説明

オリゴマー−プロテアーゼ阻害剤コンジュゲート

水溶性オリゴマーの共有結合によって化学修飾される小分子薬物を提供する。本発明のコンジュゲートは、いくつかの投与経路のいずれかによって投与される場合、水溶性オリゴマーに結合していない小分子薬物とは異なる特徴を示す。本発明により、例えば、安定な連結を介して直接的かまたは1個以上の原子を介するかのいずれかによって水溶性非ペプチド性オリゴマーに共有結合したプロテアーゼ阻害剤の残基を含んでなる化合物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年9月17日に出願された米国仮特許出願第61/192,438号明細書(その開示内容は、本明細書においてその全体が参考として援用される)の優先権を主張する。
【0002】
本開示物は、化学修飾を有さない小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤より優れた所定の利点を有する化学的に修飾された小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤を提供する。本明細書に記載の化学的に修飾された小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤は、(とりわけ)薬物の発見、薬物療法、生理学、有機化学および高分子化学の分野に関し、および/またはそれらの分野において用途を有する。
【背景技術】
【0003】
C型肝炎ウイルス(「HCV」)感染は、慢性肝疾患の主な原因の1つであり;世界中で1億7000万人を超える人がC型肝炎ウイルスに感染しており、米国ではHCV遺伝子型1型が優勢である。現在の標準的な治療は、単独かまたはリバビリンとの併用でのPEG化インターフェロン−α(pegIFN)からなる。併用治療は、HCV遺伝子型1型感染を伴う患者の僅か50%にしか有効ではなく、そして患者の中には、治療に応答して、重大な副作用を経験する者もいる。それ故、より副作用が少ないより有効な薬剤の開発に大きな関心が集められている。
【0004】
肝炎ウイルス(B型肝炎ウイルス、「HBV」、およびC型肝炎ウイルス、「HCV」を含む)に関しては、肝炎プロテアーゼ阻害剤が作用して、感染性ウイルス粒子の作製に必要なgagおよびgag/pol融合ポリペプチドのタンパク質分解性切断に必要なウイルスプロテアーゼを阻害する。それ故、このタンパク質分解性切断を阻害することによって、肝炎プロテアーゼ阻害剤は、より大きなポリペプチド前駆体が有効なウイルスの複製に必要な成熟型のタンパク質を形成する能力を低減する。
【0005】
肝炎プロテアーゼ阻害剤は、肝炎を患う患者を治療することが見込まれるが、それらの使用は、(とりわけ)比較的広範な代謝、比較的不良な経口バイオアベイラビリティ、および比較的高い容量に関連する課題によって妨げられている。
【0006】
本開示物は、当該技術分野におけるこのような必要性およびその他の必要性に取り組もうとするものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つ以上の態様では、安定な連結を介して直接的かまたは1個以上の原子を介するかのいずれかによって水溶性非ペプチド性オリゴマーに共有結合したプロテアーゼ阻害剤の残基を含んでなる化合物が提供される。
【0008】
1つ以上の関連する実施形態では、安定な結合を介して直接的かまたは1個以上の原子を介するかのいずれかによって水溶性非ペプチド性オリゴマーに共有結合したプロテアーゼ阻害剤の残基を含んでなるが、但し、プロテアーゼ阻害剤は、HIVプロテアーゼ阻害剤ではない、化合物が提供される。
【0009】
1つ以上の実施形態では、安定な連結を介して直接的かまたは1個以上の原子を介するかのいずれかによって水溶性非ペプチド性オリゴマーに共有結合した肝炎プロテアーゼ阻害剤の残基を含んでなる化合物が提供される。
【0010】
1つ以上の態様では、安定な連結を介して直接的かまたは1個以上の原子を介するかのいずれかによって水溶性非ペプチド性オリゴマーに共有結合したNS3プロテアーゼ阻害剤の残基を含んでなる化合物が提供される。
【0011】
1つ以上の態様では、安定な連結を介して直接的かまたは1個以上の原子を介するかのいずれかによって水溶性非ペプチド性オリゴマーに共有結合したHCVプロテアーゼ阻害剤の残基を含んでなる化合物が提供される。
【0012】
1つ以上の態様では、安定な連結を介して直接的かまたは1個以上の原子を介するかのいずれかによって水溶性非ペプチド性オリゴマーに共有結合したHBVプロテアーゼ阻害剤の残基を含んでなる化合物が提供される。
【0013】
1つ以上の実施形態では、以下の構造を有する化合物が提供される:
【0014】
【化1】

ここで:
【0015】
【化2】

は、小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤の残基であり;
(a)は1〜3の値を有する整数であり;
Xは、それぞれ、安定な連結であり;および
POLYは、それぞれ、水溶性非ペプチド性オリゴマーである。
【0016】
1つ以上の態様では、安定な連結を介して直接的かまたは1個以上の原子を介するかのいずれかによって水溶性非ペプチド性オリゴマーに共有結合した肝炎プロテアーゼ阻害剤の残基を含んでなる組成物;および任意に薬学的に許容できる賦形剤、を含んでなる組成物が提供される。
【0017】
1つ以上の実施形態では、以下を含んでなる組成物が提供される:
(i)以下の構造を有する化合物:
【0018】
【化3】

ここで:
【0019】
【化4】

は、小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤の残基であり;
(a)は包括的に1〜3の値を有する整数であり;
Xは、それぞれ、安定な連結であり;および
POLYは、それぞれ、水溶性非ペプチド性オリゴマーである;および
(ii)場合により、薬学的に許容できる賦形剤。
【0020】
1つ以上の実施形態では、安定な連結を介して直接的かまたは1個以上の原子を介するかのいずれかによって水溶性非ペプチド性オリゴマーに共有結合した肝炎プロテアーゼ阻害剤の残基を含んでなる化合物を含んでなる剤形が提供される。
【0021】
1つ以上の実施形態では、以下の構造を有する化合物を含んでなる剤形が提供される:
【0022】
【化5】

ここで:
【0023】
【化6】

は、小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤の残基であり;
(a)は1〜3の値を有する整数であり;
Xは、それぞれ、安定な連結であり;および
POLYは、それぞれ、水溶性非ペプチド性オリゴマーである。
【0024】
1つ以上の実施形態では、水溶性非ペプチド性オリゴマーを小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤に共有結合させる工程を含んでなる方法が提供される。
【0025】
本発明の1つ以上の実施形態では、以下の構造を有する化合物:
【0026】
【化7】

