オイルパン構造
【課題】樹脂製のオイルパンにおいて、高い剛性を有するとともにオイルパン内に貯留するオイルの温度を効率良く調節できるオイルパン構造とする。
【解決手段】オイルパン1は、エンジンEg各部を循環するオイルを貯留するオイル貯留部2aを有するオイルパン本体2を有している。またオイルパン1は、オイル貯留部2aに貯留するオイルの温度を調節する熱媒体を通過させる熱媒体通路Rを上記オイル貯留部2a内に区画形成する区画形成壁部3を有している。区画形成壁部3は、分割された上側通路形成部31と下側通路形成部5とを組み合わせて構成され、上側通路形成部31がオイルパン本体2と一体に形成されている。
【解決手段】オイルパン1は、エンジンEg各部を循環するオイルを貯留するオイル貯留部2aを有するオイルパン本体2を有している。またオイルパン1は、オイル貯留部2aに貯留するオイルの温度を調節する熱媒体を通過させる熱媒体通路Rを上記オイル貯留部2a内に区画形成する区画形成壁部3を有している。区画形成壁部3は、分割された上側通路形成部31と下側通路形成部5とを組み合わせて構成され、上側通路形成部31がオイルパン本体2と一体に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車における動力装置の内部を循環するオイルを貯留するオイルパン構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、動力装置には、動力装置各部を潤滑又は冷却するためにオイルを貯留するオイルパンが設けられている。オイルパン内に貯留されたオイルは、ストレーナを介してオイルポンプによって吸い上げられ、動力装置各部を循環し、その後オイルパン内に再び戻るようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1のオイルパンは、樹脂材を成形してなるものであり、鋼板製のものに比べて軽量化を図ることができるようになっている。
【0004】
また、動力装置各部を循環するオイルの温度が上がり過ぎてオイルが劣化してしまうのを防止するために、例えば特許文献2のオイルパンでは、オイルパン内部に熱交換部を配設し、オイルパンの側壁等に熱交換部の一部であるパイプを取り付けるための貫通孔を加工している。そして、上記熱交換部にパイプを介して冷却された熱媒体を通過させて、オイルパンに貯留するオイルと冷却された熱媒体とを熱交換させることによりオイルパンに貯留するオイルの温度を下げることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−283617号公報
【特許文献2】特開2005−48600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のように樹脂材を成形してなるオイルパンは、鋼板製のものに比べて剛性不足となる懸念がある。また、樹脂材は熱伝導率が低いので、樹脂材を成形してなるオイルパンは保温性が高く、鋼板製のオイルパンに比べてオイルパン内に貯留するオイルの温度が高くなってしまう懸念がある。これを回避するために、特許文献2のオイルパンのように、オイルパン内に熱交換部を組み付けることでオイルパン内のオイル温度を効率良く調整しようとすると、熱交換部を取り付けるためにオイルパンの側壁等に熱交換部の一部であるパイプを取り付けるための貫通孔を加工しなければならず、さらにオイルパンの剛性が低下してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、樹脂製のオイルパンにおいて、高い剛性を有するとともにオイルパン内に貯留するオイルの温度を効率良く調節できるオイルパン構造とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明では、動力装置各部を循環するオイルを貯留するオイル貯留部を有するオイルパン本体と、上記オイル貯留部に貯留するオイルの温度調節手段を配設、又は、通過させる閉断面空間を上記オイル貯留部内に区画形成する区画形成壁部とを有し、上記区画形成壁部は、分割された第1分割体と第2分割体とを組み合わせて構成され、上記第1分割体と上記第2分割体とのいずれか一方が上記オイルパン本体に形成される構成とした。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、オイルパン本体は、分割された第1本体部と第2本体部とを組み合わせて構成され、上記第1本体部と第1分割体とが一体に形成されるとともに上記第2本体部と第2分割体とが一体に形成される構成とした。
【0010】
第3の発明では、第1又は2の発明において、温度調節手段はオイルと熱交換する熱媒体であり、閉断面空間は熱媒体を通過させる熱媒体通路である構成とした。
【0011】
第4の発明では、第1から3のいずれか1つの発明において、区画形成壁部の表面には凹凸面部が形成されている構成とした。
【0012】
第5の発明では、第1から4のいずれか1つの発明において、区画形成壁部には、該区画形成壁部の外方及び/又は内方に突出する突出板が形成されている構成とした。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、オイルパンに閉断面空間を有する区画形成壁部が設けられるので、この区画形成壁部を利用してオイルパンの剛性を高めることができる。また、オイルパンを樹脂で成形するので成形自由度が高く、区画形成壁部の形状をオイルパン本体に貯留するオイルとの接触面積が増える形状に成形し易くなるので、オイルの加熱や冷却を効率良く行うことができるようになる。
【0014】
第2の発明によれば、閉断面空間を形成する区画形成壁部の第1分割体がオイルパン本体の第1本体部に一体に形成され、閉断面空間を形成する区画形成壁部の第2分割体がオイルパン本体の第2本体部に一体に形成されているので、オイルパンの剛性を高めることができる。また、第1本体部と第2本体部とを組み付けるだけで第1分割体と第2分割体とから区画形成壁部が形成されるようになり、オイルパンに区画形成壁部を簡易に設けることができる。
【0015】
第3の発明によれば、区画形成壁部で区画形成された熱媒体通路に熱媒体を通過させてオイル貯留部に溜まるオイルと熱交換させてオイルの温度を調節できるようになるので、シンプルな構成でオイルの温度を調節することができるようになる。
【0016】
第4の発明によれば、区画形成壁部の表面が凹凸形状になるので、区画形成壁部とオイル貯留部に溜まるオイルとの接触面積が増え、さらにオイル貯留部に溜まるオイルの加熱や冷却を効率良く行うことができるようになる。また、区画形成壁部の表面を凹凸形状にすることによって、さらに剛性の高いオイルパン構造とすることができる。
【0017】
第5の発明によれば、区画形成壁部に突出板を設けることにより、区画形成壁部の表面積が増え、オイル貯留部に溜まるオイルの加熱や冷却をさらに効率良く行うことができるようになる。また、区画形成壁部に形成した突出板を利用して、さらに剛性の高いオイルパン構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のオイルパンを示す斜視図である。
【図2】本発明のオイルパンの分解斜視図である。
【図3】本発明のオイルパンの図1のA−A線から右側部分を示す斜視図である。
【図4】図1のA−A線における断面図である。
【図5】図1のB−B線における断面図である。
【図6】実施形態2における図4相当図である。
【図7】実施形態2における図5相当図である。
【図8】実施形態3の図1のC−C線における断面図である。
【図9】実施形態4における図3相当図である。
【図10】実施形態4における図1のD−D線の断面図である。
【図11】図10のE−E線における断面図である。
【図12】図11のF−F線における断面図である。
【図13】図12のG−G線における断面図である。
【図14】実施形態5における図10相当図である。
【図15】実施形態5における図11相当図である。
【図16】実施形態6における図10相当図である。
【図17】実施形態6における図11相当図である。
【図18】実施形態7における図9相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1のオイルパン1を示したものである。上記オイルパン1は、自動車の前部に設けられたエンジンルームに搭載されるエンジン(動力装置)Egの下部に取り付けられており、オイルパン1内に溜められたオイルは、オイルパン1内に配設されたストレーナ(図示せず)から吸入され、エンジンEg各部に供給されて循環した後、オイルパン1の上部からオイルパン1内に戻るようになっている。尚エンジンルームに搭載されたエンジンEgの向きは、クランク軸が車両左右方向に延びる向きとなっている。
【0020】
この実施形態の説明では、説明の便宜を図るために、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとする。
【0021】
図1乃至図3に示すように、オイルパン1は、略直方体の形状をなす樹脂製の射出成形品であり、オイルを貯留するオイル貯留部2aを有するオイルパン本体2と、オイル貯留部2aに溜まるオイルと熱交換する冷却水や空気等の熱媒体を通過させる熱媒体通路Rをオイル貯留部2a内に区画形成する区画形成壁部3とから構成されている。尚、本発明の温度調節手段とは、冷却水や空気等の熱媒体や、電熱線等のことを言う。
【0022】
オイルパン本体2は、底壁部61と、該底壁部61の周縁から立ち上がるオイルパン側壁部20とを有している。オイルパン側壁部20の下側部分は、後述するロアー部6のロアー側壁部62を構成し、オイルパン側壁部20の上側部分は、後述するアッパー部4のアッパー側壁部42を構成している。つまり、ロアー側壁部62とアッパー側壁部42とでオイルパン側壁部20が形成されるようになっている。上記底壁部61とオイルパン側壁部20とでオイル貯留部2aが形成されている。該オイル貯留部2aはオイルパン本体2の上方に開口している。そして、エンジンEgから滴下するオイルは、オイルパン本体2の上方からオイル貯留部2aに戻されるようになっている。
【0023】
区画形成壁部3は、オイルパン本体2の上下方向略中央に配設され、断面形状が略矩形でオイルパン本体2の内側壁面に沿って延びる角筒状をなしている。該区画形成壁部3に区画形成された熱媒体通路Rは、オイル貯留部2aの後方右側から後方左側に真っ直ぐ延び、その後方左側端部から前方左側に真っ直ぐ延び、そして、その前方左側端部から前方右側に真っ直ぐ延びている。つまり熱媒体通路Rは平面視で略コ字状となっている。この熱媒体通路Rには、冷却水や空気等の熱媒体が、後方右側を上流として前方右側まで通過するようになっている。
【0024】
上記オイルパン1は、図2に示すように、オイルパン1の上側部分を構成するアッパー部4とオイルパン1の下側部分を構成するロアー部6と、上記アッパー部4とロアー部6との間において、アッパー部4に組み付けられて区画形成壁部3を形成する下側通路形成部(第2分割体)5で構成されている。
