説明

オレオソームからの活性薬剤の制御放出

オレオソームからの活性薬剤の放出速度は、多価アルコールのような放出制御剤を用いてオレオソームを製剤化することによりモジュレートすることができる。このような背景において、活性薬剤を含むオレオソームは、局所使用の製剤を含め、さまざまな製剤を製造するのに利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレオソームを含む新規組成物、ならびにそれらの製造方法に関するものである。本発明の組成物は、とりわけ、人体の表面領域に局所適用するための製品の製造に有用である。
【背景技術】
【0002】
パーム油、ヒマワリ油、ナタネ(キャノーラ)油のような植物種子油は、多種多様な産業上および栄養上の用途によって世界的に主要な農産物となっている。米国だけでも年間150億ポンドを上回る植物種子油が生産されている。SEED TECHNOLOGY AND ITS BIOLOGICAL BASIS, M. Black & J.D. Bewley (編), Sheffield Biological Sciences (2000)に記載されるWallis J.らによる「Seed oils and their metabolic engineering(種子油およびそれらの代謝工学)」を参照されたい。米国での植物種子油生産高の98%は栄養目的のためであり、食用油やマーガリンの製造などに使われている。植物油の残りはセッケン、可塑剤、ポリマー、界面活性剤、潤滑油といった工業製品を製造する際の原料として使用されている。
【0003】
植物油はトリアシルグリセロールであり、すなわち、グリセロール部分の各ヒドロキシル基が脂肪酸でエステル化されたものである。トリアシルグリセロールのグリセロール骨格は構造的に不変であるが、グリセロールに結合された脂肪酸は植物油によってかなり相違する。
【0004】
脂肪酸の構造が植物油の物理的および化学的性質を決める。例えば、脂肪酸に含まれる二重結合の数(しばしば「不飽和度」と呼ばれる変数)は油の融点に影響を与え、一方脂肪酸の鎖長はその粘性、潤滑性および可溶性に影響する。
【0005】
トリアシルグリセロール分子は水性環境では不溶性であり、油滴へと合体する傾向がある。こうした水不溶性トリアシルグリセロールを貯蔵するため、植物は種子細胞内に直径1〜10μmほどの独特な種子油貯蔵コンパートメントを発達させており、これらは「オイルボディ」、「オレオソーム」、「リピドボディ」および「スフェロソーム」としてさまざまに知られている(まとめて「オレオソーム」という)。Huang, Ann. Rev. Plant Mol. Biol. 43: 177-200 (1992)を参照されたい。植物油のほかに、これらのオレオソームは2種類の化学成分、すなわち、リン脂質とあるクラスのタンパク質(当技術分野ではオイルボディタンパク質として知られる)を含む。構造的見地から、オレオソームはトリアシルグリセロールコアがリン脂質の半単位膜によってカプセル化されたものであり、そこにオイルボディタンパク質が内蔵されている。オイルボディタンパク質は、オレオソームがより大きな油滴に合体することを防止する役目を担っていると考えられる。
【0006】
植物油を抽出するためには、種子を破砕または圧壊し、次に、一般的には有機溶媒を用いて植物油を他の種子成分(例えば、種子タンパク質や炭水化物)から分離することを含む方法により、精製する。有機溶媒を使わない植物油抽出法も開発されており、例えば、Embong and Jelen, Can. Inst. Food Sci. Techn. J. 10: 239-43 (1977)に記載される。
【0007】
しかしながら、これらの抽出法の主目的は純粋な植物油を取得することであるので、通常こうした方法はオレオソーム構造を破壊する。したがって、植物油から調製された従来の組成物は一般に無傷のオレオソームを含まない。
【0008】
例えば、Voultouryらの米国特許第5,683,740号および第5,613,583号には、脂質小胞を含む採油用植物の破砕した種子から調製されたエマルションが開示されている。これらの特許に記載された破砕法の過程で、オレオソームはそれらの構造的完全性を実質的に失ってしまう。したがって、この破砕法においては種子油の70〜90%が遊離油の状態で放出されることが開示されている。
【0009】
一方、構造的に無傷の形態で植物種子から単離されたオレオソームは、すでに認められた実際的な有用性を有する。とりわけ、オレオソームは、外因的な乳化剤の非存在下に、室温で水性化合物と油の複合混合物の調製を可能にし(GuthらのPCT出願第2005/097059号参照)、また、MurrayらのPCT出願第2005/030169号に記載されるように、オレオソームに活性成分を装填させることが可能である。
