説明

エレベータ

【課題】エレベータの複数種類の安全回路の作動状態を容易に特定でき、かつ回路自身の電圧降下を必要十分に低減する。
【解決手段】安全回路監視装置8は、エレベータにおける動作検出機能別に電気的に分離した複数の安全サブチェーンの信号を確認し、少なくとも1つの安全サブチェーンの信号の通電がなされていない場合で、各種の人為操作安全回路の何れかが通電されていない場合には、人為的に安全回路が遮断された事を示すメッセージを安全回路状態表示装置18に表示させ、ホール安全回路10、乗りかご安全回路11、非常救出ドア安全回路19の何れかについて通電されていない場合はドアが開いている旨を示すメッセージを安全回路状態表示装置18に表示させ、昇降路安全回路12が通電されていない場合には、エレベータの運転状態の異常を示すメッセージを安全回路状態表示装置18に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全回路を有するエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの安全回路は、例えば機械室があるエレベータの場合、当該機械室の安全装置、昇降路内の安全装置、乗りかごの安全装置、および乗り場の安全装置を電線で直列に一筆書きで接続した回路となっている。これらの安全装置は、スイッチの作動などによりエレベータの運転を行なうには危険な状態となった場合に回路を遮断する。
【0003】
エレベータは、全ての安全装置において、エレベータの運転を安全に行える状態が確認できる場合、即ち、全ての安全装置を直列に接続した回路が通電している状態の場合にエレベータの運転が可能になり、そうでない場合には運転が停止するような回路構成となっている。
【0004】
このように、昇降路や乗りかごの全ての安全装置を直列に接続すると、安全回路が昇降路内を何往復もすることになり、安全回路は非常に電線長の長い回路となる。そのため、電線自身の抵抗による回路の電圧降下が大きくなる。電圧降下による回路への影響を小さくするには回路電圧を高くすればよいが、各安全装置の安全回路部分は、その回路電圧に見合った定格の部品が必要となり、コストが多大となる。また、全ての安全装置が直列に接続されているため、保守員は、どの安全装置が作動したか、エレベータにおけるどの種類の動作検出機能における安全装置が作動したかを調べるためには安全装置の一つ一つを確認しなければならず、非常に時間を要してしまう。
【0005】
これらの問題の解決を図る手段として、例えば特許文献1に開示されるように、全ての安全装置に無線通信手段を設けることで無線による安全回路を構成したものや、例えば特許文献2に開示されるように、安全回路をドア閉確認スイッチの回路とそれ以外の回路の2つに分けたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−40543号公報
【特許文献2】特開平7−2472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した特許文献1のように、安全装置の全てに無線通信手段を設けて無線による安全回路を構成する場合、安全装置の全てを無線通信可能にするためのコストが多大となってしまい、また、エレベータ自体に異常が無いのにも関わらず、電波障害などの影響により走行不可能状態となってしまう事が考えられる。
【0008】
また、前述した特許文献2のように安全回路をドア閉確認スイッチの回路とその他の回路の2つに分けた場合では、ドア閉確認スイッチ以外の安全装置のいずれかが作動してエレベータが停止した事に伴って保守員が復旧作業を行なう場合、ドア閉確認スイッチ以外の全ての安全装置が直列に接続されている事により、エレベータにおける異なる動作検出機能の安全装置が混在してしまっているため、保守員は、直列部分の安全装置の一つ一つを確認しなければ、どの安全装置が作動したか、どの種類の動作検出機能における安全装置が作動したかを調べることができない点は改善されていない。また、前述したその他の安全回路は従来と同様に昇降路を何往復もする回路となってしまい、電圧降下が必要十分に低減されているとはいえない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、エレベータの複数種類の安全回路の作動状態を容易に特定でき、かつ回路自身の電圧降下を必要十分に低減することが可能になるエレベータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明に係わるエレベータは、エレベータにおける動作検出機能別に区分された複数箇所のそれぞれについて、互いに電気的に分離して設けられた安全回路と、前記それぞれの安全回路の動作を個別に監視する監視手段と、前記監視手段による監視結果を出力する出力手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エレベータの複数種類の安全回路の作動状態を容易に特定でき、かつ回路自身の電圧降下を必要十分に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態におけるエレベータの安全回路の構成例を示す図。
