説明

エンジンの排気系構造

【課題】排ガス性能のさらなる向上を図り環境保護に寄与することが出来るようにする。
【解決手段】エンジン11の排気ポートに接続された排気通路14内に燃料噴射手段26から噴射された燃料Fが衝突し、この燃料Fを拡散させる燃料被衝突部材30,40,50を排気通路14内に設ける。排気通路14には、湾曲状に形成されエンジン11から排出された排ガスが流通する主通路31と、燃料噴射手段26から噴射された燃料Fが流通し主通路31と接続された副通路32とを形成する。そして、燃料被衝突部材30,40,50を、主通路14と副通路32との接続部分近傍で且つ主通路14内の外周壁31a側に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気系構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、窒素酸化物(NOx),一酸化炭素(CO)およびパティキュレートマター(Particulate Matter; 以下、単にPMという)といった、ディーゼルエンジンからの排ガスに含まれる有害物質を除去することで、排ガスを浄化する技術が種々開発されている。
その一例として、以下の特許文献1においては、同文献の図2に示されるように、燃料添加弁(20)から排気管(2)内へ燃料(FE)を噴射する技術が挙げられる。
【特許文献1】特開2006−77691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の技術では、排気ガス(EG)と燃料(FE)との撹拌を十分に行なえないおそれがある。
また、特許文献1の技術のように、燃料添加弁(20)を排気管(2)内に突出させると、燃料添加弁(20)が熱せられた排気ガス(EG)に直接的に晒されることとなる。このため、燃料添加弁(20)の劣化が促進してしまうおそれもある。
【0004】
他方、図6に、本発明のエンジンの排気系構造を創作する過程で創作された構造(試作構造)を示す。なお、この図6に示す構造を、以下、試作構造100という。
この試作構造100においては、略Y字形状に形成された排気接続管101が設けられている。
また、この排気接続管101における一方の入口102には、エンジン(図示略)に備えられたターボチャージャ(図示略)の排気出口(図示略)が接続されている。
【0005】
また、この排気接続管101における他方の入口103には、この排気接続管101内に燃料を噴射するインジェクタ104が設けられている。
そして、この排気接続管101における出口105には、排気通路106が接続されている。
また、この排気通路106内には、酸化触媒107が設けられ、さらに、この酸化触媒107の下方にNOxトラップ触媒108が配設されている。
【0006】
そして、排気接続管106内に、インジェクタ104から燃料を噴射することで、酸化触媒107およびNOxトラップ触媒108へは、比較的多くの燃料成分を含む排ガスを流入させることが出来るようになっている。これにより、酸化触媒107での酸化を促進するとともに、NOxトラップ触媒108で吸蔵されたNOx成分を、これらの酸化触媒107およびNOxトラップ触媒108から放出させる(いわゆる、NOxパージを実行する)ことが出来るようになっているのである。
【0007】
ここで、インジェクタ104から噴射された燃料は、排気接続管101の壁面に付着させないようにすることが好ましい。このため、インジェクタ104は、噴射した燃料の噴霧が拡散する過程で壁面に付着しないような貫徹力に設定されている。
しかしながら、噴射燃料の直進性を確保すると、インジェクタ104から噴射された燃料と排ガスとが排気接続管106内で十分に撹拌されず、酸化触媒107およびNOxトラップ触媒108の一部へ直接的に流入してしまう事態が生じる。
【0008】
換言すれば、インジェクタ104から噴射された燃料が十分に拡散されず、酸化触媒107およびNOxトラップ触媒108の全体をバランスよく通過させることが出来ない。このため、酸化触媒107およびNOxトラップ触媒108の全体として排ガスの浄化を効率よく行なうことが出来ないという事態を招くのである。
さらに、酸化触媒107の一部へ直接的に流入した燃料は、その後、酸化触媒107内で気化することになる。このとき、燃料の気化熱により、酸化触媒107の温度を部分的に低くしてしまうこととなり、排ガスの浄化効率がさらに低下してしまう。
【0009】
他方、酸化触媒107およびNOxトラップ触媒108の一部分に、高濃度の燃料成分を含む排ガス、即ち、極めてリッチ雰囲気の排ガスが流れる領域(図6中符号Fa参照)、或いは、気化しなかった燃料が液体のまま流れる領域(同じく図6中符号Fa参照)では、部分的に激しい化学反応が生じ、酸化触媒107およびNOxトラップ触媒108で温度分布の偏りが生じるのである。