【0010】
オレオソームを調製するための非破壊的方法がDeckersらによって米国特許第6,146,645号、第6,183,762号、第6,210,742号、第6,372,234号、第6,582,710号、第6,596,287号、第6,599,513号および第6,761,914号に開示されている(まとめて「Deckers特許」という)。Deckers特許によれば、精製されたオレオソーム調製物が得られ、そのオレオソーム調製物を用いて、多様な他の物質の存在下でエマルションを調製することができる。そうしたエマルションの調製は、望ましい乳化バランス、粘度、外観を達成し、かつこれらのエマルションを特に化粧品、食品、医薬品および工業的応用に適するようにすることを目的としている。
【0011】
活性成分を含むオレオソームを調製することが多くの場合望ましい。そのような調製物を得るには、活性成分をオレオソームと混合するか、またはPCT出願第2005/030169号に記載されるように、オレオソーム内への活性成分の選択的分配をもたらす最適化方法を用いる。オレオソームへの活性成分のカプセル化はさまざまな理由のために有利である。例えば、それは、互いに接触すると有害な薬剤の分離だけでなく、もともと不安定な活性成分の安定化を可能にする。
【0012】
このようにして得られた活性成分を含むオレオソーム調製物は、完成製剤を調製するための一成分として用いることができる。かかる完成製剤の使用(例えば、皮膚へのその適用またはその摂取)によって、オレオソーム構造の破壊が起こり、結果として活性成分の放出が生じるだろう。
【0013】
そのような場合に、オレオソームからの1種以上の活性薬剤の放出を制御することが望ましいことがある。しかし、既定の組成物では、オレオソームはそのオレオソーム調製物に固有の放出プロファイルを示すにすぎず、一般的にはオレオソームの送達後、比較的急速な活性物質の放出が起こる。
【0014】
医薬やその他の分野では、活性物質のそのような急速な放出と、その後の急激に低下する放出速度は、活性物質の準最適送達に相当する。これよりもむしろ、多くの場合には、活性成分のより段階的な持続放出のほうが望ましい。
【0015】
従来のオレオソーム調製物は、構成成分オレオソームからの活性成分の放出の選択的制御を達成することができない。言い換えれば、活性成分の異なる性質および活性成分の作用開始と作用持続時間の違いが考慮されうるように、オレオソームからの活性成分の放出動態の可変的適応を行って、最適な放出動態を達成することが実現できていない。
【0016】
利用可能な方法のこうした欠点は、活性物質含有オレオソーム組成物を調製するための別のアプローチの必要性を提起させる。特に、構成成分である活性薬剤の制御放出を可能にするオレオソーム調製物がどのようにして得られるのか不明であり、果たして得られるのかどうかさえも分かっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5,683,740号
【特許文献2】米国特許第5,613,583号
【特許文献3】PCT出願第2005/097059号
【特許文献4】PCT出願第2005/030169号
【特許文献5】米国特許第6,146,645号
【特許文献6】米国特許第6,183,762号
【特許文献7】米国特許第6,210,742号
【特許文献8】米国特許第6,372,234号
【特許文献9】米国特許第6,582,710号
【特許文献10】米国特許第6,596,287号
【特許文献11】米国特許第6,599,513号
【特許文献12】米国特許第6,761,914号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】SEED TECHNOLOGY AND ITS BIOLOGICAL BASIS, M. Black & J.D. Bewley (編), Sheffield Biological Sciences (2000)
【非特許文献2】Huang, Ann. Rev. Plant Mol. Biol. 43: 177-200 (1992)
【非特許文献3】Embong and Jelen, Can. Inst. Food Sci. Techn. J. 10: 239-43 (1977)
【発明の概要】
【0019】
本発明はオレオソームを含む新規製剤を提供する。本発明の製剤は、オレオソームからの活性薬剤の制御放出を可能にする系を与える。
