説明

エンコーダシステム

【課題】小型のロータリーエンコーダで、高分解能かつ耐ノイズ性に優れたエンコーダシステムを提供する。
【解決手段】モータの回転軸に取付けられ、正弦波、余弦波のアナログ電圧信号1aを発生するエンコーダ3からの情報に基づき、モータをサーボアンプ8で駆動するシステムにおいて、アナログ電圧信号1aをディジタル信号に変換するADコンバータ2と、変換されたディジタルデータをシリアルデータとしてサーボアンプ8に伝送するシリアル伝送手段4と、シリアルデータから位置情報あるいは計数情報を出力するデータ処理部7とを備え、データ処理部7に、ディジタルデータに変換された正弦波、余弦波情報を高分解能化する内挿処理手段6を有し、データ処理部7をサーボアンプ8に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はFA機器に使用するロータリーエンコーダのデータ処理部をサーボアンプに備えたエンコーダシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリーエンコーダは、正弦波、余弦波のアナログ電圧信号を直接サーボアンプに出力するアナログ出力のもの、整形されたディジタルパルス出力をサーボアンプに出力する光学式または磁気式のエンコーダ等があり、アナログ出力のエンコーダにシリアルコンバータを外付けにしたもの(例えば、特許文献1参照)、エンコーダの高分解能化のために正弦波、余弦波のアナログ電圧信号を内挿処理し逓倍する方法が一般的に実施されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−53611号公報
【特許文献2】特開2005−245126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
解決しようとする問題点は、ロータリーエンコーダ本体の小型化と耐ノイズ性の確保であり、小型化による組み立て精度の確保および内挿処理回路の実装スペースの確保が困難な点である。
【0004】
エンコーダの高分解能化は固定板、回転板のスリットを微細化することにより可能であるが、過度の微細化は光の回折の影響を受けやすくなるため限界がある。また、同一のスリットの条件で回転板の径を1/2にすると、平面的位置合わせ精度は1/4になるためスリットを微細化することは、その分の高い組み立て精度が要求され、量産性、低コスト化の妨げとなっていた。
【0005】
一方、小型化のため固定板、回転板のスリット幅を広くし分解能を下げると、高分解能化を図るための内挿処理部が必要となり、小型化の妨げとなっていた。
【0006】
さらに、アナログ信号をそのまま出力し、サーボアンプに伝送後に内挿処理を施すと、ノイズにより内挿処理精度が低下する耐ノイズ性の問題があった。
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、小型のロータリーエンコーダで、高分解能かつ耐ノイズ性に優れたエンコーダシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエンコーダシステムは、モータの回転軸に取付けられ、正弦波、余弦波のアナログ電圧信号を発生するエンコーダからの情報に基づき、前記モータをサーボアンプで駆動するシステムにおいて、前記アナログ電圧信号をディジタル信号に変換するADコンバータと、変換されたディジタルデータをシリアルデータとしてサーボアンプに伝送する伝送手段と、シリアルデータから位置情報あるいは計数情報を出力するデータ処理部とを備え、前記データ処理部をサーボアンプに設けたものである。
【0009】
また、前記データ処理部に、ディジタルデータに変換された正弦波、余弦波情報を高分解能化する内挿処理手段を設ける。さらに、前記ADコンバータをΣΔ変換コンバータで構成しても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエンコーダシステムによれば、受光素子で生成された正弦波原信号をディジタルデータへ変換し、サーボアンプに伝送するため、ノイズによる正弦波情報の劣化が抑制されるとともに、エンコーダ本体を小型化することができる。
【0011】
また、ディジタルデータをサーボアンプで内挿処理して高分解能情報を得るため、エンコーダ本体の固定板、回転板のスリットの幅を広くすることが可能となり、組み立て精度の確保が容易になる。
【0012】
さらに、ディジタルデータ変換にΣΔ変換を施し、カスタムIC、マイコンなどで処理する際のディジタルフィルタの特性変更を容易化できる。また、ΣΔ変換により重み付けのないディジタル信号を出力するので、従来の構成に比して、ΣΔ変換コンバータ、伝送手段とサーボアンプに構成されたディジタルフィルタまでの信号の伝送経路におけるノイズの影響が極めて小さくできる。
【0013】