【0010】
この点、図7および図8(A)〜(C)を用いて改めて説明する。
ここで、図7は、酸化触媒107またはNOxトラップ触媒108の水平断面(図6中、符号CS1,CS2およびCS3参照)を上方から見た場合を示すものである。また、この図7中、P1〜P5で示す部分のうち、部分P1および部分P2において、極めてリッチ雰囲気の排ガスが流れた、或いは、気化しなかった燃料が液体のまま流れたものとする。
【0011】
また、図8(A)は、図6に示す酸化触媒107の第1水平断面CS1における温度を示し、図8(B)は、図6に示す酸化触媒107の第2水平断面CS2における温度を示し、図8(C)は、図6に示すNOxトラップ触媒108の第3水平断面CS3における温度を示す。
図8(A)で示すように、酸化触媒107の第1水平断面CS1における部分P1(一点鎖線参照)および部分P2(二点鎖線参照)は、酸化触媒107に付着した燃料の気化熱によって、局所的に冷却されていることが分かる。
【0012】
これに対して、図8(B)および図8(C)で示すように、酸化触媒107の第2水平断面CS2およびNOxトラップ触媒108の第3水平断面CS3においては、部分P1(一点鎖線参照)および部分P2(二点鎖線参照)が、燃料成分が酸化することによって生じる熱(反応熱)によって、局所的に熱せられていることが分かる。
このように、酸化触媒107およびNOxトラップ触媒108における温度分布の偏りは、これらの酸化触媒107およびNOxトラップ触媒108の全体に、リッチ雰囲気の排ガスがバランスよく供給されないことに起因して生じる。このため、酸化触媒107およびNOxトラップ触媒108による排ガスの浄化効率が低下し、排ガス性能を向上させることが困難になるのである。
【0013】
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、排ガス性能のさらなる向上を図り環境保護に寄与することが出来る、エンジンの排気系構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明のエンジンの排気系構造(請求項1)は、エンジンの排気系構造であって、該エンジンの排気ポートに接続された排気通路と、該排気通路内に燃料を噴射する燃料噴射手段と、該燃料噴射手段から噴射された該燃料が衝突し該燃料を拡散させる燃料被衝突部材とを備え、該排気通路は、湾曲状に形成され該エンジンから排出された該排ガスが流通する主通路と、該主通路に接続され該燃料噴射手段から噴射された該燃料が流通する副通路とを有し、該燃料被衝突部材は、該主通路と該副通路との接続部分近傍で且つ該主通路内の外周壁側に設けられていることを特徴としている。
【0015】
また、請求項2記載の本発明のエンジンの排気系構造は、請求項1記載の内容において、該燃料被衝突部材は、該燃料噴射手段による該燃料の噴射方向に対して直交して延在することを特徴としている。
また、請求項3記載の本発明のエンジンの排気系構造は、請求項1または2記載の内容において、該燃料被衝突部材の両端は、
該副通路の内壁にそれぞれ支持されていることを特徴としている。
【0016】
また、請求項4記載の本発明のエンジンの排気系構造は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の内容において、該燃料被衝突部材の投影形状は、該燃料噴射手段によって噴射された該燃料の投影形状と近似する形状となるように成形されていることを特徴としている。
また、請求項5記載の本発明のエンジンの排気系構造は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の内容において、該燃料被衝突部材は、円柱または円筒形状に成型されていることを特徴としている。
【0017】
また、請求項6記載の本発明のエンジンの排気系構造は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の内容において、該燃料被衝突部材は、半円柱または半円筒形状に成型されていることを特徴としている。
また、請求項7記載の本発明のエンジンの排気系構造は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の内容において、該燃料被衝突部材は、平板形状に成型されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明のエンジンの排気系構造によれば、燃料を排気通路内で拡散させることで、燃料と排ガスとの撹拌を促進させることが可能となり、排ガス性能のさらなる向上を図り環境保護に寄与することが出来る。(請求項1)
