説明

エレベータドアの制御装置

【課題】エレベータドアの開閉動作中に過負荷を検出した場合においてエレベータドアを停止させるときに、ドアに挟まれた異物等に加わる過大な力を最小限に抑えることが可能であるエレベータドアの制御装置を提供する。
【解決手段】速度指令に基づいてエレベータのドアの開閉動作を行うエレベータドアの制御装置において、ドアの実際の開閉速度である実速度を検出するドア開閉速度検出手段と、ドアの開閉動作中においてドアにかかるドア負荷を検出するドア負荷検出手段と、ドア負荷検出手段により検出されたドア負荷が所定の過負荷閾値以上である場合に、ドアの開閉速度を減速して開閉動作を停止させるように速度指令を発生させる過負荷検出手段と、を備え、過負荷検出手段は、速度指令の示す速度がドア開閉速度検出手段により検出される実速度よりも大きい場合に、この実速度と等しい速度の速度指令を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータドアの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来におけるエレベータドアの制御装置においては、過負荷検出の感度を適宜調整して乗客の安全性を確保することを目的とするものとして、エレベータドアを開閉駆動するドアモータの速度指令が実際のモータの回転速度に追従するようにトルク指令を発生し、このトルク指令を所定のトルク制限値と比較してドア開閉中の過負荷異常を検出することで前記エレベータドアを反転又は停止させるエレベータドアの制御装置において、前記エレベータドアに乗客が近接していることを検出しているときには過負荷異常を検出するためのトルク制限値を所定の値よりも小さくして過負荷異常検出感度を高めるように構成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、利用者がドアに挟まれてから、ドアが反転して挟まれが解除されるまでの挟圧力を最小限とし容易かつ確実に利用者の保護を可能とすることを目的とするものとして、エレベータドアの速度とドア速度指令値との偏差に応じてトルク指令を設定し、エレベータのドア開閉時にドアを駆動するトルクが所定値を超えたときに前記ドアの開閉方向を反転させる機能を備えたエレベータのドア制御装置において、トルクが所定値を超えたときにドア駆動モータの駆動素子の駆動信号を遮断し、ドアの速度指令値を所定値以下とするように構成されたものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−286674号公報
【特許文献2】特開平09−290986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示された従来におけるエレベータドアの制御装置においては、トルク指令値からドア開閉中の過負荷を検出してドアを減速して停止させる場合に、モータ速度指令は減速指令中であって未だ0になっていないのに、ドアに挟まった異物等により実際のドア速度は0となってしまうことがある。
そして、この場合においては、ドアモータの速度指令に対して実際のドア速度が追従するようにトルク指令が出力され、すなわち、現在0となってしまっている実際のドア速度を未だ0とはなっていない速度指令に追従させるべく、ドアを再加速させるようトルク指令が出力されて挟まれた異物等に対してさらに挟もうとする余分な力を加えてしまうという課題があって、異物等に過大な力をかけてしまう可能性があるという課題がある(例えば図9を参照)。
【0006】
また、特許文献2に示された従来におけるエレベータドアの制御装置においては、異物等がドアに挟まれてドアを駆動するトルクが所定値を超えたドア駆動モータへの電力供給を遮断してドアを停止するようにした場合に、開閉動作中のドアが有する慣性力やエレベータドア装置自体が備える機械的戸開閉力等により、挟まれた異物等に対して、さらに挟もうとする余分な力が加わってしまうという課題がある。
