説明

オイルポンプおよびそれを用いたキャブチルト装置

【課題】吸入路をケーシングに加工せずに済むオイルポンプを提供することにある。
【解決手段】ケーシング21に形成されたシリンダ収納室30に圧入されたシリンダ32と、シリンダ32のシリンダ室33に摺動自在に嵌入されたピストン34と、ピストン34の進退に伴ってオイルをシリンダ室33に吸入させる吸入弁40と、ピストン34の進退に伴ってオイルをシリンダ室33から吐出させる吐出弁50とを備えているオイルポンプ13において、シリンダ32端部に嵌入した弁筒46端面には吸入口42に連通する端面連通溝47を形成し、シリンダ32側面のケーシング21との圧入部には端面連通溝47に連通する側面連通溝48を形成する。シリンダ収容室30におけるシリンダ32の外側であって、カムリング収容室28側には円錐形状のフィルタ49を介設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルポンプおよびそれを用いたキャブチルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中型や大型のキャブオーバ形トラックにおいては、エンジン部分の点検保守等を容易に実施することができるように、キャブチルト装置が搭載されている。
従来のこの種のキャブチルト装置は、次のように構成されている。
キャブとフレームとの間にオイルポンプによって駆動されるチルト用シリンダ装置が介設されており、このチルト用シリンダ装置の上げ側油路にオイルポンプによって圧油が供給されることにより、キャブが持ち上げられ、下げ側油路に圧油が供給されることにより、キャブが降ろされる。
【0003】
このようなキャブチルト装置に使用されるオイルポンプにおいては、ピストンが往復動するシリンダがケーシングに圧入され、そのシリンダに吸入弁が一体的に組み付けられており、その吸入弁をタンクに連通させる吸入路はケーシングに加工されている。例えば、特許文献1参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−96283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、吸入路がケーシングに加工されるオイルポンプにおいては、ケーシングの加工が複雑になるばかりでなく、ケーシングが大型かつ大重量になり、キャブチルト装置ひいては車両の大型かつ大重量を招くという問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、吸入路をケーシングに加工せずに済むオイルポンプおよびそれを用いたキャブチルト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するための手段のうち代表的なものは、次の通りである。
(1)シリンダ収納室が形成されたケーシングと、前記シリンダ収納室に圧入されたシリンダと、前記シリンダに形成されたシリンダ室に摺動自在に嵌入されて進退するピストンと、前記ピストンの進退に伴ってオイルを前記シリンダ室に吸入させる吸入弁と、前記ピストンの進退に伴ってオイルを前記シリンダ室から吐出させる吐出弁とを備えているオイルポンプであって、
前記シリンダの前記吸入弁に対向する端面には前記吸入弁に連通する端面連通溝が形成されており、前記シリンダ側面の前記ケーシングとの圧入部には前記端面連通溝に連通する側面連通溝が形成されている、ことを特徴とするオイルポンプ。
(2)キャブとフレームとの間に介設されキャブをチルトさせるチルト用シリンダ装置と、このチルト用シリンダ装置の上げ側および下げ側給排油路に圧油を供給するオイルポンプとを備えており、
前記オイルポンプはシリンダ収納室が形成されたケーシングと、前記シリンダ収納室に圧入されたシリンダと、前記シリンダに形成されたシリンダ室に摺動自在に嵌入されて進退するピストンと、前記ピストンの進退に伴ってオイルを前記シリンダ室に吸入させる吸入弁と、前記ピストンの進退に伴ってオイルを前記シリンダ室から吐出させる吐出弁とを備えているキャブチルト装置であって、
前記シリンダの前記吸入弁に対向する端面には前記吸入弁に連通する端面連通溝が形成されており、前記シリンダ側面の前記ケーシングとの圧入部には前記端面連通溝に連通する側面連通溝が形成されている、ことを特徴とするキャブチルト装置。
【発明の効果】
【0008】
このオイルポンプによれば、吸入路をケーシングに加工せずに済むため、ケーシングの加工を簡素化することができ、ケーシングを小型軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態であるキャブチルト装置が搭載されたキャブオーバ形自動車を示す斜視図である。
