説明

エンコーダ及びエンコーダのパターン検出方法

【課題】検出精度を向上させ、高精度を有するエンコーダを提供すること。
【解決手段】パターンを有し、回転軸を中心として回転する回転部と、パターンを検出する第一パターン検出部と、当該第一パターン検出部とは別にパターンを検出する第二パターン検出部と、第一パターン検出部又は第二パターン検出部における検出異常の有無を検出する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダ及びエンコーダのパターン検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転角度を検出する検出装置として、光学式や磁気式の回転角度検出装置がある。光学式回転角度検出装置は、検出部にフォトダイオードなどの光電変換素子を使用しており、高精度の回転角度検出が可能であるが、結露や油の飛沫が検出部に直接かかるような環境では使用することは難しい場合がある。磁気式回転角度検出装置(例えば、特許文献1参照)は、ホール素子や磁気抵抗素子のような磁気検出素子を使用しており、検出精度を高精度にすることは比較的難しいが、結露や油の飛沫が検出部に直接かかる環境下でも使用できる。このような回転角度検出装置は、エンコーダに用いられることもある。
なお、従来技術として、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−20548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、回転角度検出装置がロボットや産業用工作機械などのエンコーダにも適用され、高精度を有し、しかも前述のような厳しい環境下でも使用できるエンコーダが要求されるようになってきている。
【0005】
上述した磁気式回転角度検出装置の検出素子として、ホール素子や磁気抵抗素子のような磁気検出素子を使用しているが、小型で低価格であることからホール素子が比較的多く使用されている。しかしながらホール素子は、検出感度のばらつきや、環境温度によるオフセット電圧変動のバラツキなどがある。このように、ホール素子のような磁気検出素子の出力はばらつくため、使用する磁気検出素子のバラツキを揃えなければ、高精度の磁気式角度検出装置が得られないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、検出精度を向上させ、高精度を有するエンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様に従えば、パターンを有し、回転軸を中心として回転する回転部と、パターンを検出する第一パターン検出部と、当該第一パターン検出部とは別にパターンを検出する第二パターン検出部と、第一パターン検出部又は第二パターン検出部における検出異常の有無を検出する制御部とを備えるエンコーダが提供される。
【0008】
本発明の第二の態様に従えば、測定対象の回転軸部材に固定される回転部に設けられたパターンを、第一パターン検出部及び第二パターン検出部によって検出するパターン検出工程と、第一パターン検出部又は第二パターン検出部における検出異常の有無を、制御部によって検出する異常検出工程とを有するエンコーダのパターン検出方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、検出精度を向上させ、高精度を有するエンコーダが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の一実施形態によるエンコーダの構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の第1実施形態による磁気式回転角度検出装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】第1実施形態による磁気式回転角度検出装置の第1の接続状態における構成を示す構成図である。
【図4】第1実施形態による磁気式回転角度検出装置の第2の接続状態における構成を示す構成図である。
【図5】第1実施形態による第1の接続状態におけるホール素子の等化回路の構成を示す構成図である。
【図6】第1実施形態による第2の接続状態におけるホール素子の等化回路の構成を示す構成図である。
【図7】第1実施形態において、ホール素子の入力端子と出力端子とを周期的に入れ換えた場合に、合成増幅回路から出力される信号を例示する出力図である。
【図8】第1実施形態において、環境温度を変化させた場合における合成増幅回路から出力される信号電圧の平均化前後の電圧値を示す出力図である。
【図9】第1実施形態において、ホール素子の入力端子と出力端子とを周期的に入れ換える一例としてのエンコーダ装置の構成を示す概略構成図である。
【図10】第1実施形態において、各出力信号をデジタル信号に変換するタイミングを説明するタイミングチャートである。
【図11】図1の第1実施形態によるエンコーダ装置における信号処理回路の構成を示すブロック図である。
【図12】本実施形態による一例としての2相信号などの波形を示す波形図である。
【図13】本実施形態による出力軸の第2のエンコーダ4の回転角度に対する入力軸の第1のエンコーダ3の回転角度誤差を示した図である。
【図14】本実施形態による誤差補正値を得る第2の方法の場合におけるエンコーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図15】本実施形態による誤差を補正するための図16の表を生成するための表である。
【図16】本実施形態による誤差を補正するための表である。
【図17】この発明の第2実施形態による磁気式回転角度検出装置の一例を示す概略構成図である。
【図18】第2実施形態による磁気式回転角度検出装置の第1の接続状態における構成を示す構成図である。
【図19】第2実施形態による磁気式回転角度検出装置の第2の接続状態における構成を示す構成図である。
【図20】この発明の第3実施形態による磁気式回転角度検出装置の一例を示す概略構成図である。
【図21】第3実施形態による磁気式回転角度検出装置の第1の接続状態における構成を示す構成図である。
【図22】第3実施形態による磁気式回転角度検出装置の第2の接続状態における構成を示す構成図である。
【図23】本実施形態による磁気式回転角度検出装置において、ホール素子の合成方法と合成されたホール素子とを説明する説明図である。
【図24】本実施形態において、ホール素子を駆動する定電流駆動回路の構成を示す構成図である。
【図25】本実施形態における差動出力回路の構成を示す構成図である。
【図26】本実施形態における異常検出回路の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、この発明の一実施形態によるエンコーダ装置(エンコーダ)の構成を示す概略ブロック図である。
【0012】
このエンコーダ装置は、モータ1と、動力伝達装置2と、第1のエンコーダ(第1の絶対位置エンコーダ)3と、第2のエンコーダ(第2の絶対位置エンコーダ)4と、入力軸10と、出力軸11と、を有する。また、上位装置であるコントローラ8と、コントローラ8と第1のエンコーダ3との間の通信線である通信ライン9と、コントローラ8とモータ1との間を接続するモータ制御線14と、を有する。また、第1のエンコーダ3と第2のエンコーダ4とは、通信線12および設定制御線13により接続されている。
【0013】
モータ1は、入力軸10を回転させる。動力伝達装置2は、入力軸10の回転に応じて、予め定められている伝達比(動力伝達比)で減速して出力軸11を回転させる。すなわち、このエンコーダ装置においては、モータ1が入力軸10を回転させ、この入力軸10が回転することにより、動力伝達装置2を介して出力軸11が回転する。なお、この動力伝達装置2は、たとえば、1つまたは複数のギア、ベルト装置、チェーン装置、および、ドライブシャフト装置、または、これらの組み合わせにより構成されている。
【0014】
第1のエンコーダ3は、1回転型のアブソリュートエンコーダであって、入力軸10の角度位置に応じた第1の検出信号を出力する(第1の絶対位置出力工程)。この第1のエンコーダ3は、モータ1の入力軸10の角度位置を検知する機能を有しており、機械角360度の何処に位置するのかを検知できる1回転型のアブソリュートエンコーダである。
なお、1回転型のアブソリュートエンコーダとは、回転情報として「何回転、まわったのか?」という、所謂、「多回転データ・多回転情報」を検知する事が出来ないエンコーダのことである。第2のエンコーダ4は、第1のエンコーダ3と同様に1回転型のアブソリュートエンコーダであって、出力軸11の角度位置に応じた第2の検出信号を出力する(第2の絶対位置出力工程)。
【0015】
第1のエンコーダ3と第2のエンコーダ4とは、たとえば、入力軸10または出力軸11のうちの対応する軸の回転に応じて回転するN極とS極とを有する回転ディスクと、この回転ディスクの回転中心軸に対して互いの角度が90度になるようにして所定の位置に配置されている磁気センサ装置としての2つのホール素子とで、構成されている。そして、入力軸10または出力軸11が回転することにより、この軸に対応する回転ディスクがN極とS極とを有する回転磁石として回転し、これにより、ホール素子からは、一回転につき1周期の正弦波状の信号がそれぞれ出力される。なお、ホール素子は、互いに90度の角度を有して配置されているため、正弦波状の信号として、90度の位相差を有する正弦波、いわゆる2相擬似正弦波が出力される。
【0016】
このようにして、第1のエンコーダ3は、たとえば、それぞれが入力軸10の1回転に対して1周期の正弦波であるとともに、予め定められている位相分だけ互いの位相が異なる2つの信号である2相正弦波信号を第1の検出信号として出力する。また、第1のエンコーダ3と同様に、第2のエンコーダ4は、たとえば、それぞれが出力軸11の1回転に対して1周期の正弦波であるとともに、予め定められている位相分だけ互いの位相が異なる2つの信号である2相正弦波信号を第2の検出信号として出力する。
【0017】
ここで、たとえば、第1のエンコーダ3が、1回転でN個の信号を出力し、第2のエンコーダ4が、1回転でM個の信号を出力し、動力伝達装置2が、1:Nの比で入力軸10と出力軸11とを連結するものとする。この場合、第1のエンコーダ3が1回転する毎に、第2のエンコーダ4が1ディジットずつ回転するため、入力軸10の回転数量を検出することができるとともに、入力軸10の角度位置を検出することが可能である。よって、このエンコーダ装置は、出力軸11がM回転するまで、入力軸10の回転におけるN×M個の回転位置、すなわち、絶対位置を検出することが可能である。
【0018】
すなわち、このエンコーダ装置は、1回転型のアブソリュートエンコーダである第1のエンコーダ3と、1回転型のアブソリュートエンコーダである第2のエンコーダ4とを用いて、エンコーダ装置全体としては、多回転型アブソリュートエンコーダとして機能する。
【0019】
ところで、エンコーダ装置は、第1の信号処理回路6と第2の信号処理回路5(後述する第2の位置データ検出回路50)とを有している。たとえば、第1のエンコーダ3が、内部に、第1の信号処理回路6を有している。また、第2のエンコーダ4が、内部に、第2の信号処理回路5を有している。
【0020】
この第2の信号処理回路5には、第2のエンコーダ4で検出された第2の検出信号が入力される。そして、この第2の信号処理回路5は、第2のエンコーダ4から入力された第2の検出信号に基づいて、予め定められている信号処理により、出力軸11の角度位置を示す第2の位置データを検出する。すなわち、この第2の信号処理回路5は、入力された第2の検出信号を内挿処理して、第2の位置データを検出する(第2の位置データ検出工程)。
【0021】
そして、この第2の信号処理回路5は、検出した第2の位置データを、通信線12を介して第1のエンコーダ3に出力する。なお、この第2の信号処理回路5は、第2の位置データを検出する場合に、たとえば、動力伝達装置2の伝達比に対して少なくとも2倍以上の予め定められている分解能で第2の位置データを検出する。なお、このように少なくとも2倍以上とするのは、後述するように、第2の位置データにより示される出力軸の回転が、回転の前半であるか後半であるかを判定できるようにするためである。
【0022】
また、第1のエンコーダ3は、内部に、第1の信号処理回路6を有している。この第1の信号処理回路6には、第2のエンコーダ4が検出した第2の位置データが、通信線12を介して入力される。また、第1の信号処理回路6は、第1のエンコーダ3が検出した第1の検出信号を内挿処理して、入力軸10の角度位置を示す第1の位置データを検出する(第1の位置データ検出工程)。
【0023】
そして、第1の信号処理回路6は、検出した第1の位置データと入力された第2の位置データとに基づいて、入力軸10の回転数量とともに1回転内の角度位置を示す合成位置データを検出する。そして、第1の信号処理回路6は、検出した合成位置データを、通信ライン9介して、コントローラ8に出力する。
【0024】
これにより、コントローラ8においては、合成位置データにより、多回転型アブソリュートエンコーダとしてのエンコーダ装置から、入力軸10の回転数量とともに1回転内の角度位置を検出することが可能となる。そして、コントローラ8は、入力された合成位置データに基づいて、モータ制御線14を介してモータ1の回転を制御する。
【0025】
なお、第1の信号処理回路6と第2の信号処理回路5とは、設定制御線13により接続されている。第1の信号処理回路6は、この設定制御線13を介して、第2の信号処理回路5が内蔵する後述の記憶部に記憶されている設定値を変更する。