【0007】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、エレベータドアの開閉動作中に過負荷を検出した場合においてエレベータドアを停止させるときに、ドアに挟まれた異物等に加わる過大な力を最小限に抑えることが可能であるエレベータドアの制御装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るエレベータドアの制御装置においては、速度指令に基づいてエレベータのドアの開閉動作を行うエレベータドアの制御装置であって、前記ドアの実際の開閉速度である実速度を検出するドア開閉速度検出手段と、前記ドアの開閉動作中において前記ドアにかかるドア負荷を検出するドア負荷検出手段と、前記ドア負荷検出手段により検出されたドア負荷が所定の過負荷閾値以上である場合に、前記ドアの開閉速度を減速して開閉動作を停止させるように速度指令を発生させる過負荷検出手段と、を備え、前記過負荷検出手段は、速度指令の示す速度が前記ドア開閉速度検出手段により検出される実速度よりも大きい場合に、この実速度と等しい速度の速度指令を発生させる構成とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係るエレベータドアの制御装置においては、エレベータドアの開閉動作中に過負荷を検出した場合においてエレベータドアを停止させるときに、ドアに挟まれた異物等に加わる過大な力を最小限に抑えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエレベータドア装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るエレベータドアの制御装置を示す機能ブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るエレベータドアの制御装置の動作を示すフロー図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るエレベータドアの制御装置の戸開閉動作中に過負荷を検出した場合における速度及びトルクの時間変化を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係るエレベータドアの制御装置の動作を示すフロー図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係るエレベータドアの制御装置の戸開閉動作中に過負荷を検出した場合における速度及びトルクの時間変化を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態3に係るエレベータドアの制御装置の動作を示すフロー図である。
【図8】この発明の実施の形態3に係るエレベータドアの制御装置の戸開閉動作中に過負荷を検出した場合における速度及びトルクの時間変化を示す図である。
【図9】従来のエレベータドアの制御装置の戸開閉動作中に過負荷を検出した場合における速度及びトルクの時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明を添付の図面に従い説明する。各図を通じて同符号は同一部分又は相当部分を示しており、その重複説明は適宜に簡略化又は省略する。
【0012】
実施の形態1.
図1から図4は、この発明の実施の形態1に係るもので、図1はエレベータドア装置を示す構成図、図2はエレベータドアの制御装置を示す機能ブロック図、図3はエレベータドアの制御装置の動作を示すフロー図、図4はエレベータドアの制御装置の戸開閉動作中に過負荷を検出した場合における速度及びトルクの時間変化を示す図である。
図において1はエレベータの乗りかご正面のかご出入口に設けられた左右一対のドアであり、この左右一対のドア1は、かご出入口に対して略水平方向開閉自在に設けられている。そして、これらのドア1の上端部には、ドアハンガーを介してガイドローラ2が回転可能に軸着されている。
【0013】
かご出入口の上方には桁が設けられており、この桁にはガイドレール3がドア1の開閉方向に沿ってすなわち略水平に取付けられている。このガイドレール3上にはガイドローラ2が転動可能に係合しており、こうして左右一対のドア1はドアハンガー及びガイドローラ2を介してガイドレール3により吊持されている。そして、このガイドローラ2がガイドレール3に案内されて転動することにより、左右のドア1がかご出入口を開閉する。
【0014】
桁の左右方向の一側には駆動プーリ4が、他側には従動プーリがそれぞれ回動自在に取付けられており、これら駆動プーリ4及び従動プーリには無端状の突出ベルト5が巻き掛けられている。
各ドア1のドアハンガーの上端には、連結具6がそれぞれ取付けられており、これらの連結具6のうち、左右一対のドア1の一方のドア1に設けられた連結具6が、突出ベルト5の上下の一側に係止されている。そして、他方のドア1に設けられた連結具6は、突出ベルト5の上下の他側に係止されている。
【0015】
このドア1の開閉動作は、桁のガイドレール3上方に配設されたモータ7より駆動され、このモータ7の回転駆動は駆動ベルト8を介して、駆動プーリ4と同軸で一体となって回転する減速プーリ9へと伝達されている。