【0025】
ロアー部6は、図2乃至図5に示すように、オイルパン1を上下に分割した下側部分を構成した樹脂製の射出成形品であり、左右に延びる略矩形の板状をなす底壁部61と、該底壁部61の周縁から上方に延びるロアー側壁部62とから構成されている。上記ロアー部6の左右方向の幅は、前後方向の幅よりも長くなるように形成されている。また、ロアー側壁部62の上縁には、外方に突出する接合面部62aが形成されており、該接合面部62aの上面とアッパー側壁部42の下端面とが接合するようになっている。
【0026】
アッパー部4は、樹脂製の射出成形品であり、オイルパン本体2を上下に分割した上側に位置するアッパー側壁部42と、区画形成壁部3を上下に分割した上側に位置する上側通路形成部(第1分割体)31とが一体に形成されている。
【0027】
アッパー側壁部42は、ロアー部6の接合面部62aの外周縁から上方に真っ直ぐ延びる板状をなしており、上方に開放している。アッパー側壁部42の左右には略矩形の右側壁部42aと左側壁部42bとが略平行に配置されている。また、アッパー側壁部42の前後には、略矩形の前側壁部42cと後側壁部42dとが略平行に配置されている。アッパー側壁部42の左右方向の寸法は、前後方向の寸法よりも長く設定されている。
【0028】
また、右側壁部42aの下縁には、右方に突出するとともに右側壁部42aの前端から後端まで真っ直ぐ延びる右壁フランジ42eが形成されており、左側壁部42bの下縁には、左方に突出するとともに左側壁部42bの前端から後端まで真っ直ぐ延びる左壁フランジ42fが形成されている。上記右壁フランジ42eの右端は、ロアー部6の接合面部62aの右端と面一となっており、上記左壁フランジ42fの左端は、ロアー部6の接合面部62aの左端と面一となっている。
【0029】
さらに、右側壁部42aの上下方向略中央には、左右に貫通する連通孔h1、h1が右側壁部42aの前後方向中央を中心として対称に形成されている。この連通孔h1、h1は、図5に示すように、後述する区画形成壁部3内の熱媒体通路Rに連通している。
【0030】
また、アッパー側壁部42には、側壁部42a〜42dの上端周縁から外方に突出するフランジ部42gが形成されている。上記フランジ部42gには、上下に貫通するオイルパン取付孔Hがフランジ部42gの延びる方向に沿って複数形成されている。このオイルパン取付孔Hに締結用ボルト(図示せず)を挿通し、該締結用ボルト(図示せず)をエンジンEg下部に締結することによって、オイルパン1をエンジンEgに取り付けることが可能となっている。
【0031】
図2、図3に示すように、上側通路形成部31は、アッパー側壁部42に一体に形成された平面視で略コ字状の部分であり、熱媒体通路Rの上部を区画形成する上壁部31a、内側側壁部31b及び外側側壁部31cと、上側通路形成部31とアッパー側壁部42とを繋ぐ外側接合板部31dと、上側通路形成部31の内方に形成された内側接合板部31eとを有している。
【0032】
外側接合板部31dは、アッパー側壁部42の下端縁寄りの内側壁面から内方に略水平に延びる板状をなし、平面視で略コ字状に形成されている。上記外側接合板部31dには、上下に貫通するドレン孔h2が外側接合板部31dの延びる方向に複数形成されている。外側側壁部31cは、上記外側接合板部31dの内周縁から上方に延びる板状をなしている。上記外側側壁部31cの上端縁は、アッパー側壁部42の上下方向略中央位置となっている。また、上壁部31aは、外側側壁部31cの上端縁から内方に略水平に延びる板状をなしている。さらに、内側側壁部31bは、上壁部31aの内縁から下方に向かって延びる板状をなしている。該内側側壁部31bの下端は、外側接合板部31dと同じ位置となっている。そして、内側接合板部31eは、上記内側側壁部31bの下端縁から内方に向かって延びる板状をなしている。
【0033】
上記上壁部31a、内側側壁部31b及び外側側壁部31cによって、上側通路形成部31の上部断面は下方に開放する凹形状に形成されるようになっている。また、内側側壁部31bと外側側壁部31cとの間の距離は、上端から下端にいくにしたがって次第に広くなっている。この上壁部31a、内側側壁部31b及び外側側壁部31cで熱媒体通路Rの上側部分が形成されるようになっている。そして、上記外側接合板部31dと内側接合板部31eとの下面は、後述する下側通路形成部5との接合面となっている。
【0034】
下側通路形成部5は、図2乃至図5に示すように、平面視で略コ字状に形成されており、区画形成壁部3を上下に分割した下側を構成する樹脂製の射出成形品である。上記下側通路形成部5は、熱媒体通路Rの下部を形成する通路底壁部51a、内側側壁部51b、外側側壁部51c、上流側壁部51d及び下流側壁部51eと、アッパー部4の外側接合板部31dと接合する外側接合板部51fと、アッパー部4の内側接合板部31eと接合する内側接合板部51gとを有している。
【0035】
図4、5に示すように、外側接合板部51fは、アッパー部4の外側接合板部31dの下面に沿って延びる板状をなしている。該外側接合板部51fの外周縁は、アッパー側壁部42の内側壁面に対応する形状となっており、外側接合板部51fの内周縁は、外側接合板部31dの内周縁と同じ位置となっている。上記外側接合板部51fには、外側接合板部31dのドレン孔h2に対応するドレン孔h3が複数形成されている。これにより、外側接合板部31d上のオイルがドレン孔h2、h3を通過してロアー部6側へ移動できるようになっている。
【0036】
外側側壁部51cは、外側接合板部51fの内周縁から下方に延びる板状をなしている。該外側側壁部51cの下端縁は、ロアー部6の上下方向略中央に位置している。また、通路底壁部51aは、外側側壁部51cの下端縁から内方に略水平に延びる板状をなしている。さらに、内側側壁部51bは、通路底壁部51aの内縁から上方に向かって延びる板状をなしている。該内側側壁部51bの上端は、外側接合板部51fと同じ位置となっている。そして、内側接合板部51gは、上記内側側壁部51bの上端縁から内方に向かって延びる板状をなしており、その内縁端は、アッパー部4の内側側壁部31bの内縁端と同位置となっている。また、図2に示すように、上流側壁部51d及び下流側壁部51eは、通路底壁部51aの上流側端縁及び下流側端縁から上方に延びている。
【0037】
上記通路底壁部51aと内側側壁部51bと外側側壁部51cとで断面が上方に開放する凹状に形成されており、内側側壁部51bと外側側壁部51cとの間の距離は、下端から上端にいくにしたがって次第に広くなっている。この通路底壁部51a、内側側壁部51b、外側側壁部51c、上流側壁部51d及び下流側壁部51eで熱媒体通路Rの下側部分が形成されるようになっている。
【0038】
上記外側接合板部51f及び内側接合板部51gの上面は、上記アッパー部4の外側接合板部31d及び内側接合板部31eの下面と接合するようになっている。そして、図4乃至図5に示すように、アッパー部4に下側通路形成部5を接合させると、外側接合板部51fの下面とアッパー側壁部42の下端面とが面一となる。
【0039】
アッパー部4の上壁部31a、内側側壁部31b及び外側側壁部31cの板厚は、オイルパン本体2の板厚よりも薄く形成されている。また同様に、下側通路形成部5の通路底壁部51a、内側側壁部51b及び外側側壁部51cの板厚は、オイルパン本体2の板厚よりも薄く形成されている。これにより、熱媒体通路Rを通過する熱媒体とオイル貯留部2aに貯留するオイルとの熱交換が効率良く行われるようになる。一方、オイルパン本体2の板厚は厚く形成されているので、オイルパン1の剛性を高くすることができるようになっている。
【0040】
また、オイルパン本体2に上側通路形成部31が一体に形成され、閉断面空間である熱媒体通路Rを有する区画形成壁部3がオイルパン1に設けられるようになるので、この区画形成壁部3を利用してオイルパン1の剛性を高くすることができる。
【0041】
図4及び図5に示すように、アッパー部4の下側にロアー部6を組み付けたとき、接合面部62aの上面と、アッパー側壁部42の下端面及び外側接合板部51fの下面とが接するようになる。そして、アッパー側壁部42の下端面と接合面部62aの上面とを振動溶着することによってアッパー部4とロアー部6とを接合するようになっている。
【0042】
また、アッパー部4に下側通路形成部5を組み付けることによって、区画形成壁部3が形成され、これにより熱媒体通路Rが形成される。この熱媒体通路Rは、略矩形の断面形状をなしており、上下方向中央下寄りの位置から上方にいくにつれて通路の幅が狭くなるとともに、上下方向中央下寄りの位置から下方にいくにつれて通路の幅が狭くなる形状となっている。
【0043】
次に、オイルパン1を製造する要領について説明する。まず、アッパー部4、下側通路形成部5及びロアー部6を各々個別に成形する。そして最初にアッパー部4と下側通路形成部5とを接合する。振動溶着治具(図示せず)の内、固定治具(図示せず)にアッパー部4の下部が上向きとなるようにセットし、固定治具(図示せず)の上方に位置する可動治具(図示せず)に下側通路形成部5の上部が下向きとなるようにセットする。この状態から下側通路形成部5をアッパー部4に押し付けて可動治具をアッパー部4の左右方向に振動させる。この振動溶着により、アッパー部4の外側接合板部31d及び内側接合板部31eの下面と、下側通路形成部5の外側接合板部51f及び内側接合板部51gの上面とが溶着する。このとき、上側通路形成部31とロアー部6とで熱媒体を通過させる熱媒体通路Rをオイル貯留部2a内に区画形成する区画形成壁部3が形成される。
【0044】
次に、アッパー部4及び下側通路形成部5にロアー部6を接合する。固定治具(図示せず)にアッパー部4及び下側通路形成部5の結合部材を下側通路形成部5が上方となるようにセットし、固定治具(図示せず)の上方に位置する可動治具(図示せず)にロアー部6の上部が下向きとなるようにセットする。この状態からロアー部6をアッパー部4及び下側通路形成部5に押し付けるとともに可動治具を下側通路形成部5の左右方向に振動させる。これにより、アッパー部4のアッパー側壁部42の下端面とロアー部6の接合面部62aの上面とが溶着し、この溶着によりアッパー部4とロアー部6とが接合されオイルパン1となる。
【0045】
尚、本実施形態1では、アッパー側壁部42の下端面と接合面部62aの上面とを振動溶着により接合したが、外側接合板部51fの下面と接合面部62aの上面とを振動溶着により接合してもよいし、アッパー側壁部42の下端面及び外側接合板部51fの下面を同時に接合面部62aの上面と振動溶着させてもよい。
【0046】
