エレベーター装置
【課題】乗降通路の可動側壁を形成し移動する複数枚の短冊状板体の水平可動連結機構における水平長穴による露出貫通空所が生じないエレベーター装置を得る。
【解決手段】基部建築体等の乗降口2に対して水平方向に変位する昇降路体1を設け、また乗降口2に対向した乗場出入口3を配置する。そして、乗降口2と乗場出入口3の間に伸縮自在の乗降通路4を設け、乗降通路4の可動側壁9が縁部を重合した第一板体10、第二板体11の双方により伸縮自在に構成し水平可動連結機構19により連結する。そして、地震が発生し乗降口2から昇降路体1が離れた場合に、上記双方の重合部が縮小し水平可動連結機構19の水平長穴12が乗降通路4内側に露出するが、連結ピン16及び塞ぎ板が変位して露出した水平長穴12を覆い露出貫通空所の発生を解消する。
【解決手段】基部建築体等の乗降口2に対して水平方向に変位する昇降路体1を設け、また乗降口2に対向した乗場出入口3を配置する。そして、乗降口2と乗場出入口3の間に伸縮自在の乗降通路4を設け、乗降通路4の可動側壁9が縁部を重合した第一板体10、第二板体11の双方により伸縮自在に構成し水平可動連結機構19により連結する。そして、地震が発生し乗降口2から昇降路体1が離れた場合に、上記双方の重合部が縮小し水平可動連結機構19の水平長穴12が乗降通路4内側に露出するが、連結ピン16及び塞ぎ板が変位して露出した水平長穴12を覆い露出貫通空所の発生を解消する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基部建築体に免震装置を介して免震建築体が支持され、また基部建築体及び免震建築体の両者に形成されて上記両者に対して少なくとも水平方向に変位するエレベーターの昇降路体が設けられ、また上記両者の乗降口及び昇降路体の乗場出入口を接続した伸縮自在の乗降通路が設けられたエレベーター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベーター装置においては、基部建築体に免震装置を介して免震建築体が支持され、また基部建築体及び免震建築体の両者に形成されて上記両者に対して少なくとも水平方向に変位するエレベーターの昇降路体が設けられる。そして、上記両者の乗降口及び昇降路体の乗場出入口を接続した伸縮自在の乗降通路が設けられる。(類似構成のエレベーター装置として特許文献1参照)。
【0003】
そして乗降通路の可動側壁として、複数枚の短冊状板体が長手を鉛直に配置されると共に幅方向の縁部を互いに重合させて短冊状板体の幅方向に移動自在に配置される。このような可動側壁において、縁部を互いに重合して配置された短冊状板体の相互を連結する従来のエレベーター装置に採用される水平可動連結機構を図17によって説明する。
【0004】
すなわち図17において、縁部を互いに重合して配置された短冊状板体101の一側を形成する第一板体201に一端が保持されて、第一板体201の幅方向の縁部寄りにおける裏面側に連結ピン301が立設される。また、短冊状板体101の他側を形成する第二板体401の連結ピン301に対応する縁部寄りに長手が水平に配置された水平長穴501が設けられて、水平長穴501に連結ピン301が挿通されて水平方向に摺動自在に嵌合される。なお、連結ピン301及び水平長穴501を主要構成部材として水平可動連結機構601が形成される。
【0005】
【特許文献1】特開平11−335023号公報(第3頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のエレベーター装置では、乗降通路の可動側壁が複数枚の短冊状板体によって伸縮自在に形成され、短冊状板体の相互の重合部が連結ピン及び水平長穴を要部とする水平可動連結機構によって移動自在に連結される。しかし、可動側壁の伸縮状態によって乗降通路の内側に水平可動連結機構の水平長穴が貫通空所となって露出する場合がある。このときに、水平長穴の露出した貫通空所に異物が挟まる不具合が発生するという問題点があった。
【0007】
