説明

エレベータシステムおよびその乗場呼び登録制御方法

【課題】災害発生時に要避難支援者を優先的にエレベータによって避難させることを可能とするエレベータシステムおよびその乗場呼び登録制御方法を提供する。
【解決手段】要避難支援者が居るか否かを判定する要避難支援者存否判定装置と、乗場呼び登録ボタンと、エレベータの運転を制御し、要避難支援者存否判定装置による判定情報、乗場呼び信号および災害検知信号を受信するエレベータ運転制御装置とを備える。災害検知信号を受信すると、エレベータ運転制御装置は、運転モードを避難運転モードに切り替え、乗場呼び登録ボタンからの新たな乗場呼び登録を禁止し、要避難支援者存否判定装置による判定情報を取得し、この判定情報に基づいて要避難支援者が居る救助階の乗場呼び登録を行い、乗りかごを救助階に向けて走行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、火災等の非常事態に備えたエレベータシステムおよび乗場呼び登録制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
事務所ビルあるいはショッピングセンタ等で火災が起きたときに、在館者はエレベータやエスカレータではなく階段で避難するように指導されている。実際、日本に限らず海外でも、エレベータ内やエレベータホールには、火災の時にはエレベータを使わずに階段を使うようにとの注意書きを目にすることが多い。しかし、過去の火災において、特に火災初期にはエレベータを用いて避難を行ったケースが少なからずあるのも事実である。一方、先進各国、特に、日本では高齢者の割合が急速に増加しつつある。このことは、ビル等における火災等の緊急避難時に階段利用が困難となる人々の数が、年々増えてゆくことを予想させる。避難にエレベータを利用する潜在的な要求は従来からあったが、高齢化やバリアフリー化の進展に伴って、近年、徐々に顕在的な要求として語られ始めている。とりわけ、2001年9月11日に発生した世界貿易センタービルの飛行機衝突による崩壊以降、米国ではたとえ超高層ビルであっても、従来の火災階近辺の部分避難に止まらず、スムーズな全館避難の要求が高まってきており、この機運と相まって米国ではエレベータの緊急時利用の議論も高まっている。
【0003】
我が国でも、2003年3月の「規制改革推進3カ年計画」において、「車椅子使用者等の身体障害者や高齢者等の被災時における安全かつ迅速な避難を確保するため、エレベータ周辺の待機場所等を含むエレベータの安全性に十分配慮した上で、身体障害者、高齢者等の避難手段としてのエレベータについて利用面も含めて検討する。」こととされている。
【0004】
このような背景から、近年、火災等の災害が発生した場合に、積極的にエレベータを利用して、迅速に在館者を避難階へ避難させることができるエレベータシステムを提供することが検討されている。
【0005】
火災等の災害が発生すると、ほぼ同時にビル全体から大勢の人々が避難しようとし、エレベータを利用することなく例えば階段等で避難できる健常者と、エレベータを利用しないと避難が困難な車椅子使用者、杖使用者、高齢者および年少者等の避難弱者が一気にエレベータ乗場に殺到してしまい、健常者が乗り込むことで、エレベータを利用しないと避難が困難な避難弱者が避難できない問題点がある。エレベータを利用しないと避難が困難な避難弱者は、優先的にエレベータを利用して避難する要避難支援者として避難を支援することが望まれる。また、乗場呼び登録ボタンを押したがエレベータの乗りかごの到着を待ちきれずに別の手段で避難してしまった場合等でも、エレベータは、登録された乗場呼び登録に応答するため、無駄な運行を行う結果となり、全体として避難時間が長くなりエレベータを利用する在館者が迅速に避難できない等の問題点がある。
【0006】
特許文献1には、火災発生時にエレベータを利用した避難を効率的に実施することを可能とするエレベータ制御システムが開示されている。このシステムは、避難支援装置を備え、避難支援装置は、救出階以外のエレベータ乗場の利用者の有無を監視し、救出階以外のエレベータ乗場で利用者が検出されると、その利用者に対して、乗場表示装置および非常放送装置により避難方法を報知させる。また、避難支援装置は、避難運転の終了後にエレベータ乗場の利用者の有無を監視し、避難運転の終了後にエレベータ乗場で利用者が検出されると、避難運転を再開する。このシステムにおいては、避難時にエレベータを利用する者が、健常者であるのか要避難支援者であるのかの区別は行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−184301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような背景に鑑みてなされたもので、災害発生時に要避難支援者を優先的にエレベータによって避難させることを可能とするエレベータシステムおよびその乗場呼び登録制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態によるエレベータシステムは、エレベータの乗りかごのそれぞれの着床階の乗場に設けられ、乗場を撮影し、撮影した乗場の画像データを解析し乗場にエレベータによる避難支援を必要とする要避難支援者が居るか否かを判定する要避難支援者存否判定装置と、各乗場に設けられ、乗りかごを呼び出すための乗場呼び登録ボタンとを備える。システムは、また、エレベータの運転を制御し、各乗場に設けられた要避難支援者存否判定装置による要避難支援者存否判定情報および乗場呼び登録ボタンに人為的な操作が入力されたときに発出される乗場呼び信号を受信するとともに、エレベータが設置されたビルに設けられた災害検知器によって発出される災害検知信号を受信するエレベータ運転制御装置とを備える。
【0010】
エレベータ運転制御装置は、災害検知信号を受信したときに、エレベータの運転モードを平常時運転モードから避難運転モードに切り替え、乗場呼び登録ボタンへの新たな操作入力に基づく乗場呼び登録をすべて禁止し、要避難支援者存否判定装置による要避難支援者存否判定情報を取得し、取得した要避難支援者存否判定情報に基づいて要避難支援者が居る着床階のみを救助階として決定し、決定した救助階の乗場呼び登録を行い、乗りかごを救助階に向けて走行させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態の機能構成を説明するためのエレベータシステム全体の機能構成の概要を表す図である。
【図2】一実施形態における要避難支援者存否判定装置の機能ブロック図の一例である。
【図3】一実施形態におけるエレベータ運転制御装置を説明するための機能ブロック図である。
【図4】実施形態における処理手順全体を表すフローチャートである。
【図5】図4に示した避難運転時呼び登録モード切替処理の一例を表すフローチャートである。
【図6】図4に示した避難運転時乗場呼び登録制御処理の一例を表すフローチャートの一部である。
