説明

オフセット印刷装置およびオフセット印刷方法

【課題】インキの溶剤によって膨潤した印刷用ブランケットの膨潤度を、簡易な構成により的確に検知し、印刷精度の低下を抑制することのできるオフセット印刷装置と、それを用いたオフセット印刷方法と、を提供する。
【解決手段】導電性粉末が分散された絶縁性ゴムからなる弾性体層を含む印刷用ブランケット2と、弾性体層に浸透したインキの溶剤を弾性体層から除去するための溶剤吸引手段(溶剤除去手段)11と、弾性体層の導電性を測定するための体積抵抗率測定手段(導電性測定手段)21と、を備えるオフセット印刷装置1を用いて、インキ受理面に担持されたインキを被印刷体20へ転写し(印刷工程)、印刷工程後の弾性体層の導電性を、体積抵抗率測定手段21で測定し(導電性測定工程)、さらに、導電性測定工程で測定された弾性体層の導電性に基づいて、インキの溶剤を弾性体層から除去する(溶剤除去工程)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷装置と、それを用いたオフセット印刷方法とに関し、詳しくは、微細パターンの精密印刷に用いられるオフセット印刷装置と、それを用いたオフセット印刷方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(PDP)用の電極基板や、電界発光(EL)素子用の電極基板の製造には、線幅が10〜200μm程度、厚さが0.1〜10μm程度の極めて微細な電極パターンを、精密に形成することが求められている。また、近年、このような電極パターンは、製造コストの低減などを目的として、オフセット印刷法により形成することが試みられている。
【0003】
オフセット印刷は、例えば、印刷版として凹版を使用し、ブランケットとしてシリコーンブランケットを使用することで、微細パターンの精密印刷においても、再現性の高いパターン形成が可能である。しかしながら、連続印刷によって印刷を繰り返すと、印刷用ブランケットがインキの溶剤で膨潤し、インキ受理面の濡れ特性が変化することから、例えば、パターンの線幅の広がり、被印刷体へのインキ転移性の低下といった不具合や、印刷版表面の微細な汚れまでも転写されるといった不具合が生じる。
【0004】
そこで、上記の不具合を解消するための印刷装置が提案されている。例えば、特許文献1に記載の印刷装置は、インキ受理面を有する弾性体層および前記弾性体層を支持するための基材を含む印刷用ブランケットと、前記弾性体層の誘電特性を測定するための誘電特性測定手段と、前記弾性体層に浸透したインキ溶剤を前記弾性体層から揮散させるための乾燥手段と、前記誘電特性測定手段により測定された前記弾性体層の誘電特性が予め設定された閾値と対応したときに、前記乾燥手段を用いて前記弾性体層を乾燥させるための制御手段と、を備えている。
【0005】
特許文献2に記載の印刷装置は、インキパターンを、ブランケットを介して被印刷体に転写するオフセット印刷装置であって、前記ブランケットに含浸したインキ溶媒量を検知する検知手段を備えている。同文献には、ブランケットに含浸したインキ溶媒量を検知する手段として、ブランケットからの反射光を検出する手段や、ブランケットの厚さを測定する手段が挙げられている。また、具体的に、ブランケットからの反射光を検出する方法としては、顕微ラマン法を用いる方法と、ブランケット面に滴下された溶媒の接触角を測定する方法と、赤外線吸光分析装置にATR(全反射)アタッチメントを装着してブランケット面に密着させる方法と、が挙げられており、ブランケットの厚さを測定する手段としては、レーザ変位計が挙げられている。
【特許文献1】特開2006−175850号公報
【特許文献2】特開2000−158620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、微細パターンの精密印刷に適しているシリコーンブランケットの場合、シリコーンゴムが低極性であって、その比誘電率は、2〜3程度と極めて低い。また、PDP用電極基板やEL素子用電極基板の電極形成に用いられる導電性ペースト状インキには、配合成分の溶解性の観点より、比較的低極性の溶剤が用いられ、溶剤の比誘電率も、一般的に、5〜20程度と低い。
【0007】
このため、特許文献1に記載の印刷装置を用いた場合に、シリコーンゴムがインキの溶剤で膨潤したとしても、膨潤の前後におけるシリコーンブランケットの誘電率の変化が乏しく、この誘電率の変化に基づいて検知される溶剤浸透量について、十分な信頼性が得られない。また、検知された溶剤浸透量についての信頼性の低下は、特に、シリコーンゴムの膨潤率(体積変化の程度)が数%以下である場合に顕著となる。
【0008】
一方、特許文献2に記載のインキ溶媒量の検知方法のうち、顕微ラマン法を用いる方法は、レーザ照射器と、分光装置とを備える顕微ラマン分光装置が必要になるため、装置が大掛かりなものとなる。また、印刷用ブランケットは、円筒状のブランケット胴に取り付けた状態で用いられることから、溶媒の接触角を測定する方法では、ブランケットの膨潤度の変化を精度よく追跡することが困難である。また、ATRアタッチメントを備える赤外線吸光分析装置で測定する方法では、顕微ラマン法を用いる場合と同様に、装置が大掛かりなものになる。さらに、この方法では、測定対象となる印刷用ブランケットが平坦なシートでなければならず、ブランケット胴に取り付けられた状態の印刷用ブランケットでは、正確な測定ができないという不具合がある。
【0009】
また、特許文献2に記載の検知方法のうち、レーザ変位計を用いて測定されたブランケットの厚さからインキ溶媒量を検知する方法では、ブランケットの厚さの変化量が膨潤率の変化量に比べて極めて小さいため、ブランケットの膨潤度の変化を精度よく追跡することが困難である。
そこで、本発明の目的は、インキの溶剤によって膨潤した印刷用ブランケットの膨潤度を、簡易な構成により的確に検知し、印刷精度の低下を抑制することのできるオフセット印刷装置と、そのオフセット印刷装置を用いたオフセット印刷方法と、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のオフセット印刷装置は、インキ受理面を有し、導電性粉末が分散された絶縁性ゴムからなる弾性体層を含む印刷用ブランケットと、前記弾性体層に浸透したインキの溶剤を前記弾性体層から除去するための溶剤除去手段と、前記弾性体層の導電性を測定するための導電性測定手段と、を備えていることを特徴としている。
【0011】
このオフセット印刷装置において、印刷用ブランケットの弾性体層は、導電性粉末が分散された絶縁性ゴムで形成されている。導電性粉末は、絶縁性ゴム中において互いに分散して存在するが、絶縁性ゴム中にイオンを移動させることができるため、弾性体層に導電性を発現させるためのパスとして作用する。一方、インキの溶剤の浸透によって弾性体層が膨潤すると、導電性粉末の間隔が互いに広がるため、弾性体層の導電性が低下する。それゆえ、弾性体層の導電性を測定することにより、その測定値に基づいて、弾性体層の膨潤の程度を精度よく検知できる。しかも、弾性体層の導電性は、例えば、印刷用ブランケットのインキ受理面に、抵抗率計のプローブを接触させるという、簡易な方法で測定することができる。
【0012】
それゆえ、本発明のオフセット印刷装置によれば、インキの溶剤によって膨潤した弾性体層の膨潤度を、簡易な構成により的確に検知することができる。また、こうして検知した弾性体層の膨潤度に基づき、溶剤除去手段によって弾性体層からインキの溶剤を除去することで、印刷精度の低下を抑制することができる。
