説明

オイル中の少なくとも部分的に中和されたクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーの製造方法

オイルと0.5〜50重量パーセント塩素および0.25〜5重量パーセント硫黄を含有する1種以上の少なくとも部分的に中和されたクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーとを含むオイルコンセントレートが開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル中の部分的に中和されたクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーの製造であって、前記クロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーが複数のペンダント−SO3M基(ここで、Mは陽イオンである)を有する製造に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロスルホン化ポリエチレンエラストマーおよびクロロスルホン化エチレンコポリマーエラストマーは、ワイヤおよびケーブル外被、型製品、自動車ホース、動力伝達ベルト、屋根ふき部材ならびにタンクライナーなどの用途に使用するための優れた弾性材料であることが分かった。これらの材料は、耐油性、熱安定性、耐オゾン性および耐化学薬品性のそれらのバランスについて注目されている。
【0003】
歴史的に、エチレンホモポリマーおよびコポリマーをはじめとする、多種多様なポリオレフィンポリマーは、クロロスルホン化製品の製造用の出発ポリマー(すなわち、「ベースポリマー」または「ベース樹脂」)として利用されてきた。クロロスルホン化エラストマーの製造に用いられるベースポリマーの大部分はこれまで、ポリエチレンタイプ、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)であった。これらのエラストマーを製造するために用いられるエチレンホモポリマーおよびコポリマーのほとんどは、高圧フリーラジカル触媒法によってかまたはZiegler−NattaもしくはPhillipsタイプ触媒を使用する低圧法によって重合される。
【0004】
米国特許第5,668,220号明細書は、20〜50重量パーセント塩素および0.8〜2.5重量パーセント硫黄を含有する塩素化およびクロロスルホン化エラストマーを開示している。これらのエラストマーは、シングルサイト、すなわち、メタロセン触媒の存在下に重合されたエチレン/アルファ−オレフィンコポリマーから製造される。かかるエチレンコポリマーは、同じ分子量分布を有するがZiegler−Natta触媒を使用して製造されたポリマーと比較したときに改善された押出または流動特性を有する。
【0005】
特開平2[1990]−18681号公報は、−SO3M基(ここで、Mは一価の陽イオンである)を含有するポリオレフィンアイオノマーを開示している。このアイオノマーは、クロロスルホン化ポリオレフィン上の−SO2Cl基の一部を塩基と反応させることによって製造される。クロロスルホン化ポリエチレンは、25〜36%塩素を有すると記載されている。
【0006】
エチレンベースのエラストマー(例えば、EPおよびEPDM)は、自動車および工業用途でオイル用の粘度調整剤として利用される。これらのポリマーは、パラフィン系およびナフテン系オイルに容易に可溶で、かつ、安定であるが、より極性のポリマー(例えば、エチレン・アクリルまたはメタクリルコポリマーおよび高塩素化エチレンポリマー)はそうではない。
【0007】
イソブチレンベースのエラストマー(例えば、PIBおよびイソブチレン/ジエンコポリマー)は伝統的に自動車オイルおよびグリース用の改質剤として使用されており、高温でのそれらの実用性を高めている。
【0008】
スチレンベースのエラストマー(例えば、SBSおよびSISブロックコポリマ−ならびに好ましくはそれらの水素化誘導体)もまた、オイル調合物および接着剤用途において粘度調整剤としての用途を示してきた。
【0009】
プロピレンベースのポリマー(例えば、アタクチックポリプロピレンおよびプロピレン/エチレンコポリマー)は、工業用途において粘度調整剤だけでなく接着剤および接合剤としても利用されてきた。
【0010】
これらのポリマーの多くは、オイルベースの調合物のための安定剤を組み込むために、グラフト化技法によって、反応性基(例えば、無水マレイン酸)で官能基化される。これらの変性された官能基化ポリマーは、オイル安定性を高め、かつ、機器における沈着物形成を防ぐ。
【0011】
これらのポリマーは普通、克服されなければならない残留結晶化度のためにオイルに添加されたときに長時間の溶解時間を必要とするおよび/またはオイルへの添加前に困難なポリマー細砕技法によって高分子量ポリマーを破砕する必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