【図7】図4に示した避難運転時乗場呼び登録制御処理の一例を表すフローチャートの一部である。
【図8】乗りかごの減速開始タイミングから遡った所定の時間に相当する位置である応答判定開始位置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜、図面を参照しながら本発明の一例としての実施形態の説明を行う。尚、それぞれの図において、同一の部分または対応する部分には同一の参照符号を付すとともに、重複した説明は省略する。また、添付する図面は、それぞれの実施形態に関連する機能要素と、それらの関連を示すものであって、構成要素の物理的配置あるいは物理的構成を表すものではない。また、本明細書において以降述べる実施形態は、説明を簡潔にするために非常事態は火災である場合を中心に述べる。しかし、説明を行う実施形態が適用される非常事態は、火災に限定されるものではなく、火災に起因する発煙、および火災によらない発煙、停電等の非常事態に適用可能である。
【0013】
一実施形態の構成を図1ないし図3を参照しながら説明する。図1は、一実施形態の機能構成を説明するためのエレベータシステム全体の機能構成の概要を表す図である。図に示すように、エレベータの各着床階には、それぞれ乗場ドア101が設けられている。乗場ドア101の近傍には、乗場呼び登録ボタン灯103が内蔵された乗場呼び登録ボタン102が設けられている。エレベータの運転を制御するエレベータ運転制御装置104は、例えば、機械室あるいは昇降路内に設置され、乗場呼び登録ボタン102および乗場呼び登録ボタン灯103と、それぞれ乗場呼び登録信号路105と乗場呼び登録ボタン灯信号路106を介して、接続されている。エレベータ運転制御装置104は、災害が発生していない平常時に乗場呼び登録ボタン102が押されたことを検出すると、乗場呼び登録ボタン灯103を点灯させるとともに、エレベータの乗りかご107を乗場呼び登録ボタン102が押された乗場に応答するように走行させる。
【0014】
エレベータが設置されているビル内の適切な場所には、火災発生を検出する火災検知器108が設けられ、火災検知器108は、例えば、ビル管理システム109を介して、エレベータ運転制御装置104に接続されている。火災が発生すると、火災検知器108は、火災検知信号を発出し、ビル管理システム109に伝達する。ビル管理システム109は、受信した火災検知信号を、火災検知信号路110を介して、エレベータ運転制御装置104に転送する。火災検知信号を受信すると、エレベータ運転制御装置104は、エレベータの運転モードを平常時運転モードから避難運転モードに切り替える。
【0015】
また、エレベータ運転制御装置104には、エレベータの機械室または昇降路に設置され、乗りかご107を走行させる巻上機111が、運行走行指示信号路112を介して、接続されている。エレベータ運転制御装置104は、運行走行指示信号路112を介して、乗りかご107を走行させる指示を巻上機111に出力する。エレベータ運転制御装置104と巻上機111は、さらに、乗りかご位置データ入力信号路113を介して、接続されている。例えば、巻上機111に含まれる電動機には回動量を検出するロータリーエンコーダ等が内蔵されており、巻上機111の回動量を検出することができる。一方、巻上機111の回動量は乗りかご107の昇降距離に比例するため、乗りかご107の位置を検出することができる。尚、本願において乗りかごの位置とは、乗りかごが昇降する方向、すなわち鉛直方向の位置を意味する。巻上機111からエレベータ運転制御装置104には、乗りかご位置データ入力信号路113を介して、検出された乗りかご位置データが伝達される。
【0016】
乗りかご107の乗りかごドア近辺には、乗りかご呼び登録ボタン114が設けられている。乗りかご呼び登録ボタン114は、乗りかご呼び信号路115を介して、エレベータ運転制御装置104と接続されている。平常時において、エレベータ運転制御装置104は、乗りかご呼び登録ボタン114が押された着床階に乗りかご呼びを登録し、乗りかご呼び登録階に応答するように運転する。
【0017】
また、一実施形態においては、各乗場の乗場ドア101近辺に、エレベータの運行情報等を報知するための音声アナウンス装置116および表示装置118の少なくとも一方が設けられている。音声アナウンス装置116は、音声アナウンスデータ信号路117を介して、エレベータ運転制御装置104と接続されている。また、表示装置118は、表示データ信号路119を介して、エレベータ運転制御装置104と接続されている。エレベータ運転制御装置104は、火災検知器108から発出された火災検知信号を受信し、エレベータの運転モードを避難運転モードに切り替えると、例えば、予め定められた避難時の乗場呼び登録方法、後ほど述べる要避難支援者存否判定装置120によって要避難支援者が居ると判定された着床階の乗場呼びのみに応答する旨等のメッセージを、各乗場に設けられた音声アナウンス装置116および表示装置118の少なくとも一方によって報知させる。他の実施形態において、避難運転モードで動作中のエレベータ運転制御装置104は、健常者が乗りかご107に乗り込んだ際に、乗りかご107から降りるように督促するメッセージを、各乗場に設けられた音声アナウンス装置116および表示装置118の少なくとも一方によって報知させる。さらに他の実施形態において、避難運転モードで動作中のエレベータ運転制御装置104は、乗場呼び登録ボタン灯103が点滅中に、極力、要避難支援者存否判定装置120によって検出しやすい位置に要避難支援者を誘導するメッセージを、各乗場に設けられた音声アナウンス装置116および表示装置118の少なくとも一方によって報知させる。
【0018】
本実施形態によるエレベータシステムは、エレベータの乗りかご107のそれぞれの着床階の乗場に設けられ、乗場を撮影し、撮影した乗場の画像データを解析し、乗場にエレベータによる避難支援を必要とする要避難支援者が居るか否かを判定する要避難支援者存否判定装置120を、さらに、備えている。要避難支援者存否判定装置120は、ビル内で火災等の災害が発生した際に、自力で避難することが困難であると考えられる、高齢者、年少者、歩行に杖を使用する者、移動のために車椅子を使用する者等の避難弱者を、優先的にエレベータによって避難支援を行うために、要避難支援者が乗場に居るか否かを判定する装置である。要避難支援者存否判定装置120に含まれる撮影機器は、エレベータを利用しようとして乗場に居る在館者を撮影しやすい位置、例えば、乗場の天井もしくは壁または表示装置118の近辺に設置される。
【0019】