また、燃料被衝突部材が、燃料の噴射方向に対して直交して延在するように成形されているので、効率よく燃料を拡散させることが出来る。(請求項2)
また、燃料被衝突部材の両端が副通路の内壁にそれぞれ支持されているので、燃料衝突部材が曲がったり、折れたりする事態を防ぐことが出来る。(請求項3)
また、燃料被衝突部材の投影形状は、噴射された燃料の投影形状と近似する外形に成形されているので、燃料を燃料被衝突部材に効率よく衝突させることが可能となる。(請求項4)
また、燃料被衝突部材を円柱または円筒形状に成形することで、排気通路内における燃料被衝突部材の取り付け性を向上しながら、コストの増大を防ぎ、且つ、排気通路内で燃料を適切に拡散させることが出来る。(請求項5)
また、燃料被衝突部材を半円柱または半円筒形状に成形することで、コストの増大を防ぎながら、排ガス流れが阻害されることを避け、且つ、排気通路内で燃料を適切に拡散させることが出来る。(請求項6)
また、燃料被衝突部材を平板形状に成型することで、コストの増大を防ぎながら、排ガス流れが阻害されることを避け、且つ、排気通路内で燃料を適切に拡散させることが出来る。(請求項7)
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面により、本発明の一実施形態に係るエンジンの排気系構造について説明すると、図1はその全体構成を示す模式図、図2は図1におけるII−II矢視断面を模式的に示す断面図である。
また、図3(A)は燃料被衝突部材(インパクタ)を主通路(排ガス通路)「外」に配設した場合の空燃比を模式的に示すグラフであり、図3(B)は燃料被衝突部材を主通路「内」に配設した場合の空燃比を模式的に示すグラフである。
【0020】
図1および図2に示すように、車両10に搭載されたディーゼルエンジン(エンジン)11には、ターボチャージャ12が備えられている。
また、このターボチャージャ12の出口13には、第1排気管(排気管)14の入口15が接続されている。なお、以下、“上流”または“下流”といった表現を用いるが、これらは、ディーゼルディーゼルエンジン11から排出された排ガスの流れを基準とするものである。
【0021】
ターボチャージャ12は、図示しないタービン−コンプレッサを有し、ディーゼルディーゼルエンジン11から排出された排ガスによりこのタービン−コンプレッサを回転させることで、ディーゼルディーゼルエンジン11の吸気過給を行なうことが出来るようになっている。
第1排気管14は、主通路31と副通路32とを有する略Y字型の形状に形成された部品である。
【0022】
これらのうち、主通路31は、その内部をディーゼルディーゼルエンジン11から排出された排ガスが流通する略L字形の通路である。また、この主通路31は、その入口15がターボチャージャ12を介してディーゼルエンジン11の排気ポート(図示略)に接続され、その出口16が第2排気管17の入口18に接続されている。なお、この主通路31のうち湾曲状に形成された部分を湾曲部31cという。
【0023】
副通路32は、主通路31の湾曲部31cに接続された直線状の通路である。また、この副通路32の突出部32bには、インジェクタ(燃料噴射手段)26が設けられている。そして、この副通路32は、その内部をインジェクタ26から噴射された燃料Fが流通するようになっている。
第2排気管17には、酸化触媒(排気触媒)21が設けられるとともに、この酸化触媒21の下流側で且つこの酸化触媒21の下方にはNOxトラップ触媒(排気触媒)22が設けられている。
【0024】
これらのうち、酸化触媒21は、ディーゼルディーゼルエンジン11に近接して設けられ、ディーゼルディーゼルエンジン11から排出された排ガスを比較的高温のまま、この酸化触媒21に流入させることが出来るようになっている。また、この酸化触媒21は、白金(Pt),ロジウム(Rh)といった貴金属を含んでおり、これらの貴金属によって、排ガスに含まれる酸化炭素(CO)と炭化水素(HC)とを酸化し、二酸化炭素(CO2)と水(HO)とに化学変化させることで、排ガスを浄化することが出来るようになっている。
【0025】
なお、インジェクタ26による燃料の噴射方向C26は、酸化触媒21の中心方向に概ね一致するように設定されている。
NOxトラップ触媒22は、NOx吸蔵材としてアルカリ金属(例えば、バリウム(Ba))を含んでおり、これにより、排ガス中のNOxを吸蔵することが出来るようになっている。また、このNOx吸蔵材は、排ガスがリーン雰囲気にある場合に排ガス中のNOx成分を吸蔵し、一方、排ガスがリッチ雰囲気にある場合に吸蔵したNOxを排ガス中に放出することが出来るようになっている。
