説明

オプトエレクトロニクス半導体部品

放射を放出するのに適している活性層(4)を備えているオプトエレクトロニクス半導体部品であって、活性層(4)がカバー層(3a,3b)によって囲まれており、カバー層(3a,3b)もしくは活性層(4)またはその両方が、インジウムを含有するリン化物化合物半導体材料を備えており、このリン化物化合物半導体材料が、V族の追加元素として、元素Sbまたは元素Biの少なくとも一方を含んでいる、オプトエレクトロニクス半導体部品、を開示する。さらには、放射を放出するのに適している活性層(4)を備えているオプトエレクトロニクス半導体部品であって、活性層(4)が、インジウムを含有する窒化物化合物半導体材料を備えており、活性層(4)の窒化物化合物半導体材料が、V族の追加元素として、元素As、元素Sb、元素Biのうちの少なくとも1種類を含んでいる、オプトエレクトロニクス半導体部品、を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オプトエレクトロニクス半導体部品に関し、詳細には、インジウムを含有するリン化物化合物半導体材料、またはインジウムを含有する窒化物化合物半導体材料、を備えているLED、に関する。
【0002】
[関連出願]
本特許出願は、独国特許出願第102009004895.2号の優先権を主張し、この文書の開示内容は参照によって本出願に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
InGaAlNまたはInGaAlPをベースとするオプトエレクトロニクス部品の半導体層をエピタキシャル成長させるとき、たとえ最適な工程条件下でも、望ましくない効果がしばしば発生する。
【0004】
InGaAlNからなるエピタキシャル半導体層においては、インジウム濃度の高い領域(いわゆるクラスタ)が形成されることがある。このクラスタの領域には局所的な大きな歪みが発生し、これによって結晶欠陥が形成されることがあり、これらの欠陥は、非放射再結合中心として、LEDの効率を低下させる。クラスタの形成の程度が小さく、結晶欠陥の発生につながらない場合でも、Inクラスタの領域において電荷キャリア密度が局所的に高まるため光学活性層におけるオージェ再結合の割合が増大することにより、LEDの効率が低下しうる。
【0005】
インジウム濃度の高い領域が形成される傾向は、高い成長温度を使用することによって減少させ得ることが明らかになっているが、その結果として、エピタキシャル成長させる層へのインジウムの組み込みも阻害される。InAlGaN半導体層をMOVPE(有機金属気相成長法)によってエピタキシャル成長させるときには、800mbar以上の比較的高い反応炉圧力によっても、クラスタの形成を減少させることができる。しかしながら、これによって、例えばNHや有機金属化合物(TMGa、TMAl、TMInなど)を含んでいるプロセスガスの望ましくない前反応(prior reactions)が大幅に増大し、結果としてナノ粒子が形成され、したがって半導体層に欠陥が発生しうる。このような前反応を、その原因となる原材料の供給を空間的および時間的に分けることによって減少させる方法は、それによって成長パラメータ(特に成長速度)が制限され、エピタキシ装置の要件も厳しくなり、それに関連するコストも増大するため、好適に適用できる範囲は限られている。
【0006】
インジウムクラスタの形成は、III族材料に対するV族材料の比率を高めることによっても、特に、気相中のNHの供給比率を高めることによっても、減少させ得るが、この場合にも、プロセスガスの前反応が増大し、NHの供給コストも上昇する。
【0007】
InGaAlPをベースとするLEDの半導体層をエピタキシャル成長させるとき、エピタキシャル層の材料が順に堆積してIII族原子がある程度交互に配置された領域が生じることが観察される。この効果は、「オーダリング」とも称される。これらの領域は結晶粒境界によって互いに隔てられており、結晶粒境界は、非放射再結合中心としてLEDの活性層の効率を低下させうる。LEDの場合、活性層は一般的にバリア層によって囲まれており、バリア層はバンドギャップが活性層よりも大きく、したがって活性層における電荷キャリアの閉じ込めが生じる。オーダリングの結果として半導体材料のバンドギャップが縮小することが観察されており、これはバリア層の機能に悪影響を及ぼす。これによって漏れ電流が増大し、したがってLEDの効率が低下することがある。
