説明

オイル状クレンジング料

【課題】水の存在する使用環境下においても、高いクレンジング力を有し、さらに透明性を維持しながら、ゲル化することを抑制できる商品性の高いオイル状クレンジング化粧料を提供する。
【解決手段】高級脂肪酸、高級アルコールのいずれか又は両方、液状油及び多価アルコールを含有し、かつ下記成分を含有するオイル状クレンジング料。(A)ポリオキシエチレングリセリル脂肪酸エステル。(B)ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル。特に、(A)は、HLB4〜7及びHLB9〜12の2種類からなることが好ましく、(B)の酸化プロピレンの付加モル数は、8〜10であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレンジング化粧料に関し、更に詳細には、透明な液状を呈し、水で濡れた手で使用しても白濁を起こすことがなく、優れたクレンジング力を有するクレンジング化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メーキャップ化粧料やサンスクリーン剤などを落とす目的でクレンジングオイルと呼ばれるクレンジング化粧料が用いられている。しかしながら、従来のオイルタイプのクレンジング化粧料では、浴室内などにおいて手や顔が濡れた状態での使用、すなわち、多量の水分が混入すると、白濁により透明性を保持できなくなるとともに、粘度が上がって水とのなじみが悪くなることにより使用性が悪くなり、結局クレンジング力が低下するという問題があった。
【0003】
これらの問題を解決するため、これまでに多くの研究がなされ、例えば2種以上の非イオン界面活性剤と油剤とを組み合わせることにより、高温での保存安定性や使用感が良好なクレンジング化粧料(特許文献1参照)や、特定の非イオン界面活性剤と油剤と多価アルコールを組み合わせることにより、長期間や高温での保存安定性に優れるクレンジング化粧料(特許文献2参照)や、特定の非イオン界面活性剤と油剤とを組み合わせることにより、外観が透明で、水を加えたときに白濁しないクレンジング化粧料(特許文献3参照)や、2種類の非イオン界面活性剤を組み合わせることにより、水を加えたときのクレンジング力や使用感が良好なクレンジング化粧料(特許文献4参照)が提案されている。
【特許文献1】特開2005−2059号公報
【特許文献2】特開2005−68082号公報
【特許文献3】特許3532910号公報
【特許文献4】特開2007−39366号公報
【特許文献5】特許3453643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1〜4に記載のクレンジング化粧料であっても、実際に使用する際に多量の水分が混入した場合、乳化して白濁し、さらにはゲル化してクレンジング力が落ちるため、満足できるものではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、多量の水分が混入しても、ベースの状態の変化がなく、高いクレンジング力を有するクレンジング化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、特定の非イオン界面活性剤及びポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルを組み合わせて配合することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、(A)ポリオキシエチレングリセリル脂肪酸エステル、(B)ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルを含有することを特徴とするオイル状クレンジング料である。
【0008】
以下、本発明の構成について詳述する。
【0009】
本発明に用いられる成分(A)ポリオキシエチレングリセリル脂肪酸エステルは特に限定されないが、好ましくはHLBは4〜7又は9〜12の範囲のものである。また、前記2種の範囲のHLBの非イオン界面活性剤を組み合わせることにより、より水洗時に白濁することなく透明な水溶液となる。また、油分に対する溶解性が高くなり、安定な液状製剤を得ることができる。
【0010】
尚、本発明においてHLBとは親水性―新油性のバランスを示す指標であり、本発明においては小田、寺村らによる次式により算出した値を用いた。
【0011】
(数1)
HLB= ( 無機性値 / 有機性値 )×10
【0012】
HLBが4〜7のポリオキシエチレングリセリル脂肪酸エステルの具体例として、以下にその化学組成を挙げる。以下、ポリオキシエチレンはPOEと略す。
【0013】
POE(10)グリセリルトリオレート、POE(3)グリセリルモノイソステアレート、POE(10)グリセリルジイソステアレート、POE(10)グリセリルトリイソステアレート等を挙げることができる。
中でも、POE(3)グリセリルモノイソステアレートを用いることが好ましい。
【0014】
HLBが9〜12のポリオキシエチレングリセリル脂肪酸エステルの具体例として、以下にその化学組成を挙げる。以下、ポリオキシエチレンはPOEと略す。
【0015】
POE(30)グリセリルトリオレート、POE(8)グリセリルモノイソステアレート、POE(10)グリセリルモノイソステアレート、POE(15)グリセリルトリイソステアレート、POE(20)グリセリルジイソステアレート、POE(30)グリセリルジイソステアレート、POE(30)グリセリルトリイソステアレート、POE(40)グリセリルトリイソステアレート、POE(50)グリセリルトリイソステアレート等を挙げることができる。
中でも、POE(8)グリセリルモノイソステアレートを用いることが好ましい。
【0016】
本発明のオイル状クレンジング料において、(A)ポリオキシエチレングリセリル脂肪酸エステルの含有量は特に限定されないが、好ましくはオイル状クレンジング料全量に対して25〜40重量%、特に好ましくは28〜35重量%である。25重量%より少ないと、水を加えた場合に透明な水溶液が得られず、また40重量%を越えて配合すると、相対的に該組成物中の油剤の配合量が少なくなるために油汚れの洗浄力が十分に得られない場合がある。