【0026】
たとえば、モータ1の回転軸10の一方には第1の絶対位置エンコーダ3(17ビット分解能)が装着され、回転軸10の他方には、第1の絶対位置エンコーダ3の動力伝達装置2が装着される。動力伝達装置2は減速比30〜200である。ここでは、減速比を100として説明する。動力伝達装置2の出力軸11には第2の絶対位置エンコーダ4(11ビット分解能)が装着されており、第1の位置データ検出回路5と第2の位置データ検出回路6から得られた第1の位置データと第2の位置データから、位置データ合成回路(後述する位置データ合成回路63)で出力軸の1回転分の絶対位置情報を求める。分解能は217(131072)×100=13,107,200となる。第2の位置データは出力軸10に装着されたN極とS極との2極の磁石からの磁場強度を、ホール素子により検出して生成される。
【0027】
[第1実施形態における磁気式回転角度検出装置100の構成]
次に、第1のエンコーダ3または第2のエンコーダ4の構成について説明する。ここでは、第1のエンコーダ3または第2のエンコーダ4を、磁気式回転角度検出装置100として説明する。
【0028】
図2は、この発明の第1実施形態による磁気式回転角度検出装置100の構成を示す概略ブロック図である。図2(a)に示すように、磁気式回転角度検出装置100は、磁石105を有する回転子106と、この回転子106の周囲に配置された複数の磁気検出素子H1とH2と、その磁気検出素子H1とH2やその他の制御部品を搭載した基板組109で構成されている。磁石105は、たとえば、永久磁石である。磁気検出素子H1とH2は、たとえば、それぞれホール素子である。以降、磁気検出素子H1とH2とを、ホール素子H1とH2と称して説明する。
【0029】
この図2(a)において、回転子106が紙面に対して垂直となる回転軸を中心として回転すると、回転子106の回転に伴い磁石105が回転し、ホール素子H1とH2とで検出される磁石105からの磁界が変化する。磁気式回転角度検出装置100は、この磁界の変化を、ホール素子H1とH2との2個のホール素子によりそれぞれ検出し、この検出した磁界の変化量から回転子106の回転角度を検出する。
【0030】
なお、図2(a)を用いて説明した4個のホール素子H1とH2とは、たとえば、それぞれが同様の検出感度を有しており、それぞれが同様の出力レベルを有している。また、2個のホール素子H1とH2とは、たとえば、それぞれ基板組109の平面上であって、回転子106の回転軸と法線ベクトルの方向を同一とする平面上に配置されており、回転子106の回転軸に対するホール素子H1とH2との角度が、予め定められている角度となるように円周上に配置されている。この予め定められている角度とは、たとえば、90度である。
【0031】
ホール素子H1とH2は、2つの出力端子(+と−)をそれぞれ有している。この2つの出力端子は、後述する合成増幅回路81および82の入力端子に接続されている(図2(b)参照)。この図2(b)における符号「H1−」は、図2(a)におけるホール素子H1の出力端子−から出力される信号を示している。以降、たとえば、ホール素子H1の出力端子+から出力される信号を「信号H1+」と称し、ホール素子H1の出力端子−から出力される信号を「信号H1−」と称して説明する。ホール素子2から出力される信号も、ホール素子H1から出力される信号と同様に称して説明する。
【0032】
次に図2(b)を用いて、上述した2個のホール素子で検出した磁界の変化量から回転子106の回転角度を検出する磁気式回転角度検出装置100の構成、すなわち、各ホール素子H1とH2とで検出した検出信号を合成し増幅する合成増幅回路81および82(第1の合成回路と第2の合成回路)について説明する。
【0033】
合成増幅回路81は、差動の加減算増幅回路を構成しており、抵抗RX41(第3の合成回路)と抵抗RX42(第4の合成回路)、加減算増幅回路713(第1の差動増幅回路)により構成されている。ホール素子H1から出力される信号H1−は、抵抗RX41を介して、加減算増幅回路713の第1の入力端子に、減算信号として入力される。ホール素子H1から出力される信号H1+は、抵抗RX42を介して、加減算増幅回路713の第2の入力端子に、加算信号として入力される。
【0034】
後述するように、この抵抗RX41は合成部711を構成し、この抵抗RX42は合成部712を構成する。合成部711と合成部712とでそれぞれ合成された信号が、加減算増幅回路713で加減算されるとともに増幅されて、加減算増幅回路713の出力端子からAチャネル(A相)の近似正弦波出力信号として出力される。
【0035】
上述した加減算増幅回路713の加算信号が入力される入力端子は、抵抗R12を介して接地されている。また、加減算増幅回路713の出力端子は、抵抗R13と抵抗R14との直列接続を介して接地されている。また、加減算増幅回路713の減算信号が入力される入力端子は、抵抗R13と抵抗R14との接続点に、抵抗R11を介して接続されている。
【0036】
なお、合成増幅回路81が、それぞれ差動増幅回路として機能するために、抵抗RX41と抵抗RX42とはそれぞれ同じ抵抗値であり、抵抗R11と抵抗R12とは同じ抵抗値であることが望ましい。
【0037】
合成増幅回路82は、合成増幅回路81と同様の構成を有しているが、合成増幅回路81とは接続されるホール素子が、ホール素子H1とH2とで、異なる。ここでは相違点のみについて説明する。この合成増幅回路82においては、信号H2−が抵抗RX41を介して、加減算増幅回路723に減算信号として入力される。また、信号H2+が抵抗RX42を介して、加減算増幅回路723に加算信号として入力される。
【0038】
後述するように、この抵抗RX41は合成部721を構成し、この抵抗RX42は合成部722を構成する。合成部721と合成部722とでそれぞれ合成された信号が、加減算増幅回路723で加減算されるとともに増幅されて、加減算増幅回路723の出力端子からBチャネル(B相)の近似正弦波出力信号として出力される。
【0039】
このBチャネルの近似正弦波出力信号とは、上述したAチャネルの近似正弦波出力信号と、電気的に90度位相の異なる信号である。これは、図2(a)を用いて説明したように、ホール素子H1とH2との間の角度が、回転子106の回転軸に対して90度となるように、ホール素子H1とH2とが円周上に配置されているためである。
【0040】
ところで、一般に、ホール素子の出力にはオフセットがある。このオフセットは、ホール素子が置かれている環境の温度変化に依存する場合がある。そのために、ホール素子の出力は、環境温度の変化に依存して変動してしまう可能性がある。次に、図3から図10を用いて、図2を用いて説明したホール素子H1とH2とのオフセットをキャンセルすることができる磁気式回転角度検出装置100の構成について説明する。
【0041】
まず、図3を用いて、第1実施形態におけるホール素子H1とH2とのオフセットをキャンセルすることができる磁気式回転角度検出装置100の構成について説明する。この図3に示す磁気式回転角度検出装置100の構成は、上記に図2を用いて説明した磁気式回転角度検出装置100の構成に対して、更に、スイッチング回路(切り替え回路)20−1と20−2が追加されている。
【0042】
また、このスイッチング回路20−1と20−2を駆動するために、スイッチング回路20−1と20−2に定電流を供給する定電流駆動回路101と102とが追加されている。また、このスイッチング回路20−1と20−2とを制御するスイッチング回路制御部(切り替え制御回路)112が追加されている。
【0043】
この図3では、スイッチング回路20−1と20−2は、一つのホール素子について8接点4回路の構成であり、アナログスイッチを用いている場合の構成が図示されている。
このアナログスイッチは、たとえば、トランジスタスイッチである。
【0044】
スイッチング回路20−1と20−2は、S端子をそれぞれ有しており、このS端子に入力される信号がHレベルであるかLレベルであるかにより、対応付けられているホール素子の入力端子と出力端子との接続を変更する(切り替え工程)。スイッチング回路制御部112の出力端子はスイッチング回路20−1と20−2がそれぞれ有するS端子と接続されており、スイッチング回路制御部112はこの出力端子からHレベルまたはLレベルの制御信号を出力する。
【0045】
スイッチング回路制御部112のT端子には外部から制御信号が入力される。スイッチング回路制御部112は、T端子に外部から入力される制御信号に基づいて、S端子から出力する電圧を、HレベルとLレベルとのうちいずれのレベルを出力するかを制御する。
また、定電流駆動回路101、定電流駆動回路102、および、スイッチング回路制御部112には、電源電圧+Vがそれぞれの電源端子に入力されている。
【0046】
次に、ホール素子の入力端子と出力端子とについて説明する。図2を用いて説明したホール素子H1とH2は、2つの入力端子と2つの出力端子(出力端子+と−)とを、それぞれ有している。このホール素子の入力端子とは、ホール素子に電源が供給される端子である。2つの入力端子は、対応する定電流駆動回路(101または102)、または、直列接続されているホール素子の入力端子と接続されているか、または、抵抗を介して接地されている。すなわち、2つの入力端子は、電源が供給されるように接続されている。一方、2つの出力端子は、合成増幅回路(例、合成増幅回路81)の入力端子に接続されている。
【0047】
スイッチング回路20−1と20−2は、対応するホール素子について、2つの入力端子に電源が供給されるように接続され、かつ、2つの出力端子が合成増幅回路の入力端子に接続されている第1の接続状態と、2つの出力端子に電源が供給されるように接続され、かつ、2つの入力端子が合成増幅回路の入力端子に接続されている第2の接続状態と、を切り替えるようにして、ホール素子の出力端子と出力端子との接続を変更する。このようにして、スイッチング回路20−1と20−2のそれぞれは、対応するホール素子の、2つの入力端子と2つの出力端子との接続を、それぞれ切り替える。
【0048】
図3は、たとえば、スイッチング回路20−1と20−2のS端子に入力されるレベルがHレベルである場合(上述した第1の接続状態の場合)の図であり、図4は、スイッチング回路20−1と20−2のS端子に入力されるレベルがLレベルである場合(上述した第2の接続状態の場合)の図である。
【0049】
次に、スイッチング回路20−1と20−2によるホール素子の入力端子と出力端子との接続の一例について、S端子に入力される信号がHレベルの場合とLレベルの場合とについて詳述する。
【0050】
S端子に入力される信号がHレベルの場合(上述した第1の接続状態の場合)は、ホール素子の接続は図3に示すようになっており、ホール素子H1においては、定電流駆動回路101の出力端子は、スイッチング回路20−1を介して、ホール素子H1の第1の入力端子に接続されている。また、ホール素子H1の第2の入力端子は、スイッチング回路20−1を介して、接地されている。
また、ホール素子H1の出力端子+と−は、スイッチング回路20−1を介して、図2を用いて説明したように、合成増幅回路81の入力端子に接続されている。ホール素子H2接続も、ホール素子H1の接続と同様である。
【0051】
一方、S端子に入力される信号がLレベルの場合(上述した第2の接続状態の場合)は、ホール素子の接続は図4に示すようになっており、ホール素子H1においては、定電流駆動回路101の出力端子は、スイッチング回路20−1を介して、ホール素子H1の出力端子−に接続されている。また、ホール素子H1の出力端子+は、スイッチング回路20−1を介して、接地されている。また、ホール素子H1の第1の入力端子から信号H1+が出力され、ホール素子H1の第2の入力端子から信号H1−が出力される。これらの信号は、スイッチング回路20−1を介して、図2を用いて説明したように、合成増幅回路81の入力端子に入力される。ホール素子H2の接続も、ホール素子H1の接続と同様である。
【0052】
この図3と図4とに示すように、スイッチング回路20−1と20−2との接続状態は、S端子に入力される電圧レベルがHレベルとLレベルとでは、すなわち、第1の接続状態の場合と第2の接続状態の場合とでは、逆になる。
【0053】
以降においては、図3に示すような第1の接続状態の場合において加減算増幅回路713の出力端子から出力されるAチャネルの近似正弦波出力信号の電圧値を電圧V1Aとし、図4に示すような第2の接続状態の場合において加減算増幅回路713の出力端子から出力されるAチャネルの近似正弦波出力信号の電圧値を電圧V2Aとして、説明する。同様に、上述した図3に示すような第1の接続状態の場合において加減算増幅回路723の出力端子から出力されるBチャネルの近似正弦波出力信号の電圧値を電圧V1Bとし、図4に示すような第2の接続状態の場合において加減算増幅回路723の出力端子から出力されるBチャネルの近似正弦波出力信号の電圧値を電圧V2Bとして、説明する。また、電圧V1Aまたは電圧V1Bを電圧V1とし、電圧V2Aまたは電圧V2Bを電圧V2として説明する。
【0054】
次に、ホール素子のオフセットをキャンセルする方法について説明する。ホール素子の等価回路を、図5に示すブリッジ回路に示す。この等価回路において、入力端子の電圧を電圧Vi(+)および電圧Vi(−)とし、出力端子の電圧を電圧Vo(+)および電圧Vo(−)とする。ここで磁場がゼロの場合、図5で出力端子に発生する電圧Vuと、図5の場合に対して図6のように入出端子と出力端子とを入れ換えた場合の出力端子に発生する電圧Vu’との和を計算すると、ほぼゼロになる。