本発明のオフセット印刷装置においては、前記導電性測定手段が、前記弾性体層の体積抵抗率を測定するための体積抵抗率測定手段であることが好適である。
【0013】
弾性体層の導電性は、弾性体層の体積抵抗率(体積固有抵抗)ρv[Ω・cm]、または表面抵抗率ρs[Ω/□]によって測定できる。なかでも、体積抵抗率ρvは、その測定値が弾性体層の厚みとは無関係であることから、弾性体層の膨潤の程度を直接的に数値化して評価することができる。このため、弾性体層の膨潤の程度を評価するためのパラメータとして特に好適である。
【0014】
本発明のオフセット印刷装置において、前記弾性体層は、前記膨潤率が0%から5%に上昇したときに、前記弾性体層の体積抵抗率ρv[Ω・cm]の対数値の増分Δlog ρvが、0.903以上であり、前記膨潤率が0%から10%に上昇したときに、前記弾性体層の体積抵抗率ρv[Ω・cm]の対数値の増分Δlog ρvが、1.903以上であることが好適である。
【0015】
弾性体層の膨潤率は、通常、繰返し印刷の初期において2〜3%程度であり、また、一般に、15%を上回ると、印刷精度の低下が顕著になる。このため、弾性体層の膨潤率が概ね0%から10%の範囲において、膨潤率の変化に伴う体積抵抗率の変化が顕著に現れるならば、弾性体層の膨潤率の変化を、体積抵抗率の測定値に基づいて精度よく追跡することができる。具体的に、本発明のオフセット印刷装置では、弾性体層の体積抵抗率ρv[Ω・cm]の対数値log ρvについて、膨潤率が0%から5%へ上昇したときの増分Δlog ρvが、0.903以上であり、膨潤率が0%から10%へ上昇したときの増分Δlog ρvが、1.903以上であることから、膨潤率の変化に伴う体積抵抗率の変化が大きく、弾性体層の膨潤率の変化を、体積抵抗率の測定値に基づいて精度よく追跡することができる。
【0016】
本発明のオフセット印刷装置においては、前記絶縁性ゴムが、シリコーンゴムであることが好適である。
シリコーンゴムは、耐熱性、耐候性、インキの転移性などに優れた材料であるため、インキ受理面を有する弾性体層の形成材料として好適である。また、シリコーンゴムは、インキの溶剤による膨潤と溶剤の乾燥とを繰返した後においても、その形状の復元性に優れている。しかも、シリコーンゴムは、それ自体が絶縁性であることから、導電性粉末の分散により導電性を付与した場合に、その導電性の変化の幅が極めて大きくとることができる。それゆえ、本発明において、弾性体層を形成する絶縁性ゴムは、シリコーンゴムであることが好ましい。
【0017】
本発明のオフセット印刷装置においては、前記溶剤除去手段が、前記インキ受理面の近傍を負圧下にさせ、前記弾性体層に含まれるインキの溶剤を、前記インキ受理面と非接触状態で吸引するための溶剤吸引手段、前記インキ受理面に接触されて、前記弾性体層に含まれるインキの溶剤を吸収するための溶剤吸収手段、および、前記弾性体層を加熱し、前記弾性体層に含まれるインキの溶剤を蒸発させるための溶剤蒸発手段、からなる群より選ばれる少なくとも1の手段であることが好適である。
【0018】
上記溶剤吸引手段、上記溶剤吸収手段、および上記溶剤蒸発手段のうち、少なくともいずれか1の手段を備えることで、弾性体層に浸透したインキの溶剤を弾性体層から効率よく除去することができる。
本発明のオフセット印刷装置においては、前記弾性体層の導電性を、前記インキ受理面の非印刷領域で測定することが好適である。
【0019】
インキ受理面の非印刷領域は、インキ受理面のうち、被印刷体の印刷領域以外の領域である。このため、上記非印刷領域に、初期のインキパターンの形成に用いるのと同じインキを用いて、ダミーパターンの形成と転写とを繰り返し、弾性体層の膨潤を検知したとしても、被印刷体の印刷領域における印刷精度に悪影響を及ぼすことがない。
本発明のオフセット印刷方法は、本発明のオフセット印刷装置を用いて、前記インキ受理面に担持されたインキを被印刷体へ転写する印刷工程と、前記印刷工程後の前記弾性体層の導電性を、前記導電性測定手段で測定する導電性測定工程と、前記導電性測定工程で測定された前記弾性体層の導電性に基づいて、前記弾性体層に浸透したインキの溶剤を前記弾性体層から除去する溶剤除去工程と、を有していることを特徴としている。
【0020】
このオフセット印刷方法によれば、印刷工程においてインキの溶剤により膨潤した弾性体層の膨潤度を、導電性測定工程において簡易な構成により的確に検知することができ、さらに、こうして検知した弾性体層の膨潤度に基づいて、溶剤除去工程によりインキの溶剤を弾性体層から除去することで、印刷精度の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のオフセット印刷装置およびオフセット印刷方法によれば、インキの溶剤によって膨潤した印刷用ブランケットの膨潤度を、簡易な構成により的確に検知し、印刷精度の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明のオフセット印刷装置の一実施形態を示す概略装置構成図である。図2は、印刷用ブランケットの一例を示す断面図であり、図3は、図2に示す印刷用ブランケットをインキ受理面側から見た説明図である。図4は、図1に示すオフセット印刷装置の溶剤吸引手段を示す部分拡大図である。また、図5は、本発明のオフセット印刷方法の一実施形態を示すフローチャートである。図6は、本発明のオフセット印刷装置の他の実施形態を示す概略装置構成図であり、図7は、本発明のオフセット印刷装置のさらに他の実施形態を示す概略装置構成図である。
【0023】
以下、図1〜7を参照しつつ、本発明のオフセット印刷装置および本発明のオフセット印刷方法の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、複数の実施形態を通じて同一または同種の部分については、同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
図1を参照して、このオフセット印刷装置1は、印刷用ブランケット2と、ブランケット胴3と、キャリッジ4と、フレーム5と、インキローラ6と、ドクター7と、版定盤8と、ワーク定盤9と、プローブ10と、溶剤吸収手段11と、を備えている。
【0024】
図2および図3を参照して、印刷用ブランケット2は、インキ受理面13を有する弾性体層12と、弾性体層12を支持するための支持体層14と、を備えている。また、印刷用ブランケット2のインキ受理面13は、後述する被印刷体20上に所望のインキパターンを形成するための印刷領域15と、この印刷領域15に対し、ブランケット胴3の軸線方向xの両端側に配置される非印刷領域16とを有している。さらに、この印刷用ブランケット2は、弾性体層12と支持体層14との間に、電極17と、導線18とを備えている。
【0025】
弾性体層12は、導電性粉末が分散された絶縁性ゴムで形成されている。また、この弾性体層12の一方側表面は、印刷用ブランケット2のインキ受理面13を形成しており、他方側表面は、後述する支持体層14に重ね合わされている。
絶縁性ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、などが挙げられ、なかでも好ましくは、シリコーンゴムが挙げられる。これら絶縁性ゴムは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