次に、オイルパン1の熱媒体通路Rを通過する熱媒体の流れについて説明する。オイルパン1のオイル貯留部2aには、エンジンEg各部を循環するオイルが貯留している。オイルパン1に形成された区画形成壁部3は、オイル貯留部2a内に貯留するオイルに浸される位置となっている。オイルパン1の連通孔形成部Rを通過させる熱媒体には、例えば、吸気エアやラジエータ液といった空気や水を用いることができる。熱媒体を供給する装置(図示せず)が作動すると、後方右側の連通孔h1から熱媒体通路R内に熱媒体が供給される。熱媒体通路R内の熱媒体は、熱媒体通路Rに沿って流れて前方右側の連通孔h1から排出され、熱媒体を供給する装置(図示せず)へと戻される。このとき、上壁部31a、内側側壁部31b、外側側壁部31c、通路底壁部51a、内側側壁部51b及び外側側壁部51cの板厚をオイルパン本体2の板厚よりも薄く形成しているので、熱媒体通路Rを通過する熱媒体とオイル貯留部2aに貯留するオイルとの熱交換が効率良く行われる。尚、本実施形態1では、後方右側の連通孔h1から熱媒体通路R内に熱媒体が供給され、前方右側の連通孔h1から熱媒体が排出されるようになっているが、前方右側の連通孔h1から熱媒体通路R内に熱媒体が供給され、後方右側の連通孔h1から熱媒体が排出されるようになっていてもよい。
【0047】
次に、エンジンEgの動作時について説明する。例えば、冷間始動時ではオイル貯留部2a内に貯留するオイル温度は低いので、熱媒体通路Rに温められた熱媒体を供給するようにして、オイル貯留部2a内に溜まるオイルと熱交換させる。これにより、オイル貯留部2a内に溜まるオイル温度を早く上げることができ、例えば、冷間始動した直後においても粘度の低い潤滑性能の高い状態のオイルをエンジンEgに供給できるようになる。
【0048】
その後、オイル貯留部2a内に溜まるオイルをエンジンEg各部へ循環させることによりオイル貯留部2a内の温度が高くなり過ぎると、熱媒体通路Rに冷却された熱媒体を供給し、オイル貯留部2a内に溜まるオイルと熱交換させる。これにより、オイル貯留部2a内に溜まるオイル温度を適温に調節することができ、常時潤滑性能の高い状態のオイルをエンジンEg各部に供給できるようになる。
【0049】
以上説明したように、この実施形態1に係るオイルパン1によれば、オイルパン1に熱媒体通路Rを有する区画形成壁部3が設けられるので、この区画形成壁部3を利用してオイルパン1の剛性を高めることができる。また、オイルパン1を樹脂で成形するので成形自由度が高く、区画形成壁部3の形状をオイルパン本体2に貯留するオイルとの接触面積が増える形状に成形し易く、これにより、オイルの加熱や冷却を効率良く行うことができるようになる。
【0050】
また、区画形成壁部3で区画形成された熱媒体通路Rに熱媒体を通過させてオイル貯留部2aに溜まるオイルと熱交換させてオイルの温度を調節できるようになるので、シンプルな構成でオイルの温度を調節することができるようになる。
《発明の実施形態2》
図6及び図7は本発明の実施形態2に係るオイルパン1を示したものである。この実施形態2では、以下に述べる点が実施形態1と異なっているほかは、実施形態1と同様に構成されているので、同一構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。すなわち、この実施形態2では、下側通路形成部5の通路底壁部51aに、突条部52が形成されている。上記突条部52は、上方に向かって熱媒体通路R内に突出するとともに上側通路形成部31の内方に沿って延びており、断面が凹状で下方に開放している。突条部52は、上端がアッパー部4の上下方向略中央に位置しており、上壁部31a、内側側壁部31b、外側側壁部31cと略一定の隙間を開けて形成されている。これにより、熱媒体通路Rの断面がV字状に形成されるようになっている。
【0051】
図7に示すように、区画形成壁部3の上部には、上下に貫通する空気抜き孔h4が区画形成壁部3の延びる方向に沿って少なくとも一つ形成されている。この空気抜き孔h4から空気が抜けることによって、突条部52の下方にオイルを貯留することができるようになっている。
【0052】
したがって、この実施形態2では、実施形態1と同様の効果が得られるとともに、突条部52を設けることによって区画形成壁部3の表面積を増やすことができ、オイル貯留部2aに溜まるオイルと区画形成壁部3との接触面積が増えるので、区画形成壁部3の熱媒体通路Rを通過する熱媒体とオイルとの熱交換をさらに効率良く行うことができる。
《発明の実施形態3》
図8は、本発明の実施形態3に係るオイルパン1を示したものである。この実施形態3では、以下に述べる点が実施形態1と異なっているほかは、実施形態1と同様に構成されているので、同一構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。すなわち、この実施形態3では、区画形成壁部3の表面に凹凸面部35が形成されている。
【0053】
内側側壁部31bには、外側側壁部31c側に窪んで上下に延びる断面凹状の内側凹面部35aが熱媒体通路Rの延びる方向に複数形成されている。この内側凹面部35aは、区画形成壁部3の幅方向略中央位置まで窪んでいる。また、外側側壁部31cには、内側側壁部31b側に窪んで上下に延びる断面凹状の外側凹面部35bが熱媒体通路Rの延びる方向に複数形成されている。この外側凹面部35bは、区画形成壁部3の幅方向略中央位置まで窪んでいる。上記内側凹面部35aと外側凹面部35bとは、熱媒体通路Rの延びる方向に沿って、交互に形成されている。そして、区画形成壁部3内の熱媒体通路Rは、上流側から下流側に向けて蛇行する形状となり、内側側壁部31bと外側側壁部31cとに凹凸面部35が形成されることとなる。これにより、区画形成壁部3の表面積が増え、区画形成壁部3とオイル貯留部2aに溜まるオイルとの接触面積が増えることとなる。
【0054】
したがって、この実施形態3では、実施形態1と同様の効果が得られるとともに、区画形成壁部3の表面が凹凸形状になるので、区画形成壁部3とオイル貯留部2aに溜まるオイルとの接触面積が増え、オイル貯留部2aに溜まるオイルの加熱や冷却を効率良く行うことができる。また、区画形成壁部3の表面を凹凸形状にすることによって、オイルパン1の剛性を高くすることができる。
【0055】
尚、内側凹面部35aと外側凹面部35bとは、熱媒体通路Rの延びる方向に沿って、区画形成壁部3に交互に形成されているが、熱媒体通路Rの幅方向中央を中心として対称となるように区画形成壁部3に形成してもよい。
《発明の実施形態4》
図9は本発明の実施形態4に係るオイルパン1aを示したものである。この実施形態4では、以下に述べる点が実施形態1と異なっているほかは、実施形態1と同様に構成されているので、同一構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。すなわち、この実施形態4では、オイルパン1aが、上下方向に2分割されたアッパー部(第1本体部)7及びロアー部(第2本体部)8で構成されている。そして、オイル貯留部2aは、区画形成壁部3によって、該区画形成壁部3の内方に位置する内側貯留部2bと、区画形成壁部3の外方に位置する外側貯留部2cとからなっている。
【0056】
アッパー部7は、実施形態1のアッパー部4と同様に、アッパー側壁部42と、上側通路形成部31とで一体に形成されており、図10乃至図13に示すように、外側接合板部31dがアッパー側壁部42の下端縁に繋がっている。したがって、外側接合板部31dの下面とアッパー側壁部42の下端とが面一となっている。
【0057】
ロアー部8は、実施形態1のロアー部6と同様に、底壁部61及びロアー側壁部62を有している。そして、底壁部61には熱媒体通路Rの下部を形成する下側通路形成部(第2分割体)64が一体に形成されている。
【0058】
図9乃至図13に示すように、底壁部61には、上方に突出して上側通路形成部31に沿って延びる断面凹状で下側に開放する下側通路形成部64が形成されている。下側通路形成部64は、上側通路形成部31の下側開放部分を塞ぐ板状の通路底壁部64aと、該通路底壁部64aと底壁部61とを繋ぐ内側側壁部64b及び外側側壁部64cと、該内側側壁部64bと外側側壁部64cとの間において内側貯留部2bと外側貯留部2cとを連通させる連通孔h5を形成する橋絡部64d、64eとで構成されている。
【0059】
通路底壁部64aは、上側通路形成部31の上壁部31aと略平行に形成された平面視で略コ字状の板状の部分である。通路底壁部64aの内縁側上面が上側通路形成部31の内側接合板部31eの下面と溶着するとともに通路底壁部64aの外縁側上面が外側接合板部31dの下面と溶着する。そして、上記上側通路形成部31と通路底壁部64aとでオイル貯留部2a内に熱媒体通路Rを区画形成するようになっている。該熱媒体通路Rの断面形状は略矩形であり、上方に向かうにつれて幅方向が若干狭くなる形状となっている。
【0060】
内側側壁部64bは、通路底壁部64aの内縁から下方に真っ直ぐ延びて底壁部61に繋がる板状をなしている。また、外側側壁部64cは通路底壁部64aの外縁から下方に真っ直ぐ延びて底壁部61に繋がる板状をなしている。この通路底壁部64aと内側側壁部64bと外側側壁部64cとで構成される下側通路形成部64は、図13に示すように、下方に開放する形状となっている。
【0061】
橋絡部64dは、図11に示すように、平面視で略コ字状となっている下側通路形成部64の後方に位置する部分の右寄りに形成されている。橋絡部64dは、内側側壁部64bと外側側壁部64cとの間を繋ぐように形成されている。そして橋絡部64eには内側貯留部2bと外側貯留部2cとの間を連通させる連通孔h5が形成されている。該連通孔h5の断面は、上方に向かうにつれて幅が次第に狭くなる断面形状となっている。
【0062】
また図13に示すように、橋絡部64eは、図13に示すように、平面視で略コ字状となっている下側通路形成部64の前方に位置する部分の左寄りに形成されている。橋絡部64eは、内側側壁部64bと外側側壁部64cとを繋ぐように形成されている。そして橋絡部64dの連通孔h5と同様の形状の連通孔h6が形成されている。上記連通孔h5、h6によって、内側貯留部2b側に溜まるオイルと外側貯留部2c側に溜まるオイルとが互いに移動できるようになっている。
【0063】
したがって、この実施形態4のオイルパン1aは、実施形態1と同様の効果が得られるとともに、熱媒体通路Rの上側を構成する断面凹状の上側通路形成部31がアッパー部7に一体に形成され、熱媒体通路Rの下側を構成する断面凹状の下側通路形成部64がロアー部8に一体に形成されるので、オイルパン1aの剛性を高めることができる。また、底壁部61に断面凹状の下側通路形成部64を形成しているので、オイルパン1aの底部の剛性を高めることができる。また、アッパー部7とロアー部8とを組み立てるだけで、区画形成壁部3を有するオイルパン1aとすることができ、オイルパン1aに区画形成壁部3を簡易に設けることができるようになっている。
《発明の実施形態5》