【0008】
オーダリングは、高い成長温度を使用することによって少なくともある程度は減少させ得るが、結果として、エピタキシャル層におけるドーパントの望ましくない拡散も強まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、インジウムを含有するリン化物化合物半導体、またはインジウムを含有する窒化物化合物半導体、をベースとする、高い効率を有するオプトエレクトロニクス半導体部品、を開示することである。具体的には、効率に悪影響を及ぼす上述した不利な効果を減少させる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1によるオプトエレクトロニクス半導体部品、または請求項9によるオプトエレクトロニクス半導体部品によって、達成される。従属請求項は、本発明の有利な構造形態および発展形態に関する。
【0011】
インジウムを含有するリン化物化合物半導体材料、またはインジウムを含有する窒化物化合物半導体材料、からなる半導体層をエピタキシャル成長させるときの上述した不利な効果は、PまたはNに加えて少なくとも1種類の追加のV族元素を含んでいる半導体材料によって、減少させることができる。具体的には、窒化物化合物半導体材料の場合にはAs、Bi、Sbのうちの少なくとも1種類を添加することによって、リン化物化合物半導体材料の場合にはBiまたはSbのうちの少なくとも一種類を添加することによって、オプトエレクトロニクス部品の効率を高めることが可能である。
【0012】
一実施形態によると、オプトエレクトロニクス半導体部品は、放射を放出するのに適している活性層を備えており、活性層がクラッド層によって囲まれており、クラッド層もしくは活性層またはその両方が、インジウムを含有するリン化物化合物半導体材料を備えており、このリン化物化合物半導体材料は、V族の追加の元素として元素Biまたは元素Sbのうちの少なくとも一方を含んでいる。
【0013】
リン化物化合物半導体材料がV族の追加元素としてBiまたはSbを含んでいることによって、いわゆるオーダリング、すなわち、主としてインジウム含有層とAlまたはGa含有層とを交互に含んだ規則的配置領域(ordered regions)が半導体層に形成されること、が減少する。オーダリングが減少する結果として、リン化物化合物半導体材料中の結晶粒境界(grain boundaries)(非放射再結合中心として、放射放出オプトエレクトロニクス半導体部品の効率を低下させ得る)の数も減少する。これと同時に、化学量論的組成が同じである場合、化合物半導体のバンドギャップが増大する。
【0014】
特に、オーダリングを減少させる効果は、エピタキシャル成長時に半導体層の表面における原子の移動度が、重い原子SbまたはBiによって減少することに基づくものと考えられる。このメカニズムにおいてはV族の追加原子の質量が重要であるため、より重い元素Biを添加する方が、Sbを添加するよりもさらに効果的である。さらには、追加の原子によって、オーダリングが減少するように表面の電子構造を変化させることができる。
【0015】
活性層を囲んでいるクラッド層は、V族の追加元素として、BiもしくはSbまたはその両方を含んでいることが好ましい。クラッド層は、活性層よりも大きなバンドギャップを有することが有利である。このようにすることで、クラッド層によって活性層における電荷キャリアの閉じ込めが生じ、その結果として、放射放出オプトエレクトロニクス部品の効率が高まる。V族の追加の元素としてBiもしくはSbまたはその両方を添加することによって、オーダリングが減少するのみならず、リン化物化合物半導体材料のバンドギャップも大きくなることが判明した。このようにバンドギャップが大きくなることによってクラッド層の効果が強くなり、このようにして、オプトエレクトロニクス半導体部品(特に、LED、半導体レーザ、または太陽電池とすることができる)の効率が高まる。
【0016】
好ましい一バリエーションにおいては、V族の追加の元素BiもしくはSbまたはその両方は、活性層ではなくクラッド層に組み込まれている。したがって、クラッド層のみにおいてバンドギャップが大きくなり、結果として、活性層のバンドギャップとクラッド層のバンドギャップとの差が増大し、これにより、活性層における電荷キャリアの閉じ込めがさらに改善される。