【0020】
したがって、本発明は、オレオソームから活性薬剤を放出させるための方法を包含し、前記方法は、
(i) カプセル化活性薬剤と放出制御剤とを含むオレオソーム調製物を用意すること、および
(ii) 活性薬剤がオレオソーム製剤から放出されるように、そのオレオソーム製剤を表面に適用すること、
を含む。
【0021】
好ましい実施形態において、オレオソームからの活性薬剤の平均放出速度は、放出制御剤の非存在下での活性薬剤の平均放出速度と比較して、放出制御剤の存在下では少なくとも15%低下する。平均放出速度は、例えば以下で詳述するような、ヘキサン抽出により測定することができる。
【0022】
さらなる好ましい実施形態においては、放出制御剤が多価アルコールである。好ましくは、多価アルコールは非芳香族ジオール、非芳香族トリオールもしくは非芳香族ポリオール、または非ハロゲン化多価アルコールである。特に好ましい実施形態では、放出制御剤がグリセリンまたはPEGである。
【0023】
本発明で使用できる活性薬剤はさまざまであり、希望通りのものでありうる。一般的に、本明細書中での「活性薬剤」とは、生体に送達したとき、検出可能な生物学的効果(薬理効果を含むが、これに限らない)をもたらすものである。
【0024】
活性薬剤の放出制御動態は、特に望ましい放出動態を示すオレオソーム調製物が得られるように最適化することができ、かかる最適化は、複数のオレオソーム調製物に分散させた放出制御剤のさまざまな濃度で活性薬剤の放出動態を評価することによって行われる。したがって、本発明はさらに、活性薬剤の放出動態が最適化された、活性薬剤を含むオレオソーム調製物を得るための方法を包含する。この方法は、
(i) それぞれが活性薬剤と放出制御剤とを含む、複数のオレオソーム調製物を調製すること、ここで、複数のオレオソーム調製物において調製物ごとに放出制御剤の濃度を変えること、
(ii) 各オレオソーム調製物中の活性薬剤の放出動態を評価すること、および
(iii) 複数のオレオソーム調製物から、活性薬剤の放出動態が最適化されたオレオソーム調製物を選択すること、
を含む。
【0025】
別の態様において、本発明はさらに、(i)オレオソーム、(ii)活性薬剤、および(iii)放出制御剤を含む新規組成物を提供する。
【0026】
本発明に従って得られるオレオソーム調製物は多種多様な製品を製造するのに有用であり、とりわけ、化粧品、食品、農産品、家庭用品、インク、塗料、ペンキ、医薬品および工業製品の製造に有用である。
【0027】
本発明の他の特徴および利点は以下の詳細な説明から明らかになるだろう。しかし、詳細な説明および具体的な実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すと同時に、例示としてのみ提供されることを理解すべきである。というのは、本発明の精神および範囲に含まれるさまざまな変更や修飾が以下の詳細な説明から当業者には明白であるからである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】グリセリンの存在下および非存在下それぞれでの乾燥オレオソームの粒子径分析を示す。
【図2】15%の蒸留水、PEG 200、またはグリセリンと混合したOMC装填(OMC-loaded)オレオソームの粒子径分析を示す。放出(35℃で2時間)後にサンプルを分析した。
【図3】5%、10%、15%または20%のPEG 200と混合したOMC装填オレオソームの粒子径分析を示す。放出(35℃で2時間)後にサンプルを分析した。2008-094サンプルは未装填オレオソームであり、15%OMCは放出制御剤を添加する前の装填オレオソームの出発材料である。両対照とも放出条件にさらさなかった。
【図4】10%のグリセリンまたはPEG 200と混合し、次に35℃で最長4時間までインキュベートした、OMC装填オレオソームの粒子径分析を示す。「time 0」は乾燥前のサンプルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
上述のように、本発明は、オレオソームを含む組成物から活性成分を制御放出させるための方法に関する。本発明者らは、オレオソーム(活性成分がカプセル化されている)を含む調製物に関して、オレオソームからの活性成分の放出が多価アルコールのような作用剤(オレオソーム調製物からの水の蒸発速度に影響を及ぼして、より速い蒸発がより速い放出と相関し、その逆も同様であるようにする(放出制御剤))を含めることによって制御され得ることを見出した。言い換えると、より速い蒸発をもたらす作用剤は、その調製物が乾燥するにつれて、オレオソームの完全性を失わせて、カプセル化された活性成分をより速やかに放出させることが判明した。かくして、本発明のオレオソーム調製物は、オレオソームからの活性成分の放出動態に対する制御が可能であり、その結果、活性成分の持続時間および作用の最適化が可能である。
