エンジンマウントの変位量計測方法
【課題】高速な振動現象の下にあっても、エンジンマウントのマウント軸として配設されるボルトの中心の3軸並進量、及び、該ボルトの2軸回転量を高精度に算出することができる、エンジンマウントの変位量計測方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るエンジンマウントの変位量計測方法は、球体変位計側工程の前に、照射方向と直交する平面上における初期座標が既知である球体13を、照射方向と直交する方向へ、初期座標の位置から既知の移動量dx(dy)だけ移動させ、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cによる計測点におけるそれぞれの照射方向変位量δS1x〜δS3x(δS1y〜δS3y)を計測し、照射方向変位量δS1x〜δS3x(δS1y〜δS3y)の計測結果から、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cの位置を算出する、位置算出工程を備える。
【解決手段】本発明に係るエンジンマウントの変位量計測方法は、球体変位計側工程の前に、照射方向と直交する平面上における初期座標が既知である球体13を、照射方向と直交する方向へ、初期座標の位置から既知の移動量dx(dy)だけ移動させ、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cによる計測点におけるそれぞれの照射方向変位量δS1x〜δS3x(δS1y〜δS3y)を計測し、照射方向変位量δS1x〜δS3x(δS1y〜δS3y)の計測結果から、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cの位置を算出する、位置算出工程を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンマウントの変位量計測方法に関し、より詳しくは、エンジンマウントの変位量の計測精度を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの重量を支えるとともに、エンジンからボデーへの振動の伝達を防ぎ、また路面からの入力やエンジン自体が発生するトルク反力によってエンジン本体の姿勢が変化しないようにするため、エンジンをボデーに固定する際にエンジンマウントが用いられている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
前記エンジンマウントは車両のNVH(騒音・振動・ハーシュネス)に大きな影響を与えるため、エンジンマウントがボデーに与えるボデー伝達力を評価することが重要となる。そして、前記ボデー伝達力は、エンジンマウントの動バネ係数と、エンジンマウントの変形量(エンジンマウントの中心の変位量)を計測することによって求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−17877号公報
【特許文献2】特開平6−122325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来技術における、エンジンマウントの変位量を計測する方法について、図16及び図17を用いて説明する。
図16は従来技術に係る第一のエンジンマウントの変位量計測方法について示した図である。図16に示す如く、本方法においては、エンジンマウント本体である防振弾性体に配設される、エンジンマウントのマウント軸であるボルトの上方及び側方に、前記ボルトの軸心に直交する方向(図16中のX軸方向及びY軸方向)にポテンショメータ型の直線変位計を2個配設し、前記直線変位計から延出させたプローブを前記ボルトに当接させる。そして、前記直線変位計で前記ボルトの変位量を計測することにより、エンジンマウントの変位量を計測するのである。
【0006】
しかし、前記方法によれば、エンジンマウントにおけるマウント軸の2次元変位(図16中のX軸方向及びY軸方向の変位)しか計測することができず、また前記マウント軸のねじれ(こじり変形)を計測することもできない。さらに計測の応答性も低いため、高速な振動現象を捉えることはできなかった。
【0007】
図17は従来技術に係る第二のエンジンマウントの変位量計測方法について示した図である。図17(a)に示す如く、本方法においては、エンジンマウントに加速度ピックアップを配設し、該加速度ピックアップでエンジンマウントの加速度を計測し、該加速度を二階積分することによってエンジンマウントの変位量を求めるのである。なお、図17(a)は、前記エンジンマウントがエンジンから加わる力によって軸心が傾いて変形した状態を示している。
【0008】
しかし、前記方法によれば加速度から変位を求めるため、図17(b)に示す如く、数値積分を二階行う際の積分誤差が時間の経過とともに増大し、高精度な変位を求めることができなかった。
【0009】
そこで本発明では、上記現状に鑑み、高速な振動現象の下にあっても、エンジンマウントのマウント軸として配設されるボルトの中心の3軸並進量、及び、該ボルトの2軸回転量を高精度に算出することができる、エンジンマウントの変位量計測方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1においては、エンジンマウントのマウント軸の両端にそれぞれ1個ずつ固定された、半径が既知である2個の球体のそれぞれについて、第1から第3の変位計測手段が互いに平行となる照射方向へ計測光を照射し、前記計測光が前記球体の表面と交差する点である計測点の照射方向位置を3箇所ずつ、それぞれの変位計測手段が計測することにより、それぞれの前記球体の変位を計測する、球体変位計測工程を備えるエンジンマウントの変位量計測方法において、前記球体変位計測工程の前に、前記照射方向と直交する平面上における初期座標が既知である前記球体の少なくとも1個を、前記照射方向と直交する方向へ、前記初期座標の位置から既知の移動量だけ移動させ、前記第1から第3の変位計測手段による計測点におけるそれぞれの照射方向変位量を計測し、前記照射方向変位量の計測結果から、前記第1から第3の変位計測手段の位置を算出する、位置算出工程を備えるものである。
【0012】
請求項2においては、前記位置算出工程は、前記照射方向と直交する平面上の初期座標が既知である前記球体の少なくとも1個を、前記照射方向と直交するX軸方向へ、前記初期座標の位置から既知の移動量dxだけ移動させた場合の、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値を算出する、第一理論値算出工程と、前記第一理論値算出工程で照射方向変位量を計測した理論値を算出した球体を、X軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dxだけ移動させて、実際に配置された第1から第3の変位計測手段で前記計測点におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値を計測する、第一実測工程と、前記第一理論値算出工程で照射方向変位量を計測した理論値を算出した球体を、前記照射方向及びX軸方向と直交するY軸方向へ、前記初期座標の位置から既知の移動量dyだけ移動させた場合の、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値を算出する、第二理論値算出工程と、前記第一理論値算出工程で照射方向変位量を計測した理論値を算出した球体を、Y軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dyだけ移動させて、実際に配置された前記第1から第3の変位計測手段で前記計測点におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値を計測する、第二実測工程と、前記第一理論値算出工程で算出した計測点におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値と、前記第一実測工程で計測した計測点におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値と、前記第二理論値算出工程で算出した計測点におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値と、前記第二実測工程で計測した計測点におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値と、から、前記第1から第3の変位計測手段が配置される理論上の配置座標の誤差を表す誤差関数Fを算出する、誤差関数算出工程と、前記誤差関数算出工程で算出した誤差関数Fが最小となる、第1から第3の変位計測手段が配置される理論上の配置座標を、前記第1から第3の変位計測手段が配置される現実の配置座標として算出する、配置座標算出工程と、からなるものである。
【0013】
請求項3においては、前記第一理論値算出工程における理論値は、前記球体が前記初期座標の位置にあるときの、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点の座標、及び、前記球体の半径並びに中心座標、から算出される計測点の照射方向位置と、前記球体をX軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dxだけ移動させた後の、該移動量dx、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点の座標、及び、前記球体の半径並びに中心座標、から算出される計測点の照射方向位置と、の差より算出し、前記第一実測工程における実測値は、前記球体が前記初期座標の位置にあるときの、実際に配置された第1から第3の変位計測手段で計測した計測点の照射方向位置と、前記球体をX軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dxだけ移動させた後の、実際に配置された第1から第3の変位計測手段で計測した計測点の照射方向位置と、の差より算出し、前記第二理論値算出工程における理論値は、前記球体が前記初期座標の位置にあるときの、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点の座標、及び、前記球体の半径並びに中心座標、から算出される計測点の照射方向位置と、前記球体をY軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dyだけ移動させた後の、該移動量dy、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点の座標、及び、前記球体の半径並びに中心座標、から算出される計測点の照射方向位置と、の差より算出し、前記第二実測工程における実測値は、前記球体が前記初期座標の位置にあるときの、実際に配置された第1から第3の変位計測手段で計測した計測点の照射方向位置と、前記球体をY軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dyだけ移動させた後の、実際に配置された第1から第3の変位計測手段で計測した計測点の照射方向位置と、の差より算出するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