このような構成により、モータ7の正逆両方向の回転駆動が、駆動プーリ4及び減速プーリ9により構成される減速機構を介して突出ベルト5の循環移動へと変換され、左右一対のドア1が互いに逆方向に移動してかご出入口が開閉される。
なお、以上については、エレベータドア装置として乗りかごに設けられたかごドアを代表的に示したが、エレベータ乗場の乗場ドア(図示せず)もこのかごドアと連動して開閉駆動される。
【0016】
この実施の形態に係るエレベータドアの制御装置は、図2に示すように構成されている。
すなわち、エレベータドアの制御装置は、ドア開閉制御手段及びドア負荷検出手段を含む制御マイコン10、この制御マイコン10の制御下においてモータ7を駆動するための制御回路が搭載される制御基板20、並びに、モータ7の回転速度に応じてパルス信号を出力するパルスエンコーダ30を備えている。ここで、パルスエンコーダ30はモータ7の回転速度すなわちドア1の実際の開閉速度を検出するドア開閉速度検出手段を構成している。
【0017】
制御マイコン10は、通常動作時のドア1への通常時速度指令V*を発生させる速度指令発生部11、速度指令V*に基づいて通常時トルク指令Tr*を生成する速度アンプ12、トルク指令Tr*を増幅する電流アンプ13、速度指令V*及びトルク指令Tr*に基づくPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)信号を生成するPWMユニット14及び外部との間で信号を入出力する入出力ポート15、並びに、開閉時のドア1にかかる負荷を検出しドア負荷Ldを生成するドア負荷検出部31(ドア負荷検出手段)及び過負荷検出時に過負荷時速度指令VLd*と過負荷時トルク指令TLd*とを生成する過負荷検出動作判断部32を備えている。
【0018】
そして、この制御マイコン10は、入出力ポート15を介して、ドア1の外部信号(例えばかご呼び登録信号や戸開閉ボタンの押下信号等)及びパルスエンコーダ30からの出力パルスを取り込み、ドア1の運転状況を管理するとともに、制御基板20を介してモータ7を制御してドア1の開閉動作制御を行う。
【0019】
制御基板20は、PWMユニット14からのPWM信号に基づいてゲート信号を生成するゲート信号発生装置21、三相交流の入力を受けて直流電流に変換する直流電源を構成するコンバータ22、ゲート信号発生装置21からのゲート信号に基づいて、コンバータ22からの直流電流を三相交流へと変換してモータ7へと供給するインバータ23、直流電源(コンバータ22からの直流電流)を安定化する平滑コンデンサ24、並びに、インバータ23からの三相交流(U相、V相、W相)のうちU相電流を検出するU相電流センサ25及びV相電流を検出するV相電流センサ26を備え、インバータ23からの出力電圧によりドア駆動用の三相(U相、V相、W相)のモータ7を駆動する。
ここで、コンバータ22及びインバータ23は、ゲート信号発生装置21からのゲート信号に基づいてモータ7を駆動するためのパワー回路を構成している。
【0020】
U相電流センサ25により検出されたU相電流信号iu及びV相電流センサ26により検出されたV相電流信号ivは、入出力ポート15を介して制御マイコン10内の電流アンプ13及びドア負荷検出部31に入力される。また、パルスエンコーダ30により検出されたモータ7の回転信号(パルス信号すなわちドア開閉速度V)は、入出力ポート15を介して、制御マイコン10内の速度アンプ12及びドア負荷検出部31に入力される。
そして、制御マイコン10内において、ドア負荷検出部31は、入出力ポート15を介して入力されるU相電流信号iu及びV相電流信号ivと、パルスエンコーダ30からのパルス信号(すなわちドア開閉速度V)とに基づいて、ドア1の開閉動作中においてドア1にかかるドア負荷Ldの検出を行う。なお、入出力ポート15を介しては、図示しない外部のセンサ情報についても、制御マイコン10へと入力され、ドア1の管理や制御に用いられる。
【0021】
ドア負荷検出部31により検出されたドア負荷Ldは、過負荷検出動作判断部32へと入力される。過負荷検出動作判断部32は、ドア負荷検出部31からのドア負荷Ldが所定の過負荷閾値以上であって過負荷であると判断した場合、過負荷時速度指令VLd*を速度アンプ12へと出力するとともに、過負荷時トルク指令TLd*を電流アンプ13へと出力する。
速度アンプ12は、過負荷検出動作判断部32からの過負荷時速度指令VLd*が入力された場合、速度指令発生部11から入力される通常時速度指令V*ではなく、過負荷検出動作判断部32から入力される過負荷時速度指令VLd*に基づいて、トルク指令Tr*を生成して出力する。また、電流アンプ13は、過負荷検出動作判断部32から過負荷時トルク指令TLd*が入力された場合、速度アンプ12から入力されるトルク指令Tr*ではなく、過負荷検出動作判断部32から入力される過負荷時トルク指令TLd*に基づいて、PWM信号を生成して出力する。