ここで:
【0027】
【化8】

は、小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤の残基であり;
(a)は1〜3の値を有する整数であり;
Xは、それぞれ、安定な連結であり;および
POLYは、それぞれ、水溶性非ペプチド性オリゴマーである;および
(ii)場合により、薬学的に許容できる賦形剤
を投与する工程を含んでなる方法が提供される。
【0028】
本発明のこれらのならびに他の目的、態様、実施形態および特徴については、以下の詳細な説明と併せて読むことにより、明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0029】
定義
本明細書において使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他を指示しない限り、複数形にも言及する。
【0030】
本発明の説明および請求の範囲において、以下の用語が下記の定義に従って使用される。
【0031】
「水溶性非ペプチド性オリゴマー」は、室温で水において少なくとも35(重量)%可溶性、好ましくは、70(重量)%を超える、およびより好ましくは、95(重量)%を超える可溶性であるオリゴマーを示す。典型的に、「水溶性」オリゴマーの非ろ過水性調製物では、ろ過後に同じ溶液を透過する光の量のうちの少なくとも75%、より好ましくは、少なくとも95%が透過する。しかし、水溶性オリゴマーが、水において少なくとも95(重量)%可溶性であるか、または水に完全に可溶性であることが、最も好適である。「非ペプチド性」であることに関して、オリゴマーが35(重量)%未満のアミノ酸残基を有する場合、それは非ペプチド性である。
【0032】
用語「モノマー」、「モノマーサブユニット」および「モノマー単位」は、本明細書において交換可能に使用され、そしてポリマーまたはオリゴマーの基本構造単位の1つを指す。ホモオリゴマーの場合、単一の反復構造単位がオリゴマーを形成する。コオリゴマーの場合、2つ以上の構造単位が、あるパターンかまたは無作為のいずれかで反復して、オリゴマーを形成する。本開示物に関連して使用される好適なオリゴマーは、ホモオリゴマーである。水溶性非ペプチド性オリゴマーは、典型的に、連続的に結合して、モノマーの鎖を形成する1つ以上のモノマーを含んでなる。オリゴマーは、単一のモノマータイプ(即ち、ホモオリゴマー性である)または2つもしくは3つのモノマータイプ(即ち、コオリゴマー性である)から形成することができる。
【0033】
「オリゴマー」は、約2〜約50のモノマー、好ましくは、約2〜約30のモノマーを有する分子である。オリゴマーの構成は変動し得る。本発明に使用するための具体的なオリゴマーとして、線状、分岐、またはフォーク状のような多様なジオメトリーを有するものが挙げられ、下記において、より詳細に説明する。
【0034】
本明細書において使用する「PEG」または「ポリエチレングリコール」は、任意の水溶性のポリ(エチレンオキシド)を包含することを意味する。他に示さない限り、「PEGオリゴマー」(また、オリゴエチレングリコールとも呼ばれる)は、実質的にすべての(およびより好ましくは、すべての)モノマーサブユニットがエチレンオキシドサブユニットであるものである。しかし、オリゴマーは、例えば、コンジュゲーションのための別個の末端キャッピング部分または官能基を含有してもよい。典型的に、本発明に使用するためのPEGオリゴマーは、次の2つの構造のうちの1つを含んでなる:「−(CHCHO)−」または「−(CHCHO)n−1CHCH−」であって、例えば、合成変換中に末端の酸素が置き換えられているかどうかに依存する。PEGオリゴマーでは、「n」値は、約2〜50、好ましくは、約2〜約30で変動し、そして、全体的なPEGの末端基および構成も変動し得る。PEGが、例えば、小分子の薬物に結合するための官能基、Aをさらに含んでなる場合、官能基は、PEGオリゴマーに共有結合する場合、(i)酸素−酸素結合(−O−O−、過酸化連結)の形成も、または(ii)窒素−酸素結合(N−O、O−N)の形成も生じない。
【0035】
「末端キャッピング基」は、一般的に、PEGオリゴマーの末端の酸素に結合した非反応性炭素含有基である。例示的な末端キャッピング基は、C1−5アルキル基、例えば、メチル、エチルおよびベンジル)、ならびにアリール、ヘテロアリール、シクロ、ヘテロシクロなどを含んでなる。本発明の目的のために、好適なキャッピング基は、メチルまたはエチルのような比較的低い分子量を有する。末端キャッピング基はまた、検出可能な標識を含んでなり得る。そのような標識として、蛍光物質(fluorescer)、化学発光物質(chemiluminescer)、酵素標識において使用される部分、比色標識(colorimetric label)(例えば、染料)、金属イオン、および放射性部分が挙げられるが、これらに限定されない。オリゴマーのジオメトリーまたは全体的構造に関して、「分岐」は、分岐点から延在する別個の「アーム」を表す2つ以上のポリマーを有するオリゴマーを指す。
【0036】
オリゴマーのジオメトリーまたは全体的構造に関して、「フォーク状」は、分岐点から延在する(典型的に、1個以上の原子を介して)2つ以上の官能基を有するオリゴマーを指す。
【0037】
「分岐点」は、オリゴマーが、線状構造から1つ以上のさらなるアームへ分岐またはフォーク構造を形成する1個以上の原子を含んでなる分岐点を指す。
【0038】
用語「反応性」または「活性化された」は、有機合成の従来の条件下で容易にまたは実際的な速度で反応する官能基を指す。これは、反応しないか、あるいは反応するためには強力な触媒または実際的ではない反応条件が必要であるかのいずれかである基(即ち、「非反応性」もしくは「不活な」基)とは対照的である。
【0039】
反応混合物中の分子状に存在する官能基に関して、「容易に反応しない」は、基が、反応混合物において所望される反応を生じるのに有効である条件下で主にインタクトの状態を保つことを指す。
【0040】
「保護基」は、所定の反応条件下で分子中の特定の化学的に反応性の官能基の反応を防止または阻止する部分である。保護基は、保護される化学反応性基のタイプならびに用いようとする反応条件および分子におけるさらなる反応性基または保護基の存在に依存して変動する。保護することができる官能基として、例えば、カルボン酸基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル基などが挙げられる。カルボン酸については、代表的な保護基として、エステル(例えば、p−メトキシベンジルエステル)、アミドおよびヒドラジドが挙げられ;アミノ基については、カルバメート(例えば、tert−ブトキシカルボニル)およびアミドが挙げられ;ヒドロキシル基については、エーテルおよびエステルが挙げられ;チオール基については、チオエーテルおよびチオエステルが挙げられ;カルボニル基については、アセタールおよびケタールなどが挙げられる。そのような保護基は、当業者に周知であり、そして例えば、T.W.Greene and G.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,Third Edition,Wiley,New York,1999、および本明細書において引用した参考文献に記載されている。
【0041】
「保護された形態」の官能基は、保護基を有する官能基を指す。本明細書において使用する用語「官能基」またはその任意の類義語は、その保護された形態を包含する。
【0042】
「生理学的に切断可能な」または「加水分解可能な」または「分解可能な」結合は、通常の生理学的条件下で水と反応する(即ち、加水分解される)比較的変化を起こし易い結合である。通常の生理学的条件下で水中で結合が加水分解する傾向は、2個の中心原子を接続する一般的なタイプの連結だけではなく、これらの中心原子に結合する置換基にも依存する。そのような結合は、一般的に、当業者であれば認識することができる。適切な加水分解可能な不安定または弱い連結として、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチド、オリゴヌクレオチド、チオエステル、およびカルボネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
「酵素的に分解可能な連結」は、通常の生理学的条件下で1つ以上の酵素による分解に供される連結を意味する。
【0044】
「安定な」連結または結合は、水中で実質的に安定である、即ち、通常の生理学的条件下、任意の適切な程度で、長期間にわたって、加水分解を受けない化学部分または結合、典型的には、共有結合を指す。加水分解に安定な連結の例として次のものが挙げられるが、これらに限定されない:(例えば、脂肪族鎖における)炭素−炭素結合、エーテル、アミド、ウレタン、アミンなど。一般的に、安定な連結は、通常の生理学的条件下で1日あたり約1〜2%未満の加水分解の速度を示す連結である。代表的な化学結合の加水分解速度については、ほとんどの標準的な化学の教科書において見出すことができる。
【0045】
所与の組成のオリゴマーの一貫性について説明する場合、「実質的に」または「本質的に」とは、ほぼすべてまたは完全に、例えば、95%以上、より好ましくは、97%以上、なおより好ましくは、98%以上、さらにより好ましくは、99%以上、なおより好ましくは、99.9%以上を意味し、99.99%以上が、いくつかの所与の量のうちで最も好適である。
【0046】
「単分散」は、オリゴマー組成物を指し、ここで、組成物中の実質的にすべてのオリゴマーが、良好に限定された単一の分子量および限定された数のモノマーを有し、クロマトグラフィーまたは質量分析によって決定される。単分散オリゴマー組成物は、ある程度純粋であり、即ち、いくらかの異なる数のモノマー(即ち、3つ以上の異なるオリゴマーサイズを有するオリゴマー組成物)ではなく、単一かつ限定可能な数のモノマーを有する分子を実質的に含んでなる。単分散オリゴマー組成物は、1.0005以下のMW/Mn値、およびより好ましくは、1.0000のMW/Mn値を有する。拡大解釈すると、単分散コンジュゲートからなる組成物は、組成物中のすべてのコンジュゲートの実質的にすべてのオリゴマーが、分布しておらず、(整数として)単一かつ限定された数のモノマーを有し、そしてオリゴマーが小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤の残基に結合していない場合、1.0005のMW/Mn値、およびより好ましくは、1.0000のMW/Mn値を有することを意味する。しかし、単分散コンジュゲートからなる組成物として、溶媒、試薬、賦形剤などのような1つ以上の非コンジュゲート物質を挙げることができる。
【0047】
オリゴマー組成物に関して、「二峰性」は、オリゴマー組成物を指し、ここで、組成物中の実質的にすべてのオリゴマーは、分布ではなく、(整数として)2つの限定可能なかつ異なる数のモノマーのうちの1つを有し、そして多くの画分対分子量としてプロットした場合、その分子量の分布は、2つの個別の同定可能なピークとして出現する。好ましくは、本明細書に記載の二峰性オリゴマー組成物について、各ピークは、一般的に、その平均について対称であるが、2つのピークのサイズは異なっていてもよい。理想的には、二峰性分布における各ピークの多分散指数、Mw/Mnは、1.01以下、より好ましくは、1.001以下、およびさらにより好ましくは、1.0005以下、および最も好ましくは、1.0000のMW/Mn値である。拡大解釈すると、二峰性コンジュゲートからなる組成物は、組成物中のすべてのコンジュゲートの実質的にすべてのオリゴマーが、大きな分布ではなく、(整数として)2つの限定可能なかつ異なる数のモノマーのうちの1つを有し、そしてオリゴマーが小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤アゴニストの残基に結合していない場合、1.01以下のMW/Mn値、より好ましくは、1.001以下、およびさらにより好ましくは、1.0005以下、および最も好ましくは、1.0000のMW/Mn値を有することを意味する。しかし、二峰性コンジュゲートからなる組成物として、溶媒、試薬、賦形剤などのような1つ以上の非コンジュゲート物質を挙げることができる。
【0048】
「小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤」は、本明細書において広範に使用され、典型的に、約1000未満の分子量を有し、そしてレトロウイルス肝炎プロテアーゼ阻害剤としていくつかの程度の活性を有する有機、無機、または有機金属化合物を指す。小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤は、オリゴペプチドおよび約1000未満の分子量を有する他の生体分子を包含する。
【0049】
「生体膜」は、典型的に、少なくともいくつかの外来性の実体もしくはそうでなければ所望されない材料に対する関門として役立つ分化した細胞または組織から作製される任意の膜である。本明細書において使用する「生体膜」として、例えば、次のものを含む生理学的保護関門に関連するそれらの膜が挙げられる:血液脳関門(BBB);血液脳脊髄液関門;血液胎盤関門;血液乳関門;血液精巣関門;および膣粘膜、尿道粘膜、肛門粘膜、頬粘膜、舌下粘膜、直腸粘膜などを含む粘膜関門。文脈が明らかに他を指示しない限り、用語「生体膜」は、中間の胃腸間(例えば、胃および小腸)に関連する膜を含まない。
【0050】
本明細書において使用する「生体膜横断速度」は、生体膜(例えば、血液脳関門に関連する膜)を横断する化合物の能力の尺度を提供する。多様な方法を使用して、あらゆる所与の生体膜を横断する分子の輸送を評価することができる。あらゆる所与の生物学的関門(例えば、血液脳脊髄液関門、血液胎盤関門、血液乳関門、腸関門など)に関連する生体膜横断速度を評価する方法は、当該技術分野において公知であり、本明細書および/または関連文献に記載されており、ならびに/あるいは当業者によって決定することができる。
【0051】
本発明に関して、「代謝速度の減少」とは、水溶性オリゴマー(即ち、小分子薬物自体)に結合していない小分子薬物、または対照標準物質の代謝速度と比較した、水溶性オリゴマー−小分子薬物コンジュゲートの代謝速度の測定可能な減少を指す。「代謝の初回通過速度の減少」の特殊な場合においても、小分子薬物(または対照標準物質)および対応するコンジュゲートが経口投与されることを除き、同じ「代謝速度の減少」が求められる。経口投与された薬物は、胃腸管から門脈循環へ吸収され、そして体循環に到達する前に、肝臓を通過しなければならない。肝臓は、薬物代謝または生体内変化の主要部位であるため、体循環に到達する前に、相当量の薬物代謝することができる。初回通過代謝の程度、従って、その任意の減少は、いくつかの異なるアプローチによって測定することができる。例えば、動物血液サンプルを、定められた時間間隔で回収し、そして代謝物レベルについて、血漿または血清を、液体クロマトグラフィー/質量分析によって分析することができる。初回通過代謝および他の代謝プロセスに関連する「代謝速度の減少」を測定するための他の技術については、当該技術分野において公知であり、本明細書および/または関連文献に記載されており、ならびに/あるいは当業者によって決定することができる。好ましくは、本発明のコンジュゲートは、次の値のうちの少なくとも1つを満たす代謝速度の減少を提供することができる:少なくとも約30%;少なくとも約40%;少なくとも約50%;少なくとも約60%;少なくとも約70%;少なくとも約80%;および少なくとも約90%。「経口的に生物学的に利用可能」である(小分子薬物またはそのコンジュゲートのような)化合物とは、好ましくは、経口投与される場合、25%を超える、および好ましくは、70%を超えるバイオアベイラビリティを有する化合物であって、ここで、化合物のバイオアベイラビリティは、代謝されていない形態で体循環に到達する投与された薬物の画分である。
【0052】
「アルキル」は、典型的に、約1〜20個の原子の長さの炭化水素鎖を指す。そのような炭化水素鎖は、飽和されていることが好ましいが、必ずしもそうである必要はなく、また、分岐鎖であってもよく、または直鎖であってもよいが、典型的に直鎖が好ましい。例示的なアルキル基として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、3−メチルペンチルなどが挙げられる。本明細書において使用する「アルキル」は、3個以上の炭素原子に言及する場合、シクロアルキルを含む。「アルケニル」基は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を伴う2〜20個の炭素原子のアルキルである。
【0053】
用語「置換アルキル」または「置換Cq−rアルキル」(ここで、qおよびrは、アルキル基に含有される炭素原子の範囲を同定する整数である)は、1つ、2つもしくは3つのハロ(例えば、F、Cl、Br、I)、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、C1−7アルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチルなど)、C1−7アルコキシ、C1−7アシルオキシ、C3−7ヘテロ環、アミノ、フェノキシ、ニトロ、カルボキシ、カルボキシ、アシル、シアノによって置換された上記のアルキル基を示す。置換アルキル基は、同じまたは異なる置換基で1回、2回もしくは3回置換され得る。
【0054】
「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基を指し、そしてメチル、エチル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチルによって例示されるように、直鎖であってもよく、または分岐鎖であってもよい。「低級アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する2〜6個の炭素原子の低級アルキル基である。
【0055】
「非干渉置換基」は、分子中に存在する場合、典型的に、分子内に含有される他の官能基と非反応性である基である。
【0056】
「アルコキシ」は、−O−R基を指し、ここで、Rは、アルキルまたは置換アルキル、好ましくは、C−C20アルキル(例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ベンジルなど)、好ましくは、C−Cである。
【0057】
「薬学的に許容できる賦形剤」または「薬学的に許容できるキャリア」は、成分を含まない組成物より優れた利点(例えば、患者への投与にさらに適切である)を有し、そして患者に対して顕著な有害な毒性学的影響を生じないことが認識される組成物を提供するために、本発明の組成物に含めることができる成分を指す。
【0058】
用語「アリール」は、14個までの炭素原子を有する芳香族基を意味する。アリール基として、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントレニル、ナフタセニルなどが挙げられる。「置換フェニル」および「置換アリール」は、それぞれ、ハロ(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アルキル(例えば、C1−6アルキル)、アルコキシ(例えば、C1−6アルコキシ)、ベンジルオキシ、カルボキシ、アリールなどから選択される1つ、2つ、3つ、4つまたは5つ(例えば、1−2、1−3もしくは1−4置換基)によって置換されたフェニル基およびアリール基を示す。
【0059】
「芳香族含有部分」は、少なくともアリール、および場合により1個以上の原子含有する原子のコレクションである。適切な芳香族含有部分については、本明細書において説明する。
【0060】
簡潔のため、化学的部分は、全体を通して、一価の化学的部分(例えば、アルキル、アリールなど)として定義され、そしてそのように称される。それにもかかわらず、そのような用語はまた、当業者に明らかである適切な構造的環境下で、対応する多価の部分を伝えることにも使用される。例えば、「アルキル」部分は、一般的に、一価のラジカル(例えば、CH−CH−)を指す一方、所定の環境では、二価の連結部分は、「アルキル」であり得、その場合、当業者は、そのアルキルが、用語「アルキレン」に等価である二価のラジカル(例えば、−CH−CH−)であることを理解するであろう。(同様に、二価の部分が必要であり、そして「アリール」と述べられる環境では、当業者は、用語「アリール」が、対応する二価の部分、アリーレンを指すと理解するであろう)。すべての原子は、結合形成のためのそれらの正常な原子価数(即ち、炭素では4、Nでは3、Oでは2、およびSの酸化状態に依存して、Sでは2、4、もしくは6)を有すると理解される。
【0061】
「薬理学的有効量」、「生理学的有効量」、および「治療有効量」は、本明細書において交換可能に使用され、血流中あるいは標的組織中において、閾値レベルの有効因子および/またはコンジュゲートを提供するのに必要な組成物中に存在する水溶性オリゴマー−小分子薬物コンジュゲートの量を意味する。正確な量は、多数の因子、例えば、組成物の特定の有効因子、成分および物理特性、意図される患者集団、患者の考慮事項などに依存し、そして本明細書において提供する情報、および関連文献において利用可能な情報に基づいて、当業者が容易に決定することができる。
【0062】
「二官能性」オリゴマーは、典型的に、その末端において、2つの官能基がその中に含有されるオリゴマーである。官能基が同じである場合、オリゴマーは、ホモ二官能性と呼ばれる。官能基が異なる場合、オリゴマーは、ヘテロ二官能性と呼ばれる。
【0063】
本明細書に記載の塩基性反応物質または酸性反応物質は、中性で荷電したもの、およびその任意の対応する塩形態を含む。
【0064】
用語「患者」は、必ずしもその必要はないが典型的に、水溶性オリゴマー−小分子薬物コンジュゲートの形態で、本明細書に記載のコンジュゲートの投与によって、予防または治療することができる病態を患っている、またはその傾向がある生きている生物体を指し、ヒトおよび動物の両方を含む。
【0065】
「随意的」または「場合により」は、後に説明する状況が生じてもよいが、必ずしもその必要があるわけではなく、そのため、その説明には、状況が生じる場合と、それが生じない場合とが含まれることを意味する。
【0066】
概観
上記のように、本開示物は、(とりわけ)安定な連結を介して直接的かまたは1個以上の原子を介するかのいずれかによって水溶性非ペプチド性オリゴマーに共有結合した肝炎プロテアーゼ阻害剤の残基を含んでなる化合物に関する。
【0067】
本開示物はまた、以下の構造を有する化合物を提供する:
【0068】
【化9】

