説明

エレベーター式のメダル送出装置

【課題】薄肉なメダルでもメダル通路の弯曲部分へ目詰まりせず、円滑に進行できるようにする。
【解決手段】鈍角(β)に弯曲したメダル通路(P1)のフロントプレート(F2)が、1枚のバネ性金属板から成り、その上下両端部から切り込まれた割り溝(42)を介して、メダル通路(P1)の開口幅(W1)よりも狭いセンター押圧帯(F2−a)とその左右両サイド取付帯(F2−b)とが並列する形態に区分すると共に、上記両サイド取付帯(F2−b)を左右一対のネジ締結具(13)によって、メダル通路(P1)の左右両サイドスペーサー(11)へ表側から押え付け固定する一方、上記センター押圧帯(F2−a)の上下両端部をメダル(C)の表面へ弾力的に軽く接触させるように設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遊技機や両替機、メダル貸出し機などの各種本機に内蔵設置されて、メダルをほぼ垂直方向へ押し上げるエレベーター式又はリフト式のメダル送出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
後上がりの傾斜設置状態にある穴明き回転ディスクによって、ホッパータンクから取り込んだメダルを斜め上方へ1枚づつ送り出し、その送出口に接続されたメダル通路の鈍角な弯曲部分を経て、ほぼ垂直方向へメダルを押し上げるエレベーター式メダル送出装置の場合、そのメダル通路の弯曲部分にメダルが目詰まりしやすく、使用されるメダルの厚み変化に対応し難い問題がある。
【0003】
このような問題の解決策としては、特開平4−174096号と特開2006−343811号との2種が代表的であり、本発明に最も近似するものと考えられる。
【特許文献1】特開平4−174096号公報
【特許文献2】特開2006−343811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前者の特開平4−174096号発明では、コイン通路(10)の弯曲部(6c)から前側板(7)を無くすと共に、その前側板(7)の代りになる3対づつのテーパーローラー(12)とスプリング(17)とを設置しなければならないため、その部品点数が多いこととも相俟って、甚だ煩らわしく、製造上のコスト高を招来する。
【0005】
他方、後者の特開2006−343811号発明では、1枚の押え部材(板バネ)(18)をベース板(12)の弯曲部(12A)へ、ネジ(24)によって取り付け固定すれば足りるため、量産性に優れると言えるが、その押え部材(18)は左ガイド板(14)と右ガイド板(16)との表面へ押し付けられており、メダル(コイン)(C)がその左右ガイド板(14)(16)の表面から突出しない限り、これを押し付けないため、そのメダル(C)の厚みが薄い場合には、先行する上位のメダル(C)へ後行する下位のメダル(C)が潜り込む如く、上記弯曲部(12A)での目詰まり現象を生じることは必至であり、未だメダル(C)の厚み変化に対する対応性(汎用性)に劣る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような課題の改良を目的としており、その目的を達成するために、請求項1ではフロントプレートとバックプレート並びにその相互間に介在する左右一対のサイドスペーサーとから区画された断面ほぼ長方形のメダル通路が、メダルを押し進める上下方向に沿い一定の鈍角に弯曲したエレベーター式のメダル送出装置において、
【0007】
上記フロントプレートが1枚のバネ性を有する金属板から成り、その下端部と上端部から互いに等しい一定深さだけほぼ平行に切り込まれた左右一対づつの割り溝を介して、メダル通路の開口幅よりも狭い一定幅のセンター押圧帯とその両隣り位置に左右一対のサイド取付帯とが並列する形態に区分し、
【0008】
上記フロントプレートの左右両サイド取付帯を一対のネジ締結具によって、メダル通路の左右両サイドスペーサーへ表側から押え付け固定すると共に、上記センター押圧帯の下端部と上端部をメダルの表面へ弾力的に接触させることを特徴とする。
【0009】
又、請求項2ではフロントプレートのセンター押圧帯をメダル通路の鈍角よりも予じめ大きな曲率半径の円弧状に弯曲形成して、
【0010】
同じくフロントプレートの予じめフラットな状態にある左右両サイド取付帯を、メダル通路の左右両サイドスペーサーへ表側から強制的な弯曲状態に押え付け固定した時、
【0011】