本発明により、高速な振動現象の下にあっても、エンジンマウントのマウント軸として配設されるボルトの中心の3軸並進量、及び、該ボルトの2軸回転量を高精度に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】エンジンマウントの変位量計測方法における位置算出工程の概要について示した図。
【図2】第1から第3の変位計測手段が配置される理論上の配置座標を示した平面図。
【図3】球体をX軸方向へ移動量dxだけ移動させた状態を示した図。
【図4】球体をY軸方向へ移動量dyだけ移動させた状態を示した図。
【図5】誤差関数Fとパラメータδ1xとの関係を示した線図。
【図6】第1から第3の変位計測手段が配置される現実の配置座標を示した図。
【図7】(a)は本発明の計測対象であるエンジンマウントを示した図、(b)はエンジンマウントのマウント軸であるボルトを示した図。
【図8】エンジンマウントの変位量計測装置の概要を示した図。
【図9】エンジンマウントの変位量計測方法のフローチャートを示した図。
【図10】エンジンマウントの変位量計測方法の座標算出工程について示した図。
【図11】エンジンマウントの変位量計測方法における座標算出工程について示した図。
【図12】エンジンマウントのボルトの変位状態を示した図。
【図13】エンジンマウントの変位量計測方法のマウント軸変位算出工程について示した図。
【図14】変位計測手段に配置誤差がある場合について示した図。
【図15】変位計測手段に配置誤差がある場合における座標算出工程について示した図。
【図16】従来技術に係る第一のエンジンマウントの変位量計測方法について示した図。
【図17】従来技術に係る第二のエンジンマウントの変位量計測方法について示した図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではなく、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
【0018】
[エンジンマウントの変位量計測装置30]
まず始めに、本発明を実施するエンジンマウントの変位量計測装置30について、図7及び図8を用いて説明をする。
図7(a)に示す如く、エンジンマウントの変位量計測装置30の計測対象であるエンジンマウント10は、主に、ボデーに配設されるブラケット21と、該ブラケット21に設置される防振弾性体11と、エンジンマウント10の固定用のマウント軸であって、前記防振弾性体11の軸心部分に配設されるボルト12と、で構成されている。そして、前記ボルト12と、図示しないエンジンに配設されたブラケットとが連結されることにより、エンジンがボデーに支持されるのである。このような構成により、エンジンマウント10を介してボデーがエンジンの重量を支えるとともに、エンジンからボデーへの振動の伝達を防ぎ、また路面からの入力やエンジン自体が発生するトルク反力によってエンジン本体の姿勢が変化しないようにしている。なお、図7(a)は、前記エンジンマウント10がエンジンから加わる力によって軸心が傾いて変形した状態を示している。
【0019】
そして、本実施形態においては、図7(a)に示す如く、前記ボルト12の両端のそれぞれに、半径r0が既知である球体13・13が1個ずつ、2個固定されている。詳細には、図7(b)に示す如く、ボルト頭部側、ナット側のそれぞれに、ボルト12の軸心の延長線上に前記球体13・13の中心I・Jが位置するように、軸心方向視においてボルト頭部及びナットの径と略同径の球体13・13が溶接等により固定されるのである。
なお、本実施形態においては、前記球体13については完全な球体を用いているが、該球体13は半径r0が既知であればよく、半球等で代替することも可能である。
【0020】
図8以下においては、説明の便宜上、前記ボルト12は軸心を上下に向けた状態で図示するものとする。図8に示す如く、エンジンマウントの変位量計測装置30は、球体13・13の変位計測手段である第1レーザー変位計31a・第2レーザー変位計31b・・・第6レーザー変位計31fと、座標算出手段及びマウント軸変位算出手段である制御装置32と、を備える。
【0021】
具体的には、前記第1レーザー変位計31a〜第6レーザー変位計31fは3個が1組となって、それぞれの球体13・13について3箇所の球体表面の変位を計測するのである。即ち、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cは互いに平行となる照射方向へ計測光を照射し、前記計測光が前記球体13の表面と交差する点である計測点A〜Cの位置を、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cが計測するのである。
同様に、第4レーザー変位計31d〜第6レーザー変位計31fについても互いに平行となる照射方向へ計測光を照射し、前記計測光が球体13の表面と交差する点である計測点D〜Fの位置を、第4レーザー変位計31d〜第6レーザー変位計31fが計測するのである。これにより、第1レーザー変位計31a〜第6レーザー変位計31fがそれぞれの前記球体13・13の変位を計測するように構成されている。
【0022】
一方、前記制御装置32は、前記第1レーザー変位計31a〜第6レーザー変位計31fのそれぞれと電気的に接続されており、前記第1レーザー変位計31a〜第6レーザー変位計31fで計測された前記球体13・13の変位結果を入力可能に構成されている。
また、前記制御装置32は、入力機能、表示機能、記憶機能、通信機能、及び、各種の演算機能等を備えている。そして、前記演算機能は後述するように、前記変位結果に基づいて前記球体13・13の中心I・Jのそれぞれの3次元座標Q1・Q2をそれぞれ算出する座標算出手段、及び、該座標算出手段で算出された2個の3次元座標Q1・Q2に基づいて、前記ボルト12の中心Kの3軸並進量(3次元座標Oの変位量)、及び、前記ボルト12の2軸回転量(θ、φ)を算出するマウント軸変位算出手段を備えるのである。
【0023】
[エンジンマウントの変位量計測方法]
次に、本発明に係るエンジンマウントの変位量計測方法について、図9から図13を用いて説明する。なお、本発明に係るエンジンマウントの変位量計測方法の概要については、本願出願人により既に特許出願がなされている(特願2009−10434号)。
【0024】
図9に示す如く、本実施形態に係るエンジンマウントの変位量計測方法は、エンジンマウント10のマウント軸として配設されるボルト12の両端に、それぞれ1個ずつ固定した2個の球体13・13の変位を、それぞれの球体13・13について3箇所ずつ第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31c、第4レーザー変位計31d〜第6レーザー変位計31fで計測する、球体変位計測工程(図9中のステップS1)と、前記球体変位計測工程で計測した前記球体13・13の変位結果に基づいて、前記球体13・13の中心I・Jの3次元座標Q1・Q2をそれぞれ算出する、座標算出工程(図9中のステップS2〜ステップS7)と、座標算出工程で算出した2個の3次元座標Q1・Q2に基づいて、前記ボルト12の中心Kの3軸並進量(3次元座標Oの変位量)、及び、前記ボルト12の2軸回転量(θ、φ)を算出する、マウント軸変位算出工程(図9中のステップS8)と、を備える。
【0025】
それぞれの工程について、以下に具体的に説明する。
まず、球体変位計側工程では、前記の如く、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cが一方の球体13の表面における計測点A〜Cの変位を、第4レーザー変位計31d〜第6レーザー変位計31fが他方の球体13の表面における計測点D〜Fの変位を計測する。そして、それぞれのレーザー変位計31a〜31fで計測された計測点A〜Fの変位量を制御装置32に出力し、該制御装置32はそれぞれのレーザー変位計31a〜31fの出力を取得するのである(ステップS1)。
【0026】
次に、座標算出工程では、前記演算機能が、それぞれのレーザー変位計31a〜31fで観測された、計測点A〜C、D〜Fの変位を、X軸、Y軸、Z軸からなるセンサ座標系から見た3次元座標X1〜X3、X4〜X6へと座標変換する(ステップS2)。
具体的には、図10に示す如く、計測点A〜Cの変位量に基づいて座標X1(xa、ya、za)〜X3(xc、yc、zc)を算出するのである。同様に他方の計測点D〜Fについても、同様に3次元座標X4(xd、yd、zd)〜X6(xf、yf、zf)を算出するのである。
【0027】
さらに、座標算出工程では、前記演算機能が、前記座標X1〜X3、X4〜X6に基づいて、図11に示した3個ずつの計測点A〜C及び計測点D〜Fのそれぞれを通る2個の円の中心L・Mの3次元座標P1・P2を算出する(ステップS3)。
詳細には、3個の計測点A〜Cの座標X1〜X3が判明すれば、幾何学的に計測点A〜Cの何れにも等距離に位置する点の座標を求めることで、計測点A〜Cを通る円の中心Lの座標P1(xp1、yp1、zp1)を求めることが可能となる。これにより、前記演算機能が前記座標X1〜X3に基づいて計測点A〜Cを通る円の中心Lの座標P1を算出するのである。また、図示しない他方の球体13についても、同様に計測点D〜Fを通る円の中心Mの3次元座標P2(xp2、yp2、zp2)を算出するのである。
【0028】
さらに、前記演算機能が幾何学的に、前記中心L・Mと計測点A〜C・D〜Fの何れかとの距離を算出することにより、前記2個の円の半径r1・r2を算出する(ステップS4)。
【0029】
さらに、前記演算機能が幾何学的に、前記球体13・13の中心I・Jと、前記3個の計測点A〜C・D〜Fで決まる平面との距離k1・k2を算出する(ステップS5)。
詳細には、前記球体13・13の半径r0が既知であるため、図11に示す如く、該半径r0と、前記円の半径r1・r2と、前記平面との距離k1・k2との三辺で形成される直角三角形において三平方の定理を利用することにより、前記平面との距離k1・k2を算出するのである。
【0030】
さらに、前記演算機能が幾何学的に、前記3個の計測点A〜C・D〜Fで決まる平面の垂直方向ベクトルnを算出する(ステップS6)。
【0031】
さらに、座標算出工程では、前記演算機能が、前記2個の円の中心座標P1・P2、平面との距離k1・k2、及び前記垂直方向ベクトルnに基づいて前記球体13・13の中心I・Jの3次元座標Q1・Q2を算出する(ステップS7)。
詳細には、図11に示す如く、前記2個の円の中心L・Mを起点として、前記垂直方向ベクトルnの方向に距離k1・k2だけ移動した点が前記球体13・13の中心I・Jとなるため、前記演算機能が球体13・13の中心Iの座標Q1・Q2を算出するのである。
【0032】
次に、マウント軸変位算出工程では、前記演算機能が、前記座標Q1・Q2に基づいて、前記ボルト12の中心Kの3軸並進量(3次元座標Oの変位量)、及び、前記ボルト12の2軸回転量(θ、φ)を算出する(ステップS8)。
具体的には、図12に示す如く、前記中心I・Jの中点がボルト12の中心Kとなるため、前記演算機能が、前記座標Q1・Q2に基づいてボルト12の中心Kの3次元座標O(xo、yo、zo)を算出するのである。そして、前記座標OのX軸方向、Y軸方向、Z軸方向それぞれの変位量を算出することにより、前記ボルト12の中心Kの3軸並進量を算出するのである。