ここで:
【0069】
【化10】

は、小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤の残基であり;
(a)は1〜3の値を有する整数であり;Xは、それぞれ、安定な連結であり;およびPOLYは、それぞれ、水溶性非ペプチド性オリゴマーである。本発明の化合物は、オリゴマーおよび肝炎プロテアーゼ阻害剤のコンジュゲートである。
【0070】
本発明のコンジュゲートの利点は、ある程度のプロテアーゼ活性を保持する一方、代謝の減少も示すそれらの能力であると考えられる。理論に拘束されようとは思わないが、オリゴマーは、肝炎プロテアーゼ阻害剤を代謝することができる物質に対する化合物の全体的親和性を減少するのに役立つため、本明細書に記載のオリゴマー含有コンジュゲートは、コンジュゲートされていない「本来の」または「改変されていない」プロテアーゼ阻害剤とは対照的に、容易に代謝されないと考えられる。
【0071】
小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤
上記のように、例示的な化合物として、小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤の残基が挙げられる。小分子プロテアーゼ阻害剤(例えば、小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤)は、レトロウイルスプロテアーゼの活性を減少することができる任意の小分子である。化合物(化合物がコンジュゲートされた形態であるかどうかに関わらない)がプロテアーゼ阻害剤であるかどうかを決定するためのアッセイは、当業者に公知である。
【0072】
小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤として作用することが公知の化合物として、次のクラス:NS3プロテアーゼ阻害剤から選択されるものが挙げられる。上記のクラスに必ずしも属していない他の小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤もまた、使用することができる。
【0073】
特異の肝炎プロテアーゼ阻害剤の例について、以下に考察する。
【0074】
VX−950(TelaprevirがVertexおよびJohnson and Johnsonから市販されている)は、以下の構造を有する:
【0075】
【化11】

そのIUPAC命名法は、次のものに対応する:1S,3aR,6aS)−2−[(2S)−2−[[(2S)−2−シクロヘキシル−2−(ピラジン−2−カルボニルアミノ)アセチル]アミノ]−3,3−ジメチルブタノイル]−N−[(3S)−1−(シクロプロピルアミノ)−1,2−ジオキソヘキサン−3−イル]−3,3a,4,5,6,6a−ヘキサヒドロ−1H−シクロペンタ[c]ピロール−1−カルボキサミド。
【0076】
Telaprevirは、ポリタンパク質プロセシングを担う非構造タンパク質NS3−4Aセリンプロテアーゼのペプチド模倣阻害剤である(Perni et al.(2006)Antimicrob Agents Chemother50:899−909)。Telaprevirは、HCV遺伝子型1型NS3プロテアーゼと可逆的な共有結合複合体を形成する。水溶性オリゴマーがtelaprevirに結合した化合物は、本開示物の化合物を代表する。
【0077】
SCH503034(BoceprevirがSchering−Ploughから市販されている)は、以下の構造を有する:
【0078】
【化12】