上記センター押圧帯の下端部と上端部が自づとメダルの表面へ弾力的に軽く接触することとなるように関係設定したことを特徴とする。
【0012】
請求項3ではメダル通路の上流側となるセンター押圧帯の下端部のみか、又はその下端部と上端部をメダルへの接触片として、表向き円弧状に曲げ起したことを特徴とする。
【0013】
請求項4ではフロントプレートにおける一定幅の左右両サイド取付帯を、その下端部と上端部から互いに等しい一定深さだけ浅く付与された左右一対づつの切欠により、各々狭幅なインサイド部とアウトサイド部に区分して、
【0014】
その左右両サイド取付帯のインサイド部をメダル誘導カバー片として、メダル通路へ表側から被覆させる一方、
【0015】
同じく左右両サイド取付帯の残るアウトサイド部をメダル通路の鈍角に弯曲する曲率半径の中心線上において、一対のネジ締結具によりメダル通路の左右両サイドスペーサーとバックプレートへ取り付け固定したことを特徴とする。
【0016】
請求項5ではメダル通路の上流側となるメダル誘導カバー片の下端部のみか、又はその下端部と上端部をメダルの逃し片部として、表向き円弧状に曲げ起したことを特徴とする。
【0017】
請求項6では左右両サイド取付帯におけるアウトサイド部の下端部と上端部を一対の接地座として、表向きのほぼV字形に折り曲げると共に、
【0018】
その両接地座の尖鋭な稜線をメダル通路の左右両サイドスペーサーへ表側から接地させることにより、上記左右両サイド取付帯を左右両サイドスペーサーの表面から一定高さだけ浮上する状態に保ったことを特徴とする。
【0019】
更に、請求項7ではネジ締結具を、メダル通路におけるバックプレートのネジ孔から左右両サイドスペーサーの水平方向に沿う細長いビス逃し入れ用バカ孔を通じて表向きに突出された固定ビスと、これに表側から所要数のワッシャ又はシムを介して螺合締結されるナットとから形作ったことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の上記構成によれば、鈍角に弯曲したメダル通路を区画するフロントプレートが、1枚のバネ性を発揮する金属板から成り、その左右一対のサイド取付帯をメダル通路の左右両サイドスペーサーへ、一対のネジ締結具により表側から押え付け固定して、そのメダル通路の開口幅よりも狭いセンター押圧帯の下端部と上端部を、メダルの表面へ弾力的に接触させるようになっているため、使用されるメダルの厚みが厚い場合には勿論のこと、特に薄い場合でもメダル通路の弯曲部分を円滑に進行させることができ、その弯曲部分での潜り込む如き目詰まり現象を生じるおそれはない。
【0021】
特に、請求項2の構成を採用するならば、上記フロントプレートのセンター押圧帯が予じめメダル通路の鈍角よりも大きな曲率半径の円弧状に弯曲形成されているため、残るフラットな状態にある左右両サイド取付帯をメダル通路の左右両サイドスペーサーへ押え付け固定して、強制的に弯曲させた使用状態のもとで、上記センター押圧帯の下端部と上端部がメダルの表面へ、強く接触し過ぎるおそれを防止できるのである。
【0022】
請求項3の構成を採用するならば、メダル通路の少なくとも上流側となるセンター押圧帯の下端部が、そのメダル通路のバックプレート(底面)から遠ざかる表向きの円弧状に曲げ起された接触片として、メダルの表面と軽く接触するようになっているため、そのメダをルメダル通路の弯曲部分へ円滑に導入させ得る効果がある。
【0023】
又、請求項4の構成を採用するならば、上記フロントプレートの左右両サイド取付帯を狭幅なインサイド部とアウトサイド部に区分して、そのセンター押圧帯と隣り合うインサイド部がメダル誘導カバー片として、メダル通路を表側から被覆しているため、そのメダル通路の弯曲部分を進行中にあるメダルの両肩部が、メダル誘導カバー片によって被覆されることとなり、万一振れ動く不安定な姿勢を矯正することができる。
【0024】
その場合、請求項5の構成を採用するならば、メダル通路の少なくとも上流側となるメダル誘導カバー片の下端部が、そのメダル通路のバックプレート(底面)から遠ざかる表向きの円弧状に曲げ起されたメダル逃し片部として、メダルと接触しないように確保されているため、そのメダルをメダル通路の弯曲部分へやはり円滑に導入させることができ、万一にも衝当事故を生じるおそれはない。
【0025】