【0022】
この制御マイコン10の、速度指令発生部11、速度アンプ12、電流アンプ13及びPWMユニット14は、ドア開閉制御手段を構成しており、ドア1の戸開閉動作中の開閉速度Vを制御する。
すなわち、PWMユニット14は、制御基板20内のゲート信号発生装置21にPWM信号を送出し、ゲート信号発生装置21を介してインバータ23をPWM駆動することにより、モータ7の回転駆動を制御してドア1の戸開閉動作中の開閉速度Vを制御する。
【0023】
また、ドア開閉制御手段は、ドア負荷検出部31及び過負荷検出動作判断部32から構成される過負荷検出手段によりドア負荷Ldが所定の過負荷閾値以上の過負荷を示す場合に、ドア1の動作を停止(又は反転)させるように制御する。
なお、過負荷検出手段(ドア負荷検出部31)としては、例えば特開平07−097167号公報に記載されている負荷検出方法等の公知の技術を利用して、モータ7に設けられたトルクリミッタ(図示せず)を用いてもよい。
【0024】
この実施の形態にあっては、エレベータドアの制御装置は、図3に示す一連のフローに従って動作する。
すなわち、まず、ステップS11において、制御マイコン10のドア開閉制御手段は、速度指令発生部11からの通常時速度指令V*及び速度アンプ12からの通常時トルク指令Tr*に基づいて、通常時におけるドア1の開閉動作を開始する。
次に、ステップS12において、制御マイコン10の過負荷検出手段の過負荷検出動作判断部32は、ドア負荷検出部31により検出したドア負荷Ldが所定の過負荷閾値以上であるか否かについて判断を行う。この判断において、ドア負荷Ldが所定の過負荷閾値以上ではない、すなわち、ドア負荷Ldは過負荷でないと判断された場合には、ステップS11へと戻り、通常時におけるドア1の開閉動作が継続される。
【0025】
一方、ステップS12の判断において、ドア負荷Ldが所定の過負荷閾値以上である、すなわち、ドア負荷Ldは過負荷状態であると判断された場合には、ステップS13へと進み、過負荷検出動作判断部32は、ドア1を滑らかに停止させるべく現在の戸開閉速度から速度0へと減速させるように過負荷時速度指令VLd*を生成し、この過負荷時速度指令VLd*に基づいてドア1の戸開閉動作制御がなされる。
そして、ステップS14において、過負荷検出手段は、ドア1の開閉速度V(すなわちモータ7の実回転速度)が0であるか否かについて判断を行う。この判断において、ドア1の開閉速度V(モータ7の実速度)が0でないと判断された場合には、ステップS13へと戻り、戸開閉速度を速度0へと減速させドア1を滑らかに停止させる戸開閉動作制御が継続される。
【0026】
一方、ステップS14の判断において、ドア1の開閉速度V(モータ7の実速度)が0であると判断された場合には、ドア1に挟まれた異物等の影響によりドア1が強制的に停止された状態であると判断し、ステップS15へと移行して過負荷検出動作判断部32は過負荷時速度指令VLd*を速度0に設定して出力し、即座にドア1の開閉動作を停止させる制御を行う。
この実施の形態における戸開閉動作中に過負荷を検出した場合における速度及びトルクの時間変化は図4に示されている。ここに示されるように、過負荷検出時においてドア1が停止するまでにかかる力は図の斜線部により表され、図9の従来例の場合と比較して小さくなる。
【0027】
以上のように構成されたエレベータドアの制御装置は、速度指令に基づいてエレベータのドアの開閉動作を行うエレベータドアの制御装置であって、ドアの実際の開閉速度である実速度を検出するドア開閉速度検出手段と、ドアの開閉動作中においてドアにかかるドア負荷を検出するドア負荷検出手段と、ドア負荷検出手段により検出されたドア負荷が所定の過負荷閾値以上である場合に、ドアの開閉速度を減速して開閉動作を停止させるように速度指令を発生させる過負荷検出手段と、を備え、過負荷検出手段は、速度指令の示す速度がドア開閉速度検出手段により検出される実速度よりも大きい場合に、この実速度と等しい速度の速度指令を発生させる、特に、速度指令の示す速度が0となる前にドア開閉速度検出手段により検出される実速度が0となった場合に、速度0の速度指令を発生させるものである。
このため、エレベータドアの開閉動作中に過負荷を検出した場合においてエレベータドアを停止させるときに、ドアに挟まれた異物等に加わる過大な力を最小限に抑えることができる。
【0028】
実施の形態2.
