばねや重ね板ばね等の金属ばねを用いることもできる。
また、第1および第2の弾性体41,42の両方に金属ばねを用いることもできる。
さらに、2種類の弾性体に限定されず、例えば3種類の弾性体を組み合わせて用いることができる。
さらにまた、図6に示したエレベータにおいてシーブ支持梁7にそらせシーブ8,9を防振支持する部分にも同様な防振構造を採用することができる。
加えて、巻上機16の基台16aや巻上機支持梁15、シーブ支持梁7を制振鋼板から形成し、あるいは制振塗料を塗布することにより、巻上機16やそらせシーブ8,9から建物側への振動の伝播をより一層良好に絶縁することができる。
【0022】
第2実施形態
次に図3を参照し、第2実施形態のエレベータの防振構造について説明する。
【0023】
図3に示したエレベータの防振構造50は、図8に示したガイドレールの防振支持構造を改良したもので、ガイドレール23には図示されないレールクリップによって第1のブラケット51が取り付けられている。
また、昇降路の内壁面(建物)20に固設されているファスナ52には、第2のブラケット53が溶接等によって一体に固定されるようになっている。
【0024】
ねじ部材54が水平方向に貫通している第1および第2のブラケット51,53の間には第1の防振ゴム板55が介装され、ねじ部材54の頭部54aと第2のブラケット53との間には第2の防振ゴム板56が介装され、ねじ部材54に螺合しているダブルナット54bと第1のブラケット51との間には第3の防振ゴム板57が介装されている。
これにより、ガイドレール23は建物20に対して弾性的に防振支持されている。
【0025】
このとき、第1〜第3の防振ゴム板55,56,57の各ばね定数を変更することにより、防振ゴム板の全体のばね定数を容易に変更することができる。
また、ねじ部材54とダブルナット54bの締め付け具合を調整することにより、防振ゴム板の全体のばね定数を容易に調整することができる。
なお、第1〜第3の防振ゴム板55,56,57の取り付け、およびねじ部材54とダブルナット54bの締め付け具合を調整した後に、第2のブラケット53を建物20側のファスナ52に溶接しあるいは図示されないねじ部材によって一体に固定すれば良い。
【0026】
すなわち、本第2実施形態の防振構造50によれば、ガイドレール23を建物20に対して弾性的に防振支持するためのばね定数を容易に調整することができる。
言い換えると、第1〜第3の防振ゴム板55,56,57およびねじ部材54が、ばね定数調整手段を構成している。
また、この防振構造50は、地震発生時などに図示する紙面に対して垂直な方向の水平荷重を受けた場合に、ねじ部材54の剪断力によって抵抗することができる。
さらに、この防振構造50は、図1に示した巻上機16を支持する部分の防振構造40と併用することにより、巻上機16に発生した振動を2段階に絶縁することができるから、巻上機16に発生する振動の建物20側への伝播を確実に絶縁することができる。
加えて、第1および第2のブラケット51,53を制振鋼板から形成し、あるいは制振塗料を塗布することにより、ガイドレール23から建物20側への振動の伝播をより一層良好に絶縁することができる。
【0027】
第3実施形態
次に図4を参照し、第3実施形態のエレベータの防振構造について説明する。
【0028】
図4に示したエレベータの防振構造60は、上述した第2実施形態のエレベータの防振構造50と同様に、ガイドレール23を建物20に対して弾性的に防振支持する構造であって、ガイドレール23には図示されないレールクリップによって第1のブラケット61が取り付けられている。
また、昇降路の内壁面(建物)20に固設されているファスナ62には、第2のブラケット63が溶接等によって一体に固定されるようになっている。
【0029】
ねじ部材64が水平方向に貫通している第1および第2のブラケット61,63の間にはコイルばね65が介装され、ねじ部材64の頭部64aと第2のブラケット63との間には第4の防振ゴム板66が介装され、ねじ部材64に螺合しているダブルナット64bと第1のブラケット67との間には第5の防振ゴム板67が介装されている。
これにより、ガイドレール23は建物20に対して弾性的に防振支持されている。
【0030】
このとき、第2のブラケット63の縦壁部分63aの上端部には、コイルばね65の伸縮方向の途中の部分65aに係合する係合部材68が固定されるようになっている。
この係合部材68は、その先端がコイルばね65の途中の部分65aと係合することにより、コイルばね65の反力を第2のブラケット63に伝達する。
これにより、第1のブラケット61とコイルばね65の途中の部分65aとの間の距離Sの値、言い換えるとコイルばね65の有効巻き数の値を変更することによって、このコイルばね65のばね定数を調整することができる。