この発明は、かかる問題点を解消するためになされたものであり、乗降通路の可動側壁を伸縮自在に連結する複数枚の短冊状板体の水平可動連結機構において、短冊状板体が移動したときに水平可動連結機構における水平長穴の露出貫通空所が生じないエレベーター装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るエレベーター装置においては、基部建築体の上に免震装置を介して支持されて地震時に基部建築体に対して水平方向に相対変位する免震建築体、基部建築体及び免震建築体の両者に縦貫して配置され、上記両者に対して少なくとも水平方向に変位するエレベーターの昇降路体と、上記両者のそれぞれに設けられた乗降口及び昇降路体に設けられて乗降口に対向した位置に配置された乗場出入口を接続して形成され伸縮自在に構成された乗降通路と、複数枚の短冊状板体が長手を鉛直に配置されると共に幅方向の縁部を互いに重合させて短冊状板体の幅方向に移動自在に配置されて形成され、乗降口の側縁部及び乗場出入口の側縁部の間に設けられた乗降通路の可動側壁と、縁部を互いに重合して配置された短冊状板体の一側を形成する第一板体に一端が保持され、短冊状板体の他側を形成する第二板体に設けられて長手が水平に配置された水平長穴に挿通されて摺動自在に嵌合された連結ピン及びこの連結ピンの挿通端に設けられて第一板体及び第二板体の双方の相対変位によって上記双方の重合部外に配置される水平長穴を覆って配置される塞ぎ板からなる水平可動連結機構とが設けられる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によるエレベーター装置は、基部建築体等に設けられた乗降口に対して少なくとも水平方向に変位するエレベーターの昇降路体が設けられ、昇降路体に乗降口に対向した乗場出入口が配置される。そして、伸縮自在に構成された乗降通路が乗降口と乗場出入口を接続して設けられる。また、乗降通路の可動側壁が複数枚の短冊状板体によって伸縮自在に構成されて水平可動連結機構によって連結される。
【0010】
そして、地震のない通常時には乗降口と乗場出入口とが所定間隔に配置され、縁部を互いに重合して配置された短冊状板体の一側に第一板体が、また他側に第二板体が配置される。そして、地震が発生して乗降口から昇降路体が離れた場合には第一板体及び第二板体の双方の重合部が縮小して、水平可動連結機構の水平長穴が上記双方の重合部外に移動して乗降通路内側に露出する。
【0011】
しかし、水平可動連結機構の連結ピン及び塞ぎ板が水平方向に変位して乗降通路内側に露出した水平長穴が塞ぎ板によって覆われる。このため、短冊状板体8の移動、すなわち上記双方の移動により水平可動連結機構を構成する水平長穴による露出貫通空所が生じない。したがって、水平長穴の露出した貫通空所に異物が挟まって発生する不具合を未然に防止する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
図1〜図10は、この発明の実施の形態を示す図で、図1は乗降通路の可動側壁箇所を乗降通路外から見た立面図、図2は図1のA部対応箇所の拡大図、図3は図2の平面図、図4は図2の縦断側面図、図5は図1の可動側壁の伸長時に対応した図2相当図、図6は図5の平面図、図7は図1の可動側壁の短縮時に対応した図2相当図、図8は図7の平面図、図9は図1の乗降通路において乗場出入口の上部が乗降口に近付く方向に傾斜した状態を示す図、図10は図1の乗降通路において乗場出入口の上部が乗降口から遠退く方向に傾斜した状態を示す図である。
【0013】
図において、図示が省略してあるが、基部建築体の上に免震装置を介して支持されて地震時に基部建築体に対して水平方向に相対変位する免震建築体が設けられる。そして、エレベーターの昇降路体1が基部建築体及び免震建築体の両者に縦貫して配置され、上記両者に対して少なくとも水平方向に変位する。また、上記両者のそれぞれに乗降口2が設けられ、また昇降路体1の乗降口2に対向した位置に乗場出入口3が設けられる。
【0014】
そして、次に述べるように伸縮自在に構成された乗降通路4が乗降口2と乗場出入口3とを接続して設けられる。すなわち、乗場出入口側床板5の一側が玉継手によって乗場出入口3下部に枢着され他側は乗降口2側の床に重合して配置される。また、乗降口側床板6の一側が乗降口2側に床の乗場出入口3から離れた位置に枢着され他側は乗場出入口側床板5の他側の上に重合して配置される。
【0015】
また、複数枚の短冊状板体が長手を乗降口2の間口方向に配置され乗降通路4の通行方向に対して並列に配置されて乗降通路4の可動天井7が形成される。なお、可動天井7の複数枚の短冊状板体はリンク片がX字状に組み合わされたリンク機構によって相互に接続されて可動天井7が伸縮自在に構成される。そして、複数枚の短冊状板体8が長手を鉛直に配置されると共に幅方向の縁部を互いに重合させて短冊状板体8の幅方向に移動自在に配置されて、乗降口2の側縁部及び乗場出入口3の側縁部の間に設けられて乗降通路4の可動側壁9が構成される。