【0026】
また、このNOxトラップ触媒22のNOx吸蔵材には、燃料に含まれる硫黄成分と酸素との反応生成物である硫黄酸化物(SOx)がNOxの代わりに吸蔵されてしまう場合もある。このNOxトラップ触媒22に吸蔵されてしまったSOxを、NOxトラップ触媒22から放出するためには、NOxの場合と同様に、排ガスをリッチ雰囲気にすればよい。
【0027】
なお、NOxトラップ触媒22に吸蔵されたNOxをNOxトラップ触媒22から放出させる制御をNOxパージといい、NOxトラップ触媒22に吸蔵されたSOxをNOxトラップ触媒22から放出させる制御をSパージという。
そして、主通路31内で、且つ、主通路31と副通路32とが接続する部分(接続部分)の近傍で、且つ、湾曲部31cの外周壁31aに近接した位置には、インパクタ(燃料被衝突部材)30が設けられている。
【0028】
このインパクタ30は、インジェクタ26から噴射された燃料Fが衝突し、この燃料Fを主通路31内で拡散させる部品である。
また、このインパクタ30は、インジェクタ26による燃料Fの噴射方向C26に対して直交した方向(即ち、図1の紙面奥行方向、図2の上下方向)に延在する円柱形状に成型されている。また、図2に示すように、このインパクタ30の両端30a,30bは、それぞれ、副通路32の内壁32aに固定されている。
【0029】
また、図2に示すように、インジェクタ26による燃料Fの噴射方向C26からこのインパクタ30を見た場合、このインパクタ30の投影形状(噴射方向C26と直交する面への投影形状)は長方形である。さらに、燃料Fの噴射方向C26からインジェクタ26を見た場合、このインジェクタ26から噴射された燃料Fの投影形状(図2中符号Fp(F)参照)も長方形である。
つまり、インパクタ30はその外形は、インジェクタ26から噴射された燃料Fの投影形状Fpと近似するように成形されている。
【0030】
本発明の一実施形態に係るエンジンの排気系構造は上述のように構成されているので、以下のような作用および効果を奏する。
図1に示すように、主通路31と副通路32との接続部分近傍で、且つ、主通路31の内部で、且つ、湾曲部31cの外周壁31aに近接した位置に、インパクタ30が設けられている。
【0031】
これにより、図1中矢印Aで示すとともに、図2中符号Fd(F)で示すように、インジェクタ26から噴射された燃料Fをこのインパクタ30に衝突させることで、主通路31の内部で燃料Fを拡散させ、排ガスとの撹拌を促進することが可能となる。
また、主通路31内を流れる排ガスの流速は、内周壁31b近傍よりも外周壁31a近傍の方が速いので、インパクタ30により拡散された燃料Fと排ガスとを素早く混じり合わせることが可能となる。
【0032】
その後、燃料Fと良好に撹拌された排ガスは、酸化触媒21およびNOxトラップ触媒22の全体に流れ込む。
ここで、インパクタ30を、主通路31の「外部」に設けた場合と、主通路31の「内部」に設けた場合とで、燃料Fと排ガスとの撹拌効果にどのような差が出るかを調べた実験の結果を、図3(A)および図3(B)に示すグラフを用いて説明する。
【0033】
図3(A)は、インパクタ30を、主通路31の内部ではなく、副通路32の内部に設けた場合において、NOxトラップ触媒22の上流端近傍における空燃比(細実線)と、NOxトラップ触媒22の下流端近傍における空燃比(太実線)とを示すグラフである。
他方、図3(B)は、図1を用いて上述した本実施形態における本願発明のように、インパクタ30を主通路31の内部に設けた場合において、NOxトラップ触媒22の上流端近傍における空燃比(細実線)と、NOxトラップ触媒22の下流端近傍における空燃比(太実線)とを示すグラフである。
【0034】
なお、これらの実験においては、図3(A)および図3(B)中符号Tfで示す期間に亘ってインジェクタ26から燃料Fを噴射した。
インパクタ30を、主通路31の内部ではなく、副通路32の内部に設けた場合は、図3(A)に示すように、インジェクタ26により燃料Fの噴射が開始された後、2.5秒程度経過してから、NOxトラップ触媒22の上流側(細実線)および下流側(太実線)における排ガス雰囲気がともにリッチ化することがわかる。
【0035】
これに対して、インパクタ30を、主通路31の内部に設けた場合は、図3(B)に示すように、インジェクタ26により燃料Fの噴射が開始された後、すぐに、NOxトラップ触媒22の上流側(細実線)および下流側(太実線)における排ガス雰囲気がともにリッチ化することがわかる。
