説明

オフガス核種連続測定装置

【課題】燃料破損の検知および監視を高感度で行うことができ、破損燃料体を含むセルの特定を短時間に高精度で行うことができるオフガス核種連続測定装置を提供する。
【解決手段】原子炉のオフガス系に接続された核種測定ライン34内に配設されたガス測定チャンバ38と、このガス測定チャンバを囲む位置にて複数配設され、その径方向で対向するもの同士が対をなす放射線検出器39a〜39hと、これら対をなす放射線検出器によりそれぞれ検出された両放射線検出信号が逆同時に検出されたときに、これら両放射線検出信号を計数せず、これら両放射線検出信号の一方が入力されたときに、その放射線検出信号を計数処理する逆同時計数処理手段37と、を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉のオフガス測定によるオフガス核種連続測定装置に係り、特に原子炉燃料の破損の検知及び監視を高感度で行えるオフガス核種連続測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の原子力プラントにおいては、原子炉のオフガスの放射線測定に基づき、原子炉燃料の破損を検出する場合は、破損燃料から放出される放射性核種である、ヨウ素(I)やクリプトン(Kr)、ゼノン(Xe)を検出することにより、破損の程度を推定することが行われている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
また、原子炉燃料の破損の程度により継続運転が可能な場合には、破損燃料に関する情報を得るために、炉水中のヨウ素やセシウム(Cs)の測定及びオフガスの核種測定が頻繁に行われる。
【0004】
さらに、原子力プラントによっては、オフガス測定と合わせて、出力抑制試験(PST)によって破損燃料体が含まれる燃料セルを特定する作業が行われることもある(非特許文献2参照)。
【0005】
図8は、オフガス測定による原子炉燃料の破損監視装置Dの従来例を示している。この破損監視装置Dは、オフガス系除湿冷却器出口配管1にオフガスサンプリングライン2を接続し、このオフガスサンプリングライン2にはサンプルチャンバ3を設けている。このサンプルチャンバ3には、放射線を検出する電離箱検出器4を近接配置し、この電離箱検出器4により検出された放射線検出信号情報を放射線モニタ5により表示するようになっている。
【0006】
オフガスサンプリングライン2には、サンプルチャンバ3との接続部よりも上流側において、核種測定ライン2aを接続して分岐させている。この核種測定ライン2aには減衰管6を接続し、減衰管6にはBG(バックグラウンド)ガスチャンバ7を接続している。BGガスチャンバ7は、戻し配管2bを介して、オフガスサンプリングライン2のサンプルチャンバ3の下流側に接続されている。
【0007】
したがって、オフガスサンプリングライン2から核種測定ライン2aに流入した短半減期核種が減衰されたオフガスは、BGガスチャンバ7を経て核種測定ライン2に戻される。BGガスチャンバ7位置には放射線検出器8が設けられ、この放射線検出器8では、減衰管6において放射線検出が行われる。なお、放射線検出器8には、γ線スペクトロメータ(MCA:マルチチャンネル分析計)9および冷凍機10等が接続されている。
【0008】
そして、出力抑制試験(PST)においては、原子炉出力を約1/2まで低下させた後、一定の時間間隔で制御棒の挿入および引き抜き操作が行われ、このときのオフガスの放射能強度変動を検出することによって破損燃料体セルの特定が行われる。
【0009】
この出力抑制試験(PST)の実施時及び通常の燃料体の破損監視システムとして導入されているオフガス核種モニタ測定では、対象となる破損燃料棒から放出される核分裂生成物のガス成分であるKr及びXeと共に、炉心における中性子と冷却材の水との反応によって生成される半減期が約10分の窒素の同位体13Nが共存する。
【0010】
この13Nは陽電子壊変により511keVのγ線を放出し、Kr、Xeのγ線測定のバックグラウンド(BG)となる。このBG低減方法として、従来では測定ラインを長くし、ガスの移行時間を数十分確保することによって13Nを減衰させた後、Kr、Xeを測定する手法が用いられている。
