説明

オイルセパレータ

【課題】オイルの分離効率を高めたオイルセパレータを提供すること。
【解決手段】オイル混合ガス流路Sの途中に邪魔板24を設置し、該邪魔板24の表面24aにオイル混合ガスを接触させることによってオイルを分離するオイルセパレータにおいて、邪魔板24の表面24aを多数の凹凸部28によって形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルセパレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のエンジンでは、クランクケース内に流出したブローバイガスを、シリンダヘッドカバーへ導き、該シリンダヘッドカバーから吸気管におけるスロットルバルブの下流へ還流させている。
【0003】
ところで、ブローバイガスには、オイルが混入しているため、ブローバイガス還流系にオイルセパレータを介在させ、該オイルセパレータでオイルを除去して清浄空気を吸気管へ還流させることがなされている。
【0004】
このようなオイルセパレータとして、シリンダヘッドカバー内に室を形成し、その室内に邪魔板を立設し、室内を通過するブローバイガスをその邪魔板に衝突させることによって、オイルを分離させる邪魔板式オイルセパレータがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−157927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような邪魔板式オイルセパレータでは、オイル除去効率を上げるためには、邪魔板の面積を大きくしたり、設置枚数を多くする必要があるため、大形化が避けられない。
【0007】
本発明は、上述した背景技術が有する事情に鑑みて成されたもので、よりオイルの分離効率を高めたオイルセパレータを提供し、その小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するため、請求項1のオイルセパレータは、オイル混合ガスを壁体と接触させることによってオイルを分離するオイルセパレータにおいて、前記オイル混合ガスを接触させる少なくとも一部の壁体の表面を多数の凹凸部によって形成したことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2のオイルセパレータは、上記請求項1に記載の発明において、上記凹凸部が、上下に位置する凹部同士または凸部同士をオフセットして配置されていることを特徴とする。
【0010】
更に、請求項3のオイルセパレータは、上記請求項1または2に記載の発明において、上記凹凸部が、上下方向に延びる溝によって互いに連通されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4のオイルセパレータは、上記請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、上記凹凸部の下部表面が、下方に傾斜した斜面によって形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5のオイルセパレータは、上記請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、上記凹凸部が、オイル混合ガス流路の途中に設置された邪魔板の表面に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記した請求項1のオイルセパレータによれば、オイル混合ガスの接触面積が広くなるため、それだけオイル分離効果が増し、換言すれば、邪魔板等のオイル混合ガスを接触させる壁体の大きさを小さく抑えることができるので、装置の小型化が図れる。
【0014】
また、上記した請求項2のオイルセパレータによれば、上記した効果に加え、オイル混合ガスは、上下にオフセットして位置するいずれかの凹凸部によってオイルが捕捉されるので、オイル捕捉効率がより高まる。
【0015】
また、上記した請求項3のオイルセパレータによれば、上記した効果に加え、凹凸部に捕捉されたオイルは、再飛散することなく溝を介して下方にスムースに導かれる。
【0016】
また、上記した請求項4のオイルセパレータによれば、上記した効果に加え、凹凸部によって捕捉されたオイルは、再飛散することなく傾斜面によってスムースに下方に導かれる。
【0017】
また、上記した請求項5のオイルセパレータによれば、上記した効果に加え、凹凸部が邪魔板の表面に形成されているため、該邪魔板によってより効率よくオイルを捕捉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るオイルセパレータの一実施形態を示したもので、オイルセパレータが構成されるシリンダヘッドカバーと該カバーに取り付けられるセパレータ本体とを示した分解斜視図である。
【図2】図1に示したオイルセパレータで、セパレータ本体をシリンダヘッドカバーに取り付けた状態を示した図1におけるA−A線に沿う部分の断面図である。
【図3】本発明に係るオイルセパレータにおける邪魔板の表面を示した斜視図である。
【図4】図3に示した邪魔板における表面の形状を拡大して示したもので、(a)は正面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【図5】本発明に係るオイルセパレータにおける邪魔板の他の実施形態を拡大して示した正面図で、(a)は正面図、(b)は(a)におけるC−C線断面図である。
【図6】本発明に係るオイルセパレータにおける邪魔板のさらに他の実施形態を拡大して示した正面図で、(a)は正面図、(b)は(a)におけるD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るオイルセパレータを、図面に示した実施形態に基づいて詳細に説明するが、本発明は、かかる実施形態のオイルセパレータのみに限定されるものではない。
【0020】
図示した実施形態に係るオイルセパレータ1は、図1に示すように、エンジンのシリンダヘッドカバー10と、該カバーに取り付けられるセパレータ本体20とによって2箇所に構成されている。
【0021】
このオイルセパレータ1では、図2に示すように、シリンダヘッドカバー10の天井壁内面10aに、オイルセパレータ1の周囲を画成する側壁11および端壁12が下方に向けて立設されている。そして、側壁11および端壁12によって画成された領域のほぼ中央部に、両側壁に達する幅の邪魔板13が下方に向けて立設されている。また、このシリンダヘッドカバー10では、端壁12の一方に位置して排気ポート14が貫設されている。
【0022】
一方、セパレータ本体20は、オイルセパレータ1の周囲を画成する側壁21および端壁22が上方に向けて立設されている。また、このセパレータ本体20は、底壁23を備えている。そして、底壁23における側壁21および端壁22によって画成された領域のほぼ中央部に、両側壁21に達する幅の邪魔板24が立設されている。
【0023】