【図2】そのキャブチルト装置の油圧回路図である。
【図3】本発明の一実施形態であるオイルポンプを示す側面図である。
【図4】その主要部を示す側面断面図である。
【図5】(a)は図4のV−V線に沿う断面図、(b)は(a)のb−b線に沿う断面図、(c)は(a)のc−c線に沿う断面図、である。
【図6】(a)は本発明の第二実施形態であるオイルポンプの主要部を示す側面断面図であり、(b)は(a)のb−b線に沿う断面図、(c)は(a)のc−c線に沿う断面図、である。
【図7】(a)は本発明の第三実施形態であるオイルポンプを示す側面図であり、(b)は(a)のb−b線に沿う断面図、(c)は(a)のc−c線に沿う断面図、である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に即して説明する。
【0011】
図1に示されているように、本実施形態に係るキャブチルト装置は、キャブ1とフレーム2との間に介設され油圧による伸縮作動によりキャブ1のチルト操作を行うチルト用シリンダ装置3を備えている。すなわち、キャブ1はフレーム2に支点1aによって前後方向に回動自在に支持されており、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4の上端がリンクを介してキャブ1に回動自在に枢着され、シリンダ5の下端がフレーム2に回動自在に枢着されている。
【0012】
図2に示されているように、チルト用シリンダ装置3の油圧駆動回路10は、上げ側給排油路(以下、上げ側油路という)11と、下げ側給排油路(以下、下げ側油路という)12と、オイルポンプ13と、タンク14と、手動切換弁(以下、切換弁という)15とを備えている。
上げ側油路11はシリンダ5のフレーム側油圧室(以下、上げ側油圧室という)5aに流体的に接続されており、下げ側油路12はシリンダ5のキャブ側油圧室(以下、下げ側油圧室という)5bに流体的に接続されている。
【0013】
切換弁15は4ポート・2位置・手動操作形切換弁に構成されている。切換弁15は、通常時(キャブを降ろした状態での走行時)には、上げ側油路11の負荷ポートaがタンクポートTに、かつ、下げ側油路12の負荷ポートbがポンプポートPにそれぞれ接続され、レバー15aの操作による切換時(チルトアップ時)には、上げ側油路11の負荷ポートaがポンプポートPに、かつ、下げ側油路12の負荷ポートbがタンクポートTにそれぞれ接続されるように、構成されている。タンクポートTは戻り油路62を経由してタンク14に接続されている。
なお、切換弁15はオイルポンプ13に設置されている(図3参照)。
【0014】
上げ側油路11には第一パイロット操作形逆止弁(以下、第一パイロット逆止弁という)16が介設されており、下げ側油路12には第二パイロット操作形逆止弁(以下、第二パイロット逆止弁という)17が介設されている。第一パイロット逆止弁16および第二パイロット逆止弁17は、油圧が予め設定されたパイロット圧力値未満である時にシリンダ5側から切換弁15側への流れを阻止し、設定されたパイロット圧力値以上になると、その流れを許容する。
【0015】
図3〜図5には本実施形態に係るオイルポンプ13が示されている。
オイルポンプ13は略直方体形状に形成されたケーシング21を備えており、ケーシング21の一端面にはタンク14を構成した筐体22が被せ付けられている。筐体22には安全弁19が設置されている。安全弁19はタンク14内の圧力が設定圧力以上になった時にタンク14内外を連通させる。
ケーシング21には回転軸24が筐体22と反対側から挿通されて回転自在に支承されており、回転軸24の筐体22と反対側の端部はケーシング21の外部に突出されている。回転軸24の突出側端部にはDCモータ25が連結されており、回転軸24はDCモータ25によって回転される。
オイルポンプ13は筐体22側が重力方向上側(天)に、DCモータ25側が下側(地)になるようにフレーム2に設置される。
【0016】
図4に示されているように、回転軸24の先端部にはカム26が回転中心に対して所定の偏心量をもって偏心されて形成されており、カム26の外周には転がり軸受から成るカムリング27が装着されている。
ケーシング21のカムリング27に対応する部分にはカムリング収容室28が開設されており、ケーシング21のカムリング収容室28の外側には一対のシリンダ収容室30、30が対向されて開設されている。一対のシリンダ収容室30、30はカム26の偏心方向にそれぞれ延在されて、一端(以下、内側端とする)がカムリング収容室28において開口するようにそれぞれ開設されている。