図5及び図6は、この発明の実施の形態2に係るもので、図5はエレベータドアの制御装置の動作を示すフロー図、図6はエレベータドアの制御装置の戸開閉動作中に過負荷を検出した場合における速度及びトルクの時間変化を示す図である。
前述した実施の形態1は、過負荷検出時の戸開閉動作減速の際に、戸開閉の実速度に基づいて実速度が0であることが検出された場合には即座に戸開閉速度を0にするように速度指令を制御するものであったが、ここで説明する実施の形態2は、過負荷検出時の戸開閉動作減速の際の速度指令が戸開閉の実速度より大きい場合に速度指令を実速度と等しくする(速度指令を戸開閉実速度で置き換える)ようにするものである。
【0029】
すなわち、この実施の形態にあっては、エレベータドアの制御装置は、図5に示す一連のフローに従って動作し、装置の構成について前述した実施の形態1と同様である。また、この図5において、前述した実施の形態1の図3と同様の処理については同一符号を付し、その詳細説明については省略してもっぱら差異点について説明する。
この図5においてまず、ステップS11からステップS13については図3と同様であり、通常時におけるドア1の開閉動作を行い、ドア負荷Ldが所定の過負荷閾値以上であって過負荷状態である場合には、ドア1を滑らかに停止させるべく現在の戸開閉速度から速度0へと減速させるように過負荷時速度指令VLd*が生成される。
【0030】
そして、ステップS13の後、ステップS16において、過負荷検出手段は、過負荷検出動作判断部32が生成する速度指令VLd*が0、かつ、ドア1の開閉速度V(すなわちモータ7の実回転速度)が0である、すなわち、ドア1の停止動作が完了しているか否かについて判断を行う。この判断において、過負荷検出動作判断部32が生成する速度指令VLd*が0、かつ、ドア1の開閉速度V(すなわちモータ7の実回転速度)が0であって、すなわち、ドア1の停止動作が完了していると判断された場合には、一連の動作フローは終了する。
【0031】
一方、ステップS16の判断において、過負荷検出動作判断部32が生成する速度指令VLd*が0、かつ、ドア1の開閉速度V(すなわちモータ7の実回転速度)が0でない、すなわち、ドア1の停止動作が完了していないと判断された場合には、ステップS17へと移行する。
このステップS17においては、過負荷検出手段は、過負荷検出動作判断部32が生成する速度指令VLd*が、ドア1の開閉速度V(すなわちモータ7の実回転速度)より大きいか否かについて判断を行う。この判断において、過負荷検出動作判断部32が生成する速度指令VLd*がドア1の開閉速度Vより大きくない(VLd*がV以下である)と判断された場合には、ステップ13へと戻りドア1の開閉速度を速度0へと減速させる制御が継続される。
【0032】
一方ステップS17の判断において、過負荷検出動作判断部32が生成する速度指令VLd*がドア1の開閉速度Vより大きいと判断された場合には、ステップS18へと移り、過負荷検出手段の過負荷検出動作判断部32は、生成する速度指令VLd*を現時点でのドア1の開閉速度Vに置き換える、すなわち、速度指令VLd*が現時点の開閉速度と等しくなるように設定する。そして、ステップS13へと戻り、このステップS18により設定された速度指令VLd*に基づいて、ステップ13へと戻りドア1の開閉速度を速度0へと減速させる制御を行う。
以後、以上のステップS13、S16〜S18の処理を繰り返し、ドア1の停止動作が完了する(S16でYESとなる)と一連の動作フローは終了する。
【0033】
この実施の形態における戸開閉動作中に過負荷を検出した場合における速度及びトルクの時間変化は図6に示されている。ここに示されるように、過負荷検出時においてドア1が停止するまでにかかる力は図の斜線部により表され、図9の従来例の場合と比較して小さくなる。
なお、ステップS18において、ここでは、速度指令VLd*を現時点の開閉速度と等しくなるように設定したが、現時点に限らず、所定の時間差(ディレイ時間)をもって戸開閉速度と等しくなるようにしてもよい。また、戸開閉の実速度に等しくせずに、戸開閉の実速度に対して所定の量だけ異なる値に速度指令を設定するようにしてもよい。
【0034】
以上のように構成されたエレベータドアの制御装置は、速度指令に基づいてエレベータのドアの開閉動作を行うエレベータドアの制御装置であって、ドアの実際の開閉速度である実速度を検出するドア開閉速度検出手段と、ドアの開閉動作中においてドアにかかるドア負荷を検出するドア負荷検出手段と、ドア負荷検出手段により検出されたドア負荷が所定の過負荷閾値以上である場合に、ドアの開閉速度を減速して開閉動作を停止させるように速度指令を発生させる過負荷検出手段と、を備え、過負荷検出手段は、速度指令の示す速度がドア開閉速度検出手段により検出される実速度よりも大きい場合に、この実速度と等しい速度の速度指令を発生させるものである。
従って、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0035】
実施の形態3.