【0030】
したがって、本発明は、オレオソームから活性薬剤を放出させるための方法を提供する。本発明の方法は、
(i) カプセル化活性薬剤と放出制御剤とを含むオレオソーム調製物を用意すること、および
(ii) 活性薬剤がオレオソーム製剤から放出されるように、そのオレオソーム製剤を表面に適用すること、
を含む。
【0031】
本発明に従って得られるオレオソーム調製物は活性薬剤の制御放出により特徴づけられる。好ましくは、オレオソームからの活性薬剤の平均放出速度は、放出制御剤の非存在下での活性薬剤の平均放出速度と比較して、放出制御剤の存在下では少なくとも15%低下する。
【0032】
オレオソーム調製物
本明細書において「オレオソーム」(oleosome)とは、生細胞から得られる離散的な細胞内の油またはろう貯蔵オルガネラを意味する。本目的のために、オレオソームは、その種のオルガネラを含む細胞であれば、植物細胞、真菌細胞、酵母細胞(Leber, R. et al, 1994, Yeast 10: 1421-28)、細菌細胞(Pieper-Fuerst et al., 1994, J. Bacteriol. 176: 4328-37)、および藻類細胞(Roessler, P.G., 1988, J. Phycol. (London) 24: 394-400)を含めて、どのような細胞から得られたものでもよい。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、オレオソームは植物細胞から得られたものであり、ここで「細胞」は、オレオソームが存在する花粉、胞子、種子および植物栄養器官のそれぞれから得られる細胞を含む。一般的には、Huang, Ann. Rev. Plant Physiol. 43: 177-200 (1992)を参照されたい。さらに好ましくは、本発明で用いるオレオソームは植物の種子から得られたものである。
【0034】
本発明において有用な植物種子の中で、好ましいものは以下からなる植物種の群より選択される植物種から得られる種子である:アーモンド(Prunus dulcis);アニス(Pimpinella anisum);アボカド(Persea spp.);ブナの実(beach nut) (Fagus sylvatica);ボリジ(Boragio officinalis);ブラジルナッツ(Bertholletia excelsa);キャンドルナッツ(Aleuritis tiglium);カラパ(Carapa guineensis);カシューナッツ(Ancardium occidentale);ヒマ(Ricinus communis);ココナツ(Cocus nucifera);コリアンダー(Coriandrum sativum);ワタの実(Gossypium spp.);クランベ(Crambe abyssinica);クレピス・アルピナ(Crepis alpina);クロトン(Croton tiglium);キュウリ(Cucumis sativus);クフェア(Cuphea spp.);ディル(Anethum gravealis);ユーフォルビア(Euphorbia lagascae);マツヨイグサ(Oenothera biennis);ジモルフォテカ・プルビアリス(Dimorphoteca pluvialis);アマナズナ(false flax) (Camelina sativa);フェンネル(Foeniculum vulgaris);ラッカセイ(Arachis hypogaea);ヘーゼルナッツ(Corylus avellana);アサ(大麻)(Cannabis sativa);ギンセンソウ(honesty plant) (Lunnaria annua);ホホバ(Simmondsia chinensis);カポックの実(Ceiba pentandra);ククイの実(Aleurites moluccana);レスクエレラ(Lesquerella spp.);アマニ/アマ(Linum usitatissimum);ルピナス(Lupinus spp.);マカデミアナッツ(Macademia spp.);トウモロコシ(Zea mays);メドウフォーム(Limnanthes alba);カラシ(Brassica spp.