説明

エンジンの入力操作レバー軸の封止装置

【課題】パッキンやボスや入力操作レバー軸の成形に高い寸法精度を必要としないエンジンの入力操作レバー軸の封止装置を提供する。
【解決手段】この課題解決のため、ボス1に入力操作レバー軸2を挿通し、エンジン外側の入力操作レバー軸外端部3に入力操作レバー4を取り付け、エンジン内側の入力操作レバー軸内端部5に出力レバー6を取り付け、ボス1と入力操作レバー軸2の間に環状のパッキン8を介在させた、エンジンの入力操作レバー軸の封止装置において、パッキン8に全体が弾性変形するスクイーズパッキンを用い、ボス1と入力操作レバー軸2のうち、一方にパッキン8の複数箇所の突端を圧接させ、他方にパッキン8の上記複数箇所の突端とは反対側の端を圧接させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの入力操作レバー軸の封止装置に関し、詳しくは、パッキンやボスや入力操作レバー軸の成形に高い寸法精度を必要とせず、また、パッキンの組み付け作業が簡単で、また、入力操作レバー軸の摺動抵抗の増加を抑制することができるエンジンの入力操作レバー軸の封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボスに入力操作レバー軸を挿通し、エンジン外側の入力操作レバー軸外端部に入力操作レバーを取り付け、エンジン内側の入力操作レバー軸内端部に出力レバーを取り付け、ボスと入力操作レバー軸の間に環状のパッキンを介在させた、エンジンの入力操作レバー軸の封止装置がある(例えば、特許文献1参照)。
この種の封止装置によれば、エンジン内側のエンジンオイルがボスと入力操作レバー軸との隙間からエンジン外側に漏れるのを防止することができる利点がある。
しかし、この種の封止装置では、通常、パッキンにリップパッキンか、Oリングを用いるため、問題がある。
リップパッキンは、取り付け部の内側にリップ部を備え、ボスのパッキン取り付け溝に取り付け部を圧入固定し、リップ部を入力操作レバー軸に圧接させ、リップ部の弾性復元力でシールを行うものである。
Oリングは、全体が弾性変形するスクイーズパッキンの一種で、ボスのパッキン取り付け溝に嵌合させ、ボスと入力操作レバー軸との間に挟み付けて全体を弾性変形させ、その弾性復元力で内周部分と外周部分をボスと入力操作レバー軸とに圧接させて、シールを行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−278486号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題》 リップパッキンを用いると、パッキンやボスの成形に高い寸法精度が要求される。
リップパッキンは、金属板等で補強された取り付け部をボスのパッキン取り付け溝に圧入して取り付けているため、パッキンやボスの成形に高い寸法精度が要求される。
【0005】
《問題》 リップパッキンを用いると、パッキンの組み付け作業が繁雑になる。
リップパッキンは、金属板等で補強された取り付け部をボスのパッキン取り付け溝に治具で圧入して取り付ける必要があり、パッキンの組み付け作業が繁雑になる。
【0006】
《問題》 Oリングを用いると、入力操作レバー軸の摺動抵抗が増加しやすい。
Oリングは、O形断面の外周円弧部分の1箇所をボスに圧接させ、内側円弧部分の1箇所を入力操作レバー軸に圧接させているため、捩れやすく、入力操作レバー軸の摺動抵抗が増加しやすい。
【0007】
本発明の課題は、パッキンやボスや入力操作レバー軸の成形に高い寸法精度を必要とせず、また、パッキンの組み付け作業が簡単で、また、入力操作レバー軸の摺動抵抗の増加を抑制することができるエンジンの入力操作レバー軸の封止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図1(A)、図4(A)(B)または図5(A)(B)に例示するように、ボス(1)に入力操作レバー軸(2)を挿通し、エンジン外側の入力操作レバー軸外端部(3)に入力操作レバー(4)を取り付け、エンジン内側の入力操作レバー軸内端部(5)に出力レバー(6)を取り付け、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)の間に環状のパッキン(8)を介在させた、エンジンの入力操作レバー軸の封止装置において、
図3(A)〜(D)に例示するように、パッキン(8)に全体が弾性変形するスクイーズパッキンを用い、
ボス(1)と入力操作レバー軸(2)のうち、一方にパッキン(8)の複数箇所の突端(10)(10)を圧接させ、他方にパッキン(8)の上記複数箇所の突端(10)(10)とは反対側の端(12)(25)を圧接させた、ことを特徴とするエンジンの入力操作レバー軸の封止装置。
【発明の効果】
【0009】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果1−1》 パッキンやボスや入力操作レバー軸の成形に高い寸法精度を必要としない。
図3(A)〜(D)に例示するように、パッキン(8)に全体が弾性変形するスクイーズパッキンを用いたので、パッキン(8)やその取り付け箇所の寸法の許容幅が広く、パッキン(8)やボス(1)や入力操作レバー軸(2)の成形に高い寸法精度を必要としない。
【0010】
《効果1−2》 パッキンの組み付け作業が簡単になる。
図3(A)〜(D)に例示するように、パッキン(8)に全体が弾性変形するスクイーズパッキンを用いたので、パッキン(8)をボス(1)や入力操作レバー軸(2)に冶具で圧入する必要がなく、パッキン(8)の組み付け作業が簡単になる。
【0011】
《効果1−3》 入力操作レバー軸の摺動抵抗の増加を抑制することができる。
図3(A)〜(D)に例示するように、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)のうち、一方にパッキン(8)の複数箇所の突端(10)(10)を圧接させ、他方にパッキン(8)の上記複数箇所の突端(10)(10)とは反対側の端(12)(25)を圧接させたので、パッキン(8)が捩れにくく、入力操作レバー軸(2)の摺動抵抗の増加を抑制することができる。
【0012】