一方のシリンダ収容室30の外側端部には外側開口を閉塞するプラグ部31が形成されており、他方のシリンダ収容室30はプラグ31Aで閉塞されている。
【0017】
一対のシリンダ収容室30、30には一対のシリンダ32、32がカム26の偏心方向に延在するようにそれぞれ圧入されている。一対のシリンダ32、32のシリンダ室33、33内には一対のピストン34、34がカム26の偏心方向に摺動自在にそれぞれ嵌入されている。
一対のシリンダ32、32や一対のピストン34、34の構成および機能は同一であるので、以下、プラグ部31側の構成について図5を参照して説明する。
カムリング収容室28における回転軸24と反対側の端部には、弾性材が使用されてCリング形状に形成された連結部材64が配設されており、一対のピストン34、34は連結部材64に一対のピン63、63を介して互いに一体的に移動するように連結されている。連結部材64のCリング形状における開先の両端部には一対の工具係合孔65、65がそれぞれ開設されている。この一対の工具係合孔65、65に工具が係合されて弾発力に抗して連結部材64が開かれた状態で、一対のピストン34、34が一対のピン63、63を介して係合されることにより、連結部材64は一対のピストン34、34の内側端面をカム26の外周面にポンプ駆動時のピストン34、34の慣性力や摩擦抵抗等に対抗する弾性力をもって常時押接させる。
【0018】
図4に示されているように、一対のシリンダ32、32には一対の吸入弁40、40が外側端にそれぞれ装備されている。一対の吸入弁40、40の構成および機能は同一であるので、以下、プラグ部31側の吸入弁40について図5を参照して説明する。
【0019】
図5に示されているように、吸入弁40は弁室41を形成した弁筒46を備えている。弁筒46は外径がシリンダ収容室30よりも小径かつ内径がシリンダ室33よりも小径もしくは同径の円筒形状に形成されており、外側端部がシリンダ室33に圧入されてシリンダ32に固定されている。弁筒46の円筒中空部は弁室41を形成しており、弁室41はシリンダ室33内に連通している。
弁室41の外側端部には弁口42が、シリンダ収容室30内に連通するように形成されており、弁口42の弁室41との接続部には弁座43が円形環状に形成されている。弁室41内にはボールから成る弁体44が弁座43に離着座することにより、弁口42を開閉するように収納されている。
弁体44はシート66によってシリンダ室33へ飛び出すことを防止されている。
【0020】
弁筒46は外径がシリンダ収容室30よりも小径で内径が弁口42よりも大径の円形リング形状に形成されており、弁口42と同軸に配されている。弁筒46の弁口42と反対側端面(外側端面)には端面連通溝47が十字溝形状に没設されている。端面連通溝47は弁口42とシリンダ収容室30とを連通させる連通路を形成している。
シリンダ32側面のシリンダ収容室30との圧入部には側面連通溝48が複数本(図示例では3本)、縦(シリンダ32の軸線と平行方向)に配されてそれぞれ没設されている。側面連通溝48はシリンダ収容室30とタンク14とを連通させる連通路を形成している。すなわち、端面連通溝47および側面連通溝48は、吸入弁40とタンク14とを連通させる吸入路を構成している。
シリンダ収容室30におけるシリンダ32の外側であって、カムリング収容室28側には円錐形状のフィルタ49が介設されている。フィルタ49はカムリング収容室28からシリンダ32の連通溝48に流れるオイルを濾過する。
【0021】
図4に示されているように、一対のシリンダ32、32の側壁には一対の吐出弁50、50がそれぞれ装備されている。
図5(b)に示されているように、吐出弁50は弁室51を備えており、弁室51はシリンダ32の側壁に開設されている。弁室51の内側端部には弁口52がシリンダ室33内に連通するように開設されており、弁口52の弁室51との接続部には弁座53が円形環状に形成されている。弁室51にはボールから成る弁体54が弁座53に離着座することにより、弁口52を開閉するように収納されている。
ケーシング21の弁室51に対向する位置には吐出路58の一端部が開設されており、吐出路58の他端部はケーシング21に設置された切換弁15のポンプポートP(図2参照)に接続されている。弁室51と吐出路58の軸線は、弁体54が吐出路58に飛び出さないように、ピストン34の軸線方向に互いにずらされている(図4参照)。
【0022】