そのIUPAC命名法は、次のものに対応する:(1R,2S,5S)−N−[(2Ξ)−4−アミノ−1−シクロブチル−3,4−ジオキソブタン−2−イル)]−3−{(2S)−2−[(tert−ブチルカルバモイル)アミノ]−3,3−ジメチルブタノイル}−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボキサミド。
【0079】
Boceprevirは、HCVプロテアーゼNS3のカルボキサミドに基づく阻害剤として開発された(Venkatraman(2006)J Med Chem49:6074)。Boceprevirは、pegIFN−α2a療法が奏功しなかったHCV遺伝子型1型を伴う患者での用量範囲探索試験(100〜400mgを1日2回)において、単剤療法としての抗ウイルス活性を示した。pegIFN−α2aと併用した200または400mgを1日3回での14日間の第Ib相試験では、HCV遺伝子型1型を伴う不応答患者において有効性が認められた。水溶性オリゴマーがboceprevirに結合した化合物は、本発明の化合物を代表する。
【0080】
ITMN−191(「R7227」とも称される)は、InterMune,Rocheから市販されており、そして以下の構造を有する:
【0081】
【化13】

ITMN−191は、HCV NS3A/4プロテアーゼの強結合非共有結合性阻害剤である。第Ib相治験では、1日2回投与、14日間のITMN−191単剤療法により、ウイルスRNAレベルの迅速な減少が生じた。ラットおよびサルでは、7日間のITMN−191の1日2回経口投与により、研究の最終投与後、インビトロEC90値を超える肝臓トラフ濃度を保持した。水溶性オリゴマーがITMN−191に結合した化合物は、本発明の化合物を代表する。
【0082】
本発明のさらなる化合物として、水溶性オリゴマーが、BILN2061のような他の肝炎プロテアーゼ阻害剤に結合した化合物が挙げられる(Lamarre,D.,et al.,Nature,426,186−189(13November2003)。BILN2061は、HCV NS3プロテアーゼ阻害剤である。
【0083】
これら(および他の)プロテアーゼ阻害剤のそれぞれは、(直接的かまたは1個以上の原子を介するかのいずれかによって)水溶性非ペプチド性オリゴマーに共有結合させることができる。
【0084】
本発明において有用な小分子薬物は、一般的に、約1000Da未満の分子量を有する。小分子薬物の例示的分子量として、約950未満;約900未満;約850未満;約800未満;約750未満;約700未満;約650未満;約600未満;約550未満;約500未満;約450未満;約400未満;約350未満;および約300未満の分子量が挙げられる。
【0085】
本発明において使用される小分子薬物は、キラルの場合、ラセミ混合物、もしくは光学活性形態、例えば、単一の光学活性エナンチオマーであってもよく、または任意の組み合わせもしくは比率のエナンチオマー(即ち、スケールミック混合物)であってもよい。加えて、小分子薬物は、1つ以上の幾何異性体を有してもよい。幾何異性体に関して、組成物は、単一の幾何異性体、または2つ以上の幾何異性体の混合物を含んでなり得る。本発明に使用するための小分子薬物は、その慣習的な活性形態であり得るか、またはある程度の修飾を有してもよい。例えば、小分子薬物は、オリゴマーの共有結合の前もしくは後に、それに結合させたターゲティング剤、タグ、またはトランスポーターを有してもよい。あるいは、小分子薬物は、リン脂質(例えば、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンもしくは「DSPE」、ジパルミトイルジホスファチジルエタノールアミンもしくは「DPPE」など)または小さな脂肪酸のようなそれに結合させた親油性部分を有してもよい。しかし、場合によっては、小分子薬物部分は、親油性部分への結合を含まないことが好ましい。
【0086】
水溶性非ペプチド性オリゴマーに結合させるための小分子プロテアーゼ阻害剤(例えば、小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤)は、オリゴマーの共有結合に適切なヒドロキシル、アミド、カルボキシル、チオ、アミノ基など(即ち、「ハンドル」)のような遊離の反応基を有する。加えて、小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤は、反応基の導入によって、好ましくは、その既存の官能基の1つを、オリゴマーと薬物との間の安定な共有結合の形成に適切な反応基へ変換することによって、修飾することができる。
【0087】
水溶性オリゴマー
水溶性非ペプチド性オリゴマーは、典型的に、連続的に結合して、モノマーの鎖を形成する1つ以上のモノマーを含んでなる。オリゴマーは、単一のモノマータイプ(即ち、ホモオリゴマー性である)または2つもしくは3つのモノマータイプ(即ち、コオリゴマー性である)から形成することができる。好ましくは、各オリゴマーは、2つのモノマーのコオリゴマーであるか、またはより好ましくは、ホモオリゴマーである。
【0088】
従って、各オリゴマーは、次のものからなる群から選択される3つまでの異なるモノマータイプからなる:アルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド;オレフィン性アルコール、例えば、ビニルアルコール、1−プロペノールまたは2−プロペノール;ビニルピロリドン;ヒドロキシアルキルメタクリルアミドまたはヒドロキシアルキルメタクリレートであって、ここで、アルキルは、好ましくは、メチルである;α−ヒドロキシ酸、例えば、乳酸またはグリコール酸;ホスファゼン、オキサゾリン、アミノ酸、炭水化物、例えば、単糖類、糖類またはマンニトール;およびN−アクリロイルモルホリン。好適なモノマータイプとして、アルキレンオキシド、オレフィン性アルコール、ヒドロキシアルキルメタクリルアミドまたはメタクリレート、N−アクリロイルモルホリン、およびα−ヒドロキシ酸が挙げられる。好ましくは、各オリゴマーは、独立して、この基から選択される2つのモノマータイプのコオリゴマーであるか、または、より好ましくは、この基から選択される1つのモノマータイプのホモオリゴマーである。
【0089】
コオリゴマーにおける2つのモノマータイプは、同じモノマータイプ、例えば、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのような2つのアルキレンオキシドであってもよい。好ましくは、オリゴマーは、エチレンオキシドのホモオリゴマーである。通常、必ずしも必要ではないが、小分子に共有結合していないオリゴマーの末端(または複数の末端)は、キャッピングされて非反応性にされる。あるいは、末端は、反応基を含んでもよい。末端が反応基である場合、反応基は、最終的なオリゴマーの形成条件下で、もしくはオリゴマーの小分子薬物への共有結合中に非反応性になるように、または必要に応じて、保護されるように、選択される。1つの一般的な末端官能基は、特に、オリゴエチレンオキシドに対して、ヒドロキシルまたは−OHである。
【0090】
水溶性非ペプチド性オリゴマー(例えば、コンジュゲートの式
【0091】
【化14】