つまり、インパクタ30を、図1を用いて上述した本実施形態における本願発明のように、主通路31内で、且つ、主通路31と副通路32とが接続する部分(接続部分)の近傍で、且つ、湾曲部31cの外周壁31aに近接した位置に設けることで、主通路31の「外部」に設けるよりも、インジェクタ26から噴射された燃料Fと、ディーゼルエンジン11から排出された排ガスとが、良好に撹拌され且つ燃料Fの気化が促進されていることを、図3(A)および図3(B)は示しているのである。
【0036】
したがって、上述した本実施形態における本願発明によれば、インジェクタ26から噴射された燃料Fと排ガスとの撹拌を促進させることが可能となり、排ガス性能のさらなる向上を図り環境保護に寄与することが出来るのである。
また、燃料Fと排ガスとの撹拌が促進されることで、燃料Fの噴射量を抑制することも出来る。つまり、燃料Fと排ガスとの撹拌が十分ではない状態で、排ガス雰囲気をリッチ化するには、燃料Fの噴射量を増大せざるを得ない。しかし、このような措置では、燃費の悪化を招いてしまい、さらには、酸化触媒21やNOxトラップ触媒22の一部分にのみリッチ化された排ガスを流入させることになってしまう。
【0037】
これに対して、上述した本実施形態における本願発明によれば、燃料Fと排ガスと撹拌を促進することで、燃料Fの噴射量を必要最小限に抑制しながら、空燃比のバランスを保ちつつ、酸化触媒21やNOxトラップ触媒22の全体にリッチ化された排ガスを流入させることが出来るのである。したがって、NOxパージやSパージを実行した際に、NOxトラップ触媒22から効率よくNOxやSOxをパージさせることが可能となる。
【0038】
また、インパクタ30が、インジェクタ26による燃料Fの噴射方向C26に対して直交して延在するように成形されているので、効率よく燃料Fをインパクタ30に衝突させることが可能となる。したがって、燃料Fを排気通路30内で効率よく拡散させることが出来る。
また、図2に示すように、インパクタ30の両端30a,30bが、副通路32の内壁32aにそれぞれ支持されているので、インパクタ30が曲がったり、折れたりする事態を防ぐことが出来る。
【0039】
また、インパクタ30の投影形状は、インジェクタ26噴射された燃料Fの投影形状Fpと近似するように成形されているので、効率よく燃料Fをインパクタ30に衝突させることが可能となる。したがって、燃料Fを排気通路30内で効率よく拡散させることが出来る。
また、インパクタ30を円柱形状に成形することで、主通路31内におけるインパクタ30の取り付け性を向上しながら、インパクタ30の成型コストを抑制しながら、主通路31内で燃料Fを適切に拡散させることが出来る。
【0040】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが出来る。
上述の実施形態においては、第1排気管14がターボチャージャ12を介してディーゼルエンジン11の排気ポートに接続されている場合を例にとって説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1排気管14を、ターボチャージャ12を有さないエンジンの排気ポートに直接接続しても良い。
【0041】
また、上述の実施形態においては、ディーゼルエンジン11を例にとって説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ディーゼルエンジン11に換えて、ガソリンエンジンを用いても良い。
また、上述の実施形態においては、酸化触媒21およびNOxトラップ触媒22が排気触媒として用いられている場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、これらの酸化触媒21およびNOxトラップ触媒22だけでなく、SCR(Selective Catalytic Reduction)触媒やHCトラップ触媒などを様々なバリエーションで組み合わせて用いるようにしても良い。
【0042】
また、上述の実施形態においては、インパクタ30が円柱形状に成形されている場合を例にとって説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明の一実施形態の第1変形例として図4に示すように半円柱形状のインパクタ40を用いるようにしてもよいし、その第2変形例として図5に示すように平板形状のインパクタ50を用いるようにしても良い。
【0043】