【0055】
上述した図5と図6との説明に用いた電圧Vuと電圧Vu’とは、上述した電圧V1とV2とに相当する。磁場の変化による変化分を「磁気強度比例分」とし、オフセットによる変化分を「X(オフセット分)」とすると、電圧V1と電圧V2とは、次の式1と式2とのようになる。
【0056】
V1=(磁気強度比例分)+X(オフセット分) ・・・ (式1)
【0057】
V2=(磁気強度比例分)−X(オフセット分) ・・・ (式2)
【0058】
上記に図5及び図6を用いて説明したように、電圧V1と電圧V2との平均をとると、「X(オフセット分)」がキャンセルされる(次の式3参照)。
【0059】
(V1+V2)/2=(磁気強度比例分)・・・ (式3)
【0060】
従って、たとえば、ホール素子の入力端子と出力端子とを入れ換えて測定した測定値の平均、すなわち電圧V1と電圧V2との平均を、ホール素子からの出力として用いる。これにより、ホール素子のオフセットをキャンセルして、ホール素子を用いて磁場を測定することができる。すなわちホール素子を用いて、ホール素子のオフセットをキャンセルして、回転子106の回転角度を検出することができる。
【0061】
上述したホール素子のオフセットキャンセルについては、磁場が変化していない、すなわち、回転子106が回転していない場合について説明した。しかし、回転子106が回転する場合であっても、スイッチング回路20−1〜20−4が切り替えられる期間において、回転子106がほぼ回転していないとみなせる場合は、磁場の変化がほぼ無いために、磁場が変化していない場合と同様に、ホール素子のオフセットをキャンセルすることができる。
【0062】
次に、図7を用いて、ホール素子の入力端子と出力端子とを周期的に入れ換えた場合に、合成増幅回路81または82から出力される信号の一例について説明する。以降においては、ホール素子の入力端子と出力端子との入れ換えを、スイッチングと称して説明する。ここでは、スイッチングを、予め定められた期間T1毎に行うものとして説明する。
【0063】
期間T1の間隔のスイッチングに応じて、合成増幅回路81または82から出力される出力電圧は、電圧V1と電圧V2とを交互に期間T1で繰り返す。なお、期間T1の間隔でスイッチングされた場合、合成増幅回路81または82から出力される信号は、スイッチングにより生じるノイズを伴って出力される。しかし、このスイッチングにより生じるノイズは、スイッチしてから所定の期間(たとえば数10ns程度)が経過した後には、無くなる。そのために、スイッチングした後、スイッチングによりノイズが生じる期間よりも長い予め定められている時間T2後のデータを、合成増幅回路81または82からの出力として測定する。その後、スイッチングして新しいデータが確定したら、その値を新データとして測定する。
【0064】
このようにして、電圧V1とV2とを、交互に測定することができる。更に、測定した電圧と直近に測定した電圧、すなわち、直近の電圧V1とV2との平均をとることにより、ホール素子のオフセットをキャンセルして、回転子106の回転角度を検出することができる。
【0065】
上述した期間T1は、このようにして定められる時間T2よりも長い時間であればいい。よって、期間T1は、スイッチングによるノイズが生じる期間まで短くすることができる。なお、上述したように、電圧V1と電圧V2との測定は、回転子106が回転していないとみなせる程、短い時間のうちに行われることが望ましい。そのため、電圧V1と電圧V2との測定時間間隔に対応する期間T1を、スイッチングによるノイズが生じる期間まで短くすることができることは好適である。
【0066】
なお、時間T2は、スイッチングにより生じるノイズが消える時間まで短くすることができる。スイッチングにより生じるノイズが消えるまで時間は、上記に図1から図5に示した抵抗の値などに基づいて、シミュレーションや実験により、予め定めることができる。そのため、抵抗の値などに基づいて時間T2を短時間になるようにし、この短時間になるように予め設定された時間T2に基づいて、期間T1を定めることも可能である。
【0067】
次に、図8に、環境温度を変化させた場合における合成増幅回路81または82から出力される信号の電圧値(符号V1と符号V2とを参照)と、その平均の電圧値(符号(V1+V2)/2を参照)とを示す。環境温度が変化する場合、環境温度の変化にともないオフセットが変動するため、電圧V1と電圧V2とは図8に示すように変動する。しかしなら、期間T1のスイッチングに応じて出力される電圧V1と電圧V2との平均(V1+V2)/2は、上記に説明したように、オフセットがキャンセルされる。そのために、環境温度が変化しても、平均(V1+V2)/2は一定の電圧値となる。
【0068】
次に、図9を用いて、上記に説明したように、ホール素子の入力端子と出力端子とを周期的に入れ換えて、ホール素子のオフセットをキャンセルするようにした場合の一例としてのエンコーダ装置の構成について説明する。
【0069】
このエンコーダ装置は、磁気式回転角度検出装置100と演算回路200とを備えている。磁気式回転角度検出装置100は、上記に説明した磁気式回転角度検出装置100と同様の構成を有している。磁気式回転角度検出装置100は、ホール素子をスイッチングしつつ、AチャネルとBチャネルとの近似正弦波出力信号を出力する。演算回路200は、磁気式回転角度検出装置100が有するホール素子のスイッチングを制御するとともに、磁気式回転角度検出装置100から出力される信号から、上述したように平均(V1+V2)/2を、AチャネルとBチャネル毎に算出する。また、演算回路200は、AチャネルとBチャネル毎に算出した平均(V1+V2)/2に基づいて、回転子106の回転角度を算出する。
【0070】
演算回路200は、ADコンバータ201(変換回路)と演算制御部202(回転角度検出回路)とを有している。演算制御部202は、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)、専用の論理回路のうちのいずれか、または、これらの組み合わせであってもよい。
【0071】
この演算制御部202は、上述した期間T1のタイミングを示すクロック信号(図9の符号T1参照)を、磁気式回転角度検出装置100に、期間T1で周期的に送信する。以降、この信号を、T1信号と称して説明する。このT1信号は、磁気式回転角度検出装置100が有するスイッチング回路制御部112のT端子に入力される。
【0072】
また、演算制御部202は、ADコンバータ201に、T1信号と同一周波数で、位相がT1信号と半分ずれた信号を、期間T1で周期的に出力する。この信号が、上述した時間T2を示す信号に相当し、以降、T2信号として説明する。ここでは、T2信号を、T1信号と位相が半分ずれた信号としているが、この位相のずれは、上述したように、スイッチングにより生じるノイズが消えるまでの時間よりも長い時間に対応する位相であってもよい。
【0073】
磁気式回転角度検出装置100のスイッチング回路制御部112は、T端子に入力されるT1信号に基づいて、HレベルとLレベルとの電圧となる信号を、期間T1で交互に出力端子から出力する。これにより、スイッチング回路20−1と20−2とがホール素子のスイッチングを制御し、磁気式回転角度検出装置100の合成増幅回路81または82からは、図7に示したようなアナログ信号がそれぞれ出力される。
【0074】
なお、図2から図8の説明においては、合成増幅回路81および82の抵抗R12とR14はそれぞれ接地されているとして説明したが、図9に示すように、合成増幅回路81および82の抵抗R12とR14はそれぞれ基準電位REFに共通に接続されていてもよい。この合成増幅回路81および82の基準電位REFは、演算回路200のADコンバータ201に入力される。
【0075】
ADコンバータ201は、演算制御部202から入力されるT2信号に応じて、磁気式回転角度検出装置100の合成増幅回路81または82から出力されるアナログ信号を、合成増幅回路81と82に対応するチャネル毎にデジタル信号に変換して、演算制御部202に出力する。また、ADコンバータ201は、演算制御部202から入力されるT2信号に応じて、合成増幅回路81および82の基準電位REFを、デジタル信号に変換して、演算制御部202に出力する。
【0076】
演算制御部202は、ADコンバータ201から出力されるデジタル信号に変換されたチャネル毎のアナログ信号を、期間T1ごとに読み取り、チャネル毎に、今回読み取った値と直前に読み取った値との平均をとる。また、演算制御部202は、チャネル毎の平均に基づいて、たとえば内挿処理により、回転子106の回転角度を算出する。
【0077】
また、演算制御部202は、ADコンバータ201から出力されるデジタル信号に変換された基準電位REFを期間T1ごとに読み取る。このデジタル信号に変換された基準電位REFに基づいて、演算制御部202は、ADコンバータ201から出力されるデジタル信号に変換されたチャネル毎のアナログ信号を、基準電位REFの変動を除去するようにして、補正してもよい。たとえば、演算制御部202は、ADコンバータ201から出力されるデジタル信号に変換されたチャネル毎のアナログ信号のそれぞれから、デジタル信号に変換された基準電位REFを減算して、デジタル信号に変換されたチャネル毎のアナログ信号とする。
【0078】
図9を用いて説明したエンコーダ装置は、スイッチング回路20を用いることによりホール素子からの出力をオフセットに依存しないようにして読み出せるために、環境温度に依存することなく、回転子106の回転角度を検出する精度の安定度の向上が図れる。
【0079】
次に、図10を用いて、図9を用いて説明したADコンバータ201が、演算制御部202から入力されるT2信号に応じて、磁気式回転角度検出装置100の合成増幅回路81と82から出力されるアナログ信号(A相とB相に対応)、および、基準電位REFのそれぞれを、デジタル信号に変換するタイミングについて説明する。
【0080】
ここでは、制御信号が、時刻t1で立上り、時刻t11で立下り、時刻t21で立上る場合について説明する。また、A相、B相、および、基準電位REFを、順に変換するとともに、制御信号の立上りから立下り、または、立下りから立上りの期間において、それぞれ、3回変換して平均をとる場合について説明する。
【0081】
制御信号に従って、スイッチング回路20−1と20−2との接続状態を変更するが、図10に示すように、スイッチング回路20−1と20−2との接続状態を変更するタイミングでは、アナログ信号であるA相、B相、および、基準電位REFに、ノイズが発生する可能性がある。
【0082】
そこで、ADコンバータ201は、スイッチング回路20−1と20−2との接続状態が変更された後、信号が安定した時点で、予め定められた第1の連続するタイミングでA相を3回、予め定められた第2の連続するタイミングでB相を3回、予め定められた第3の連続するタイミングで基準電位REF3回のデータを取得する。図10に示すように、時刻t1で制御信号が立ち上がった後、ADコンバータ201は、時刻t2とt3とt4とのタイミングで、A相を3回取得する。続く時刻t5とt6とt7とのタイミングで、B相を3回取得する。続く時刻t8とt9とt10とのタイミングで、基準電位REFを3回取得する。このように3回取得しているのは、3回取得した値を、演算制御部202で平均化するためである。
【0083】
たとえば、上記時刻の間隔が1ms毎であるとし、制御信号の立下りを基準とすると、最初のA相は1msから3回、B相は2msから3回、基準電位REFは3msから3回取得される。そして続く制御信号の立下りは4msとなり、基準信号REFは5msから3回、B相は6msから3回、A相は7msから3回取得される。
【0084】
なお、制御信号の立上がりでは、A相、B相、基準信号REFの順に取得し、制御信号の立下りでは、制御信号の立上がりとは逆に、基準信号REFB相、A相の順に取得している。これは、制御信号の立下りを基準として、制御信号の立下と立下りとの1周期において各信号の1回目を取得するタイミングについては、A相(1+7)/2=4ms、B相(2+6)/2=4ms、基準信号REF(3+5)/2=4msとなり、計算上すべて4msになる。このようにして取得するのは、取得する位置を計算するのに用いる信号に時間差があると、検出する位置が、正確な位置とならないからである。なお、ここでは、この10msの間には速度変化がないものとして説明している。
【0085】
なお、A相とB相と基準信号REFとの間に時間差があるのはADコンバータの仕様によるものであり、本実施形態では3入力1chのADコンバータを用いた場合を想定している。位置を計算するには、A相を取得するタイミングと、B相を取得するタイミングとに時間差があると、回転軸の回転時には誤差が生じる可能性がある。計算上の同時性を保つために、図10に示すとともに、上記に説明したように、制御信号の立上がりを基準として、制御信号の立下りと制御信号の立上がりとにおいて、各相の信号を逆の順序で取得して、各相の値を平均する(この場合、各信号6回分の平均)。その結果、A相、B相、基準信号REFの平均から求めた値は、時刻位置として、それぞれ、制御信号の立下り(時刻t11)のタイミングで取得した値に相当することになる。
【0086】
なお、ADコンバータ201が、3chを並列に取得できる3入力3chのADコンバータであれば、図10を用いて説明した処理は不要である。
【0087】
次に、図11を用いて、図1を用いて説明したエンコーダ装置の構成、特に、第2の信号処理回路5と第1の信号処理回路6との構成について説明する。同図において、図1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0088】