したがって、小型のロータリーエンコーダで、高分解能かつ耐ノイズ性に優れたエンコーダシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のエンコーダシステムは、モータの回転軸に取付けられ、正弦波、余弦波のアナログ電圧信号を発生するエンコーダからの情報に基づき、前記モータをサーボアンプで駆動するシステムにおいて、前記アナログ電圧信号をディジタル信号に変換するADコンバータと、変換されたディジタルデータをシリアルデータとしてサーボアンプに伝送するシリアル伝送手段と、シリアルデータから位置情報あるいは計数情報を出力するデータ処理部とを備え、前記データ処理部に、ディジタルデータに変換された正弦波、余弦波情報を高分解能化する内挿処理手段を設け、前記データ処理部をサーボアンプに設けたものである。
【実施例1】
【0015】
図1において、エンコーダシステムは、モータの回転軸に取付けられ、正弦波、余弦波のアナログ電圧信号を発生する原信号生成部1と、このアナログ電圧信号をディジタルデータに変換するADコンバータ2から構成されるエンコーダ3と、ディジタルデータを伝送するシリアル伝送手段4と、ディジタルフィルタ5、内挿処理手段6とで構成されるデータ処理部7と、制御部9とを備えたサーボアンプ8とで構成される。
【0016】
モータの回転により変化するアナログ電圧信号1aは、ADコンバータ2によりディジタルデータに変換され、シリアル伝送手段4にてサーボアンプ8に送られる。データ処理部7ではデータを受け、ディジタルフィルタ5、内挿処理手段6により位置データ情報、計数情報を生成し、その情報に基づき制御部9でモータ駆動を行う。
【0017】
高分解能化のため、サーボアンプ8に信号を送ってから信号を内挿処理し高分解能のデータを生成するので、この時点での分解能は組み立て性を考慮し、且つ光の回折の影響がない幅によって決まる低い値とすることができる。また、小型化の妨げとなる内挿処理手段6をエンコーダ3に備えないため、エンコーダ3を小型化することができる。
【0018】
このように、エンコーダでは小型化の妨げとなる内挿処理を実施せず、原信号生成部1のアナログ電圧信号1aをディジタルデータに変換するだけの処理を行い、ディジタルデータを伝送するので小型化に特化することができ、耐ノイズ性に優れる。さらに、アンプ8にてディジタルデータをもとに内挿処理を実施することで高分解能位置データを得ることができる。
【0019】
また、ディジタルデータへの変換にΣΔ変換を施すことにより、それをカスタムIC、マイコンで処理する際のディジタルフィルタの特性変更も容易である。その上、ΣΔ変換により重み付けのないディジタル信号を出力するので、従来のシリアル信号出力型のADコンバータを用いた構成、すなわち重み付けのあるディジタル信号が出力される構成に比して、ΣΔ変換器、伝送手段とアンプに構成されたディジタルフィルタまでの信号の伝送経路におけるノイズの影響が極めて小さい。
【0020】
したがって、エンコーダに内挿処理手段を搭載しないため小型化に特化でき、さらに固定板、回転板のスリット幅を広げ、データ変換と伝送手段を付加しアンプで内挿処理することにより、耐ノイズ性を向上させ、組み立ての容易な高分解能、小型エンコーダを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のエンコーダシステムは小型化、高分解能化に最適であり、伝送中の耐ノイズ性を必要とする用途にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1におけるエンコーダシステム要部の説明図
【符号の説明】
【0023】
1 原信号生成部
1a アナログ電圧信号
2 ADコンバータ
3 エンコーダ
4 伝送手段(シリアル伝送手段)
5 ディジタルフィルタ
6 内挿処理手段
7 データ処理部
8 サーボアンプ
9 制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転軸に取付けられ、正弦波、余弦波のアナログ電圧信号を発生するエンコーダからの情報に基づき、前記モータをサーボアンプで駆動するシステムにおいて、前記アナログ電圧信号をディジタル信号に変換するADコンバータと、変換されたディジタルデータをシリアルデータとしてサーボアンプに伝送する伝送手段と、シリアルデータから位置情報あるいは計数情報を出力するデータ処理部とを備え、前記データ処理部をサーボアンプに設けたことを特徴とするエンコーダシステム。
【請求項2】
前記データ処理部に、ディジタルデータに変換された正弦波、余弦波情報を高分解能化する内挿処理手段を有する請求項1に記載のエンコーダシステム。
【請求項3】
前記ADコンバータをΣΔ変換コンバータで構成した請求項1に記載のエンコーダシステム。


【図1】
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【公開番号】特開2008−98996(P2008−98996A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278730(P2006−278730)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】