【0016】
そして、縁部を互いに重合して配置された短冊状板体8相互における一側を形成する第一板体10及び他側を形成する第二板体11が設けられ、第一板体10の第二板体11との重合部の縁部寄りに長手が水平に配置された水平長穴12が設けられる。また、第二板体11の第一板体10との重合部側に保持板13が配置されて、長手が鉛直に配置された鉛直長穴14が設けられる。
【0017】
また、第二板体11の裏面に二本の案内レール15が設けられて水平に互いに離れて配置され、保持板13の上下の縁部がそれぞれ水平方向に摺動自在に係合される。そして、連結ピン16の一端が保持板13の鉛直長穴14に鉛直方向に対して摺動自在に係合されて保持板13に対して立設状態に配置され、連結ピン16の他端は第一板体10の水平長穴12に挿通されて水平長穴12に水平方向に対して摺動自在に係合される。
【0018】
そして、連結ピン16の他端、すなわち水平長穴12の挿通端に塞ぎ板17の一側が固定されて他側は第一板体10の反重合部寄りに延長される。また、第一板体10の裏面にリップ付き溝形鋼状の案内金具18がリップ箇所を介して固定され、その溝形内に塞ぎ板17が摺動自在に保持される。なお、水平長穴12、保持板13、案内レール15、連結ピン16及び塞ぎ板17を要部として水平可動連結機構19が構成される。
【0019】
また、鉛直長穴14及び連結ピン16を要部として鉛直可動連結機構20が構成される。そして、水平可動連結機構19及び鉛直可動連結機構20は一体的に形成されて、縁部を互いに重合して配置された短冊状板体8相互、すなわち第一板体10及び第二板体11の双方における重合部にそれぞれ配置されると共に、その重合部において上下に互いに離れて複数個が配置される。
【0020】
上記のように構成されたエレベーター装置において、基部建築体等に設けられた乗降口2に対して少なくとも水平方向に変位するエレベーターの昇降路体1が設けられ、乗降口2に対向した乗場出入口3が配置される。また、伸縮自在に構成された乗降通路4が乗降口2と乗場出入口3を接続して設けられる。そして、地震のない通常時には乗降口2に対して乗場出入口3が所定間隔に配置される。
【0021】
また、通常時には乗降通路4の可動側壁9を構成する複数枚の短冊状板体8相互において、縁部を互いに重合して配置された第一板体10及び第二板体11の双方が図2に示す状態に配置される。すなわち、水平長穴12は上記双方の重合部内に配置され、また保持板13、連結ピン16及び塞ぎ板17は乗降口2に寄りに配置される。また、連結ピン16は塞ぎ板17の鉛直長穴14の上下方向の中心付近に配置される。
【0022】
そして、地震が発生して乗降口2から昇降路体1が離れた場合には、連結ピン16及び塞ぎ板17が乗場出入口3方向に変位して図2に示す状態から図5に示す状態となる。このときには水平長穴12が上記双方の重合部外に移動して乗降通路4内側に露出するが、露出した水平長穴12が塞ぎ板17によって覆われる。
【0023】
このため、短冊状板体8の移動、すなわち上記双方の移動により水平可動連結機構19を形成する水平長穴12の露出貫通空所が生じない。したがって、水平長穴12の露出した貫通空所に異物が挟まって発生する不具合を未然に防止することができる。また、水平長穴12の露出貫通空所が生じることによって美観が損なわれる不具合を未然に防止することができる。
【0024】
なお、地震が発生して乗降口2に昇降路体1が近付いた場合には、保持板13が乗場出入口3方向に変位して図2に示す状態から図7に示す状態となる。
また、地震が発生して昇降路体1が変位して乗場出入口3の上部が乗降口2に近付く方向に傾斜した場合には図9に示す状態となり、また乗場出入口3の上部が乗降口2から遠退く方向に傾斜した場合には図10に示す状態となる。
【0025】
そして、図9及び図10の状態において鉛直可動連結機構20の保持板13に設けられた鉛直長穴14の長手方向に連結ピン16が移動する。これによって、上記双方が無理な変形を伴うことなく円滑に上下方向に相対変位することができ、地震発生時の乗降口2に対する乗場出入口3の傾斜に対して容易に対応することができる。このため、地震後の点検作業の手数が減少して運転再開を容易化することができる。
【0026】
実施の形態2.