要避難支援者存否判定装置120の機能ブロック図の一例を図2に示す。要避難支援者存否判定装置120は、1または2の撮影機器201を含む。撮影機器201は、乗場を撮影し、撮影した乗場の画像データを画像解析部202に伝達する。画像解析部202は受信した乗場の画像データによって表される画像にエレベータによる避難支援を必要とする要避難支援者が含まれているか否かを解析する。前述したように、要避難支援者には、高齢者、年少者、歩行に杖を使用する者、移動のために車椅子を使用する者等が含まれ、それぞれ異なる属性を有するため、要避難支援者を1つの方法で解析することは困難である。したがって、図2に示した形態においては、画像解析部202を、年齢解析部203、杖使用者解析部204および車椅子使用者解析部205に分けている。年齢解析部203、杖使用者解析部204および車椅子使用者解析部205は、撮影機器201から入力された画像データを公知の構成、方法によって並列的に解析することができる。
【0020】
年齢解析部203には、例えば、特開2009−86901号公報に開示された年齢推定システムを活用することができる。このシステムは、入力された画像データから特徴量抽出部が抽出した特徴量を基に年齢を離散量として推定する第1の識別器と、入力された画像データから特徴量抽出部が抽出した第2の特徴量を基に年齢を連続量として推定する第2の識別器と、2つの識別器のそれぞれの推定結果と年齢情報との関係を指数化する2つのスコア化部と、第1の識別器の推定結果を指数化した値と第2の識別器の推定結果を指数化した値とを統合して推定年齢を出力する統合部とを有する。年齢解析部203は、例えば、この統合部から出力される推定年齢が、予め定められた第1の年齢範囲、例えば、65歳を超えているときには高齢者が乗場に居ると判別し、予め定められた第2の年齢範囲、例えば、10歳未満であるときには年少者が乗場に居ると判別する判別器を備える。判別器によって高齢者または年少者が乗場に居ると判別されたときには、年齢解析部203から要避難支援年齢者検出信号が出力される。
【0021】
杖使用者解析部204には、例えば、特開2007−274234号公報または特開2010−145868号公報に開示された杖使用者検出技術を活用することができる。特開2007−274234号公報に開示された白杖使用者検出システムにおいては、2つの撮影機器からなるステレオカメラから得られる3次元距離情報を基に、監視場所内で検出した人物の周囲の、白杖が存在する可能性のある部分のカラー画像のみに対して画像処理を施し、白杖を検出することによって、目が不自由な白杖使用者を検出することができる。また、特開2010−145868号公報に開示されたシステムは、人物を上方から撮影する撮影機器と、撮影機器による検知結果に基づいて人物の進行方向を判断する制御部とを含む。制御部は、撮影機器によって撮影された画像の中から人物の頭と判断される略円形の画像パターンを認識し、その画像パターンから延出する棒状パターンが認識されたとき、その棒状パターンを杖と判断することによって杖使用者を検出することができる。このような技術を用いた杖使用者解析部204によって杖使用者が乗場に居ると解析されたときには、杖使用者解析部204から杖使用者検出信号が出力される。
【0022】
車椅子使用者解析部205には、例えば、特開2007−272474号公報に開示された車椅子使用者検出システムを活用することができる。このシステムにおいては、2つの撮影機器からなるステレオカメラから得られる3次元距離情報を基に、ステレオカメラの監視範囲内で検出した物体に対して、その物体の頂点から水平5方向に向かっての高さの変化によって車椅子使用者であるか否かを判定することができる。このような技術を用いた車椅子使用者解析部205によって車椅子使用者が乗場に居ると解析されたときには、車椅子使用者解析部205から車椅子使用者検出信号が出力される。
【0023】
画像解析部202、年齢解析部203および杖使用者解析部204の出力は要避難支援者存否判定部206に伝達される。要避難支援者存否判定部206は、要避難支援年齢者検出信号、杖使用者検出信号または車椅子使用者検出信号を受信すると、要避難支援者検出信号を出力する。
【0024】
一実施形態において、要避難支援者存否判定装置120は、乗りかご107に乗り込む者に要避難支援者以外の者、すなわち健常者が含まれているか否かを、さらに、判定する。
【0025】
図1に戻り、要避難支援者存否判定装置120は、要避難支援者検出信号路121を介して、エレベータ運転制御装置104に接続されている。エレベータ運転制御装置104は、災害検知信号を受信し、エレベータの運転モードを平常時運転モードから避難運転モードに切り替えると、要避難支援者存否判定装置120による要避難支援者存否判定情報を取得する。
【0026】
尚、図1においては、構成要素の論理的な接続関係を示すために様々な信号路を示したが、これらは論理的な信号路であって、一部の信号路は物理的にはバス状の1つの信号路によって実装することもできる。
【0027】
図3に、一実施形態におけるエレベータ運転制御装置104を説明するための機能ブロック図を示す。尚、図3にはエレベータ運転制御装置104の機能を説明するために、既に図1に示した機能構成要素も示しているが、これらの機能構成要素については、図3において同一の参照符号を付しており、説明は省略する。エレベータ運転制御装置104は、通常、プロセッサ、ROM、RAMまたは磁気記憶装置等のハードウェア資源と、エレベータ制御に必要なソフトウェアを含む、いわゆる組み込みシステムによって実装される。エレベータ運転制御装置104は、また、ハードウェアによって実装することもできる。
【0028】
一実施形態において、エレベータ運転制御装置104は、運転モード切り替え制御部301と、呼び登録制御部302と、運行制御部303と、乗場呼び登録ボタン灯制御部304と、乗りかご位置検出制御部305と、表示装置制御部312と、表示データ記憶部313と、音声アナウンス制御部314、音声アナウンスデータ記憶部315を備えている。
【0029】
エレベータ運転制御装置104の運転モード切り替え制御部301は、火災検知信号路110を介して、ビル管理システム109に接続されている。火災検知器108が発出した、火災検知信号がビル管理システム109から運転モード切り替え制御部301に入力されると、運転モード切り替え制御部301は、エレベータの運転モードを平常時運転モードから避難運転モードに切り替える。
【0030】
また、運転モード切り替え制御部301は、運転切り替え信号路306を介して、エレベータ運転制御装置104の呼び登録制御部302と接続されている。運転モード切り替え制御部301から呼び登録制御部302にエレベータ運転モード切替信号が入力されると、呼び登録制御部302は、エレベータの呼び登録制御を平常運転時の呼び登録モードから、避難運転時の呼び登録モードに切り替える。
【0031】