【0011】
また、このような測定ラインの延長による物理的な減衰法のほか、逆同時計数(アンチコインシデンス)装置によるBG減少法(特許文献1参照)や、化学的吸着による13Nの除去方法(特許文献2参照)が提案されている。
【0012】
さらに、破損燃料体の他の特定方法も提案されている(特許文献3参照)。これは上記燃料破損が生じた場合には、核種測定装置を用いて出力抑制試験(PST)による制御棒操作によって、出力が局所的に変動するため、破損燃料棒に内外圧差が生じ、燃料棒内部に蓄積されていたガス成分が炉水中に放出される。放出されたガス成分(Kr、Xe)は半減期が長い成分ほど変動幅が大きくなる。このような半減期が異なる核種の濃度を測定し、この濃度比が燃焼度によって変化することに着目して、破損燃料体を特定するものである。
【0013】
なお、出力抑制試験(PST)の実施時及び通常の燃料体の破損監視システムとして導入されているオフガス核種モニタ測定技術は、その他種々提案されている(特許文献4〜6参照)。
【特許文献1】特開平7−218638号公報
【特許文献2】特開平10−221483号公報
【特許文献3】特開平5−157880号公報
【特許文献4】特開平6−94884号公報
【特許文献5】特開平11−30689号公報
【特許文献6】特開2001−141871号公報
【非特許文献1】NUCLAR TECNOLOGY. VOL APR 73(1986) P72〜83.“A Model for the Release of Radioactive Krypton, Xenon, and Iodine from Defective UO2 Fuel Elements,”B. J. LEWIS, C. R. PHILLIPS, and M. J. F. NOTLEY,
【非特許文献2】日本原子力学会1997年 秋の大会 発表予稿集(第II分冊)III−5
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、オフガス系での核種測定において、測定対象のKr及びXeと、そのBGとなる13Nの強度比は、プラントの運転条件によって変動するものの、約10〜60倍存在する。このため13Nにより生成する511keVのγ線よりも低いエネルギーをもつ多くのオフガス核種は、511keVのコンプトン散乱γ線のBGに埋もれてしまい、微小の変動を捕捉することが困難となっている。
【0015】
そこで、従来では、この対応策として、放射線測定器までのガス輸送ラインを長くすると共にガス流量を絞ることによって移行時間を長くし、13Nを物理的に減衰させた後に測定を行っている。
【0016】
しかし、半減期の短い89Kr(半減期3.15分)や137Xe(半減期3.85分)も減衰してしまうので、これらを測定できない。これらの短半減期核種の半減期は、オフガスの炉心から測定系までの移行時間にほぼ等しいため、制御棒操作時刻評価に対して重要な核種である。
【0017】
また、逆同時計数法を用いてBGに係る放射線信号を計数しない方法では、主検出器として、Ge半導体検出器を用いるため、低エネルギーでの感度が落ちるため希ガス核種測定には効率が悪い。さらに、通常は放射線検出器が1つであるため効率が悪い。
【0018】
さらに、破損燃料体セル特定のための操作である出力抑制試験(PST)は、オフガス測定における核種の放射能強度変化を捉えて判定するので、判定精度はオフガス核種の測定精度に直接影響を受け、下記の如く種々の課題がある。
【0019】
すなわち、従来の方法は、13Nの影響を回避するために施されている方法が減衰測定法であるので、制御棒の操作時間間隔を十分に取ることが要求される。
【0020】
また、制御棒操作に伴う燃料体出力の局所ピークが制限値を越えないように、予め炉出力を低下させた条件下で行う必要がある。
【0021】
このため、出力抑制試験(PST)には、操作全体として、例えば約1週間が必要である。
【0022】
さらに、PSTでの制御棒操作により生じる出力変化によって二次破損を誘引する場合もある。