<第2の信号処理回路5と第1の信号処理回路6との構成>
第2の信号処理回路5は第2の位置データ検出回路50を有している。この第2の位置データ検出回路50は、第2の内挿回路51と、第2の位置検出回路52と、送信信号生成出力部53と、伝達比情報記憶部56と、第1の分解能記憶部57と、第2の分解能記憶部58と、を有する。一方、第1の信号処理回路6は、第1の位置データ検出回路61と、第2の位置データ補正回路62と、位置データ合成回路63と、回転数量記憶部64と、外部通信回路65と、伝達比情報記憶部66と、第1の分解能記憶部67と、第2の分解能記憶部68と、を有している。
【0089】
なお、図1を用いて説明したように、第1のエンコーダ3と第2のエンコーダ4とはA相とB相との2相擬似正弦波を、図9の磁気式回転角度検出装置100のように出力する。そして、第1の信号処理回路6が有する第1の位置データ検出回路61、または、第2の信号処理回路5が有する第2の位置データ検出回路50(第2の内挿回路51)は、図9の演算回路200に相当する構成を有している。
【0090】
<第2の信号処理回路5の各構成>
図11の説明に戻り、まず、第2の信号処理回路5が有する第2の位置データ検出回路50の各構成について説明する。伝達比情報記憶部56には、第1のエンコーダ3と第2のエンコーダ4とを連結する予め定められている動力伝達装置2の伝達比の値を示す情報が、伝達比情報として予め記憶されている。第1の分解能記憶部57には、第1の位置データ検出回路61の分解能が第1の分解能として予め記憶されている。第2の分解能記憶部58には、第2の位置データ検出回路50の分解能が第2の分解能として予め記憶されている。
【0091】
第2の内挿回路51は、第2のエンコーダ4から入力された第2の検出信号を内挿処理して第2の位置データを検出する。第2の位置検出回路52は、第2の内挿回路51が検出した第2の位置データと伝達比情報記憶部56から読み出した伝達比情報とを乗じた値を、第2の分解能記憶部58から読み出した第2の分解能の値で除算した値の整数部分の値を回転数量として算出するとともに、この除算した値の少数部分の値に第1の分解能記憶部57から読み出した第1の分解能の値を乗じた値を推定値として算出する。この推定値とは、第1のエンコーダ3により正確に検出される第1の位置データを、第2のエンコーダ4が検出した第2の検出信号に基づいて算出して推定する位置データである。
【0092】
たとえば、第2の位置検出回路52は回転数量mと推定値sとを次の式により算出する。
【0093】
m=INT(n(P2/R2)) ・・・ (式4)
【0094】
s=R1×(n(P2/R2)−m) ・・・ (式5)
【0095】
上記の式4と式5とにおいて、P2は第2の内挿回路51が検出した第2の位置データであり、R1は第1の分解能記憶部57に記憶されている第1の分解能であり、R2は第2の分解能記憶部58に記憶されている第2の分解能であり、nは伝達比情報記憶部56から読み出した伝達比情報である。なお、INTは、小数点以下を切り捨てて、整数部分のみを抽出する演算子である。
【0096】
このように、この第2の位置データ検出回路50は、第2の内挿回路51と第2の位置検出回路52とにより、第2のエンコーダ4が検出した第2の検出信号を内挿処理した値と伝達比情報記憶部56から読み出した伝達比情報とに基づいて、第1のエンコーダ3の回転数量を算出するとともに第1の位置データに対応する位置データを推定値として算出する。
【0097】
送信信号生成出力部53は、第2の位置検出回路52が算出した推定値に基づいて、入力軸10の回転数量の値を示す送信信号を生成して第2の位置データ補正回路62に出力する。この送信信号生成出力部53は、送信信号を、たとえば、互いに位相が90度異なる第1の矩形波信号である多回転A信号と第2の矩形波信号である多回転B信号である2相信号として生成して出力する(図12参照)。なお、この2相信号は、外来のノイズなどに耐性を有するようにするために、波形が矩形波となる2相矩形波信号であることが望ましい。
【0098】
この図12においては、入力軸が1回転することに応じて、すなわち、第1の位置データの値が0から131071をとることに応じて、多回転A信号と多回転B信号とが、HとL、HとH、LとH、および、LとL、という信号パターンに変化する。ここで、HとLとは、たとえば、電気信号の電位で予め定められたハイレベルとロウレベルとである。
そして、入力軸が1回転する毎に、多回転A信号と多回転B信号とは、上記の信号パターンを繰り返す。
【0099】
この送信信号生成出力部53が生成する多回転A信号と多回転B信号とは、入力軸の1回転において、伝達比nと第2の位置データ検出回路50の分解能R2とにより、次の関係となる。
【0100】
多回転A信号は、R2/4nの剰余が0から2nの期間はH、それ以外はLとなる。一方、多回転B信号は、R2/4nの剰余がnから3nの期間はH、それ以外はLとなる。
【0101】
送信信号生成出力部53は、たとえば、次のようにして、上述した多回転A信号と多回転B信号とを生成する。送信信号生成出力部53は、第2の位置検出回路52の算出した推定値に、第2の位置データ検出回路50の分解能R2を乗じた値に対して、4nで除算した値が、0から2nであれば、多回転A信号をHとして出力し、それ以外であれば、多回転A信号をLとして出力する。また、送信信号生成出力部53は、第2の位置検出回路52の算出した推定値に、第2の位置データ検出回路50の分解能R2を乗じた値に対して、4nで除算した値が、1nから3nであれば、多回転B信号をHとして出力し、それ以外であれば、多回転B信号をLとして出力する。
【0102】
<第1の信号処理回路6の各構成>
次に、第1の信号処理回路6の各構成について説明する。伝達比情報記憶部66には、伝達比情報記憶部56と同様に、第1のエンコーダ3と第2のエンコーダ4とを連結する予め定められている動力伝達装置2の伝達比の値を示す情報が、伝達比情報として予め記憶されている。第1の分解能記憶部67には、第1の分解能記憶部57と同様に、第1の位置データ検出回路61の分解能が第1の分解能として予め記憶されている。第2の分解能記憶部68には、第2の分解能記憶部58と同様に、第2の位置データ検出回路50の分解能が第2の分解能として予め記憶されている。
【0103】
第1の位置データ検出回路61は、第1のエンコーダ3から入力された第1の検出信号に基づいて、予め定められている第1の信号処理(内挿処理)により、入力軸10の角度位置を示す第1の位置データを検出する。
【0104】
第2の位置データ補正回路62は、第2の位置データ検出回路50が検出した第2の位置データを、この第2の位置データと第1の位置データ検出回路61が検出した第1の位置データとに基いて予め定められている補正処理により補正する。
【0105】
位置データ合成回路63は、第2の位置データ補正回路62が補正した第1のエンコーダ3の回転数量の値と、第1の位置データ検出回路61が検出した第1の位置データの値とに基づいて、合成位置データを生成する(位置データ合成工程)。なお、この位置データ合成回路63は、第1の位置データ検出回路61が検出した第1の位置データと、第2の位置データ検出回路50が検出した第2の位置データとを合成する場合に、伝達比情報記憶部66から読み出した伝達比情報に基づいて合成位置データを合成する。
【0106】
また、この位置データ合成回路63は、詳細には、第1の位置データ検出回路61が検出した第1の位置データと、第2の位置データ検出回路50が検出した第2の位置データとを合成する場合に、伝達比情報記憶部66から読み出した伝達比情報、第1の分解能記憶部67から読み出した第1の分解能、および、第2の分解能記憶部68から読み出した第2の分解能に基づいて、予め定められている算出方法により、合成位置データを合成する。
【0107】
例えば、位置データ合成回路63は、合成位置データを、次の式6により算出する。
【0108】
合成位置データ=P1+R1×INT(n×P2/R2) ・・・ (式6)
【0109】
ここで、P1は第1の位置データであり、P2は第2の位置データであり、nはギア比である。また、R1は第1の位置データ検出回路61の分解能であり、R2は第2の位置データ検出回路50の分解能である。なお、INTは、小数点以下を切り捨てて、整数部分のみを抽出する演算子である。
【0110】
位置データ合成回路63は、この式4により、第2の位置データ検出回路50の一回転内の位置割合(P2/R2)にギア比(n)を乗じた値の整数部分(INT)を算出し、この算出した整数部分の値に第1の位置データ検出回路50の分解能の値(R1)を乗じた値に第1の位置データ(P1)の値を加算した値を、合成位置データとして算出する。
【0111】
また、位置データ合成回路63は、位置データ合成回路63が生成した合成位置データを、外部通信回路65を介して、通信ライン9を通じてコントローラ8に出力する。
【0112】
また、外部通信回路65は、通信ライン9を通じてコントローラ8との間の通信処理を実行する。たとえば、外部通信回路65は、通信ライン9を通じてコントローラ8から受信した伝達比情報を、伝達比情報記憶部66に記憶させるとともに、設定制御線13を介して伝達比情報記憶部56に記憶させる。
【0113】
また、外部通信回路65は、通信ライン9を通じてコントローラ8から受信した第1の分解能を、第1の分解能記憶部67に記憶させるとともに、設定制御線13を介して第1の分解能記憶部57に記憶させる。また、外部通信回路65は、通信ライン9を通じてコントローラ8から受信した第2の分解能を、第2の分解能記憶部68に記憶させるとともに、設定制御線13を介して第2の分解能記憶部58に記憶させる。
【0114】
なお、この伝達比情報記憶部66および伝達比情報記憶部56は、それぞれ、たとえば、不揮発性メモリである。そのため、伝達比情報記憶部66に記憶された伝達比情報の値は、一度設定されれば、エンコーダ装置の電源が落ちても、消えることは無い。本構成により、エンコーダ装置で使用可能な動力伝達装置2および動力伝達装置2の伝達比の、選択肢を広げることが可能となる。
【0115】
また、第1の分解能記憶部57、第1の分解能記憶部67、第2の分解能記憶部58、および、第2の分解能記憶部68も、伝達比情報記憶部66および伝達比情報記憶部56と同様に、それぞれ、たとえば、不揮発性メモリである。そのため、同様に、エンコーダ装置で使用可能な第1の位置データ検出回路61および第2の位置データ検出回路50の分解能の値について、選択肢を広げることが可能となる。
【0116】
回転数量記憶部64には、第2のエンコーダ4で検出された入力軸10の回転数量の値が記憶されている。そして、第2の位置データ補正回路62は、第2の信号処理回路5からの送信信号の受信に応じて、回転数量記憶部64に記憶されている回転数量の値を、1上げるまたは1下げることにより、この回転数量の値を検出する。
【0117】
この回転数量記憶部64には、エンコーダ装置の起動時に、第2のエンコーダ4で検出された入力軸10の回転数量の値が記憶される。たとえば、エンコーダ装置の起動時に、第2の信号処理回路5の送信信号生成出力部53は、1KHzの周期で、図12を用いて説明した多回転A信号と多回転B信号との信号パターンを回転数量分だけ繰り返して、回転数量分の多回転信号を初期値設定信号として出力する。そして、第2の位置データ補正回路62は、第2の信号処理回路5の送信信号生成出力部53から受信した初期値設定信号に対応する値を、回転数量記憶部64に記憶させる。その結果、回転数量記憶部64には、回転数量の情報が記憶される。
【0118】
以降、第2の位置データ補正回路62は、第2の信号処理回路5からの送信信号の受信に応じて、回転数量記憶部64に記憶されている回転数量の値を上げるか、または、下げる。また誤差補正回路621は、動力伝達装置の角度誤差を補正する。このようにして、入力軸10の回転数量の値が、出力軸11の回転から検出されている。
【0119】
<第2の位置データ補正回路62の詳細>
次に、第2の位置データ補正回路62の構成を、より具体的に説明する。たとえば、入力軸10の回転位置を示す第1の位置データと、出力軸11の回転位置を示す第2の位置データとの間には、ずれが生じる可能性がある。これは、たとえば、入力軸10と動力伝達装置2、および、動力伝達装置2と出力軸11との間の噛み合わせに起因するずれであり、物理的に生じるものである。
【0120】
そのため、図13に示すように、第2の位置データから算出される回転数量(m)と、入力軸10の回転位置を示す第1の位置データ(P1)との間にも、変化するタイミングにおいて、ずれが生じる可能性がある。このようなずれが生じていると、位置データ合成回路63は、正常に合成位置データを生成することができない。そこで、第2の位置データ補正回路62は、このようにずれがある場合にも、位置データ合成回路63が、正常に合成位置データを生成することができるように、図14に示すように、補正値Δmを算出して、この算出した補正値Δmを回転数量(m)に加算して補正する。
【0121】
ここでは、図13と図14とを用いて、第2の位置データ補正回路62による、回転数量の補正方法について説明する。なお、ここでは、第1の位置データの値が17ビットである場合について説明する。
【0122】