【0031】
さらに、第4および第5の防振ゴム板66,67の各ばね定数を変更することにより、この防振構造60の全体的なばね定数を容易に変更することができる。
また、ねじ部材64とダブルナット64bの締め付け具合を調整することにより、防振ゴム板の全体のばね定数を容易に調整することができる。
【0032】
すなわち、本第3実施形態の防振構造60においては、コイルばね65と係合部材68、第4および第5の防振ゴム板66,67、ねじ部材64がばね定数調整手段を構成しており、ガイドレール23を建物20に対して弾性的に防振支持するばね定数を容易に調整することができる。
なお、第4および第5の防振ゴム板66,67の取り付け、ねじ部材64とダブルナット64bの締め付け具合の調整、さらには係合部材68とコイルばね65との係合位置の調整が完了した後に、第2のブラケット63を建物20側のファスナ62に溶接しあるいは図示されないねじ部材によって一体に固定すれば良い。
【0033】
さらに、第2のブラケット63と係合部材68は、一体に溶接して固定することもできるが、両者に螺合するねじ部材を用いることにより、コイルばね65の有効巻き数の値を容易に調整することができる。
加えて、第1および第2のブラケット61,63を制振鋼板から形成し、あるいは制振塗料を塗布することにより、ガイドレール23から建物20側への振動の伝播をより一層良好に絶縁することができる。
【0034】
第4実施形態
次に図5を参照し、第4実施形態のエレベータの防振構造について説明する。
【0035】
図5に示したエレベータの防振構造70は、図7に示したエレベータにおいて左右一対のかご側シーブ19L,19Rを支持しているシーブ支持梁19を防振するものである。
このシーブ支持梁19は、隙間を開けて互いに平行に延びる一対の梁部材19a,19bから形成されており、それらの間の空間19cの内側で各かご上シーブ19L,19Rの近傍には、薄板状の動吸振器71,71がそれぞれ配設されている。
【0036】
これらの薄板状の動吸振器71,71は、薄い鋼板を断面形状で逆L字形に折曲したものであり、その縦壁部分71aは梁部材19a,19bの縦壁面に密着固定されている。
また、その水平壁部分71bは、乗りかご11の昇降に伴うかご側シーブ19L,19Rの回転によりシーブ支持梁19に生じる振動の振動数に等しい固有振動数を有するようにその板厚や形状が設定されている。
これにより、乗りかご11の昇降に伴ってシーブ支持梁19に生じる振動のエネルギーは、薄板状の動吸振器71,71の水平壁部分71bの共振によって打ち消されるから、シーブ支持梁19からかご枠の上梁11aへと伝播する振動が減少し、乗りかご11の内部における振動や騒音が低下してその快適性が向上する。
【0037】
すなわち、本第4実施形態のエレベータの防振構造70は、シーブ支持梁19の空間19cの内部に薄板状の動吸振器71,71を装着するものであるから、左右一対のかご側シーブ19L,19Rやかご枠の上梁11aの配置に影響を与えることがない。
また、左右一対のかご側シーブ19L,19Rの近傍に動吸振器71,71を配置することができるから、乗りかご11の昇降に伴って左右一対のかご側シーブ19L,19Rに発生した振動がかご枠の上梁11aに伝播する前に減衰させることができる。
さらに、シーブ支持梁19の空間19cの内側において、動吸振器71,71の形状を自在に設定することができるから、シーブ支持梁19に生じた振動を確実に減衰することができる。
なお、動吸振器71,71の数を増加させることもできるし、動吸振器71,71の代わりにフードダンパあるいはアクティブ制振装置を設けることもできる。
さらに、巻上機16を支持する支持梁を同様に形成し、その内側の空間内にこれらの防振手段を装着することもできる。
【0038】
以上、本発明に係るエレベータの防振構造の各実施形態ついて詳しく説明したが、本発明は上述した実施形態によって限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態は、いずれもマシンルームレスエレベータを例に取って説明しているが、機械室を有するエレベータにも本発明を適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1実施形態のエレベータの防振構造を模式的に示す側面図。
【図2】図1に示した防振構造において得られる伝達関数を示すグラフ。
【図3】第2実施形態のエレベータの防振構造を示す断面側面図。
【図4】第3実施形態のエレベータの防振構造を示す断面側面図。
【図5】第4実施形態のエレベータの防振構造を示す断面側面図。
【図6】特開2003−137487号公報に記載されているマシンルームレスエレベータを示す斜視図。