図14及び図15は、本発明の実施形態5に係るオイルパン1aを示したものである。この実施形態5では、以下に述べる点が実施形態4と異なっているほかは、実施形態4と同様に構成されているので、同一構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。すなわち、この実施形態5では、上側通路形成部31の上壁部31aに凹部36が形成されている。上記凹部36は下方に向かって熱媒体通路R内に窪むとともに下側通路形成部64に沿って延びており、その下端面が通路底壁部64aの上面に溶着されるようになっている。したがって、区画形成壁部3には、凹部36より外方に位置する熱媒体通路R1と凹部36より内方に位置する熱媒体通路R2とが互いに平行に延びるように形成されるようになる。該熱媒体通路R1、R2の断面形状は上下に長細い略矩形状をなし、上方に向かうにつれて幅方向が若干狭くなる形状となっている。
【0064】
図15に示すように、平面視で略コ字状となっている下側通路形成部64の左側部分には、内側側壁部64bと外側側壁部64cとを繋ぐように形成された橋絡部64fが形成されており、該橋絡部64fには、橋絡部64d、64eに形成した連通孔h5、h6と同様の形状で左右に貫通する連通孔h7が形成されている。そして凹部36の底部には、上下に貫通する複数のドレン孔h8が形成されており、該ドレン孔h8は上記各連通孔h5〜h7に連通している。これにより、凹部36に溜まるオイルはドレン孔h8及び連通孔h5〜h7を介してオイル貯留部2aへと導けるようになっている。
【0065】
したがって、この実施形態5では、実施形態2と同様の効果が得られるとともに、上壁部31aに凹部36を形成することによって区画形成壁部3の表面積が増え、オイル貯留部2aに溜まるオイルと区画形成壁部3との接触面積が増えるので、区画形成壁部3の熱媒体通路Rを通過する熱媒体とオイルとの熱交換をさらに効率良く行うことができる。
《発明の実施形態6》
図16及び図17は、本発明の実施形態6に係るオイルパン1aを示したものである。この実施形態6では、以下に述べる点が実施形態5と異なっているほかは、実施形態5と同様に構成されているので、同一構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。すなわち、この実施形態6では、区画形成壁部3に溝部37が形成されていて、溝部37を介して凹部36に溜まるオイルを内側貯留部2bへと導けるようになっている。
【0066】
溝部37は平面視で略コ字状となっている上側通路形成部31の左方に位置する部分に形成されている。溝部37は、凹部36によって内外に分けられた上側通路形成部31の内側部分において、下方に窪むように形成されている。上記溝部37は、オイルパン1の前後方向略中央位置に形成されており、その形状は、前後の幅が下方にいくにつれて次第に狭くなる略V字状となっている。
【0067】
図17に示すように、下側通路形成部64は溝部37の真下が断面凹状に窪んでおり、その内方が熱媒体通路R2となっている。したがって、熱媒体通路R2を通過する熱媒体は、区画形成壁部3の溝部37が形成されている部分においては、該溝部37の下側を通過するようになっている。
【0068】
したがって、この実施形態6では、実施形態5と同様の効果が得られるとともに、オイルパン1の上方のエンジンEgから戻ってくるオイルが区画形成壁部3の凹部36に溜まったときに、溝部37によって内側貯留部2bへとオイルが導かれるようになるので、汚れたオイルが凹部36に滞ってしまうといったことを防止できる。
《発明の実施形態7》
図18は、本発明の実施形態7に係るオイルパン1aを示したものである。この実施形態7では、以下の述べる点が実施形態4と異なっているほかは、実施形態4と同様に構成されているので、同一構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。すなわち、この実施形態7では、区画形成壁部3の下側部分を構成する下側通路形成部(第2分割体)65が上方に開口する断面凹形状となっている。また、下側通路形成部65に突出板65cが一体に形成されている。さらに、上側通路形成部31に段差部31fが複数形成されている。
【0069】
下側通路形成部65は、底壁部61の一部と、外側側壁部65aと、内側側壁部65bと、突出板65cとで構成されている。外側側壁部65aは、上側通路形成部31の外側接合板部31dの内周縁寄りから下方に真っ直ぐ延びる板状をなし、底壁部61に繋がっている。該外側側壁部65aは、ロアー側壁部62から所定の隙をあけて該ロアー側壁部62に沿って延びている。外側側壁部65aの上端位置は、接合面部62aの上面と面一となっている。
【0070】
内側側壁部65bは、上側通路形成部31の内側接合板部31eの内周縁寄りから下方に真っ直ぐ延びる板状をなし、底壁部61に繋がっている。該内側側壁部65bは、外側側壁部65aから所定の距離をあけて該外側側壁部65aに沿って延びている。内側側壁部65bの上端位置は、接合面部62aの上面と同じ位置となっている。
【0071】
上記下側通路形成部65の外側側壁部65aと内側側壁部65bの板厚は、オイルパン本体2の板厚よりも薄く形成されることが好ましい。これにより、熱媒体通路Rを通過する熱媒体とオイル貯留部2aに貯留するオイルとの熱交換が効率良く行われるようになる。
【0072】
上記外側側壁部65aの上端面は外側接合板部31dの下面に溶着され、内側側壁部65bの上端面は内側接合板部31eの下面に溶着されるようになっている。そして、上側通路形成部31、外側側壁部65a、内側側壁部65b及び底壁部61でオイル貯留部2a内に熱媒体通路Rを区画形成するようになっている。これにより熱媒体通路Rの断面形状は、オイルパン本体2の上下方向略中央位置から底壁部61まで延びる略矩形状となる。したがって、実施形態7のオイルパン1aは、実施形態4〜6のオイルパン1aよりも熱媒体通路Rを通過する熱媒体の流量を多くすることができ、オイル貯留部2aに溜まるオイルとの熱交換をさらに効率良く行うことができる。
【0073】
図18に示すように、下側通路形成部65には、内側側壁部65bの表面に突出板65cが一体に形成されている。該突出板65cは複数設けられており、内側側壁部65bの表面から区画形成壁部3の外方に突出し上下に延びる板状をなしている。突出板65cの上端位置は接合面部62aの上面と同じ位置となっている。これにより、突出板65cによって区画形成壁部3の表面積が増えるので、オイル貯留部2aに溜まるオイルの加熱や冷却をさらに効率良く行うことができるようになる。また、区画形成壁部3に一体に形成した突出板65cを利用して、さらにオイルパン1aの剛性を高くすることができる。
【0074】
尚、突出板65cは板厚を薄く形成した外側側壁部65a及び内側側壁部65bを補強する役割を担っており、アッパー部7とロアー部8との振動溶着時においても、上記突出板65cによって外側側壁部65a及び内側側壁部65bが底壁部61から外れてしまうのを防げるようになっている。
【0075】
また、突出板65cは、区画形成壁部3の内方の熱媒体通路R側に向かって突出させるようにしてもよい。このとき、外側側壁部65aから内側側壁部65bに向かって突出する突出板65cと、内側側壁部65bから外側側壁部65aに向かって突出する突出板65cとを熱媒体通路Rの延びる方向に沿って交互に形成するのが好ましい。これにより、熱媒体通路Rが上流側から下流側に向けて蛇行するようになり、突出板65cと熱媒体との接触面積が増え、オイル貯留部2aに溜まるオイルと熱媒体との熱交換を効率良く行うことができるようになる。
【0076】
また、突出板65cは、区画形成壁部3の外方及び内方に突出させるようにしてもよい。また、下側通路形成部65に突出板65cを一体に形成せずに、突出板65cを下側通路形成部65に後から組み付けるようにしてもよい。また、熱伝導性をよくするために突出板65cを金属製のものとし、下側通路形成部65の形成時に一体に組み付けるようにしてもよいし、下側通路形成部65に後から組み付けるようにしてもよい。
【0077】
図18に示すように、上側通路形成部31の上壁部31aには、下方に窪む段差部31fが複数形成されている。段差部31fの上面は、上側通路形成部31の上下方向略中央位置となるように形成されている。この複数の段差部31fによって、上壁部31aに凹凸面部39が形成される。これにより、区画形成壁部3と、オイル貯留部2aに溜まるオイルとの接触面積が増え、オイル貯留部2aに溜まるオイルの加熱や冷却を効率良く行うことができるようになる。また、区画形成壁部3の表面を凹凸形状にすることによって、さらにオイルパン1の剛性を高くすることができる。
【0078】
尚、実施形態1、2では、区画形成壁部3内に熱媒体を通してオイル貯留部2a内のオイルの温度を調節するようにしたが、区画形成壁部3内の閉断面空間に電熱線等を配設することによりオイルの温度を調節する構造としてもよい。
【0079】
また、熱伝導性をよくするとともに剛性を高くするために、樹脂の中に金属粉を混入させてオイルパン1、1aを形成するようにしてもよい。
【0080】
尚、本発明は、オートマチックトランスミッション等の動力機械のオイルパンとして適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、例えば、自動車における動力装置の内部を循環するオイルを貯留するオイルパン構造に適している。
【符号の説明】
【0082】
1 オイルパン
1a オイルパン
2 オイルパン本体
2a オイル貯留部
3 区画形成壁部
5 下側通路形成部(第2分割体)
7 アッパー部(第1本体部)
8 ロアー部(第2本体部)
31 上側通路形成部(第1分割体)
35 凹凸面部
39 凹凸面部
64 下側通路形成部(第2分割体)
65 下側通路形成部(第2分割体)
65c 突出板
R 熱媒体通路(閉断面空間)
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車における動力装置の内部を循環するオイルを貯留するオイルパン構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、動力装置には、動力装置各部を潤滑又は冷却するためにオイルを貯留するオイルパンが設けられている。オイルパン内に貯留されたオイルは、ストレーナを介してオイルポンプによって吸い上げられ、動力装置各部を循環し、その後オイルパン内に再び戻るようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1のオイルパンは、樹脂材を成形してなるものであり、鋼板製のものに比べて軽量化を図ることができるようになっている。
【0004】
また、動力装置各部を循環するオイルの温度が上がり過ぎてオイルが劣化してしまうのを防止するために、例えば特許文献2のオイルパンでは、オイルパン内部に熱交換部を配設し、オイルパンの側壁等に熱交換部の一部であるパイプを取り付けるための貫通孔を加工している。そして、上記熱交換部にパイプを介して冷却された熱媒体を通過させて、オイルパンに貯留するオイルと冷却された熱媒体とを熱交換させることによりオイルパンに貯留するオイルの温度を下げることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−283617号公報