図13に示すように、入力軸10が回転するにともない出力軸11が回転し、第2の位置データの値P2に基づいて回転数量mが算出される。また、第1の位置データの値P1は0から131071(=217−1)の値を繰り返す。すなわち、第1の位置データの値P1は0から131071(=217−1)の値を繰り返すことに応じて、たとえば、回転数量mが10、11、12と順に変化する。この第1の位置データの値P1により検出される入力軸回転数量の変化位置(たとえば、第1の位置データの値P1が0となるタイミング)と、回転数量mの変化するタイミングとの間には、ずれがある。
【0123】
図14に示すように、第2の位置データ補正回路62は、たとえば、第1の位置データの値P1の値が、0から32767(=217×1/4−1)の範囲にあり、かつ、算出された回転数量mが後半である場合には、回転数量mの値に補正値Δm(=1)を加算して、回転数量mの値を補正する。ここで、算出された回転数量mが後半であるとは、算出された回転数量mの値が、mではあるが、m+1に近いことを意味している。
【0124】
また、図14に示すように、第2の位置データ補正回路62は、たとえば、第1の位置データの値P1の値が、98304(=217×3/4−1)から131071(=217−1)の範囲にあり、かつ、算出された回転数量mが前半である場合には、回転数量mの値に補正値Δm(=−1)を加算して、回転数量mの値を補正する。ここで、算出された回転数量mが前半であるとは、算出された回転数量mの値が、mではあるが、m−1に近いことを意味している。
【0125】
ところで、算出された回転数量mが後半であるか前半であるかという判定は、推定値の値に基づいて判定する。たとえば、第2の位置データ補正回路62は、第2の位置検出回路52の算出した推定値の値が、0.5(半周)よりも小さい場合には前半であると判定し、推定値の値が0.5(半周)以上である場合には後半であると判定する。
【0126】
なお、図14においては、第1のエンコーダ3が検出した回転数量の値によって検出される入力軸10の回転位置が、入力軸10の1回転において回転の前半1/4の領域(0から32767)であるか後半1/4の領域であるか(98304から131071)を判定した。しかし、ずれを検出するためには、第1のエンコーダ3が検出した回転数量の値によって検出される入力軸10の回転位置が、入力軸10の1回転において回転の前半の領域であるか後半の領域であるかを判定してもよい。
【0127】
よって、第2の位置データ補正回路62は、第2の位置検出回路52の算出した推定値の値によって推定される入力軸10の回転位置が、入力軸10の1回転において回転の前半領域であるか後半領域を判定し、第1のエンコーダ3が検出した回転数量の値によって検出される入力軸10の回転位置が、入力軸10の1回転において回転の前半領域であるか後半領域であるかを判定するようにしてもよい。そして、第2の位置データ補正回路62は、この2つの判定結果が異なる場合には、第2の位置検出回路52の算出した回転数量の値を、補正するようにしてもよい。
【0128】
具体的には、第2の位置データ補正回路62は、第2の位置検出回路52の算出した推定値の値によって推定される入力軸10の回転位置が、入力軸10の1回転において回転の後半領域であり、かつ、第1の位置データ検出回路61が検出した第1の位置データの値によって検出される入力軸10の回転位置が、入力軸10の1回転において回転の前半領域である場合には、第2の位置検出回路52の算出した回転数量の値に1を加算して補正する。
【0129】
また、第2の位置データ補正回路62は、逆に、第2の位置検出回路52の算出した推定値の値によって推定した入力軸10の回転位置が、入力軸10の1回転において回転の前半領域であり、かつ、第1の位置データ検出回路61が検出した第1の位置データの値によって検出される入力軸10の回転位置が、入力軸10の1回転において回転の後半領域である場合には、第2の位置検出回路52の算出した回転数量の値に−1を加算して、すなわち、1を減算して補正する。
【0130】
ところで、第2の位置データ補正回路62は、第2の位置データ検出回路50の送信信号生成出力部53から入力した送信信号に基づいて、回転数量の入力軸10の回転位置が入力軸10の1回転において回転の前半領域であるか後半領域であるかを判定して回転数量の値を補正する。
【0131】
ここでは、第2の位置データ補正回路62に入力される信号が、図12に示すように多回転A信号と多回転B信号との2相矩形波の場合について説明する。
【0132】
たとえば、図12に示すように、多回転A信号と多回転B信号とは、入力軸が1回転する毎に、HとL、HとH、LとH、および、LとL、という信号パターンで変化する。これにより、第2の位置データ補正回路62は、多回転A信号と多回転B信号とが、HとLまたはHとHの場合は、入力軸の1回転において回転の前半領域であると判定する。逆に、第2の位置データ補正回路62は、LとHまたはLとLの場合は、入力軸の1回転において回転の後半領域であると判定する。
【0133】
より詳細には、第2の位置データ補正回路62は、多回転A信号と多回転B信号とが、HとLの場合は、入力軸の1回転において回転の開始1/4の領域であると判定する。また、第2の位置データ補正回路62は、多回転A信号と多回転B信号とが、LとLの場合は、入力軸の1回転において回転の終了1/4の領域であると判定する。
【0134】
また、第2の位置データ補正回路62は、入力された多回転A信号と多回転B信号とが、HとL、HとH、LとH、および、LとL、という信号パターンで順に変化することを検出することにより、入力軸が1回転したことを検出する。また、逆に、第2の位置データ補正回路62は、入力された多回転A信号と多回転B信号とが、LとL、LとH、HとH、および、HとL、という信号パターンで順に変化することを検出することにより、入力軸が逆方向に1回転、すなわち、−1回転したことを検出する。
【0135】
上記の説明においては、第2の位置データ補正回路62に入力される信号が、図12に示すように多回転A信号と多回転B信号との2相矩形波の場合について説明したが、第2の位置データ補正回路62における信号処理は、この2相矩形波が2相正弦波信号である場合も同様である。
【0136】
たとえば2相正弦波信号の場合には、第2の位置データ補正回路62の内部において2相正弦波信号を2相矩形波に変換し、この変換した2相矩形波に基づいて、第2の位置データ補正回路62は、上記に図13と図14とを用いて説明した信号処理を実行するようにしてもよい。
【0137】
また、この2相正弦波信号とは、第2の信号処理回路5から第1の信号処理回路6へ推定値sを出力する場合の信号と同一であってもよい。この場合でも、位置データ合成回路63は、故障検出回路622および第2の位置データ補正回路62により補正された値を用いて、合成位置データを生成することができる。
【0138】
また2相正弦波信号の場合には、第2の信号処理回路5から第1の信号処理回路6へ推定値sを出力することができることから、第1の位置データが異常な値となる場合であっても、位置データ合成回路63は、第1の位置データに代えて推定値sを用いて、上述した式5により合成位置データを生成することができる。
【0139】
なお、上述したように、第2の位置データは位置データ合成回路にシリアルデータで送信される。一方モータの出力軸の回転位置を表す第1の検出信号から求めた第1の位置データも位置データ合成回路に入力される。位置データ合成回路では、モータ入力軸の位置と回転数量の変化点を合致させる処理を行なう。
【0140】
この処理について図15に示す表を用いて説明する。この図15では、第1の位置データ(モータの回転角度)を列に記載し、第2の位置データ(出力軸の回転角度)を行に表している。減速機の減速比は100であるので、左から2列目の数値は3.6度ごとに回転数値が1上がっていく。単位は度である。第2の位置データから求めた多回転数値が左から3列目である。この値と第1の位置データの関係から求めた数値、0、−1、+1、ERRORを図16の表にまとめてある。
【0141】
この表は、たとえば、補正値記憶部に予め記憶されていてもよい。たとえば、この補正値記憶部には、計数した回転数量と第1の位置データ検出回路が検出した第1の位置データとに関連付けて、計数した回転数量を補正する補正値が予め記憶されているようにしてもよい。そして、第2の位置データ補正回路は、計数した回転数量と第1の位置データ検出回路が検出した第1の位置データとに関連付けられている補正値を補正値記憶部から読み出し、当該読み出した補正値を、計数した回転数量に加算して、計数した回転数量を補正するようにしてもよい。
【0142】
[第2の実施形態]
次に、図17を用いて、この発明の第2実施形態による磁気式回転角度検出装置100の構成について説明する。図2から図4を用いて上述した第1実施形態による磁気式回転角度検出装置100の構成と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0143】
図17(a)に示すように、第2実施形態による磁気式回転角度検出装置100は、図2(a)に示す第2実施形態による磁気式回転角度検出装置100に対比して、更に、ホール素子H3とH4とを有している。すなわち、第2実施形態による磁気式回転角度検出装置100は、ホール素子H1,H2,H3,H4の、合計4個のホール素子を有している。
【0144】
この図17(a)において、回転子106が紙面に対して垂直となる回転軸を中心として回転すると、回転子106の回転に伴い磁石105が回転し、ホール素子H1,H2,H3,H4で検出される磁石105からの磁界が変化する。磁気式回転角度検出装置100は、この磁界の変化を、ホール素子H1,H2,H3,H4の4個のホール素子によりそれぞれ検出し、この検出した磁界の変化量から回転子106の回転角度を検出する。
【0145】
なお、図17(a)を用いて説明した4個のホール素子H1,H2,H3,H4は、たとえば、それぞれが同様の検出感度を有しており、それぞれが同様の出力レベルを有している。また、4個のホール素子H1,H2,H3,H4は、たとえば、それぞれ基板組109の平面上であって、回転子106の回転軸と法線ベクトルの方向を同一とする平面上に配置されており、回転子106の回転軸から等距離となる円周上に配置されている。また、各ホール素子H1,H2,H3,H4は、等間隔(この場合は、回転子106の回転軸を中心として90度の等角度)で配置されている。また、組とされるホール素子H1とH3およびホール素子H2とH4は、回転子106の回転軸を中心として、互いに対向して配置されており、回転子106の回転軸を中心として180度の角度になるように配置されている。
【0146】
次に図17(b)を用いて、上述した4個のホール素子で検出した磁界の変化量から回転子106の回転角度を検出する磁気式回転角度検出装置100の構成、すなわち、各ホール素子H1,H2,H3,H4で検出した検出信号を合成し増幅する合成増幅回路81および82(第1の合成回路と第2の合成回路)について説明する。
【0147】
合成増幅回路81は、差動の加減算増幅回路を構成しており、4個のホール素子から出力される信号を合成する合成部711(第3の合成回路)および合成部712(第4の合成回路)と、加減算増幅回路713(第1の差動増幅回路)と、により構成されている。
合成部711は、2個の抵抗RX41により構成されている。合成部712は、2個の抵抗RX42により構成されている。2個の抵抗RX41の第1の端子には、対応するホール素子H1とH3との出力端子がそれぞれ接続されており、2個の抵抗RX41の第2の端子は結合されて、加減算増幅回路713の第1の入力端子に接続されている。2個の抵抗RX42の接続も、2個の抵抗RX41の接続と同様である。
【0148】
合成部711は、信号H1−と信号H3+の2信号を合成する。たとえば、信号H1−と信号H3+との2信号が、それぞれの信号に対応する合成部711が有する抵抗RX41の第1の端子に入力される。そして、各抵抗RX41の第2の端子から出力される信号が、各抵抗RX41の第2の端子の接続点で合成される。そして、この合成された信号が、加減算増幅回路713に減算信号として入力される。
【0149】
一方、合成部712は、信号H1+と信号H3−の2信号を合成する。たとえば、信号H1+と信号H3−との2信号が、それぞれの信号に対応する合成部712が有する抵抗RX42の第1の端子に入力される。そして、各抵抗RX42の第2の端子から出力される信号が、各抵抗RX41の第2の端子の接続点で合成される。そして、この合成された信号が、加減算増幅回路713に加算信号として入力される。
【0150】
合成部711と合成部712とでそれぞれ合成された信号が、図2(b)に示す第1実施形態による磁気式回転角度検出装置100の合成増幅回路81と同様に、加減算増幅回路713で加減算されるとともに増幅されて、加減算増幅回路713の出力端子からAチャネル(A相)の近似正弦波出力信号として出力される。
【0151】
合成増幅回路82は、合成増幅回路81と同様の構成を有しているが、合成増幅回路81とはホール素子との接続方法が異なる。ここでは相違点のみについて説明する。
【0152】
この合成増幅回路82においては、信号H2−と信号H4+の2信号が、それぞれの信号に対応する合成部721が有する抵抗RX41の第1の端子に入力される。そして、各抵抗RX41の第2の端子から出力される信号が合成されることにより、この合成部721で信号H2−と信号H4+の2信号が合成される。そして、この合成された信号が、加減算増幅回路723に減算信号として入力される。
【0153】
一方、信号H2+と信号H4−の2信号が、それぞれの信号に対応する合成部722が有する抵抗RX42の第1の端子に入力される。そして、各抵抗RX42の第2の端子から出力される信号が合成されることにより、この合成部722で信号H2+と信号H4−の2信号が合成される。そして、この合成された信号が、加減算増幅回路723に加算信号として入力される。