呼び登録制御部302は、乗場呼び登録ボタン102、乗りかご呼び登録ボタン114、運行制御部303および要避難支援者存否判定装置120と、それぞれ、乗場呼び信号路105、乗りかご呼び信号路115、呼び信号路307および要避難支援者検出信号路121を介して、接続されている。平常運転時には、呼び登録制御部302は、乗場呼び登録ボタン102と乗りかご呼び登録ボタン114から呼び登録制御部302に登録された乗りかご呼び登録信号と乗場呼び登録信号を運行制御部303へ出力し、運行制御部303は、運行走行指示信号路112を介して、乗りかご107を呼びが登録された乗場または行先階へ走行させる信号を巻上機111へ出力する。また、呼び登録制御部302は、エレベータの呼び登録制御を平常運転時の呼び登録モードから避難運転時の呼び登録モードに切り替えると、既に登録した乗場呼び登録を取り消すとともに、乗場呼び登録ボタン102への新たな操作入力に基づく乗場呼び登録を禁止する。また、このとき、呼び登録制御部302は、既に登録した乗りかご呼び登録をすべて取り消し、避難階の乗りかご呼び登録を自動的に実行する。周知のように、避難階は、所謂安全階であり、火災管制運転時の帰着階を指す。避難階は建物の出入り口がある階床が設定され、1階である場合が多いが、1階に限られるものでもない。また、呼び登録制御部302は、呼び登録信号路308を介して、乗りかご位置検出制御部305と接続されており、呼び登録制御部302に登録された呼び登録信号を乗りかご位置検出制御部305に入力する。また、呼び登録制御部302は、要避難支援者検出信号路121を介して、要避難支援者存否判定装置120と接続されており、避難運転時の呼び登録モードで動作中には、要避難支援者存否判定装置120による要避難支援者存否判定情報を取得し、取得した要避難支援者存否判定情報に基づいて要避難支援者が居る着床階のみを救助階として決定し、決定した救助階の乗場呼び登録を行う。このように要避難支援者が居る着床階のみの乗場呼び登録を行うことによって、エレベータを用いて要避難支援者を優先的に避難させることができる。
【0032】
呼び登録制御部302は、さらに、呼び信号路307を介して、運行制御部303と接続されている。運行制御部303は、呼び登録制御部302から乗場呼び登録が行われた救助階の情報を受け取ると、乗りかご107を救助階に向けて走行させる。乗りかご107が救助階に着床し戸開すると救助階の乗場に居る在館者は乗りかご107に乗り込むことができるが、一実施形態において、呼び登録制御部302は、乗りかご107に乗り込む在館者に要避難支援者以外の者、すなわち健常者が含まれているか否かの情報を、救助階に設置された要避難支援者存否判定装置120から取得する。救助階に設置された要避難支援者存否判定装置120から要避難支援者以外の在館者、すなわち健常者が乗りかご107に乗り込んだ旨の情報を取得した場合には、呼び登録制御部302は、乗りかご107を救助階から出発させる信号を、運行制御部303に出力しない。したがって、救助階に着床した乗りかご107に健常者が乗り込んだ状態においては、乗りかご107は救助階から出発しない。
【0033】
エレベータ運転制御装置104の乗りかご位置検出制御部305は、巻上機111、呼び登録制御部302および乗場呼び登録ボタン灯制御部304と、それぞれ、乗りかご位置データ入力信号路113、呼び登録信号路308および応答判定開始位置信号路309を介して、接続されている。乗りかご位置検出制御部305は、例えば、巻上機111によって検出された乗りかご107の位置データを受信する。また、乗りかご位置検出制御部305は、前述したように、呼び登録制御部302に登録された呼び登録信号を受信する。したがって、呼び登録制御部302が避難運転時の呼び登録モードで動作中には、乗りかご位置検出制御部305は、救助階の位置データを受信する。乗りかご位置検出制御部305は、受信した乗りかご107の位置データと救助階の位置データに基づいて、乗りかご107が、救助階に着床するために減速を開始するタイミングから遡った所定の時間に相当する位置(以下、応答判定開始位置という)を算定する。一実施形態において、乗りかご107が応答判定開始位置に到達すると、乗りかご位置検出制御部305は、乗場呼び登録ボタン灯制御部304に乗場呼び登録ボタン灯103を点滅させる指示を出力する。
【0034】
エレベータ運転制御装置104の乗場呼び登録ボタン灯制御部304は、乗場呼び登録ボタン灯103とは乗場呼び登録ボタン灯信号路106を介して、呼び登録制御部302とは呼び登録信号路311および乗場ボタン灯状況信号路310とを介して、また、位置検出制御部305とは応答判定開始位置信号路309を介して、それぞれ接続されている。乗場呼び登録ボタン灯制御部304は、呼び登録信号路311を介して呼び登録制御部302から入力された乗場呼び登録状況に基づいて、乗場呼び登録ボタン灯103を点灯または消灯させる。前述したように、乗りかご位置検出制御部305によって乗りかご107が応答判定開始位置に到達したことが検出されると、一実施形態において、乗場呼び登録ボタン灯制御部304は、応答判定開始位置信号路309を介して、乗りかご位置検出制御部305から乗場呼び登録ボタン灯103を点滅させる指示を受信し、救助階の乗場呼び登録ボタン灯103を点滅させる。このとき、乗場呼び登録ボタン灯制御部304は、乗場呼び登録ボタン灯状況信号路310を介して、救助階の乗場呼び登録ボタン灯103が点滅中であることを示す信号を呼び登録制御部302に出力する。
【0035】
一実施形態において、乗りかご位置検出制御部305によって乗りかご107が応答判定開始位置に到達したことが検出され、呼び登録制御部302に乗場呼び登録ボタン灯制御部304から、救助階の乗場呼び登録ボタン灯103が点滅中であることを示す信号が入力されると、呼び登録制御部302は、救助階に設けられた要避難支援者存否判定装置120による要避難支援者存否判定情報を再び取得する。再び取得した要避難支援者存否判定情報によって救助階に要避難支援者が居ることが確認された場合には、呼び登録制御部302は、登録した救助階の乗場呼び登録を確定し、運行制御部303は、乗りかご107を救助階に着床させる。また、再び取得した要避難支援者存否判定情報によって救助階に要避難支援者が、もはや居ないことが判明した場合には、呼び登録制御部302は、救助階の乗場呼び登録を取り消す。このように、救助階に要避難支援者が居るか否かを再確認することによって、乗りかご107の無用な走行を中止することができ、その結果、避難運転の効率を向上させることができる。
【0036】
エレベータ運転制御装置104の表示装置制御部312は、運行モード切替制御部301および乗場の表示装置118と、それぞれ、避難運転モード表示指示信号路320および表示データ信号路119を介して、接続されている。また、表示装置制御部312は、表示データ要求信号路317および表示データ送信路316を介して、表示データ記憶部313と接続されている。避難運転モードに切り替えられ、表示装置制御部312に運転モード切替制御部301から火災検知信号が入力されると、表示装置制御部312は、表示データ記憶部313に表示データ要求信号を出力し、これを受けた表示データ記憶部313は、予め定められたメッセージのデータを表示装置制御部312へ出力する。予め定められたメッセージとしては、例えば、各着床階の表示装置118によって報知させる、要避難支援者が居ると判定された着床階の乗場呼びのみに応答する旨のメッセージ、避難運転時における乗場呼び登録方法に関するメッセージがある。一実施形態においては、予め定められたメッセージとしては、乗りかご107に要避難支援者以外の在館者、すなわち健常者が乗り込んだ場合に、救助階の表示装置118によって報知させる、要避難支援者以外の在館者は乗りかご107から降車するように督促する旨のメッセージがある。表示装置制御部312は、表示データ記憶部313から予め定められたメッセージデータを受信すると、所定の表示装置118に対して表示指示を出力するとともに、表示データ記憶部313から受信したメッセージデータを所定の表示装置118に対して転送する。