さらに、図13に示す如く、前記中心I・Jの座標Q1・Q2、及び、ボルト12の中心Kの座標Oに基づいて、Z軸を中心としたX軸からのボルト12の回転角θ、及び、Z軸からの傾きφを算出することにより、前記ボルト12の2軸回転量(θ、φ)を算出するのである。
【0033】
本実施形態によれば前記のように構成することにより、高速な振動現象の下にあっても、エンジンマウント10のマウント軸として配設されるボルト12の中心Kの3軸並進量(3次元座標Oの変位量)、及び、該ボルト12の2軸回転量(θ、φ)を高精度に算出することができる。
具体的には、第1レーザー変位計31a〜第6レーザー変位計31fで計測された前記球体13・13の変位結果に基づいてボルト12の中心Kの3軸並進量、及び、該ボルト12の2軸回転量を算出する構成としているため、マウント軸のねじれ(こじり変形)を計測することができ、さらに計測の応答性を高めることが可能となるのである。また、本発明に係るエンジンマウントの変位量計測方法は数値積分を用いないため積分誤差が発生せず、該積分誤差による精度の低下を防ぐことができるのである。
【0034】
上記の如く構成したエンジンマウントの変位量計測方法において、前記第1レーザー変位計31a〜第6レーザー変位計31fの配置には高い精度が求められる。以下に、第1レーザー変位計31aに配置誤差があった場合について、図14及び図15を用いて具体的に説明する。
【0035】
図14に示す如く、本来の第1レーザー変位計31aの配置位置よりもずれた位置に、第1レーザー変位計31a´が配置されたとする。この場合、前記球体変位計側工程において、第1レーザー変位計31a´は球体13の表面において、本来の計測点Aよりもずれた計測点A´の変位を計測することになる。
【0036】
そして、図15に示す如く、本来の計測点A、B、及びCに基づいて求めるべき球体13の中心Iの座標Q1が、ずれた計測点A´、B、及びCに基づいて算定されることにより、ずれた中心I´の座標Q1´として求めてしまう。
【0037】
詳細には、ずれた計測点A´の座標X1´を、本来の第1レーザー変位計31aで計測した計測点a´の座標x1´として演算機能が認識し、前記座標x1´、X2、及びX3に基づいて、計測点a´、B及びCを通る円の中心L´の座標P1´を算出する。そして、円の中心L´を起点として、垂直方向ベクトルnの方向に距離k1だけ移動した点を球体13の中心I´として座標Q1´を算出するため、本来の球体13における中心Iの座標Q1とは異なった座標を算出してしまうのである。
【0038】
上記の如く、第1レーザー変位計31a〜第6レーザー変位計31fの配置に誤差があった場合は、球体13・13の中心I・Jの座標Q1・Q2にも誤差が生じるため、ボルト12の2軸回転量(θ、φ)の算出にも影響が出て、エンジンマウント10の変位量を正確に求めることができなくなるのである。
【0039】
[変位計測手段の位置算出工程]
本実施形態におけるエンジンマウントの変位量計測方法では、上記のように第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cの配置に誤差が生じることを防ぐために、前記球体変位計測工程(ステップS1)の前に、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cの位置算出工程を備える構成としている。なお、以下の位置算出工程については、第4レーザー変位計31d〜第6レーザー変位計31fについても同様である。
【0040】
具体的には位置算出工程では、前記照射方向と直交する平面上における初期座標が既知である前記球体13を、前記照射方向と直交する方向へ、前記初期座標の位置から既知の移動量dx(dy)だけ移動させ、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cによる計測点におけるそれぞれの照射方向変位量δS1x〜δS3x(δS1y〜δS3y)を計測し、前記照射方向変位量δS1x〜δS3x(δS1y〜δS3y)の計測結果から、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cの位置を算出するのである。
【0041】
より詳細には、図1に示す如く、図1中の矢印に示すX軸方向及びY軸方向に平行移動可能に構成されたリニアスライドステージ50を配置し、該リニアスライドステージ50上に、ボルト12を介して球体13を固定するのである。なお、球体13はボルト12を介さずに、直接リニアスライドステージ50に固定する構成でもよい。
【0042】
そして、前記第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cによって、図1中の矢印に示すZ軸方向から球体13に互いに平行となる照射方向であるZ軸方向へ計測光を照射可能に構成するのである。この際、前記第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cのそれぞれの計測点を図2に示す如くS1〜S3とすると同時にそれぞれの座標を(x1,y1)〜(x3,y3)とし、これらを理論上の配置座標とするのである。なお、球体13の中心の初期座標をI(xG,yG)とし、この座標は予め球体13を配設する際に既知であるものとする。
【0043】
そして、図1、図3、及び図4に示す如く、前記リニアスライドステージ50をX軸方向(Y軸方向)に既知の移動量dx(dy)だけ移動させ、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cによる計測点S1〜S3におけるそれぞれの照射方向変位量δS1x〜δS3x(δS1y〜δS3y)を計測するのである。
【0044】
以下に、位置算出工程の手順について具体的に説明する。
前記位置算出工程は、第一理論値算出工程、第一実測工程、第二理論値算出工程、第二実測工程、誤差関数算出工程、及び、配置座標算出工程からなる。
【0045】
第一理論値算出工程では、前記照射方向(Z軸方向)と直交するXY平面上の初期座標I(xG,yG)が既知である前記球体13を、前記照射方向と直交するX軸方向へ、前記初期座標Iの位置から既知の移動量dxだけ移動させた場合の、理論上の配置座標(x1,y1)〜(x3,y3)のそれぞれに配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cによる計測点S1〜S3におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値dS1x〜dS3xを算出するのである。
【0046】
前記第一理論値算出工程における理論値dS1x〜dS3xは、それぞれ以下の数式1〜数式3によって算出する。
【0047】
【数1】
【0048】
【数2】
【0049】
【数3】
【0050】
即ち、第一理論値算出工程では図3に示す如く、前記球体13が前記初期座標Iの位置にあるときの、理論上の配置座標(x1,y1)〜(x3,y3)のそれぞれに配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cによる計測点S1〜S3の座標(x1,y1)〜(x3,y3)、及び、前記球体13の半径r並びに中心座標である初期座標I(xG,yG)から、計測点S1〜S3の照射方向位置を算出する。また、前記球体13をX軸方向へ、前記初期座標I(xG,yG)の位置から移動座標I´に前記移動量dxだけ移動させた後の、該移動量dx、理論上の配置座標(x1,y1)〜(x3,y3)のそれぞれに配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cによる計測点S1´〜S3´の座標(x1,y1)〜(x3,y3)、及び、前記球体13の半径r並びに中心座標である初期座標I(xG,yG)から、計測点S1´〜S3´の照射方向位置を算出する。そして、計測点S1〜S3の照射方向位置と、計測点S1´〜S3´の照射方向位置と、の差より、前記理論値dS1x〜dS3xを算出するのである。
【0051】
一方、第一実測工程では、前記球体13を、X軸方向へ、前記初期座標Iの位置から前記移動量dxだけ移動させて、実際に配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cで前記計測点S1〜S3におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値δS1x〜δS3xを計測するのである。
【0052】
前記第一実測工程における実測値δS1x〜δS3xは、前記球体13が前記初期座標Iの位置にあるときの、実際に配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cで計測した計測点S1〜S3の照射方向位置を計測する。また、前記球体13をX軸方向へ、前記初期座標Iの位置から前記移動量dxだけ移動させた後の、実際に配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cで計測した計測点S1´〜S3´の照射方向位置を計測する。そして、計測点S1〜S3の照射方向位置と、計測点S1´〜S3´の照射方向位置と、の差より、前記実測値δS1x〜δS3xを計測するのである。
【0053】
第二理論値算出工程では、前記球体13を、前記照射方向(Z軸方向)及びX軸方向と直交するY軸方向へ、前記初期座標Iの位置から既知の移動量dyだけ移動させた場合の、理論上の配置座標(x1,y1)〜(x3,y3)のそれぞれに配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cによる計測点S1〜S3におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値dS1y〜dS3yを算出するのである。
【0054】
前記第二理論値算出工程における理論値dS1y〜dS3yは、それぞれ以下の数式4〜数式6によって算出する。
【0055】
【数4】
【0056】
【数5】
【0057】
【数6】
【0058】
即ち、第二理論値算出工程では図4に示す如く、前記球体13が前記初期座標Iの位置にあるときの、理論上の配置座標(x1,y1)〜(x3,y3)のそれぞれに配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cによる計測点S1〜S3の座標(x1,y1)〜(x3,y3)、及び、前記球体13の半径r並びに中心座標である初期座標I(xG,yG)から、計測点S1〜S3の照射方向位置を算出する。また、前記球体13をY軸方向へ、前記初期座標I(xG,yG)の位置から移動座標I´に前記移動量dyだけ移動させた後の、該移動量dy、理論上の配置座標(x1,y1)〜(x3,y3)のそれぞれに配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cによる計測点S1´〜S3´の座標(x1,y1)〜(x3,y3)、及び、前記球体13の半径r並びに中心座標である初期座標I(xG,yG)から、計測点S1´〜S3´の照射方向位置を算出する。そして、計測点S1〜S3の照射方向位置と、計測点S1´〜S3´の照射方向位置と、の差より、前記理論値dS1y〜dS3yを算出するのである。