中「POLY」)は、異なるいくつかのジオメトリーのいずれかを有することができる。例えば、水溶性非ペプチド性オリゴマーは、線状、分岐状、またはフォーク状であり得る。最も典型的に、水溶性非ペプチド性オリゴマーは、線状であるか、または分岐しており、例えば、1つの分岐点を有する。本明細書における考察の多くが、例示的なオリゴマーとしてポリ(エチレンオキシド)に集中しているが、本明細書に示す考察および構造は、上記の水溶性非ペプチド性オリゴマーのいずれをも包含するように容易に拡張することができる。
【0092】
リンカー部分を除く水溶性非ペプチド性オリゴマーの分子量は、一般的に、比較的低い。水溶性ポリマーの分子量の例示的な値として:約1500ダルトン未満;約1450ダルトン未満;約1400ダルトン未満;約1350ダルトン未満;約1300ダルトン未満;約1250ダルトン未満;約1200ダルトン未満;約1150ダルトン未満;約1100ダルトン未満;約1050ダルトン未満;約1000ダルトン未満;約950ダルトン未満;約900ダルトン未満;約850ダルトン未満;約800ダルトン未満;約750ダルトン未満;約700ダルトン未満;約650ダルトン未満;約600ダルトン未満;約550ダルトン未満;約500ダルトン未満;約450ダルトン未満;約400ダルトン未満;約350ダルトン未満;約300ダルトン未満;約250ダルトン未満;約200ダルトン未満;約150ダルトン未満;および約100ダルトン未満が挙げられる。
【0093】
水溶性非ペプチド性オリゴマー(リンカーを除く)の分子量の例示的な範囲として:約100〜約1400ダルトン;約100〜約1200ダルトン;約100〜約800ダルトン;約100〜約500ダルトン;約100〜約400ダルトン;約200〜約500ダルトン;約200〜約400ダルトン;約75〜1000ダルトン;および約75〜約750ダルトンが挙げられる。
【0094】
好ましくは、水溶性非ペプチド性オリゴマー中のモノマーの数は、次の範囲(提供される各範囲の末端値も含まれる)の1つ以上に当てはまる:約1〜約30の間;約1〜約25の間;約1〜約20の間;約1〜約15の間;約1〜約12の間;約1〜約10の間。ある場合において、オリゴマー中の連続するモノマーの数(および対応するコンジュゲート)は、1、2、3、4、5、6、7、または8のうちの1つである。さらなる実施形態では、オリゴマー(および対応するコンジュゲート)は、連続する9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20のモノマーを含有する。なおさらなる実施形態では、オリゴマー(および対応するコンジュゲート)は、連続する21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30のモノマーを有する。それ故、例えば、水溶性非ペプチド性ポリマーがCH−(OCHCH−を含む場合、「n」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30であり得、そして次の範囲:約1〜約25の間;約1〜約20の間;約1〜約15の間;約1〜約12の間;約1〜約10の間の1つ以上に当てはまり得る整数である。
【0095】
水溶性非ペプチド性オリゴマーが1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10のモノマーを有する場合、これらの値は、それぞれ、約75、119、163、207、251、295、339、383、427、および471ダルトンの分子量を有するメトキシ末端キャップ化オリゴ(エチレンオキシド)に対応する。オリゴマーが11、12、13、14、または15のモノマーを有する場合、これらの値は、それぞれ、約515、559、603、647、および691ダルトンに対応する分子量を有するメトキシ末端キャップ化オリゴ(エチレンオキシド)に対応する。
【0096】
(小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤上へオリゴマーを効果的に「成長させる」ために、1つ以上のモノマーを段階的に付加することとは対照的に)水溶性非ペプチド性オリゴマーが、小分子プロテアーゼ阻害剤(例えば、小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤)に結合させる場合、水溶性非ペプチド性オリゴマーの活性型を含有する組成物は、単分散されることが好ましい。しかし、それらの場合では、二峰性の組成物を用いる場合、組成物は、モノマーの上記の数のうちのいずれか2つを中心とする二峰性分布を有する。理想的には、二峰性分布の各ピークの多分散指数、Mw/Mnは、1.01以下であり、およびさらにより好ましくは、1.001以下であり、およびさらにより好ましくは、1.0005以下である。最も好ましくは、各ピークは、1.0000のMW/Mn値を有する。例えば、二峰性オリゴマーは、モノマーサブユニットの次の例示的な組み合わせのいずれか1つを有してもよい:1−2、1−3、1−4、1−5、1−6、1−7、1−8、1−9、1−10など;2−3、2−4、2−5、2−6、2−7、2−8、2−9、2−10など;3−4、3−5、3−6、3−7、3−8、3−9、3−10など;4−5、4−6、4−7、4−8、4−9、4−10など;5−6、5−7、5−8、5−9、5−10など;6−7、6−8、6−9、6−10など;7−8、7−9、7−10など;および8−9、8−10など。
【0097】
場合によっては、水溶性非ペプチド性オリゴマーの活性型を含有する組成物は、三峰性またはなお四峰性でもあり、先に記載のようなある範囲のモノマー単位を有する。オリゴマーの良好に定義された混合物を有するオリゴマー組成物(即ち、二峰性、三峰性、四峰性などである)は、オリゴマーの所望のプロファイル(モノマーの数だけが異なる2つのオリゴマーの混合物は二峰性であり;モノマーの数だけが異なる3つのオリゴマーの混合物は三峰性であり;モノマーの数だけが異なる4つのオリゴマーの混合物は四峰性である)を得るように、精製された単分散オリゴマーを混合することによって調製することができるか、あるいは、所望および定義された分子量範囲のオリゴマーの混合物を得るように、「センターカット」を回収することによって、多分散オリゴマーのカラムクロマトグラフィーから得ることができる。
【0098】
水溶性非ペプチド性オリゴマーは、好ましくは、単分子または単分散である組成物から得るのが好ましい。即ち、組成物中のオリゴマーは、分子量の分布ではなく、同じ別個の分子量値を有する。いくつかの単分散オリゴマーは、Sigma−Aldrichから入手可能なもののように、商業的供給源から購入することができるか、あるいは、Sigma−Aldrichのような市販の出発物質から直接調製することができる。水溶性非ペプチド性オリゴマーは、Chen Y.,Baker,G.L.,J.Org.Chem.,6870−6873(1999)、国際公開第02/098949号パンフレット、および米国特許出願公開第2005/0136031号明細書に記載されているように調製することができる。
【0099】
リンカー
リンカーまたは連結(それを介して、水溶性非ペプチド性ポリマーが小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤に結合する)は、少なくとも、共有結合を含み、そしてしばしば、1個以上の原子、例えば、酸素、2個の原子、またはいくつかの原子を含む。リンカーは、必ずしもその必要はないが、典型的に、事実上線状である。連結「X」(
【0100】
【化15】