【0017】
しかしながら、これに代えて、クラッド層と活性層の両方が、BiもしくはSbまたはその両方を含んでいる、あるいは、活性層のみが、BiもしくはSbまたはその両方を含んでいることも可能であり、なぜなら、活性層のリン化物化合物半導体材料におけるオーダリングが減少することで、結晶粒境界が減少し、これによってオプトエレクトロニクス部品の効率が高まるためである。
【0018】
クラッド層もしくは活性層またはその両方のリン化物化合物半導体材料は、特に、組成InGaAl1−x−y1−zSbまたはInGaAl1−x−y1−zBi(0<x≦1,0≦y<1,x+y≦1,0<z<1)を有することができる。
【0019】
さらには、リン化物化合物半導体材料は、元素Sbおよび元素Biの両方を含んでいることもできる。したがって、リン化物化合物半導体材料は、組成InGaAl1−x−y1−z(SbBi1−u(0<x≦1,0≦y<1,x+y≦1,0≦u≦1,0<z<1)を有する。
【0020】
リン化物化合物半導体材料は、III族の元素としてIn、Ga、およびAlのすべてを含んでいることが有利である。したがって、この場合、x>0,y>0,x+y<1が成り立つ。したがって、リン化物化合物半導体材料は、五元半導体材料である。
【0021】
V族の少なくとも1種類の追加元素を添加することによって、半導体材料の追加のドーピングが生じることがなく(これは有利である)、なぜなら、SbまたはBiがV族元素の位置において等電子的に(isoelectronically)結晶格子に組み込まれるためである。
【0022】
V族の元素SbまたはBiがたとえ極めて少量であっても、オーダリングを減少させるのに十分であることが判明した。リン化物化合物半導体材料中の少なくとも1種類の追加のV族元素の割合zは、0<z≦0.03が成り立つことが好ましい。好ましくは0<z≦0.02、特に好ましくは0<z≦0.005が成り立つ。極めて少量のV族の追加元素がリン化物化合物半導体材料に添加されるため、半導体材料の構造的特性および電子的特性は、オーダリングの有利な減少とバンドギャップの増大を除いて、わずかな影響を受けるのみである。
【0023】
V族の追加元素を組み込む方策は、リン化物化合物半導体材料中のインジウムの割合が約0.5である場合に特に有利であり、なぜなら、この半導体材料においてオーダリングが生じる傾向は、インジウムの割合が約0.5の場合に最大であるためである。半導体材料中のインジウムの割合は、0.3≦x≦0.7が有利であり、好ましくは0.4≦x≦0.6、特に好ましくは0.45≦x≦0.55である。
【0024】
さらなる実施形態によると、オプトエレクトロニクス半導体部品は、インジウムを含有する窒化物化合物半導体を備えている活性層、を含んでおり、活性層の窒化物化合物半導体材料は、V族の追加元素として、元素As、Bi、Sbのうちの少なくとも1種類を含んでいる。
【0025】
特に、窒化物化合物半導体材料の製造時に、元素As、Bi、Sbのうちの少なくとも1種類を添加することによって、インジウムクラスタの形成が減少することが判明した。
【0026】
インジウムクラスタの形成が減少することによって、活性層において非放射再結合中心として作用する結晶欠陥の形成が減少する。このようにすることで、オプトエレクトロニクス半導体部品の効率が改善され、この場合、オプトエレクトロニクス半導体部品は、特に、LED、半導体レーザ、または太陽電池とすることができる。
【0027】
インジウムクラスタの形成を減少させる効果は、Nと比べて比較的重い原子As、Sb、またはBiによって、エピタキシャル成長時に結晶表面におけるインジウム化合物の移動距離が、特に衝撃によって減少することに基づくものと考えられる。表面における重い原子によってインジウム化合物の移動度が減少するものと考えられ、したがって、インジウム原子は、別のインジウム原子と結合してクラスタを形成する前に、表面に衝突した位置の近傍において結晶格子に組み込まれる。
【0028】
このメカニズムにおいては、V族の追加原子の質量が重要な役割を果たすため、Asを添加するよりも、より重い元素SbまたはBiを添加する方がさらに効果的である。Sbよりも重いBiを添加することが、特に好ましい。