【図7】特開2004−115161号公報に記載されているマシンルームレスエレベータを示す斜視図。
【図8】特開2003−160285号公報に記載されている防振構造を示す図。
【図9】特開2003−160285号公報に記載されている防振構造を示す(a)側面図および(b)平面図。
【符号の説明】
【0040】
11 乗りかご
14 ガイドレール
15 巻上機支持梁
16 巻上機
17 メインシーブ
18 主ロープ
19 シーブ支持梁
19a,19b 梁部材
19c 空間
19L,19R かご側シーブ
20 昇降路の内壁面(建物)
23 ガイドレール
40 第1実施形態のエレベータの防振構造
41 コイルばね(第1の弾性体)
42 防振ゴム(第2の弾性体)
50 第2実施形態のエレベータの防振構造
51 第1のブラケット
52 建物側のファスナ
53 第2のブラケット
54 ねじ部材
55,56,57 防振ゴム板
60 第3実施形態のエレベータの防振構造
61 第1のブラケット
62 建物側のファスナ
63 第2のブラケット
64 ねじ部材
65 コイルばね
66,67 防振ゴム板
68 係合部材
70 第4実施形態のエレベータの防振構造
71 薄板状の動吸振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごの昇降に際して振動を発生させる振動発生源を弾性体を介して支持手段に支持することにより前記支持手段からの振動の伝播を減少させる防振構造であって、
前記弾性体は、種類が異なる第1の弾性体および第2の弾性体を並列に配置したものであることを特徴とするエレベータの防振構造。
【請求項2】
前記第1の弾性体が防振ゴムであり、前記第2の弾性体が金属ばねであることを特徴とする請求項1に記載したエレベータの防振構造。
【請求項3】
前記第1の弾性体および前記第2の弾性体が、種類の異なる金属ばねであることを特徴とする請求項1に記載したエレベータの防振構造。
【請求項4】
前記支持手段が制振鋼板から成形されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載したエレベータの防振構造。
【請求項5】
前記支持手段に制振塗料が塗布されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載したエレベータの防振構造。
【請求項6】
エレベータのガイドレールを建物側に固定するための一対のブラケットの間に弾性体を介装することにより、ガイドレールから建物側への振動の伝播を減少させる防振構造であって、
前記弾性体のばね定数を調整するためのばね定数調整手段を備えることを特徴とするエレベータの防振構造。
【請求項7】
前記弾性体が防振ゴムであり、
かつ前記ばね定数調整手段は、
前記一対のブラケットを貫通してこれらのブラケットを一体に連結するねじ部材と、
このねじ部材と前記一対のブラケットとの間にそれぞれ介装されるばね定数が異なる複数の防振ゴムと、を組み合わせたものであることを特徴とする請求項6に記載したエレベータの防振構造。
【請求項8】
前記弾性体が金属製のコイルばねであり、
かつ前記ばね定数調整手段は、
その基端が前記一対のブラケットの一方に固定されるとともに、その先端が前記コイルばねの伸縮方向の途中の部分に係合してその有効巻数を変化させる係合部材であることを特徴とする請求項6に記載したエレベータの防振構造。
【請求項9】
前記ブラケットが制振鋼板から成形されていることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載したエレベータの防振構造。
【請求項10】
前記ブラケットは制振塗料が塗布されていることを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載したエレベータの防振構造。
【請求項11】
エレベータの構成要素を支持する支持梁に防振手段を装着することにより前記構成要素からの振動の伝播を減少させる防振構造であって、
前記支持梁は、前記防振手段を収納可能な空間を有しており、
かつ前記防振手段が前記空間の内部において前記支持梁に装着されることを特徴とするエレベータの防振構造。
【請求項12】
前記防振手段は、前記空間の内部において前記支持梁に固着されて一体に振動する薄板状の動吸振器であることを特徴とする請求項11に記載のエレベータの防振構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−284153(P2007−284153A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110144(P2006−110144)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】