【0059】
一方、第二実測工程では、前記球体13を、Y軸方向へ、前記初期座標Iの位置から前記移動量dyだけ移動させて、実際に配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cで前記計測点S1〜S3におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値δS1y〜δS3yを計測するのである。
【0060】
前記第二実測工程における実測値δS1y〜δS3yは、前記球体13が前記初期座標Iの位置にあるときの、実際に配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cで計測した計測点S1〜S3の照射方向位置を計測する。また、前記球体13をY軸方向へ、前記初期座標Iの位置から前記移動量dyだけ移動させた後の、実際に配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cで計測した計測点S1´〜S3´の照射方向位置を計測する。そして、計測点S1〜S3の照射方向位置と、計測点S1´〜S3´の照射方向位置と、の差より、前記実測値δS1y〜δS3yを計測するのである。
【0061】
次に、誤差関数算出工程では、前記第一理論値算出工程で算出した計測点S1〜S3におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値dS1x〜dS3xと、前記第一実測工程で計測した計測点S1〜S3におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値δS1x〜δS3xと、前記第二理論値算出工程で算出した計測点S1〜S3におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値dS1y〜dS3yと、前記第二実測工程で計測した計測点S1〜S3におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値δS1y〜δS3yと、から、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cが配置される理論上の配置座標(x1,y1)〜(x3,y3)の誤差を表す誤差関数Fを算出するのである。
【0062】
前記誤差関数算出工程における誤差関数Fは、以下の数式7によって算出する。
【0063】
【数7】
【0064】
即ち、誤差関数算出工程では数式7に示す如く、理論値dS1x〜dS3xと実測値δS1x〜δS3xとのそれぞれの差の平方、及び、理論値dS1y〜dS3yと実測値δS1y〜δS3yとのそれぞれの差の平方を加えることにより、前記誤差関数Fを算出するのである。
【0065】
次に、配置座標算出工程では、前記誤差関数算出工程で算出した誤差関数Fが最小となる、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cが配置される理論上の配置座標(x1+D1x,y1+D1y)〜(x3+D3x,y3+D3y)を、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cが配置される現実の配置座標として算出する。
【0066】
具体的には、前記誤差関数Fの変数x1に代えて、変数x1にパラメータδ1xを加えたx1+δ1xを代入するのである。即ち、誤差関数Fは以下の数式8に示す操作がなされるのである。
【0067】
【数8】
【0068】
そして、誤差関数Fにおけるパラメータδ1xを変更して、パラメータδ1xの最適値D1xを算出する。即ち、図5に示す如く、誤差関数Fの値が最小となるパラメータδ1xの値を最適値D1xとして算出するのである。
【0069】
上記の操作を6個の変数についてそれぞれ行うことにより、各変数x1〜y3についてのパラメータδ1x〜δ3yの最適値D1x〜D3yが算出される。即ち、前記誤差関数Fが最小となる変数は以下の数式9の如く算出されるのである。
【0070】
【数9】
【0071】
上記の如く、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cが配置される現実の配置座標(x1+D1x,y1+D1y)〜(x3+D3x,y3+D3y)が算出される。即ち、計測点S1〜S3における理論上の配置座標(x1,y1)〜(x3,y3)は、計測点T1〜T3における現実の配置座標(x1+D1x,y1+D1y)〜(x3+D3x,y3+D3y)として、以下の数式10〜数式12の如く算出されるのである。
【0072】
【数10】
【0073】
【数11】
【0074】
【数12】
【0075】
上記の如く算出した第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cが配置される現実の配置座標(x1+D1x,y1+D1y)〜(x3+D3x,y3+D3y)によって、図6に示す如く第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cの配置位置を正確に認識することができるのである。
これにより、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cの配置に誤差が生じることを防ぐことが可能となり、エンジンマウント10の変位量を計測する際にボルト12の2軸回転量(θ、φ)を正確に算出することが可能となるため、エンジンマウント10の変位量を正確に求めることができるのである。
【符号の説明】
【0076】
10 エンジンマウント
11 防振弾性体
12 ボルト
13 球体
31 レーザー変位計
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンマウントの変位量計測方法に関し、より詳しくは、エンジンマウントの変位量の計測精度を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの重量を支えるとともに、エンジンからボデーへの振動の伝達を防ぎ、また路面からの入力やエンジン自体が発生するトルク反力によってエンジン本体の姿勢が変化しないようにするため、エンジンをボデーに固定する際にエンジンマウントが用いられている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
前記エンジンマウントは車両のNVH(騒音・振動・ハーシュネス)に大きな影響を与えるため、エンジンマウントがボデーに与えるボデー伝達力を評価することが重要となる。そして、前記ボデー伝達力は、エンジンマウントの動バネ係数と、エンジンマウントの変形量(エンジンマウントの中心の変位量)を計測することによって求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−17877号公報
【特許文献2】特開平6−122325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来技術における、エンジンマウントの変位量を計測する方法について、図16及び図17を用いて説明する。
図16は従来技術に係る第一のエンジンマウントの変位量計測方法について示した図である。図16に示す如く、本方法においては、エンジンマウント本体である防振弾性体に配設される、エンジンマウントのマウント軸であるボルトの上方及び側方に、前記ボルトの軸心に直交する方向(図16中のX軸方向及びY軸方向)にポテンショメータ型の直線変位計を2個配設し、前記直線変位計から延出させたプローブを前記ボルトに当接させる。そして、前記直線変位計で前記ボルトの変位量を計測することにより、エンジンマウントの変位量を計測するのである。
【0006】
しかし、前記方法によれば、エンジンマウントにおけるマウント軸の2次元変位(図16中のX軸方向及びY軸方向の変位)しか計測することができず、また前記マウント軸のねじれ(こじり変形)を計測することもできない。さらに計測の応答性も低いため、高速な振動現象を捉えることはできなかった。
【0007】
図17は従来技術に係る第二のエンジンマウントの変位量計測方法について示した図である。図17(a)に示す如く、本方法においては、エンジンマウントに加速度ピックアップを配設し、該加速度ピックアップでエンジンマウントの加速度を計測し、該加速度を二階積分することによってエンジンマウントの変位量を求めるのである。なお、図17(a)は、前記エンジンマウントがエンジンから加わる力によって軸心が傾いて変形した状態を示している。
【0008】
しかし、前記方法によれば加速度から変位を求めるため、図17(b)に示す如く、数値積分を二階行う際の積分誤差が時間の経過とともに増大し、高精度な変位を求めることができなかった。
【0009】
そこで本発明では、上記現状に鑑み、高速な振動現象の下にあっても、エンジンマウントのマウント軸として配設されるボルトの中心の3軸並進量、及び、該ボルトの2軸回転量を高精度に算出することができる、エンジンマウントの変位量計測方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1においては、エンジンマウントのマウント軸の両端にそれぞれ1個ずつ固定された、半径が既知である2個の球体のそれぞれについて、第1から第3の変位計測手段が互いに平行となる照射方向へ計測光を照射し、前記計測光が前記球体の表面と交差する点である計測点の照射方向位置を3箇所ずつ、それぞれの変位計測手段が計測することにより、それぞれの前記球体の変位を計測する、球体変位計測工程を備えるエンジンマウントの変位量計測方法において、前記球体変位計測工程の前に、前記照射方向と直交する平面上における初期座標が既知である前記球体の少なくとも1個を、前記照射方向と直交する方向へ、前記初期座標の位置から既知の移動量だけ移動させ、前記第1から第3の変位計測手段による計測点におけるそれぞれの照射方向変位量を計測し、前記照射方向変位量の計測結果から、前記第1から第3の変位計測手段の位置を算出する、位置算出工程を備えるものである。
【0012】