【0037】
同様に、エレベータ運転制御装置104の音声アナウンス制御部314は、運行モード切替制御部301および乗場の音声アナウンス装置116と、それぞれ、避難運転モードアナウンス指示信号路321および音声アナウンスデータ信号路117を介して、接続されている。また、音声アナウンス制御部314は、アナウンスデータ要求信号路318およびアナウンスデータ送信路319を介して、音声アナウンスデータ記憶部315と接続されている。避難運転モードに切り替えられ、音声アナウンス制御部314に運転モード切替制御部301から火災検知信号が入力されると、音声アナウンス制御部314は、音声アナウンスデータ記憶部315にアナウンスデータ要求信号を出力し、これを受けた音声アナウンスデータ記憶部315は、予め定められたメッセージのデータを音声アナウンス制御部314へ出力する。予め定められたメッセージとしては、例えば、各着床階の音声アナウンス装置116によって報知させる、要避難支援者が居ると判定された着床階の乗場呼びのみに応答する旨のメッセージ、避難運転時における乗場呼び登録方法に関するメッセージがある。一実施形態においては、予め定められたメッセージとしては、乗りかご107に要避難支援者以外の在館者、すなわち健常者が乗り込んだ場合に、救助階の音声アナウンス装置116によって報知させる、要避難支援者以外の在館者は乗りかご107から降車するように督促する旨のメッセージがある。音声アナウンス制御部314は、音声アナウンスデータ記憶部315から予め定められたメッセージデータを受信すると、所定の音声アナウンス装置116に対してアナウンス指示を出力するとともに、音声アナウンスデータ記憶部315から受信したメッセージデータを所定の音声アナウンス装置116に対して転送する。
【0038】
このように、各着床階に設置された表示装置118および音声アナウンス装置116の少なくとも一方によって、火災等の災害発生時におけるエレベータ利用に関する適切なメッセージを在館者に報知させることによって、エレベータを利用して避難しようとする在館者に対して適切な情報および指示を与えることができる。各着床階に設置された表示装置118によって火災等の災害発生時におけるエレベータ利用に関する適切なメッセージを報知することにより、耳が不自由な在館者にも適切な情報および指示を与えることができる。また、各着床階音声アナウンス装置116よって火災等の災害発生時におけるエレベータ利用に関する適切なメッセージを報知することにより、目が不自由な在館者にも適切な情報および指示を与えることができる。
【0039】
尚、図3において、一実施形態におけるエレベータ運転制御装置104の構成要素の論理的な接続関係を示すために様々な信号路等を示したが、これらは論理的な信号路であって、一部の信号路は物理的にはバス状の1つの信号路によって実装することができる。
【0040】
次に、図4ないし図8を参照しながら、前述した実施形態における動作説明を行う。図4に実施形態における処理手順全体を表すフローチャートを示す。先ず、ステップS401で、エレベータ運転制御装置104は、火災検知器108から発出された火災検知信号が受信しているか否かを判断する。エレベータ運転制御装置104は火災検知信号が受信されているか否かを、常に監視している。火災検知器108から発出された火災検知信号を受信している場合には、ステップS402に進み、後ほど図5を参照しながら説明する、エレベータの呼び登録制御を平常運転時呼び登録モードから避難運転時呼び登録モードに切り替える処理を行う。次いでステップS403において、後ほど図6および図7を参照しながら説明する、避難運転時乗場呼び登録制御を行う。その後、ステップS401に戻り、火災検知器108から発出された火災検知信号が受信しているか否かを判断し、以降、前述した処理を繰り返す。ステップS401で、エレベータ運転制御装置104は、火災検知器108から発出された火災検知信号が受信していないと判断された場合には、エレベータ運転制御装置104は、平常時運転モードを継続する。
【0041】
次に図5に示すフローチャートを参照しながら、図4に示したステップS402における処理、すなわち実施形態における避難運転時呼び登録モード切替処理の一例の、詳細な動作説明を行う。火災検知器108が発出した火災検知信号が、ビル管理システム109を介して、運転モード切り替え制御部301によって受信されると、運転モード切り替え制御部301は、ステップS501で、エレベータの運転制御を平常時運転モードから避難時運転モードに切り替える。一実施形態において、運転モード切り替え制御部301は、エレベータの運転制御を避難時運転モードに切り替えると、表示装置制御部312を介して表示装置118に避難運転時の乗場呼び登録を無効とする旨を表示させる(ステップS502)とともに、音声アナウンス制御部314を介して音声アナウンス装置116に避難運転時の乗場呼び登録を無効とする旨をアナウンスさせる(ステップS503)。他の実施形態においては、表示装置制御部312または音声アナウンス装置116のいずれか一方によって、避難運転時の乗場呼び登録を無効とする旨を報知させてもよい。
【0042】
運転モード切り替え制御部301から避難運転モードに切替えた信号が呼び登録制御部302に入力されると、呼び登録制御部302は、ステップS504で、既に登録されているすべての乗りかご呼び登録を取り消す。また、呼び登録制御部302は、ステップS505で、新規乗りかご呼び登録を無効にするとともに、避難階を行先階とする乗りかご呼びを登録する。また、呼び登録制御部302は、ステップS506で、既に登録されている乗場呼び登録を取り消す。さらに、呼び登録制御部302は、ステップS507で、乗場呼び登録ボタン102が在館者によって押されたことによる新たな乗場呼び登録を禁止する。その後、処理は、図4におけるS403に示し、図6および図7を参照しながら詳述する避難運転時乗場呼び登録制御処理に進む。
【0043】