《効果1−4》 ボスや入力操作レバー軸に対するパッキンのシール性が高い。
図3(A)〜(D)に例示するように、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)のうち、一方にパッキン(8)の複数箇所の突端(10)(10)を圧接させ、他方にパッキン(8)の上記複数箇所の突端(10)(10)とは反対側の端(12)(25)を圧接させたので、少なくとも、パッキン内外周部分(11)(9)の一方で複数段のシールが行われ、ボス(1)や入力操作レバー軸(2)に対するパッキン(8)のシール性が高い。
【0013】
《効果1−5》 パッキンの損傷が抑制される。
図3(A)〜(D)に例示するように、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)のうち、一方にパッキン(8)の複数箇所の突端(10)(10)を圧接させ、他方にパッキン(8)の上記複数箇所の突端(10)(10)とは反対側の端(12)(25)を圧接させたので、パッキン(8)が捩れにくく、パッキン(8)の損傷が抑制される。
【0014】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果2−1》 入力操作レバー軸の摺動抵抗の増加を抑制することができる。
図3(A)〜(D)に例示するように、入力操作レバー軸(2)のうち、円環溝(44)よりもエンジン外寄りの外寄り軸部分(46)とボス(1)との間に軸ボス間隙間(47)を形成し、この軸ボス間隙間(47)によって入力操作レバー軸(2)の外寄り軸部分(46)とボス(1)とが接触しないようにしたので、パッキン(8)のシールによる防錆を行うことができない外寄り軸部分(46)の外周部分に錆が発生しても、入力操作レバー軸(2)の摺動抵抗の増加を抑制することができる。
【0015】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果3》 入力操作レバーの摺動抵抗の増加を抑制することができる。
図3(A)〜(D)に例示するように、円環溝(44)内でパッキン(8)と隣接するエンジン外寄りの部分にゴミ溜め空間(48)を形成し、このゴミ溜め空間(48)に軸ボス間隙間(47)を臨ませることにより、入力操作レバー(4)とボス外端面(19)との間から軸ボス間隙間(47)を介してゴミ溜め空間(48)にゴミを進入させるようにしたので、エンジンの外側からボス外端面(19)と入力操作レバー(4)との間に進入したゴミや、ボス外端面(19)と入力操作レバー(4)との間で発生した磨耗金属粉や錆等のゴミは、軸ボス間隙間(47)を経てゴミ溜め空間(48)に進入する。このため、入力操作レバー(4)の摺動抵抗の増加を抑制することができる。
【0016】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果4−1》 入力操作レバーの摺動抵抗の増加が抑制される。
図3(A)〜(D)に例示するように、軸ボス間隙間(47)を間に挟んで相互に対向する入力操作レバー軸(2)の外寄り軸部分(46)とボス(1)との各対向箇所にそれぞれ面取り部(49)(50)を形成したので、軸ボス間隙間(47)が大きくなり、ボス外端面(19)と入力操作レバー(4)との間のゴミが軸ボス間隙間(47)からゴミ溜め空間(48)にスムーズに排出される。また、軸ボス間隙間(47)が大きくなるため、軸ボス間隙間(47)にパッキン(8)が巻き込まれにくくなる。これらの理由により、入力操作レバー(4)の摺動抵抗の増加が抑制される。
【0017】
《効果4−2》 パッキンの損傷を抑制することができる。
図3(A)〜(D)に例示するように、軸ボス間隙間(47)にパッキン(8)が巻き込まれにくくなるため、パッキン(8)の損傷を抑制することができる。
【0018】
(請求項5に係る発明)
請求項5に係る発明は、請求項3または請求項4に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果5−1》 入力操作レバー軸の摺動抵抗の増加を抑制することができる。
図3(A)に例示するように、パッキン(8)の断面形状をX形とし、ボス(1) のエンジン外側寄りの開口部(45)の内周面にパッキン外周部分(9)の2箇所の突端(10)(10)を圧接させ、入力操作レバー軸(2)の円環溝(44)の内底面にパッキン内周部分(11)の2箇所の突端(12)(12)を圧接させたので、パッキン(8)の捩れが起こりにくく、入力操作レバー軸(2)の摺動抵抗の増加を抑制することができる。
【0019】
《効果5−2》 ゴミ溜め空間のゴミの収容能力を高めることができる。
図3(A)に例示するように、パッキン(8)の断面形状をX形としたので、パッキン(8)の窪み(51)もゴミ溜め空間(48)として利用することができ、ゴミ溜め空間(48)のゴミの収容能力を高めることができる。
【0020】
《効果5−3》 ゴミ溜め空間でゴミを溜めながらも、ゴミの噛み込みによるパッキンのオイルシール機能の低下を抑制することができる。
図3(A)に例示するように、パッキン(8)の断面形状をX形とし、ボス(1) のエンジン外側寄りの開口部(45)の内周面にパッキン外周部分(9)の2箇所の突端(10)(10)を圧接させ、入力操作レバー軸(2)の円環溝(44)の内底面にパッキン内周部分(11)の2箇所の突端(12)(12)を圧接させたので、エンジン外寄りの突端(10)(12)のダストシール機能により、エンジン内寄りの突端(10)(12)へのゴミの噛み込みを防止することができる。このため、ゴミ溜め空間(48)でゴミを溜めながらも、ゴミの噛み込みによるパッキン(8)のオイルシール機能の低下を抑制することができる。
【0021】
(請求項6に係る発明)
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果6》 ゴミ溜め空間のゴミの収容能力を高めることができる。
図3(B)に例示するように、パッキン(8)の断面形状をY形としたので、パッキン(8)の窪み(52)もゴミ溜め空間(48)として利用することができ、ゴミ溜め空間(48)のゴミの収容能力を高めることができる。
【0022】
(請求項7に係る発明)