【図2】本発明の実施形態におけるエレベータの安全回路の監視結果の出力構成例を示す図。
【図3】本発明の実施形態におけるエレベータの安全回路の監視に関わる処理動作の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面により本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態におけるエレベータの安全回路の構成例を示す図である。
図1に示すように、本発明の実施形態におけるエレベータは、乗りかご1、かごドア2、ホールドア3、かごドア安全回路スイッチ4、かご上安全スイッチ5、ホールドア安全スイッチ6、昇降路安全回路接点7、安全回路監視装置8、エレベータ制御装置9、ホール安全回路10、乗りかご安全回路11、昇降路安全回路12、昇降路人為操作安全回路13、かご人為操作安全回路14、ピット安全スイッチ15、非常救出ドア16、非常救出ドア安全スイッチ17、安全回路状態表示装置18、非常救出ドア安全回路19を備える。
【0014】
本実施形態では、安全回路として、エレベータの動作検出機能別に電気的に分離した6種類の回路が設けられる。具体的には、図1に示すように、ホールドア安全スイッチ6を有するホール安全回路10、かごドア安全回路スイッチ4を有する乗りかご安全回路11、昇降路安全回路接点7を有する昇降路安全回路12、人為操作型のかご上安全スイッチ5を有するかご人為操作安全回路14、人為操作型のピット安全スイッチ15を有する昇降路人為操作安全回路13、および非常救出ドア安全スイッチ17を有する非常救出ドア安全回路19に区分される。それぞれの安全回路は安全回路監視装置8に接続される。
【0015】
ホールドア安全スイッチ6は、各階床のホールドアに設けられ、当該ホールドアの開閉状態を検出するスイッチである。ホール安全回路10は、伝送線に各階床のホールドア安全スイッチ6が数珠繋ぎにされてなり、何れか一つのホールドアが開いていて当該ドアに対応するホールドア安全スイッチ6が作動すると、ホール安全回路10が遮断される。
【0016】
かごドア安全回路スイッチ4は、かごドアの開閉状態を検出するスイッチである。乗りかご安全回路11は、安全回路監視装置8から延びる伝送線の端部にかごドア安全回路スイッチ4が設けられてなり、かごドアが開いて当該かごドア安全回路スイッチ4が作動すると、乗りかご安全回路11が遮断される。
【0017】
昇降路安全回路接点7は、昇降路の最上階および最下階付近に設けられ、乗りかご1が昇降路の最上階および最下階付近における、通常は位置しない箇所に位置するか否かを検出するスイッチである。昇降路安全回路12は、伝送線と昇降路の最上階付近の昇降路安全回路接点7、および昇降路の最下階付近の昇降路安全回路接点7が数珠繋ぎにされてなり、乗りかご1が前述した通常は位置しない箇所に位置することで何れか一つの昇降路安全回路接点7が作動すると、昇降路安全回路12が遮断される。
【0018】
かご上安全スイッチ5は、保守員がかご上に乗った際に当該保守員により操作されるスイッチである。かご人為操作安全回路14は、安全回路監視装置8から延びる伝送線の端部にかご上安全スイッチ5が設けられてなり、当該かご上安全スイッチ5が操作される事で作動すると、かご人為操作安全回路14が遮断される。
【0019】
ピット安全スイッチ15は、保守員がピットに入った際に当該保守員により操作されるスイッチである。昇降路人為操作安全回路13は、安全回路監視装置8から延びる伝送線の端部にピット安全スイッチ15が設けられてなり、当該ピット安全スイッチ15が操作される事で作動すると、昇降路人為操作安全回路13が遮断される。
【0020】
本実施形態では、乗りかご1は各階床のうち所定の階床を通過階として通過する急行運転を行っている。非常救出ドア安全スイッチ17は、乗りかご1の通過階に設けられる非常救出ドア16の開閉状態を検出するスイッチである。非常救出ドア安全回路19は、伝送線に各通過階の非常救出ドア安全スイッチ17が数珠繋ぎにされてなり、何れか一つの非常救出ドア16が開いていて当該ドアに対応する非常救出ドア安全スイッチ17が作動すると、非常救出ドア安全回路19が遮断される。
【0021】
また、図示はしないが、乗りかご1は当該乗りかご1に対応して設けられるシーブに巻き掛けられたロープを介してカウンタウェイトと連結されており、エレベータ制御装置9による制御にしたがった巻上機の駆動によるシーブの回転に伴い、カウンタウェイトとともに互いに上下反対方向に昇降する。