次に、図6および図7に示すフローチャートを参照しながら、図4に示したステップS403における処理、すなわち実施形態における避難運転時乗場呼び登録制御処理の一例のより詳細な動作説明を行う。呼び登録制御部302は、運転モード切り替え制御部301から避難運転モード切替えた信号が入力されると、ステップS601で、すべて乗場の要避難支援者存否判定装置120から要避難支援者存否判定装置120から、それぞれの乗場にエレベータによる避難支援を必要とする要避難支援者が居るか否かを表す要避難支援者存否判定情報を取得する。呼び登録制御部302は、すべて乗場の要避難支援者存否判定装置120から取得した要避難支援者存否判定情報に基づいて、ステップS602で、要避難支援者がいずれかの着床階に居るか否かを判断する。いずれかの着床階に要避難支援者が居る場合には、呼び登録制御部302は、ステップS603で、要避難支援者が居ると判定された着床階のみの乗場呼びを登録する。いずれかの着床階にも要避難支援者が居ない場合には、処理はステップS610に進み、乗りかご107を避難階に走行させ、避難階で待機させる。
【0044】
ステップS603で、要避難支援者が居ると判定された着床階の乗場呼びが登録された後、乗りかご位置検出制御部305は、乗場呼びが登録された着床階、すなわち救助階の乗場位置データを、ステップS604で、呼び登録制御部302から取得する。乗りかご位置検出制御部305は、取得した救助階の乗場位置データと乗りかご107の走行速度、例えば定格速度に基づいて、ステップS605で、救助階に着床するための減速開始タイミングを算出する。次いでステップS606で、乗りかご位置検出制御部305は、ステップS605で算出した減速開始タイミングから遡った所定の時間(例えば、3〜5秒)に相当する位置、すなわち応答判定開始位置を算出する。
【0045】
次いでステップS607で、乗りかご位置検出制御部305は、乗りかご107の位置データに基づいて、乗りかご107が応答判定開始位置を通過したか否かを判断する。ここで、本願において、救助階の乗場位置と応答判定開始位置の間の区間を応答判定区間という。乗りかご107が応答判定開始位置を通過し応答判定区間に入っているとステップS607で判断されると、呼び登録制御部302は、ステップS608で、救助階の要避難支援者存否判定装置120から要避難支援者存否要避難支援者存否判定情報を、再度、取得する。乗りかご107が応答判定区間に入っているとステップS607で判断された場合、一実施形態においては、乗場呼び登録ボタン灯制御部304は、救助階の乗場呼び登録ボタン灯103を点滅させる(ステップS609)。乗りかご107が応答判定開始位置を通過しておらず応答判定区間に入っていないとステップS607で判断された場合には、乗りかご107が応答判定区間に入るまで待つ。
【0046】
次いで処理は図7に示すステップS611に進み、ステップS608で取得した救助階の要避難支援者存否判定装置120からの要避難支援者存否判定情報に基づいて、救助階に要避難支援者が依然として居るか否かが判断される。
【0047】
救助階に要避難支援者が依然として居ると判断されると、ステップS612で救助階の乗場呼びに応答し、ステップS613で、乗りかご107は救助階に着床して戸開する。ステップS611で救助階に要避難支援者は居ないと判断されると、ステップS620で、救助階の乗場呼び登録を取り消し、ステップS602に戻り、要避難支援者が他のいずれかの着床階に居るか否かを判断する処理に戻る。このような動作によって、要避難支援者が乗りかごの到着を待ちきれずに別の手段で避難してしまう等の場合に、無用なエレベータの運行を低減することによって、全体としてエレベータを利用した避難時間を短縮させることができる。
【0048】
乗りかご107が救助階に到着し戸開中、呼び登録制御部302は、ステップS614で、避難階と同一方向の他の着床階の要避難支援者存否判定装置120から要避難支援者存否判定情報を取得し、避難階と同一方向の他の着床階に要避難支援者が居るか否かを判断する。例えば、救助階が30階であり、避難階が10階である場合には、避難階と同一方向の他の着床階は11階〜29階である。また、例えば、救助階が2階であり、避難階が10階である場合には、避難階と同一方向の他の着床階は3階〜9階である。
【0049】
S614で、避難階と同一方向の他の着床階に要避難支援者が居ると判断されると、現在、乗りかご107が着床中の救助階の要避難支援者存否判定装置120は、ステップS615で、要避難支援者以外の在館者(健常者)の乗りかご107への乗り込みを検出するために、乗りかご107への乗り込み者の画像解析を行う。ステップS615における救助階の要避難支援者存否判定装置120による乗りかご107への乗り込み者の画像解析の結果に基づいて、S616で、乗りかご107への健常者の乗り込みが検出されたか否かが判断される。乗りかご107への健常者の乗り込みが検出されたと判断されると、一実施形態においては、S617で、救助階の音声アナウンス装置116および表示装置118の少なくとも一方を利用して、健常者に対して乗りかご107から降りるように督促する報知を行う。S618で、救助階の要避難支援者存否判定装置120による乗りかご107への乗り込み者の画像解析の結果に基づいて、健常者が乗りかご107から降りたか否かが判断される。健常者が乗りかご107から降りたことの確認が取れると、処理はステップS619に進み、エレベータのドアを閉じて、乗りかご107を救助階から出発させる。健常者が乗りかご107から降りたことの確認が取れない場合には、ステップS617に戻り、乗りかご107を救助階から出発させず、健常者が乗りかご107から降りたことの確認が取れるまで健常者に対して乗りかご107から降りるように督促する報知を継続する。このような動作によって、健常者が乗りかごに乗り込むことによる要避難支援者のエレベータを利用した避難ができない問題点を低減することができる。
【0050】
ステップS616で乗りかご107への健常者の乗り込みが検出されないと判断された場合には、処理はステップS619に進み、エレベータのドアを閉じて、乗りかご107を救助階から出発させる。ステップS614で避難階と同一方向の他の着床階には要避難支援者が居ないと判断された場合にも、処理はステップS619に進み、エレベータのドアを閉じて、乗りかご107を救助階から出発させる。
【0051】
図8に、ステップS606で算出する、減速開始タイミングから遡った所定の時間に相当する位置である応答判定開始位置を説明するための図を示す。横軸は乗りかごの位置を、縦軸は乗りかごの速度を表す。Pは救助階の位置を、Pは乗りかごの減速開始タイミングにおける位置を表す。図において、曲線Sおよび曲線Tは、乗りかごの速度パターンである。曲線Sは、乗りかごが位置Pから出発した後、加速し、定格速度Vに到達し、減速開始位置Pから減速して位置Pにある救助階に着床する時の速度パターンである。応答判定開始位置は、減速開始位置Pから所定の時間(例えば、3〜5秒)に対応する距離L1遡った位置Pである。また、救助階の位置Pと応答判定開始位置Pの間の区間である応答判定区間は、図においてL2で示してある。曲線Tは、乗りかごが定格速度Vに達しない場合の乗りかごの速度パターンである。前述したように、一実施形態において、乗りかごが応答判定区間に入っているときには、救助階の乗場呼びボタン灯が点滅する。