【0154】
合成部721と合成部722とでそれぞれ合成された信号が加減算増幅回路723で加減算されるとともに増幅されて、加減算増幅回路723の出力端子からBチャネル(B相)の近似正弦波出力信号として出力される。このBチャネルの近似正弦波出力信号とは、上述したAチャネルの近似正弦波出力信号と、電気的に90度位相の異なる信号である。
【0155】
上述した第2実施形態によれば、対向するホール素子により、磁石105のN極とS極とを検出するようにして、出力信号を増大させることができる。また、N極とS極とを検出することにより、検出精度を向上させることができる。
【0156】
次に、図18と図19とを用いて第2実施形態の場合について、ホール素子のオフセットをキャンセルすることができる磁気式回転角度検出装置100について説明する。
【0157】
まず、図18を用いて、第2実施形態で用いる磁気式回転角度検出装置100の構成について説明する。この図18に示す第2実施形態による磁気式回転角度検出装置100の構成は、上記に図3を用いて説明した第1実施形態による磁気式回転角度検出装置100の構成に対して、更に、スイッチング回路(切り替え回路)20−3〜20−4が追加されている。
【0158】
この図18では、スイッチング回路20−1〜20−4は、一つのホール素子について8接点4回路の構成であり、アナログスイッチを用いている場合の構成が図示されている。このアナログスイッチは、たとえば、トランジスタスイッチである。
【0159】
スイッチング回路20−1〜20−4は、S端子をそれぞれ有しており、このS端子に入力される信号がHレベルであるかLレベルであるかにより、対応付けられているホール素子の入力端子と出力端子との接続を変更する。スイッチング回路制御部112の出力端子はスイッチング回路20−1〜20−4がそれぞれ有するS端子と接続されており、スイッチング回路制御部112はこの出力端子からHレベルまたはLレベルの制御信号を出力する。
【0160】
スイッチング回路制御部112のT端子には外部から制御信号が入力される。スイッチング回路制御部112は、T端子に外部から入力される制御信号に基づいて、S端子から出力する電圧を、HレベルとLレベルとのうちいずれのレベルを出力するかを制御する。
また、定電流駆動回路101、定電流駆動回路102、および、スイッチング回路制御部112には、電源電圧+Vがそれぞれの電源端子に入力されている。
【0161】
スイッチング回路20−1〜20−4は、対応するホール素子について、2つの入力端子に電源が供給されるように接続され、かつ、2つの出力端子が合成増幅回路の入力端子に接続されている第1の接続状態と、2つの出力端子に電源が供給されるように接続され、かつ、2つの入力端子が合成増幅回路の入力端子に接続されている第2の接続状態と、を切り替えるようにして、ホール素子の出力端子と出力端子との接続を変更する。このようにして、スイッチング回路20−1〜20−4のそれぞれは、対応するホール素子の、2つの入力端子と2つの出力端子との接続を、それぞれ切り替える。
【0162】
図18は、たとえば、スイッチング回路20−1〜20−4のS端子に入力されるレベルがHレベルである場合(上述した第1の接続状態の場合)の図であり、図19は、スイッチング回路20−1〜20−4のS端子に入力されるレベルがLレベルである場合(上述した第2の接続状態の場合)の図である。
【0163】
次に、スイッチング回路20−1〜20−4によるホール素子の入力端子と出力端子との接続の一例について、S端子に入力される信号がHレベルの場合とLレベルの場合とについて詳述する。
【0164】
S端子に入力される信号がHレベルの場合(上述した第1の接続状態の場合)は、ホール素子の接続は図18に示すようになっており、ホール素子H1とH3との組においては、定電流駆動回路101の出力端子は、スイッチング回路20−1を介して、ホール素子H1の第1の入力端子に接続されている。また、ホール素子H1の第2の入力端子は、スイッチング回路20−1とスイッチング回路20−3とを介して、ホール素子H3の第1の入力端子に接続されている。また、ホール素子H3の第2の入力端子は、スイッチング回路20−3を介して、接地されている。また、ホール素子H1の出力端子+と−、および、ホール素子H3の出力端子+と−は、図17の第2実施形態で説明したように、合成増幅回路81の入力端子に接続されている。ホール素子H2とH4との組の接続も、ホール素子H1とH3との組の接続と同様である。
【0165】
一方、S端子に入力される信号がLレベルの場合(上述した第2の接続状態の場合)は、ホール素子の接続は図19に示すようになっており、ホール素子H1とH3との組においては、定電流駆動回路101の出力端子は、スイッチング回路20−1を介して、ホール素子H1の出力端子−に接続されている。また、ホール素子H1の出力端子+は、スイッチング回路20−1とスイッチング回路20−3とを介して、ホール素子H3の出力端子−に接続されている。また、ホール素子H3の出力端子+は、スイッチング回路20−3を介して、接地されている。また、ホール素子H1の第1の入力端子から信号H1+が出力され、ホール素子H1の第2の入力端子から信号H1−が出力される。ホール素子H3の第1の入力端子から信号H3+が出力され、ホール素子H3の第2の入力端子から信号H3−が出力される。これらの信号は、図17の第2実施形態で説明したように、合成増幅回路81の入力端子に入力される。ホール素子H2とH4との組の接続も、ホール素子H1とH3との組の接続と同様である。
【0166】
この図18と図19とに示すように、スイッチング回路20−1〜20−4の接続状態は、S端子に入力される電圧レベルがHレベルとLレベルとでは、逆になる。
【0167】
[第3実施形態]
次に、図20を用いて、この発明の第3実施形態による磁気式回転角度検出装置100の構成について説明する。図2から図4を用いて上述した第1実施形態による磁気式回転角度検出装置100の構成、または、図17から図19を用いて上述した第2実施形態による磁気式回転角度検出装置100の構成と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0168】
この図20(a)に示す第3実施形態による磁気式回転角度検出装置100は、図17(a)に示す第2実施形態による磁気式回転角度検出装置100に対比して、4個のホール素子H1,H2,H3,H4と、合成増幅回路81と82との接続方法が異なる。以下、相違点について説明する。
【0169】
まず、図20(b)を用いて、上述した4個のホール素子で検出した磁界の変化量から回転子106の回転角度を検出する磁気式回転角度検出装置100の構成、すなわち、各ホール素子H1,H2,H3,H4で検出した検出信号を合成し増幅する合成増幅回路81および82(第1の合成回路と第2の合成回路)について説明する。
【0170】
合成増幅回路81は、差動の加減算増幅回路を構成しており、4個のホール素子から出力される信号を合成する合成部711(第3の合成回路)および合成部712(第4の合成回路)と、加減算増幅回路713(第1の差動増幅回路)と、により構成されている。
合成部711は、4個の抵抗RX41により構成されている。合成部712は、4個の抵抗RX42により構成されている。4個の抵抗RX41の第1の端子には、対応するホール素子H1,H2,H3,H4の出力端子がそれぞれ接続されており、4個の抵抗RX41の第2の端子は結合されて、加減算増幅回路713の第1の入力端子に接続されている。4個の抵抗RX42の接続も、4個の抵抗RX41の接続と同様である。
【0171】
合成部711は、信号H1−、信号H2−、信号H3+、および信号H4+の4信号を合成する。たとえば、信号H1−、信号H2−、信号H3+、および信号H4+の4信号が、それぞれの信号に対応する合成部711が有する抵抗RX41の第1の端子に入力される。そして、各抵抗RX41の第2の端子から出力される信号が、各抵抗RX41の第2の端子の接続点で合成される。そして、この合成された信号が、加減算増幅回路713に減算信号として入力される。
【0172】
一方、合成部712は、信号H1+、信号H2+、信号H3−、および信号H4−の4信号を合成する。たとえば、信号H1+、信号H2+、信号H3−、および信号H4−の4信号が、それぞれの信号に対応する合成部712が有する抵抗RX42の第1の端子に入力される。そして、各抵抗RX42の第2の端子から出力される信号が、各抵抗RX41の第2の端子の接続点で合成される。そして、この合成された信号が、加減算増幅回路713に加算信号として入力される。
【0173】
合成部711と合成部712とでそれぞれ合成された信号が、加減算増幅回路713で加減算されるとともに増幅されて、加減算増幅回路713の出力端子からAチャネル(A相)の近似正弦波出力信号として出力される。
【0174】
上述した加減算増幅回路713の加算信号が入力される入力端子は、抵抗R12を介して接地されている。また、加減算増幅回路713の出力端子は、抵抗R13と抵抗R14との直列接続を介して接地されている。また、加減算増幅回路713の減算信号が入力される入力端子は、抵抗R13と抵抗R14との接続点に、抵抗R11を介して接続されている。
【0175】
なお、合成増幅回路81および82が、それぞれ差動増幅回路として機能するために、4個の抵抗RX41と4個の抵抗RX42とはそれぞれ同じ抵抗値であり、抵抗R11と抵抗R12とは同じ抵抗値であることが望ましい。
【0176】
合成増幅回路82は、合成増幅回路81と同様の構成を有しているが、合成増幅回路81とは4個のホール素子H1,H2,H3,H4との接続方法が異なる。ここでは相違点のみについて説明する。
【0177】
この合成増幅回路82においては、信号H2−、信号H3−、信号H4+、および信号H1+の4信号が、それぞれの信号に対応する合成部721が有する抵抗RX41の第1の端子に入力される。そして、各抵抗RX41の第2の端子から出力される信号が合成されることにより、この合成部721で信号H2−、信号H3−、信号H4+、および信号H1+の4信号が合成される。そして、この合成された信号が、加減算増幅回路723に減算信号として入力される。
【0178】
一方、信号H2+、信号H3+、信号H4−、および信号H1−の4信号が、それぞれの信号に対応する合成部722が有する抵抗RX42の第1の端子に入力される。そして、各抵抗RX42の第2の端子から出力される信号が合成されることにより、この合成部722で信号H2+、信号H3+、信号H4−、および信号H1−の4信号が合成される。そして、この合成された信号が、加減算増幅回路723に加算信号として入力される。
【0179】
合成部721と合成部722とでそれぞれ合成された信号が加減算増幅回路723で加減算されるとともに増幅されて、加減算増幅回路723の出力端子からBチャネル(B相)の近似正弦波出力信号として出力される。このBチャネルの近似正弦波出力信号とは、上述したAチャネルの近似正弦波出力信号と、電気的に90度位相の異なる信号である。
この位相の関係については、図23を用いて後述する。
【0180】
図6は、たとえば、スイッチング回路20−1〜20−4のS端子に入力されるレベルがHレベルである場合(上述した第1の接続状態の場合)の図であり、図7は、スイッチング回路20−1〜20−4のS端子に入力されるレベルがLレベルである場合(上述した第2の接続状態の場合)の図である。
【0181】
次に、スイッチング回路20−1〜20−4によるホール素子の入力端子と出力端子との接続の一例について、S端子に入力される信号がHレベルの場合とLレベルの場合とについて詳述する。
【0182】
S端子に入力される信号がHレベルの場合(上述した第1の接続状態の場合)は、ホール素子の接続は図21に示すようになっており、ホール素子H1とH3との組においては、定電流駆動回路101の出力端子は、スイッチング回路20−1を介して、ホール素子H1の第1の入力端子に接続されている。また、ホール素子H1の第2の入力端子は、スイッチング回路20−1とスイッチング回路20−3とを介して、ホール素子H3の第1の入力端子に接続されている。また、ホール素子H3の第2の入力端子は、スイッチング回路20−3を介して、接地されている。また、ホール素子H1の出力端子+と−、および、ホール素子H3の出力端子+と−は、第1実施形態で説明したように、合成増幅回路81の入力端子に接続されている。ホール素子H2とH4との組の接続も、ホール素子H1とH3との組の接続と同様である。
【0183】
一方、S端子に入力される信号がLレベルの場合(上述した第2の接続状態の場合)は、ホール素子の接続は図22に示すようになっており、ホール素子H1とH3との組においては、定電流駆動回路101の出力端子は、スイッチング回路20−1を介して、ホール素子H1の出力端子−に接続されている。また、ホール素子H1の出力端子+は、スイッチング回路20−1とスイッチング回路20−3とを介して、ホール素子H3の出力端子−に接続されている。また、ホール素子H3の出力端子+は、スイッチング回路20−3を介して、接地されている。また、ホール素子H1の第1の入力端子から信号H1+が出力され、ホール素子H1の第2の入力端子から信号H1−が出力される。ホール素子H3の第1の入力端子から信号H3+が出力され、ホール素子H3の第2の入力端子から信号H3−が出力される。これらの信号は、第1実施形態で説明したように、合成増幅回路81の入力端子に入力される。ホール素子H2とH4との組の接続も、ホール素子H1とH3との組の接続と同様である。