図11〜図16は、この発明の他の実施の形態を示す図で、図11は前述の図2相当図、図12は図11の平面図、図13は図11の可動側壁の伸長時の状態を示す図、図14は図13の平面図、図15は図11の可動側壁の短縮時の状態を示す図、図16は図15の平面図である。なお、図11〜図16の他は水平可動連結機構及び鉛直可動連結機構の構成を除いて、前述の図1〜図10の実施の形態と同様にエレベーター装置が構成されている。
【0027】
図において、図1〜図10と同符号は相当部分を示し、第二板体11の第一板体10及び第二板体11の双方の重合部側の縁部寄りの裏面に連結ピン21が立設され、第一板体10の水平長穴12に挿通されて水平長穴12に摺動自在に嵌合される。また、第一板体10の裏面側における上記双方の反重合部側に塞ぎ板22が配置されて、連結ピン21の挿通端に上記双方の反重合部側の縁部が締結される。なお、水平長穴12、連結ピン21及び塞ぎ板22を要部として水平可動連結機構23が構成される。
【0028】
上記のように構成されたエレベーター装置は、前述の図1〜図10における実施の形態の鉛直可動連結機構20を省くと共に構成を簡略化したものである。そして、地震のない通常時には縁部を互いに重合して配置された第一板体10及び第二板体11の双方が図11に示す状態に配置される。すなわち、水平長穴12は上記双方の重合部内に配置され、また連結ピン21及び塞ぎ板22は乗降口2に寄りに配置される。
【0029】
そして、地震が発生して乗降口2から昇降路体1が離れた場合には、連結ピン21及び塞ぎ板22が乗場出入口3方向に変位して図11に示す状態から図13に示す状態となる。このときには水平長穴12が上記双方の重合部外に移動して乗降通路4内側に露出するが、露出した水平長穴12が塞ぎ板22によって覆われる。
【0030】
このため、短冊状板体8の移動、すなわち上記双方の移動により水平可動連結機構23を形成する水平長穴12の露出貫通空所が生じない、したがって、詳細な説明を省略するが図11〜図16の実施の形態においても図1〜図10の実施の形態と同様な作用が得られる。なお、地震が発生して乗降口2に昇降路体1が近付いた場合には、上記双方の重合部幅が拡大して図11に示す状態から図15に示す状態となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の実施の形態1を示す図で、乗降通路の可動側壁箇所を乗降通路外から見た立面図。
【図2】図1のA部対応箇所の拡大図。
【図3】図2の平面図。
【図4】図2の縦断側面図。
【図5】図1の可動側壁の伸長時に対応した図2相当図。
【図6】図5の平面図。
【図7】図1の可動側壁の短縮時に対応した図2相当図。
【図8】図7の平面図。
【図9】図1の乗降通路において乗場出入口の上部が乗降口に近付く方向に傾斜した状態を示す図。
【図10】図1の乗降通路において乗場出入口の上部が乗降口から遠退く方向に傾斜した状態を示す図。
【図11】この発明の実施の形態2を示す図で、前述の図2相当図。
【図12】図11の平面図。
【図13】図11の可動側壁の伸長時の状態を示す図。
【図14】図13の平面図。
【図15】図11の可動側壁の短縮時の状態を示す図。
【図16】図15の平面図。
【図17】従来のエレベーター装置における水平可動連結機構を説明する図。
【符号の説明】
【0032】
1 昇降路体、 2 乗降口、 3 乗場出入口、 4 乗降通路、 8 短冊状板体、 9 可動側壁、 10 第一板体、 11 第二板体、 12 水平長穴、 13 保持板、 16 連結ピン、 17 塞ぎ板、 19 水平可動連結機構、 20 鉛直可動連結機構、 21 連結ピン、 22 塞ぎ板、 23 水平可動連結機構。
【技術分野】
【0001】
この発明は、基部建築体に免震装置を介して免震建築体が支持され、また基部建築体及び免震建築体の両者に形成されて上記両者に対して少なくとも水平方向に変位するエレベーターの昇降路体が設けられ、また上記両者の乗降口及び昇降路体の乗場出入口を接続した伸縮自在の乗降通路が設けられたエレベーター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベーター装置においては、基部建築体に免震装置を介して免震建築体が支持され、また基部建築体及び免震建築体の両者に形成されて上記両者に対して少なくとも水平方向に変位するエレベーターの昇降路体が設けられる。そして、上記両者の乗降口及び昇降路体の乗場出入口を接続した伸縮自在の乗降通路が設けられる。(類似構成のエレベーター装置として特許文献1参照)。