【0052】
以上説明した実施形態によれば、避難時に階段等エレベータ以外でも避難できる健常者の乗場呼び登録を禁止し、エレベータ以外の手段では避難が困難な、車椅子使用者、または杖使用者、または高齢者、または年少者といった要避難支援者が検出された場合のみ要避難支援者が検出された着床階の乗場呼びを登録することによって、車椅子使用者、または杖使用者、または高齢者、または年少者を優先的にエレベータによって避難させることができる。
【0053】
尚、本発明は上記の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で開示した構成要素を変形して具体化できる。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示した全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。例えば、以上に述べた実施形態では、音声アナウンス内容と表示メッセージ内容を同一の文言としたが、これらは異なる文言であっても構わない。また、音声アナウンスの代わりに、ブザーやサイレン等の音を使っても構わないし、表示メッセージを出力する代わりに回転灯等を用いても構わない。
【符号の説明】
【0054】
101…乗場ドア、 102…乗場呼び登録ボタン、
103…乗場呼び登録ボタン灯、 104…エレベータ運転制御装置、
105…乗場呼び登録信号路、 106…乗場呼び登録ボタン灯信号路、
107…乗りかご、 108…火災検知器、 109…ビル管理システム、
110…火災検知信号路、 111…巻上機、 112…運行走行指示信号路、
113…乗りかご位置データ入力信号路、 114…乗りかご呼び登録ボタン、
115…乗りかご呼び信号路、 116…音声アナウンス装置、
117…音声アナウンスデータ信号路、 118…表示装置、
119…表示データ信号路、 120…要避難支援者存否判定装置、
121…要避難支援者検出信号路、 201…撮影機器、
202…画像解析部、 203…年齢解析部、 204…杖使用者解析部、
205…車椅子使用者解析部、 206…要避難支援者存否判定部、
301…運転モード切り替え制御部、 302…呼び登録制御部、
303…運行制御部、 304…乗場呼び登録ボタン灯制御部、
305…乗りかご位置検出制御部、 306…運転切り替え信号路、
307…呼び信号路、 308…呼び登録信号路、
309…応答判定開始位置信号路、 310…乗場ボタン灯状況信号路、
311…呼び登録信号路、 312…表示装置制御部、
313…表示データ記憶部、 314…音声アナウンス制御部、
315…音声アナウンスデータ記憶部、 316…表示データ送信路、
317…表示データ要求信号路、 318…アナウンスデータ要求信号路、
319…アナウンスデータ送信路、 320…避難運転モード表示指示信号路、
321…避難運転モードアナウンス指示信号路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗りかごのそれぞれの着床階の乗場に設けられ、前記乗場を撮影し、撮影した前記乗場の画像データを解析し前記乗場にエレベータによる避難支援を必要とする要避難支援者が居るか否かを判定する要避難支援者存否判定装置と、
前記各乗場に設けられ、前記乗りかごを呼び出すための乗場呼び登録ボタンと、
前記エレベータの運転を制御し、前記各乗場に設けられた前記要避難支援者存否判定装置による要避難支援者存否判定情報および前記乗場呼び登録ボタンに人為的な操作が入力されたときに発出される乗場呼び信号を受信するとともに、前記エレベータが設置されたビルに設けられた災害検知器によって発出される災害検知信号を受信するエレベータ運転制御装置とを備え、
前記エレベータ運転制御装置は、災害検知信号を受信したときに、
前記エレベータの運転モードを平常時運転モードから避難運転モードに切り替え、
前記乗場呼び登録ボタンへの新たな操作入力に基づく乗場呼び登録をすべて禁止し、
前記要避難支援者存否判定装置による要避難支援者存否判定情報を取得し、取得した前記要避難支援者存否判定情報に基づいて前記要避難支援者が居る着床階のみを救助階として決定し、
決定した前記救助階の乗場呼び登録を行い、
前記乗りかごを前記救助階に向けて走行させることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
前記エレベータシステムは、
前記乗りかごの位置を検出し、検出した前記乗りかご位置情報を前記エレベータ運転制御装置に伝達する乗りかご位置検出部を、さらに、備え、
前記エレベータ運転制御装置は、
前記乗りかご位置検出部から伝達される前記乗りかご位置情報と前記救助階の位置に基づいて、前記乗りかごが、前記救助階に着床するために減速を開始するタイミングから遡った所定の時間に相当する位置である応答判定開始位置を算定し、
前記乗りかごが前記応答判定開始位置に到達したときに、前記救助階に設けられた前記要避難支援者存否判定装置による要避難支援者存否判定情報を再び取得し、
再び取得した前記要避難支援者存否判定情報によって前記救助階に要避難支援者が居ることが確認された場合には、前記乗りかごを前記救助階に着床させ、
再び取得した前記要避難支援者存否判定情報によって前記救助階に要避難支援者が居ないことが判明した場合には、前記救助階の乗場呼び登録を取り消すことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記乗場呼び登録ボタンは、前記乗場呼び登録ボタンが設けられている着床階の乗場呼びが登録されたことを示すための乗場呼び登録ボタン灯を内蔵し、
前記エレベータ運転制御装置は、
前記決定した前記救助階の乗場呼び登録を行ったときに前記救助階の乗場呼び登録ボタン灯を点灯させ、
前記乗りかごが前記応答判定開始位置に到達したときに、前記救助階の乗場呼び登録ボタン灯を点滅させることを特徴とする請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記要避難支援者存否判定装置は、
1または2の撮像部と、
前記撮像部によって撮影された前記乗場の画像に車椅子利用者の画像が含まれているか否かを解析する車椅子利用者存否解析部、および杖利用者の画像が含まれているか否かを解析する杖利用者存否解析部、および所定の第1の年齢範囲に属すると推定される高齢者の画像または所定の第2の年齢範囲に属すると推定される年少者の画像が含まれているか否かを解析する要避難支援年齢者存否解析部の少なくともいずれか1つを含む画像解析部と、
前記画像解析部から車椅子利用者または杖利用者または要避難支援年齢者を検出した旨の信号を受信したときに要避難支援者検出信号を出力する要避難支援者存否判定部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記エレベータ運転制御装置は、