【特許文献2】特開2005−48600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のように樹脂材を成形してなるオイルパンは、鋼板製のものに比べて剛性不足となる懸念がある。また、樹脂材は熱伝導率が低いので、樹脂材を成形してなるオイルパンは保温性が高く、鋼板製のオイルパンに比べてオイルパン内に貯留するオイルの温度が高くなってしまう懸念がある。これを回避するために、特許文献2のオイルパンのように、オイルパン内に熱交換部を組み付けることでオイルパン内のオイル温度を効率良く調整しようとすると、熱交換部を取り付けるためにオイルパンの側壁等に熱交換部の一部であるパイプを取り付けるための貫通孔を加工しなければならず、さらにオイルパンの剛性が低下してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、樹脂製のオイルパンにおいて、高い剛性を有するとともにオイルパン内に貯留するオイルの温度を効率良く調節できるオイルパン構造とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明では、動力装置各部を循環するオイルを貯留するオイル貯留部を有するオイルパン本体と、上記オイル貯留部に貯留するオイルの温度調節手段を配設、又は、通過させる閉断面空間を上記オイル貯留部内に区画形成する区画形成壁部とを有し、上記区画形成壁部は、分割された第1分割体と第2分割体とを組み合わせて構成され、上記第1分割体と上記第2分割体とのいずれか一方が上記オイルパン本体に形成される構成とした。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、オイルパン本体は、分割された第1本体部と第2本体部とを組み合わせて構成され、上記第1本体部と第1分割体とが一体に形成されるとともに上記第2本体部と第2分割体とが一体に形成される構成とした。
【0010】
第3の発明では、第1又は2の発明において、温度調節手段はオイルと熱交換する熱媒体であり、閉断面空間は熱媒体を通過させる熱媒体通路である構成とした。
【0011】
第4の発明では、第1から3のいずれか1つの発明において、区画形成壁部の表面には凹凸面部が形成されている構成とした。
【0012】
第5の発明では、第1から4のいずれか1つの発明において、区画形成壁部には、該区画形成壁部の外方及び/又は内方に突出する突出板が形成されている構成とした。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、オイルパンに閉断面空間を有する区画形成壁部が設けられるので、この区画形成壁部を利用してオイルパンの剛性を高めることができる。また、オイルパンを樹脂で成形するので成形自由度が高く、区画形成壁部の形状をオイルパン本体に貯留するオイルとの接触面積が増える形状に成形し易くなるので、オイルの加熱や冷却を効率良く行うことができるようになる。
【0014】
第2の発明によれば、閉断面空間を形成する区画形成壁部の第1分割体がオイルパン本体の第1本体部に一体に形成され、閉断面空間を形成する区画形成壁部の第2分割体がオイルパン本体の第2本体部に一体に形成されているので、オイルパンの剛性を高めることができる。また、第1本体部と第2本体部とを組み付けるだけで第1分割体と第2分割体とから区画形成壁部が形成されるようになり、オイルパンに区画形成壁部を簡易に設けることができる。
【0015】
第3の発明によれば、区画形成壁部で区画形成された熱媒体通路に熱媒体を通過させてオイル貯留部に溜まるオイルと熱交換させてオイルの温度を調節できるようになるので、シンプルな構成でオイルの温度を調節することができるようになる。
【0016】
第4の発明によれば、区画形成壁部の表面が凹凸形状になるので、区画形成壁部とオイル貯留部に溜まるオイルとの接触面積が増え、さらにオイル貯留部に溜まるオイルの加熱や冷却を効率良く行うことができるようになる。また、区画形成壁部の表面を凹凸形状にすることによって、さらに剛性の高いオイルパン構造とすることができる。
【0017】
第5の発明によれば、区画形成壁部に突出板を設けることにより、区画形成壁部の表面積が増え、オイル貯留部に溜まるオイルの加熱や冷却をさらに効率良く行うことができるようになる。また、区画形成壁部に形成した突出板を利用して、さらに剛性の高いオイルパン構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のオイルパンを示す斜視図である。
【図2】本発明のオイルパンの分解斜視図である。
【図3】本発明のオイルパンの図1のA−A線から右側部分を示す斜視図である。
【図4】図1のA−A線における断面図である。
【図5】図1のB−B線における断面図である。
【図6】実施形態2における図4相当図である。
【図7】実施形態2における図5相当図である。
【図8】実施形態3の図1のC−C線における断面図である。
【図9】実施形態4における図3相当図である。
【図10】実施形態4における図1のD−D線の断面図である。
【図11】図10のE−E線における断面図である。
【図12】図11のF−F線における断面図である。
【図13】図12のG−G線における断面図である。
【図14】実施形態5における図10相当図である。
【図15】実施形態5における図11相当図である。
【図16】実施形態6における図10相当図である。
【図17】実施形態6における図11相当図である。
【図18】実施形態7における図9相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1のオイルパン1を示したものである。上記オイルパン1は、自動車の前部に設けられたエンジンルームに搭載されるエンジン(動力装置)Egの下部に取り付けられており、オイルパン1内に溜められたオイルは、オイルパン1内に配設されたストレーナ(図示せず)から吸入され、エンジンEg各部に供給されて循環した後、オイルパン1の上部からオイルパン1内に戻るようになっている。尚エンジンルームに搭載されたエンジンEgの向きは、クランク軸が車両左右方向に延びる向きとなっている。
【0020】
この実施形態の説明では、説明の便宜を図るために、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとする。
【0021】
図1乃至図3に示すように、オイルパン1は、略直方体の形状をなす樹脂製の射出成形品であり、オイルを貯留するオイル貯留部2aを有するオイルパン本体2と、オイル貯留部2aに溜まるオイルと熱交換する冷却水や空気等の熱媒体を通過させる熱媒体通路Rをオイル貯留部2a内に区画形成する区画形成壁部3とから構成されている。尚、本発明の温度調節手段とは、冷却水や空気等の熱媒体や、電熱線等のことを言う。
【0022】
オイルパン本体2は、底壁部61と、該底壁部61の周縁から立ち上がるオイルパン側壁部20とを有している。オイルパン側壁部20の下側部分は、後述するロアー部6のロアー側壁部62を構成し、オイルパン側壁部20の上側部分は、後述するアッパー部4のアッパー側壁部42を構成している。つまり、ロアー側壁部62とアッパー側壁部42とでオイルパン側壁部20が形成されるようになっている。上記底壁部61とオイルパン側壁部20とでオイル貯留部2aが形成されている。該オイル貯留部2aはオイルパン本体2の上方に開口している。そして、エンジンEgから滴下するオイルは、オイルパン本体2の上方からオイル貯留部2aに戻されるようになっている。
【0023】
区画形成壁部3は、オイルパン本体2の上下方向略中央に配設され、断面形状が略矩形でオイルパン本体2の内側壁面に沿って延びる角筒状をなしている。該区画形成壁部3に区画形成された熱媒体通路Rは、オイル貯留部2aの後方右側から後方左側に真っ直ぐ延び、その後方左側端部から前方左側に真っ直ぐ延び、そして、その前方左側端部から前方右側に真っ直ぐ延びている。つまり熱媒体通路Rは平面視で略コ字状となっている。この熱媒体通路Rには、冷却水や空気等の熱媒体が、後方右側を上流として前方右側まで通過するようになっている。
【0024】
上記オイルパン1は、図2に示すように、オイルパン1の上側部分を構成するアッパー部4とオイルパン1の下側部分を構成するロアー部6と、上記アッパー部4とロアー部6との間において、アッパー部4に組み付けられて区画形成壁部3を形成する下側通路形成部(第2分割体)5で構成されている。
【0025】
ロアー部6は、図2乃至図5に示すように、オイルパン1を上下に分割した下側部分を構成した樹脂製の射出成形品であり、左右に延びる略矩形の板状をなす底壁部61と、該底壁部61の周縁から上方に延びるロアー側壁部62とから構成されている。上記ロアー部6の左右方向の幅は、前後方向の幅よりも長くなるように形成されている。また、ロアー側壁部62の上縁には、外方に突出する接合面部62aが形成されており、該接合面部62aの上面とアッパー側壁部42の下端面とが接合するようになっている。
【0026】
アッパー部4は、樹脂製の射出成形品であり、オイルパン本体2を上下に分割した上側に位置するアッパー側壁部42と、区画形成壁部3を上下に分割した上側に位置する上側通路形成部(第1分割体)31とが一体に形成されている。
【0027】
アッパー側壁部42は、ロアー部6の接合面部62aの外周縁から上方に真っ直ぐ延びる板状をなしており、上方に開放している。アッパー側壁部42の左右には略矩形の右側壁部42aと左側壁部42bとが略平行に配置されている。また、アッパー側壁部42の前後には、略矩形の前側壁部42cと後側壁部42dとが略平行に配置されている。アッパー側壁部42の左右方向の寸法は、前後方向の寸法よりも長く設定されている。
【0028】
また、右側壁部42aの下縁には、右方に突出するとともに右側壁部42aの前端から後端まで真っ直ぐ延びる右壁フランジ42eが形成されており、左側壁部42bの下縁には、左方に突出するとともに左側壁部42bの前端から後端まで真っ直ぐ延びる左壁フランジ42fが形成されている。上記右壁フランジ42eの右端は、ロアー部6の接合面部62aの右端と面一となっており、上記左壁フランジ42fの左端は、ロアー部6の接合面部62aの左端と面一となっている。
【0029】
さらに、右側壁部42aの上下方向略中央には、左右に貫通する連通孔h1、h1が右側壁部42aの前後方向中央を中心として対称に形成されている。この連通孔h1、h1は、図5に示すように、後述する区画形成壁部3内の熱媒体通路Rに連通している。
【0030】
また、アッパー側壁部42には、側壁部42a〜42dの上端周縁から外方に突出するフランジ部42gが形成されている。上記フランジ部42gには、上下に貫通するオイルパン取付孔Hがフランジ部42gの延びる方向に沿って複数形成されている。このオイルパン取付孔Hに締結用ボルト(図示せず)を挿通し、該締結用ボルト(図示せず)をエンジンEg下部に締結することによって、オイルパン1をエンジンEgに取り付けることが可能となっている。