【0023】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料破損の検知および監視を高感度で行うことができ、破損燃料体を含むセルの特定を短時間に高精度で行うことができるオフガス核種連続測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明では、原子炉のオフガス系に接続された核種測定ラインと、この各種測定ライン内に配設されたガス測定チャンバと、このガス測定チャンバを囲む位置にて複数配設され、その径方向で対向するもの同士が対をなす放射線検出器と、これら対をなす放射線検出器によりそれぞれ検出された両放射線検出信号が逆同時に検出されたときに、これら両放射線検出信号を計数せず、これら両放射線検出信号の一方が入力されたときに、その放射線検出信号を計数処理する逆同時計数処理手段と、を具備していることを特徴とするオフガス核種連続測定装置を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明のオフガス核種連続測定装置によれば、ガス測定チャンバを囲む位置にて複数配設された放射線検出器のうち、ガス測定チャンバの径方向で相互に対向し、相互にほぼ180°の位置関係にある対をなす二つの放射線検出器により検出される両放射線検出信号の一方が入力されたときに、その放射線検出信号が逆同数計数処理手段により計数され、両放射線検出信号が逆同時に入力されたときは、これら両放射線検出信号の出力が停止され、計数されない。
【0026】
このために、13Nが放出する陽電子の消滅に伴い、互いに180°方向に同時に放出されるγ線を放射線検出器により検出した場合には、この放射線検出信号を逆同数計数処理手段の逆同時計数処理により計数しないので、13Nに起因するBG(バックグランド)を除去できる。さらに、ガス測定チャンバの周囲を囲むように放射線検出器を複数対設けているので、核種検出効率を向上させることができる。
【0027】
したがって、半減期の短い核種と、破損燃料から放出される場合に最も変動感度の高い半減期の長い核種とを、同時に測定することができ、正確なオフガス移行時間の補正と破損燃料体の高感度な特定が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図1〜図6を参照して具体的に説明する。なお、これらの図中、同一または相当部分には、同一符号を付している。
【0029】
[第1実施形態]
図1は、沸騰水型原子炉(BWR)と、そのオフガス系等の全体構成を示す系統構成図である。この図1に示すように、原子炉圧力容器11には炉心12を炉水により冠水させた状態で収容しており、この炉心12内の核燃料が核分裂反応により発熱し、原子炉水を加熱沸騰させて蒸気を発生させる。ここで発生した蒸気は、主蒸気管13を介してタービン14に供給され、これを回転させ、発電に供される。主蒸気管13内を流れる気体の大半は、原子炉水が沸騰して発生する蒸気である。この蒸気中には、核燃料の核分裂に伴って発生する放射線エネルギにより原子炉水が放射線分解して発生する水素ガス、酸素ガス、核燃料から僅かながら発生する放射性希ガス、その他復水器15に接続する配管や機器から入り込んでくる空気(インリーク空気)等の非凝縮性ガスが含まれている。
【0030】
これら非凝縮性ガスは、主蒸気管13から分岐した抽気配管16および復水器15からの抽気配管17を介してオフガス系18に流入する。
【0031】
オフガス系18は蒸気入口側から出口側に向けて、蒸気抽出器21、加熱器22、再結合器23、凝縮器24、ドライヤ25をオフガス系除湿冷却器出口配管26、活性炭吸着塔27、モニタ28、スタック29を、この順に順次接続している。
【0032】
再結合器23では、原子炉水の放射線分解で生じた水素ガスと酸素ガスが、排ガス再結合器23に充填された触媒の作用によって水(水蒸気)となる。次に、これら駆動蒸気や再結合水およびインリーク空気は凝縮器24に導入され、この中で冷却されることにより回収される。
【0033】
一方、インリーク空気および核燃料から生じる放射性ガスを主体とする非凝縮性ガスは、凝縮器24の気相部からドライヤ25を通って活性炭吸着塔27およびモニタ28を経て、浄化されてからスタック29より大気中に放出される。
【0034】
このような構成において、本実施形態に係るオフガス核種連続測定装置Aでは、ドライヤ25の下流側の配管、すなわちオフガス系除湿冷却器出口配管26に、オフガスサンプリングライン30を接続している。