オイルベースの溶液およびエマルジョンで使用するための0.5〜50重量パーセントの塩素および中〜低レベルの残留結晶化度を有する部分的に中和されたクロロスルホン化弾性ポリオレフィン(すなわち、アイオノマー)のオイルベースの溶液またはエマルジョンコンセントレートを有することが望ましいであろう。これらの溶液またはエマルジョンはオイルに迅速に溶解または分散して、調合物の調製を大幅に軽減する。溶液粘度がオイル溶解性、ポリマー熱安定性および洗浄力とバランスをとらねばならないこれらの用途の幾つかでは、コポリマーの混合物を用いることが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の態様は、1種以上の少なくとも部分的に中和されたクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーを含むオイル組成物の製造方法であって、
A)少なくとも1種のクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマー、オイル、塩基、およびプレ混合物の総重量を基準として30重量パーセント以下の水を含むプレ混合物を提供する工程と、
B)前記プレ混合物を、複数の−SO3M基(ここで、Mは陽イオンである)を有する少なくとも1種のクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーを含む安定な分散系を形成するのに十分な剪断で、かつ、十分な時間剪断する工程と
を含む方法である。
【0014】
本発明の別の態様は、
A)オイルと、
B)0.5〜50重量パーセントの塩素、0.25〜5重量のパーセント硫黄および複数の−SO3M基(ここで、Mは陽イオンである)を含む、コンセントレートの総重量を基準として5〜50重量パーセントの、少なくとも1種のクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーと
を含む安定なオイルコンセントレート分散系である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
オイルと1種以上の少なくとも部分的に中和されたクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーとを含む、本発明のオイルコンセントレートは、少なくとも1種のクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマー上のペンダント−SO2Cl基の一部を塩基で中和することによって製造される。典型的には、−SO2Cl基の約10〜90%のみ(FTIR測定または滴定分析によって証明されるように)が塩基と反応して複数の−SO3M基を形成し、その結果エラストマーは「部分的に中和された」と称される。しかしながら、完全に中和されたエラストマーもまた、本発明の一部と考えられる。陽イオン、Mは、中和反応に用いられた塩基に由来し、一価または多価であってもよい。Mは好ましくは、ナトリウムイオンかカリウムイオンかのどちらかである。
【0016】
本発明に用いられてもよいオイルには、ミネラルオイル、パラフィン系オイル、ディーゼルオイルおよびナフテン系オイルが含まれるが、それらに限定されない、
【0017】
本発明での使用に好適なクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーは、エチレンホモポリマー、エチレンとC3〜C20アルファ−オレフィンとのコポリマー、プロピレン/エチレンコポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンコポリマー、イソブチレン/ジエンコポリマー、イソブチレンホモポリマー、水素化スチレン/ブタジエンブロックコポリマーおよび水素化スチレン/イソプレンブロックコポリマ−からなる群から選択されたベース樹脂から製造されたものである。高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン/プロピレン/ジエンコポリマー、およびイソブチレン/ジエンコポリマーのベース樹脂が好ましい。これらのクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーの幾つかは、本件特許出願人から商品名Hypalon(登録商標)で入手可能である。他のクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーは、当該技術分野で周知の様々なクロロスルホン化法のいずれかによって上記のベース樹脂から製造することができる。例えば、それらは米国特許第3,624,054号明細書、米国特許第5,668,220号明細書、米国特許第4,560,731号明細書および欧州特許出願公開第131948 A1号明細書に開示されている。
【0018】
これらのクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーは、半結晶性かまたは非晶質であってもよい。それらは、0.5〜50(好ましくは0.75〜20、最も好ましくは1〜10)重量パーセントの塩素および0.25〜5(好ましくは0.35〜3、最も好ましくは0.5〜2)重量パーセントの硫黄を含有する。
【0019】
一般的な中和法では、クロロスルホン化ポリオレフィンエラストマー、オイル、塩基および、プレ混合物の総重量を基準として、30重量パーセント以下の水がプレ混合物に組み合わせられる。場合により、塩基を溶解させるために十分なだけの水が存在する。過剰の水が存在する場合、分散系安定性の問題が起こるかもしれない。塩基を溶解させるのに十分でない水が存在する場合、または塩基が高い水溶解度を持たない場合、塩基の不完全な利用(およびポリマー上の−SO2Cl基のより少ない中和)が起こるかもしれない。
【0020】