絶縁性ゴムの導電性は、例えば、体積抵抗率として、好ましくは、1×1010Ω・cm以上であり、さらに好ましくは、1×1011〜1×1017Ω・cmであり、特に好ましくは、1×1012〜1×1015Ω・cmである。絶縁性ゴムの体積抵抗率が上記範囲を下回ると、絶縁性ゴム中への導電性粉末の分散後に、インキの溶剤による弾性体層の膨潤に伴う弾性体層の体積抵抗率の変動幅が小さくなるため、膨潤度を検知する精度が低下するおそれが生じる。
【0027】
導電性粉末としては、例えば、導電性金属粉末、導電性金属酸化物粉末、導電性カーボンブラック、導電性材料で被覆されたフィラー、導電性可塑剤、ナノ金属粒子(粒子径が数nm〜数十nmの金属粒子)などが挙げられる。また、導電性金属粉末としては、例えば、金、銀、銅、白金、ニッケル、鉄、クロム、マンガンなどの、導電性を有する金属の粉末が挙げられる。導電性金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化インジウムなどの、導電性を有する金属酸化物の粉末が挙げられる。導電性カーボンブラックとしては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、グラファイトカーボンなどが挙げられる。導電性材料で被覆されたフィラーとしては、例えば、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウムなどの粉末の表面を、銀などの導電性金属、酸化スズなどの導電性金属酸化物、または導電性カーボンブラックなどで被覆したものが挙げられる。導電性可塑剤としては、例えば、アジピン酸エステル類などの可塑剤(粉末状のもの)に、リチウム化合物などのアルカリ金属塩、または第4級アンモニウム塩を含有させたものなどが挙げられる。導電性粉末は、上記のなかでも、好ましくは、導電性金属粉末が挙げられ、さらに好ましくは、ニッケル粉末、銀粉末、白金粉末が挙げられる。また、上記導電性粉末は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
導電性粉末の形状は、例えば、球状、フレーク(flake)状、ウィスカー(whisker)状などが挙げられ、なかでも好ましくは、球状が挙げられる。
また、導電性粉末の導電率は、絶縁性ゴムの導電性、導電性粉末の配合量などに合わせて適宜設定されるため、特に限定されないが、好ましくは、10〜1×10S/cmであり、さらに好ましくは、1×10〜1×10S/cmであり、特に好ましくは、1×10〜1×10S/cmである。導電性粉末の導電率が上記範囲を下回ると、弾性体層12に導電性を付与するために、多量の導電性粉末を配合する必要が生じ、弾性体層12の加工性の低下、硬度の上昇、インキ受理面13の平滑さの低下などの不具合を生じるおそれがある。逆に、導電性粉末の導電率が上記範囲を上回ると、インキの溶剤による弾性体層12の膨潤時と非膨潤時とで、弾性体層12中での導電性粉末同士の距離の変化に伴う弾性体層12の導電性の変化の幅が小さくなり、膨潤度を検知する精度が低下するおそれが生じる。
【0029】
導電性粉末の平均粒子径は、特に限定されないが、動的光散乱法による測定値として、例えば、好ましくは、0.01〜100μmであり、さらに好ましくは、0.1〜10μmであり、特に好ましくは、0.1〜1μmである。導電性粉末の平均粒子径が上記範囲を下回ると、導電性粉末が凝集しやすくなり、絶縁性ゴム中での分散性が低下するおそれがある。一方、導電性粉末の平均粒子径が上記範囲を上回ると、弾性体層12の表面粗さが大きくなり、インキ受理面13の平滑性が損なわれるおそれがある。なお、弾性体層12の表面粗さは、線幅10〜200μm程度の微細パターンを精密に印刷する観点より、好ましくは、十点平均粗さRzで0.1μm以下である。
【0030】
導電性粉末の配合割合は、絶縁性ゴムの抵抗率、導電性粉末の導電率などに合わせて適宜設定される。それゆえ、これに限定されないが、絶縁性ゴム100重量部に対する導電性粉末の配合割合は、例えば、好ましくは、10〜300重量部であり、さらに好ましくは、30〜200重量部であり、特に好ましくは、50〜150重量部である。
弾性体層12中での導電性粉末の充填密度は、インキの溶剤による絶縁性ゴムの膨潤の程度、絶縁性ゴムの抵抗率、導電性粉末の導電率などに合わせて適宜設定される。それゆえ、これに限定されないが、例えば、弾性体層1cmあたりの導電性粉末の含有量として、好ましくは、0.1〜3g/cmであり、さらに好ましくは、0.3〜2g/cmであり、特に好ましくは、0.5〜1.5g/cmである。または、弾性体層12中での導電性粉末同士の平均距離として、好ましくは、0.01〜10μmであり、さらに好ましくは、0.01〜5μmであり、特に好ましくは、0.1〜1μmである。
【0031】
弾性体層12の導電性に基づいて弾性体層12の膨潤率を正確に検知するために、弾性体層12の膨潤率が0%から5%に上昇したときの体積抵抗率ρv[Ω・cm]の対数値の増分Δlog ρv(下記式(1)参照)は、好ましくは、0.903以上であり、より好ましくは、0.954以上であり、特に好ましくは、1程度である。Δlog ρvの値が上記範囲を下回るときは、弾性体層12の体積抵抗率ρvの増分が小さくなるため、体積抵抗率ρvの測定値に基づく弾性体層12の膨潤率の検知が不正確になるおそれがある。なお、Δlog ρvが0.903、0.954、または1であるということは、すなわち、ρvが、順に、約8倍、約9倍、または10倍に増加したことを示している。
【0032】
また、弾性体層12の導電性に基づいて弾性体層12の膨潤率を正確に検知するために、弾性体層12の膨潤率が0%から10%に上昇したときの体積抵抗率ρv[Ω・cm]の対数値の増分Δlog ρv(下記式(2)参照)は、好ましくは、1.903以上であり、より好ましくは、1.954であり、特に好ましくは、2程度である。Δlog ρvの値が上記範囲を下回るときは、弾性体層12の体積抵抗率ρvの増分が小さくなるため、体積抵抗率ρvの測定値に基づいた弾性体層12の膨潤率の検知が不正確になるおそれがある。なお、Δlog ρvが1.903、1.954、または2であるということは、すなわち、ρvが、順に、約80倍、約90倍、または100倍に増加したことを示している。
【0033】
Δlog ρv=(log ρv)−(log ρv) …(1)
Δlog ρv=(log ρv10)−(log ρv) …(2)
(上記式(1)および式(2)中、log ρvは、膨潤率が0%であるときの弾性体層の体積抵抗率ρv[Ω・cm]の対数値を示し、log ρvは、膨潤率が5%であるときの弾性体層の体積抵抗率ρv[Ω・cm]の対数値を示し、log ρv10は、膨潤率が10%であるときの弾性体層の体積抵抗率ρv10[Ω・cm]の対数値を示す。)
弾性体層12の膨潤率の増加に対する体積抵抗率の上昇割合を、上記範囲に設定するには、絶縁性ゴムの性状(特に、その導電性)、導電性粉末の性状(特に、その導電率)、弾性体層12中での導電性粉末の配合量や充填密度などの条件を、それぞれ上述の範囲にて適宜設定すればよい。
【0034】
また、弾性体層12の導電性は、弾性体層12中にインキの溶剤が浸透していない状態(乾燥状態)で、好ましくは、1×10〜1×1010Ω・cmであり、さらに好ましくは、1×10〜1×10Ω・cmである。
支持体層14としては、特に限定されず、印刷用ブランケットの支持体層(基材)として使用可能な各種の材料が挙げられる。具体的に、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルフォン、脂肪族ポリアミドなどの合成樹脂からなるフィルム、例えば、アルミニウム、ステンレスなどの金属からなるシート、例えば、綿、ポリエステル、レーヨンなどの織布または不織布からなる基布に、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴムなどのゴムをゴム糊として含浸させたもの、などが挙げられる。