図7及び図8は、この発明の実施の形態3に係るもので、図7はエレベータドアの制御装置の動作を示すフロー図、図8はエレベータドアの制御装置の戸開閉動作中に過負荷を検出した場合における速度及びトルクの時間変化を示す図である。
ここで説明する実施の形態3は、前述した実施の形態1及び実施の形態2の動作を組合わせたものである。そして、さらに、これら2つの動作を組合わせたドア停止動作の後にドアを一定時間停止させた上で戸開閉動作の再開又は反転動作の開始をするようにしたものである。
【0036】
すなわち、この実施の形態にあっては、エレベータドアの制御装置は、図7に示す一連のフローに従って動作し、装置の構成について前述した実施の形態1又は実施の形態2と同様である。また、この図7において、前述した実施の形態1の図3及び実施の形態2の図5と同様の処理については同一符号を付し、その詳細説明については省略してもっぱら差異点について説明する。
この図7において、まず、ステップS11からステップS13については図3と同様であり、通常時におけるドア1の開閉動作を行い、ドア負荷Ldが所定の過負荷閾値以上であって過負荷状態である場合には、ドア1を滑らかに停止させるべく現在の戸開閉速度から速度0へと減速させるように過負荷時速度指令VLd*が生成される。
【0037】
そして、ステップS14において、過負荷検出手段は、ドア1の開閉速度V(すなわちモータ7の実回転速度)が0であるか否かについて判断を行い、ドア1の開閉速度V(モータ7の実速度)が0でないと判断された場合には、ステップS17へと移行する。
このステップS17及びステップS18においては、速度指令VLd*がドア1の開閉速度Vより大きい場合に速度指令VLd*を現時点でのドア1の開閉速度Vに置き換える、すなわち、速度指令VLd*が現時点の開閉速度と等しくなるように設定された上で、ステップS13へと戻る。
【0038】
一方、ステップS14の判断において、ドア1の開閉速度Vが0であると判断された場合には、ステップS15へと移行して過負荷検出動作判断部32は過負荷時速度指令VLd*を速度0に設定して出力し、即座にドア1の開閉動作を停止させる制御を行う。
そして、ステップS15の後ステップS19へと移行して、過負荷検出手段及びドア開閉制御手段は、ドア1を現在停止している位置において継続して停止するように一定トルク制御を行う。より詳しくは、ドア1には、その位置に応じて、モータ7の駆動力による開閉力とは別に当該エレベータドア装置が機械的に備える戸開閉方向の力が働いている。従って、この力に抗する、この力と同じ大きさで逆方向の力を、モータ7による駆動力によりドア1へと与えて釣り合わせるように一定トルク制御を行い、ドア1を現在停止している位置において継続して停止させる。
【0039】
続くステップS20においては、ステップS19で一定トルク制御を開始してから予め定めた一定時間が経過したか否かについて確認を行い、この確認において一定時間が経過したことが確認されるまで、ステップS19に戻って一定トルク制御が継続される。
そして、ステップS20の確認において一定時間が経過したことが確認された場合には、ステップS21へと進み、ドア1を、停止する前に動作していた方向と同方向に動作させ(再開)又は逆方向に動作させる(反転開始)。その後、ステップS11へと戻って通常時の戸開閉動作を行う。
【0040】
この実施の形態における戸開閉動作中に過負荷を検出した場合における速度及びトルクの時間変化は図8に示されている。ここに示されるように、過負荷検出時においてドア1が停止するまでにかかる力は図の斜線部により表され、図9の従来例の場合と比較して小さくなる。
なお、以上において、ドア1の位置に応じてドア1に働く、当該エレベータドア装置が機械的に備える戸開閉方向の力について、当該力を予め記憶する手段を設け、エレベータの各階床毎にドア1の位置に応じた当該力を学習させるようにしてもよい。この場合、ステップS19の一定トルク制御はこの記憶手段により学習された当該力の情報に基づいて行われる。