【0184】
この図21と図22とに示すように、スイッチング回路20−1〜20−4の接続状態は、S端子に入力される電圧レベルがHレベルとLレベルとでは、逆になる。
【0185】
次に図23を用いて、図20で説明した複数のホール素子H1,H2,H3,H4と、合成増幅回路81及び82との関係について説明する。
【0186】
複数のホール素子H1,H2,H3,H4のうち、回転子106の回転中心軸を含む第1の平面で分割される第1の領域に含まれるホール素子を第1のホール素子群とし、第1の平面で分割される第2の領域に含まれるホール素子を第2のホール素子群とする。また、複数のホール素子H1,H2,H3,H4のうち、回転中心軸を含む第2の平面であって第1の平面と予め定められている角度を成す第2の平面で分割される第3の領域に含まれるホール素子を第3のホール素子群とし、第2の平面で分割される第4の領域に含まれるホール素子を第4のホール素子群とする。この予め定められている角度とは、たとえば90度である。
【0187】
図23に示すように、回転子106の回転中心軸であって、紙面に対して垂直となる軸をZ軸とする。そして、このZ軸に対して垂直となる2つの軸であって、紙面に対して水平と垂直となる2つの軸をX軸とY軸とする。ここでは、説明のため、回転子106の回転中心軸として、ホール素子H1の角度位置を0度とし、ホール素子2の角度位置を90度とし、ホール素子3の角度位置を180度とし、ホール素子4の角度位置を270度とする。
【0188】
たとえば第1の平面を符号301で示されるように、回転子106の回転中心軸に対して角度位置135度と315度となり、紙面に対して垂直な平面とする。この場合、第1のホール素子群はホール素子H1とH2となり、第2のホール素子群はホール素子H3とH4となる。また第2の平面を符号302で示されるように、回転子106の回転中心軸に対して角度位置45度と225度となり、紙面に対して垂直な平面とする。この場合、第3のホール素子群はホール素子H2とH3となり、第4のホール素子群はホール素子H4とH1となる。
【0189】
合成増幅回路81は、第1のホール素子群と第2のホール素子群とがそれぞれ検出した検出信号を合成する。図20(b)に示すように、合成増幅回路81においては、合成部711には、信号H1−、信号H2−、信号H3+、および信号H4+が入力され、合成部712には、信号H1+、信号H2+、信号H3−、および信号H4−信号が入力されている。
【0190】
この信号の入力を、第1のホール素子群と第2のホール素子群とに分けて説明すると、第1のホール素子群については、合成増幅回路81の合成部711には、信号H1−および信号H2−が入力され、合成部712には、信号H1+および信号H2+が入力される。そして、加減算増幅回路713は、合成部711で合成された信号H1−および信号H2−と、合成部712で合成された信号H1+および信号H2+との差に応じた信号を出力する。よって、この第1のホール素子群についての合成増幅回路81は、第1のホール素子群に含まれるホール素子H1とH2とを合成したホール素子(第1の合成磁気検出素子)になるように、Aチャネルの近似正弦波出力信号を出力することになる。
【0191】
上述のホール素子H1とH2とを合成したホール素子とは、ホール素子H1とH2との中間となる位置、たとえば、図23に符号A1で示す位置であって、回転子106の回転中心軸を中心として45度となる位置にある合成ホール素子に相当する。
【0192】
同様に、合成増幅回路81は、第2のホール素子群に含まれるホール素子H3とH4とを合成したホール素子(第2の合成磁気検出素子)になるように、Aチャネルの近似正弦波出力信号を出力することになる。上述のホール素子H3とH4とを合成したホール素子とは、ホール素子H3とH4との中間となる位置、たとえば、図23に符号A2で示す位置であって、回転子106の回転中心軸を中心として225度となる位置にある合成ホール素子に相当する。
【0193】
合成増幅回路81は、上述した第1のホール素子群についての合成増幅回路81と第2のホール素子群についての合成増幅回路81とを、符号を逆にして合成している。これは、第1のホール素子群についての合成増幅回路81と第2のホール素子群についての合成増幅回路81とが、回転子106の回転中心軸を中心として180度の位置であり、かつ、回転子106が有する磁石105のN極とS極とが、回転子106の回転中心軸を中心として180度の位置となっている。そのため、たとえば、上述した第1のホール素子群についての合成増幅回路81がN極を検出している場合には、第2のホール素子群についての合成増幅回路81がS極を検出していることになり、その検出した信号の符号が逆となるためである。
【0194】
このようにして、合成増幅回路81は、第1のホール素子群に含まれている複数のホール素子からの検出値を合成して合成増幅回路81の出力値を増大させるとともに、第2のホール素子群に含まれている複数のホール素子からの検出値を合成して合成増幅回路81の出力値を増大させている。
【0195】
更に、合成増幅回路81は、第1のホール素子群に含まれている複数のホール素子からの検出値を合成した出力値と、第2のホール素子群に含まれている複数のホール素子からの検出値を合成した出力値とを、符号を逆にして合成することにより、更に合成増幅回路81の出力値を増大させている。
【0196】
この合成増幅回路81は、たとえば、図23に符号A1で示す位置であって、回転子106の回転中心軸を中心として45度となる位置にある合成ホール素子により検出した回転子106の回転位置を示す信号を出力することと相当又は同等になる。また、この合成ホール素子は、4個分のホール素子H1,H2,H3,H4を合成した出力値を出力することになるため、合成増幅回路81は、1個分のホール素子により出力する場合に対比して、大きな信号を出力することができる。
【0197】
第1のホール素子群と第2のホール素子群との場合と同様に、第3のホール素子群と第4のホール素子群とにより、この合成増幅回路82は、たとえば、図23に符号B1で示す位置であって、回転子106の回転中心軸を中心として135度となる位置にある合成ホール素子により検出した回転子106の回転位置を示す信号を出力することと相当又は同等になる。また、この合成ホール素子は、4個分のホール素子H1,H2,H3,H4を合成した出力値を出力することになるため、合成増幅回路82は、1個分のホール素子により出力する場合に対比して、大きな信号を出力することができる。
【0198】
また、上述したように、合成増幅回路81は、たとえば、図23に符号A1で示す位置であって、回転子106の回転中心軸を中心として45度となる位置にある合成ホール素子により検出した回転子106の回転位置を示す信号を出力し、合成増幅回路82は、たとえば、図23に符号B1で示す位置であって、回転子106の回転中心軸を中心として135度となる位置にある合成ホール素子により検出した回転子106の回転位置を示す信号を出力する。すなわち、合成増幅回路81と合成増幅回路82との合成ホール素子は、回転中心軸を中心として90度の位置関係になる。よって、合成増幅回路81と合成増幅回路82とは、90度位相が異なるAチャネルの近似正弦波出力信号とBチャネルの近似正弦波出力信号とを、それぞれ出力することができる。
【0199】
このように、合成増幅回路81は、回転子106の回転位置を検出する第1の合成磁気検出素子となるように、複数のホール素子H1,H2,H3,H4が検出した検出信号を合成してAチャネルの近似正弦波出力信号を出力する。また、合成増幅回路82は、回転子106の回転位置を検出する第2の合成磁気検出素子であって、回転中心軸を中心として合成増幅回路81に対して所定の角度位置(たとえば、90度)になる第2の合成磁気検出素子となるように、複数のホール素子H1,H2,H3,H4が検出した検出信号を合成してBチャネルの近似正弦波出力信号を出力する。
【0200】
上記に説明した第3実施形態によれば、第2実施形態のように4個のホール素子信号を単に対向するホール素子(ホール素子H1とホール素子H3、ホール素子H2とホール素子H4)同士で増幅するのではなく、ホール素子H1からホール素子H4のすべての検出信号を使用して合成増幅回路81または82に入力しているので、各ホール素子の感度のバラツキや環境温度の変化によるオフセット電圧変動のバラツキが平均化することができる。
【0201】
また、各ホール素子H1,H2,H3,H4の信号は、回転子106の回転中心軸を中心とした角度が180度の対向したホール素子の信号を加減算するように合成増幅回路に入力されている。そのため、回転子106に偏心があるような場合であっても、この偏心による回転角度誤差をキャンセルすることができる。
【0202】
このような方式を採用することで、合成して生成される近似正弦波の検出信号が大きくなり、その結果、オフセット電圧変動値が見かけ上(検出信号に対して相対的に)、小さくなるという効果がある。たとえば、それぞれのホール素子H1,H2,H3,H4から検出値が出力されるが、この検出値は所定の出力レベルであり、この出力レベルに対してバラツキは無視できない。しかし、上述したように複数のホール素子H1,H2,H3,H4から出力される検出値を合成した値、すなわち、合成ホール素子から出力される検出値の出力レベルに対しては、バラツキが相対的に小さくなるため、バラツキが無視できる。そのため、本実施形態による磁気式回転角度検出装置100は、複数のホール素子の出力にバラツキがある場合でも、検出精度を向上させ、高精度・高分解能とすることができる。
【0203】
図24は、ホール素子H1からH4を駆動する回路の構成を示す図である。ホール素子H1からH4は、回転子106の回転中心軸を中心として180度の対向する2個のホール素子(たとえばホール素子H1とホール素子H3、ホール素子H2とホール素子H4)を組として、一つの定電流駆動回路で駆動している。たとえば図24に示すように、ホール素子H1とホール素子H3とを直列接続して、定電流駆動回路101で駆動し、ホール素子H2とホール素子H4とを直列接続して、定電流駆動回路102で駆動している。
【0204】
このような駆動回路を採用することで、例えば、定電流の電流値が変化する場合であっても、互いが対向しているホール素子の電流値が影響しあうので、Aチャネル信号とBチャネル信号の大きさの変化が同じになり、二つの近似正弦波信号を用いてさらに細かい角度に分解する(逓倍)する時に角度誤差の影響が小さくなるという特徴がある。
【0205】
なお、ホール素子の駆動方法としては、定電圧駆動方式と定電流駆動方式の2種類があるが、定電流駆動方式の方が、環境温度の変化によるオフセット電圧変動のバラツキが小さくなるという特性がある。そのため、上述したように定電流駆動方式を用いることにより、定電圧駆動方式を用いる場合に対比して、環境温度の変化によるオフセット電圧変動のバラツキが小さくなるという効果がある。
【0206】
図25は、図20(b)に示した合成増幅回路81と82との出力を差動出力方式に変更した場合の構成図である。図25の差動入力‐差動出力型の合成増幅回路811が、図20(b)に示した合成増幅回路81に対応し、図25の差動入力‐差動出力型の合成増幅回路821が、図20(b)に示した合成増幅回路82に対応する。図25において、図20(b)と同様の構成には同一の符号を付し、相違点のみについて説明する。
【0207】
まず、合成増幅回路811の構成について説明する。この合成増幅回路811において、合成部711と合成部712とは、図20(b)に示した合成増幅回路81と同様である。合成部711の出力は加減算増幅回路714に減算信号として入力され、合成部712の出力は加減算増幅回路715に減算信号として入力される。電源電圧Vが加算信号として加減算増幅回路714と加減算増幅回路715とに入力される。加減算増幅回路714の出力端子から、A(−)チャネルの近似正弦波出力信号が出力され、加減算増幅回路715の出力端子から、A(+)チャネルの近似正弦波出力信号が出力される。
【0208】
上述した加減算増幅回路714の出力端子と加減算増幅回路715の出力端子とは、抵抗R51と抵抗R6と抵抗R52との直列接続を介して接続されている。また、加減算増幅回路714の減算信号が入力される入力端子は、抵抗R41を介して、抵抗R51と抵抗R6との接続点に接続されている。また、加減算増幅回路715の減算信号が入力される入力端子は、抵抗R42を介して、抵抗R52と抵抗R6との接続点に接続されている。なお、合成増幅回路811および821が各々の出力を差動出力方式とする差動増幅回路として機能するために、たとえば抵抗R41と抵抗R42との抵抗値は同じであり、抵抗R51と抵抗R52との抵抗値は同じであることが望ましい。
【0209】
次に合成増幅回路821の構成について説明する。合成増幅回路821は、図20(b)を用いて説明した合成増幅回路82および合成増幅回路81と同様に、合成増幅回路811と4個のホール素子H1,H2,H3,H4との接続方法のみが異なる。
【0210】
図20(b)を用いて説明した合成増幅回路82および合成増幅回路81と同様に、この合成増幅回路821から出力されるB(−)チャネルと、合成増幅回路811から出力されるA(−)チャネルとは、90度位相の異なる信号となる。また、この合成増幅回路821から出力されるB(+)チャネルと、合成増幅回路811から出力されるA(+)チャネルとは、90度位相の異なる信号となる。
【0211】
上記に図25を用いて説明した合成増幅回路811および821は、入力は、図20(b)の合成増幅回路81および82と同一であるが、出力は、A(−)(又はB(−))チャネルと、このA(−)(又はB(−))チャネルと180度位相が反転したA(+)(又はB(+))チャネルとの2信号を出力する。