或いは、円柱形状のインパクタ30に換えて中空断面の円筒形状のインパクタ(図示略)を用いるようにしても良いし、半円柱形状のインパクタ40に換えて中空断面の半円筒形状のインパクタ(図示略)を用いるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態に係るエンジンの排気系構造の全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るエンジンの排気系構造の要部構成を示す模式的な断面図であって、図1のII−II矢視断面を模式的に示すものである。
【図3】(A)は燃料被衝突部材(インパクタ)を主通路(排ガス通路)の「外部」に配設した場合の排ガス空燃比を模式的に示すグラフであり、(B)は燃料被衝突部材(インパクタ)を主通路(排ガス通路)の「内部」に配設した場合の排ガス空燃比を模式的に示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態の第1変形例に係るエンジンの排気系構造の全体構成を示す模式図である。
【図5】本発明の一実施形態の第2変形例に係るエンジンの排気系構造の全体構成を示す模式図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るエンジンの排気系構造を創作する過程で創作された構造(試作構造)を示す模式図である。
【図7】(A)は図6中符号CS1で示す箇所に対応する模式的な水平断面図であり、(B)は図6中符号CS2で示す箇所に対応する模式的な水平断面図であり、(C)は図6中符号CS3で示す箇所に対応する模式的な水平断面図である。
【図8】(A)は図6中符号CS1で示す箇所における温度を模式的に示すグラフであり、(B)は図6中符号CS2で示す箇所における温度を模式的に示すグラフであり、(C)は図6中符号CS3で示す箇所における温度を模式的に示すグラフである。
【符号の説明】
【0045】
11 ディーゼルエンジン(エンジン)
14 第1排気管(排気通路)
26 インジェクタ(燃料噴射手段)
30,40,50 インパクタ(燃料被衝突部材)
30a インパクタの一端
30b インパクタの他端
31 主通路
31a 主通路の外周壁
32 副通路
32a 副通路の内壁
26 燃料の噴射方向
Fp 噴射燃料の投影形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気系構造であって、
該エンジンの排気ポートに接続された排気通路と、
該排気通路内に燃料を噴射する燃料噴射手段と、
該燃料噴射手段から噴射された該燃料が衝突し該燃料を拡散させる燃料被衝突部材とを備え、
該排気通路は、
湾曲状に形成され該エンジンから排出された該排ガスが流通する主通路と、
該主通路に接続され該燃料噴射手段から噴射された該燃料が流通する副通路とを有し、
該燃料被衝突部材は、
該主通路と該副通路との接続部分近傍で且つ該主通路内の外周壁側に設けられている
ことを特徴とする、エンジンの排気系構造。
【請求項2】
該燃料被衝突部材は、
該燃料噴射手段による該燃料の噴射方向に対して直交して延在する
ことを特徴とする、請求項1記載のエンジンの排気系構造。
【請求項3】
該燃料被衝突部材の両端は、
該副通路の内壁にそれぞれ支持されている
ことを特徴とする、請求項1または2記載のエンジンの排気系構造。
【請求項4】
該燃料被衝突部材の投影形状は、
該燃料噴射手段によって噴射された該燃料の投影形状と近似する形状となるように成形されている
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエンジンの排気系構造。
【請求項5】
該燃料被衝突部材は、
円柱または円筒形状に成型されている
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンジンの排気系構造。
【請求項6】
該燃料被衝突部材は、
半円柱または半円筒形状に成型されている
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンジンの排気系構造。
【請求項7】
該燃料被衝突部材は、
平板形状に成型されている
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンジンの排気系構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−116865(P2010−116865A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291292(P2008−291292)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】