【0041】
以上のように構成されたエレベータドアの制御装置は、実施の形態1又は実施の形態2の構成において、ドアの位置に応じたエレベータドア装置が機械的に有する戸開閉方向の力を予め記憶する記憶手段をさらに備え、ドア負荷検出手段により検出されたドア負荷が所定の過負荷閾値以上である場合に、ドアの開閉動作を停止させた後、記憶手段が記憶する情報に基づいてドアの位置に応じたエレベータドア装置が機械的に有する戸開閉方向の力に釣り合う力をドアにかけるように制御し、ドアの開閉動作停止状態を一定時間継続させるようにしたものである。
このため、実施の形態1又は実施の形態2と同様の効果を奏することができるのに加えて、ドアの開閉動作停止状態を継続しているときにおいても、ドアに挟まれた異物等に加わる過大な力を最小限に抑えることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ドア
2 ガイドローラ
3 ガイドレール
4 駆動プーリ
5 突出ベルト
6 連結具
7 モータ
8 駆動ベルト
9 減速プーリ
10 制御マイコン
11 速度指令発生部
12 速度アンプ
13 電流アンプ
14 PWMユニット
15 入出力ポート
20 制御基板
21 ゲート信号発生装置
22 コンバータ
23 インバータ
24 平滑コンデンサ
25 U相電流センサ
26 V相電流センサ
30 パルスエンコーダ
31 ドア負荷検出部
32 過負荷検出動作判断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
速度指令に基づいてエレベータのドアの開閉動作を行うエレベータドアの制御装置であって、
前記ドアの実際の開閉速度である実速度を検出するドア開閉速度検出手段と、
前記ドアの開閉動作中において前記ドアにかかるドア負荷を検出するドア負荷検出手段と、
前記ドア負荷検出手段により検出されたドア負荷が所定の過負荷閾値以上である場合に、前記ドアの開閉速度を減速して開閉動作を停止させるように速度指令を発生させる過負荷検出手段と、を備え、
前記過負荷検出手段は、速度指令の示す速度が前記ドア開閉速度検出手段により検出される実速度よりも大きい場合に、この実速度と等しい速度の速度指令を発生させることを特徴とするエレベータドアの制御装置。
【請求項2】
前記過負荷検出手段は、速度指令の示す速度が0となる前に前記ドア開閉速度検出手段により検出される実速度が0となった場合に、速度0の速度指令を発生させることを特徴とする請求項1に記載のエレベータドアの制御装置。
【請求項3】
前記ドアの位置に応じたエレベータドア装置が機械的に有する戸開閉方向の力を予め記憶する記憶手段をさらに備え、
前記ドア負荷検出手段により検出されたドア負荷が所定の過負荷閾値以上である場合に、前記ドアの開閉動作を停止させた後、前記記憶手段が記憶する情報に基づいて前記ドアの位置に応じたエレベータドア装置が機械的に有する戸開閉方向の力に釣り合う力を前記ドアにかけるように制御し、前記ドアの開閉動作停止状態を一定時間継続させることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のエレベータドアの制御装置。
【請求項4】
前記ドア負荷検出手段により検出されたドア負荷が所定の過負荷閾値以上である場合に、前記ドアの開閉動作を停止させた後、前記記憶手段が記憶する情報に基づいて前記ドアの位置に応じたエレベータドア装置が機械的に有する戸開閉方向の力に釣り合う力を前記ドアにかけるように制御し、前記ドアの開閉動作を停止させ即座に前記ドアの開閉動作を再開又は前記ドアを反転させることを特徴とする請求項3に記載のエレベータドアの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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