プレ混合物は、安定な分散系または溶液を形成するために高剪断混合に曝される。高剪断混合装置の例には、Silversonホモミキサーおよび高粘度材料の強烈な混合のために設計された他の市販装置が挙げられる。クロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーの中和は、プレ混合物の形成中に始まるかもしれない。しかしながら、中和反応は、混合が完了した後の生じた分散系中で続くかもしれない。
【0021】
好ましくは、高剪断混合中に、半結晶性のクロロスルホン化エラストマーにおける結晶性領域は、結晶性領域に存在するペンダント−SO2Cl基の中和を促進するために溶融させられる。プレ混合物をこれらの結晶性領域の融点より上に加熱することは、混合から発生した熱(剪断加熱)によってかまたは外部熱源によって成し遂げられてもよい。
【0022】
場合により、オイルに溶解させなければならない固体のクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーで中和プロセスを始めるよりもむしろ、「溶媒交換法」が用いられてもよい。この方法では、溶媒(例えば、四塩化炭素、三塩化エチレン、キシレンなど)に既に溶解されているクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーが、その溶媒をオイルと交換するためにオイルに加えられる。
【0023】
中和プロセスに用いられる塩基は、強塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、中程度の塩基、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムまたは脂肪酸のナトリウム塩もしくは第三級アミンなどの弱塩基であってもよい。プレ混合物に加えられる塩基の量は典型的には、コポリマー上の−SO2Cl基の1当量当たり塩基の0.5〜2.5モル当量である。
【0024】
好ましくは、プレ混合物はまた、クロロスルホン化ポリオレフィンエラストマー上のペンダント−SO2Cl基の中和を容易にする相溶化剤(例えば、界面活性剤または移動剤)を含有する。2種以上の相溶化剤が用いられてもよい。好適な相溶化剤の具体的な例には、陰イオン性界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、金属ステアリン酸塩(例えば、ステアリン酸ナトリウム)、金属ロジン石鹸、ステアリン酸、ラウリルアルコール、非イオン性界面活性剤(例えば、Triton(登録商標)X−100)、または第四級アンモニウム塩(例えば、花王株式会社から入手可能なQuartamin(登録商標)24P)が挙げられるが、それらに限定されない。相溶化剤の存在は、中和プロセスに用いられる塩基が水に非常に可溶性ではない、例えば、CaOまたはCaCO3のときに特に有用である。
【0025】
場合により、塩基、脱塩水および相溶化剤は、オイル−クロロスルホン化ポリオレフィンエラストマー混合物への添加前に溶液またはエマルジョンを形成するために混ぜられてもよい。
【0026】
生じた分散系は安定である、すなわち、それは、室温で24時間貯蔵されたときに分離層を形成しない。
【0027】
好ましくは、分散系は、オイルと、コンセントレートの総重量を基準として、5〜50重量パーセントの部分的に中和されたクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーとを含むコンセントレートの形態にある。オイル調合物に使用されるとき、コンセントレートは、部分的に中和されたクロロスルホン化エラストマーの適切な(通常は希釈された)レベルで調合物に容易に導入することができる。
【0028】
コンセントレートは、流通および販売のために様々な技法によって(例えば、ドラム、バケツ、バルクコンテナなどに)包装されてもよいし、現場調合物調製のために容器に貯蔵されてもよい。
【0029】
本発明のコンセントレートは、粘度調整剤および同様に接着剤、相溶化剤、硬化および未硬化エラストマー系、耐衝撃性改良剤およびオルガノゾル成分での使用などの様々な最終用途を有する。コンセントレートは、固体の部分的に中和されたクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーが伝統的に使用されるオイル調合物の製造を容易にする点で特に有用である。
【0030】
本発明のコンセントレートを利用する配合物は、伝統的なクロロスルホン化ポリオレフィン配合物に典型的に用いられる硬化剤および他の添加剤を含有するために調合されてもよい。
【0031】
有用な硬化剤には、ビスマレイミド、過酸化物(例えば、Di−Cup(登録商標))、硫黄供与体(例えば、ジチオカルバミルポリスルフィド)および金属酸化物(例えば、MgO)が含まれる。
【0032】
配合物に使用するのに好適な添加剤の例には、i)フィラー、ii)可塑剤、iii)加工助剤、iv)酸受容体、v)酸化防止剤、およびvi)オゾン劣化防止剤が挙げられるが、それらに限定されない。
【実施例】
【0033】
試験方法
クロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーに組み込まれた重量パーセントClおよびSは、Schoniger燃焼法(J.C.TorrおよびG.J.Kallos、American Industrial Association J.July、419(1974)ならびにA.M.MacDonald、Analyst、v86、1018(1961))によって測定した。