【0035】
電極17は、後述するプローブ10とともに、後述する体積抵抗率測定手段21を構成する部材であって、具体的には、体積抵抗率測定時の裏面電極として作用する。この電極17は、弾性体層12と支持体層14との間に設けられ、好ましくは、印刷用ブランケット2の厚み方向で非印刷領域16に属する領域に設けられる。弾性体層12と支持体層14との間に電極17を設けることで、インキ受理面13上において、電極17に起因する膨らみが少なからず発生するが、電極17を、印刷用ブランケット2の厚み方向で非印刷領域16に属する領域に設けることで、電極17に起因するインキ受理面13上の膨らみが、印刷精度に及ぼす影響を抑制できる。
【0036】
また、この電極17は、導電性材料の膜で形成されている。導電性材料としては、例えば、銅、白金、金などの金属、またはこれら金属からなるめっきが施された複合材料などが挙げられる。導電性材料の膜の特に好ましい例としては、例えば、銅箔が挙げられる。
導線18は、その一方側端部が、電極17に接続され、他方側端部が、後述する抵抗率計に接続される。
【0037】
再び図1を参照して、ブランケット胴3は、その外周面に印刷用ブランケット2を保持している。このブランケット胴3は、キャリッジ4によって、ブランケット胴3の軸で回転可能に支持されており、さらに、印刷用ブランケット2のインキ受理面13が後述する凹版19や被印刷体20の表面に対して離接可能なように、支持されている。
インキローラ6およびドクター7は、いずれも、凹版19や被印刷体20の表面に対して離接可能なように、キャリッジ4によって支持されており、フレーム5に沿って移動する。
【0038】
インキは、印刷の対象物に合わせて適宜選択されるものであり、特に限定されないが、例えば、印刷対象物が、PDP用電極基板やEL素子用電極基板の電極パターンである場合には、例えば、バインダ樹脂と、導電性粉末と、ガラスフリットと、溶剤と、を含有する導電性ペースト状インキが挙げられる。この導電性ペースト状インキを形成するバインダ樹脂、導電性粉末、ガラスフリット、および溶剤としては、PDP電極基板やEL素子用電極基板の形成に用いられる各種の材料が挙げられる。具体的に、バインダ樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などが挙げられる。導電性粉末としては、例えば、銀粉末などが挙げられる。また、溶剤としては、例えば、ブチルカルビトールアセテート(BCA;ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などのグリコールエステル系溶剤や、その他、導電性ペースト状インキに用いられる各種の溶剤が挙げられる。
【0039】
また、印刷対象物が、液晶カラーフィルタのカラーパターンである場合には、インキとして、例えば、バインダ樹脂と、着色剤と、溶剤とを含有するペースト状インキが挙げられる。このペースト状インキを形成するバインダ樹脂、着色剤、および溶剤としては、上記カラーパターンの形成に用いられる各種の材料が挙げられる。具体的に、例えば、バインダ樹脂や、溶剤としては、それぞれ、上記と同様のものが挙げられる。
【0040】
版定盤8は、フレーム5上に固定される。また、この版定盤8には、印刷版としての凹版19が固定される。なお、印刷版としては、凹版19に限定されず、例えば、平版、水なし平版、凸版などの各種の版が挙げられるが、例えば、PDP用電極基板やEL素子用電極基板のように、導電性金属粉末を多量に含有する導電性ペースト状インキを印刷することにより、微細で、かつ厚みの大きい電極パターンを形成する場合には、好ましくは、凹版19が挙げられる。
【0041】
ワーク定盤9は、フレーム5上に固定される。また、このワーク定盤9には、被印刷体20が固定される。この被印刷体20は、印刷の対象物に合わせて適宜選択される。それゆえ、これに限定されないが、具体的に、例えば、PDP用電極基板やEL素子用電極基板の電極パターンを印刷形成する場合には、被印刷体として、例えば、ガラス板などの透明基板が挙げられる。
【0042】
体積抵抗率測定手段21は、弾性体層12の導電性を測定するための導電性測定手段であって、待機位置22で待機されている印刷用ブランケット2のインキ受理面13に対して相対移動するプローブ10と、このプローブ10に接続される、図示しない抵抗率計と、上述の印刷用ブランケット2の電極17および導線18と、により構成されている。
プローブ10は、待機位置22で待機されている印刷用ブランケット2のインキ受理面13と接触して、弾性体層12の抵抗率を測定する。このプローブ10としては、例えば、四端子法による体積抵抗率の測定が可能な四探針プローブ、二端子法による体積抵抗率の測定が可能な二探針プローブなどが挙げられるが、接触抵抗の影響による測定誤差を解消する観点より、好ましくは、四探針プローブが挙げられる。
【0043】
プローブ10のインキ受理面13への接触位置は、印刷用ブランケット2の電極17を、印刷用ブランケット2の厚み方向にインキ受理面13側へと投影したときに、インキ受理面13上に現れる領域(電極投影領域17a)に設定される。この電極投影領域17aにプローブ10を接触させることで、弾性体層12をプローブ10と電極17とで挟み込むことができ、弾性体層12についての体積抵抗率の正確な測定が可能になる。
【0044】
電極投影領域17aは、好ましくは、インキ受理面13の非印刷領域16に現れる。非印刷領域16は、通常、凹版19からインキが転移されないため、電極投影領域17aにおける弾性体層12へのインキ溶剤の浸透も生じない。そこで、電極投影領域17aには、印刷工程時に凹版19からインキパターン(被印刷体20へのパターン形成に関与しない、いわゆるダミーパターン)が転移され、これにより、電極投影領域17aにおける弾性体層12と、印刷領域15における弾性体層12とが、同様の膨潤状態となるように調整される。
【0045】
溶剤吸引手段11は、弾性体層12に浸透したインキの溶剤を弾性体層12から除去するための溶剤除去手段であって、待機位置22で待機されている印刷用ブランケット2のインキ受理面13に近接して配置される吸引ノズル23と、吸引ライン24と、ガスノズル25と、ガス供給ライン26と、フィルタ27と、を備えている。
図4を参照して、吸引ノズル23は、インキ受理面13と間隔L1を隔てて対向配置されている。また、吸引ノズル23には、吸引ライン24を介して、図示しない真空ポンプが接続されている。この吸引ノズル23でインキ受理面13近傍の空気を連続的に吸引することにより、インキ受理面13近傍が負圧状態となり、インキの溶剤が弾性体層12から吸引ノズル23へと引き抜かれる。その結果、インキ受理面13と直接に接触することなく、かつ、インキ受理面13を加熱することなく、弾性体層12の膨潤率を調節することができる。
【0046】
吸引ノズル23による吸引は、インキ溶剤を効率的に吸引する観点から、吸引度をできる限り高くすること、すなわち、インキ受理面13近傍の真空度をできる限り高くすることが望ましい。しかし、真空度をあまり高くし過ぎると、弾性体層12に変形を生じる場合がある。このような観点から、吸引ノズル23による吸引は、インキ受理面13近傍の真空度が、例えば、1.33〜66500Pa、好ましくは、13.3〜13300Paとなるように、吸引ライン24を介して接続される真空ポンプによって調整する。