【0022】
安全回路監視装置8は、分離されたそれぞれの安全回路の通電状態を周期的に確認する。
安全回路監視装置8は、図1に示すように6種類に分離された全ての安全回路のそれぞれが通電していて安全な状態、つまりエレベータを支障なく運転できる状態である事を確認出来た場合に限り、エレベータ制御装置9に対して乗りかご1の運転を許可する指示を行なう。
【0023】
逆に、安全回路監視装置8は、前述のように分離された安全回路の内、少なくとも一つの安全回路が通電しておらず、通常の運転を行えない状態である場合、つまりエレベータが安全な状態である事を確認できない場合、エレベータ制御装置9に対してエレベータの運転を禁止する指示を行なう。
また、安全回路監視装置8はエレベータ制御装置9に組み込まれていてもよい。
【0024】
本実施形態では、安全回路の状態の表示に加え、安全回路の状態の監視結果を建物の管理室やエレベータ保守会社の保守サービスセンタに通知する事も可能である。図2は、本発明の実施形態におけるエレベータの安全回路の監視結果の出力構成例を示す図である。
安全回路監視装置8は、それぞれの安全回路の状態、例えば正常、点検中、異常の発生などを示す情報を遠隔保守用通信装置23に出力する。
【0025】
遠隔保守用通信装置23は、前述した安全回路の状態を示す情報を、対応した通信プロトコルに従って、ビル管理室24内の報知用通信端末装置に送信する。
また、遠隔保守用通信装置23は、前述した安全回路の状態を示す情報を、通信ネットワーク22を介して保守サービスセンタ25内の報知用通信端末装置に送信する。
【0026】
通信プロトコルは、例えば、ビル管理室24の報知用通信端末装置に対してはビル内ネットワークでよく用いられているLonWorks(登録商標)などが挙げられ、保守サービスセンタ25内の報知用通信端末装置に対してはTCP/IPなどが挙げられる。
【0027】
ビル管理室24や保守サービスセンタ25のオペレータは、監視対象のエレベータが故障などで運転を停止した際、当該エレベータのどの安全装置が作動したか否かをある程度特定できるため、エレベータ利用者に対して停止した理由や現在の状況を通知する事ができる。
【0028】
以上のように、本実施形態では、2種類の人為操作安全回路とそれ以外の4種類の回路のそれぞれを電気的に分離しているが、分離数は特に限定されない。
ただし、少なくとも、かご上安全スイッチ5やピット安全スイッチ15といった、人為操作型のスイッチを有する回路と、かごドア安全回路スイッチ4、ホールドア安全スイッチ6、非常救出ドア安全スイッチ17といった、ドアの開閉状態を検出するドアスイッチを有する回路と、昇降路安全回路接点7といった、エレベータの運転状態が異常な状態の場合に作動する接点を有する回路とは別々の回路にする事が望ましい。これにより、機能別に電気的に分離した安全回路を実現できる。
また、安全回路の分離数を安全スイッチや接点の数の合計と等しくすれば、安全回路監視装置8は、個々の安全スイッチや接点の状態を個別に監視できる。具体的には、例えば、前述したように伝送路に各階床のホールドア安全スイッチ6を数珠繋ぎとしたホール安全回路10を各階床のホールドア安全スイッチ6のそれぞれについて電気的に分離した回路とすれば、安全回路監視装置8は、どの階床のホールドア3が開いているかを容易に監視できる。
【0029】
従来のエレベータであれば、1本の安全回路が昇降路を何往復もする事になるため、電線長が非常に長くなってしまうが、本実施形態にように安全回路を機能別に電気的に分離した事により、一種類の安全回路の電線長を最大で昇降路1往復分に短縮する事ができる。
【0030】
次に、図1に示した構成のエレベータの動作について説明する。図3は、本発明の実施形態におけるエレベータの安全回路の監視に関わる処理動作の一例を示すフローチャートである。ここでは、前述したように機能別に電気的に分離した安全回路を安全サブチェーン(SC)と呼称する。
まず、安全回路監視装置8は、所定のタイミングで、昇降路人為操作安全回路13の信号を確認し(ステップS1)、かご人為操作安全回路14の信号を確認し(ステップS2)、ホール安全回路10の信号を確認し(ステップS3)、乗りかご安全回路11の信号を確認し(ステップS4)、昇降路安全回路12の信号を確認し(ステップS5)、非常救出ドア安全回路19の信号を確認し(ステップS6)、これらの確認結果を内部メモリに保持する(ステップS7)。
【0031】