請求項7に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果を奏する。
【0023】
(請求項8に係る発明)
請求項8に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果を奏する。
【0024】
(請求項9に係る発明)
請求項9に係る発明は、請求項1から請求項8のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果9−1》 入力操作レバー軸の摺動抵抗の増加を抑制することができる。
図1(A)、図4(A)(B)または図5(A)(B)に例示するように、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)の間に入力操作レバー軸(2)の軸長方向に離した複数のパッキン(8)(8)を介在させたので、入力操作レバー軸(2)が傾きにくく、ボス外端寄り部(7)やボス内端部(26)と入力操作レバー軸(2)の接触が抑制され、入力操作レバー軸(2)の摺動抵抗の増加を抑制することができる。
【0025】
《効果9−2》 ボス外端寄り部やボス内端部や入力操作レバー軸の偏磨耗が起こりにくい。
図1(A)、図4(A)(B)または図5(A)(B)に例示するように、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)の間に入力操作レバー軸(2)の軸長方向に離した複数のパッキン(8)(8)を介在させたので、入力操作レバー軸(2)が傾きにくく、ボス外端寄り部(7)やボス内端部(26)と入力操作レバー軸(2)の接触が抑制され、これらの偏磨耗が起こりにくい。
【0026】
《効果9−3》 ボスからのオイル漏れが起こり難い。
図1(A)、図4(A)(B)または図5(A)(B)に例示するように、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)の間に入力操作レバー軸(2)の軸長方向に離した複数のパッキン(8)(8)を介在させたので、複数箇所のシールにより、ボス(1)からのオイル漏れが起こり難い。
【0027】
(請求項10に係る発明)
請求項10に係る発明は、請求項9に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果10−1》入力操作レバー軸の摺動抵抗が小さくなる。
図4(A)に例示するように、隣合うパッキン(8)(8)の間に位置するパッキン間入力操作レバー軸部分(15)の外周面を窪ませたので、入力操作レバー軸(1)とボス(2)との接触面積が小さくなり、入力操作レバー軸(1)の摺動抵抗が小さくなる。
【0028】
《効果10−2》 入力操作レバー軸の潤滑性が高まる。
図4(A)に例示するように、パッキン間入力操作レバー軸部分(15)とボス(1)との間にオイル溜め空間(16)を形成したので、オイル溜め空間(16)にオイルが溜まり、入力操作レバー軸(2)の潤滑性が高まる。
【0029】
(請求項11に係る発明)
請求項11に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果11》 パッキンの取付作業が簡単になる。
図4(B)(C)に例示するように、入力操作レバー軸外端部(3)をその隣接軸部分(17)よりも小径のパッキン取付ガイド軸部(18)とし、このパッキン取付ガイド軸部(18)を隣接軸部分(17)から突出させ、パッキン取付ガイド軸部(18)の突出端に嵌めたパッキン(8)をパッキン取付ガイド軸部(18)に沿って隣接軸部分(17)寄りのパッキン取り付け位置までガイドできるようにしたので、パッキン(8)の取付時にパッキン(8)を径方向に大きく変形させる必要がなく、パッキン(8)の取付作業が簡単になる。
【0030】
(請求項12に係る発明)
請求項1から請求項11のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果12−1》 入力操作レバーの摺動抵抗の増加を抑制することができる。
図5(A)(B)に例示するように、ボス外端面(19)にボス内周縁に沿う環状のゴミ溜め溝(20)を設けたので、エンジンの外側からボス外端面(19)と入力操作レバー(4)との間に進入したゴミや、ボス外端面(19)と入力操作レバー(4)との間で発生した磨耗金属粉や錆等のゴミはゴミ溜め溝(20)に溜まり、入力操作レバー(4)の摺動抵抗の増加を抑制することができる。
【0031】
《効果12−2》 入力操作レバーやボスの錆の発生を抑制することができる。
図5(A)(B)に例示するように、ボス外端面(19)にボス内周縁に沿う環状のゴミ溜め溝(20)を設け、この環状のゴミ溜め溝(20)からボス外端面(19)を横断する排水溝(21)を設けたので、エンジンの外側からボス外端部(19)と入力操作レバー(4)の間に進入した水はゴミ溜め溝(20)から排水溝(21)を介して排水され、入力操作レバー(4)やボス(1)の錆の発生を抑制することができる。
【0032】
(請求項13に係る発明)
請求項1から請求項11のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果13−1》 入力操作レバーの摺動抵抗の増加を抑制することができる。
図5(C)(D)に例示するように、ボス外端面(19)の中央部に入力操作レバー受け座(22)を設け、ボス外周面(19)の入力操作レバー受け座(22)の周囲に外向きに下り傾斜するテーパ面(23)を形成し、入力操作レバー(4)とテーパ面(23)との間にゴミ溜め空間(24)を形成したので、エンジンの外側からボス外端面(19)と入力操作レバー(4)との間に進入したゴミや、ボス外端面(19)と入力操作レバー(4)との間で発生した磨耗金属粉や錆等のゴミはゴミ溜め空間(24)に排出される。このため、入力操作レバー(4)の摺動抵抗の増加を抑制することができる。
【0033】
《効果13−2》 入力操作レバーやボスの錆の発生を抑制することができる。