請求項6の構成を採用するならば、上記左右両サイド取付帯におけるアウトサイド部の下端部と上端部から、一対の接地座を表向きのほぼV字形に折り曲げて、その両接地座の尖鋭な稜線をメダル通路の左右両サイドスペーサーへ表側から接地させることにより、上記左右両サイド取付帯をそのインサイド部のメダル誘導カバー片も含む全体として、上記左右両サイドスペーサーの表面から一定高さだけ浮上する状態に保っているため、メダルの厚み変化に拘らず、そのメダルをメダル通路の弯曲部分に沿って常時円滑に進行させることができ、決して目詰まり現象を生じるおそれはない。
【0026】
更に、請求項7の構成を採用するならば、ネジ締結具の固定ビスがメダル通路におけるバックプレートのネジ孔へ螺合された抜け止め状態にあり、上記フロントプレートにおける左右両サイド取付帯の弯曲率を調整する所要枚数のワッシャ又はシムが、その固定ビスの表向き(上向き)に突出する先端部から差し込まれるようになっているため、そのワッシャ又はシムはナットを取りはずすも、固定ビスから抜け落ちてしまうおそれがなく、メダル通路のバックプレートと左右両サイドスペーサーに対するフロントプレートの取付作業や、その曲率半径の調整作業などをすばやく軽快に行なえる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面に基いて本発明の具体的構成を詳述すると、図1、2はそのエレベーター式又はリフト式メダル送出装置の概略全体を示しており、(M)は一定な鋭角(α)(例えば約40度)の後上がり傾斜天板(1)を有する金属製の据付け台であって、その傾斜天板(1)のフラットな表面にはメダル収納用の合成樹脂製ホッパータンク(2)が、係脱自在に係止されている一方、同じく傾斜天板(1)の裏面には穴明き回転ディスク用の駆動モーター(3)が固定設置されている。
【0028】
駆動モーター(3)の出力軸(4)は上記据付け台(M)の傾斜天板(1)を貫通しており、これに表側(上側)から嵌め付け一体化されたメダル送出用の穴明き回転ディスク(R)が、上記ホッパータンク(2)の対応的な円形の開口底面に臨むこととなる。(5)は上記据付け台(M)の傾斜天板(1)から表向きに突出する複数のホッパータンク用係止ピンであり、図外の圧縮コイルバネにより常時押し上げ付勢されている。
【0029】
穴明き回転ディスク(R)は金属製品又はこれと同等の高強度な合成樹脂製品として、放射対称型に開口分布する複数のメダル取り込み穴(6)と、その取り込み穴(6)同士の隣り合う相互間から裏向き一体的に突出する複数の円弧弯曲羽根(7)とを備えており、上記ホッパータンク(2)からメダル取り込み穴(6)へ取り込んだメダル(C)を、その円弧弯曲羽根(7)によって図3の矢印(A)で示す方向へ押し進め、上記据付け台(M)の傾斜天板(1)から連続的な後上がりの張り出し状態にあるメダル送出シュート(S)へ、1枚づつ順次送り出し作用する。
【0030】
茲に、メダル送出シュート(S)は図3〜10に拡大して示す如く、上記据付け台(M)の傾斜天板(1)へ延長状態に突き合わせ一体化されたバックプレート(8)と、その傾斜天板(1)とバックプレート(8)との双方へ、各々固定ビス(9)(10)を介して取り付けられた左右一対のサイドスペーサー(11)と、その左右両サイドスペーサー(11)へ各々別個な固定ビス(12)やネジ締結具(13)を介して、施蓋状態に被着された第1、2フロントプレート(F1)(F2)とから成り、その組み立て内部に断面ほぼ長方形のメダル通路(P1)を区画している。
【0031】
しかも、そのメダル通路(P1)の上流側を形作るメダル送出シュート(S)の約下半部は、上記据付け台(M)の傾斜天板(1)と同じ鋭角(α)(先に例示した約40度)のフラットな後上がり傾斜状態にある。(14)は上記メダル通路(P1)の入口部へメダル(C)を誘導するためのメダル変向ガイドピン、(15)(16)は同じくメダル(C)を誘導するためのメダル送出ガイドローラーとセパレートローラーであり、メダル通路(P1)の入口部を左右方向から挟む位置関係に臨んでいる。
【0032】
そして、上記メダル通路(P1)を表側(上側)から施蓋する第1フロントプレート(F1)の下端中央部が、左右一対の割り溝(17)により区分された円弧状のメダル逆流防止片(18)として、上記穴明き回転ディスク(R)によりメダル通路(P1)の入口部へ送出されてきたメダル(C)を、その凸曲面により弾力的に押え付け保持し得るようになっている。(19)は同じく第1フロントプレート(F1)の上端中央部に区分されたメダルカバー片であり、メダル(C)を表側から部分的に被覆する。
【0033】