【0035】
図2は、このオフガス核種連続測定装置Aを拡大して示す系統構成図である。この図2に示すようにオフガス核種連続測定装置Aは、オフガスサンプリングライン30に、ガス測定チャンバの一例であるサンプルチャンバ31を設けている。このサンプルチャンバ31には放射線検出器の一例である電離箱検出器32を近接配置して放射線を検出し、電離箱検出器32により検出された情報を放射線モニタ33に表示するようになっている。
【0036】
オフガスサンプリングライン30は、そのサンプルチャンバ31の上流側と下流側とを連結する核種測定ライン34を設け、この核種測定ライン34の途中には、測定チャンバと放射線検出器とを有する放射線詳細検出装置35を介装している。この放射線詳細検出装置35の放射線検出信号出力側には、逆同時計数処理手段の一例である信号処理回路37を介してパーソナルコンピュータ等の情報処理手段45を接続している。情報処理手段45は、信号処理回路37をコントロールする機能と、信号処理回路37からの処理信号を表示するモニタ45aを備えている。
【0037】
放射線詳細検出部35を通ったガスは、測定チャンバ31を迂回して核種測定ライン34の戻し配管36を介して、オフガスサンプリングライン30のサンプルチャンバ31の下流側に流通される。
【0038】
図3(a)は放射線詳細検出装置35の設置構成例を平断面的に示す平断面模式図、図3(b)は同,側断面模式図である。すなわち、図3(a)は核種測定ライン34の長手方向に沿った断面を示しており、図3(b)は核種測定ライン34の軸直角方向断面を示している。
【0039】
これら図3(a),(b)に示すように放射線詳細検出装置35は、測定チャンバ38の外周を取り巻くように、複数の放射線検出器39a,39b,39c,…,39hを周方向に所要のピッチで配設しており、サンプルチャンバ31の径方向で対向するために、180°の位置にある2つの放射線検出器、例えば39aと39e,39bと39f,39cと39g,39dと39hをそれぞれ一対として複数対設けている。これら放射線検出器39a〜39hとしては、例えばNaI(Tl)などのシンチレータ、Geなどの半導体検出器が用いられる。半導体検出器のなかでも、CdTe検出器を用いる場合は、希ガスを対象にして低いエネルギー(100keVのオーダー)のガンマ線を測定する際の測定効率を向上させることができる。また、CdTe検出器はGe検出器などと比較して、非常に小さく(例えば1cmの程度)できるので、密に配置できる。このため、互いに180°の位置関係にある二つのガンマ線の位置分解能が高く、BG除去効果が高い。図3(b)には放射線検出器を8個(4対)描いてあるが、その設置数は限定されるものではなく、設置場所の余裕に応じて適宜増設または減少させてもよい。
【0040】
図3(c)は放射線詳細検出装置35と逆同時計数処理を行う信号処理回路37の構成例を主に示している。信号処理回路37は測定チャンバ38の径方向で対向する対の各放射線検出器39a〜39hの一方と他方とを図3(c)に示すように、例えば左右等の2手(2組)に分け、各組毎に各プリアンプ(PA)40を介して、メインアンプ(MA)42とゲートジェネレータ(GG)41にそれぞれ接続している。メインアンプ42とゲートジェネレータ41は1つずつで1組を作っており、その複数組、例えば左右2組用意されていて、互いに180°の位置関係にある二つの放射線検出器39a〜39hの系統はそれぞれ異なる組のメインアンプ42とゲートジェネレータ41にそれぞれ接続されている。
【0041】
図3(c)では説明の便宜上4つの放射線検出器39a〜39hが二組の逆同時回路43に接続されている状態を示しているが、さらに放射線検出器39a〜39hの組が増えた場合でも同様である。この逆同時回路(ANTI COIN)43は、相互に180°の位置にある一対の放射線検出器39a〜39hからの両検出信号が同時に入力されなかったときのみこれら放射線検出信号を計数回路44にそれぞれ与えて計数させるものである。すなわち、逆同時回路(ANTI COIN)43は、各対の放射線検出器39a〜39hからの両放射線検出信号の一方のみが入力され、他方の入力が無かったときは、その一方のゲートジェネレータ41のゲートのみが開かれて計数回路44へ与えられ、計数される。