【0047】
また、インキ受理面13近傍の真空度を高くするには、吸引ノズル23の形状および大きさ(開口部の形状および大きさ)と、インキ受理面13と吸引ノズル23との、ブランケット胴3の径方向に沿う間隔L1とが、重要となる。吸引ノズル23は、ブランケット胴3の軸線方向に沿って、細長矩形状に開口されており、ブランケット胴3の軸線方向に沿う開口幅(横開口幅)は、軸線方向における印刷用ブランケット2の長さと同幅に設定されている。また、ブランケット胴3の周方向に沿うスリット間隔(縦開口幅)は、広くすると、吸引する面積を広くとることができる一方で、吸引度が低下する。このような観点から、スリット間隔(縦開口幅)は、例えば、10μm〜200mm、好ましくは、50μm〜100mmに設定される。スリット間隔(縦開口幅)が10μmより狭いと、吸引する面積が非常に狭く、単位面積あたりの吸引処理に過大な時間がかかり、印刷効率の低下を生じる。また、スリット間隔(縦開口幅)が200mmより広いと、吸引度を高めることが困難となり、あるいは、吸引度を高めるために、吸引能力の非常に高い真空ポンプを設備する必要を生じて、コストアップとなる。
【0048】
また、インキ受理面13と吸引ノズル23との間の、ブランケット胴3の径方向に沿う間隔L1は、吸引度を高めて、吸引効率を向上させる観点から、できる限り狭くすることが望ましい。一方で、間隔L1をあまりに狭くし過ぎると、吸引度が急激に高くなって印刷用ブランケット2が分断され、吸引ノズル23に吸引されて損傷を受ける場合がある。このような観点から、間隔L1は、例えば、30μm〜200mm、好ましくは、50μm〜100mmに設定される。間隔L1が30μmより狭いと、印刷用ブランケット2の厚みや表面精度のばらつき、あるいは、印刷用ブランケット2の回転時のふれなどにより、吸引度の調整が困難となる。吸引度の調整が困難になると、インキ受理面13において、吸引度が高くなる部分と吸引度が低くなる部分との差が大きくなって、弾性体層12の表面の乾燥が、そのような吸引度の相違によって全体的に不均一となり、そのため、次の除去工程において、型抜け不良を生じる場合がある。また、間隔L1が200mmより広いと、吸引度を高めることが困難となり、あるいは、吸引度を高めるために、吸引能力の非常に高い真空ポンプを設備する必要を生じて、コストアップとなる。
【0049】
ガスノズル25は、インキ受理面13にガスを吹き付ける吹付手段であって、吸引ノズル23に対し、ブランケット胴3の回転方向yの上流側に設けられ、インキ受理面13と間隔L2を隔てて対向配置されている。このガスノズル25でインキ受理面13にガスを吹き付けながら、吸引ノズル23で吸引することにより、インキ溶剤の吸引効率の向上を図ることができる。
【0050】
ガスノズル25は、ブランケット胴3の軸線方向に沿って、細長矩形状に開口されており、印刷用ブランケット2の軸線方向に沿う開口幅(横開口幅)は、軸線方向における印刷用ブランケット2の長さと同幅に設定される。また、ブランケット胴3の周方向に沿うスリット間隔(縦開口幅)は、例えば、3〜1000μm、好ましくは、30〜300μmに設定されている。また、インキ受理面13とガスノズル25との、ブランケット胴3の径方向に沿う間隔L2は、例えば、30μm〜200mm、好ましくは、50μm〜100mmに設定される。また、ガスノズル25と吸引ノズル23との、ブランケット胴3の周方向に沿う間隔L3は、例えば、10〜300mm、好ましくは、50〜150mmに設定される。
【0051】
なお、上記した吸引ノズル23による吸引は、ガスノズル25からインキ受理面13にガスを吹き付ける処理後、例えば、5秒以内、好ましくは、2秒以内に実施することが好ましい。それゆえ、ガスノズル25と吸引ノズル23との、ブランケット胴3の周方向に沿う間隔L3は、吸引工程における印刷用ブランケット2の回転速度などを勘案して設定することが好ましい。また、ガスノズル25には、ガス供給ライン26が接続されており、そのガス供給ライン26の途中には、メンブランフィルタなどのフィルタ27が介装されている。ガスノズル25から吹き付けるガスは、特に制限されないが、例えば、窒素ガスなどが用いられる。また、ガスは、十分に乾燥しているものが好ましく、さらには、フィルタ27の濾過によりクリーンに処理されているものが好ましい。
【0052】
また、ガスは、例えば、5〜15℃の冷風として吹き付けてもよく、あるいは、30〜150℃の温風として吹き付けてもよい。冷風として吹き付ければ、インキ受理面13近傍のインキ溶剤から気化熱を奪うことができ、インキ溶剤を蒸発し易くできる。温風として吹き付ければ、インキ受理面13近傍のインキ溶剤の温度を高めることができ、インキ溶剤を蒸発し易くできる。すなわち、いずれの場合も、吸引効率の向上を図ることができる。なお、温風を吹き付けると、インキ受理面13の表面も温められるが、続いて実行される吸引ノズル23による吸引において、冷却されることから、インキ受理面13の温度上昇は抑制される。
【0053】
ガスの吹き付けは、風速で管理すればよく、例えば、2〜100m/s、好ましくは、10〜50m/sに設定される。風速が2m/s未満であると、上記した効果が小さく、続いて実行される吸引ノズル23による吸引処理において、インキ溶剤を効率的に吸引することができず、また、風速が100m/sを超えると、インキ受理面13の周囲の気流を乱して、塵埃を飛散させるおそれがある。
【0054】
図5を参照して、上記オフセット印刷装置1を用いたオフセット印刷方法では、まず、印刷工程を実行する(ステップS1)。
印刷工程では、まず、キャリッジ4に支持されたインキローラ6とドクター7とが、フレーム5に沿って凹版19上を移動する。このとき、印刷用ブランケット2は、その外周面と凹版19の表面とが接触しないように、キャリッジ4で保持し、インキローラ6とドクター7とは、インキローラ6の外周面およびドクター7の刃先と、凹版19の表面とが、凹版19上において互いに接触するように、キャリッジ4で保持する。これにより、インキローラ6が、凹版19の凹部にインキを充填し、さらに、ドクター7が、凹部より溢れたインキを凹版19から取り除く。
【0055】
次いで、ブランケット胴3が回転しながら、フレーム5に沿って凹版19上を移動する。このとき、印刷用ブランケット2は、その外周面と凹版19の表面とが互いに接触するように、キャリッジ4で保持する。これにより、凹版19の凹部に充填されたインキが、印刷用ブランケット2のインキ受理面13に転移する。
次いで、ブランケット胴3が回転しながら、フレーム5に沿って被印刷体20上を移動する。このとき、印刷用ブランケット2は、その外周面と被印刷体20の表面とが互いに接触するように、キャリッジ4で保持する。これにより、インキ受理面13に担持されたインキが、被印刷体20上に転写し、被印刷体20上において所望のインキパターンが形成される。
【0056】
上記印刷工程の実行後、印刷工程の実行回数(印刷回数)Tをカウントする(ステップS2)。さらに、印刷回数Tが、後述する溶剤吸収工程の実行を決定するための予設定値Tとを対比し、印刷回数Tが予設定値Tに達しているか、達していないかを判定する(ステップS3)。印刷回数Tが予設定値Tに達していないとき(T<T)は、ステップS1へと戻る。一方、印刷回数Tが予設定値Tに達しているとき(T≧T)は、弾性体層12へのインキの溶剤の浸透が進行していると考えられることから、導電性測定工程としての体積抵抗率測定工程を実行する(ステップS4)。