他方、上記メダル通路(P1)の下流側を形作るメダル送出シュート(S)の約上半部は、上記据付け台(M)の傾斜天板(1)から一定な鈍角(β)(例えば約130度)の円弧状に弯曲形成されており、そのメダル通路(P1)の出口部がほぼ垂直の真上方向を目指している。
【0034】
つまり、メダル送出シュート(S)のメダル通路(P1)を区画するバックプレート(8)と左右両サイドスペーサー(11)並びに第2フロントプレート(F2)が、何れも図5〜9から明白なように、上記鈍角(β)を保つ滑らかな円弧状の弯曲形態に組み立てられているのである。そのメダル通路(P1)の弯曲部分を対象の一例とする本発明の具体的な構成については、追って詳しく説明する。
【0035】
何れにしても、上記メダル送出シュート(S)の固定ビス(9)(10)(12)は第1フロントプレート(F1)から、左右両サイドスペーサー(11)の水平方向に沿う細長いビス逃し入れ用バカ孔(20)を通じて、バックプレート(8)のネジ孔(21)へ各々螺合締結されており、そのビス逃し入れ用バカ孔(20)によってメダル通路(P1)の開口幅(W1)を、使用するメダル(C)のサイズ(直径)に応じて広く又は狭く調整することができるようになっている。上記左右両サイドスペーサー(11)の板厚を調整することにより、そのメダル(C)の厚み変化に対応させることも可能である。
【0036】
更に、(E)は上記メダル送出シュート(S)におけるメダル通路(P1)の出口部(上端部)へ、別個なメダルカバープレート(22)と接続金具(23)を介して、継ぎ足し状態に連通接続されたほぼ垂直のメダルエレベーターであり、上記穴明き回転ディスク(R)によって押し進め送出されてきたメダル(C)を、そのメダル送出シュート(S)のメダル通路(P1)から引き続き上方へ案内して、そのメダルエレベーター(E)の上端部(出口部)をなす送出メダル検知ユニット(U)から、遊技機や両替機、メダル貸出し機、その他の各種本機の外部へ投げ出すようになっている。
【0037】
メダルエレベーター(E)も図14〜16のように、バックプレート(24)とフロントプレート(25)並びにその相互間に介在する左右一対のサイドスペーサー(26)とから成り、これらが固定ビス(27)により組み立てられて、上記メダル送出シュート(S)側のメダル通路(P1)と対応合致し得る断面ほぼ長方形のメダル通路(P2)を区画している。
【0038】
その場合、上記メダルエレベーター(E)の固定ビス(27)はフロントプレート(25)から、左右両サイドスペーサー(26)の水平方向に沿う細長いビス逃し入れ用バカ孔(28)を通じて、バックプレート(24)のネジ孔(29)へ各々螺合締結されるようになっており、そのメダル通路(P2)の開口幅(W2)をやはりメダル(C)のサイズ(直径)に応じて、広く又は狭く調整することができ、又左右両サイドスペーサー(26)の板厚を調整することにより、そのメダル(C)の厚み変化に対応させることも可能である。
【0039】
上記メダル送出シュート(S)とメダルエレベーター(E)との接続金具(23)は、図16、17のような平・底面視のチャンネル溝形鋼板として、その双方のバックプレート(8)(24)と密着する背後面に、上記メダル送出シュート(S)側の固定ビス(12)と螺合締結するネジ孔(30)のみならず、メダルエレベーター(E)側の固定ビス(27)と螺合締結するネジ孔(31)も開口分布されており、そのメダル送出シュート(S)側の固定ビス(12)によって上記メダルカバープレート(22)を取り付けている。
【0040】
(32)は上記メダルエレベーター(E)のバックプレート(24)又は/及びフロントプレート(25)に開口分布された左右一対づつのメダル透視窓であって、上下方向への細長い楕円形をなし、ここからメダル通路(P2)内のメダル(C)を透視することができるようになっている。
【0041】
更に、(33)は同じくメダルエレベーター(E)におけるフロントプレート(25)のネジ孔(29)へ螺合締結される長い固定ビス(27)の左右一対によって、メダルエレベーター(E)の下端部(入口部)付近へ取り付け一体化されたメダル逆流防止器であり、上記メダル送出シュート(S)側からほぼ垂直のメダルエレベーター(E)を取りはずし分離した保守・点検時において、そのメダルエレベーター(E)のメダル通路(P2)からメダル(C)が抜け落ちてしまうことを予防する。
【0042】