請求項2においては、前記位置算出工程は、前記照射方向と直交する平面上の初期座標が既知である前記球体の少なくとも1個を、前記照射方向と直交するX軸方向へ、前記初期座標の位置から既知の移動量dxだけ移動させた場合の、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値を算出する、第一理論値算出工程と、前記第一理論値算出工程で照射方向変位量を計測した理論値を算出した球体を、X軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dxだけ移動させて、実際に配置された第1から第3の変位計測手段で前記計測点におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値を計測する、第一実測工程と、前記第一理論値算出工程で照射方向変位量を計測した理論値を算出した球体を、前記照射方向及びX軸方向と直交するY軸方向へ、前記初期座標の位置から既知の移動量dyだけ移動させた場合の、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値を算出する、第二理論値算出工程と、前記第一理論値算出工程で照射方向変位量を計測した理論値を算出した球体を、Y軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dyだけ移動させて、実際に配置された前記第1から第3の変位計測手段で前記計測点におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値を計測する、第二実測工程と、前記第一理論値算出工程で算出した計測点におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値と、前記第一実測工程で計測した計測点におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値と、前記第二理論値算出工程で算出した計測点におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値と、前記第二実測工程で計測した計測点におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値と、から、前記第1から第3の変位計測手段が配置される理論上の配置座標の誤差を表す誤差関数Fを算出する、誤差関数算出工程と、前記誤差関数算出工程で算出した誤差関数Fが最小となる、第1から第3の変位計測手段が配置される理論上の配置座標を、前記第1から第3の変位計測手段が配置される現実の配置座標として算出する、配置座標算出工程と、からなるものである。
【0013】
請求項3においては、前記第一理論値算出工程における理論値は、前記球体が前記初期座標の位置にあるときの、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点の座標、及び、前記球体の半径並びに中心座標、から算出される計測点の照射方向位置と、前記球体をX軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dxだけ移動させた後の、該移動量dx、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点の座標、及び、前記球体の半径並びに中心座標、から算出される計測点の照射方向位置と、の差より算出し、前記第一実測工程における実測値は、前記球体が前記初期座標の位置にあるときの、実際に配置された第1から第3の変位計測手段で計測した計測点の照射方向位置と、前記球体をX軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dxだけ移動させた後の、実際に配置された第1から第3の変位計測手段で計測した計測点の照射方向位置と、の差より算出し、前記第二理論値算出工程における理論値は、前記球体が前記初期座標の位置にあるときの、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点の座標、及び、前記球体の半径並びに中心座標、から算出される計測点の照射方向位置と、前記球体をY軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dyだけ移動させた後の、該移動量dy、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点の座標、及び、前記球体の半径並びに中心座標、から算出される計測点の照射方向位置と、の差より算出し、前記第二実測工程における実測値は、前記球体が前記初期座標の位置にあるときの、実際に配置された第1から第3の変位計測手段で計測した計測点の照射方向位置と、前記球体をY軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dyだけ移動させた後の、実際に配置された第1から第3の変位計測手段で計測した計測点の照射方向位置と、の差より算出するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
本発明により、高速な振動現象の下にあっても、エンジンマウントのマウント軸として配設されるボルトの中心の3軸並進量、及び、該ボルトの2軸回転量を高精度に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】エンジンマウントの変位量計測方法における位置算出工程の概要について示した図。
【図2】第1から第3の変位計測手段が配置される理論上の配置座標を示した平面図。
【図3】球体をX軸方向へ移動量dxだけ移動させた状態を示した図。
【図4】球体をY軸方向へ移動量dyだけ移動させた状態を示した図。
【図5】誤差関数Fとパラメータδ1xとの関係を示した線図。
【図6】第1から第3の変位計測手段が配置される現実の配置座標を示した図。
【図7】(a)は本発明の計測対象であるエンジンマウントを示した図、(b)はエンジンマウントのマウント軸であるボルトを示した図。
【図8】エンジンマウントの変位量計測装置の概要を示した図。
【図9】エンジンマウントの変位量計測方法のフローチャートを示した図。
【図10】エンジンマウントの変位量計測方法の座標算出工程について示した図。
【図11】エンジンマウントの変位量計測方法における座標算出工程について示した図。
【図12】エンジンマウントのボルトの変位状態を示した図。
【図13】エンジンマウントの変位量計測方法のマウント軸変位算出工程について示した図。
【図14】変位計測手段に配置誤差がある場合について示した図。
【図15】変位計測手段に配置誤差がある場合における座標算出工程について示した図。
【図16】従来技術に係る第一のエンジンマウントの変位量計測方法について示した図。
【図17】従来技術に係る第二のエンジンマウントの変位量計測方法について示した図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではなく、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
【0018】
[エンジンマウントの変位量計測装置30]
まず始めに、本発明を実施するエンジンマウントの変位量計測装置30について、図7及び図8を用いて説明をする。
図7(a)に示す如く、エンジンマウントの変位量計測装置30の計測対象であるエンジンマウント10は、主に、ボデーに配設されるブラケット21と、該ブラケット21に設置される防振弾性体11と、エンジンマウント10の固定用のマウント軸であって、前記防振弾性体11の軸心部分に配設されるボルト12と、で構成されている。そして、前記ボルト12と、図示しないエンジンに配設されたブラケットとが連結されることにより、エンジンがボデーに支持されるのである。このような構成により、エンジンマウント10を介してボデーがエンジンの重量を支えるとともに、エンジンからボデーへの振動の伝達を防ぎ、また路面からの入力やエンジン自体が発生するトルク反力によってエンジン本体の姿勢が変化しないようにしている。なお、図7(a)は、前記エンジンマウント10がエンジンから加わる力によって軸心が傾いて変形した状態を示している。
【0019】
そして、本実施形態においては、図7(a)に示す如く、前記ボルト12の両端のそれぞれに、半径r0が既知である球体13・13が1個ずつ、2個固定されている。詳細には、図7(b)に示す如く、ボルト頭部側、ナット側のそれぞれに、ボルト12の軸心の延長線上に前記球体13・13の中心I・Jが位置するように、軸心方向視においてボルト頭部及びナットの径と略同径の球体13・13が溶接等により固定されるのである。
なお、本実施形態においては、前記球体13については完全な球体を用いているが、該球体13は半径r0が既知であればよく、半球等で代替することも可能である。
【0020】
図8以下においては、説明の便宜上、前記ボルト12は軸心を上下に向けた状態で図示するものとする。図8に示す如く、エンジンマウントの変位量計測装置30は、球体13・13の変位計測手段である第1レーザー変位計31a・第2レーザー変位計31b・・・第6レーザー変位計31fと、座標算出手段及びマウント軸変位算出手段である制御装置32と、を備える。
【0021】
具体的には、前記第1レーザー変位計31a〜第6レーザー変位計31fは3個が1組となって、それぞれの球体13・13について3箇所の球体表面の変位を計測するのである。即ち、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cは互いに平行となる照射方向へ計測光を照射し、前記計測光が前記球体13の表面と交差する点である計測点A〜Cの位置を、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cが計測するのである。
同様に、第4レーザー変位計31d〜第6レーザー変位計31fについても互いに平行となる照射方向へ計測光を照射し、前記計測光が球体13の表面と交差する点である計測点D〜Fの位置を、第4レーザー変位計31d〜第6レーザー変位計31fが計測するのである。これにより、第1レーザー変位計31a〜第6レーザー変位計31fがそれぞれの前記球体13・13の変位を計測するように構成されている。
【0022】
一方、前記制御装置32は、前記第1レーザー変位計31a〜第6レーザー変位計31fのそれぞれと電気的に接続されており、前記第1レーザー変位計31a〜第6レーザー変位計31fで計測された前記球体13・13の変位結果を入力可能に構成されている。
また、前記制御装置32は、入力機能、表示機能、記憶機能、通信機能、及び、各種の演算機能等を備えている。そして、前記演算機能は後述するように、前記変位結果に基づいて前記球体13・13の中心I・Jのそれぞれの3次元座標Q1・Q2をそれぞれ算出する座標算出手段、及び、該座標算出手段で算出された2個の3次元座標Q1・Q2に基づいて、前記ボルト12の中心Kの3軸並進量(3次元座標Oの変位量)、及び、前記ボルト12の2軸回転量(θ、φ)を算出するマウント軸変位算出手段を備えるのである。
【0023】
[エンジンマウントの変位量計測方法]
次に、本発明に係るエンジンマウントの変位量計測方法について、図9から図13を用いて説明する。なお、本発明に係るエンジンマウントの変位量計測方法の概要については、本願出願人により既に特許出願がなされている(特願2009−10434号)。
【0024】
図9に示す如く、本実施形態に係るエンジンマウントの変位量計測方法は、エンジンマウント10のマウント軸として配設されるボルト12の両端に、それぞれ1個ずつ固定した2個の球体13・13の変位を、それぞれの球体13・13について3箇所ずつ第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31c、第4レーザー変位計31d〜第6レーザー変位計31fで計測する、球体変位計測工程(図9中のステップS1)と、前記球体変位計測工程で計測した前記球体13・13の変位結果に基づいて、前記球体13・13の中心I・Jの3次元座標Q1・Q2をそれぞれ算出する、座標算出工程(図9中のステップS2〜ステップS7)と、座標算出工程で算出した2個の3次元座標Q1・Q2に基づいて、前記ボルト12の中心Kの3軸並進量(3次元座標Oの変位量)、及び、前記ボルト12の2軸回転量(θ、φ)を算出する、マウント軸変位算出工程(図9中のステップS8)と、を備える。