およびSinapis alba);オリーブ(Olea spp.);アブラヤシ(Elaeis guineeis);オイチシカ(Licania rigida);パパイヤ(Assimina triloba);ピーカン(Juglandaceae spp.);エゴマ(Perilla frutescens);ナンヨウアブラギリ(physic nut) (Gatropha curcas);ピリナッツ(Canarium ovatum);マツの実(pine spp.);ピスタチオ(Pistachia vera);ポンガム(Bongamin glabra);ケシの実(Papaver soniferum);カボチャ(Cucurbita pepo);ナタネ(Brassica spp.);ベニバナ(Carthamus tinctorius);ゴマ(Sesamum indicum);ダイズ(Glycine max);セイヨウカボチャ(Cucurbita maxima);サラノキ(Shorea rubusha);ルリギク(Stokesia laevis);ヒマワリ(Helianthus annuus);ツクマ(tukuma) (Astocarya spp.);アブラギリの実(Aleuritis cordata);ヴァーノニア(Vernonia galamensis);およびこれらの混合物。最も好ましくは、植物の種子は以下を含む植物種の群より選択される:ナタネ(Brassica spp.)、ダイズ(Glycine max)、ヒマワリ(Helianthus annuus)、アブラヤシ(Elaeis guineeis)、ワタの実(Gossypium spp.)、ラッカセイ(Arachis hypogaea)、ココナツ(Cocus nucifera)、ヒマ(Ricinus communis)、ベニバナ(Carthamus tinctorius)、カラシ(Brassica spp.およびSinapis alba)、コリアンダー(Coriandrum sativum)、セイヨウカボチャ(Cucurbita maxima)、アマニ/アマ(Linum usitatissimum)、ブラジルナッツ(Bertholletia excelsa)、ホホバ(Simmondsia chinensis)、トウモロコシ(Zea mays)、ハマナ(Crambe abyssinica)、およびルッコラ(Eruca sativa)。ここで最も好ましいものはベニバナ(Carthamus tinctorius)から調製されたオイルボディである。
【0035】
植物からオレオソームを調製するためには、従来の農業栽培実施法に従って、このような植物を成長させて、結実させる。種子を収穫し、必要に応じて、例えばふるい分けするかまたは洗い流すことによって、石や種子皮のような物質を取り除き(皮をむき)、場合により種子を乾かした後、その種子を機械的破砕によって加工する。好ましくは、種子を破砕する前に液相を添加する。これは「湿式粉砕」として知られている。油抽出法における湿式粉砕は、カラシ(Aguilar et al. 1991, J. Texture Studies 22: 59-84)、ダイズ(米国特許第3,971,856号;Cater et al, 1974, J. Am. Oil Chem. Soc. 51: 137-41)、ラッカセイ(米国特許第4,025,658号および第4,362,759号)、ワタの実(Lawhon et al, 1977, J. Am. Oil Chem. Soc. 54: 75-80)、ココナツ(Kumar et al, 1995, INFORM 6: 1217-40)、およびベニバナ(米国特許第6,146,645号)を含めて、さまざまな植物種からの種子について報告されている。
【0036】
好ましくは、その液体は水であるが、エタノールのような有機溶媒を用いてもよい。破砕に先立って、液相中で約15分〜約2日間にわたり種子に吸収(imbibe)させることも有利である。吸収により細胞壁が柔らかくなり、破砕プロセスを容易にすることができる。より長い期間の吸収は発芽過程に似ており、その結果、種子成分の組成にある種の有利な変化をもたらす可能性がある。
【0037】
種子はコロイドミルを使って粉砕することが好ましい。コロイドミルのほかに、工業規模で用いられる量の種子を加工することができる、以下を含む他の粉砕・破砕装置を本発明で利用してもよい:ディスクミル、コロイドミル、ピンミル、オービタルミル、IKAミルおよび工業用ホモジナイザー。ミルの選択は、利用する種子の供給源だけでなく、種子のスループット要件にも左右される。
【0038】