図2に示されているように、吐出路58にはリリーフ通路60が接続されており、リリーフ通路60にはリリーフ弁61が介設されている。リリーフ弁61により、油圧回路の油圧が何らかの故障により異常に高圧になるのを防止されている。
【0023】
次に、前記構成に係るキャブチルト装置の作用を説明する。
【0024】
自動車整備工場等において、キャブ1がチルトアップされる際には、キャブロック装置148のキャブロックが手動レバー149によって解除される。その後、切換弁15の切換レバー15aをチルトアップ側にセットする。これを図2の油圧回路図で示すと、切換弁15のポンプポートPが負荷ポートaに、タンクポートTが負荷ポートbにそれぞれ接続される。
【0025】
続いて、DCモータ25が運転され、オイルポンプ13の回転軸24がDCモータ25の回転力によって回転される。これにより、カム26が回転して、一対のピストン34、34が往復移動する。
ピストン34が前進すると、吐出弁50が閉じられるとともに、吸入弁40が開き、タンク14のオイルをフィルタ49、側面連通溝48、端面連通溝47、吸入弁40を介してシリンダ室33に吸入する。ピストン34が後退すると、吸入弁40が閉じるとともに、シリンダ室33の圧力により吐出弁50が開かれ、吐出路58にオイルを送り出す。
図2に示されているように、吐出路58に送られたオイルは切換弁15に送られ、上げ側油路11に送られる。
上げ側油路11に圧送された圧油は第一パイロット逆止弁16を通じてチルト用シリンダ装置3のシリンダ5の上げ側油圧室5aに流入し、ピストンロッド4を伸長作動させることにより、キャブ1をフレーム2から持ち上げて行きチルトアップさせて行く。
【0026】
ここで、ピストンロッド4を伸長作動させるためには、シリンダ5の下げ側油圧室5bの圧油を排出させる必要がある。
図2において、上げ側油路11の圧力が第二パイロット逆止弁17に設定されたパイロット圧力値以上になると、第二パイロット逆止弁17が開く。第二パイロット逆止弁17が開くと、シリンダ5の下げ側油圧室5bの圧油は下げ側油路12の第二パイロット逆止弁17、切換弁15、戻り通路62を経由してタンク14に排出される。
したがって、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4は伸長作動してキャブ1をチルトアップさせることができる。
【0027】
キャブ1が予め設定された位置にチルトアップされると、作業者はDCモータ25によるオイルポンプ13の運転を停止する。この際、チルトアップしたキャブ1の下降は図2に示されている第一パイロット逆止弁16の作動により自動的に防止される。
オイルポンプ13が停止すると、上げ側油路11の第一パイロット逆止弁16とオイルポンプ13の間の油圧がオイルポンプ13の内部油漏れにより低下するため、第二パイロット逆止弁17の圧力が設定されたパイロット圧力値以下になり、第二パイロット逆止弁17が閉じる。
第二パイロット逆止弁17が閉じると、シリンダ5の下げ側油圧室5bの圧油は排出することができないため、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4は伸長することができない。なお、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4をフルに伸長作動させた場合はピストンロッド4は機械的に伸長することができない。
【0028】
その後、作業者がキャブ1をチルトダウンさせようとするときは、切換レバー15aがチルトダウン側に切り換えられる。
続いて、オイルポンプ13がDCモータ25の駆動力によって運転され、オイルポンプ13の圧油が下げ側油路12に圧送される。下げ側油路12に圧送された圧油はチルト用シリンダ装置3のシリンダ5の下げ側油圧室5bに第二パイロット逆止弁17を通じて流入し、伸長したピストンロッド4を短縮作動させることにより、キャブ1をチルトダウンさせて行く。
【0029】
ここで、ピストンロッド4が短縮作動するためには、シリンダ5の上げ側油圧室5aの圧油を排出させる必要がある。
下げ側油路12の圧力が第一パイロット逆止弁16に設定されたパイロット圧力値以上になると、第一パイロット逆止弁16が開く。
図2において、第一パイロット逆止弁16が開くと、シリンダ5の上げ側油圧室5aの圧油は第一パイロット逆止弁16、切換弁および戻り通路62を経由してタンク14に排出されるため、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4は短縮作動してキャブ1をチルトダウンさせることができる。
【0030】
本実施形態によれば、次の効果が得られる。
【0031】