上記送出メダル検知ユニット(U)は図16、17と同じ構成の別個な接続金具(23)(図19、20参照)を介して、メダルエレベーター(E)におけるメダル通路(P2)の上端部(出口部)へ継ぎ足し状態に連通接続されるレール部(U1)と、そのレール部(U1)のメダル通路(P3)からメダル(C)を左方向又は右方向へ投げ出す投出部(U2)と、その投出過程にあるメダル(C)を検知し、カウントする検知部(透過型又は反射型のフォトセンサー)(U3)とから図18や図21〜23のように組み立てユニット化されている。
【0043】
そして、送出メダル検知ユニット(U)のレール部(U1)がバックプレート(34)とフロントプレート(35)、その相互間に介在する長短差のある左右両サイドスペーサー(36)(37)並びにその左右何れか片サイドスペーサー(36)(37)の言わば上端延長状態に配置される別個なほぼ円弧状のメダル変向誘導片(38)とから成り、これらがやはり左右一対づつの固定ビス(39)により組み立てられて、上記メダルエレベーター(E)側のメダル通路(P2)と対応合致し得る断面ほぼ長方形のメダル通路(P3)を区画している。
【0044】
(40)は上記レール部(U1)の左右両サイドスペーサー(36)(37)とメダル変向誘導片(38)並びにバックプレート(34)に各々開口分布されたビス逃し入れ用バカ孔であり、その何れも水平方向への細長い楕円形をなすことによって、メダル通路(P3)の開口幅(W3)をやはりメダル(C)のサイズ(直径)に応じて、図18の(イロ)(ハ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)に示す如く、広く又は狭く調整することができる。(41)は上記固定ビス(39)と螺合締結されるバックプレート(34)のネジ孔である。尚、両サイドスペーサー(36)(37)とメダル変向誘導片(38)の板厚を調整することにより、そのメダル(C)の厚み変化に対応させることも可能である。
【0045】
先に一言したメダル送出シュート(S)のメダル通路(P1)を区画するバックプレート(8)と左右両サイドスペーサー(11)が、比較的厚肉(例えば約1.2〜約2.5mm)の剛性なステンレス鋼板などの金属板から、滑らかな上記鈍角(β)(先に例示した約130度)に弯曲形成されているに比して、同じく第2フロントプレート(F2)だけは極めて薄肉(例えば約0.2〜約0.5mm)なバネ性を有するステンレス鋼板やその他の金属板から、図10〜13のような輪郭形状にプレス加工されている。
【0046】
即ち、第2フロントプレート(F2)は上下方向(メダルの進行方向)に沿って延在するほぼ長方形(例えば約45mm×約60mm)をなしているが、その下端部(上流側)と上端部(下流側)から各々互いに等しい一定深さだけほぼ平行に切り込まれた割り溝(42)の左右一対づつによって、センター押圧帯(F2−a)とその両隣り位置に並ぶ左右一対のサイド取付帯(F2−b)との合計3列に区分されている。
【0047】
その場合、第2フロントプレート(F2)のセンター押圧帯(F2−a)は上記メダル通路(P1)の開口幅(W1)(例えば約25mm)よりも必らず狭い一定幅(X)(例えば約14mm)と、左右両サイド取付帯(F2−b)よりも若干長い一定長さ(L)(好ましくはメダルの3枚分に相当する約60mm)とを備えており、しかも上記メダル通路(P1)の鈍角(β)より大きな曲率半径の円弧形態として、予じめ弯曲されているのである。
【0048】
(43)はそのセンター押圧帯(F2−a)の下端部と上端部から各々表向き円弧状に曲げ起された接触片の一対であり、図6、8のようにメダル(C)の表面と弾力的に軽く接触し得るようになっている。但し、メダル通路(P1)の下流側となる上端部の接触片(43)は、その表向き円弧状の曲げ起しを省略してもさしつかえない。尚、図例のメダル(C)は約24.3mmの直径と約1.7mmの厚みを有している。
【0049】
他方、同じく第2フロントプレート(F2)の左右両サイド取付帯(F2−b)はメダル通路(P1)を区画する左右両サイドスペーサー(11)への取付け用として、図10〜13のような上記センター押圧帯(F2−a)と異なる予じめのフラットな状態にあり、しかもその左右一対の互いに等しい一定帯幅(X)(例えば約14mm)を有するが、その下端部と上端部から各々互いに等しい一定深さだけ浅く付与された切欠(44)の左右一対づつにより、その左右両サイド取付帯(F2−b)の狭幅なインサイド部がメダル誘導カバー片(45)として、上記メダル通路(P1)を表側から被覆すると共に、残る狭幅なアウトサイド部をメダル通路(P1)のバックプレート(8)と左右両サイドスペーサー(11)へ取り付け固定し得るように、区分されている。