安全回路監視装置8は、このように6種類の安全サブチェーンの状態を確認した結果、全ての安全サブチェーンの信号の通電が確認でき、エレベータが安全な状態である事が確認できた場合には(ステップS8のYES)、エレベータ制御装置9に対し、エレベータ運転を許可する信号を出力する(ステップS9)。そして、安全回路監視装置8は、エレベータが正常状態にある旨を示すメッセージを安全回路状態表示装置18に表示させ、かつ、当該メッセージおよびエレベータ設置先のビル21の建物名や号機名の情報を遠隔保守用通信装置23に出力し、これらの情報を、遠隔保守用通信装置23に出力する。遠隔保守用通信装置23は、この出力された情報をビル管理室24内の報知用通信端末装置や保守サービスセンタ25内の報知用通信端末装置に報知させる(ステップS10)。
【0032】
逆に、安全回路監視装置8は、前述したように安全サブチェーンの信号を確認した結果、安全サブチェーンの内、少なくとも1つの安全サブチェーンの信号の通電がなされていない、つまりエレベータが安全である事が確認できない場合には(ステップS8のNO)、エレベータ制御装置9に対し、エレベータ運転を禁止する信号を出力する(ステップS11)。つまり、エレベータ制御装置9は、安全回路の何れかが通電状態でない事を監視した場合に、乗りかご1の運転を禁止する運転制御手段として機能する。
【0033】
そして、安全回路監視装置8は、通電状態でなくなった安全サブチェーンが人為操作安全チェーンなのか、ドア安全チェーンなのか、その他の安全チェーンなのかを判定する。
具体的には、安全回路監視装置8は、前述したように保持した信号確認結果のうち、昇降路人為操作安全回路13の信号確認結果を取得して(ステップS12)、かご人為操作安全回路14の信号確認結果を取得する(ステップS13)。
【0034】
安全回路監視装置8は、これらの確認結果のうち何れかが、信号が通電されていないとの確認結果である場合には(ステップS14のNO)、安全回路監視装置8は、人為的に安全回路が遮断されてエレベータの運転を禁止している旨を示すメッセージ、例えば「点検中」と表示されたメッセージを安全回路状態表示装置18に表示させ、かつ、当該メッセージおよびエレベータ設置先のビル21の建物名や号機名の情報を、遠隔保守用通信装置23を介してビル管理室24内の報知用通信端末装置や保守サービスセンタ25内の報知用通信端末装置に報知させる(ステップS15)。
【0035】
ステップS15の処理後、もしくはステップS14の処理で「YES」と判別された場合、安全回路監視装置8は、前述したように保持した確認結果のうち、ホール安全回路10の信号確認結果を取得し(ステップS16)、乗りかご安全回路11の信号確認結果を取得し(ステップS17)、非常救出ドア安全回路19の信号確認結果を取得し(ステップS18)、これらの確認結果のうち何れかが、信号が通電されていないとの確認結果である場合には(ステップS19のNO)、安全回路監視装置8は、ドアが開いている旨を示すメッセージを安全回路状態表示装置18に表示させ、かつ、当該メッセージおよびエレベータ設置先のビル21の建物名や号機名の情報を、遠隔保守用通信装置23を介してビル管理室24内の報知用通信端末装置や保守サービスセンタ25内の報知用通信端末装置に報知させる(ステップS20)。
【0036】
ステップS20の処理後、もしくはステップS19の処理で「YES」と判別された場合、安全回路監視装置8は、前述したように保持した確認結果のうち、昇降路安全回路12の信号確認結果を取得し(ステップS21)、この確認結果が、信号が通電されていないとの確認結果である場合には(ステップS22のNO)、安全回路監視装置8は、エレベータの運転状態の異常を示すメッセージ、例えば「故障停止中」と表示されたメッセージを安全回路状態表示装置18に表示させ、かつ、当該メッセージおよびエレベータ設置先のビル21の建物名や号機名の情報を、遠隔保守用通信装置23を介してビル管理室24内の報知用通信端末装置や保守サービスセンタ25内の報知用通信端末装置に報知させる(ステップS23)。
【0037】
安全回路監視装置8は、ステップS10やステップS23の処理後、もしくはステップS22の処理で「YES」と判別された場合は、再び各種の安全回路の状態を確認し、この処理を周期的に繰り返す。
この処理の周期は、いずれかの安全装置が正常ではない状態になってから、エレベータの乗客を危険な状態にさらすまで、または、エレベータ機器が破損する恐れのある状態になるまでの時間から、エレベータ制御装置9がエレベータを停止させるのにかかる最大の時間を差し引いた時間以内である必要がある。
【0038】
安全回路状態表示装置18による安全回路の状態表示は前述した例のように文字列表示でも良いが、ランプやLEDなどによる表示や7セグメントによる数字やアルファベットでの状態コード表示、液晶ディスプレイなどによる文字またはイラスト表示でも良い。
表示する場所の例としては、保守員が点検時にアクセスする制御盤、機械室がなく制御盤が昇降路内にあるエレベータの場合には保守端末を使用する場所などが挙げられる。
【0039】