中)は、安定な連結であり、そして好ましくはまた、酵素的に安定である。好ましくは、連結「X」は、約12個未満の原子、および好ましくは、約10個未満の原子、およびさらにより好ましくは、約8個未満の原子、およびさらにより好ましくは、約5個未満の原子の鎖長を有するものであり、ここで、長さは、置換基を数に入れない、単一鎖内の原子の数を意味する。例えば、このRオリゴマー−NH−(C=O)−NH−R’薬物のような尿素連結は、3個の原子(−NH−C(O)−NH−)の鎖長を有するものと見なされる。選択された実施形態では、連結は、さらなるスペーサー基を含まない。
【0101】
場合によっては、リンカー「X」は、エーテル、アミド、ウレタン、アミン、チオエーテル、尿素、または炭素−炭素結合を含んでなる。以下に説明し、そして実施例において例示するような官能基は、典型的に、連結を形成するために使用される。連結はまた、それほど好ましくはないが、スペーサー基を含んでなる(またはそれに隣接するか、もしくは側面にある)こともある。スペーサーは、オリゴマーが小分子薬物の残基の比較的近位に配置されることにより、コンジュゲートの生体活性が有意に減少する場合、最も有用であり、ここで、スペーサーは、オリゴマーと小分子薬物の残基との間の距離を増加するのに役立ち得る。
【0102】
より具体的には、選択された実施形態では、スペーサー部分、Xは、次のもののいずれであってもよい:「−」(即ち、共有結合、安定であっても、または分解性であってもよく、小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤の残基と水溶性非ペプチド性オリゴマーとの間にある)、−C(O)O−、−OC(O)−、−CH−C(O)O−、−CH−OC(O)−、−C(O)O−CH−、−OC(O)−CH−、−O−、−NH−、−S−、−C(O)−、C(O)−NH、NH−C(O)−NH、O−C(O)−NH、−C(S)−、−CH−、−CH−CH−、−CH−CH−CH−、−CH−CH−CH−CH−、−O−CH−、−CH−O−、−O−CH−CH−、−CH−O−CH−、−CH−CH−O−、−O−CH−CH−CH−、−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−O−CH−、−CH−CH−CH−O−、−O−CH−CH−CH−CH−、−CH−O−CH−CH−CH−、−CH−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−CH−O−CH−、−CH−CH−CH−CH−O−、−C(O)−NH−CH−、−C(O)−NH−CH−CH−、−CH−C(O)−NH−CH−、−CH−CH−C(O)−NH−、−C(O)−NH−CH−CH−CH−、−CH−C(O)−NH−CH−CH−、−CH−CH−C(O)−NH−CH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−、−C(O)−NH−CH−CH−CH−CH−、−CH−C(O)−NH−CH−CH−CH−、−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−、−CH−CH−CH−CH−C(O)−NH−、−NH−C(O)−CH−、−CH−NH−C(O)−CH−、−CH−CH−NH−C(O)−CH−、−NH−C(O)−CH−CH−、−CH−NH−C(O)−CH−CH、−CH−CH−NH−C(O)−CH−CH、−C(O)−NH−CH−、−C(O)−NH−CH−CH−、−O−C(O)−NH−CH−、−O−C(O)−NH−CH−CH−、−NH−CH−、−NH−CH−CH−、−CH−NH−CH−、−CH−CH−NH−CH2−、−C(O)−CH2−、−C(O)−CH−CH−、−CH−C(O)−CH−、−CH−CH−C(O)−CH−、−CH−CH−C(O)−CH−CH−、−CH−CH−C(O)−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−NH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−NH−C(O)−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−NH−C(O)−CH−、二価のシクロアルキル基、−N(R)−(Rは、H、またはアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリールおよび置換アリールからなる群から選択される有機ラジカルである)。
【0103】
しかし、本発明の目的のために、一群の原子は、それがオリゴマーセグメントに直接隣接している場合、スペーサー部分とはみなされず、そしてその一群の原子は、その群がオリゴマー鎖の単なる伸長を表すように、オリゴマーのモノマーと同じとされる。
【0104】
コンジュゲートの形成
水溶性非ペプチド性オリゴマーと小分子との間の連結「X」は、典型的に、オリゴマーの末端上の官能基(または肝炎プロテアーゼ阻害剤上でオリゴマーを「成長させる」ことが所望される場合、1つ以上のモノマー)と、肝炎プロテアーゼ阻害剤内の対応する官能基との反応によって形成される。以下に、例示的な反応を簡単に説明する。例えば、オリゴマー上のアミノ基を、アミド連結を生成するように、小分子上のカルボン酸もしくは活性化カルボン酸誘導体と反応させてもよく、またはその逆でもよい。あるいは、オリゴマー上のアミンと薬物上の活性化カルボネート(例えば、スクシンイミジルもしくはベンゾトリアジルカルボネート)、またはその逆の反応、は、カルバメート連結を形成する。オリゴマー上のアミンと薬物上のイソシアネート(R−N=C=O)、またはその逆の反応は、尿素連結(R−NH−(C=O)−NH−R’)を形成する。さらに、オリゴマー上のアルコール(アルコキシド)基と、薬物内のハロゲン化アルキル、もしくはハライド基、またはその逆の反応は、エーテル連結を形成する。なおもう1つの結合アプローチでは、アルデヒド機能を有する小分子を、還元的アミノ化によってオリゴマーアミノ基に結合させ、オリゴマーと小分子との間の第二級アミン連結の形成を生じさせる。
【0105】
特に好適な水溶性非ペプチド性オリゴマーは、アルデヒド官能基を有するオリゴマーである。これに関して、オリゴマーは、次の構造を有する:CHO−(CH−CH−O)−(CH−C(O)H[式中、(n)は、1、2、3、4、5、6、7、8、9および10のうちの1つであり、そして(p)は、1、2、3、4、5、6および7のうちの1つである]。好適な(n)値として、3、5および7が挙げられ、そして好適な(p)値として、2、3および4が挙げられる。加えて、−C(O)H部分に対する炭素原子αは、場合により、アルキルで置換することができる。
【0106】
典型的に、官能基を有さない水溶性非ペプチド性オリゴマーの末端は、キャッピングされて、非反応性にされる。オリゴマーがコンジュゲートの形成を目的とする以外に、末端にさらなる官能基を含む場合、その基は、連結「X」の形成条件下で非反応性であるか、または連結「X」の形成中に保護されるように、選択される。
【0107】
上記のように、水溶性非ペプチド性オリゴマーは、コンジュゲーションの前に、少なくとも1つの官能基を含む。官能基は、典型的に、小分子内に含有されるか、もしくは小分子に導入される反応基に依存して、小分子への共有結合のための求電子または求核基を含んでなる。オリゴマーまたは小分子のいずれかに存在し得る求核基の例として、ヒドロキシル、アミン、ヒドラジン(−NHNH)、ヒドラジド(−C(O)NHNH)、およびチオールが挙げられる。好適な求核剤として、アミン、ヒドラジン、ヒドラジド、およびチオール、好ましくは、アミンが挙げられる。オリゴマーへの共有結合のためのほとんどの小分子薬物は、遊離のヒドロキシル、アミノ、チオ、アルデヒド、ケトン、またはカルボキシル基を有する。
オリゴマーまたは小分子のいずれかに存在し得る求電子官能基の例として、カルボン酸、カルボキシルエステル、特に、イミドエステル、オルトエステル、カルボネート、イソシアネート、イソチオシアネート、アルデヒド、ケトン、チオン、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、スルホン、マレイミド、ジスルフィド、ヨード、エポキシ、スルホネート、チオスルホネート、シラン、アルコキシシラン、およびハロシランが挙げられる。これらの基のさらなる具体例として、スクシンイミジルエステルまたはカルボネート、イミダゾイルエステルまたはカルボネート、ベンゾトリアゾールエステルまたはカルボネート、ビニルスルホン、クロロエチルスルホン、ビニルピリジン、ピリジルジスルフィド、ヨードアセトアミド、グリオキサール、ジオン、メシレート、トシレート、およびトレシレート(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)が挙げられる。
【0108】
また、チオン、チオン水和物、チオケタール、is2−チアゾリジンチオンなどのようなこれらの基のうちのいくらかの硫黄アナログ、ならびに上記の部分のいずれかの水和物または保護された誘導体(例えば、アルデヒド水和物、ヘミアセタール、アセタール、ケトン水和物、ヘミケタール、ケタール、チオケタール、チオアセタール)も挙げられる。
【0109】
カルボン酸の「活性化誘導体」は、一般的に、非誘導体化カルボン酸より極めて容易に求核剤と反応するカルボン酸誘導体を指す。活性化カルボン酸として、例えば、酸ハロゲン化物(例えば、酸塩化物)、無水物、カルボネートおよびエステルが挙げられる。そのようなエステルとして、一般形が−(CO)O−N[(CO)−]であるイミドエステル;例えば、N−ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)エステルまたはN−ヒドロキシフタルイミジルエステルが挙げられる。また、イミダゾリルエステルおよびベンゾトリアゾールエステルもまた好適である。共同所有の米国特許第5,672,662号明細書に記載の活性化プロピオン酸またはブタン酸エステルが特に好適である。これらは、−(CH2−3C(=O)O−Qの形態の基を含み、ここで、Qは、好ましくは、N−スクシンイミド、N−スルホスクシンイミド、N−フタルイミド、N−グルタルイミド、N−テトラヒドロフタルイミド、N−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、ベンゾトリアゾール、7−アザベンゾトリアゾール、およびイミダゾールから選択される。
【0110】
他の好適な求電子基として、スクシンイミジルカルボネート、マレイミド、ベンゾトリアゾールカルボネート、グリシジルエーテル、イミダゾイルカルボネート、p−ニトロフェニルカルボネート、アクリレート、トレシレート、アルデヒド、およびオルトピリジルジスルフィドが挙げられる。
【0111】
これらの求電子基は、求核剤、例えば、ヒドロキシ、チオ、またはアミノ基との反応に供されて、さまざまな結合型を生成する。本発明には、加水分解に安定な連結の形成を選好する反応が好ましい。例えば、オルトエステル、スクシンイミジルエステル、イミダゾリルエステル、およびベンゾトリアゾールエステルを含むカルボン酸およびその活性化誘導体は、上記のタイプの求核剤と反応して、それぞれ、エステル、チオエステル、およびアミドを形成するが、それらのうちアミドが最も加水分解的に安定である。スクシンイミジル、イミダゾリル、およびベンゾトリアゾールカルボネートを含むカルボネートは、アミノ基と反応して、カルバメートを形成する。イソシアネート(R−N=C=O)は、ヒドロキシルまたはアミノ基と反応して、それぞれ、カルバメート(RNH−C(O)−OR’)または尿素(RNH−C(O)−NHR’)連結を形成する。アルデヒド、ケトン、グリオキサール、ジオン、およびそれらの水和物またはアルコール付加物(即ち、アルデヒド水和物、ヘミアセタール、アセタール、ケトン水和物、ヘミケタール、およびケタール)は、好ましくは、アミンと反応し、続いて、得られるイミンを還元して、所望であれば、アミン連結を提供する(還元的アミノ化)。
【0112】
求電子官能基のいくらかは、チオールのような求核基を添加して、例えば、チオエーテル結合を形成させることができる求電子二重結合を含む。これらの基として、マレイミド、ビニルスルホン、ビニルピリジン、アクリレート、メタクリレート、およびアクリルアミドが挙げられる。他の基は、求核剤によって置き換えることができる脱離基を含んでなり、これらには、クロロエチルスルホン、ピリジルジスルフィド(切断可能なS−S結合を含む)、ヨードアセトアミド、メシレート、トシレート、チオスルホネート、およびトレシレートが含まれる。エポキシドは、求核剤による開環によって反応して、例えば、エーテルまたはアミン結合を形成する。オリゴマーおよび小分子上に上記のような相補的な反応基に関与する反応を利用して、本発明のコンジュゲートを調製する。
【0113】
場合によっては、小分子プロテアーゼ阻害剤(例えば、小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤)は、コンジュゲーションに適切な官能基を有さなくてもよい。この場合、「本来の」プロテアーゼ阻害剤が所望される官能基を有するように、それを改変することが可能である。例えば、プロテアーゼ阻害剤はアミド基を有するが、アミン基が所望される場合、Hofmann転移、Curtius転移(一旦、アミドがアジドに変換される)またはLossen転移(一旦、アミドがヒドロキサミドに変換され、続いて、トリエン(tolyene)−2−塩化スルホニル/塩基により処理される)によって、アミド基をアミン基に改変することが可能である。
【0114】
カルボキシル基を有する小分子プロテアーゼ阻害剤(例えば、小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤)(ここで、カルボキシル基を有する小分子プロテアーゼ阻害剤は、アミノ末端化オリゴマー性エチレングリコールに結合される)のコンジュゲートを調製して、小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤アゴニストをオリゴマーに共有結合させるアミド基を有するコンジュゲートを提供することが可能である。これは、例えば、無水の有機溶媒中で(ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは「DCC」のような)カップリング試薬の存在下で、カルボキシル基を有する小分子プロテアーゼ阻害剤を、アミノ末端化オリゴマー性エチレングリコールに結合させることによって、実施することができる。
【0115】
さらに、ヒドロキシル基を有する小分子プロテアーゼ阻害剤(例えば、小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤)(ここで、ヒドロキシル基を有する小分子プロテアーゼ阻害剤は、オリゴマー性エチレングリコールハロゲン化物に結合される)のコンジュゲートを調製して、エーテル(−O−)連結小分子コンジュゲートをもたらすことが可能である。これは、例えば、水素化ナトリウムを使用して、ヒドロキシル基を脱プロトン化し、続いて、ハライド末端化オリゴマー性エチレングリコールと反応させることによって、実施することができる。
【0116】
もう1つの実施例では、最初にケトン基を還元して、対応するヒドロキシル基を形成させることによって、ケトン基を有する小分子プロテアーゼ阻害剤(例えば、小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤)のコンジュゲートを調製することが可能である。その後、その段階でヒドロキシル基を有する小分子プロテアーゼ阻害剤を、本明細書に記載のように結合させることができる。
【0117】
なおもう1つの場合では、アミン基を有する小分子プロテアーゼ阻害剤(例えば、小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤)のコンジュゲートを調製することが可能である。1つのアプローチでは、アミン基を有する小分子プロテアーゼ阻害剤およびアルデヒドを有するオリゴマーを、適切な緩衝液に溶解し、その後、適切な還元剤(例えば、NaCNBH)を添加する。還元後、結果として、アミン基含有小分子プロテアーゼ阻害剤のアミン基とアルデヒドを有するオリゴマーのカルボニル炭素との間に、アミン連結が形成される。
【0118】
アミン基を有する小分子(例えば、小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤)プロテアーゼ阻害剤のコンジュゲートを調製するためのもう1つのアプローチでは、典型的に、カップリング試薬(例えば、DCC)の存在下で、カルボン酸を有するオリゴマーとアミン基を有する小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤とが組み合わされる。結果として、アミン基含有小分子プロテアーゼ阻害剤のアミン基とカルボン酸を有するオリゴマーのカルボニルとの間に、アミド連結が形成される。
【0119】
telaprevirに結合した水溶性オリゴマーの例示的化合物として、以下の構造を有するものが挙げられる:
【0120】
【化16】