図5(C)(D)に例示するように、ボス外端面(19)の中央部に入力操作レバー受け座(22)を設け、ボス外周面(19)の入力操作レバー受け座(22)の周囲に外向きに下り傾斜するテーパ面(23)を形成し、入力操作レバー(4)とテーパ面(23)との間にゴミ溜め空間(24)を形成したので、エンジンの外側からボス外端部(19)と入力操作レバー(4)の間に進入した水はゴミ溜め空間(24)を介して排水され、入力操作レバー(4)やボス(1)の錆の発生を抑制することができる。
【0034】
(請求項14に係る発明)
請求項1から請求項13のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果14》 ボスや入力操作レバー軸の損傷を抑制することができる。
図1(A)(E)に例示するように、ボス(1)内で入力操作レバー軸(2)にその周方向に沿う向きの複数の溝(53)(54)(54)(54)を軸長方向に並べて設け、この複数の溝(53)(54)(54)(54)に潤滑剤を保持できるようにしたので、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)との隙間に保持された潤滑剤で、ボス(1)や入力操作レバー軸(2)に焼き付きやかじりを抑制することができる。また、複数の溝(53)(54)(54)(54)が、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)との隙間で発生した磨耗金属粉や、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)との隙間に進入したカーボン等のゴミ溜めとなり、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)との間で生じるゴミの噛み込みを防止することができる。これらの理由により、ボス(1)や入力操作レバー軸(2)の損傷を抑制することができる。
【0035】
(請求項15に係る発明)
請求項14に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果15》 入力操作レバー軸の損傷抑制機能を高めることができる。
図1(E)に例示するように、複数の溝(53)(54)(54)(54)は深さの異なる深い溝(53)と浅い溝(54)(54)(54)とで構成し、浅い溝(54)(54)(54)はその中央部から軸方向両端側に向けて次第に浅くなる形状に形成したので、入力操作レバー軸(2)の損傷抑制機能を高めることができる。その理由は、深い溝(53)は潤滑剤の保持機能が高く、ゴミ収容機能も高いことに加え、浅い溝(54)(54)(54)は、入力操作レバー軸(2)が軸長方向にガタついた時に、浅い溝(54)(54)(54)の端部がその溝の中央部寄りの膜厚の厚い潤滑剤に乗り上げ、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)との間に斥力が発生し、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)との直接接触が抑制されるためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジンの入力操作レバー軸の封止装置 を備えた入力操作装置を説明する図で、図1(A)は縦断面図、図1(B)は平面図、図1(C)は底面図、図1(D)は図1(A)のD部分の拡大図、図1(E)は図1(A)のE部分の拡大図、図1(F)は図1(E)のF部分の拡大図である。
【図2】図1の入力操作装置を備えたエンジンの燃料調量部を説明する図で、図2(A)は縦断面図、図2(B)は図2(A)のB方向矢視図である。
【図3】図1の入力操作装置で用いるパッキンの基本例と変形例の説明図で、図3(A)はパッキンの基本例とその周辺部品の断面図、図3(B)はパッキンの変形例1とその周辺部品の断面図、図3(C)はパッキンの変形例2とその周辺部品の断面図、図3(D)はパッキンの変形例3とその周辺部品の断面図を示している。
【図4】図1の入力操作装置で用いる入力操作レバー軸の変形例の説明図で、図4(A)は入力操作レバー軸の変形例1を備えた入力操作装置の縦断面図、図4(B)は入力操作レバー軸の変形例2を備えた入力操作装置の縦断面図、図4(C)は図4(B)のC部分の拡大図である。
【図5】図1の入力操作装置で用いる入力操作レバー受け座の変形例の説明図で、図5(A)は入力操作レバー受け座の変形例1を備えた入力操作装置の縦断面図、図5(B)は図5(A)のB−B線断面図、図5(C)は入力操作レバー受け座の変形例2を備えた入力操作装置の縦断面図、図5(D)は図5(C)のD部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1〜図5は本発明の実施形態に係るエンジンの入力操作レバー軸の封止装置を備えた入力操作装置を説明する図であり、この実施形態では、ディーゼルエンジンの燃料調量部の入力操作装置について説明する。
【0038】
図2(A)(B)に示すように、エンジンのポンプ収容室(27)の前部にギヤケース(28)を設け、ポンプ収容室(27)に燃料噴射ポンプ(29)を収容し、ギヤケース(28)に一対の入力操作装置を取り付けている。一方の入力操作装置は、調速操作装置(30)で、ガバナスプリング(32)を介してガバナレバー(33)を連動連結し、エンジン回転速度を設定する。他方の入力操作装置は、エンジン停止操作装置(31)で、燃料噴射ポンプ(29)の燃料調量ラック(34)を燃料噴射位置まで移動させ、エンジンを停止させる。
【0039】
エンジン停止操作装置(31)について説明する。
図2(A)(B)に示すように、エンジン停止操作装置(31)は、ギヤケース(28)に装着する蓋体(35)に取り付けられている。
図1(A)に示すように、ボス(1)に入力操作レバー軸(2)を挿通し、エンジン外側の入力操作レバー軸外端部(3)に入力操作レバー(4)を取り付け、エンジン内側の入力操作レバー軸内端部(5)に出力レバー(6)を取り付け、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)の間に環状のパッキン(8)を介在させている。