【0029】
このようにすることで、成長温度を高める、あるいはIII族材料に対するV族材料の比率を大きくする(それぞれ不利な効果を伴う)必要なしに、インジウムクラスタの形成が減少する。さらには、元素As、Sb、またはBiはV族元素の位置において等電子的に結晶格子に組み込まれ、したがって追加のドーピング効果が生じず、これは有利である。
【0030】
半導体層をMOVPEによってエピタキシャル成長させるとき、追加の元素As、Sb、またはBiは、追加のプロセスガス(例えばTESbまたはAsH)の形で反応炉に供給することができる。あるいは、As、Sb、またはBiを、プロセスガス(例えばTMGaまたはTMAl)中の対象の不純物として供給することもできる。
【0031】
窒化物化合物半導体材料は、組成InGaAl1−x−y1−zAs、InGaAl1−x−y1−zSb、またはInGaAl1−x−y1−zBi(いずれの場合も0<x≦1,0≦y≦1,x+y≦1,0<z<1)を有することが好ましい。
【0032】
さらには、窒化物化合物半導体材料は、元素As、Sb、Biのうちの2種類またはすべてを含んでいることもできる。したがって、窒化物化合物半導体材料は、組成InGaAl1−x−y1−z(AsSbBi1−u−v(0<x≦1,0≦y<1,x+y≦1,0≦u≦1,0≦v≦1,u+v≦1,0<z<1)を有する。
【0033】
窒化物化合物半導体材料は、特に、III族の3種類の元素In、Ga、およびAlのすべてを備えていることができ、すなわち、x>0,y>0,1−x−y>0が成り立つ。この場合、窒化物化合物半導体材料は、五元半導体材料であることが好ましい。
【0034】
V族の元素As、Sb、またはBiがたとえ極めて少量であっても、インジウムクラスタの形成を減少させるのに十分であることが判明した。窒化物化合物半導体材料中の少なくとも1種類の追加のV族元素の割合zは、0<z≦0.03が成り立つことが好ましい。好ましくは0<z≦0.02、特に好ましくは0<z≦0.005が成り立つ。極めて少量の追加のV族元素が窒化物化合物半導体材料に添加されるのみであるため、半導体材料の構造的特性および電子的特性は、インジウムクラスタの形成が有利に減少する以外は、わずかな影響を受けるにすぎない。
【0035】
V族の追加元素を組み込む方策は、窒化物化合物半導体材料中のインジウム含有量が比較的高い場合に特に有利であり、なぜなら、インジウム含有量が増すにつれて、インジウムクラスタが形成される危険性も高まるためである。半導体材料中のインジウムの割合は、x≧0.1が有利であり、好ましくはx≧0.2、特に好ましくはx≧0.3である。このようなインジウム含有量(窒化物化合物半導体材料にとって比較的高い)は、特に、緑色を発するオプトエレクトロニクス半導体部品を製造するときに要求される。半導体材料のバンドギャップはインジウム含有量が増すほど小さくなるため、活性層によって放出される放射の波長は、インジウム含有量が増すにつれて長波長側にシフトする。
【0036】
したがって、インジウム含有量が比較的高い場合、通常ならば紫外線または青色のスペクトル範囲内で放出する窒化物化合物半導体部品の代わりに、効率的な緑色発光部品を実施することも可能である。
【0037】
以下では、本発明について、図1および図2を参照しながら2つの例示的な実施形態に基づいてさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の例示的な実施形態によるオプトエレクトロニクス半導体部品の断面の概略図を示している。
【図2】本発明の第2の例示的な実施形態によるオプトエレクトロニクス半導体部品の断面の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図面において、同一の構成部分または機能が同じである構成部分には同じ参照記号を付してある。図示した構成部分、および構成部分の間の互いのサイズの関係は、正しい縮尺ではないことを理解されたい。
【0040】
図1に示したオプトエレクトロニクス半導体部品は、LEDである。このLEDは、基板1に堆積されているエピタキシャル積層体8を有し、このエピタキシャル積層体は、特に、MOVPEによって形成することができる。
【0041】