ここで、それぞれ、Xは、安定な連結であり、そしてPOLYは水溶性非ペプチド性オリゴマーである。
【0121】
bocepravirに結合した水溶性オリゴマーの例示的化合物として、以下の構造を有するものが挙げられる:
【0122】
【化17】

ここで、それぞれ、Xは、安定な連結であり、そしてPOLYは水溶性非ペプチド性オリゴマーである。
【0123】
ITMN−191に結合した水溶性オリゴマーの例示的化合物として、以下の構造を有するものが挙げられる:
【0124】
【化18】

ここで、それぞれ、Xは、安定な連結であり、そしてPOLYは水溶性非ペプチド性オリゴマーである。
【0125】
日常的な実験を使用する当業者は、最初に、異なる重量および官能基を伴う一連のオリゴマーを調製し、次いで、患者に複合体を投与し、そして定期的に血液および/または尿採取を行い、そして代謝物の存在および量を試験することにより必要なクリアランスプロファイルを入手することによって、代謝を減少させるのに最も適切な分子サイズおよび連結を決定することができる。一旦、試験した各コンジュゲートの一連の代謝プロファイルが得られたら、適切なコンジュゲートを同定することができる。
【0126】
プロテアーゼ阻害剤の活性
小分子プロテアーゼ阻害剤(例えば、小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤)または小分子プロテアーゼ阻害剤と水溶性非ペプチド性ポリマーとのコンジュゲートが活性を有するかどうかを決定するために、当業者に公知のアプローチを使用して、そのような化合物を試験することが可能である。例示的アッセイを、以下に説明する。
【0127】
抗B型肝炎ウイルスに関して、安定的にトランスフェクトされたHBVゲノムを含有するHepG2−2.2.15細胞において、評価を行うことができる。それ故、ウイルスの複製の後期の工程、例えば、転写、翻訳、プレゲノムのカプシド形成、逆転写、粒子アセンブリおよび変異を阻止する化合物は、この特定の細胞系統において評価することができる。各ウイルス粒子は、リラックスド環形(RC)ウイルスDNAの1つの分子のゲノムを有するため、処置した培養物から放出されるウイルスDNAの測定を行うことができる。この方法では、培養細胞から放出されるRC DNAの量は、粒子の量だけではなく、粒子の質の影響も受ける。この特定の形態のDNAを測定するために、抗B型肝炎ウイルス活性の指標として(ウイルス粒子内のRC DNAのマイナス鎖の半定量的評価に関与する)「ドットブロット」アッセイまたは(ビリオン関連RC分子の実数を定量するための)定量的PCRアッセイを介して、アッセイすることが可能である。加えて、処置した培養物から放出されるHBsAgのレベルを、示されたまたは抗B型肝炎ウイルス活性として使用することができる。ビリオン関連RCの測定とは異なり、この定量化は、小エンベロープ糖タンパク質の量、感染細胞から放出されるHBVビリオンの成分の影響を受けるのみである。さらに、細胞質における細胞内複製中間体および核における閉環状DNA(cccDNA)は、ドットブロットハイブリダイゼーションにより半定量的か、またはリアルタイムPCRアッセイを使用して定量的のいずれかで測定することができる。
【0128】
C型肝炎ウイルスに関して、細胞ベースアッセイを使用して、HCV NS3/4Aプロテアーゼ活性に対する化合物の活性を測定することが可能である。内部リボソーム進入部位(IRES)アッセイを使用して、化合物が、ウイルスのIRESを介して仲介されるウイルスタンパク質翻訳の阻害にどのようにして影響を及ぼすかの指標として、ウイルスタンパク質の蓄積をモニターすることができる。また、細胞ベースアッセイを使用して、細胞への進入を化合物が阻止するかどうかについて研究することができる。最終的に、HVCでは利用可能なインビトロ複製システムが存在しないため、サロゲート動物ウイルス(例えば、ウシウイルス性下痢「BVDV」アッセイ)を、スクリーニング目的のために使用することができる。それ故、サロゲート動物ウイルス、BVDVを使用して、インビトロでBVDV複製に対する化合物の活性を評価することができる。
【0129】
医薬組成物
本発明はまた、医薬品賦形剤と組み合わせた、本明細書において提供されるコンジュゲートを含んでなる製剤も含む。一般的に、コンジュゲート自体は、固体形態(例えば、沈殿物)となり、固体または液体のいずれかの形態となり得る適切な医薬品賦形剤と組み合わせることができる。
【0130】
例示的な賦形剤として、炭水化物、無機塩、抗微生物剤、抗酸化剤、界面活性剤、緩衝液、酸、塩基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
炭水化物、例えば、糖、誘導体化糖、例えば、アルジトール、アルドン酸、エステル化糖、および/または糖ポリマーが、賦形剤として存在し得る。具体的な炭水化物賦形剤として、例えば:単糖類、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボース;二糖類、例えば、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオース;多糖類、例えば、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプン;およびアルジトール類、例えば、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトールが挙げられる。
【0132】
賦形剤としてはまた、無機塩または緩衝液、例えば、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせを挙げることもできる。
【0133】
調製物はまた、微生物の増殖を防止または抑止するための抗微生物剤を含んでもよい。本発明に適切な抗微生物剤の非制限的例として、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。製剤中には、抗酸化剤を存在させることもできる。抗酸化剤は、酸化を防止するために使用され、それによって、コンジュゲート、または製剤の他の成分の劣化を防止する。本発明に使用するのに適切な抗酸化剤として、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、プロピルガレート、重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0134】
界面活性剤が、賦形剤として存在してもよい。例示的な界面活性剤として:ポリソルベート、例えば、「Tween20」および「Tween80」ならびにプルロニック、例えば、F68およびF88(両方とも、BASF,Mount Olive,New Jerseyから入手可能である);ソルビタンエステル;脂質、例えば、リン脂質、例えば、レシチンおよび他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン(但し、好ましくは、リポソーム形態ではない)、脂肪酸および脂肪エステル;ステロイド、例えば、コレステロール;ならびにキレート剤、例えば、EDTA、亜鉛および他のそのような適切なカチオンが挙げられる。
【0135】
酸または塩基が、製剤中に賦形剤として存在してもよい。使用することができる酸の非制限的例として、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられる。適切な塩基の例として、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される塩基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
組成物中のコンジュゲートの量は、いくつかの因子に依存して変動するが、最適には、組成物が単位用量容器内に貯蔵される場合、治療有効用量である。治療有効用量は、どの量が臨床的に所望されるエンドポイントを生じるかを決定するために、漸増量のコンジュゲートを反復投与することによって、実験的に決定することができる。
【0137】
組成物中の任意の個々の賦形剤の量は、賦形剤の活性および組成物の特定の必要性に依存して、変動する。典型的に、任意の個々の賦形剤の最適な量は、日常的な実験を介して、即ち、(少量から多量の範囲の)賦形剤の種々の量を含有する組成物を調製し、安定性および他のパラメータを調べ、次いで、重大な有害作用を伴わずに最適な性能が達成される範囲を決定することによって、決定される。
【0138】
しかし、一般的に、賦形剤は、約1%〜約99重量%、好ましくは、約5%〜98重量%、より好ましくは、約15%〜95重量%の賦形剤の量で存在し、30重量%未満の濃度が最も好ましい。
【0139】
他の賦形剤と共に、これらの上記の医薬品賦形剤については、”Remington:The Science & Practice of Pharmacy”,19thed.,Williams&Williams,(1995)、the”Physician’s Desk Reference”,52nded.,Medical Economics,Montvale,NJ(1998)、およびKibbe,A.H.,Handbook of Pharmaceutical Excipients,3rd Edition,American Pharmaceutical Association,Washington,D.C.,2000に記載されている。
【0140】
医薬組成物には、取り得る形態がいくらでもあり、本発明は、これに関して限定されない。例示的な製剤は、最も好ましくは、経口投与に適切な形態、例えば、錠剤、カプレット、カプセル、ゲルキャップ、トローチ、分散体、懸濁液、溶液、エリキシル、シロップ、ロゼンジ、経皮パッチ、スプレー、坐剤、および粉末である。
【0141】
経口用の剤形は、経口的に活性であるコンジュゲートに好適であり、そして錠剤、カプレット、カプセル、ゲルキャップ、懸濁液、溶液、エリキシル、およびシロップが挙げられ、そしてまた、場合により、カプセル化される複数の顆粒、ビーズ、粉末またはペレットを含んでなり得る。そのような剤形は、医薬製剤の分野において公知であり、そして関連する文書に記載されている従来の方法を使用して、調製される。
【0142】
錠剤およびカプレットは、例えば、標準的な錠剤処理手順および装置を使用して、製造することができる。本明細書に記載のコンジュゲートを含有する錠剤またはカプレットを調製する場合、直接圧縮および造粒技術が好適である。コンジュゲートに加えて、錠剤およびカプレットは、一般的に、不活性の薬学的に許容できるキャリア材料、例えば、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、充填剤、安定剤、界面活性剤、着色剤などを含有する。結合剤は、粘着の性質を錠剤に付与し、それ故、錠剤がそのままの状態を保持することを確実にするために使用される。適切な結合剤材料として、デンプン(トウモロコシデンプンおよびアルファ化デンプンを含む)、ゼラチン、糖(スクロース、グルコース、デキストロースおよびラクトースを含む)、ポリエチレングリコール、蝋、ならびに天然および合成のガム、例えば、アカシアアルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、セルロースポリマー(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどを含む)、ならびにVeegumが挙げられるが、これらに限定されない。潤滑剤は、錠剤製造を容易にし、粉末の流動を促進し、そして圧力が軽減された場合の粒子のキャッピング(即ち、粒子破砕)を防止するために使用される。有用な潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸である。崩壊剤は、錠剤の崩壊を容易にするために使用され、そして一般的に、デンプン、クレイ、セルロース、アルギン、ガム、または架橋ポリマーである。充填剤として、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、アルミナ、タルク、カオリン、粉末セルロース、および結晶セルロースのような材料、ならびにマンニトール、尿素、スクロース、ラクトース、デキストロース、塩化ナトリウム、およびソルビトールのような可溶性材料が挙げられる。安定剤、当該技術分野において公知であり、例えば、酸化的反応を含む薬物分解反応を阻害または妨害するために使用される。
【0143】
カプセルはまた、好適な経口用剤形でもあり、その場合、コンジュゲート含有組成物は、液体またはゲル(例えば、ゲルキャップの場合)あるいは固体(顆粒、ビーズ、粉末もしくはペレットのような粒状物を含む)の形態でカプセル化することができる。適切なカプセルとして、ハードおよびソフトカプセルが挙げられ、そして一般的に、ゼラチン、デンプン、またはセルロース材料から作製される。ツーピースハードゼラチンカプセルは、好ましくは、ゼラチンの帯などで封止される。
【0144】
実質的に可能形態の非経口処方物(典型的に、粉末またはケーキの形態であり得る凍結乾燥または沈殿物として)、ならびに典型的に、液体であり、そして乾燥形態の非経口処方物を再構成する工程を必要とする注射用に調製された処方物が挙げられる。注射前に固体組成物を再構成するのに適切な希釈剤の例として、注射用静菌水、水中5%デキストロース、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液、塩水、滅菌水、脱イオン水、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0145】
場合によって、非経口投与を目的とした組成物は、非水溶液、懸濁液、またはエマルジョンの形態をとることができ、典型的に、それぞれ無菌的である。非水溶媒またはビヒクルの例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油およびコーン油のような植物油、ゼラチン、ならびに注射可能なオレイン酸エチルのような有機エステルがある。
【0146】
本明細書に記載の非経口処方物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤のような補助剤を含有することができる。処方物は、滅菌剤、細菌を保持するフィルターを介するろ過、照射、または加熱を組み入れることによって、滅菌される。
【0147】
コンジュゲートはまた、従来の経皮パッチまたは他の経皮送達システムを使用して、皮膚を介して投与することもでき、ここで、コンジュゲートは、皮膚に固定される薬物送達デバイスとして役立つ積層構造内に含有される。そのような構造では、コンジュゲートは、上部支持層の下側にある層、または「貯蔵器」に含有される。積層構造は、単一の貯蔵器を含有することができるか、または複数の貯蔵器を含有することができる。
【0148】
コンジュゲートはまた、直腸投与のための坐剤に処方することができる。坐剤に関して、コンジュゲートは、コカバター(カカオ脂)、ポリエチレングリコール、グリセリンゼラチン、脂肪酸、およびそれらの組み合わせのような(例えば、室温では固体のままであるが、体温では軟化、融解または溶解する賦形剤)坐剤基剤材料と混合される。坐剤は、例えば、次の工程を実施する(必ずしも示された順序ではない)ことによって、調製することができる:坐剤基剤材料を融解させて、融解物を形成する工程;コンジュゲートを(坐剤基剤材料の融解前または後のいずれかに)組み入れる工程;融解物を鋳型に注ぐ工程;融解物を冷却して(例えば、融解物を含有する鋳型を室温環境に置く)、それによって、坐剤を形成させる工程;および鋳型から坐剤を取り出す工程。
【0149】
投与および使用
本発明はまた、本明細書において提供されるコンジュゲートを、化合物による治療に応答する病態を患う患者に投与するための方法を提供する。方法は、一般的に、経口的に、治療有効量の化合物(好ましくは、製剤の一部として提供される)を投与する工程を含んでなる。また、肺、鼻、口内、直腸、舌下、経皮、および非経口のような他の投与様式も考慮される。本明細書において使用する用語「非経口」は、皮下、静脈内、動脈内、腹腔内、心臓内、髄腔内、および筋肉内注射、ならびに点滴注射を含む。
【0150】
非経口投与が利用される場合、先に記載のものより若干大きいオリゴマー、即ち、約500〜30Kダルトンの範囲の分子量を伴う(例えば、約500、1000、2000、2500、3000、5000、7500、10000、15000、20000、25000、30000以上の分子量を有する)ポリマーを用いることが必要であり得る。
【0151】
投与方法を使用して、特定のコンジュゲートの投与によって、治すかまたは予防することができる任意の病態を治療してもよい。当業者は、どう病態を特定の複合体が効果的に治療することができるかを理解している。投与しようとする実際の用量は、被験体の年齢、重量、および全般的状態、ならびに治療される病態の重症度、医療従事者の判断、および投与されるコンジュゲートに基づいて変動する。治療有効量は、当業者に公知であり、ならびに/あるいは関連する参考文書および文献に記載されており、ならびに/あるいは実験的に決定することができる。一般的に、治療有効量は、次の範囲の1つ以上内の量である:0.001mg/日〜10000mg/日;0.01mg/日〜7500mg/日;0.10mg/日〜5000mg/日;1mg/日〜4000mg/日;および10mg/日〜2000mg/日。
【0152】
任意の所与の化合物(さらに、好ましくは、製剤の部分として提供される)の単位用量は、臨床家の判断、患者の要求などに依存する多様な投薬スケジュールで投与することができる。特定の投薬スケジュールは、当業者に公知であり、または日常的方法を使用して、実験的に決定することができる。例示的な投薬スケジュールとして、1日5回、1日4回、1日3回、1日2回、1日1回、週3回、週2回、週1回、月2回、月1回、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一旦、臨床的なエンドポイントが達成されると、組成物の投薬は停止される。
【0153】
本発明の化合物を投与する1つの利点は、親薬物に対する初回通過代謝の減少が達成され得ることである。そのような結果は、腸を通過することによって、実質的に代謝される多くの経口投与薬物に有利である。この方法では、化合物のクリアランスは、所望されるクリアランス特性を提供するオリゴマー分子のサイズ、連結、および共有結合の位置を選択することによって、モジュレートすることができる。当業者は、本明細書の教示内容に基づいて、オリゴマーの理想的な分子サイズを決定することができる。対応する非コンジュゲート小薬物分子と比較した化合物の初回通過代謝の好適な減少は、次を含む:少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%および少なくとも約90%。
【0154】
多くのタイプの代謝(第I相および第II相代謝の両方を含む)を減少させることは有用であるが、コンジュゲートは、小分子薬物が肝酵素(例えば、1つ以上のシトクロムP450アイソフォーム)によって、および/または1つ以上の腸酵素によって代謝される場合、特に有用である。
【0155】
本明細書において参照されるすべての記事、本、特許、特許公報および他の刊行物は、それらの全体が参考として援用される。本明細書の教示内容と参考として援用された当該技術分野との間に矛盾が生じた場合、本明細書の教示内容の意味を優先するものとする。
【実施例】
【0156】
本発明について、ある種の好適かつ特定の実施形態と共同して説明してきたが、上記の説明ならびに以下の実施例は、例示することを意図したものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本発明の範囲内の他の態様、利点、および変更は、本発明に関係する当業者には明らかであろう。
【0157】
別途明記しない限り、添付の実施例において言及したすべての化学試薬は、市販のものである。PEG−mersの調製については、例えば、米国特許出願公開第2005/0136031号明細書に記載されている。
【0158】
本発明の化合物を調製するためのアプローチを、以下に図式的に示す。
当業者は、本明細書において提供する説明を鑑みて、これらの化合物を調製することが可能である。
【0159】
【化19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定な連結を介して直接的かまたは1個以上の原子を介するかのいずれかによって水溶性非ペプチド性オリゴマーに共有結合したプロテアーゼ阻害剤の残基を含んでなる化合物。
【請求項2】
前記プロテアーゼ阻害剤は、HIVプロテアーゼ阻害剤ではない、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記プロテアーゼ阻害剤は、肝炎プロテアーゼ阻害剤である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記肝炎プロテアーゼ阻害剤は、NS3プロテアーゼ阻害剤である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記肝炎プロテアーゼ阻害剤は、HCVプロテアーゼ阻害剤である、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
前記肝炎プロテアーゼ阻害剤は、HBVプロテアーゼ阻害剤である、請求項3に記載の化合物。
【請求項7】
以下の構造:
【化20】