【0034】
−SO3M基に変換された−SO2Cl基のパーセントは、−SO2Cl基および−SO3M基についての吸収領域の検討による赤外分光分析法技法を用いて推定した。
【0035】
実施例1
0.98重量%結合硫黄および1.81重量%結合塩素を含有するクロロスルホン化エチレン/オクテンポリオレフィンエラストマー(0.5g/10分のメルトインデックスおよび0.868g/cm3の密度を有する、The Dow Chemical Co.から入手可能な、Engage(登録商標)8150から誘導した)の1.5重量パーセント(重量%)マスター溶液を、15グラムのエラストマーを985グラムのミネラルオイルに溶解させることによって調製した。これは、エラストマーをオイル中へ入れ、次に混合物をオーブン中で50℃に加熱し、その後Silverson L4Rホモゲナイザーを高速で用いて5分間激しく混合することによって成し遂げた。この溶液を10の等しいアリコートに分割し、50℃に保持し、次の通り処理した。
サンプルA−無処理(対照)。
サンプルB−0.1gのステアリン酸を添加(対照)。
サンプル1−0.15gの酸化カルシウムおよび3mlの水を添加。
サンプル2−0.1gのステアリン酸、0.15gの酸化カルシウムおよび3mlの水を添加。
サンプル3−0.1gの水酸化ナトリウムおよび3mlの水を添加。
サンプル4−0.1gのステアリン酸、0.1gの水酸化ナトリウムおよび3mlの水を添加。
サンプル5−0.1gのステアリン酸、0.15gの炭酸ナトリウムおよび3mlの水を添加。
【0036】
添加を行った後に、全てのサンプルを、50℃の最初の出発温度でSilverson L4Rホモミキサーを用いて5分間混合した。5分の混合後に、温度は72℃に上昇した。サンプルを次に脇に置き、恒温浴中で25℃に放冷した(およそ1時間)。サンプルの粘度は、温度が25℃に達すると直ぐに(元の粘度)ならびに次に再び25℃での保管の1時間および16時間後にBrookfield粘度計(#2スピンドルのモデルLVDV−11)で測定した(表I)。
【0037】
追加の対照サンプル(CおよびD)は、上記のクロロスルホン化コポリマーを製造するために用いた1.5gのエチレン/オクテンコポリマーを98.5gのミネラルオイルに加えることによって上記の通り作製した。サンプルCに0.1gのステアリン酸および3mlの水を加えた。サンプルDに0.1gの水酸化ナトリウム、0.1gのステアリン酸および3mlの水を加えた。これらのサンプルを上記の通り混合し、25℃に放冷した。粘度は、温度が25℃に達すると直ぐにならびに次に再び1時間および16時間後に測定した。結果を表Iに示す。
【0038】
【表1】

【0039】
16時間後のポリマーを、非溶媒沈殿によってミネラルオイルから単離し、FTIRによって分析した。サンプル2、4および5はスルホネート塩の存在を示唆する1049cm-1の著しいピークを有することが示された。
【0040】
実施例2
【0041】
実施例1のサンプルA、B、1および2は、使用するオイルがミネラルオイルよりもむしろディーゼルオイルであったことを除いては繰り返した。混合および25℃で1時間放置した後の、粘度結果を表IIに示す。
【0042】
【表2】

【0043】
実施例3
クロロスルホン化エチレン/オクテン−1コポリマーの2つの6重量%溶液を、6gのクロロスルホン化エチレン・オクテンエラストマー(0.98重量%硫黄および1.8重量%塩素を含有する)を実施例1に記載されるように94gのミネラルオイルに溶解させることによって調製した。サンプルを高速で5分間混合した。
【0044】
第1溶液(対照サンプルE)を脇に置いて25℃に冷却した。25℃で1時間後の生じた溶液の、Brookfield粘度計による粘度は20cpsであった。
【0045】
第2溶液に0.3gのステアリン酸、9mlの水および0.3gの水酸化ナトリウムを加えた(本発明のサンプル9)。これを、実施例1に記載したように混合した。混合すると直ちに、非常に粘稠なペーストが形成された。このペーストの粘度は非常に高く、Brookfield粘度計で測定することはできなかった。
【0046】
実施例4
オイル溶液中のクロロスルホン化EPポリマーの調製:
クロロスルホン化エチレン・プロピレンコポリマーの4重量%オイル溶液は、クロロスルホン化ポリマーの全てが溶解することを確実にするために室温で1時間穏やかにかき混ぜながら、3.3重量%の塩素含有率および0.65重量%の硫黄含有率を有する8g(小片での)のクロロスルホン化エチレン・プロピレンコポリマー(230℃で40g/10分のメルトフローレイトおよび0.870g/ccの密度を有する、三井化学株式会社から入手可能な、Tafmer(登録商標)P0080から誘導した)を200gのミネラルオイル(TotalFina Great Britain Limitedから入手可能なTotal DF−1)に加えることによって調製した。
【0047】
相間移動剤での苛性エマルジョンの調製:
苛性含有エマルジョンは、5gの50重量%水酸化ナトリウム、10gの水および0.5gの第四級アンモニウム塩相間移動剤(塩化ビス(2−ヒドロキシプロピル)ベンジルココアンモニウム)と25gのミネラルオイル(Total DF−1)とをSilversonホモミキサーで3,000rpmで3分間混合することによって調製した。