また、各対の放射線検出器39a〜39hからの両放射線検出信号が同時に入力されたときには、両者のゲートジェネレータ41,41のゲートが閉じられ、これら両放射線検出信号の計数回路44への出力は停止され、計数されない。したがって、この計数回路44では、逆同時に検出される、13Nが放出する陽電子に起因するバックグランド(BG)要因となるγ線の計数を除去することができる。この信号処理回路37により信号処理されたデータはパーソナルコンピュータ等の情報処理手段45に記録され、所要の演算、例えば燃料破損の規模等を表わす要素があれば、これら要素に基づく演算を行ない、これら演算結果や信号処理回路からの放射線検出信号等のデータを、例えば図5で示すスペクトラム等所要の表示方法によりモニタ45aに表示する。また、情報処理手段45は信号処理回路37の信号処理をコントロールする機能を有する。なお、情報処理手段45は複数台設けてもよい。
【0042】
図4は、図8で示す従来のオフガス核種連続測定装置により取得された典型的なオフガスのγ線スペクトルを示している。図4に示すように、従来のオフガス核種連続測定装置では13Nの存在によりコンプトン散乱γ線のバックグラウンドBGが生じ、他の希ガス成分のγ線ピークの多くが影響を受けている。このスペクトルは、バッチサンプリングによる測定により得られたものであるため、一定の減衰時間を経たものである。実際のインライン測定時には、さらに多量の13N成分と短半減期の89Krや137Xeもスペクトル上に生じているため、減衰無しでの測定では破損燃料検出に最も感度が高く、エネルギーが低い133Xeのγ線ピークは、ほとんど検出限界以下となっている。
【0043】
これに対し、図5は本実施形態にかかる情報処理手段45のモニタ45aに表示される放射線検出信号のスペクトル図である。すなわち、本実施形態に係るオフガス核種連続測定装置Aでは、核種測定ライン上に設けられた測定チャンバ38の外周を取り巻くように、放射線検出器39a〜39hを複数設置した放射線詳細検出部35と逆同時計数処理を行う信号処理回路37を設けたことによって、13Nが放出する陽電子に起因するバックグランド(BG)要因となるγ線の計数を除去することができる。一方、逆同時計数に無関係なKr、Xeが放出するガンマ線は計数される。従って、炉心12から発生したオフガス成分のうち、BGとなっている13Nの信号を、時間減衰無しでKr、Xeの信号から除去することができる。このような放射線検出信号のBG除去前後の典型的なスペクトル図を図5で示している。
【0044】
これにより、半減期の短い核種と、破損燃料から放出される場合に最も変動感度の高い半減期の長い核種とを、簡易に、かつ同時に測定することができ、正確なオフガス移行時間の補正と、破損燃料体の高感度な特定とが可能になる。
【0045】
[第2実施形態]
図6(a)は本発明の第2実施形態に係るオフガス核種連続測定装置Bの要部平断面模式図、同(b)は同側断面模式図、同(c)は主に信号処理回路37Bの構成を示す模式図である。
【0046】
このオフガス核種連続測定装置Bは測定チャンバ38の周方向に複数対配設した放射線検出器39a〜39hを、測定チャンバ38の軸方向にも所要のピッチを置いて複数段設け、測定チャンバ38の中心軸に対して、各対の放射線検出器39a〜39hの一方(図6(c)では右側)と他方(同左側)の左右2組に分けた点に特徴がある。
【0047】
そして、図6(c)に示すように左右2組に分けた軸方向各段の放射線検出器39a〜39hの放射線検出信号出力側を各プリアンプ(PA)40を介して、左右2組のメインアンプ(MA)42,42とゲートジェネレータ(GG)41,41にそれぞれ順次接続している。すなわち、各メインアンプ42とゲートジェネレータ41はこれらを1組として左右2組設け、互いに180°の位置関係にある二つで一対の放射線検出器39a〜39hの系統にそれぞれ異なる組に接続されている。逆同時回路(ANTI COIN)43は、上記第2実施形態と同様、180°の位置にある各対の放射線検出器39a〜39hからの両放射線検出信号の入力が同時でない場合のみ信号を出力し、計数回路44に与えられ、ここで計数される。この基本構成は第1実施形態と同様であるが、この第2実施形態によれば、測定チャンバ38の軸方向で異なる位置にある放射線検出器39a〜39hでも、測定チャンバ38の同一の軸直角断面にある放射線検出器39a〜39hはプリアンプ(PA)40を介して連結されているので、放射線検出機能上は軸方向に連続した長い放射線検出器39a〜39hが存在するのと等価となる。