以上のように、本発明の実施形態におけるエレベータでは、エレベータにおける動作検出機能別に電気的に分離した複数の安全回路とする事で、保守員は、安全装置が作動した場合に、作動した安全装置の種別を容易に特定する事ができる。
【0040】
特に、エレベータ保守員やビル管理者がエレベータの保守・点検のために操作する安全スイッチや安全装置のみを有する安全回路とその他の安全回路とを分離して構成する事によって、人の手によって安全回路が遮断されたのか、異常発生によって安全回路が遮断されたかを容易に特定できる。
【0041】
また、各々の回路の電線長を従来のように一筆書き状の安全回路と比較して大幅に短くし、前述したように、一種類の安全回路の電線長を最大で昇降路1往復分に短縮する事ができるので、それぞれの回路自身の電圧降下を従来と比較して必要十分に小さくする事ができる。また、安全回路自身の電圧降下を小さくできることにより回路電圧を低くでき、安全装置の回路部分の定格電圧を下げる事ができるので、コストおよび安全性の面で有利である。
【0042】
また、本実施形態では、通電されていない安全回路に対応する情報をメッセージとして表示したり外部に報知したりすると説明したが、これに限らず、音声出力などを用いて建物の内部や外部に伝達するようにしてもよい。
【0043】
なお、この発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を省略してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…乗りかご、2…かごドア、3…ホールドア、4…かごドア安全回路接点、5…かご上安全回路接点、6…ホールドア安全回路接点、7…昇降路安全回路接点、8…安全回路監視装置、9…エレベータ制御装置、10…ホール安全回路、11…乗りかご安全回路、12…昇降路安全回路、13…昇降路人為操作安全回路、14…かご人為操作安全回路、15…ピット安全スイッチ、16…非常救出ドア、17…非常救出ドア安全スイッチ、18…安全回路状態表示装置、19…非常救出ドア安全回路、21…ビル、22…通信ネットワーク、23…遠隔保守通信装置、24…ビル管理室、25…保守サービスセンタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータにおける動作検出機能別に区分された複数箇所のそれぞれについて、互いに電気的に分離して設けられた安全回路と、
前記それぞれの安全回路の動作を個別に監視する監視手段と、
前記監視手段による監視結果を出力する出力手段と
を備えたことを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
前記安全回路は、
人為操作安全スイッチを有する回路と、その他の安全装置を有する回路とが互いに電気的に分離して設けられる回路である
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記安全回路は、
人為操作型の安全スイッチを有する回路と、ドアの開閉状態を検出するドアスイッチを有する回路と、エレベータの動作異常を検出する異常検出スイッチを有する回路とが互いに電気的に分離して設けられる回路である
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項4】
前記安全回路は、
昇降路の最上階および最下階付近の昇降路安全接点を有する昇降路安全回路と、かごドア安全回路スイッチを有する乗りかご安全回路と、人為操作型のかご上安全スイッチを有するかご人為操作安全回路と、人為操作型のピット安全スイッチを有する昇降路人為操作安全回路と、ホールドア安全スイッチを有するホール安全回路と、非常救出ドア安全スイッチを有する非常救出ドア安全回路とのうち複数種類の回路が互いに電気的に分離して設けられる回路である
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項5】
前記監視手段は、前記安全回路のそれぞれが通電状態にあるか否かを監視し、
前記安全回路の何れかが通電状態でないことを前記監視手段により監視した場合に、乗りかごの運転を禁止する運転制御手段をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項6】
前記出力手段は、
前記監視手段による監視結果を建物内のエレベータ監視室および建物外のエレベータ監視センタの少なくとも一方に出力する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−208780(P2010−208780A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55514(P2009−55514)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】