【0017】
本発明に用いられる成分(B)ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルは保湿剤(特許3453643号公報)などに用いられており、酸化プロピレンの付加モル数は特に限定されないが、好ましくは酸化プロピレンの平均付加モル数は8〜10である。
【0018】
本発明のオイル状クレンジング料において、前記(B)ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルの含有量は特に限定されないが、好ましくはオイル状クレンジング料全量に対して0.5〜10重量%、特に好ましくは1〜7重量%である。0.5重量%より少ないと、水を加えた場合に該組成物が増粘してすすぎ性が悪くなり、また10重量%を越えて配合すると、十分なクレンジング力が得られなくなる場合がある。
【0019】
液状油は、通常、オイル状クレンジング料には基剤として普通に用いられるものであるが、化粧料に通常使用されている常温(25℃)において液状を呈する油分であれば特に制限はない。具体的には、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、ポリイソブテンなどの炭化水素油、オリーブ油、メドウフォーム油、ホホバ油、マカデミアナッツ油などの植物性油、デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーン油、ミリスチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、エチルヘキサン酸セチル、トリ(2‐エチルヘキサン酸)グリセリルなどの合成エステル油などを挙げることができる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用される。
【0020】
本発明のオイル状クレンジング料において、前記液状油の含有量は特に限定されないが、好ましくはオイル状クレンジング料全量に対して40〜70重量%、特に好ましくは50〜70重量%である。40重量%より少ないと、クレンジング力が悪くなる傾向にあり、また70重量%を越えて配合すると、肌が濡れた状態でのクレンジング力が低下する傾向にある。
【0021】
高級脂肪酸又は高級アルコールは、通常、オイル状クレンジング料には基剤として普通に用いられるものであるが、イソステアリン酸、ミリスチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等を挙げることができる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用される。
【0022】
本発明のオイル状クレンジング料において、前記高級脂肪酸又は高級アルコールの含有量は特に限定されないが、好ましくはオイル状クレンジング料全量に対して2〜10重量%、特に好ましくは3〜8重量%である。2重量%より少ないと、水を加えた場合に透明な水溶液が得られず、また10重量%を越えて配合すると、すすぎ性の感触が悪くなる。
【0023】
多価アルコールは、通常、オイル状クレンジング料には基剤として普通に用いられるものであるが、ジプロピレングリコール、1,3ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。中でも、オイル状クレンジング料の経時による白濁や沈殿を防止する効果に優れる点から、ジプロピレングリコールを用いることが好ましい。
【0024】
本発明のオイル状クレンジング料において、前記多価アルコールの含有量は特に限定されないが、好ましくはオイル状クレンジング料全量に対して0.1〜10重量%、特に好ましくは1〜7重量%である。0.1重量%より少ないと、経時安定性が悪くなる傾向にあり、また10重量%を越えて配合すると、クレンジング力が低下する傾向にある。
【0025】
本発明において、発明の効果を損なわない範囲であれば上記必須成分のほかに、必須成分以外の界面活性剤、香料、色素、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、油性ゲル化剤、抗炎症剤、植物エキスなどの通常化粧料に用いられる原料を適宜配合することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、多量の水分が混入しても、高いクレンジング力、透明性を維持し、ゲル化を抑制できる商品性の高いクレンジング化粧料である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、実験例、比較例を挙げて本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。配合量は重量%を表わす。
実施例に先立ち、本実施例で行った評価方法について述べる。
【0028】
(1)外観
水を添加する前の透明性、並びに、常温(25℃)においてオイル状クレンジング料100重量部に対して水50重量部を添加した場合の白濁の有無と粘度変化の有無を目視により評価した。
(2)クレンジング力
専門評価パネル10名が、実験例および比較例の各テストサンプルを使用して評価した。腕に口紅を塗布してもらい、腕を濡れた状態にして、テストサンプルを使用してもらい、クレンジング力について評価してもらった。
◎:10名中、7名以上が良好と回答
○:10名中、3ないし6名が良好と回答
×:10名中、2名以下が良好と回答
【0029】
表1の処方に基づき、室温にて油相成分、界面活性剤を混合・撹拌して均一にした後、水相成分を添加し混合・撹拌し均一にしてオイル状クレンジング料を調整した。
【実施例1】
【0030】
表1に示すとおり、本発明の(A)ポリオキシエチレングリセリル脂肪酸エステル、(B)ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルを含有するオイル状クレンジング料は、外観、クレンジング力ともに良好な結果を示した。一方、(B)ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルを含有していないと、クレンジング力は極端に悪い結果となった。
【0031】
【表1】