【0003】
そして乗降通路の可動側壁として、複数枚の短冊状板体が長手を鉛直に配置されると共に幅方向の縁部を互いに重合させて短冊状板体の幅方向に移動自在に配置される。このような可動側壁において、縁部を互いに重合して配置された短冊状板体の相互を連結する従来のエレベーター装置に採用される水平可動連結機構を図17によって説明する。
【0004】
すなわち図17において、縁部を互いに重合して配置された短冊状板体101の一側を形成する第一板体201に一端が保持されて、第一板体201の幅方向の縁部寄りにおける裏面側に連結ピン301が立設される。また、短冊状板体101の他側を形成する第二板体401の連結ピン301に対応する縁部寄りに長手が水平に配置された水平長穴501が設けられて、水平長穴501に連結ピン301が挿通されて水平方向に摺動自在に嵌合される。なお、連結ピン301及び水平長穴501を主要構成部材として水平可動連結機構601が形成される。
【0005】
【特許文献1】特開平11−335023号公報(第3頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のエレベーター装置では、乗降通路の可動側壁が複数枚の短冊状板体によって伸縮自在に形成され、短冊状板体の相互の重合部が連結ピン及び水平長穴を要部とする水平可動連結機構によって移動自在に連結される。しかし、可動側壁の伸縮状態によって乗降通路の内側に水平可動連結機構の水平長穴が貫通空所となって露出する場合がある。このときに、水平長穴の露出した貫通空所に異物が挟まる不具合が発生するという問題点があった。
【0007】
この発明は、かかる問題点を解消するためになされたものであり、乗降通路の可動側壁を伸縮自在に連結する複数枚の短冊状板体の水平可動連結機構において、短冊状板体が移動したときに水平可動連結機構における水平長穴の露出貫通空所が生じないエレベーター装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るエレベーター装置においては、基部建築体の上に免震装置を介して支持されて地震時に基部建築体に対して水平方向に相対変位する免震建築体、基部建築体及び免震建築体の両者に縦貫して配置され、上記両者に対して少なくとも水平方向に変位するエレベーターの昇降路体と、上記両者のそれぞれに設けられた乗降口及び昇降路体に設けられて乗降口に対向した位置に配置された乗場出入口を接続して形成され伸縮自在に構成された乗降通路と、複数枚の短冊状板体が長手を鉛直に配置されると共に幅方向の縁部を互いに重合させて短冊状板体の幅方向に移動自在に配置されて形成され、乗降口の側縁部及び乗場出入口の側縁部の間に設けられた乗降通路の可動側壁と、縁部を互いに重合して配置された短冊状板体の一側を形成する第一板体に一端が保持され、短冊状板体の他側を形成する第二板体に設けられて長手が水平に配置された水平長穴に挿通されて摺動自在に嵌合された連結ピン及びこの連結ピンの挿通端に設けられて第一板体及び第二板体の双方の相対変位によって上記双方の重合部外に配置される水平長穴を覆って配置される塞ぎ板からなる水平可動連結機構とが設けられる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によるエレベーター装置は、基部建築体等に設けられた乗降口に対して少なくとも水平方向に変位するエレベーターの昇降路体が設けられ、昇降路体に乗降口に対向した乗場出入口が配置される。そして、伸縮自在に構成された乗降通路が乗降口と乗場出入口を接続して設けられる。また、乗降通路の可動側壁が複数枚の短冊状板体によって伸縮自在に構成されて水平可動連結機構によって連結される。
【0010】
そして、地震のない通常時には乗降口と乗場出入口とが所定間隔に配置され、縁部を互いに重合して配置された短冊状板体の一側に第一板体が、また他側に第二板体が配置される。そして、地震が発生して乗降口から昇降路体が離れた場合には第一板体及び第二板体の双方の重合部が縮小して、水平可動連結機構の水平長穴が上記双方の重合部外に移動して乗降通路内側に露出する。
【0011】
しかし、水平可動連結機構の連結ピン及び塞ぎ板が水平方向に変位して乗降通路内側に露出した水平長穴が塞ぎ板によって覆われる。このため、短冊状板体8の移動、すなわち上記双方の移動により水平可動連結機構を構成する水平長穴による露出貫通空所が生じない。したがって、水平長穴の露出した貫通空所に異物が挟まって発生する不具合を未然に防止する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