【0050】
その場合、左右両サイド取付帯(F2−b)におけるアウトサイド部の下端部と上端部は、各々表向きのほぼV字形に折り曲げられた接地座(46)の一対として、その尖鋭な稜線が上記左右両サイドスペーサー(11)の表面へ接地することにより、左右両サイド取付帯(F2−b)をそのインサイド部のメダル誘導カバー片(45)も含む全体として、図5、7、8に示すように左右両サイドスペーサー(11)の表面から一定高さ(H)だけ安定良く浮上する状態に保っている。
【0051】
(47)は上記メダル誘導カバー片(45)の下端部と上端部から各々表向き円弧状に曲げ起されたメダル逃し片部の一対であり、ここも図6、8のように上記一定高さ(H)の浮上状態に保たれている関係上、メダル(C)と接触するおそれはない。このようなメダル逃し片部(47)はメダル通路(P1)の上流側となるメダル誘導カバー片(45)の下端部だけから曲げ起すにとどめても良い。
【0052】
第2フロントプレート(F2)をメダル通路(P1)の左右両サイドスペーサー(11)とバックプレート(8)へ取り付けるための上記ネジ締結具(13)は図9、10のように、そのバックプレート(8)のネジ孔(48)へ抜け止め状態に螺合されてから、左右両サイドスペーサー(11)の水平方向に沿う細長いビス逃し入れ用バカ孔(49)を通じて表向きに突出された長い固定ビス(13a)と、これに表側(上側)から所要数のワッシャ又はシム(50)を介して、着脱自在に螺合締結されるナット(13b)とから成り、そのナット(13b)としては回動工具の不要な蝶ナットを採用することが好ましい。
【0053】
そのため、上記第2フロントプレート(F2)における左右両サイド取付帯(F2−b)のアウトサイド部に開口分布する一対の取付孔(51)を、上記メダル通路(P1)の鈍角(β)に弯曲する曲率半径の中心線(O−O)上に位置する固定ビス(13a)へ、表側(上側)から抜き差し自在に差し込みセットして、そのナット(13b)を締め付けることにより、上記左右両サイド取付帯(F2−b)を対応的な左右両サイドスペーサー(11)の表面へ、その強制的な弯曲状態に押え付け固定すれば、図3、6、8に示す如く、上記センター押圧帯(F2−a)における上下両端部の接触片(43)が自づとメダル通路(P1)に沈没して、そのメダル通路(P1)内のメダル(C)を弾力的に押え付けることになり、そのメダル(C)の目詰まり現象を生じるおそれはない。
【0054】
しかも、その場合センター押圧帯(F2−a)は図12、13のように、予じめメダル通路(P1)の鈍角(β)より大きな曲率半径の円弧状に弯曲形成されているため、その上下両端部の接触片(43)がメダル(C)を強く押え過ぎることはない。
【0055】
上記第2フロントプレート(F2)の左右両サイド取付帯(F2−b)を強制的に弯曲させる曲率半径は、その左右両サイド取付帯(F2−b)と左右両サイドスペーサー(11)との相互間に介挿セットするワッシャ又はシム(50)の使用枚数により、メダル(C)の厚み変化に応じて調整することができ、その調整した曲率半径の中心線(O−O)上では、上記センター押圧帯(F2−a)をメダル通路(P1)の左右両サイドスペーサー(11)から最も高く浮上させて、メダル(C)と接触しない状態に保つ。図6、9の符号(D)はその曲率半径の中心線(O−O)上でのセンター押圧帯(F2−a)と、メダル通路(P1)のバックプレート(8)との向かい合う最も広い間隙を示している。
【0056】
そして、上記メダル送出シュート(S)の約上半部を形作っているメダル通路(P1)の鈍角(β)な弯曲部分へ、順次押し進め送出されてきたメダル(C)は図6、9に示す如く、そのメダル通路(P1)の底面をなすバックプレート(8)から徐々に浮き上がり、曲率半径の中心線(O−O)上において最も高く浮上することになるとしても、上記第2フロントプレート(F2)のセンター押圧帯(F2−a)と接触するおそれはなく、その弯曲部分を円滑に進行することができる。
【0057】
しかも、上記曲率半径の中心線(O−O)上に位置するメダル(C)を中位メダル(C2)とみなして言えば、これに隣接する先行の上位メダル(C1)と後行の下位メダル(C3)とは、そのメダル通路(P1)における弯曲部分の終端位置(下流側)と始端位置(上流側)に存在し、上記センター押圧帯(F2−a)の上端部をなす接触片(43)と、同じく下端部をなす接触片(43)によって、図6、8のように各々弾力的に軽く押え付けられるようになっている。