【0057】
体積抵抗率測定工程では、まず、キャリッジ4に支持されたブランケット胴3を、待機位置22へと移動する。次いで、導電性測定手段10としての、図示しない抵抗率計と、プローブ10と、電極17とによって、弾性体層12の体積抵抗率を測定する。具体的には、待機位置22で待機されている印刷用ブランケット2の電極投影領域17aに、プローブ10を接触させる。こうして、プローブ10に電圧をかけることで、弾性体層12の体積抵抗率が測定される。体積抵抗率の測定に際し、抵抗率補正係数RCFは、弾性体層12の材質などに合わせて適宜設定される。
【0058】
次いで、体積抵抗率測定工程の実行後、体積抵抗率の測定値に基づいて、弾性体層12の膨潤率Q(%)を算出する。
弾性体層12の膨潤率Q(%)は、測定温度を23℃とし、インキの溶剤が浸透していない状態(膨潤前)の弾性体層12の体積Vと、測定時の弾性体層12の体積Vとにより、下記式で定義される。
【0059】
Q(%)=((V−V)/V)×100
具体的に、体積抵抗率の測定値に基づいて、弾性体層12の膨潤率Q(%)を算出するには、予め、弾性体層12を23℃で、インキの溶剤に浸漬して、膨潤率Qが既知のサンプルを調製することにより、弾性体層12の膨潤率Qと、体積抵抗率との関係を示す検量線を作成する。こうして、この検量線に基づいて、体積抵抗率の測定値より、弾性体層12の膨潤率Q(%)を算出する。
【0060】
次いで、算出された弾性体層12の膨潤率Q(%)と、後述する溶剤吸収工程の実行を決定するための予設定値Q(%)とを対比し、膨潤率Qが予設定値Qに達しているか、達していないかを判定する(ステップS6)。膨潤率Qが予設定値Qに達していないとき(Q<Q)は、ステップS1へと戻る。一方、膨潤率Qが予設定値Qに達しているとき(Q≧Q)は、弾性体層12へのインキの溶剤の浸透が進行していることから、溶剤吸引工程を実行する(ステップS7)。
【0061】
溶剤吸引工程では、弾性体層12に浸透したインキの溶剤を、吸引ノズル23によって吸収する。また、任意の処理として、吸引ノズル23での吸引とともに、インキ受理面13に対し、ガスノズル25からガスを吹き付ける。この溶剤吸引工程を実行することによって、弾性体層12に浸透したインキの溶剤が、インキが担持されていた時間などの如何にかかわらず、均一に乾燥される。
【0062】
溶剤吸引工程後の弾性体層12の膨潤率Qは、その後の印刷工程において、良好な印刷精度が得られるように、適宜設定される。なお、これに限定されないが、膨潤率Qがあまり低すぎると、印刷精度がかえって低下するおそれがあるため、溶剤吸引工程後の弾性体層12の膨潤率Qは、例えば、2〜3%程度となるように設定される。
溶剤吸引工程後、印刷回数Tのカウンタを初期化する(ステップS8)。こうして、上記オフセット印刷方法における一連の工程が終了する。
【0063】
上記の説明において、体積抵抗率測定工程(ステップS4)の実行は、ステップS3の要件を満たすことを条件としたが、これに限定されるものではなく、例えば、印刷工程(ステップS1)を1サイクル終了する毎に、体積抵抗率測定工程(ステップS4)を実行してもよい。なお、この場合、ステップS8が省略される。
図6を参照して、このオフセット印刷装置28は、印刷用ブランケット2と、ブランケット胴3と、キャリッジ4と、フレーム5と、インキローラ6と、ドクター7と、版定盤8と、ワーク定盤9と、プローブ10と、溶剤吸収手段29と、を備えている。
【0064】
溶剤吸収手段29は、弾性体層12に浸透したインキの溶剤を弾性体層12から除去するための溶剤除去手段であって、エンドレスベルト状の溶剤吸収体30と、溶剤吸収体30を支えるプーリ31と、溶剤吸収体30を、待機位置22で待機されている印刷用ブランケット2のインキ受理面13に対して離接可能に保持する、図示しない溶剤吸収体保持手段と、を備えている。
【0065】
溶剤吸収体30は、印刷用ブランケット2のインキ受理面13と接触されると、弾性体層12に浸透している溶剤を吸収する。また、これにより、弾性体層12からインキの溶剤を除去され、弾性体層12の膨潤率が調整される。この溶剤吸収体30は、これに限定されないが、例えば、樹脂フィルム、金属などからなる無端状のベルト基材と、このベルト基材の外周面を被覆する、ゴム、エラストマーなどからなる溶剤吸収層とを備えるものが挙げられる。
【0066】
ベルト基材を形成する樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアリレートなどの樹脂からなるフィルムが挙げられる。また、ベルト基材を形成する金属としては、例えば、ステンレス、ニッケル、鉄などが挙げられる。
溶剤吸収層を形成するゴムおよびエラストマーとしては、印刷に用いられるインキの溶剤に応じて適宜選択されるものであって、特に限定されないが、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムなどが挙げられる。また、溶剤吸収層を形成するゴムおよびエラストマーは、接触汚染性の低い材料であることが好ましい。具体的には、可塑剤および老化防止剤(より好ましくは、可塑剤、老化防止剤および軟化剤)を含有しない、いわゆる無可塑配合のゴムまたはエラストマー組成物が好適である。
【0067】
上記オフセット印刷装置28を用いたオフセット印刷方法では、弾性体層12に浸透したインキの溶剤を弾性体層12から除去する溶剤除去工程として、溶剤吸収体30を用いた溶剤吸収工程が実行される。この溶剤吸収工程では、例えば、図示しない溶剤吸収体保持手段によって、溶剤吸収体30の外周面が、印刷用ブランケット2のインキ受理面13に接触され、プーリ31によって、溶剤吸収体30が周回移動されることにより、達成される。
【0068】
具体的に、上記オフセット印刷装置28を用いたオフセット印刷方法では、上記オフセット印刷装置1を用いたオフセット印刷方法のステップS1からステップS6と同様にして、印刷工程、体積抵抗率測定工程などを実行した後、ステップS7の溶剤吸引工程に代えて、上記溶剤吸収工程が実行される。また、上記溶剤吸収工程の実行後には、上記オフセット印刷装置1を用いたオフセット印刷方法のステップS8が実行される。
【0069】
図7を参照して、このオフセット印刷装置32は、印刷用ブランケット2と、ブランケット胴3と、キャリッジ4と、フレーム5と、インキローラ6と、ドクター7と、版定盤8と、ワーク定盤9と、プローブ10と、溶剤蒸発手段33と、を備えている。
溶剤蒸発手段33は、弾性体層12に浸透したインキの溶剤を弾性体層12から除去するための溶剤除去手段であって、待機位置22で待機されている印刷用ブランケット2のインキ受理面13に近接して配置される送風機34と、ヒータ35とを備えている。
【0070】
送風機34は、インキ受理面13と間隔を隔てて対向配置されている。この送風機34でインキ受理面13に対し連続的に送風することにより、インキの溶剤が弾性体層から蒸発する。その結果、インキ受理面13と直接に接触することなく、弾性体層12の膨潤率を調節できる。
送風機34は、インキ受理面13に対し、5〜15℃の冷風を吹き付けてもよく、あるいは、30〜150℃の温風を吹き付けてもよい。冷風として吹き付ければ、インキ受理面13近傍のインキ溶剤から気化熱を奪うことができ、インキ溶剤を蒸発し易くできる。温風として吹き付ければ、インキ受理面13近傍のインキ溶剤の温度を高めることができ、インキ溶剤を蒸発し易くできる。すなわち、いずれの場合も、吸引効率の向上を図ることができる。