(1)ケーシングに圧入されるシリンダに端面連通溝および側面連通溝をそれぞれ形成することにより、吸入弁とタンクとを連通させる吸入路のケーシングへの加工を省略することができる。
【0032】
(2)前記(1)により、ケーシングの加工を簡素化することができるばかりでなく、ケーシングおよびオイルポンプ、キャブチルト装置ひいては車両の小型軽量化することができる。
【0033】
(3)回転軸回りに一対のシリンダを配置し、回転軸に駆動されるカムリングに一対のピストンをそれぞれ押接することにより、吐出圧力の脈動を抑制することができ、キャブチルト装置ひいては車両の性能を向上させることができる。
【0034】
(4)筐体側が天でDCモータ側が地になるようにオイルポンプをフレームに設置することにより、オイルポンプの吸入弁の吸入口をタンク内の最下端に位置させることができるので、タンク容積を最大限に有効活用することができる。
【0035】
図6は本発明の第二実施形態を示している。
【0036】
本実施形態が第一実施形態と異なる点は、第一実施形態の連結部材64および一対のピン63、63に換えて、ピストン34の内側端部の外周にはスプリングシート35が嵌着され、スプリングシート35とシリンダ32との間にはリターンスプリング36が介設されている点、弁筒46の外周部にはフィルタ49Aが介設されている点、弁体44が圧縮テーパコイルスプリングからなるバルブスプリング45によって弁座43に着座する方向に常時付勢されている点、である。
【0037】
すなわち、図6に示されているように、ピストン34の内側端部はカムリング収容室28に進退自在に突出されている。ピストン34の内側端部の外周にはスプリングシート35が嵌着されており、スプリングシート35とシリンダ32との間にはリターンスプリング36が介設されている。リターンスプリング36はシリンダ32を介してケーシング21に反力を求めて、ピストン34をカムリング27の外周面に常時押接させている。
弁筒46の外周部であってシリンダ収容室30におけるシリンダ32の外側にはフィルタ49Aが介設されている。フィルタ49Aはシリンダ32の側面連通溝48から弁筒46の端面連通溝47に流れるオイルを濾過する。
弁体44は圧縮テーパコイルスプリングからなるバルブスプリング45によって弁座43に着座する方向に常時付勢されている。
なお、本実施形態においては必要に応じてバルブスプリング45を廃止してもよい。
【0038】
本実施形態は第一実施形態の作用および効果に加え以下の作用および効果を奏する。
【0039】
(1)フィルタ49Aが弁筒46の外周部に配置されているので、省スペース化することができる。
【0040】
(2)第一実施形態の連結部材64、ピン63、63に換えて、ピストン34の内側端部の外周にスプリングシート35を嵌着し、スプリングシート35とシリンダ32との間にリターンスプリング36を介設したことにより、カムリング収容室28のタンク14側に他の部品等の障害物が存在する場合でも、工具等でリターンスプリング36を縮めておくことにより、DCモータ25にカムリング27を取り付けた後、カムリング収容室28に挿入すれば、容易に組立作業をおこなうことができる。
【0041】
図7は本発明の第三実施形態を示している。
【0042】
本実施形態が前記第一実施形態と異なる点は、連結部材の構成である。
図7に示されているように、本実施形態に係る連結部材64Aは、第一実施形態の連結部材64の両端部の一対の工具係合孔65、65に換えて、フック状の係合部65A、65Aが設けられており、係合部65A、65Aがピン63、63に係合される。
例えば、カムリング収容室28のタンク14側に配設された部品のような障害物のために、タンク14側から連結部材64Aを挿入することができない場合であっても、ケーシング21の側面に孔をあけておけば、その孔から連結部材64Aの係合部65A、65Aをピン63、63に係合させて、工具等でピストン34、34を広げ、DCモータ25にカムリング27を取り付けた後、カムリング収容室28に挿入することにより、容易に組み立てることができる。
【0043】
本実施形態は第一実施形態の作用および効果に加え以下の作用および効果を奏する。
【0044】
(1)第一実施形態の連結部材64に換えて、連結部材64Aを介設することにより、カムリング収容室28のタンク14側のスペースに他の部品を配置することができる。
【0045】
(2)タンク14側から連結部材64Aを広げる工具を挿入することができない場合であっても、容易に組立作業を行うことができる。
【0046】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0047】