【0025】
それぞれの工程について、以下に具体的に説明する。
まず、球体変位計側工程では、前記の如く、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cが一方の球体13の表面における計測点A〜Cの変位を、第4レーザー変位計31d〜第6レーザー変位計31fが他方の球体13の表面における計測点D〜Fの変位を計測する。そして、それぞれのレーザー変位計31a〜31fで計測された計測点A〜Fの変位量を制御装置32に出力し、該制御装置32はそれぞれのレーザー変位計31a〜31fの出力を取得するのである(ステップS1)。
【0026】
次に、座標算出工程では、前記演算機能が、それぞれのレーザー変位計31a〜31fで観測された、計測点A〜C、D〜Fの変位を、X軸、Y軸、Z軸からなるセンサ座標系から見た3次元座標X1〜X3、X4〜X6へと座標変換する(ステップS2)。
具体的には、図10に示す如く、計測点A〜Cの変位量に基づいて座標X1(xa、ya、za)〜X3(xc、yc、zc)を算出するのである。同様に他方の計測点D〜Fについても、同様に3次元座標X4(xd、yd、zd)〜X6(xf、yf、zf)を算出するのである。
【0027】
さらに、座標算出工程では、前記演算機能が、前記座標X1〜X3、X4〜X6に基づいて、図11に示した3個ずつの計測点A〜C及び計測点D〜Fのそれぞれを通る2個の円の中心L・Mの3次元座標P1・P2を算出する(ステップS3)。
詳細には、3個の計測点A〜Cの座標X1〜X3が判明すれば、幾何学的に計測点A〜Cの何れにも等距離に位置する点の座標を求めることで、計測点A〜Cを通る円の中心Lの座標P1(xp1、yp1、zp1)を求めることが可能となる。これにより、前記演算機能が前記座標X1〜X3に基づいて計測点A〜Cを通る円の中心Lの座標P1を算出するのである。また、図示しない他方の球体13についても、同様に計測点D〜Fを通る円の中心Mの3次元座標P2(xp2、yp2、zp2)を算出するのである。
【0028】
さらに、前記演算機能が幾何学的に、前記中心L・Mと計測点A〜C・D〜Fの何れかとの距離を算出することにより、前記2個の円の半径r1・r2を算出する(ステップS4)。
【0029】
さらに、前記演算機能が幾何学的に、前記球体13・13の中心I・Jと、前記3個の計測点A〜C・D〜Fで決まる平面との距離k1・k2を算出する(ステップS5)。
詳細には、前記球体13・13の半径r0が既知であるため、図11に示す如く、該半径r0と、前記円の半径r1・r2と、前記平面との距離k1・k2との三辺で形成される直角三角形において三平方の定理を利用することにより、前記平面との距離k1・k2を算出するのである。
【0030】
さらに、前記演算機能が幾何学的に、前記3個の計測点A〜C・D〜Fで決まる平面の垂直方向ベクトルnを算出する(ステップS6)。
【0031】
さらに、座標算出工程では、前記演算機能が、前記2個の円の中心座標P1・P2、平面との距離k1・k2、及び前記垂直方向ベクトルnに基づいて前記球体13・13の中心I・Jの3次元座標Q1・Q2を算出する(ステップS7)。
詳細には、図11に示す如く、前記2個の円の中心L・Mを起点として、前記垂直方向ベクトルnの方向に距離k1・k2だけ移動した点が前記球体13・13の中心I・Jとなるため、前記演算機能が球体13・13の中心Iの座標Q1・Q2を算出するのである。
【0032】
次に、マウント軸変位算出工程では、前記演算機能が、前記座標Q1・Q2に基づいて、前記ボルト12の中心Kの3軸並進量(3次元座標Oの変位量)、及び、前記ボルト12の2軸回転量(θ、φ)を算出する(ステップS8)。
具体的には、図12に示す如く、前記中心I・Jの中点がボルト12の中心Kとなるため、前記演算機能が、前記座標Q1・Q2に基づいてボルト12の中心Kの3次元座標O(xo、yo、zo)を算出するのである。そして、前記座標OのX軸方向、Y軸方向、Z軸方向それぞれの変位量を算出することにより、前記ボルト12の中心Kの3軸並進量を算出するのである。
さらに、図13に示す如く、前記中心I・Jの座標Q1・Q2、及び、ボルト12の中心Kの座標Oに基づいて、Z軸を中心としたX軸からのボルト12の回転角θ、及び、Z軸からの傾きφを算出することにより、前記ボルト12の2軸回転量(θ、φ)を算出するのである。
【0033】
本実施形態によれば前記のように構成することにより、高速な振動現象の下にあっても、エンジンマウント10のマウント軸として配設されるボルト12の中心Kの3軸並進量(3次元座標Oの変位量)、及び、該ボルト12の2軸回転量(θ、φ)を高精度に算出することができる。
具体的には、第1レーザー変位計31a〜第6レーザー変位計31fで計測された前記球体13・13の変位結果に基づいてボルト12の中心Kの3軸並進量、及び、該ボルト12の2軸回転量を算出する構成としているため、マウント軸のねじれ(こじり変形)を計測することができ、さらに計測の応答性を高めることが可能となるのである。また、本発明に係るエンジンマウントの変位量計測方法は数値積分を用いないため積分誤差が発生せず、該積分誤差による精度の低下を防ぐことができるのである。
【0034】
上記の如く構成したエンジンマウントの変位量計測方法において、前記第1レーザー変位計31a〜第6レーザー変位計31fの配置には高い精度が求められる。以下に、第1レーザー変位計31aに配置誤差があった場合について、図14及び図15を用いて具体的に説明する。
【0035】
図14に示す如く、本来の第1レーザー変位計31aの配置位置よりもずれた位置に、第1レーザー変位計31a´が配置されたとする。この場合、前記球体変位計側工程において、第1レーザー変位計31a´は球体13の表面において、本来の計測点Aよりもずれた計測点A´の変位を計測することになる。
【0036】
そして、図15に示す如く、本来の計測点A、B、及びCに基づいて求めるべき球体13の中心Iの座標Q1が、ずれた計測点A´、B、及びCに基づいて算定されることにより、ずれた中心I´の座標Q1´として求めてしまう。
【0037】
詳細には、ずれた計測点A´の座標X1´を、本来の第1レーザー変位計31aで計測した計測点a´の座標x1´として演算機能が認識し、前記座標x1´、X2、及びX3に基づいて、計測点a´、B及びCを通る円の中心L´の座標P1´を算出する。そして、円の中心L´を起点として、垂直方向ベクトルnの方向に距離k1だけ移動した点を球体13の中心I´として座標Q1´を算出するため、本来の球体13における中心Iの座標Q1とは異なった座標を算出してしまうのである。
【0038】
上記の如く、第1レーザー変位計31a〜第6レーザー変位計31fの配置に誤差があった場合は、球体13・13の中心I・Jの座標Q1・Q2にも誤差が生じるため、ボルト12の2軸回転量(θ、φ)の算出にも影響が出て、エンジンマウント10の変位量を正確に求めることができなくなるのである。
【0039】
[変位計測手段の位置算出工程]
本実施形態におけるエンジンマウントの変位量計測方法では、上記のように第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cの配置に誤差が生じることを防ぐために、前記球体変位計測工程(ステップS1)の前に、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cの位置算出工程を備える構成としている。なお、以下の位置算出工程については、第4レーザー変位計31d〜第6レーザー変位計31fについても同様である。
【0040】
具体的には位置算出工程では、前記照射方向と直交する平面上における初期座標が既知である前記球体13を、前記照射方向と直交する方向へ、前記初期座標の位置から既知の移動量dx(dy)だけ移動させ、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cによる計測点におけるそれぞれの照射方向変位量δS1x〜δS3x(δS1y〜δS3y)を計測し、前記照射方向変位量δS1x〜δS3x(δS1y〜δS3y)の計測結果から、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cの位置を算出するのである。
【0041】
より詳細には、図1に示す如く、図1中の矢印に示すX軸方向及びY軸方向に平行移動可能に構成されたリニアスライドステージ50を配置し、該リニアスライドステージ50上に、ボルト12を介して球体13を固定するのである。なお、球体13はボルト12を介さずに、直接リニアスライドステージ50に固定する構成でもよい。
【0042】
そして、前記第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cによって、図1中の矢印に示すZ軸方向から球体13に互いに平行となる照射方向であるZ軸方向へ計測光を照射可能に構成するのである。この際、前記第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cのそれぞれの計測点を図2に示す如くS1〜S3とすると同時にそれぞれの座標を(x1,y1)〜(x3,y3)とし、これらを理論上の配置座標とするのである。なお、球体13の中心の初期座標をI(xG,yG)とし、この座標は予め球体13を配設する際に既知であるものとする。
【0043】
そして、図1、図3、及び図4に示す如く、前記リニアスライドステージ50をX軸方向(Y軸方向)に既知の移動量dx(dy)だけ移動させ、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cによる計測点S1〜S3におけるそれぞれの照射方向変位量δS1x〜δS3x(δS1y〜δS3y)を計測するのである。
【0044】
以下に、位置算出工程の手順について具体的に説明する。
前記位置算出工程は、第一理論値算出工程、第一実測工程、第二理論値算出工程、第二実測工程、誤差関数算出工程、及び、配置座標算出工程からなる。
【0045】
第一理論値算出工程では、前記照射方向(Z軸方向)と直交するXY平面上の初期座標I(xG,yG)が既知である前記球体13を、前記照射方向と直交するX軸方向へ、前記初期座標Iの位置から既知の移動量dxだけ移動させた場合の、理論上の配置座標(x1,y1)〜(x3,y3)のそれぞれに配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cによる計測点S1〜S3におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値dS1x〜dS3xを算出するのである。
【0046】
前記第一理論値算出工程における理論値dS1x〜dS3xは、それぞれ以下の数式1〜数式3によって算出する。
【0047】
【数1】
【0048】
【数2】
【0049】
【数3】
【0050】