図1〜図10は、この発明の実施の形態を示す図で、図1は乗降通路の可動側壁箇所を乗降通路外から見た立面図、図2は図1のA部対応箇所の拡大図、図3は図2の平面図、図4は図2の縦断側面図、図5は図1の可動側壁の伸長時に対応した図2相当図、図6は図5の平面図、図7は図1の可動側壁の短縮時に対応した図2相当図、図8は図7の平面図、図9は図1の乗降通路において乗場出入口の上部が乗降口に近付く方向に傾斜した状態を示す図、図10は図1の乗降通路において乗場出入口の上部が乗降口から遠退く方向に傾斜した状態を示す図である。
【0013】
図において、図示が省略してあるが、基部建築体の上に免震装置を介して支持されて地震時に基部建築体に対して水平方向に相対変位する免震建築体が設けられる。そして、エレベーターの昇降路体1が基部建築体及び免震建築体の両者に縦貫して配置され、上記両者に対して少なくとも水平方向に変位する。また、上記両者のそれぞれに乗降口2が設けられ、また昇降路体1の乗降口2に対向した位置に乗場出入口3が設けられる。
【0014】
そして、次に述べるように伸縮自在に構成された乗降通路4が乗降口2と乗場出入口3とを接続して設けられる。すなわち、乗場出入口側床板5の一側が玉継手によって乗場出入口3下部に枢着され他側は乗降口2側の床に重合して配置される。また、乗降口側床板6の一側が乗降口2側に床の乗場出入口3から離れた位置に枢着され他側は乗場出入口側床板5の他側の上に重合して配置される。
【0015】
また、複数枚の短冊状板体が長手を乗降口2の間口方向に配置され乗降通路4の通行方向に対して並列に配置されて乗降通路4の可動天井7が形成される。なお、可動天井7の複数枚の短冊状板体はリンク片がX字状に組み合わされたリンク機構によって相互に接続されて可動天井7が伸縮自在に構成される。そして、複数枚の短冊状板体8が長手を鉛直に配置されると共に幅方向の縁部を互いに重合させて短冊状板体8の幅方向に移動自在に配置されて、乗降口2の側縁部及び乗場出入口3の側縁部の間に設けられて乗降通路4の可動側壁9が構成される。
【0016】
そして、縁部を互いに重合して配置された短冊状板体8相互における一側を形成する第一板体10及び他側を形成する第二板体11が設けられ、第一板体10の第二板体11との重合部の縁部寄りに長手が水平に配置された水平長穴12が設けられる。また、第二板体11の第一板体10との重合部側に保持板13が配置されて、長手が鉛直に配置された鉛直長穴14が設けられる。
【0017】
また、第二板体11の裏面に二本の案内レール15が設けられて水平に互いに離れて配置され、保持板13の上下の縁部がそれぞれ水平方向に摺動自在に係合される。そして、連結ピン16の一端が保持板13の鉛直長穴14に鉛直方向に対して摺動自在に係合されて保持板13に対して立設状態に配置され、連結ピン16の他端は第一板体10の水平長穴12に挿通されて水平長穴12に水平方向に対して摺動自在に係合される。
【0018】
そして、連結ピン16の他端、すなわち水平長穴12の挿通端に塞ぎ板17の一側が固定されて他側は第一板体10の反重合部寄りに延長される。また、第一板体10の裏面にリップ付き溝形鋼状の案内金具18がリップ箇所を介して固定され、その溝形内に塞ぎ板17が摺動自在に保持される。なお、水平長穴12、保持板13、案内レール15、連結ピン16及び塞ぎ板17を要部として水平可動連結機構19が構成される。
【0019】
また、鉛直長穴14及び連結ピン16を要部として鉛直可動連結機構20が構成される。そして、水平可動連結機構19及び鉛直可動連結機構20は一体的に形成されて、縁部を互いに重合して配置された短冊状板体8相互、すなわち第一板体10及び第二板体11の双方における重合部にそれぞれ配置されると共に、その重合部において上下に互いに離れて複数個が配置される。
【0020】
上記のように構成されたエレベーター装置において、基部建築体等に設けられた乗降口2に対して少なくとも水平方向に変位するエレベーターの昇降路体1が設けられ、乗降口2に対向した乗場出入口3が配置される。また、伸縮自在に構成された乗降通路4が乗降口2と乗場出入口3を接続して設けられる。そして、地震のない通常時には乗降口2に対して乗場出入口3が所定間隔に配置される。
【0021】