【0048】
オイルコンセントレート中の部分的に中和されたクロロスルホン化EPポリマーの調製:
2.5gの上記の苛性エマルジョンをオイル溶液の上記のポリマーに加え、全混合物をSilversonホモミキサーで3000rpmで5分間混合した。オイルコンセントレート中の生じた3.8重量%の部分的に中和されたクロロスルホン化RPポリマーを将来の使用のために保存した。このコンセントレートは、混合下では流動性であるが撹拌を停止した後で非常に高粘度のペーストになるチキソトロピック挙動を示した。ペーストコンセントレートは、ホモミキサーで混合したときに再び流動性になった。
【0049】
およそ10gのこの生じたコンセントレートを次に、かき混ぜながら50mlのアセトンに加え、5分間かき混ぜてポリマーサンプルを得た。このポリマーを分離し、50mlのアセトンで3回洗浄し、次に乾燥させた。FTIR分析は、1051cm-1のピークの出現および1161cm-1のスルホニルクロリドピークの1182cm-1へのシフトによってスルホニルクロリド基がスルホン酸ナトリウム塩に実質的に変換されたことを示した。
【0050】
実施例5
20重量%脂肪酸塩コンセントレートの調製:
脂肪酸ナトリウム塩コンセントレートは、150gのWestvaco 1408脂肪酸(1480は、Westvaco Companyから入手した、280g/当量の当量のトール油誘導体である)を750gの水に加え、次に撹拌しながら40gの50重量%水性水酸化ナトリウムを加えることによって調製した。溶液を50℃で1時間撹拌して20重量%ナトリウム塩と80重量%水とを含有するワックス状材料を形成した。この材料を将来の使用のために保存した。
【0051】
オイル溶液中のクロロスルホン化EPポリマーの調製:
4.2重量%の塩素含有率および0.88重量%の硫黄含有率を有する4gのクロロスルホン化エチレン/プロピレンコポリマー(230℃で40g/10分のメルトフローレイトおよび0.870g/ccの密度を有する、三井化学株式会社から入手可能な、Tafmer(登録商標)P0080から誘導した)を、振盪機上室温で1時間浸透することによって140gミネラルオイル(Total Fluidesから入手可能なEDC 95/11)に溶解させた。生じたオイル溶液は2.8重量%ポリマーを含有した。
【0052】
オイル中の部分的に中和されたクロロスルホン化EPポリマーの調製:
オイル溶液中の上記の2.8重量%ポリマーを次に、Silversonホモミキサーで1700rpmで数分間混合した。次に5分間にわたって、1.7gの上記20重量%脂肪酸塩コンセントレート、5グラムの2重量%炭酸ナトリウム溶液および5mlの追加の水を、ホモミキサーで撹拌しながら溶液に加えた。混合を30分間続行し、7.2重量%水を含有するオイルコンセントレート中の高粘度2.6重量%の少なくとも部分的に中和されたクロロスルホン化EPポリマーをもたらした。このコンセントレートは、混合下に流動性であるが、撹拌を停止した後は非常に高粘度で、ペースト様になるチキソトロピック挙動を示した。
【0053】
生じたコンセントレートの小サンプル(約10g)を次にかき混ぜながら50mlのアセトンに加え、次に5分間かき混ぜてポリマーサンプルを得た。ポリマーを分離し、3回アセトンで洗浄し、乾燥させた。単離サンプルをFTIRによって分析して加水分解度を測定した。本質的に完全な加水分解が、スルホン酸ナトリウム塩に特徴的である約1050cm-1のピークの形成および1161cm-1の通常のスルホニルクロリドピークの1182cm-1へのシフトによって示唆された。
【0054】
コンセントレートの希釈:
オイルコンセントレート中の上記2.6重量%の部分的に中和されたクロロスルホン化EPポリマーの10gを、Silversonホモミキサーで3,000rpmでかき混ぜながら.20gのミネラルオイル(EDC 95/11)に2分にわたって加えた。生じた0.86重量%溶液は、放置時に安定で、流動性があり、かつ、注ぐことが可能であった。この溶液は、混合下に非常に流動性であるが撹拌が止められた後に非常に高粘度になるが注ぐことは可能であるチキソトロピック挙動を依然として示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の少なくとも部分的に中和されたクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーを含むオイル組成物の製造方法であって、
A)少なくとも1種のクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマー、オイル、塩基、およびプレ混合物の総重量を基準として30重量パーセント以下の水を含むプレ混合物を提供する工程と、
B)前記プレ混合物を、複数の−SO3M基(ここで、Mは陽イオンである)を有する少なくとも1種のクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーを含む安定な分散系を形成するのに十分な剪断で、かつ、十分な時間剪断する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記プレ混合物が、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、金属ステアリン酸塩、金属ロジン石鹸、ステアリン酸、ラウリルアルコールおよび第四級アンモニウム塩からなる群から選択された少なくとも1種の相溶化剤をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プレ混合物が