即ち、第一理論値算出工程では図3に示す如く、前記球体13が前記初期座標Iの位置にあるときの、理論上の配置座標(x1,y1)〜(x3,y3)のそれぞれに配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cによる計測点S1〜S3の座標(x1,y1)〜(x3,y3)、及び、前記球体13の半径r並びに中心座標である初期座標I(xG,yG)から、計測点S1〜S3の照射方向位置を算出する。また、前記球体13をX軸方向へ、前記初期座標I(xG,yG)の位置から移動座標I´に前記移動量dxだけ移動させた後の、該移動量dx、理論上の配置座標(x1,y1)〜(x3,y3)のそれぞれに配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cによる計測点S1´〜S3´の座標(x1,y1)〜(x3,y3)、及び、前記球体13の半径r並びに中心座標である初期座標I(xG,yG)から、計測点S1´〜S3´の照射方向位置を算出する。そして、計測点S1〜S3の照射方向位置と、計測点S1´〜S3´の照射方向位置と、の差より、前記理論値dS1x〜dS3xを算出するのである。
【0051】
一方、第一実測工程では、前記球体13を、X軸方向へ、前記初期座標Iの位置から前記移動量dxだけ移動させて、実際に配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cで前記計測点S1〜S3におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値δS1x〜δS3xを計測するのである。
【0052】
前記第一実測工程における実測値δS1x〜δS3xは、前記球体13が前記初期座標Iの位置にあるときの、実際に配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cで計測した計測点S1〜S3の照射方向位置を計測する。また、前記球体13をX軸方向へ、前記初期座標Iの位置から前記移動量dxだけ移動させた後の、実際に配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cで計測した計測点S1´〜S3´の照射方向位置を計測する。そして、計測点S1〜S3の照射方向位置と、計測点S1´〜S3´の照射方向位置と、の差より、前記実測値δS1x〜δS3xを計測するのである。
【0053】
第二理論値算出工程では、前記球体13を、前記照射方向(Z軸方向)及びX軸方向と直交するY軸方向へ、前記初期座標Iの位置から既知の移動量dyだけ移動させた場合の、理論上の配置座標(x1,y1)〜(x3,y3)のそれぞれに配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cによる計測点S1〜S3におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値dS1y〜dS3yを算出するのである。
【0054】
前記第二理論値算出工程における理論値dS1y〜dS3yは、それぞれ以下の数式4〜数式6によって算出する。
【0055】
【数4】
【0056】
【数5】
【0057】
【数6】
【0058】
即ち、第二理論値算出工程では図4に示す如く、前記球体13が前記初期座標Iの位置にあるときの、理論上の配置座標(x1,y1)〜(x3,y3)のそれぞれに配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cによる計測点S1〜S3の座標(x1,y1)〜(x3,y3)、及び、前記球体13の半径r並びに中心座標である初期座標I(xG,yG)から、計測点S1〜S3の照射方向位置を算出する。また、前記球体13をY軸方向へ、前記初期座標I(xG,yG)の位置から移動座標I´に前記移動量dyだけ移動させた後の、該移動量dy、理論上の配置座標(x1,y1)〜(x3,y3)のそれぞれに配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cによる計測点S1´〜S3´の座標(x1,y1)〜(x3,y3)、及び、前記球体13の半径r並びに中心座標である初期座標I(xG,yG)から、計測点S1´〜S3´の照射方向位置を算出する。そして、計測点S1〜S3の照射方向位置と、計測点S1´〜S3´の照射方向位置と、の差より、前記理論値dS1y〜dS3yを算出するのである。
【0059】
一方、第二実測工程では、前記球体13を、Y軸方向へ、前記初期座標Iの位置から前記移動量dyだけ移動させて、実際に配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cで前記計測点S1〜S3におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値δS1y〜δS3yを計測するのである。
【0060】
前記第二実測工程における実測値δS1y〜δS3yは、前記球体13が前記初期座標Iの位置にあるときの、実際に配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cで計測した計測点S1〜S3の照射方向位置を計測する。また、前記球体13をY軸方向へ、前記初期座標Iの位置から前記移動量dyだけ移動させた後の、実際に配置された第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cで計測した計測点S1´〜S3´の照射方向位置を計測する。そして、計測点S1〜S3の照射方向位置と、計測点S1´〜S3´の照射方向位置と、の差より、前記実測値δS1y〜δS3yを計測するのである。
【0061】
次に、誤差関数算出工程では、前記第一理論値算出工程で算出した計測点S1〜S3におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値dS1x〜dS3xと、前記第一実測工程で計測した計測点S1〜S3におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値δS1x〜δS3xと、前記第二理論値算出工程で算出した計測点S1〜S3におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値dS1y〜dS3yと、前記第二実測工程で計測した計測点S1〜S3におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値δS1y〜δS3yと、から、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cが配置される理論上の配置座標(x1,y1)〜(x3,y3)の誤差を表す誤差関数Fを算出するのである。
【0062】
前記誤差関数算出工程における誤差関数Fは、以下の数式7によって算出する。
【0063】
【数7】
【0064】
即ち、誤差関数算出工程では数式7に示す如く、理論値dS1x〜dS3xと実測値δS1x〜δS3xとのそれぞれの差の平方、及び、理論値dS1y〜dS3yと実測値δS1y〜δS3yとのそれぞれの差の平方を加えることにより、前記誤差関数Fを算出するのである。
【0065】
次に、配置座標算出工程では、前記誤差関数算出工程で算出した誤差関数Fが最小となる、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cが配置される理論上の配置座標(x1+D1x,y1+D1y)〜(x3+D3x,y3+D3y)を、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cが配置される現実の配置座標として算出する。
【0066】
具体的には、前記誤差関数Fの変数x1に代えて、変数x1にパラメータδ1xを加えたx1+δ1xを代入するのである。即ち、誤差関数Fは以下の数式8に示す操作がなされるのである。
【0067】
【数8】
【0068】
そして、誤差関数Fにおけるパラメータδ1xを変更して、パラメータδ1xの最適値D1xを算出する。即ち、図5に示す如く、誤差関数Fの値が最小となるパラメータδ1xの値を最適値D1xとして算出するのである。
【0069】
上記の操作を6個の変数についてそれぞれ行うことにより、各変数x1〜y3についてのパラメータδ1x〜δ3yの最適値D1x〜D3yが算出される。即ち、前記誤差関数Fが最小となる変数は以下の数式9の如く算出されるのである。
【0070】
【数9】
【0071】
上記の如く、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cが配置される現実の配置座標(x1+D1x,y1+D1y)〜(x3+D3x,y3+D3y)が算出される。即ち、計測点S1〜S3における理論上の配置座標(x1,y1)〜(x3,y3)は、計測点T1〜T3における現実の配置座標(x1+D1x,y1+D1y)〜(x3+D3x,y3+D3y)として、以下の数式10〜数式12の如く算出されるのである。
【0072】
【数10】
【0073】
【数11】
【0074】
【数12】
【0075】
上記の如く算出した第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cが配置される現実の配置座標(x1+D1x,y1+D1y)〜(x3+D3x,y3+D3y)によって、図6に示す如く第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cの配置位置を正確に認識することができるのである。
これにより、第1レーザー変位計31a〜第3レーザー変位計31cの配置に誤差が生じることを防ぐことが可能となり、エンジンマウント10の変位量を計測する際にボルト12の2軸回転量(θ、φ)を正確に算出することが可能となるため、エンジンマウント10の変位量を正確に求めることができるのである。
【符号の説明】
【0076】
10 エンジンマウント
11 防振弾性体
12 ボルト
13 球体
31 レーザー変位計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンマウントのマウント軸の両端にそれぞれ1個ずつ固定された、半径が既知である2個の球体のそれぞれについて、第1から第3の変位計測手段が互いに平行となる照射方向へ計測光を照射し、前記計測光が前記球体の表面と交差する点である計測点の照射方向位置を3箇所ずつ、それぞれの変位計測手段が計測することにより、それぞれの前記球体の変位を計測する、球体変位計測工程を備えるエンジンマウントの変位量計測方法において、
前記球体変位計測工程の前に、前記照射方向と直交する平面上における初期座標が既知である前記球体の少なくとも1個を、前記照射方向と直交する方向へ、前記初期座標の位置から既知の移動量だけ移動させ、前記第1から第3の変位計測手段による計測点におけるそれぞれの照射方向変位量を計測し、前記照射方向変位量の計測結果から、前記第1から第3の変位計測手段の位置を算出する、位置算出工程を備える、
ことを特徴とする、エンジンマウントの変位量計測方法。
【請求項2】
前記位置算出工程は、
前記照射方向と直交する平面上の初期座標が既知である前記球体の少なくとも1個を、前記照射方向と直交するX軸方向へ、前記初期座標の位置から既知の移動量dxだけ移動させた場合の、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値を算出する、第一理論値算出工程と、