エピタキシャル積層体8は、放射を放出する活性層4を含んでいる。活性層は、例えば、個々の層として、ダブルヘテロ構造として、単一量子井戸構造として、または多重量子井戸構造として、実施することができる。特に、量子井戸構造という表現は、量子化の次元に関して何らかの指定を行うものではない。したがって、量子井戸構造には、特に、量子井戸、量子細線、および量子ドットと、これらの構造の任意の組合せが包含される。
【0042】
活性層4は、第1のクラッド層3aと第2のクラッド層3bとの間に配置されている。クラッド層3a,3bは、活性層4よりも大きなバンドギャップを有することが有利であり、その結果として、活性層4において電荷キャリアの閉じ込めが生じる。クラッド層3a,3bは、複数の部分層からなる積層体の構造とすることもできる。
【0043】
基板1と第1のクラッド層3aとの間に、1層または複数のさらなる半導体層2を配置することができる。さらには、第2のクラッド層3bの後ろに、1層または複数のさらなる半導体層5(例えば、電流拡散層、コンタクト層)を配置することもできる。一例として、基板1と活性層4との間に配置されている半導体層2,3aがn型にドープされており、基板1とは反対側の活性層4の面に配置されている半導体層3b,5がp型にドープされている。基板1は、例えば、GaAs基板とすることができる。
【0044】
このLEDとの電気接続を形成する目的で、一例として、エピタキシャル積層体8とは反対側の基板1の裏面に第1のコンタクト金属層7が形成されており、基板とは反対側のエピタキシャル積層体8の面に第2のコンタクト金属層6が形成されている。
【0045】
クラッド層3a,3bもしくは活性層4またはその両方は、インジウムを含有するリン化物化合物半導体材料を含んでおり、このリン化物化合物半導体材料は、Pに加えて、V族の追加元素として元素SbまたはBiの少なくとも一方を備えている。
【0046】
クラッド層3a,3bもしくは活性層4またはその両方のリン化物化合物半導体材料は、組成InGaAl1−x−y1−zSbまたはInGaAl1−x−y1−zBi(いずれの場合も0<x≦1,0≦y<1,x+y≦1,0<z<1)を有することが好ましい。さらには、リン化物化合物半導体材料は、追加のV族元素SbおよびBiの両方を備えていることもできる。したがって、リン化物化合物半導体材料は、組成InGaAl1−x−y1−z(SbBi1−u(0<x≦1,0≦y<1,x+y≦1,0≦u≦1,0<z<1)を有する。
【0047】
V族の追加元素としてSbもしくはBiまたはその両方を添加することによって、リン化物化合物半導体におけるいわゆるオーダリングが減少し、その結果として、半導体材料における結晶粒境界の形成も減少する。半導体材料の規則的配置領域の間の結晶粒境界は、電荷キャリアの非放射再結合中心として作用するため、結晶粒境界が減少することによってLEDの効率が高まる。これは、特に、活性層4が追加元素としてSbまたはBiを含んでいる場合である。
【0048】
さらなる好ましい実施形態においては、クラッド層3a,3bのリン化物化合物半導体材料に、追加元素SbもしくはBiまたはその両方が含まれている。SbもしくはBiまたはその両方を添加することによって、リン化物化合物半導体材料のバンドギャップが大きくなることが判明した。このようにすることで、活性層4における電荷キャリアの閉じ込めに関連するクラッド層の効果が強まる。
【0049】
リン化物化合物半導体材料のオーダリングの減少およびバンドギャップの増大に関連する、追加元素SbもしくはBiまたはその両方の有利な効果は、比較的少量のこれらV族の追加材料によって得られる。リン化物化合物半導体材料中の元素SbもしくはBiまたはその両方の割合zは、z≦0.03が有利であり、好ましくはz≦0.02、特に好ましくはz≦0.005である。
【0050】
追加元素SbもしくはBiまたはその両方を組み込む方策は、リン化物化合物半導体材料中のインジウムの割合が約0.5である場合に特に有利であり、なぜなら、この半導体材料においてオーダリングが生じる傾向は、インジウムの割合が約0.5の場合に最大であるためである。半導体材料中のインジウムの割合は、0.3≦x≦0.7が有利であり、好ましくは0.4≦x≦0.6、特に好ましくは0.45≦x≦0.55である。
【0051】