図2(A)(B)に示すように、ボス(1)はギヤケース(28)に装着する蓋体(35)に形成し、エンジン外側であるギヤケース外側の入力操作レバー軸外端部(3)にエンジン停止用の入力操作レバー(4)を取り付け、エンジン内側であるギヤケース(28)内側の入力操作レバー軸内端部(5)にエンジン停止用の出力レバー(6)を取り付けている。出力レバー(6)はコイル状の戻しスプリング(6a)でエンジン停止操作方向と反対方向に付勢されている。
ボス(1)、入力操作レバー軸(2)、入力操作レバー(4)、出力レバー(6)は、いずれも金属製、パッキン(8)はゴム製である。パッキン(8)は円環状である。
【0040】
図3(A)〜(D)に示すように、パッキン(8)に全体が弾性変形するスクイーズパッキンを用い、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)のうち、一方にパッキン(8)の複数箇所の突端(10)(10)を圧接させ、他方にパッキン(8)の上記複数箇所の突端(10)(10)とは反対側の反対側の端(12)(25)を圧接させている。
【0041】
図3(A)〜(D)に示すように、ボス(1)のエンジン外側寄りの開口部(45)内で入力操作レバー軸(2)の外周に円環溝(44)を設け、この円環溝(44)にパッキン(8)を嵌合させ、入力操作レバー軸(2)のうち、円環溝(44)よりもエンジン外寄りの外寄り軸部分(46)とボス(1)との間に軸ボス間隙間(47)を形成し、この軸ボス間隙間(47)によって入力操作レバー軸(2)の外寄り軸部分(46)とボス(1)とが接触しないようにしている。
【0042】
図3(A)〜(D)に示すように、円環溝(44)内でパッキン(8)と隣接するエンジン外寄りの部分にゴミ溜め空間(48)を形成し、このゴミ溜め空間(48)に軸ボス間隙間(47)を臨ませることにより、入力操作レバー(4)とボス外端面(19)との間から軸ボス間隙間(47)を介してゴミ溜め空間(48)にゴミを進入させるようにしている。
コイル状の戻しスプリング(6a)の伸長方向の弾性復元力により、エンジン外側のボス外端面(19)に入力操作レバー(4)を密着させている。
【0043】
図3(A)〜(D)に示すように、軸ボス間隙間(47)を間に挟んで相互に対向する入力操作レバー軸(2)の外寄り軸部分(46)とボス(1)との各対向箇所にそれぞれ面取り部(49)(50)を形成している。
入力操作レバー軸(2)の外寄り軸部分(46)の面取り部(49)はアール形状、ボス(1)の面取り部(50)はテーパ形状である。
【0044】
図3(A)〜(D)に示すように、パッキン(8)には各種のものを用いることができるが、基本例としては、図3(A)に示すように、断面形状をX形とし、ボス(1)にパッキン外周部分(9)の2箇所の突端(10)(10)を圧接させ、入力操作レバー軸(2)の円環溝(44)の内底面にパッキン内周部分(11)の2箇所の突端(12)(12)を圧接させたものを挙げることができる。パッキン(8)は入力操作レバー軸(2)の円環溝(44)に内嵌させている。
【0045】
基本例に代える変更例1のパッキン(8)としては、図3(B)に示すように、断面形状をY形とし、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)のうち、一方にパッキン(8)の2箇所の突端(10)(10)を圧接させ、他方にパッキン(8)の1箇所の突端(12)を圧接させるものが考えられる。
図3(B)に示すものは、ボス(1)にパッキン外周部分の2箇所の突端(10)(10)を圧接させ、入力操作レバー軸(2)にパッキン内周部分の1箇所の突端(12)を圧接させている。
【0046】
基本例に代える変更例2のパッキン(8)としては、図3(C)に示すように、断面形状をV形とし、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)のうち、一方にパッキン(8)の2箇所の突端(10)(10)を圧接させ、他方にパッキン(8)の1箇所の突端(12)を圧接させるものが考えられる。
図3(C)に示すものは、ボス(1)にパッキン外周部分の2箇所の突端(10)(10)を圧接させ、入力操作レバー軸(2)にパッキン内周部分の1箇所の突端(12)を圧接させている。
【0047】
基本例に代える変更例3のパッキン(8)としては、図3(D)に示すように、断面形状は、外周側と内周側のいずれかの縁が内側に窪むV字形で、残りの3方の縁全体がコの字形となる形状で、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)のうち、一方にパッキン(8)の2箇所の突端(10)(10)を圧接させ、他方にパッキン(8)の2箇所の突端(10)(10)とは反対側の端(25)を圧接させるものが考えられる。
図3(D)に示すものは、外周側の縁がV字形で、残りの3方の縁全体でコの字形となる形状で、ボス(1)にパッキン外周部分の2箇所の突端(10)(10)を圧接させ、入力操作レバー軸(2)にパッキン内周部分の端(25)を圧接させている。
【0048】
図1(A)に示すように、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)の間に入力操作レバー軸(2)の軸長方向に離した複数のパッキン(8)(8)を介在させている。パッキン(8)(8)はボス外側寄り部(7)とボス内側寄り部(13)とに一対設けている。一対のパッキン(8)(8)には同じ基本例のものを用いている。一対のパッキン(8)(8)には基本例と変更例1〜3のうち、同じ種類のものを用いてもよいし、異なる種類のものを用いてもよい。
【0049】
図4に示すように、入力操作レバー軸(2)にも変形例を用いることができる。
図4(A)に示す入力操作レバー軸(2)の変形例1では、隣合うパッキン(8)(8)の間に位置するパッキン間入力操作レバー軸部分(15)の外周面を窪ませ、パッキン間入力操作レバー軸部分(15)とボス(1)との間にオイル溜め空間(16)を形成している。
図4(B)(C)に示す入力操作レバー軸(2)の変形例2では、入力操作レバー軸外端部(3)をその隣接軸部分(17)よりも小径のパッキン取付ガイド軸部(18)とし、このパッキン取付ガイド軸部(18)を隣接軸部分(17)から突出させ、パッキン取付ガイド軸部(18)の突出端に嵌めたパッキン(8)をパッキン取付ガイド軸部(18)に沿って隣接軸部分(17)寄りのパッキンの取り付け位置までガイドできるようにしている。