[ここで:
【化21】

は、小分子肝炎プロテアーゼ阻害剤の残基であり;
(a)は1〜3の値を有する整数であり、
Xは、それぞれ、安定な連結であり;および
POLYは、それぞれ、水溶性非ペプチド性オリゴマーである]
を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
前記水溶性非ペプチド性オリゴマーは、1〜30のモノマーを有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
前記水溶性非ペプチド性オリゴマーは、1、2、3、4、5、6、7、9、9、および10から選択されるいくつかのモノマーサブユニットを有する、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
前記水溶性非ペプチド性オリゴマーは、オリゴマー性(エチレンオキシド)である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
前記オリゴマー性(エチレンオキシド)は、アルコキシまたはヒドロキシル末端キャッピング部分を有する、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
前記プロテアーゼ阻害剤は、Telaprevir、Boceprevir、ITMN−191およびBILN−2061から選択される、請求項1、5、7、および8〜11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
前記安定な連結は、エーテル、カルバメート、アミド、スルホニルアミド、および尿素から選択される、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物および薬学的に許容できる賦形剤を含んでなる、医薬組成物。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物を含んでなる、剤形。
【請求項16】
前記プロテアーゼ阻害剤による治療に応答性の病態を治療するための請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2012−502906(P2012−502906A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526875(P2011−526875)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/005215
【国際公開番号】WO2010/033226
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(500138043)ネクター セラピューティックス (32)
【Fターム(参考)】