図2に断面図として概略的に示したオプトエレクトロニクス半導体部品は、薄膜LEDである。薄膜LEDとは、元の成長基板がエピタキシャル積層体8から除去されており、エピタキシャル積層体8が元の成長基板とは反対側においてキャリア9の上に取り付けられているLEDを意味するものと理解されたい。
【0052】
エピタキシャル積層体8は、キャリア9に近い方から、例えば、1層または複数のp型ドープ層5と、p型にドープされた第2のクラッド層3bと、活性層4と、n型にドープされた第1のクラッド層3aと、1層または複数のn型ドープ層2と、を有する。したがって、このエピタキシャル積層体8の構造は、図1に示した構造に対応しているが、半導体層の順序が逆である。したがって、薄膜LEDの場合、一般に、p型にドープされた半導体層3b,5がキャリアの側にあり、n型にドープされた層2,3aがキャリア9とは反対側にある。エピタキシャル積層体8から元の成長基板が除去され、エピタキシャル積層体8がキャリア9(反射性のコンタクト層7が設けられていることが好ましい)に貼り付けられている結果として、LEDの効率が高まり、成長基板を再利用することができ、これは有利である。このことは、窒化物化合物半導体の成長基板が比較的高価である場合(例えば、GaNまたはサファイアからなる基板)に、特に有利である。
【0053】
図1に記載した例示的な実施形態の場合と同様に、このLEDの活性層4は、第1のクラッド層3aと第2のクラッド層3bとの間に配置されている。活性層4は、インジウムを含有する窒化物化合物半導体材料を含んでいる。窒化物化合物半導体材料は、Nに加えて、V族の追加元素として材料As、Sb、Biのうちの少なくとも1種類を含んでいる。
【0054】
活性層4の窒化物化合物半導体材料は、特に、組成InGaAl1−x−y1−zAs、InGaAl1−x−y1−zSb、またはInGaAl1−x−y1−zBi(0<x≦1,0≦y<1,x+y≦1,0<z<1)を有する。
【0055】
追加元素As、Sb、またはBiのうちの2種類またはすべてを備えている化合物も可能である。したがって、この窒化物化合物半導体材料は、組成InGaAl1−x−y1−z(AsSbBi1−u−v(0<x≦1,0≦y<1,x+y≦1,0≦u≦1,0≦v≦1,u+v≦1,0<z<1)を有する。
【0056】
少なくとも1種類の追加元素As、Bi、またはSbによって、活性層4の窒化物化合物半導体材料におけるインジウムクラスタの形成が減少し、これは有利である。インジウムクラスタが減少する利点として、非放射再結合中心としてLEDの効率を低下させうる結晶欠陥の発生が減少する。このようにすることで、インジウムクラスタの領域における電荷キャリア密度の局所的な増大(これによって非放射性のオージェ再結合の割合が増大しうる)も減少する。
【0057】
薄膜LEDとの電気接続は、例えば、キャリア9の上のコンタクト金属層7(LEDによって放出される放射に対して反射性であることが好ましい)と、キャリア9とは反対側のエピタキシャル積層体8の面におけるさらなるコンタクト金属層6とによって、形成することができる。
【0058】
窒化物化合物半導体材料にV族の追加元素としてAs、Sb、またはBiを添加することは、放射を放出する活性層4のインジウム含有量が比較的高いときに特に有利である。活性層4のインジウム含有量は、特にx≧0.1、特に好ましくはx≧0.2、場合によってはx≧0.3とすることができる。
【0059】
窒化物化合物半導体材料における元素As、Bi、またはSbのうちの1種類の量がたとえ少量であっても、インジウムクラスタの形成を減少させるのに十分である。追加元素の割合zは、0<z≦0.03が有利であり、好ましくは0<z≦0.02、特に好ましくは0<z≦0.005である。このような少量の追加元素の場合、窒化物化合物半導体材料の電子的特性はわずかに影響を受けるのみであり、これは有利である。
【0060】
当然ながら、第2の例示的な実施形態による、成長基板を備えていない薄膜LEDとして、窒化物化合物半導体材料をベースとするエピタキシャル積層体8を備えているLEDのみならず、上述した第1の例示的な実施形態における、リン化物化合物半導体材料をベースとするエピタキシャル積層体8を実施することもできる。同様に、第2の例示的な実施形態における、窒化物化合物半導体材料をベースとするエピタキシャル積層体8を、図1に示したように、成長基板を備えたLEDとして実施することができる。
【0061】
