説明

エレベーター装置

【課題】かご内情報表示器の異常に早急に対応することのできるエレベーター装置の提供。
【解決手段】かご1内に、少なくともかご位置を表示可能なかご内情報表示器2と、行先階を登録する行先階釦3を備えたかご内操作盤5と、各機器の制御を行う制御手段(6、7)とを有するエレベーター装置において、かご内情報表示器2の異常を検出し、異常検出信号を出力する検出手段(6)を設けるとともに、制御手段(6、7)が、異常検出信号に応じてかご位置に対応する行先階釦3を順次、点滅、或いは点灯させるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かご内に、かご位置を表示可能なかご内情報表示器、及び行先階を登録するためのかご内操作盤が備えられたエレベーター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かご内に、ランプ点灯によりかごの位置を表示するかご位置表示灯を備えたエレベーター装置にあって、従来、外部に設けられる監視装置の表示盤に、表示灯のランプ切れを色別表示する表示器を設け、ランプ切れと同時に管理人がランプ切れを認識できるようにして、利用者の焦燥感や不安感を速やかに解消するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】平4−133982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来のものは、ランプ点灯によりかごの位置を表示するかご位置表示灯の異常に対応したものであるが、近年、このようなランプ点灯式のものに代わり、液晶パネル等を備え、かご位置や他の運転情報を表示可能なかご内情報表示器が設けられるようになっている。このかご内情報表示器は、制御手段との間で信号の授受を行い、様々な表示を行うものであることから、信号の授受を含め、何らかの異常が生じると、かご位置の表示を行なうことができなくなる。従来のような、ランプ点灯式のものでは、1つのランプが切れても、他のランプの表示状態からかご位置を把握することができたが、近年用いられているかご内情報表示器は表示そのものに支障をきたすことから、かご内の利用者は異常が生じると、今何階を昇降しているのか判らなくなり、不安を抱くという問題があった。
【0005】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、かご内情報表示器の異常に早急に対応することのできるエレベーター装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、かご内に、少なくともかご位置を表示可能なかご内情報表示器と、行先階を登録する行先階釦を備えたかご内操作盤と、各機器の制御を行う制御手段とを有するエレベーター装置において、前記かご内情報表示器の異常を検出し、異常検出信号を出力する検出手段を設けるとともに、前記制御手段は、前記異常検出信号に応じてかご位置に対応する前記行先階釦を順次、点滅、或いは点灯させることを特徴としている。
【0007】
このように構成した本発明では、検出手段はかご内情報表示器の異常を検出すると異常検出信号を出力する。これに応じて制御手段は、かご内操作盤の行先階釦をかご位置に合わせ、順次、点滅、或いは点灯させ、かご内の利用者にかご位置を報知する。これによって、かご内情報表示器に異常が生じた場合でも、作業員による復旧作業を待つことなく早急に対応することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、かご内情報表示器に異常が生じた場合、かご内操作盤の行先階釦をかご位置に合わせ、順次、点滅、或いは点灯させ、かご内の利用者にかご位置を報知することで、作業員による復旧作業を待つことなく早急に対応することができ、これによって、利用者がかご位置が判らずに不安を感じるといった事態を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るエレベーター装置の一実施例を示す概略構成図である。
【図2】本実施例におけるエレベーター装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】行先階釦によるかご位置報知を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るエレベーター装置の実施例を図に基づき説明する。
【0011】
本実施例のエレベーター装置は、図1に示すように、かご1内に、少なくともかご位置を表示可能なかご内情報表示器2と、行先階を登録する行先階釦3、及び扉の開閉を行なう開閉釦4を備えたかご内操作盤5とが備えられている。また、かご1の上部には、かご内情報表示器2、及びかご内操作盤5と接続されるとともに、マイコン6aを備えたかご上制御装置6が設置されている。さらに、例えば、図示しない機械室には、かご上制御装置6と接続されるとともに、マイコン7aが搭載され、エレベーターに係る各機器の統括制御を行うエレベーター制御装置7が設けられている。
【0012】
そして、例えば、かご上制御装置6が、かご内情報表示器2の異常を検出し、異常検出信号を出力する検出手段を構成している。また、かご上制御装置6、及びエレベーター制御装置7で前述した制御手段を構成し、異常検出信号に応じてかご位置に対応する行先階釦3を順次、点滅させるようになっている。
【0013】