【0031】
図2、図3に示すように、上側通路形成部31は、アッパー側壁部42に一体に形成された平面視で略コ字状の部分であり、熱媒体通路Rの上部を区画形成する上壁部31a、内側側壁部31b及び外側側壁部31cと、上側通路形成部31とアッパー側壁部42とを繋ぐ外側接合板部31dと、上側通路形成部31の内方に形成された内側接合板部31eとを有している。
【0032】
外側接合板部31dは、アッパー側壁部42の下端縁寄りの内側壁面から内方に略水平に延びる板状をなし、平面視で略コ字状に形成されている。上記外側接合板部31dには、上下に貫通するドレン孔h2が外側接合板部31dの延びる方向に複数形成されている。外側側壁部31cは、上記外側接合板部31dの内周縁から上方に延びる板状をなしている。上記外側側壁部31cの上端縁は、アッパー側壁部42の上下方向略中央位置となっている。また、上壁部31aは、外側側壁部31cの上端縁から内方に略水平に延びる板状をなしている。さらに、内側側壁部31bは、上壁部31aの内縁から下方に向かって延びる板状をなしている。該内側側壁部31bの下端は、外側接合板部31dと同じ位置となっている。そして、内側接合板部31eは、上記内側側壁部31bの下端縁から内方に向かって延びる板状をなしている。
【0033】
上記上壁部31a、内側側壁部31b及び外側側壁部31cによって、上側通路形成部31の上部断面は下方に開放する凹形状に形成されるようになっている。また、内側側壁部31bと外側側壁部31cとの間の距離は、上端から下端にいくにしたがって次第に広くなっている。この上壁部31a、内側側壁部31b及び外側側壁部31cで熱媒体通路Rの上側部分が形成されるようになっている。そして、上記外側接合板部31dと内側接合板部31eとの下面は、後述する下側通路形成部5との接合面となっている。
【0034】
下側通路形成部5は、図2乃至図5に示すように、平面視で略コ字状に形成されており、区画形成壁部3を上下に分割した下側を構成する樹脂製の射出成形品である。上記下側通路形成部5は、熱媒体通路Rの下部を形成する通路底壁部51a、内側側壁部51b、外側側壁部51c、上流側壁部51d及び下流側壁部51eと、アッパー部4の外側接合板部31dと接合する外側接合板部51fと、アッパー部4の内側接合板部31eと接合する内側接合板部51gとを有している。
【0035】
図4、5に示すように、外側接合板部51fは、アッパー部4の外側接合板部31dの下面に沿って延びる板状をなしている。該外側接合板部51fの外周縁は、アッパー側壁部42の内側壁面に対応する形状となっており、外側接合板部51fの内周縁は、外側接合板部31dの内周縁と同じ位置となっている。上記外側接合板部51fには、外側接合板部31dのドレン孔h2に対応するドレン孔h3が複数形成されている。これにより、外側接合板部31d上のオイルがドレン孔h2、h3を通過してロアー部6側へ移動できるようになっている。
【0036】
外側側壁部51cは、外側接合板部51fの内周縁から下方に延びる板状をなしている。該外側側壁部51cの下端縁は、ロアー部6の上下方向略中央に位置している。また、通路底壁部51aは、外側側壁部51cの下端縁から内方に略水平に延びる板状をなしている。さらに、内側側壁部51bは、通路底壁部51aの内縁から上方に向かって延びる板状をなしている。該内側側壁部51bの上端は、外側接合板部51fと同じ位置となっている。そして、内側接合板部51gは、上記内側側壁部51bの上端縁から内方に向かって延びる板状をなしており、その内縁端は、アッパー部4の内側側壁部31bの内縁端と同位置となっている。また、図2に示すように、上流側壁部51d及び下流側壁部51eは、通路底壁部51aの上流側端縁及び下流側端縁から上方に延びている。
【0037】
上記通路底壁部51aと内側側壁部51bと外側側壁部51cとで断面が上方に開放する凹状に形成されており、内側側壁部51bと外側側壁部51cとの間の距離は、下端から上端にいくにしたがって次第に広くなっている。この通路底壁部51a、内側側壁部51b、外側側壁部51c、上流側壁部51d及び下流側壁部51eで熱媒体通路Rの下側部分が形成されるようになっている。
【0038】
上記外側接合板部51f及び内側接合板部51gの上面は、上記アッパー部4の外側接合板部31d及び内側接合板部31eの下面と接合するようになっている。そして、図4乃至図5に示すように、アッパー部4に下側通路形成部5を接合させると、外側接合板部51fの下面とアッパー側壁部42の下端面とが面一となる。
【0039】
アッパー部4の上壁部31a、内側側壁部31b及び外側側壁部31cの板厚は、オイルパン本体2の板厚よりも薄く形成されている。また同様に、下側通路形成部5の通路底壁部51a、内側側壁部51b及び外側側壁部51cの板厚は、オイルパン本体2の板厚よりも薄く形成されている。これにより、熱媒体通路Rを通過する熱媒体とオイル貯留部2aに貯留するオイルとの熱交換が効率良く行われるようになる。一方、オイルパン本体2の板厚は厚く形成されているので、オイルパン1の剛性を高くすることができるようになっている。
【0040】
また、オイルパン本体2に上側通路形成部31が一体に形成され、閉断面空間である熱媒体通路Rを有する区画形成壁部3がオイルパン1に設けられるようになるので、この区画形成壁部3を利用してオイルパン1の剛性を高くすることができる。
【0041】
図4及び図5に示すように、アッパー部4の下側にロアー部6を組み付けたとき、接合面部62aの上面と、アッパー側壁部42の下端面及び外側接合板部51fの下面とが接するようになる。そして、アッパー側壁部42の下端面と接合面部62aの上面とを振動溶着することによってアッパー部4とロアー部6とを接合するようになっている。
【0042】
また、アッパー部4に下側通路形成部5を組み付けることによって、区画形成壁部3が形成され、これにより熱媒体通路Rが形成される。この熱媒体通路Rは、略矩形の断面形状をなしており、上下方向中央下寄りの位置から上方にいくにつれて通路の幅が狭くなるとともに、上下方向中央下寄りの位置から下方にいくにつれて通路の幅が狭くなる形状となっている。
【0043】
次に、オイルパン1を製造する要領について説明する。まず、アッパー部4、下側通路形成部5及びロアー部6を各々個別に成形する。そして最初にアッパー部4と下側通路形成部5とを接合する。振動溶着治具(図示せず)の内、固定治具(図示せず)にアッパー部4の下部が上向きとなるようにセットし、固定治具(図示せず)の上方に位置する可動治具(図示せず)に下側通路形成部5の上部が下向きとなるようにセットする。この状態から下側通路形成部5をアッパー部4に押し付けて可動治具をアッパー部4の左右方向に振動させる。この振動溶着により、アッパー部4の外側接合板部31d及び内側接合板部31eの下面と、下側通路形成部5の外側接合板部51f及び内側接合板部51gの上面とが溶着する。このとき、上側通路形成部31とロアー部6とで熱媒体を通過させる熱媒体通路Rをオイル貯留部2a内に区画形成する区画形成壁部3が形成される。
【0044】
次に、アッパー部4及び下側通路形成部5にロアー部6を接合する。固定治具(図示せず)にアッパー部4及び下側通路形成部5の結合部材を下側通路形成部5が上方となるようにセットし、固定治具(図示せず)の上方に位置する可動治具(図示せず)にロアー部6の上部が下向きとなるようにセットする。この状態からロアー部6をアッパー部4及び下側通路形成部5に押し付けるとともに可動治具を下側通路形成部5の左右方向に振動させる。これにより、アッパー部4のアッパー側壁部42の下端面とロアー部6の接合面部62aの上面とが溶着し、この溶着によりアッパー部4とロアー部6とが接合されオイルパン1となる。
【0045】
尚、本実施形態1では、アッパー側壁部42の下端面と接合面部62aの上面とを振動溶着により接合したが、外側接合板部51fの下面と接合面部62aの上面とを振動溶着により接合してもよいし、アッパー側壁部42の下端面及び外側接合板部51fの下面を同時に接合面部62aの上面と振動溶着させてもよい。
【0046】
次に、オイルパン1の熱媒体通路Rを通過する熱媒体の流れについて説明する。オイルパン1のオイル貯留部2aには、エンジンEg各部を循環するオイルが貯留している。オイルパン1に形成された区画形成壁部3は、オイル貯留部2a内に貯留するオイルに浸される位置となっている。オイルパン1の連通孔形成部Rを通過させる熱媒体には、例えば、吸気エアやラジエータ液といった空気や水を用いることができる。熱媒体を供給する装置(図示せず)が作動すると、後方右側の連通孔h1から熱媒体通路R内に熱媒体が供給される。熱媒体通路R内の熱媒体は、熱媒体通路Rに沿って流れて前方右側の連通孔h1から排出され、熱媒体を供給する装置(図示せず)へと戻される。このとき、上壁部31a、内側側壁部31b、外側側壁部31c、通路底壁部51a、内側側壁部51b及び外側側壁部51cの板厚をオイルパン本体2の板厚よりも薄く形成しているので、熱媒体通路Rを通過する熱媒体とオイル貯留部2aに貯留するオイルとの熱交換が効率良く行われる。尚、本実施形態1では、後方右側の連通孔h1から熱媒体通路R内に熱媒体が供給され、前方右側の連通孔h1から熱媒体が排出されるようになっているが、前方右側の連通孔h1から熱媒体通路R内に熱媒体が供給され、後方右側の連通孔h1から熱媒体が排出されるようになっていてもよい。
【0047】
次に、エンジンEgの動作時について説明する。例えば、冷間始動時ではオイル貯留部2a内に貯留するオイル温度は低いので、熱媒体通路Rに温められた熱媒体を供給するようにして、オイル貯留部2a内に溜まるオイルと熱交換させる。これにより、オイル貯留部2a内に溜まるオイル温度を早く上げることができ、例えば、冷間始動した直後においても粘度の低い潤滑性能の高い状態のオイルをエンジンEgに供給できるようになる。
【0048】
その後、オイル貯留部2a内に溜まるオイルをエンジンEg各部へ循環させることによりオイル貯留部2a内の温度が高くなり過ぎると、熱媒体通路Rに冷却された熱媒体を供給し、オイル貯留部2a内に溜まるオイルと熱交換させる。これにより、オイル貯留部2a内に溜まるオイル温度を適温に調節することができ、常時潤滑性能の高い状態のオイルをエンジンEg各部に供給できるようになる。
【0049】
以上説明したように、この実施形態1に係るオイルパン1によれば、オイルパン1に熱媒体通路Rを有する区画形成壁部3が設けられるので、この区画形成壁部3を利用してオイルパン1の剛性を高めることができる。また、オイルパン1を樹脂で成形するので成形自由度が高く、区画形成壁部3の形状をオイルパン本体2に貯留するオイルとの接触面積が増える形状に成形し易く、これにより、オイルの加熱や冷却を効率良く行うことができるようになる。
【0050】
また、区画形成壁部3で区画形成された熱媒体通路Rに熱媒体を通過させてオイル貯留部2aに溜まるオイルと熱交換させてオイルの温度を調節できるようになるので、シンプルな構成でオイルの温度を調節することができるようになる。