端面連通溝はシリンダと別体の弁筒の端面に設けるに限らず、シリンダの端面に直接的に設けてもよい。すなわち、弁筒はシリンダに一体的に形成することができる。
【0048】
シリンダおよびピストンは一対設けるに限らず、単一だけ設けてもよいし、3以上設けてもよい。
【0049】
オイルポンプはチルト用シリンダ装置と一体的に形成してもよい。
【0050】
キャブチルト装置のオイルポンプに適用するに限らず、本発明は、テールゲート開閉装置等の油圧駆動回路に使用されるオイルポンプ全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…キャブ、1a…支点、2…フレーム、3…チルト用シリンダ装置、4…ピストンロッド、4a…ピストン、5…シリンダ、5a…フレーム側油圧室(上げ側油圧室)、5b…キャブ側油圧室(下げ側油圧室)、
10…油圧駆動回路、11…上げ側給排油路(上げ側油路)、12…下げ側給排油路(下げ側油路)、13…オイルポンプ、14…タンク、15…手動切換弁(切換弁)、15a…切換レバー、16…第一パイロット逆止弁、17…第二パイロット逆止弁、
21…ケーシング、22…筐体、24…回転軸、25…DCモータ、26…カム、27…カムリング、28…カムリング収容室、30…シリンダ収容室、31…プラグ部、31A…プラグ、32…シリンダ、33…シリンダ室、34…ピストン、35…スプリングシート、36…リターンスプリング、
40…吸入弁、41…弁室、42…弁口、43…弁座、44…弁体、45…バルブスプリング、46…弁筒、47…端面連通溝、48…側面連通溝、49、49A…フィルタ、 50…吐出弁、51…弁室、52…弁口、53…弁座、54…弁体、58…吐出路、
60…リリーフ通路、61…リリーフ弁、62…戻り通路、
63…ピン、64、64A…連結部材、65…工具係合孔、65A…係合部、66…シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ収納室が形成されたケーシングと、前記シリンダ収納室に圧入されたシリンダと、前記シリンダに形成されたシリンダ室に摺動自在に嵌入されて進退するピストンと、前記ピストンの進退に伴ってオイルを前記シリンダ室に吸入させる吸入弁と、前記ピストンの進退に伴ってオイルを前記シリンダ室から吐出させる吐出弁とを備えているオイルポンプであって、
前記シリンダの前記吸入弁に対向する端面には前記吸入弁に連通する端面連通溝が形成されており、前記シリンダ側面の前記ケーシングとの圧入部には前記端面連通溝に連通する側面連通溝が形成されている、ことを特徴とするオイルポンプ。
【請求項2】
前記シリンダ収容室の内部空間における前記側面連通溝と前記端面連結溝との間にフィルタが介設されている、ことを特徴とする請求項1に記載のオイルポンプ。
【請求項3】
前記シリンダ収容室における前記シリンダの外側であって、カムリング収容室側には円錐形状のフィルタが介設されている、ことを特徴とする請求項1に記載のオイルポンプ。
【請求項4】
前記端面連通溝が前記シリンダのシリンダ室に嵌入された弁筒の端面に形成されている、ことを特徴とする請求項1または2または3に記載のオイルポンプ。
【請求項5】
キャブとフレームとの間に介設されキャブをチルトさせるチルト用シリンダ装置と、このチルト用シリンダ装置の上げ側および下げ側給排油路に圧油を供給するオイルポンプとを備えており、
前記オイルポンプはシリンダ収納室が形成されたケーシングと、前記シリンダ収納室に圧入されたシリンダと、前記シリンダに形成されたシリンダ室に摺動自在に嵌入されて進退するピストンと、前記ピストンの進退に伴ってオイルを前記シリンダ室に吸入させる吸入弁と、前記ピストンの進退に伴ってオイルを前記シリンダ室から吐出させる吐出弁とを備えているキャブチルト装置であって、
前記シリンダの前記吸入弁に対向する端面には前記吸入弁に連通する端面連通溝が形成されており、前記シリンダ側面の前記ケーシングとの圧入部には前記端面連通溝に連通する側面連通溝が形成されている、ことを特徴とするキャブチルト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−233459(P2012−233459A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104337(P2011−104337)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000177276)三輪精機株式会社 (34)
【Fターム(参考)】