【0050】
図5に示すように、入力操作レバー受け座にも変形例を用いることができる。
図5(A)(B)に示す入力操作レバー受け座の変形例1では、エンジン外側のボス外端面(19)に入力操作レバー(4)を密着させるに当たり、ボス外端面(19)にボス内周縁に沿う環状のゴミ溜め溝(20)を設け、この環状のゴミ溜め溝(20)からボス外端面(19)を横断する排水溝(21)を設けている。
図5(C)(D)に示す入力操作レバー受け座の変形例2では、エンジン外側のボス外端面(19)に入力操作レバー(4)を密着させるに当たり、ボス外端面(19)の中央部に入力操作レバー受け座(22)を設け、ボス外周面(19)の入力操作レバー受け座(22)の周囲に外向きに下り傾斜するテーパ面(23)を形成し、入力操作レバー(4)とテーパ面(23)との間にゴミ溜め隙間(24)を形成している。
【0051】
図1(A)(E)に示すように、ボス(1)内で入力操作レバー軸(2)にその周方向に沿う向きの複数の溝(53)(54)(54)(54)を軸長方向に並べて設け、この複数の溝(53)(54)(54)(54)に潤滑剤を保持できるようにしている。
図1(E)に示すように、複数の溝(53)(54)(54)(54)は深さの異なる深い溝(53)と浅い溝(54)(54)(54)とで構成し、浅い溝(54)(54)(54)はその中央部から軸方向両端側に向けて次第に浅くなる形状に形成している。深い溝(53)も同様である。
潤滑剤としては、グリスを用いている。
入力操作レバー軸(2)の軸長方向と直交する向きから見て、複数の溝(53)(54)(54)(54)の底面が円弧状になるようにして、溝(53)(54)(54)(54)の底面で応力集中が起こりにくくしている。図1(F)に示すように、入力操作レバー軸(2)の軸長方向と直交する向きから見て、複数の溝(53)(54)(54)(54)で挟まれた山(55)(56)(57)の頂面が円弧状になるようにしている。図1(B)に示すように、複数の溝(53)(54)(54)(54)は、単数の深い溝(53)と、連続する複数(3個)の浅い溝)(54)(54)(54)からなり、深い溝(53)と3連の浅い溝)(54)(54)(54)とは交互に配置されている。各溝(53)(54)(54)(54)は、それぞれ円環状で、各溝(53)(54)(54)(54)同士は周方向には連続しておらず、図1(F)に示すように、各溝(53)(54)を挟む山(55)(56)(57)の頂面とボス(1)の内周面との隙間のみを介して相互に連通している。すなわち、各溝(53)(54)(54)(54)は、各溝(53)(54)(54)(54)同士が周方向に連続する螺旋溝ではない。
複数の溝(53)(54)(54)(54)の下方で、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)との間にパッキン(8)を配置し、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)との間に保持された潤滑剤の流出をパッキン(8)で抑制している。
【0052】
図2(A)(B)に示す調速操作装置(30)も、エンジン停止操作装置(31)と同様、ギヤケース(28)に装着する蓋体(36)に取り付けられている。
この調速操作装置(30)は、エンジン停止操作装置(31)と同じ構成要素を備えており、図2の調速操作装置(30)のうち、エンジン停止操作装置(31)と同一の構成要素には、調速操作装置(30)の構成要素と同一の符号を付しておく。
この調速操作装置(30)は、エンジン停止操作装置(31)と同じ構造が採用されているが、エンジン外側であるギヤケース(28)外側の入力操作レバー軸外端部(3)に調速用の入力操作レバー(4)を取り付け、エンジン内側であるギヤケース(28)内側の入力操作レバー軸内端部(5)に調速用の出力レバー(6)を取り付けている。出力レバー(6)はコイル状の戻しスプリング (6a)でエンジン停止操作方向と反対方向に付勢されている。他の構造は、エンジン停止操作装置(31)と同じ構造である。調速操作装置(30)の入力操作レバー軸(2)にも複数の溝(53)(54)(54)(54)を形成している。
【0053】
図1(A)に示す入力操作レバー軸(2)の半径(R)は5mm〜30mmとし、深い溝(53)と浅い溝(54)を形成する入力操作レバー軸(2)の軸長寸法(L)は、15mm〜25mmとする。深い溝(53)と浅い溝(54)を形成する領域は、入力操作レバー軸(2)にその軸長方向に離した一対のオイルシール部(8)(8)を設けた場合、このオイルシール部(8)(8)間の60%〜100%の長さとするのが望ましい。
【0054】
図1(F)に示す深い溝(53)の幅(W1)の最適範囲は、0.06mm〜0.5mmであり、深い溝(53)の最深部(53a)の深さ(D1)の最適範囲は、0.03mm〜0.1mmである。
この最適範囲では、深い溝(53)の十分なゴミ収容機能と、入力操作レバー軸(2)の十分な強度が得られる。
この最適範囲を外れ、深い溝(53)の幅(W1)が小さ過ぎた場合や、その最深部(53a)の深さ(D1)が浅過ぎた場合には、深い溝(53)のゴミ収容機能が不十分になる場合があり、深い溝(53)の幅(W1)が大き過ぎた場合や、その最深部(53a)の深さ(D1)が深過ぎた場合には、入力操作レバー軸(2)の強度が不十分になる場合がある。
深い溝(53)の幅(W1)は、深い溝(53)を挟む、隣合う山(55)(56)の各最頂部(55a)(56a)間の離間幅であり、深い溝(53)の最深部(53a)の深さ(D1)は、その山(55)(56)の最頂部(55a)(56a)から深い溝(53)の最深部(53a)までの深さである。
【0055】
浅い溝(54)の幅(W2)の最適範囲は、0.002mm〜0.06mmであり、浅い溝(54)の最深部(54a)の深さ(D2)の最適範囲は、0.001mm〜0.03mmである。
この最適範囲では、入力操作レバー軸(2)の十分な損傷抑制機能が得られる。