【0071】
ヒータ35は、インキ受理面13と間隔を隔てて対向配置されている。このヒータ35でインキ受理面13を連続的に加温することにより、インキの溶剤が弾性体層から蒸発する。また、これにより、弾性体層12の膨潤率が調整される。なお、ヒータ35でインキ受理面13を加温すると、弾性体層12が膨張するため、そのままの状態で印刷工程に供すると、印刷精度の低下を招く。このため、ヒータ35でインキ受理面13を加温したときには、例えば、インキ受理面13に対し、送風機34から冷風を吹き付けて、インキ受理面13を冷却することが好ましい。
【0072】
なお、溶剤蒸発手段33を用いた溶剤除去処理には、送風機34による送風と、ヒータ35による加温との両方を実行してもよく、いずれか一方を実行してもよい。
上記オフセット印刷装置32を用いたオフセット印刷方法では、弾性体層12に浸透したインキの溶剤を弾性体層12から除去する溶剤除去工程として、送風機34および/またはヒータ35を用いた溶剤蒸発工程が実行される。
【0073】
すなわち、上記オフセット印刷装置32を用いたオフセット印刷方法では、上記オフセット印刷装置1を用いたオフセット印刷方法のステップS1からステップS6と同様にして、印刷工程、体積抵抗率測定工程などを実行した後、ステップS7の溶剤吸引工程に代えて、上記溶剤蒸発工程が実行される。また、上記溶剤蒸発工程の実行後には、上記オフセット印刷装置1を用いたオフセット印刷方法のステップS8が実行される。
【0074】
上記の説明においては、導電性測定手段として、体積抵抗率測定手段21を例に挙げて説明したが(図2および図3参照)、導電性測定手段は表面抵抗率測定手段であってもよい。また、この場合、印刷用ブランケット2内の電極17に接続される導線18は、抵抗率計に接続されず、アースとして印刷用ブランケット2の外部で接地される。
また、上記の説明においては、オフセット印刷装置の溶剤除去手段として、溶剤吸引手段11(図1参照)、溶剤吸収手段29(図6参照)、および溶剤蒸発手段33(図7参照)を、それぞれ択一的に用いた例を挙げて説明したが、これら溶剤除去手段は、2以上備えられていてもよい。この場合において、かかるオフセット印刷装置を用いたオフセット印刷方法では、溶剤吸引工程、溶剤吸収工程、および溶剤蒸発工程を、同時に、または順次実行してもよい。
【0075】
また、上記の説明においては、印刷版として凹版19を使用した凹版オフセット印刷方法や、上述の平版、水なし平版、凸版などを印刷版として使用するオフセット印刷方法を例に挙げて説明したが、本発明のオフセット印刷方法はこれらの印刷方法に限定されず、例えば、反転印刷によるオフセット印刷方法であってもよい。
反転印刷によるオフセット印刷方法を採用する場合には、図5に示す印刷工程(ステップS1)として、例えば、下記(a)〜(d)の各工程を実行すればよい。
(a) 印刷用ブランケット2の表面の印刷領域15において、印刷用ブランケット2の軸線方向のすべての領域にわたってインキの塗布面が形成されるように、印刷用ブランケット2の表面にインキを塗布する塗布工程、
(b) 印刷用ブランケット2の表面に塗布されたインキを乾燥させる乾燥工程、
(c) 印刷用ブランケット2の表面に形成されたインキの塗布面を、所定のパターンを有する印刷版(凹凸版)に押圧することにより、上記印刷版の凸部と接触したインキを、上記印刷用ブランケット2の表面から除去する除去工程、および、
(d) 印刷用ブランケット2の表面において、除去されずに残存したインキを、被印刷体20に転写する転写工程。
【0076】
また、この反転印刷によるオフセット印刷方法での印刷工程においては、版定盤8上の印刷版として、凹版19に代えて、凹凸版を使用し、凹版19にインキを供給するためのインキローラ6およびドクター7に代えて、印刷用ブランケット2の表面にインキを供給するための手段(例えば、インキコータ、インキローラなど)を使用する。
上述のオフセット印刷装置およびオフセット印刷方法によれば、インキの溶剤によって膨潤した印刷用ブランケットの膨潤度を、簡易な構成からなる導電性測定手段によって的確に検知することができ、さらに、その検知結果に基づいて、溶剤除去手段を作動させることで、印刷用ブランケットの膨潤度を適切な範囲に調整することができ、ひいては、印刷精度の低下を抑制することができる。それゆえ、上述のオフセット印刷装置およびオフセット印刷方法は、例えば、PDP用電極基板やEL素子用電極基板における電極パターンの形成や、液晶ディスプレイ(LCD)用カラーフィルタのカラーパターンの形成に好適である。
【実施例】
【0077】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。
実施例1
凹版オフセット印刷法により、対角42型(42インチ)のPDP用前面板に対し、極微細パターンの印刷形成を実施した。
【0078】
凹版には、線幅80μm、ピッチ360μmのストライプパターンからなる凹部を備えるものを使用し、インキには、アクリル樹脂と、銀粉末と、ガラスフリットと、ブチルカルビトールアセテート(溶剤)とを含有する導電性ペースト状インキを使用した。
印刷用ブランケットには、PETフィルムからなる支持体層14上に、シリコーンゴムからなる厚さ300μmの弾性体層12を備えるものを使用した(図2および3参照)。この印刷用ブランケット2において、弾性体層12のゴム硬度は40(デュロメータ硬さ、タイプA、JIS−A型硬度計で測定)、表面粗さは0.1μm(10点平均粗さ)であった。また、この印刷用ブランケット2には、さらに、弾性体層12と支持体層14との間であって、印刷用ブランケット2の厚み方向で非印刷領域16に属する領域に、厚さ18μm、縦10mm、横10mmの銅箔からなる電極17を設けた(図2および3参照)。
【0079】
弾性体層12は、常温硬化型付加型シリコーンゴムに対し、平均粒子径(動的光散乱法)が0.1μmのニッケル微粉末を、重量比で1%配合したものを用いて形成した。こうして得られた弾性体層12(乾燥状態)の導電性は、1×10Ω・cmであった。
オフセット印刷装置には、溶剤吸引手段11を備えるオフセット印刷装置1を用いた(図1参照)。
【0080】
図4を参照して、吸引ノズル23とインキ受理面13との間隔L1を100μmとし、吸引ノズル23のスリットの幅(ブランケット胴3の軸線方向に沿う開口幅(横開口幅))を、印刷用ブランケット2の軸線方向xの幅と同じ1000mmとし、吸引ノズル23のスリット間隔(ブランケット胴3の周方向に沿ったスリットの幅(縦開口幅))を、100μmとした。また、吸引ノズル23による吸引は、インキ受理面13近傍の真空度が13.3Paとなるように、吸引ライン24を介して接続される真空ポンプで調整した。
【0081】
印刷初期では、弾性体層12の膨潤率が2〜3%であったのに対し、印刷工程を繰り返し実行することで、弾性体層12の膨潤率が上昇した。しかし、弾性体層12の膨潤率の上昇は、弾性体層12の体積抵抗率を測定することによって、高い精度で検知することができた。
このため、弾性体層12の膨潤率の上昇の程度に応じて、適宜、溶剤吸引手段11による溶剤吸収工程を実行することで、インキ受理面13の濡れ性を適宜調節することができた。また、これにより、PDP用前面板を1万枚印刷した後においても、前面板の面内(42インチ)における印刷精度を±10μm以内とすることができた。
【0082】
実施例2
反転印刷によるオフセット印刷法により、対角32型(32インチ)の液晶カラーフィルタ用基板に対し、極微細パターンの印刷形成を実施した。