【実施例2】
【0032】
表2に示すとおり、本発明の(A)ポリオキシエチレングリセリル脂肪酸エステルを他の非イオン界面活性剤に代えて評価したところ、(B)ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルを含有していても、クレンジング力が極端に悪い結果となった。
【0033】
【表2】

【0034】
以下に本発明を、詳細に説明するための実施例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例3】
【0035】
オイル状クレンジング料
配合成分 配合量(重量%)
(1) スクワラン 31.85
(2) 2‐エチルヘキサン酸セチル 20
(3) オリーブ油 2
(4) ホホバ油 2
(5) POE(8)グリセリルモノイソステアレート(HLB=10) 30
(6) POE(10)グリセリルジイソステアレート(HLB=7) 2
(7) ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル 4
(8) イソステアリン酸 3
(9) 1,3ブチレングリコール 2
(10)精製水 3
(11)グリチルリチン酸ステアリル 0.05
(12)香料 0.1
【実施例4】
【0036】
オイル状クレンジング料
配合成分 配合量(重量%)
(1) 流動パラフィン 33.95
(2) イソノナン酸トリデシル 15
(3) シクロメチコン 10
(4) メドウフォーム油 5
(5) POE(10)グリセリルモノイソステアレート(HLB=10)25
(6) POE(3)グリセリルモノイソステアレート(HLB=6) 3
(7) ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル 2
(8) イソステアリン酸 4
(9) ジプロピレングリコール 1
(10)精製水 1
(11)ビタミンE 0.05
【実施例5】
【0037】
オイル状クレンジング料
配合成分 配合量(重量%)
(1) ミリスチン酸イソプロピル 20.8
(2) スクワラン 18
(3) デカメチルシクロペンタシロキサン 15
(4) POE(8)グリセリルモノイソステアレート(HLB=10) 32
(5) POE(10)グリセリルトリイソステアレート(HLB=5) 2
(6) ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル 5
(7) イソステアリルアルコール 3
(8) ジプロピレングリコール 2
(9) 精製水 2
(10)ローズ油 0.1
(11)香料 0.1
【0038】
実施例3〜5についても外観の透明性、水添加後の白濁とゲル化の抑制、クレンジング力ともに良好な結果を示した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高級脂肪酸、高級アルコールのいずれか又は両方、液状油及び多価アルコールを含有し、かつ下記成分を含有するオイル状クレンジング料。
(A)ポリオキシエチレングリセリル脂肪酸エステル。
(B)ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル。
【請求項2】
(A)ポリオキシエチレングリセリル脂肪酸エステルが、HLB4〜7及びHLB9〜12の2種類からなることを特徴とする請求項1記載のオイル状クレンジング料。
【請求項3】
(B)ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルの酸化プロピレンの付加モル数が8〜10であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のオイル状クレンジング料。
【請求項4】
(A)ポリオキシエチレングリセリル脂肪酸エステルの含有量が、25〜40重量%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のオイル状クレンジング料。
【請求項5】
(B)ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルの含有量が、0.5〜10重量%であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のオイル状クレンジング料。
【請求項6】
(A)ポリオキシエチレングリセリル脂肪酸エステルの含有量が28〜35重量%、(B)ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルの含有量が1〜7重量%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のオイル状クレンジング料。


【公開番号】特開2009−249324(P2009−249324A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98021(P2008−98021)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】