この最適範囲を外れ、浅い溝(54)の幅(W2)が小さ過ぎた場合や、大き過ぎた場合、その最深部(54a)の深さ(D2)が浅過ぎた場合や、深過ぎた場合には、入力操作レバー軸(2)の損傷抑制機能が不十分になる場合がある。
その理由は、次のように推定される。
上記の最適範囲では、浅い溝(54)の勾配も最適になり、入力操作レバー軸(2)が軸長方向にガタついた時に、浅い溝(54)の端部がその溝(54)の中央寄り寄りにある膜厚の厚い潤滑剤に乗り上げ、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)との間に適度な斥力が発生し、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)との接触が抑制され、入力操作レバー軸(2)の損傷抑制機能が高まる。
上記の最適範囲を外れ、浅い溝(54)の幅(W2)が小さ過ぎた場合や、その最深部(54a)の深さ(D2)が深過ぎた場合には、浅い溝(54)の勾配が急になり過ぎる場合がある。また、浅い溝(54)の幅(W2)が大き過ぎた場合や、その最深部(54a)の深さ(D2)が浅過ぎた場合には、浅い溝(54)の勾配が緩やかになり過ぎる場合がある。このような場合には、入力操作レバー軸(2)が軸長方向にガタついた時に、浅い溝(54)の端部がその溝の中央寄り寄りにある膜厚の厚い潤滑剤に乗り上げても、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)との間に適度な斥力が発生せず、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)との接触が抑制されず、入力操作レバー軸(2)の損傷抑制機能が低下する場合がある。
浅い溝(54)の幅(W2)は、浅い溝(54)を挟む、隣合う山(56)(57)の各最頂部(56a)(57a)の離間幅であり、浅い溝(54)の最深部(54a)の深さ(D2)は、隣合う山(56)(57)の最頂部(56a)(57a)から浅い溝(54)の最深部(54a)までの深さである。
【0056】
図1(F)に示す浅い溝(54)を挟む山(56)(57)の最突出部(56a)(57a)とボス(1)の内周面との最大隙間(C)の最適範囲は、0.1mm以下である。
この最適範囲では、入力操作レバー軸(2)の十分な損傷抑制機能が得られる。
この最適範囲を外れ、上記の最大隙間(C)が大き過ぎた場合には、入力操作レバー軸(2)の損傷抑制機能が不十分になる場合がある。
その理由は次のように推定される。
上記の最適範囲では、入力操作レバー軸(2)が軸長方向にガタついた時に、浅い溝(54)の端部がその溝(54)の中央寄り寄りにある膜厚の厚い潤滑剤に乗り上げ、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)との間に適度な斥力が発生し、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)との接触が抑制され、入力操作レバー軸(2)の損傷抑制機能が高まる。
上記の最適範囲を外れ、上記の最大隙間(C)が大き過ぎた場合には、入力操作レバー軸(2)が軸長方向にガタついた時に、浅い溝(54)の端部がその溝(54)の中央寄り寄りにある膜厚の厚い潤滑剤に乗り上げても、浅い溝(54)の潤滑剤が上記の最大隙間(C)から自由に流出するため、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)との間に適度な斥力が発生せず、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)との接触が抑制されず、入力操作レバー軸(2)の損傷抑制機能が低下する場合がある。
【符号の説明】
【0057】
(1) ボス
(2) 入力操作レバー軸
(3) 入力操作レバー軸外端部
(4) 入力操作レバー
(5) 入力操作レバー軸内端部
(6) 出力レバー
(8) パッキン
(10) 突端
(12) 突端
(15) パッキン間入力操作レバー軸部分
(16) オイル溜め空間
(17) 隣接軸部分
(18) パッキン取付ガイド軸部
(19) ボス外端面
(20) ゴミ溜め溝
(21) 排水溝
(22) 入力操作レバー受け座
(23) テーパ面
(24) ゴミ溜め隙間
(25) 端
(44) 円環溝
(45) 開口部
(46) 外寄り軸部分
(47) 軸ボス間隙間
(48) ゴミ溜め空間
(49) 面取り部
(50) 面取り部
(51) 窪み
(52) 窪み
(53) 深い溝
(54) 浅い溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボス(1)に入力操作レバー軸(2)を挿通し、エンジン外側の入力操作レバー軸外端部(3)に入力操作レバー(4)を取り付け、エンジン内側の入力操作レバー軸内端部(5)に出力レバー(6)を取り付け、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)の間に環状のパッキン(8)を介在させた、エンジンの入力操作レバー軸の封止装置において、
パッキン(8)に全体が弾性変形するスクイーズパッキンを用い、
ボス(1)と入力操作レバー軸(2)のうち、一方にパッキン(8)の複数箇所の突端(10)(10)を圧接させ、他方にパッキン(8)の上記複数箇所の突端(10)(10)とは反対側の端(12)(25)を圧接させた、ことを特徴とするエンジンの入力操作レバー軸の封止装置。
【請求項2】
請求項1に記載したエンジンの入力操作レバー軸の封止装置において、
ボス(1)のエンジン外側寄りの開口部(45)内で入力操作レバー軸(2)の外周に円環溝(44)を設け、この円環溝(44)にパッキン(8)を嵌合させ、
入力操作レバー軸(2)のうち、円環溝(44)よりもエンジン外寄りの外寄り軸部分(46)とボス(1)との間に軸ボス間隙間(47)を形成し、この軸ボス間隙間(47)によって入力操作レバー軸(2)の外寄り軸部分(46)とボス(1)とが接触しないようにした、ことを特徴とするエンジンの入力操作レバー軸の封止装置。
【請求項3】
請求項2に記載したエンジンの入力操作レバー軸の封止装置において、