【0048】
したがって、上記第1実施形態においては、測定チャンバ38を取り囲む放射線検出器39a〜39h群が作る平面(測定チャンバ38の横断面)上に放出した二つのγ線のみに感度があるのに対し、この第2実施形態では、測定チャンバ38の異なる軸方向にある二つの放射線検出器39a〜39hが作る平面内でのγ線の検出も同時に可能になるため、検出感度をさらに向上させることができる。
【0049】
[第3実施形態]
図7は、本発明の第3実施形態に係るオフガス核種連続測定装置Cの構成を示す系統構成図である。この図7に示すように、このオフガス核種連続測定装置Cは、核種測定ライン34に、放射線を減衰させる減衰管ライン46を放射線詳細検出装置35に対して並列に接続し、この減衰管ライン46のオフガスの入口側と出口側とにそれぞれ接続された測定ライン34との両接続部に、入口側切替弁47、出口側切替弁48をそれぞれ設け、これら切替弁47,48の切替操作を手動操作、または情報処理手段45により自動操作し得るように構成した点に特徴がある。
【0050】
そして、オフガス核種連続測定装置Cは、戻し配管36の途中に、出口側切替弁48の下流側にて、BG(バックグランド)ガスチャンバ7を介装している。このBG(バックグランド)ガスチャンバ7は、図8で示す従来例と同様に構成されており、ガスチャンバ7内の放射線を検出する放射線検出器8を冷凍機10により冷却して放射線検出精度の向上を図っている。
【0051】
放射線検出器8は、その放射線検出信号出力端側を、放射線分析計であるγ線スペクトロメータ(MCA:マルチチャンネル分析計)9を介してパーソナルコンピュータ等の情報処理手段45,45にそれぞれ接続している。
【0052】
このオフガス核種連続測定装置Cは、例えば原子炉プラントの通常運転時には、入口側,出口側切替弁47,48を、オフガスサンプリングライン30からのオフガスを減衰管ライン46側へ通すように、手動操作、または情報処理手段45による自動操作により切り替える。
【0053】
これにより、オフガスサンプリングライン30からのオフガスは減衰管ライン46を通って放射線が減衰され、放射線検出器8により放射線が検出される。この放射線検出信号はγ線スペクトロンメータ(MCA)に与えられ、ここでスペクトラムデータ等に分析作成されて情報処理手段45に与えられ、そのモニタ45aに放射線スペクトラム等所要の表示形態で表示される。
【0054】
そして、このモニタ45aに表示されている放射線スペクトラムを監視している監視員等がその放射線スペクトラムを見て燃料破損が発生した可能性があると判断したときに、図示しない切替弁ボタンスイッチのオン等の手動操作により入口側,出口側切替弁47,48を、オフガスサンプリングライン30からのオフガスを減衰管ライン46側から放射線詳細検出部35側へ通すように切り替える。
【0055】
これにより、オフガスサンプリングライン30からのオフガスは減衰管ライン46により放射線が減衰されずに、放射線詳細検出部35により検出される。この放射線検出信号は上記実施形態と同様に信号処理回路37により逆同時計数処理されてBGが除去され、スペクトラム等によりモニタ45aに表示される。
【0056】
したがって、このオフガス核種連続測定装置Cによれば、燃料破損が生じていない場合には、短半減期の核種を測定する必要性が小さいので、減衰管ライン46を経由した放射線測定で、かつ逆同時計数処理を行なう信号処理回路37を働かせず、BGを減衰させた全ての長半減期核種に由来する信号を計数する。放射線検出信号の切替えは、ゲートジェネレータ41をスイッチオフすることで容易に可能である。そして、この測定時において、測定値に変動が生じた場合に、切替弁47,48を作動させ、かつゲートジェネレータ41をスイッチオンした状態で、13NのBGを除去した残りの希ガス成分の測定に切り替え、破損燃料セルの同定のための測定を行うことができる。