また、通常時には乗降通路4の可動側壁9を構成する複数枚の短冊状板体8相互において、縁部を互いに重合して配置された第一板体10及び第二板体11の双方が図2に示す状態に配置される。すなわち、水平長穴12は上記双方の重合部内に配置され、また保持板13、連結ピン16及び塞ぎ板17は乗降口2に寄りに配置される。また、連結ピン16は塞ぎ板17の鉛直長穴14の上下方向の中心付近に配置される。
【0022】
そして、地震が発生して乗降口2から昇降路体1が離れた場合には、連結ピン16及び塞ぎ板17が乗場出入口3方向に変位して図2に示す状態から図5に示す状態となる。このときには水平長穴12が上記双方の重合部外に移動して乗降通路4内側に露出するが、露出した水平長穴12が塞ぎ板17によって覆われる。
【0023】
このため、短冊状板体8の移動、すなわち上記双方の移動により水平可動連結機構19を形成する水平長穴12の露出貫通空所が生じない。したがって、水平長穴12の露出した貫通空所に異物が挟まって発生する不具合を未然に防止することができる。また、水平長穴12の露出貫通空所が生じることによって美観が損なわれる不具合を未然に防止することができる。
【0024】
なお、地震が発生して乗降口2に昇降路体1が近付いた場合には、保持板13が乗場出入口3方向に変位して図2に示す状態から図7に示す状態となる。
また、地震が発生して昇降路体1が変位して乗場出入口3の上部が乗降口2に近付く方向に傾斜した場合には図9に示す状態となり、また乗場出入口3の上部が乗降口2から遠退く方向に傾斜した場合には図10に示す状態となる。
【0025】
そして、図9及び図10の状態において鉛直可動連結機構20の保持板13に設けられた鉛直長穴14の長手方向に連結ピン16が移動する。これによって、上記双方が無理な変形を伴うことなく円滑に上下方向に相対変位することができ、地震発生時の乗降口2に対する乗場出入口3の傾斜に対して容易に対応することができる。このため、地震後の点検作業の手数が減少して運転再開を容易化することができる。
【0026】
実施の形態2.
図11〜図16は、この発明の他の実施の形態を示す図で、図11は前述の図2相当図、図12は図11の平面図、図13は図11の可動側壁の伸長時の状態を示す図、図14は図13の平面図、図15は図11の可動側壁の短縮時の状態を示す図、図16は図15の平面図である。なお、図11〜図16の他は水平可動連結機構及び鉛直可動連結機構の構成を除いて、前述の図1〜図10の実施の形態と同様にエレベーター装置が構成されている。
【0027】
図において、図1〜図10と同符号は相当部分を示し、第二板体11の第一板体10及び第二板体11の双方の重合部側の縁部寄りの裏面に連結ピン21が立設され、第一板体10の水平長穴12に挿通されて水平長穴12に摺動自在に嵌合される。また、第一板体10の裏面側における上記双方の反重合部側に塞ぎ板22が配置されて、連結ピン21の挿通端に上記双方の反重合部側の縁部が締結される。なお、水平長穴12、連結ピン21及び塞ぎ板22を要部として水平可動連結機構23が構成される。
【0028】
上記のように構成されたエレベーター装置は、前述の図1〜図10における実施の形態の鉛直可動連結機構20を省くと共に構成を簡略化したものである。そして、地震のない通常時には縁部を互いに重合して配置された第一板体10及び第二板体11の双方が図11に示す状態に配置される。すなわち、水平長穴12は上記双方の重合部内に配置され、また連結ピン21及び塞ぎ板22は乗降口2に寄りに配置される。
【0029】
そして、地震が発生して乗降口2から昇降路体1が離れた場合には、連結ピン21及び塞ぎ板22が乗場出入口3方向に変位して図11に示す状態から図13に示す状態となる。このときには水平長穴12が上記双方の重合部外に移動して乗降通路4内側に露出するが、露出した水平長穴12が塞ぎ板22によって覆われる。
【0030】
このため、短冊状板体8の移動、すなわち上記双方の移動により水平可動連結機構23を形成する水平長穴12の露出貫通空所が生じない、したがって、詳細な説明を省略するが図11〜図16の実施の形態においても図1〜図10の実施の形態と同様な作用が得られる。なお、地震が発生して乗降口2に昇降路体1が近付いた場合には、上記双方の重合部幅が拡大して図11に示す状態から図15に示す状態となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の実施の形態1を示す図で、乗降通路の可動側壁箇所を乗降通路外から見た立面図。
【図2】図1のA部対応箇所の拡大図。
【図3】図2の平面図。
【図4】図2の縦断側面図。
【図5】図1の可動側壁の伸長時に対応した図2相当図。