前記第一理論値算出工程で照射方向変位量を計測した理論値を算出した球体を、X軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dxだけ移動させて、実際に配置された第1から第3の変位計測手段で前記計測点におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値を計測する、第一実測工程と、
前記第一理論値算出工程で照射方向変位量を計測した理論値を算出した球体を、前記照射方向及びX軸方向と直交するY軸方向へ、前記初期座標の位置から既知の移動量dyだけ移動させた場合の、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値を算出する、第二理論値算出工程と、
前記第一理論値算出工程で照射方向変位量を計測した理論値を算出した球体を、Y軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dyだけ移動させて、実際に配置された前記第1から第3の変位計測手段で前記計測点におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値を計測する、第二実測工程と、
前記第一理論値算出工程で算出した計測点におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値と、前記第一実測工程で計測した計測点におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値と、前記第二理論値算出工程で算出した計測点におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値と、前記第二実測工程で計測した計測点におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値と、から、前記第1から第3の変位計測手段が配置される理論上の配置座標の誤差を表す誤差関数Fを算出する、誤差関数算出工程と、
前記誤差関数算出工程で算出した誤差関数Fが最小となる、第1から第3の変位計測手段が配置される理論上の配置座標を、前記第1から第3の変位計測手段が配置される現実の配置座標として算出する、配置座標算出工程と、からなる、
ことを特徴とする、請求項1に記載のエンジンマウントの変位量計測方法。
【請求項3】
前記第一理論値算出工程における理論値は、
前記球体が前記初期座標の位置にあるときの、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点の座標、及び、前記球体の半径並びに中心座標、から算出される計測点の照射方向位置と、
前記球体をX軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dxだけ移動させた後の、該移動量dx、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点の座標、及び、前記球体の半径並びに中心座標、から算出される計測点の照射方向位置と、の差より算出し、
前記第一実測工程における実測値は、
前記球体が前記初期座標の位置にあるときの、実際に配置された第1から第3の変位計測手段で計測した計測点の照射方向位置と、
前記球体をX軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dxだけ移動させた後の、実際に配置された第1から第3の変位計測手段で計測した計測点の照射方向位置と、の差より算出し、
前記第二理論値算出工程における理論値は、
前記球体が前記初期座標の位置にあるときの、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点の座標、及び、前記球体の半径並びに中心座標、から算出される計測点の照射方向位置と、
前記球体をY軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dyだけ移動させた後の、該移動量dy、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点の座標、及び、前記球体の半径並びに中心座標、から算出される計測点の照射方向位置と、の差より算出し、
前記第二実測工程における実測値は、
前記球体が前記初期座標の位置にあるときの、実際に配置された第1から第3の変位計測手段で計測した計測点の照射方向位置と、
前記球体をY軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dyだけ移動させた後の、実際に配置された第1から第3の変位計測手段で計測した計測点の照射方向位置と、の差より算出する、
ことを特徴とする、請求項2に記載のエンジンマウントの変位量計測方法。
【請求項1】
エンジンマウントのマウント軸の両端にそれぞれ1個ずつ固定された、半径が既知である2個の球体のそれぞれについて、第1から第3の変位計測手段が互いに平行となる照射方向へ計測光を照射し、前記計測光が前記球体の表面と交差する点である計測点の照射方向位置を3箇所ずつ、それぞれの変位計測手段が計測することにより、それぞれの前記球体の変位を計測する、球体変位計測工程を備えるエンジンマウントの変位量計測方法において、
前記球体変位計測工程の前に、前記照射方向と直交する平面上における初期座標が既知である前記球体の少なくとも1個を、前記照射方向と直交する方向へ、前記初期座標の位置から既知の移動量だけ移動させ、前記第1から第3の変位計測手段による計測点におけるそれぞれの照射方向変位量を計測し、前記照射方向変位量の計測結果から、前記第1から第3の変位計測手段の位置を算出する、位置算出工程を備える、
ことを特徴とする、エンジンマウントの変位量計測方法。
【請求項2】
前記位置算出工程は、
前記照射方向と直交する平面上の初期座標が既知である前記球体の少なくとも1個を、前記照射方向と直交するX軸方向へ、前記初期座標の位置から既知の移動量dxだけ移動させた場合の、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値を算出する、第一理論値算出工程と、
前記第一理論値算出工程で照射方向変位量を計測した理論値を算出した球体を、X軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dxだけ移動させて、実際に配置された第1から第3の変位計測手段で前記計測点におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値を計測する、第一実測工程と、
前記第一理論値算出工程で照射方向変位量を計測した理論値を算出した球体を、前記照射方向及びX軸方向と直交するY軸方向へ、前記初期座標の位置から既知の移動量dyだけ移動させた場合の、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値を算出する、第二理論値算出工程と、
前記第一理論値算出工程で照射方向変位量を計測した理論値を算出した球体を、Y軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dyだけ移動させて、実際に配置された前記第1から第3の変位計測手段で前記計測点におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値を計測する、第二実測工程と、
前記第一理論値算出工程で算出した計測点におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値と、前記第一実測工程で計測した計測点におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値と、前記第二理論値算出工程で算出した計測点におけるそれぞれの照射方向変位量を計測した理論値と、前記第二実測工程で計測した計測点におけるそれぞれの照射方向変位量の実測値と、から、前記第1から第3の変位計測手段が配置される理論上の配置座標の誤差を表す誤差関数Fを算出する、誤差関数算出工程と、
前記誤差関数算出工程で算出した誤差関数Fが最小となる、第1から第3の変位計測手段が配置される理論上の配置座標を、前記第1から第3の変位計測手段が配置される現実の配置座標として算出する、配置座標算出工程と、からなる、
ことを特徴とする、請求項1に記載のエンジンマウントの変位量計測方法。
【請求項3】
前記第一理論値算出工程における理論値は、
前記球体が前記初期座標の位置にあるときの、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点の座標、及び、前記球体の半径並びに中心座標、から算出される計測点の照射方向位置と、
前記球体をX軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dxだけ移動させた後の、該移動量dx、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点の座標、及び、前記球体の半径並びに中心座標、から算出される計測点の照射方向位置と、の差より算出し、
前記第一実測工程における実測値は、
前記球体が前記初期座標の位置にあるときの、実際に配置された第1から第3の変位計測手段で計測した計測点の照射方向位置と、
前記球体をX軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dxだけ移動させた後の、実際に配置された第1から第3の変位計測手段で計測した計測点の照射方向位置と、の差より算出し、
前記第二理論値算出工程における理論値は、
前記球体が前記初期座標の位置にあるときの、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点の座標、及び、前記球体の半径並びに中心座標、から算出される計測点の照射方向位置と、
前記球体をY軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dyだけ移動させた後の、該移動量dy、理論上の配置座標のそれぞれに配置された第1から第3の変位計測手段による計測点の座標、及び、前記球体の半径並びに中心座標、から算出される計測点の照射方向位置と、の差より算出し、
前記第二実測工程における実測値は、
前記球体が前記初期座標の位置にあるときの、実際に配置された第1から第3の変位計測手段で計測した計測点の照射方向位置と、
前記球体をY軸方向へ、前記初期座標の位置から前記移動量dyだけ移動させた後の、実際に配置された第1から第3の変位計測手段で計測した計測点の照射方向位置と、の差より算出する、
ことを特徴とする、請求項2に記載のエンジンマウントの変位量計測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−43484(P2011−43484A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193664(P2009−193664)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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