【0212】
図20(b)の合成増幅回路81および82の出力方式を、図25の合成増幅回路811および821のように差動出力方式に変更することで、差動出力信号にノイズ成分が重畳する場合であっても、受け側回路(図示せず)で二つの信号(A(−)とA(+)、またはB(−)とB(+))の差を取ることで、このノイズ成分を除去する事が出来る。
【0213】
つまり、二つの信号は位相が180度違っているので、この二つの信号の差を取る前と後とでは、信号の大きさは2倍になるが、ノイズ成分は同相信号である。そのため、受け側回路において上記二つの信号の差を取ることで、差動出力信号にノイズ成分が重畳するような場合であっても、このノイズ成分を除去することができる。よって、上述した差動出力方式を用いることにより、より信頼性のある検出信号を受け側回路に出力することができる。
【0214】
図26は、ホール素子H1,H2,H3,H4の異常を検出する回路構成を示す構成図である。図24と同様の構成には同一の符号を付してその説明を省略し、相違点のみについて説明する。この図26において、異常検出回路111は、ホール素子H1,H2,H3,H4を流れる電流が適正であるか否かを検出している。
【0215】
図26に示すように、定電流駆動回路101の出力端子は、直列接続されたホール素子H1とH3および抵抗R71を介して、接地されている。また、定電流駆動回路102の出力端子は、直列接続されたホール素子H2とH4および抵抗R72を介して、接地されている。定電流駆動回路101と定電流駆動回路102との電源端子には、電源電圧Vが入力されている。
【0216】
図24を用いて説明したように、定電流駆動回路101からは、一定電流が出力されるので、抵抗R71の両端には一定電圧が発生する。具体的には、抵抗R71とホール素子H3との接続点には、一定電圧が発生する。異常検出回路111は、抵抗R72で発生した電圧、すなわち、抵抗R71とホール素子H3との接続点の電圧を測定し、この測定した電圧が予め定められている範囲内にあるか否かを判定し、範囲内に無い場合に異常と判定する。
【0217】
例えば、定電流駆動回路101からは1mAの電流が流れ、抵抗R71が100Ωであれば、本来であれば、異常検出回路111が測定する電圧は0.1Vになる。もし、測定した電圧が0.09V以下か、0.11V以上であれば、異常検出回路111は、異常と判断して、異常を示す信号を出力する。これにより、異常検出回路111は、ホール素子H1とH3との、たとえば、断線やショートなどの異常、または、定電流駆動回路101が出力する電流値の異状、などを検出することができる。
【0218】
定電流駆動回路101と同様に、定電流駆動回路102からも、一定電流が出力されるので、抵抗R72の両端には一定電圧が発生する。異常検出回路111は、抵抗R71の場合と同様に、抵抗R72で発生した電圧を測定し、この測定した電圧が予め定められている範囲内にあるか否かを判定し、範囲内に無い場合に異常と判定する。
【0219】
このようにして、異常検出回路111は、抵抗R71の電圧を測定してホール素子H1とH3および定電流駆動回路101の異常を検出するとともに、抵抗R72の電圧を測定してホール素子H2とH4および定電流駆動回路102の異常を検出する。すなわち、異常検出回路111は、ホール素子の組とされている2個のホール素子を導通する電流をホール素子の組ごとに検出し、当該検出した電流に基づいて複数のホール素子の異常、または、複数のホール素子を駆動する駆動回路の異状を検出する。
【0220】
また異常検出回路111は、検出した異常を示す信号を、たとえば磁気式回転角度検出装置100を制御する上位制御装置に出力する。これにより、上位制御装置においても、組とされているホール素子毎に、たとえば断線やショートなどの異常、または、組とされているホール素子を駆動する駆動回路の異状を、検出することができる。
【0221】
なお、ここでは1つの異常検出回路111で全てのホール素子の組の異常を検出するものとして説明したが、この異常検出回路111は、ホール素子の組毎に、それぞれ設けられるようにしてもよい。
【0222】
なお、上記に図24から図26を用いて説明した各構成は、第3実施形態のみでなく、第1実施形態と第2実施形態にも、同様に適用することができ、同様の効果を得ることができる。
【0223】
上記に説明した本実施形態によるエンコーダによれば、次のような効果を得ることができる。
【0224】
アナログスイッチ(たとえば、スイッチング回路20−1から20−4)でホール素子を制御するので、ホール素子の温度ドリフトをキャンセルすることができ、より高精度の角度検出信号が得られるので、正確なシステム制御をすることが出来る。
【0225】
第2のエンコーダ4は、動力伝達装置2により減速され低速度で回転するので、検出信号は、低周波数の正弦波信号、余弦波信号になる。したがって、アナログスイッチの制御速度も遅くてよいので、ノイズに強い制御を構成することが出来る。
【0226】
第2のエンコーダ4のアナログスイッチ制御信号を、第1のエンコーダ3に搭載した信号制御回路で制御することで、第2のエンコーダ4の回転検出信号の周波数に最適の制御信号で制御することができる。
【0227】
第2のエンコーダ4の出力信号を差動出力信号にし、第1のエンコーダ3側で減算することにより、途中に乗ったノイズを除去することができ、より高精度の回転検出信号を得る事が出来る。
【0228】
第1のエンコーダ3側に搭載したアナログ・デジタル変換回路(ADコンバータ201)とアナログスイッチ制御信号をある比率をもって同期させることにより、アナログスイッチの切り替えによって生じるノイズ以外の期間内でアナログ・デジタル変換回路による処理をすることができ、ノイズに影響されない高精度の検出信号を得ることが出来る。
【0229】
なお、第1のエンコーダ3と第2のエンコーダ4とのうち、一方を上述したような磁気式のエンコーダとし、他方を光学式のエンコーダとしてもよい。たとえば、磁気式のエンコーダの場合、外乱により磁場が発生するような場合には、位置データを正常に検出できない可能性がある。このような場合においても、光学式のエンコーダは、正常に位置データを検出することができる。
そのため、外乱により磁場が発生するような場合でも、第1のエンコーダ3と第2のエンコーダ4とのうち、一方を上述したような磁気式のエンコーダとし、他方を光学式のエンコーダとしたエンコーダは、光学式のエンコーダにより、エンコーダ全体としては、正常に位置データを検出することができる。
【0230】
また、外部環境としてホコリや油滴があるような環境では、光学式のエンコーダでは、正常に位置データを検出できない可能性がある。このような場合でも、磁気式のエンコーダであれば、正常に位置データを検出できる。
そのため、外部環境としてホコリや油滴があるような環境でも、第1のエンコーダ3と第2のエンコーダ4とのうち、一方を上述したような磁気式のエンコーダとし、他方を光学式のエンコーダとしたエンコーダは、磁気式のエンコーダにより、エンコーダ全体としては、正常に位置データを検出することができる。
【0231】
更に、第1のエンコーダ3と第2のエンコーダ4とのうちの一方が、上述した本実施形態による磁気式のエンコーダであることにより、磁気検出素子の出力にバラツキがある場合でも、検出精度を向上させ、高精度とすることができる。更に、温度変化がある場合であっても、検出精度を向上させ、高精度とすることができる。
【0232】
よって、第1のエンコーダ3と第2のエンコーダ4とのうち、一方を上述したように磁気式のエンコーダとし、他方を光学式のエンコーダとし、更に、この磁気式のエンコーダを、上述した本実施形態による磁気式のエンコーダとすることにより、外乱により磁場が発生するような場合であっても、外部環境としてホコリや油滴があるような環境であっても、磁気検出素子の出力にバラツキがある場合であっても、また、温度変化がある場合であっても、エンコーダ全体としては、正常に位置データを検出することができ、かつ、検出精度を向上させ、高精度とすることができる。
また、このエンコーダは、バッテリーレスでありながら、多回転型のエンコーダとして機能することができる。
【0233】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0234】
1…モータ、2…動力伝達装置、3…第1のエンコーダ、4…第2のエンコーダ、5…第2の信号処理回路、6…第1の信号処理回路、8…コントローラ、9…通信ライン、10…入力軸、11…出力軸、12…通信線、13…設定制御線、14…モータ制御線、20−1〜20−4…スイッチング回路、50…第2の位置データ検出回路、51…第2の内挿回路、52…第2の位置検出回路、53…送信信号生成出力部、56、66…伝達比情報記憶部、57、67…第1の分解能記憶部、58、68…第2の分解能記憶部、61…第1の位置データ検出回路、62…第2の位置データ補正回路、63…位置データ合成回路、65…外部通信回路、81、82、811、821…合成増幅回路、100…磁気式回転角度検出装置、101、102…定電流駆動回路、105…磁石、106…回転子、109…基板組、111…異常検出回路、112…スイッチング回路制御部、200…演算回路、201…ADコンバータ、202…演算制御部、711、712、721、722…合成部、713、714、715、723、724、725…加減算増幅回路、H1,H2,H3,H4…ホール素子、n…伝達比、m…回転数量、P1…第1の位置データの値、P2…第2の位置データの値、R2…第2の位置データ検出回路50の分解能

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンを有し、回転軸を中心として回転する回転部と、
前記パターンを検出する第一パターン検出部と、
前記第一パターン検出部とは別に前記パターンを検出する第二パターン検出部と、
前記第一パターン検出部又は前記第二パターン検出部における検出異常の有無を検出する制御部と
を備えるエンコーダ。
【請求項2】
前記制御部は、前記第一パターン検出部の出力結果及び前記第二パターン検出部の出力結果に基づいて前記検出異常の有無を検出する異常判断手段を有する
請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記第一パターン検出部及び前記第二パターン検出部は、互いに位相の異なる検出信号を出力可能である
請求項1又は請求項2に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記パターンは、磁気パターンを含み、
前記第一パターン検出部は、前記磁気パターンによる磁場を検出する第一磁場検出部を有する
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記第一磁場検出部は、前記回転部の回転方向において所定角度ずれた位置に配置される一対の第一磁場検出器を有し、
前記検出異常は、一対の前記第一磁場検出器のうち少なくとも一方に生じる検出異常を含む
請求項4に記載のエンコーダ。
【請求項6】
前記第二パターン検出部は、前記磁場を検出する第二磁場検出部を有し、
前記第二磁場検出部は、前記回転部の回転方向に前記所定角度ずれた位置に配置される一対の第二磁場検出器を有する
請求項5に記載のエンコーダ。
【請求項7】
前記制御部は、前記第一磁場検出部からの出力結果と前記第二磁場検出部からの出力結果とに基づいて前記検出異常の有無を検出する
請求項6に記載のエンコーダ。
【請求項8】
少なくとも前記第一パターン検出部及び前記第二パターン検出部が電源の第一供給元に接続された接続状態のオフ時において、少なくとも前記第一パターン検出部及び前記第二パターン検出部に前記第一供給元から切り替えて接続される前記電源の第二供給元を更に備え、
前記検出異常は、前記第二供給元に接続された前記第一パターン検出部及び前記第二パターン検出部の検出異常を含む
請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載のエンコーダ。
【請求項9】
測定対象の回転軸部材に固定される回転部に設けられたパターンを、第一パターン検出部及び第二パターン検出部によって検出するパターン検出工程と、
前記第一パターン検出部又は前記第二パターン検出部における検出異常の有無を、制御部によって検出する異常検出工程と
を有するエンコーダのパターン検出方法。
【請求項10】
前記異常検出工程は、少なくとも前記パターン検出部及び前記第二パターン検出部に電気的に接続される電源の供給元が第一供給元から第二供給元に切り替えられたときに前記検出異常を検出することを含む
請求項9に記載のエンコーダのパターン検出方法。
【請求項11】
前記異常検出工程は、前記第一パターン検出部の出力結果及び前記第二パターン検出部の出力結果に基づいて前記検出異常の有無を検出することを含む
請求項9又は請求項10に記載のエンコーダのパターン検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2013−47693(P2013−47693A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−264672(P2012−264672)
【出願日】平成24年12月3日(2012.12.3)
【分割の表示】特願2009−152053(P2009−152053)の分割
【原出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】