印刷版には、液晶カラーフィルタのストライプパターンに相当する凹部と、このストライプパターン以外の部分に相当する凸部と、が設けられているガラス製の凹凸版を使用した。印刷用ブランケットには、実施例1で使用したのと同じものを使用した。インキには、レッド(R)、グリーン(G)およびブルー(B)の3色について、それぞれ、ポリエステル−メラミン樹脂と、有機顔料と、分散剤と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤)とを含有するペースト状カラーインキを使用した。
【0083】
また、オフセット印刷装置には、図1に示すインキローラ6およびドクター7に代えて、印刷用ブランケット2の印刷領域15における表面全体にインキを塗布するためのインキコータ(スリットダイコータ)を備え、版定盤8として、図1に示す凹版19に代えて、上記凹凸版を備えること以外は、実施例1で使用したのと同じオフセット印刷装置1(溶剤吸引手段11を備えるもの)を試用した。
【0084】
印刷用ブランケット2の印刷領域15全面に、スリットダイコータ(スリット間隔50μm)で上記ペースト状カラーインキを塗布した後、この印刷用ブランケット2を回転させながら、上記凹凸版に接触させて、印刷用ブランケット2の表面から不要なインキを取り除き、カラーパターンに相当するストライプパターンのみを残存させた。次いで、印刷用ブランケット2の表面に残存したインキを、被印刷体20(液晶カラーフィルタ用基板)上に転写して、カラーパターンを形成した。この一連の処理を、R、GおよびBの各色のインキについて実行して、液晶カラーフィルタを得た。
【0085】
印刷用ブランケット2の弾性体層12に浸透したインキ溶剤の除去処理は、実施例1と同じ条件で、弾性体層12の導電性に基づいて実行した。印刷初期では、弾性体層12の膨潤率が2〜3%であったのに対し、印刷工程を繰り返し実行することで、弾性体層12の膨潤率が上昇したものの、弾性体層12の膨潤率の上昇は、弾性体層12の体積抵抗率を測定することによって、高い精度で検知することができた。また、弾性体層12の膨潤率の上昇の程度に応じて、適宜、溶剤吸引手段11による溶剤吸収工程を実行することで、インキ受理面13の濡れ性を適宜調節することができ、これにより、液晶カラーフィルタを1万枚印刷した後においても、基板の面内(32インチ)における印刷精度を±3μm以内とすることができた。
【0086】
比較例1
印刷用ブランケットの弾性体層12が、ニッケル微粉末を含有しない常温硬化型付加型シリコーンゴムからなり、乾燥状態の導電性が1×1014Ω・cmであるものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、凹版オフセット印刷法により、対角42型(42インチ)のPDP用前面板に対し、極微細パターンの印刷形成を実施した。
【0087】
その結果、弾性体層12は、乾燥状態での体積抵抗率が高いため、弾性体層12の膨潤に伴う体積抵抗率の変化を検出することができなかった。
また、溶剤吸引手段11による溶剤吸収工程の実行は、PDP用前面板を10枚印刷する毎に実行したが、印刷ごとに線幅のばらつきや印刷形状の乱れが多発し、不良率が高く、安定した印刷を行うことができなかった。
【0088】
本発明は、以上の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲において、種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明のオフセット印刷装置の一実施形態を示す概略装置構成図である。
【図2】印刷用ブランケットの一例を示す断面図である。
【図3】図2に示す印刷用ブランケットをインキ受理面側から見た説明図である。
【図4】本発明のオフセット印刷装置の溶剤吸引手段を示す部分拡大図である。
【図5】本発明のオフセット印刷方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明のオフセット印刷装置の他の実施形態を示す概略装置構成図である。
【図7】本発明のオフセット印刷装置のさらに他の実施形態を示す概略装置構成図である。
【符号の説明】
【0090】
1:オフセット印刷装置、 2:印刷用ブランケット、 11:溶剤吸引手段、 12:弾性体層、 13:インキ受理面、 16:非印刷領域、 21:体積抵抗率測定手段、 28:オフセット印刷装置、 29:溶剤吸収手段、 32:オフセット印刷装置、 33:溶剤蒸発手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ受理面を有し、導電性粉末が分散された絶縁性ゴムからなる弾性体層を含む印刷用ブランケットと、
前記弾性体層に浸透したインキの溶剤を前記弾性体層から除去するための溶剤除去手段と、
前記弾性体層の導電性を測定するための導電性測定手段と、
を備えていることを特徴とする、オフセット印刷装置。
【請求項2】
前記導電性測定手段が、前記弾性体層の体積抵抗率を測定するための体積抵抗率測定手段であることを特徴とする、請求項1に記載のオフセット印刷装置。
【請求項3】
前記弾性体層は、
前記膨潤率が0%から5%に上昇したときに、前記弾性体層の体積抵抗率ρv[Ω・cm]の対数値の増分Δlog ρvが、0.903以上であり、
前記膨潤率が0%から10%に上昇したときに、前記弾性体層の体積抵抗率ρv[Ω・cm]の対数値の増分Δlog ρvが、1.903以上であることを特徴とする、請求項2に記載のオフセット印刷装置。
【請求項4】
前記絶縁性ゴムが、シリコーンゴムであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のオフセット印刷装置。
【請求項5】
前記溶剤除去手段が、
前記インキ受理面の近傍を負圧下にさせ、前記弾性体層に含まれるインキの溶剤を、前記インキ受理面と非接触状態で吸引するための溶剤吸引手段、
前記インキ受理面に接触されて、前記弾性体層に含まれるインキの溶剤を吸収するための溶剤吸収手段、および、
前記弾性体層を加熱し、前記弾性体層に含まれるインキの溶剤を蒸発させるための溶剤蒸発手段、
からなる群より選ばれる少なくとも1の手段であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のオフセット印刷装置。
【請求項6】
前記弾性体層の導電性を、前記インキ受理面の非印刷領域で測定することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のオフセット印刷装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のオフセット印刷装置を用いて、前記インキ受理面に担持されたインキを被印刷体へ転写する印刷工程と、
前記印刷工程後の前記弾性体層の導電性を、前記導電性測定手段で測定する導電性測定工程と、
前記導電性測定工程で測定された前記弾性体層の導電性に基づいて、前記弾性体層に浸透したインキの溶剤を前記弾性体層から除去する溶剤除去工程と、を有していることを特徴とする、オフセット印刷方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−296551(P2008−296551A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148316(P2007−148316)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】