本実施例にあっては、通常運転時、かご内情報表示器2は、かご上制御装置6、及びエレベーター制御装置7と信号の授受を行い、エレベーターの運転状況に応じて、現在のかご位置、進行方向、運転状態、及び利用者への注意喚起を表示する。しかし、このシステムに異常が発生した場合、かご内情報表示器2が機能しなくなることが考えられる。異常の要因として、断線等による機器間の通信異常や、かご内情報表示器2の内部データ損傷による異常が挙げられる。これらの異常が発生した場合においても利用客にかご位置を報知できるよう、本機能を用いる。すなわち、異常を検出すると、かご内情報表示器代替モードとなり、かご内操作盤5の行先階釦3を順次、点滅させ、現在のかご位置を報知する。これにより、利用客は現在の階数を把握することができる。この行先階釦3の点滅については図3に基づき後に説明する。
【0014】
次に、図2に基づき本実施例のエレベーター装置の処理手順を説明する。
【0015】
図2で判定するかご内情報表示器2の異常には、装置間の通信異常とかご内情報表示器2のデータ損傷が挙げられる。ここでは初めに、通信異常があるかを判定する(ST01)。通信異常の場合はかご内操作盤5によるかご内情報表示器代替モードへ切り替わる(ST04)。そして、異常情報を外部の監視装置へ報知する(ST05)。一方、通信異常でない場合、かご内情報表示器2のデータ損傷の判定を行う(ST02)。かご内情報表示器2のデータに損傷がある場合はかご内操作盤5によるかご内情報表示器代替モードへ切り替わる(ST04)。そして、異常情報を監視装置へ報知する(ST05)。かご内情報表示器2の復旧作業が完了するまでかご内情報表示器代替モードを継続し(ST06)、復旧後は、かご内情報表示器2により通常モードで表示が行なわれる(ST03)。また、かご内情報表示器2のデータが損傷してなかった場合においても、かご内情報表示器2は正常と判断する(ST03)。
【0016】
なお、外部の監視装置にあって、例えば、ランプを2つ設置する、2色の点灯可能なランプを1つ設置する、ランプを1つ設置し2パターンのフリッカー速度を設定するなどの方法を用いることで、かご内情報表示器2の異常内容、即ち、装置間の通信異常なのか、或いはかご内情報表示器2のデータ損傷なのかを報知することが可能となる。これにより、管理人は異常発生とともに、当該異常の内容を把握することができ、保守員による点検時間の短縮を図ることもできる。
【0017】
次に、図3に基づきかご内情報表示器代替モード時、かご内操作盤5の行先階釦3によりかご位置を利用者に報知する方法を説明する。なお、図3にあって、行先階釦3aは1階床、行先階釦3bは2階床、行先階釦3cは3階床、行先階釦3dは4階床、行先階釦3eは5階床、行先階釦3fは6階床を行先階としてそれぞれ登録するためのものである。
【0018】
図3の(A)は、利用者がかご1内に乗り込んでから行先階釦3aを押下し、その行先階釦3aが点灯することで行先階が登録されたことを表している。この時、かご1は4階床で停止している状態であり、この時点でかご内情報表示器2に異常が発生した場合を考える。かご内情報表示器2の異常を検出するとかご内情報表示器代替モードに切り替わり、図3の(B)に示すように、行先階釦3dが点滅し、かご1が4階床にある旨を利用者に報知する。この後、かご1が行先階である1階床を目指し下方向へ移動すると、図3の(C)、(D)に示すように、順次、行先階釦3c、次いで、行先階釦3bが点滅する。そして、かご1が1階床に到着し、登録した行先階と現在のかご位置とが同期すると、図3の(E)に示すように、通常時と同様に行先階釦3aが点滅し、かご1が1階床に到着した旨を利用者に知らせる。
【0019】
本実施例によれば、かご内情報表示器2に異常が生じた場合、かご内操作盤5の行先階釦3をかご位置に合わせ、順次、点滅させ、かご1内の利用者にかご位置を報知することで、作業員による復旧作業を待つことなく早急に対応することができ、これによって、利用者がかご位置が判らずに不安を感じるといった事態を避けることができる。また、異常の種類を判別して異常情報を外部の監視盤に送ることにより、保守員が作業に入る前に異常内容を把握することを可能とし、よって、点検時間を短縮できるため、サービス低下の防止を図ることができる。
【0020】
なお、本実施例では、かご内情報表示器2の異常発生に応じて、かご位置に対応する行先階釦3を順次、点滅させるようにしたが、これはかご位置表示と行先階登録とを区別するため、また、利用者の目に付きやすくするためである。よって、点滅の変わりに、異なった色を点灯させたり、2つのライトを有する釦を使用したり、外枠のみを点灯させるなどの方法を用いても同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0021】
1 かご
2 かご内情報表示器
3 行先階釦
4 開閉釦
5 かご内操作盤
6 かご上制御装置
7 エレベーター制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご内に、少なくともかご位置を表示可能なかご内情報表示器と、行先階を登録する行先階釦を備えたかご内操作盤と、各機器の制御を行う制御手段とを有するエレベーター装置において、
前記かご内情報表示器の異常を検出し、異常検出信号を出力する検出手段を設けるとともに、前記制御手段は、前記異常検出信号に応じてかご位置に対応する前記行先階釦を順次、点滅、或いは点灯させることを特徴としたエレベーター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−11862(P2011−11862A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157037(P2009−157037)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】