【図6】図5の平面図。
【図7】図1の可動側壁の短縮時に対応した図2相当図。
【図8】図7の平面図。
【図9】図1の乗降通路において乗場出入口の上部が乗降口に近付く方向に傾斜した状態を示す図。
【図10】図1の乗降通路において乗場出入口の上部が乗降口から遠退く方向に傾斜した状態を示す図。
【図11】この発明の実施の形態2を示す図で、前述の図2相当図。
【図12】図11の平面図。
【図13】図11の可動側壁の伸長時の状態を示す図。
【図14】図13の平面図。
【図15】図11の可動側壁の短縮時の状態を示す図。
【図16】図15の平面図。
【図17】従来のエレベーター装置における水平可動連結機構を説明する図。
【符号の説明】
【0032】
1 昇降路体、 2 乗降口、 3 乗場出入口、 4 乗降通路、 8 短冊状板体、 9 可動側壁、 10 第一板体、 11 第二板体、 12 水平長穴、 13 保持板、 16 連結ピン、 17 塞ぎ板、 19 水平可動連結機構、 20 鉛直可動連結機構、 21 連結ピン、 22 塞ぎ板、 23 水平可動連結機構。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部建築体の上に免震装置を介して支持されて地震時に上記基部建築体に対して水平方向に相対変位する免震建築体、上記基部建築体及び免震建築体の両者に縦貫して配置され、上記両者に対して少なくとも水平方向に変位するエレベーターの昇降路体と、上記両者のそれぞれに設けられた乗降口及び上記昇降路体に設けられて上記乗降口に対向した位置に配置された乗場出入口を接続して形成され伸縮自在に構成された乗降通路と、複数枚の短冊状板体が長手を鉛直に配置されると共に幅方向の縁部を互いに重合させて上記幅方向に移動自在に配置されて形成され、上記乗降口の側縁部及び乗場出入口の側縁部の間に設けられた上記乗降通路の可動側壁と、縁部を互いに重合して配置された上記短冊状板体の一側を形成する第一板体に一端が保持され、上記短冊状板体の他側を形成する第二板体に設けられて長手が水平に配置された水平長穴に挿通されて摺動自在に嵌合された連結ピン及びこの連結ピンの挿通端に設けられて上記第一板体及び第二板体の双方の相対変位によって上記双方の重合部外に配置される上記水平長穴を覆って配置される塞ぎ板からなる水平可動連結機構とを備えたエレベーター装置。
【請求項2】
第二板体に設けられて連結ピンの上記第二板体側の端部が鉛直方向に摺動自在に係合された保持板を有する鉛直可動連結機構を備えたことを特徴とする請求項1記載のエレベーター装置。
【請求項1】
基部建築体の上に免震装置を介して支持されて地震時に上記基部建築体に対して水平方向に相対変位する免震建築体、上記基部建築体及び免震建築体の両者に縦貫して配置され、上記両者に対して少なくとも水平方向に変位するエレベーターの昇降路体と、上記両者のそれぞれに設けられた乗降口及び上記昇降路体に設けられて上記乗降口に対向した位置に配置された乗場出入口を接続して形成され伸縮自在に構成された乗降通路と、複数枚の短冊状板体が長手を鉛直に配置されると共に幅方向の縁部を互いに重合させて上記幅方向に移動自在に配置されて形成され、上記乗降口の側縁部及び乗場出入口の側縁部の間に設けられた上記乗降通路の可動側壁と、縁部を互いに重合して配置された上記短冊状板体の一側を形成する第一板体に一端が保持され、上記短冊状板体の他側を形成する第二板体に設けられて長手が水平に配置された水平長穴に挿通されて摺動自在に嵌合された連結ピン及びこの連結ピンの挿通端に設けられて上記第一板体及び第二板体の双方の相対変位によって上記双方の重合部外に配置される上記水平長穴を覆って配置される塞ぎ板からなる水平可動連結機構とを備えたエレベーター装置。
【請求項2】
第二板体に設けられて連結ピンの上記第二板体側の端部が鉛直方向に摺動自在に係合された保持板を有する鉛直可動連結機構を備えたことを特徴とする請求項1記載のエレベーター装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−160473(P2006−160473A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−355868(P2004−355868)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】
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