また、底壁23は、邪魔板24を挟むようにして両端壁22,22側に凹部25,26を備えている。そして、それらの凹部25,26の下端には、オイル排出孔25a,26aが貫設されている。また、底壁23には、他方の端壁22に位置してブローバイガス取り入れ口27が形成されている。
【0024】
このセパレータ本体20は、その側壁21および端壁22がシリンダヘッドカバー10の側壁11および端壁12に溶着等によって取り付けられ、それらによって室2が画成される。
【0025】
そして、このオイルセパレータ1では、図3および図4に示すように、邪魔板24のブローバイガスの流れSに対抗する表面24aに4角錐形の凹部28が、邪魔板24のほぼ全面に亘って形成されている。これらの凹部28は、上下,左右に連続して形成されている。
【0026】
このように構成されたオイルセパレータ1では、図示しないクランクケースからシリンダヘッドへ導かれたブローバイガスは、図2に示すように、オイルセパレータ1のブローバイガス取り入れ口27を介して空間2内に導かれ、ブローバイガス取り入れ口27から邪魔板13と邪魔板24等との間を経て排気ポート14から排出される。このようにしてオイルセパレータ1に取り込まれたブローバイガスは、邪魔板13に衝突し、邪魔板13に沿って進路が変更される。ここで、ブローバイガス中のオイルが分離され、そして、分離されたオイルは凹部25に流れ落ち、オイル排出孔25aからシリンダヘッドへ排出される。
【0027】
さらに、邪魔板13とセパレータ本体20の底壁23との間を通過したブローバイガスは、邪魔板24に衝突し、邪魔板24に沿って進路が変更される。ここで、ブローバイガス中のオイルは、邪魔板24の表面24aに形成された凹部28に効率的に捕捉される。そして、凹部28に捕捉されたオイルは、やはり下方の凹部25に流れ落ち、オイル排出孔25aからシリンダヘッドへ排出される。
【0028】
この際、この実施形態の邪魔板24の表面24aに形成された凹部28は、図4に示すように、下部周面28aが下方に延びる傾斜面によって形成されているため、凹部28で捕捉されたオイルは下方に位置する凹部28にスムースに導かれ、そして邪魔板24の下部まで良好に導かれる。
【0029】
その後、流路が急激に拡大されること等により分離されたオイルは、凹部26に流れ落ち、オイル排出孔26aからシリンダヘッドへ排出される。また、オイルが分離された清浄な空気は、排気ポート14を介して図示しない吸気管に還流される。
【0030】
図5は、本発明に係るオイルセパレータ1における邪魔板24の他の実施形態を示している。
この実施形態の邪魔板24では、その表面24aに円錐形の凹部29が形成されている。この実施形態の円錐形の凹部29は、互いに距離をもって配置されている。そして、上下に位置する凹部29が溝30によって互いに連通されている。
【0031】
したがって、この実施形態の邪魔板24では、凹部29の下部周面29aが下方に延びる弧状の傾斜面によって形成され、しかも上下に位置する凹部29が溝30によって互いに連通されているため、凹部29によって捕捉されたオイルは、溝30を介して下方に位置する凹部29にスムースに導かれ、そして邪魔板24の下部まで良好に導かれる。
【0032】
図6は、本発明に係るオイルセパレータ1における邪魔板24のさらに他の実施形態を示している。
この実施形態の邪魔板24では、その表面24aに円柱形の凸部30が形成されている。この実施形態の円柱形の凸部30は、互いに距離をもって配置されており、凸部30間の表面24aが上下方向に連続している。
【0033】
この実施形態の邪魔板24では、表面24aが実質的に凹部を形成することになる。そして、凸部30で捕捉されたオイルは、実質的に連続した凹部となる表面24aを介して下方にスムースに導かれる。
【0034】
なお、上記オイルセパレータ1では、2枚の邪魔板13,24を配しているが、邪魔板の数は、それ以上であってもよいことは勿論であり、また、上記した凹凸部28,29、30を邪魔板24にのみ形成しているが、邪魔板13、更には周壁にも形成してもよい。
【0035】
また、上記した邪魔板に形成する凹凸は、例示したに過ぎず、その形状は、円形,矩形ばかりでなく、楕円形,三角形,その他の多角形,非定型の形状であってもよい。但し、形成する凹凸の段差は、最小でも0.2mm以上のものとすることがオイルの捕捉効率の観点等から好ましい。
【0036】
また、本発明に係るオイルセパレータ1は、上記したようにエンジンに適用するばかりでなく、他の装置,設備等に使用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
1 オイルセパレータ
2 室
10 シリンダヘッドカバー
10a 天井壁内面
11 側壁
12 端壁
13 邪魔板
14 排気ポート
20 セパレータ本体
21 側壁
22 端壁
23 底壁
24 邪魔板
24a 表面
25 凹部
25a オイル排出孔
26 凹部
26a オイル排出口
27 ブローバイガス取り入れ口
28 4角錐形の凹部
29 円錐形の凹部
30 円柱形の凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイル混合ガスを壁体と接触させることによってオイルを分離するオイルセパレータにおいて、前記オイル混合ガスを接触させる少なくとも一部の壁体の表面を多数の凹凸部によって形成したことを特徴とする、オイルセパレータ。
【請求項2】
前記凹凸部が、上下に位置する凹部同士または凸部同士をオフセットして配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のオイルセパレータ。
【請求項3】
前記凹凸部が、上下方向に延びる溝によって互いに連通されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のオイルセパレータ。
【請求項4】
前記凹凸部の下部表面が、下方に傾斜した斜面によって形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のオイルセパレータ。
【請求項5】
前記凹凸部が、オイル混合ガス流路の途中に設置された邪魔板の表面に形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のオイルセパレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−100783(P2013−100783A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245535(P2011−245535)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【特許番号】特許第5165102号(P5165102)
【特許公報発行日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【出願人】(390039929)三桜工業株式会社 (106)
【Fターム(参考)】