i)少なくとも1種のクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーをオイルと組み合わせて第1混合物を形成する工程と、
ii)塩基、水および少なくとも1種の相溶化剤を組み合わせて第2混合物を形成する工程と、
iii)前記第1および第2混合物を組み合わせて前記プレ混合物を形成する工程と
を含む方法によって製造される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記プレ混合物が、少なくとも1種の固体のクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーを、オイル、塩基および30重量パーセント以下の水と組み合わせることによって製造される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、脂肪酸のナトリウム塩および第三級有機アミンからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記オイルがミネラルオイル、パラフィン系オイル、ディーゼルオイル、およびナフテン系オイルからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記クロロスルホン化ポリオレフィンが、エチレンホモポリマー、エチレンとC3〜C20アルファ−オレフィンとのコポリマー、プロピレン/エチレンコポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンコポリマー、イソブチレン/ジエンコポリマー、イソブチレンホモポリマー、水素化スチレン/ブタジエンブロックコポリマーおよび水素化スチレン/イソプレンブロックコポリマ−からなる群から選択されたポリオレフィンから製造される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリオレフィンがエチレンホモポリマーである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリオレフィンがエチレンとC3〜C20アルファ−オレフィンとのコポリマーである請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリオレフィンがエチレン/プロピレン/ジエンコポリマーである請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリオレフィンがイソブチレン/ジエンコポリマーである請求項7に記載の方法。
【請求項12】
A)オイルと、
B)コンセントレートの総重量を基準として5〜50重量パーセントの少なくとも1種のクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーであって、0.5〜50重量パーセントの塩素、0.25〜5重量パーセントの硫黄および複数の−SO3M基(ここで、Mは陽イオンである)を含むクロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーと
を含む安定なオイルコンセントレート分散物。
【請求項13】
前記オイルがミネラルオイル、パラフィン系オイル、ディーゼルオイル、およびナフテン系オイルからなる群から選択される請求項12に記載のオイルコンセントレート。
【請求項14】
前記クロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーが、エチレンホモポリマー、エチレンとC3〜C20アルファ−オレフィンとのコポリマー、プロピレン/エチレンコポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンコポリマー、イソブチレン/ジエンコポリマー、イソブチレンホモポリマー、水素化スチレン/ブタジエンブロックコポリマーおよび水素化スチレン/イソプレンブロックコポリマ−からなる群から選択されたポリオレフィンから製造される請求項12に記載のオイルコンセントレート。
【請求項15】
前記クロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーが0.75〜20重量パーセントの塩素、0.35〜3重量パーセントの硫黄および複数の−SO3M基を含む請求項12に記載のオイルコンセントレート。
【請求項16】
前記クロロスルホン化ポリオレフィンエラストマーが1〜10重量パーセントの塩素、0.5〜2重量パーセントの硫黄および複数の−SO3M基を含む請求項15に記載のオイルコンセントレート。

【公表番号】特表2010−523760(P2010−523760A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502123(P2010−502123)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/004268
【国際公開番号】WO2008/123990
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(597035953)デュポン パフォーマンス エラストマーズ エルエルシー (44)
【Fターム(参考)】