【0057】
また、このようなオフガス流路切替操作によって、上記第1実施形態と同様に破損燃料セルの同定作業時には低BGでかつ短半減期核種の信号を得ることが可能で、かつ通常時には低BGモニタリングが可能になり、破損検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1実施形態に係るオフガス核種連続測定装置が配設される原子炉オフガス系の系統構成図。
【図2】本発明の第1実施形態に係るオフガス核種連続測定装置の構成図。
【図3】(a)は図2で示す放射線詳細検出装置の平断面的模式図、(b)は同横断面的模式図、(c)は同信号処理回路を主に示す構成図。
【図4】従来のオフガス核種連続測定装置により検出される検出信号の典型的なオフガスのγ線スペクトルを示すグラフ。
【図5】図2で示す信号処理回路によるBG除去後とBG除去前とを比較して示すスペクトラム図。
【図6】(a)は本発明の第2実施形態によるオフガス核種連続測定装置の放射線詳細検出装置の平断面的模式図、(b)は同横断面的模式図、(c)は同信号処理回路の構成図。
【図7】本発明の第3実施形態に係る主要部の構成を示す系統構成図。
【図8】従来例のオフガス核種連続測定装置の構成図。
【符号の説明】
【0059】
11 原子炉圧力容器
12 炉心
13 主蒸気管
14 タービン
15 復水器
16 抽気配管
17 抽気配管
18 オフガス系
21 蒸気抽出器
22 加熱器
23 再結合器
24 凝縮器
25 ドライヤ
26 オフガス系除湿冷却器出口配管
27 活性炭吸着塔
28 モニタ
29 スタック
30 オフガスサンプリングライン
31 サンプルチャンバ
32 電離箱検出器
33 放射線モニタ
34 核種測定ライン
35 放射線詳細検出装置
36 戻し配管
37 信号処理回路
38 測定チャンバ
39a〜39h 放射線検出器
40 プリアンプ(PA)
41 ゲートジェネレータ(GG)
42 メインアンプ(MA)
43 逆同時回路(ANTI COIN)
47,48 切替弁
46 減衰管ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉のオフガス系に接続された核種測定ラインと、
この各種測定ライン内に配設されたガス測定チャンバと、
このガス測定チャンバを囲む位置にて複数配設され、その径方向で対向するもの同士が対をなす放射線検出器と、
これら対をなす放射線検出器によりそれぞれ検出された両放射線検出信号が逆同時に検出されたときに、これら両放射線検出信号を計数せず、これら両放射線検出信号の一方が入力されたときに、その放射線検出信号を計数処理する逆同時計数処理手段と、
を具備していることを特徴とするオフガス核種連続測定装置。
【請求項2】
前記放射線検出器は、前記ガス測定チャンバの周方向と軸方向とにそれぞれ複数対配設されていることを特徴とする請求項1記載のオフガス核種連続測定装置。
【請求項3】
前記逆同時時計数処理手段は、前記ガス測定チャンバの軸方向位置が異なる位置にて径方向で対向して対をなす放射線検出器によりそれぞれ検出される放射線検出信号が逆同時に検出されなかったときに限り、その検出信号を計数するように構成されていることを特徴とする請求項2記載のオフガス核種連続測定装置。
【請求項4】
前記放射線検出器は、その一部または全部がCdTe放射線検出器であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のオフガス核種連続測定装置。
【請求項5】
前記放射線検出器にオフガスを案内するオフガス流路に、放射線を減衰させる減衰管ラインを切替自在に配設したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のオフガス核種連続測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−225393(P2007−225393A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45656(P2006−45656)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】