《発明の実施形態2》
図6及び図7は本発明の実施形態2に係るオイルパン1を示したものである。この実施形態2では、以下に述べる点が実施形態1と異なっているほかは、実施形態1と同様に構成されているので、同一構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。すなわち、この実施形態2では、下側通路形成部5の通路底壁部51aに、突条部52が形成されている。上記突条部52は、上方に向かって熱媒体通路R内に突出するとともに上側通路形成部31の内方に沿って延びており、断面が凹状で下方に開放している。突条部52は、上端がアッパー部4の上下方向略中央に位置しており、上壁部31a、内側側壁部31b、外側側壁部31cと略一定の隙間を開けて形成されている。これにより、熱媒体通路Rの断面がV字状に形成されるようになっている。
【0051】
図7に示すように、区画形成壁部3の上部には、上下に貫通する空気抜き孔h4が区画形成壁部3の延びる方向に沿って少なくとも一つ形成されている。この空気抜き孔h4から空気が抜けることによって、突条部52の下方にオイルを貯留することができるようになっている。
【0052】
したがって、この実施形態2では、実施形態1と同様の効果が得られるとともに、突条部52を設けることによって区画形成壁部3の表面積を増やすことができ、オイル貯留部2aに溜まるオイルと区画形成壁部3との接触面積が増えるので、区画形成壁部3の熱媒体通路Rを通過する熱媒体とオイルとの熱交換をさらに効率良く行うことができる。
《発明の実施形態3》
図8は、本発明の実施形態3に係るオイルパン1を示したものである。この実施形態3では、以下に述べる点が実施形態1と異なっているほかは、実施形態1と同様に構成されているので、同一構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。すなわち、この実施形態3では、区画形成壁部3の表面に凹凸面部35が形成されている。
【0053】
内側側壁部31bには、外側側壁部31c側に窪んで上下に延びる断面凹状の内側凹面部35aが熱媒体通路Rの延びる方向に複数形成されている。この内側凹面部35aは、区画形成壁部3の幅方向略中央位置まで窪んでいる。また、外側側壁部31cには、内側側壁部31b側に窪んで上下に延びる断面凹状の外側凹面部35bが熱媒体通路Rの延びる方向に複数形成されている。この外側凹面部35bは、区画形成壁部3の幅方向略中央位置まで窪んでいる。上記内側凹面部35aと外側凹面部35bとは、熱媒体通路Rの延びる方向に沿って、交互に形成されている。そして、区画形成壁部3内の熱媒体通路Rは、上流側から下流側に向けて蛇行する形状となり、内側側壁部31bと外側側壁部31cとに凹凸面部35が形成されることとなる。これにより、区画形成壁部3の表面積が増え、区画形成壁部3とオイル貯留部2aに溜まるオイルとの接触面積が増えることとなる。
【0054】
したがって、この実施形態3では、実施形態1と同様の効果が得られるとともに、区画形成壁部3の表面が凹凸形状になるので、区画形成壁部3とオイル貯留部2aに溜まるオイルとの接触面積が増え、オイル貯留部2aに溜まるオイルの加熱や冷却を効率良く行うことができる。また、区画形成壁部3の表面を凹凸形状にすることによって、オイルパン1の剛性を高くすることができる。
【0055】
尚、内側凹面部35aと外側凹面部35bとは、熱媒体通路Rの延びる方向に沿って、区画形成壁部3に交互に形成されているが、熱媒体通路Rの幅方向中央を中心として対称となるように区画形成壁部3に形成してもよい。
《発明の実施形態4》
図9は本発明の実施形態4に係るオイルパン1aを示したものである。この実施形態4では、以下に述べる点が実施形態1と異なっているほかは、実施形態1と同様に構成されているので、同一構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。すなわち、この実施形態4では、オイルパン1aが、上下方向に2分割されたアッパー部(第1本体部)7及びロアー部(第2本体部)8で構成されている。そして、オイル貯留部2aは、区画形成壁部3によって、該区画形成壁部3の内方に位置する内側貯留部2bと、区画形成壁部3の外方に位置する外側貯留部2cとからなっている。
【0056】
アッパー部7は、実施形態1のアッパー部4と同様に、アッパー側壁部42と、上側通路形成部31とで一体に形成されており、図10乃至図13に示すように、外側接合板部31dがアッパー側壁部42の下端縁に繋がっている。したがって、外側接合板部31dの下面とアッパー側壁部42の下端とが面一となっている。
【0057】
ロアー部8は、実施形態1のロアー部6と同様に、底壁部61及びロアー側壁部62を有している。そして、底壁部61には熱媒体通路Rの下部を形成する下側通路形成部(第2分割体)64が一体に形成されている。
【0058】
図9乃至図13に示すように、底壁部61には、上方に突出して上側通路形成部31に沿って延びる断面凹状で下側に開放する下側通路形成部64が形成されている。下側通路形成部64は、上側通路形成部31の下側開放部分を塞ぐ板状の通路底壁部64aと、該通路底壁部64aと底壁部61とを繋ぐ内側側壁部64b及び外側側壁部64cと、該内側側壁部64bと外側側壁部64cとの間において内側貯留部2bと外側貯留部2cとを連通させる連通孔h5を形成する橋絡部64d、64eとで構成されている。
【0059】
通路底壁部64aは、上側通路形成部31の上壁部31aと略平行に形成された平面視で略コ字状の板状の部分である。通路底壁部64aの内縁側上面が上側通路形成部31の内側接合板部31eの下面と溶着するとともに通路底壁部64aの外縁側上面が外側接合板部31dの下面と溶着する。そして、上記上側通路形成部31と通路底壁部64aとでオイル貯留部2a内に熱媒体通路Rを区画形成するようになっている。該熱媒体通路Rの断面形状は略矩形であり、上方に向かうにつれて幅方向が若干狭くなる形状となっている。
【0060】
内側側壁部64bは、通路底壁部64aの内縁から下方に真っ直ぐ延びて底壁部61に繋がる板状をなしている。また、外側側壁部64cは通路底壁部64aの外縁から下方に真っ直ぐ延びて底壁部61に繋がる板状をなしている。この通路底壁部64aと内側側壁部64bと外側側壁部64cとで構成される下側通路形成部64は、図13に示すように、下方に開放する形状となっている。
【0061】
橋絡部64dは、図11に示すように、平面視で略コ字状となっている下側通路形成部64の後方に位置する部分の右寄りに形成されている。橋絡部64dは、内側側壁部64bと外側側壁部64cとの間を繋ぐように形成されている。そして橋絡部64eには内側貯留部2bと外側貯留部2cとの間を連通させる連通孔h5が形成されている。該連通孔h5の断面は、上方に向かうにつれて幅が次第に狭くなる断面形状となっている。
【0062】
また図13に示すように、橋絡部64eは、図13に示すように、平面視で略コ字状となっている下側通路形成部64の前方に位置する部分の左寄りに形成されている。橋絡部64eは、内側側壁部64bと外側側壁部64cとを繋ぐように形成されている。そして橋絡部64dの連通孔h5と同様の形状の連通孔h6が形成されている。上記連通孔h5、h6によって、内側貯留部2b側に溜まるオイルと外側貯留部2c側に溜まるオイルとが互いに移動できるようになっている。
【0063】
したがって、この実施形態4のオイルパン1aは、実施形態1と同様の効果が得られるとともに、熱媒体通路Rの上側を構成する断面凹状の上側通路形成部31がアッパー部7に一体に形成され、熱媒体通路Rの下側を構成する断面凹状の下側通路形成部64がロアー部8に一体に形成されるので、オイルパン1aの剛性を高めることができる。また、底壁部61に断面凹状の下側通路形成部64を形成しているので、オイルパン1aの底部の剛性を高めることができる。また、アッパー部7とロアー部8とを組み立てるだけで、区画形成壁部3を有するオイルパン1aとすることができ、オイルパン1aに区画形成壁部3を簡易に設けることができるようになっている。
《発明の実施形態5》
図14及び図15は、本発明の実施形態5に係るオイルパン1aを示したものである。この実施形態5では、以下に述べる点が実施形態4と異なっているほかは、実施形態4と同様に構成されているので、同一構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。すなわち、この実施形態5では、上側通路形成部31の上壁部31aに凹部36が形成されている。上記凹部36は下方に向かって熱媒体通路R内に窪むとともに下側通路形成部64に沿って延びており、その下端面が通路底壁部64aの上面に溶着されるようになっている。したがって、区画形成壁部3には、凹部36より外方に位置する熱媒体通路R1と凹部36より内方に位置する熱媒体通路R2とが互いに平行に延びるように形成されるようになる。該熱媒体通路R1、R2の断面形状は上下に長細い略矩形状をなし、上方に向かうにつれて幅方向が若干狭くなる形状となっている。
【0064】
図15に示すように、平面視で略コ字状となっている下側通路形成部64の左側部分には、内側側壁部64bと外側側壁部64cとを繋ぐように形成された橋絡部64fが形成されており、該橋絡部64fには、橋絡部64d、64eに形成した連通孔h5、h6と同様の形状で左右に貫通する連通孔h7が形成されている。そして凹部36の底部には、上下に貫通する複数のドレン孔h8が形成されており、該ドレン孔h8は上記各連通孔h5〜h7に連通している。これにより、凹部36に溜まるオイルはドレン孔h8及び連通孔h5〜h7を介してオイル貯留部2aへと導けるようになっている。
【0065】
したがって、この実施形態5では、実施形態2と同様の効果が得られるとともに、上壁部31aに凹部36を形成することによって区画形成壁部3の表面積が増え、オイル貯留部2aに溜まるオイルと区画形成壁部3との接触面積が増えるので、区画形成壁部3の熱媒体通路Rを通過する熱媒体とオイルとの熱交換をさらに効率良く行うことができる。
《発明の実施形態6》
図16及び図17は、本発明の実施形態6に係るオイルパン1aを示したものである。この実施形態6では、以下に述べる点が実施形態5と異なっているほかは、実施形態5と同様に構成されているので、同一構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。すなわち、この実施形態6では、区画形成壁部3に溝部37が形成されていて、溝部37を介して凹部36に溜まるオイルを内側貯留部2bへと導けるようになっている。
【0066】
溝部37は平面視で略コ字状となっている上側通路形成部31の左方に位置する部分に形成されている。溝部37は、凹部36によって内外に分けられた上側通路形成部31の内側部分において、下方に窪むように形成されている。上記溝部37は、オイルパン1の前後方向略中央位置に形成されており、その形状は、前後の幅が下方にいくにつれて次第に狭くなる略V字状となっている。