【0058】
その結果、使用されるメダル(C)の厚みが厚い場合には勿論のこと、特に薄い場合でも、上記メダル通路(P1)の弯曲部分を進行中にある合計3枚のメダル(C1)(C2)(C3)が、その隣り合う一方の潜り込みによる他方の乗り上げという目詰まり現象を生じるおそれはなく、メダル(C)の厚み変化に対する広い対応性(汎用性)を得られる。
【0059】
更に、そのメダル通路(P1)の弯曲部分を進行中にあるメダル(C)の両肩部は、これと接触しない浮上状態に保たれた上記左右両サイド取付帯(F2−b)のメダル誘導カバー片(45)によって、表側(上側)から図8のように被覆されているため、メダル(C)がメダル通路(P1)を形作っている第2フロントプレート(F2)の上下両端部と万一にも衝当するおそれはなく、そのメダル通路(P1)に対するメダル(C)の円滑な導入・導出作用を営なませることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係るメダル送出装置の概略全体を示す正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1からホッパータンクとメダルエレベーターを取りはずした状態の拡大正面図である。
【図4】図1の部分拡大図である。
【図5】図4のメダル送出シュート部分を抽出して示す拡大図である。
【図6】図3の6−6線に沿う拡大断面図である。
【図7】図3の7−7線に沿う拡大断面図である。
【図8】図3の8−8線に沿う拡大断面図である。
【図9】図3の9−9線に沿う拡大断面図である。
【図10】メダル送出シュートと第2フロントプレートとの位置関係を示す分解斜面図である。
【図11】第2フロントプレートを抽出して示す正面図である。
【図12】図11の側面図である。
【図13】図11の13−13線に沿う拡大断面図である。
【図14】図1のメダルエレベーター部分を抽出して示す拡大正面図である。
【図15】図14の15−15線に沿う拡大断面図である。
【図16】図1の16−16線に沿う拡大断面図である。
【図17】図16の接続金具を抽出して示す斜面図である。
【図18】図1のメダル検知ユニット部分を抽出して示す拡大背面図である。
【図19】図1の19−19線に沿う拡大断面図である。
【図20】図19の接続金具を抽出して示す斜面図である。
【図21】メダル検知ユニットを抽出して示す分解斜面図である。
【図22】図21の組立過程を示す斜面図である。
【図23】図21の組立状態を示す斜面図である。
【符号の説明】
【0061】
(1)・傾斜天板
(2)・ホッパータンク
(3)・駆動モーター
(4)・出力軸
(5)・係止ピン
(6)・メダル取り込み穴
(7)・円弧弯曲羽根
(8)(24)(34)・バックプレート
(9)(10)(12)(27)(39)・固定ビス
(11)(26)(36)(37)・サイドスペーサー
(13)・ネジ締結具
(13a)・固定ビス
(13b)・蝶ナット
(14)・メダル変向ガイドピン
(15)・メダル送出ガイドローラー
(16)・セパレートローラー
(17)・割り溝
(18)・メダル逆流防止片
(19)・メダルカバー片
(20)(28)(40)(49)・ビス逃し入れ用バカ孔
(21)(29)(30)(31)(41)(48)・ネジ孔
(22)・メダルカバープレート
(23)・接続金具
(25)(35)・フロントプレート
(32)・メダル透視窓
(33)・メダル逆流防止器
(38)・メダル変向誘導片
(42)・割り溝
(43)・接触片
(44)・切欠
(45)・メダル誘導カバー片
(46)・接地座
(47)・メダル逃し片部
(50)・ワッシャ又はシム
(51)・取付孔
(A)・メダルの進行方向
(C)(C1)(C2)(C3)・メダル
(E)・メダルエレベーター
(F1)・第1フロントプレート
(F2)・第2フロントプレート
(F2−a)・センター押圧帯
(F2−b)・サイド取付帯
(M)・据付け台
(P1)(P2)(P3)・メダル通路
(R)・穴明き回転ディスク
(S)・メダル送出シュート
(U)・送出メダル検知ユニット
(U1)・レール部
(U2)・投出部
(U3)・検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントプレート(F2)とバックプレート(8)並びにその相互間に介在する左右一対のサイドスペーサー(11)とから区画された断面ほぼ長方形のメダル通路(P1)が、メダル(C)を押し進める上下方向に沿い一定の鈍角(β)に弯曲したエレベーター式のメダル送出装置において、