ここまで、本発明について例示的な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に制限されない。本発明は、任意の新規の特徴および特徴の任意の組合せを包含しており、特に、請求項における特徴の任意の組合せを含んでいる。これらの特徴または特徴の組合せは、それ自体が請求項あるいは例示的な実施形態に明示的に記載されていない場合であっても、本発明に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射を放出するのに適している活性層(4)を備えているオプトエレクトロニクス半導体部品であって、前記活性層(4)がクラッド層(3a,3b)によって囲まれており、
前記クラッド層(3a,3b)もしくは前記活性層(4)またはその両方が、インジウムを含有するリン化物化合物半導体材料を備えており、前記リン化物化合物半導体材料が、V族の追加元素として、元素Biまたは元素Sbの少なくとも一方を含んでいる、
オプトエレクトロニクス半導体部品。
【請求項2】
前記クラッド層(3a,3b)が、BiもしくはSbまたはその両方を含んでいる、
請求項1に記載のオプトエレクトロニクス半導体部品。
【請求項3】
前記活性層(4)が、BiおよびSbのいずれも含んでいない、
請求項1または請求項2に記載のオプトエレクトロニクス半導体部品。
【請求項4】
前記活性層(4)が、BiもしくはSbまたはその両方を含んでいる、
請求項1または請求項2に記載のオプトエレクトロニクス半導体部品。
【請求項5】
前記リン化物化合物半導体材料が、組成InGaAl1−x−y1−zSb(0<x≦1,0≦y≦1,x+y≦1,0<z<1)を有する、
請求項1から請求項4のいずれかに記載のオプトエレクトロニクス半導体部品。
【請求項6】
前記リン化物化合物半導体材料が、組成InGaAl1−x−y1−zBi(0<x≦1,0≦y≦1,x+y≦1,0<z<1)を有する、
請求項1から請求項4のいずれかに記載のオプトエレクトロニクス半導体部品。
【請求項7】
0<z≦0.03である、
請求項5または請求項6に記載のオプトエレクトロニクス半導体部品。
【請求項8】
0.3≦x≦0.7である、
請求項5から請求項7のいずれかに記載のオプトエレクトロニクス半導体部品。
【請求項9】
インジウムを含有する窒化物化合物半導体材料を備えている活性層(4)を備えているオプトエレクトロニクス半導体部品であって、
前記活性層(4)の前記窒化物化合物半導体材料が、V族の追加元素として、元素As、元素Bi、または元素Sbのうちの少なくとも1種類を含んでいる、
オプトエレクトロニクス半導体部品。
【請求項10】
前記窒化物化合物半導体材料が、組成InGaAl1−x−y1−zAs(0<x≦1,0≦y≦1,x+y≦1,0<z<1)を有する、
請求項9に記載のオプトエレクトロニクス半導体部品。
【請求項11】
前記窒化物化合物半導体材料が、組成InGaAl1−x−y1−zSb(0<x≦1,0≦y≦1,x+y≦1,0<z<1)を有する、
請求項9に記載のオプトエレクトロニクス半導体部品。
【請求項12】
前記窒化物化合物半導体材料が、組成InGaAl1−x−y1−zBi(0<x≦1,0≦y≦1,x+y≦1,0<z<1)を有する、
請求項9に記載のオプトエレクトロニクス半導体部品。
【請求項13】
0<z≦0.03である、
請求項10から請求項12のいずれかに記載のオプトエレクトロニクス半導体部品。
【請求項14】
x≧0.1である、
請求項10から請求項13のいずれかに記載のオプトエレクトロニクス半導体部品。
【請求項15】
x≧0.2である、
請求項14に記載のオプトエレクトロニクス半導体部品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−515445(P2012−515445A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545708(P2011−545708)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050039
【国際公開番号】WO2010/081754
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】