【0067】
図17に示すように、下側通路形成部64は溝部37の真下が断面凹状に窪んでおり、その内方が熱媒体通路R2となっている。したがって、熱媒体通路R2を通過する熱媒体は、区画形成壁部3の溝部37が形成されている部分においては、該溝部37の下側を通過するようになっている。
【0068】
したがって、この実施形態6では、実施形態5と同様の効果が得られるとともに、オイルパン1の上方のエンジンEgから戻ってくるオイルが区画形成壁部3の凹部36に溜まったときに、溝部37によって内側貯留部2bへとオイルが導かれるようになるので、汚れたオイルが凹部36に滞ってしまうといったことを防止できる。
《発明の実施形態7》
図18は、本発明の実施形態7に係るオイルパン1aを示したものである。この実施形態7では、以下の述べる点が実施形態4と異なっているほかは、実施形態4と同様に構成されているので、同一構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。すなわち、この実施形態7では、区画形成壁部3の下側部分を構成する下側通路形成部(第2分割体)65が上方に開口する断面凹形状となっている。また、下側通路形成部65に突出板65cが一体に形成されている。さらに、上側通路形成部31に段差部31fが複数形成されている。
【0069】
下側通路形成部65は、底壁部61の一部と、外側側壁部65aと、内側側壁部65bと、突出板65cとで構成されている。外側側壁部65aは、上側通路形成部31の外側接合板部31dの内周縁寄りから下方に真っ直ぐ延びる板状をなし、底壁部61に繋がっている。該外側側壁部65aは、ロアー側壁部62から所定の隙をあけて該ロアー側壁部62に沿って延びている。外側側壁部65aの上端位置は、接合面部62aの上面と面一となっている。
【0070】
内側側壁部65bは、上側通路形成部31の内側接合板部31eの内周縁寄りから下方に真っ直ぐ延びる板状をなし、底壁部61に繋がっている。該内側側壁部65bは、外側側壁部65aから所定の距離をあけて該外側側壁部65aに沿って延びている。内側側壁部65bの上端位置は、接合面部62aの上面と同じ位置となっている。
【0071】
上記下側通路形成部65の外側側壁部65aと内側側壁部65bの板厚は、オイルパン本体2の板厚よりも薄く形成されることが好ましい。これにより、熱媒体通路Rを通過する熱媒体とオイル貯留部2aに貯留するオイルとの熱交換が効率良く行われるようになる。
【0072】
上記外側側壁部65aの上端面は外側接合板部31dの下面に溶着され、内側側壁部65bの上端面は内側接合板部31eの下面に溶着されるようになっている。そして、上側通路形成部31、外側側壁部65a、内側側壁部65b及び底壁部61でオイル貯留部2a内に熱媒体通路Rを区画形成するようになっている。これにより熱媒体通路Rの断面形状は、オイルパン本体2の上下方向略中央位置から底壁部61まで延びる略矩形状となる。したがって、実施形態7のオイルパン1aは、実施形態4〜6のオイルパン1aよりも熱媒体通路Rを通過する熱媒体の流量を多くすることができ、オイル貯留部2aに溜まるオイルとの熱交換をさらに効率良く行うことができる。
【0073】
図18に示すように、下側通路形成部65には、内側側壁部65bの表面に突出板65cが一体に形成されている。該突出板65cは複数設けられており、内側側壁部65bの表面から区画形成壁部3の外方に突出し上下に延びる板状をなしている。突出板65cの上端位置は接合面部62aの上面と同じ位置となっている。これにより、突出板65cによって区画形成壁部3の表面積が増えるので、オイル貯留部2aに溜まるオイルの加熱や冷却をさらに効率良く行うことができるようになる。また、区画形成壁部3に一体に形成した突出板65cを利用して、さらにオイルパン1aの剛性を高くすることができる。
【0074】
尚、突出板65cは板厚を薄く形成した外側側壁部65a及び内側側壁部65bを補強する役割を担っており、アッパー部7とロアー部8との振動溶着時においても、上記突出板65cによって外側側壁部65a及び内側側壁部65bが底壁部61から外れてしまうのを防げるようになっている。
【0075】
また、突出板65cは、区画形成壁部3の内方の熱媒体通路R側に向かって突出させるようにしてもよい。このとき、外側側壁部65aから内側側壁部65bに向かって突出する突出板65cと、内側側壁部65bから外側側壁部65aに向かって突出する突出板65cとを熱媒体通路Rの延びる方向に沿って交互に形成するのが好ましい。これにより、熱媒体通路Rが上流側から下流側に向けて蛇行するようになり、突出板65cと熱媒体との接触面積が増え、オイル貯留部2aに溜まるオイルと熱媒体との熱交換を効率良く行うことができるようになる。
【0076】
また、突出板65cは、区画形成壁部3の外方及び内方に突出させるようにしてもよい。また、下側通路形成部65に突出板65cを一体に形成せずに、突出板65cを下側通路形成部65に後から組み付けるようにしてもよい。また、熱伝導性をよくするために突出板65cを金属製のものとし、下側通路形成部65の形成時に一体に組み付けるようにしてもよいし、下側通路形成部65に後から組み付けるようにしてもよい。
【0077】
図18に示すように、上側通路形成部31の上壁部31aには、下方に窪む段差部31fが複数形成されている。段差部31fの上面は、上側通路形成部31の上下方向略中央位置となるように形成されている。この複数の段差部31fによって、上壁部31aに凹凸面部39が形成される。これにより、区画形成壁部3と、オイル貯留部2aに溜まるオイルとの接触面積が増え、オイル貯留部2aに溜まるオイルの加熱や冷却を効率良く行うことができるようになる。また、区画形成壁部3の表面を凹凸形状にすることによって、さらにオイルパン1の剛性を高くすることができる。
【0078】
尚、実施形態1、2では、区画形成壁部3内に熱媒体を通してオイル貯留部2a内のオイルの温度を調節するようにしたが、区画形成壁部3内の閉断面空間に電熱線等を配設することによりオイルの温度を調節する構造としてもよい。
【0079】
また、熱伝導性をよくするとともに剛性を高くするために、樹脂の中に金属粉を混入させてオイルパン1、1aを形成するようにしてもよい。
【0080】
尚、本発明は、オートマチックトランスミッション等の動力機械のオイルパンとして適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、例えば、自動車における動力装置の内部を循環するオイルを貯留するオイルパン構造に適している。
【符号の説明】
【0082】
1 オイルパン
1a オイルパン
2 オイルパン本体
2a オイル貯留部
3 区画形成壁部
5 下側通路形成部(第2分割体)
7 アッパー部(第1本体部)
8 ロアー部(第2本体部)
31 上側通路形成部(第1分割体)
35 凹凸面部
39 凹凸面部
64 下側通路形成部(第2分割体)
65 下側通路形成部(第2分割体)
65c 突出板
R 熱媒体通路(閉断面空間)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力装置各部を循環するオイルを貯留するオイル貯留部を有するオイルパン本体と、
上記オイル貯留部に貯留するオイルの温度調節手段を配設、又は、通過させる閉断面空間を上記オイル貯留部内に区画形成する区画形成壁部とを有し、
上記区画形成壁部は、分割された第1分割体と第2分割体とを組み合わせて構成され、
上記第1分割体と上記第2分割体とのいずれか一方が上記オイルパン本体に形成されることを特徴とする樹脂製のオイルパン構造。
【請求項2】
請求項1に記載のオイルパン構造であって、
オイルパン本体は、分割された第1本体部と第2本体部とを組み合わせて構成され、
上記第1本体部と第1分割体とが一体に形成されるとともに上記第2本体部と第2分割体とが一体に形成されることを特徴とする樹脂製のオイルパン構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のオイルパン構造であって、
温度調節手段はオイルと熱交換する熱媒体であり、閉断面空間は熱媒体を通過させる熱媒体通路であることを特徴とする樹脂製のオイルパン構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のオイルパン構造であって、
区画形成壁部の表面には凹凸面部が形成されていることを特徴とする樹脂製のオイルパン構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載のオイルパン構造であって、
区画形成壁部には、該区画形成壁部の外方及び/又は内方に突出する突出板が形成されていることを特徴とする樹脂製のオイルパン構造。
【請求項1】
動力装置各部を循環するオイルを貯留するオイル貯留部を有するオイルパン本体と、
上記オイル貯留部に貯留するオイルの温度調節手段を配設、又は、通過させる閉断面空間を上記オイル貯留部内に区画形成する区画形成壁部とを有し、
上記区画形成壁部は、分割された第1分割体と第2分割体とを組み合わせて構成され、
上記第1分割体と上記第2分割体とのいずれか一方が上記オイルパン本体に形成されることを特徴とする樹脂製のオイルパン構造。
【請求項2】
請求項1に記載のオイルパン構造であって、
オイルパン本体は、分割された第1本体部と第2本体部とを組み合わせて構成され、
上記第1本体部と第1分割体とが一体に形成されるとともに上記第2本体部と第2分割体とが一体に形成されることを特徴とする樹脂製のオイルパン構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のオイルパン構造であって、
温度調節手段はオイルと熱交換する熱媒体であり、閉断面空間は熱媒体を通過させる熱媒体通路であることを特徴とする樹脂製のオイルパン構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のオイルパン構造であって、
区画形成壁部の表面には凹凸面部が形成されていることを特徴とする樹脂製のオイルパン構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載のオイルパン構造であって、
区画形成壁部には、該区画形成壁部の外方及び/又は内方に突出する突出板が形成されていることを特徴とする樹脂製のオイルパン構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−12580(P2011−12580A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156296(P2009−156296)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】
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