上記フロントプレート(F2)が1枚のバネ性を有する金属板から成り、その下端部と上端部から互いに等しい一定深さだけほぼ平行に切り込まれた左右一対づつの割り溝(42)を介して、メダル通路(P1)の開口幅(W1)よりも狭い一定幅(X)のセンター押圧帯(F2−a)とその両隣り位置に左右一対のサイド取付帯(F2−b)とが並列する形態に区分し、
上記フロントプレート(F2)の左右両サイド取付帯(F2−b)を一対のネジ締結具(13)によって、メダル通路(P1)の左右両サイドスペーサー(11)へ表側から押え付け固定すると共に、上記センター押圧帯(F2−a)の下端部と上端部をメダル(C)の表面へ弾力的に接触させることを特徴とするエレベーター式のメダル送出装置。
【請求項2】
フロントプレート(F2)のセンター押圧帯(F2−a)をメダル通路(P1)の鈍角(β)よりも予じめ大きな曲率半径の円弧状に弯曲形成して、
同じくフロントプレート(F2)の予じめフラットな状態にある左右両サイド取付帯(F2−b)を、メダル通路(P1)の左右両サイドスペーサー(11)へ表側から強制的な弯曲状態に押え付け固定した時、
上記センター押圧帯(F2−a)の下端部と上端部が自づとメダル(C)の表面へ弾力的に軽く接触することとなるように関係設定したことを特徴とする請求項1記載のエレベーター式のメダル送出装置。
【請求項3】
メダル通路(P1)の上流側となるセンター押圧帯(F2−a)の下端部のみか、又はその下端部と上端部をメダル(C)への接触片(43)として、表向き円弧状に曲げ起したことを特徴とする請求項1記載のエレベーター式のメダル送出装置。
【請求項4】
フロントプレート(F2)における一定幅(X)の左右両サイド取付帯(F2−b)を、その下端部と上端部から互いに等しい一定深さだけ浅く付与された左右一対づつの切欠(44)により、各々狭幅なインサイド部とアウトサイド部に区分して、
その左右両サイド取付帯(F2−b)のインサイド部をメダル誘導カバー片(45)として、メダル通路(P1)へ表側から被覆させる一方、
同じく左右両サイド取付帯(F2−b)の残るアウトサイド部をメダル通路(P1)の鈍角(β)に弯曲する曲率半径の中心線(O−O)上において、一対のネジ締結具(13)によりメダル通路(P1)の左右両サイドスペーサー(11)とバックプレート(8)へ取り付け固定したことを特徴とする請求項1記載のエレベーター式のメダル送出装置。
【請求項5】
メダル通路(P1)の上流側となるメダル誘導カバー片(45)の下端部のみか、又はその下端部と上端部をメダル(C)の逃し片部(47)として、表向き円弧状に曲げ起したことを特徴とする請求項4記載のエレベーター式のメダル送出装置。
【請求項6】
左右両サイド取付帯(F2−b)におけるアウトサイド部の下端部と上端部を一対の接地座(46)として、表向きのほぼV字形に折り曲げると共に、
その両接地座(46)の尖鋭な稜線をメダル通路(P1)の左右両サイドスペーサー(11)へ表側から接地させることにより、上記左右両サイド取付帯(F2−b)を左右両サイドスペーサー(11)の表面から一定高さ(H)だけ浮上する状態に保ったことを特徴とする請求項4記載のエレベーター式のメダル送出装置。
【請求項7】
ネジ締結具(13)を、メダル通路(P1)におけるバックプレート(8)のネジ孔(48)から左右両サイドスペーサー(11)の水平方向に沿う細長いビス逃し入れ用バカ孔(49)を通じて表向きに突出された固定ビス(13a)と、これに表側から所要数のワッシャ又はシム(50)を介して螺合締結されるナット(13b)とから形作ったことを特徴とする請求項4記載のエレベーター式のメダル送出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−102499(P2010−102499A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273184(P2008−273184)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【特許番号】特許第4299361号(P4299361)
【特許公報発行日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(506154421)松下金属工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】