円環溝(44)内でパッキン(8)と隣接するエンジン外寄りの部分にゴミ溜め空間(48)を形成し、このゴミ溜め空間(48)に軸ボス間隙間(47)を臨ませることにより、入力操作レバー(4)とボス外端面(19)との間から軸ボス間隙間(47)を介してゴミ溜め空間(48)にゴミを進入させるようにした、ことを特徴とするエンジンの入力操作レバー軸の封止装置。
【請求項4】
請求項3に記載したエンジンの入力操作レバー軸の封止装置において、
軸ボス間隙間(47)を間に挟んで相互に対向する入力操作レバー軸(2)の外寄り軸部分(46)とボス(1)との各対向箇所にそれぞれ面取り部(49)(50)を形成した、ことを特徴とするエンジンの入力操作レバー軸の封止装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載したエンジンの入力操作レバー軸の封止装置において、
パッキン(8)の断面形状をX形とし、ボス(1) のエンジン外側寄りの開口部(45)の内周面にパッキン外周部分(9)の2箇所の突端(10)(10)を圧接させ、入力操作レバー軸(2)の円環溝(44)の内底面にパッキン内周部分(11)の2箇所の突端(12)(12)を圧接させた、ことを特徴とするエンジンの入力操作レバー軸の封止装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれかに記載した、エンジンの入力操作レバー軸の封止装置において、
パッキン(8)の断面形状をY形とし、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)のうち、一方にパッキン(8)の2箇所の突端(10)(10)を圧接させ、他方にパッキン(8)の1箇所の突端(12)を圧接させた、ことを特徴とするエンジンの入力操作レバー軸の封止装置。
【請求項7】
請求項1から請求項4のいずれかに記載した、エンジンの入力操作レバー軸の封止装置において、
パッキン(8)の断面形状をV形とし、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)のうち、一方にパッキン(8)の2箇所の突端(10)(10)を圧接させ、他方にパッキン(8)の1箇所の突端(12)を圧接させた、ことを特徴とするエンジンの入力操作レバー軸の封止装置。
【請求項8】
請求項1から請求項4のいずれかに記載した、エンジンの入力操作レバー軸の封止装置において、
パッキン(8)の断面形状は、外周側と内周側のいずれかの縁が内側に窪むV字形で、残りの3方の縁全体がコの字形となる形状で、ボス(1)と入力操作レバー軸(2)のうち、一方にパッキン(8)の2箇所の突端(10)(10)を圧接させ、他方にパッキン(8)の2箇所の突端(10)(10)とは反対側の端(25)を圧接させた、ことを特徴とするエンジンの入力操作レバー軸の封止装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載したエンジンの入力操作レバー軸の封止装置において、
ボス(1)と入力操作レバー軸(2)の間に入力操作レバー軸(2)の軸長方向に離した複数のパッキン(8)(8)を介在させた、ことを特徴とするエンジンの入力操作レバー軸の封止装置。
【請求項10】
請求項9に記載したエンジンの入力操作レバー軸の封止装置において、
隣合うパッキン(8)(8)の間に位置するパッキン間入力操作レバー軸部分(15)の外周面を窪ませ、パッキン間入力操作レバー軸部分(15)とボス(1)との間にオイル溜め空間(16)を形成した、ことを特徴とするエンジンの入力操作レバー軸の封止装置。
【請求項11】
請求項1に記載したエンジンの入力操作レバー軸の封止装置において、
入力操作レバー軸外端部(3)をその隣接軸部分(17)よりも小径のパッキン取付ガイド軸部(18)とし、このパッキン取付ガイド軸部(18)を隣接軸部分(17)から突出させ、パッキン取付ガイド軸部(18)の突出端に嵌めたパッキン(8)をパッキン取付ガイド軸部(18)に沿って隣接軸部分(17)寄りのパッキン取り付け位置までガイドできるようにした、ことを特徴とするエンジンの入力操作レバー軸の封止装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載したエンジンの入力操作レバー軸の封止装置において、
ボス外端面(19)にボス内周縁に沿う環状のゴミ溜め溝(20)を設け、この環状のゴミ溜め溝(20)からボス外端面(19)を横断する排水溝(21)を設けた、ことを特徴とするエンジンの入力操作レバー軸の封止装置。
【請求項13】
請求項1から請求項11のいずれかに記載したエンジンの入力操作レバー軸の封止装置において、
ボス外端面(19)の中央部に入力操作レバー受け座(22)を設け、ボス外周面(19)の入力操作レバー受け座(22)の周囲に外向きに下り傾斜するテーパ面(23)を形成し、入力操作レバー(4)とテーパ面(23)との間にゴミ溜め隙間(24)を形成した、ことを特徴とするエンジンの入力操作レバー軸の封止装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれかに記載したエンジンの入力操作レバー軸の封止装置において、
ボス(1)内で入力操作レバー軸(2)にその周方向に沿う向きの複数の溝(53)(54)(54)(54)を軸長方向に並べて設け、この複数の溝(53)(54)(54)(54)に潤滑剤を保持できるようにした、ことを特徴とするエンジンの入力操作レバー軸の封止装置。
【請求項15】
請求項14に記載したエンジンの入力操作レバー軸の封止装置において、
複数の溝(53)(54)(54)(54)は深さの異なる深い溝(53)と浅い溝(54)(54)(54)とで構成し、浅い溝(54)(54)(54)はその中央部から軸方向両端側に向けて次第に浅くなる形状に形成した、ことを特徴とするエンジンの入力操作レバー軸の封止装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−215170(P2012−215170A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−13767(P2012−13767)
【出願日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】