前記エレベータの運転モードを平常時運転モードから避難運転モードに切り替えた後、第1の着床階の前記要避難支援者存否判定装置、および避難階と前記第1の着床階の間に位置する第2の着床階の前記要避難支援者存否判定装置から要避難支援者が居る旨の要避難支援者存否判定情報を取得したときは、
前記第1の着床階および前記第2の着床階を救助階として決定し、
前記乗りかごを前記第1の着床階に着床させた後、戸開している際に、前記第1の着床階に設置された前記要避難支援者存否判定装置から要避難支援者以外の在館者が前記乗りかごに乗り込んだ旨の情報を取得した場合、前記乗りかごを前記第1の着床階から出発させないことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記エレベータシステムは、
前記各乗場に設けられ、所定のメッセージを出力する報知装置を、さらに、備え、
前記エレベータ運転制御装置は、
前記エレベータの運転モードを避難運転モードに切り替えた際には、前記要避難支援者が居ると判定された着床階の乗場呼びのみに応答する旨のメッセージを、前記各報知装置を介して、報知させることを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項7】
前記エレベータ運転制御装置は、
前記救助階に設置された前記要避難支援者存否判定装置から要避難支援者以外の在館者が前記乗りかごに乗り込んだ旨の情報を取得した場合、要避難支援者以外の在館者は前記乗りかごから降車するように督促する旨のメッセージを、前記救助階に設置された前記報知装置を介して、報知させることを特徴とする請求項6に記載のエレベータシステム。
【請求項8】
前記報知装置は、音声アナウンス装置または表示装置であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のエレベータシステム。
【請求項9】
エレベータの乗りかごのそれぞれの着床階の乗場を撮影する乗場撮影ステップと、
この乗場撮影ステップで撮影した前記乗場の画像データを解析し、前記乗場にエレベータによる避難支援を必要とする要避難支援者が居るか否かを判定し、要避難支援者存否判定情報を出力する要避難支援者存否判定ステップと、
災害検知信号を受信するステップと、
災害検知信号を受信したときに、前記エレベータの運転モードを平常時運転モードから避難運転モードに切り替えるステップと、
前記エレベータの運転モードを避難運転モードに切り替えたときに、前記乗場呼び登録ボタンへの新たな操作入力に基づく乗場呼び登録をすべて禁止するステップと、
前記エレベータの運転モードを避難運転モードに切り替えたときに、前記要避難支援者存否判定情報を取得し、取得した前記要避難支援者存否判定情報に基づいて前記要避難支援者が居る着床階のみを救助階として決定する救助階決定ステップと、
この救助階決定ステップで決定した前記救助階の乗場呼び登録を行う乗場呼び登録ステップと、
前記乗りかごを前記救助階に向けて走行させるステップと
を含むことを特徴とする乗場呼び登録制御方法。
【請求項10】
前記乗場呼び登録制御方法は、
前記乗りかごの位置を検出し、検出した前記乗りかご位置情報を出力するステップと、
このステップで出力された前記乗りかご位置情報と前記救助階の位置に基づいて、前記乗りかごが、前記救助階に着床するために減速を開始するタイミングから遡った所定の時間に相当する位置である応答判定開始位置を算定するステップと、
前記乗りかごが前記応答判定開始位置に到達したときに、前記救助階の要避難支援者存否判定情報を再び取得するステップと、
再び取得した前記要避難支援者存否判定情報によって前記救助階に前記要避難支援者が居ることが確認された場合には、前記乗りかごを前記救助階に着床させるステップと、
再び取得した前記要避難支援者存否判定情報によって前記救助階に前記要避難支援者が居ないことが判明した場合には、前記救助階の乗場呼び登録を取り消すステップと
を、さらに、含むことを特徴とする請求項9に記載の乗場呼び登録制御方法。
【請求項11】
前記乗場呼び登録制御方法は、
前記決定した前記救助階の乗場呼び登録を行ったときに前記救助階の乗場呼び登録ボタンに内蔵されている乗場呼び登録ボタン灯を点灯させるステップと、
前記乗りかごが前記応答判定開始位置に到達したときに、前記救助階の乗場呼び登録ボタン灯を点滅させるステップと
を、さらに、含むことを特徴とする請求項10に記載の乗場呼び登録制御方法。
【請求項12】
前記要避難支援者には、車椅子利用者、または杖利用者、または要避難支援年齢者のいずれかを少なくとも含むことを特徴とする請求項9に記載の乗場呼び登録制御方法。
【請求項13】
前記乗場呼び登録制御方法は、
前記エレベータの運転モードを平常時運転モードから避難運転モードに切り替えた後、第1の着床階の要避難支援者存否判定情報、および避難階と前記第1の着床階の間に位置する第2の着床階の要避難支援者存否判定情報が、いずれも要避難支援者が対応する着床階の乗場に居ることを示しているときは、
前記第1の着床階および前記第2の着床階を救助階として決定するステップと、
前記乗りかごを前記第1の着床階に着床させた後、戸開している際に、前記乗りかごに乗り込んだ者の中に要避難支援者以外の者が含まれているか否かを表す乗り込み者情報を取得する乗り込み者情報取得ステップと、
この乗り込み者情報取得ステップで取得した乗り込み者情報が、前記乗りかごに乗り込んだ者の中に要避難支援者以外の者が含まれていることを示している場合に、前記乗りかごを前記第1の着床階から出発させないステップと
を、さらに、含むことを特徴とする請求項9に記載の乗場呼び登録制御方法。
【請求項14】
前記乗場呼び登録制御方法は、
前記エレベータの運転モードを避難運転モードに切り替えた際には、前記要避難支援者が居ると判定された着床階の乗場呼びのみに応答する旨のメッセージを、前記各乗場に設けられた報知装置を介して、報知させるステップを、さらに、含むことを特徴とする請求項9に記載の乗場呼び登録制御方法。
【請求項15】
前記乗場呼び登録制御方法は、
前記乗り込み者情報取得ステップで取得した乗り込み者情報が、前記乗りかごに乗り込んだ者の中に要避難支援者以外の者が含まれていることを示している場合に、要避難支援者以外の在館者は前記乗りかごから降車するように督促する旨のメッセージを、前記救助階に設置された報知装置を介して、報知させるステップを、さらに、含むことを特徴とする請求項13に記載の乗場呼び登録制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−39991(P2013−39991A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176746(P2011−176746)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】