本発明によれば、破砕プロセスの間、種子のオイルボディは無傷のままで存在することが重要である。したがって、種子油の加工において常用される、オイルボディを破壊しがちな操作条件はいずれも本発明の方法に適していない。
【0039】
粉砕温度は好ましくは10℃〜90℃である。より好ましくは、それは15℃〜50℃であり、最も好ましくは18℃〜30℃である。一方、pHは好ましくは2.0〜11.0、より好ましくは6.0〜9.0、最も好ましくは7.0〜9.0の範囲に維持される。
【0040】
固形の汚染物質、例えば、種子皮、繊維状物質、未溶解の炭水化物とタンパク質、および他の不溶性汚染物質は、粉砕した種子画分から取り除く。固形汚染物質の分離はデカンテーション遠心分離機を用いて行うことができる。種子のスループット要件に応じて、デカンテーション遠心分離機の処理能力を変えてもよく、例えば3相デカンターのような他のモデルのデカンテーション遠心分離機を用いてもよい。運転条件は用いる特定の遠心分離機により変化し、不溶性の汚染物質が沈降して、デカンテーションの際に沈降した状態のままであるように調整する必要がある。これらの条件下でオイルボディ相と液相の部分的分離を観察することができる。
【0041】
不溶性の汚染物質を取り除いた後、オレオソーム画分を水相から分離する。本発明の一実施形態では、円筒型遠心分離機(tubular bowl centrifuge)を使用する。好ましい実施形態では、分離板型遠心分離機(disc stack centrifuge)を利用する。あるいはまた、液体サイクロンまたは自然重力下での相の沈降または他のいずれかの重力分離技術を利用してもよい。また、濾過(例えば、メンブレン限外濾過およびクロスフローマイクロフィルトレーション)のようなサイズ排除法によってオレオソーム画分を水性画分から分離することも可能である。
【0042】
この目的のために遠心分離機を用いる場合、重要なパラメーターはその遠心分離機を作動させるために用いるリングダム(ring dam)のサイズである。リングダムは、中心にさまざまな大きさの円形開口部を有する取り外し可能なリングであり、それらはオレオソーム相からの水相の分離を調節し、それによって、得られるオレオソーム画分の純度を支配する。選択されるリングダムのサイズは、オレオソーム調製物の希望する最終コンシステンシーだけでなく、用いる遠心分離機のタイプおよび油料種子の種類によっても左右される。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、ベニバナオレオソームはSA-7 (Westfalia)分離板型遠心分離機をサイズ69〜75mmのリングダムと併用することで得られる。分離効率はさらに流量によっても影響され、この実施形態では、一般的に流量を0.5〜7.0L/分に維持する。温度は26℃〜40℃に維持することが好ましい。
【0044】
用いる遠心分離機のモデルに応じて、水相からのオレオソーム画分の最適な分離が達成されるように、流量とリングダムのサイズを調整することができる。こうした調整はプロセス工学の分野の当業者には明らかだろう。
【0045】
固形分の分離とオレオソーム画分からの水相の分離を同時に行うことが可能である。これは、重力に基づいた分離法、例えば3相円筒型遠心分離機、デカンター、液体サイクロン、またはサイズ排除による分離法を用いて、実施することができる。
【0046】
本発明の方法のこの段階で得られるオレオソーム組成物は一般に、比較的クルードであって、多くの種子タンパク質(糖化されたものと、糖化されていないもの)や他の汚染物質(グルコシノレートまたはその分解産物など)を含む。本発明はそのような組成物を包含するが、好ましい実施形態では、相当量の種子汚染物質を取り除いてから、安定化されたオレオソーム調製物を調製する。
【0047】
種子汚染物質の除去を行うために、上記のように、水相から分離した後に得られたオイルオレオソーム調製物を1回以上洗浄する。その洗浄は、オレオソーム画分を液相中に再懸濁し、その再懸濁した画分を遠心分離することにより行う。こうして「洗浄済みオレオソーム調製物」が得られる。
【0048】
本発明によれば、洗浄条件は一般にオレオソーム調製物の希望する純度に応じて選択される。この点に関して、異なるオレオソーム純度のオレオソーム調製物を得るために、コントロールされた方法で変更しうる条件として、洗浄に用いる液相の構成、洗浄時間、液相とオレオソーム相の比、およびpHが挙げられる。例えば、液相は水または有機溶媒でありうる。一般的には、(i)オレオソームの等電点(等電点は一般に、オレオソーム供給源に応じて、4〜6の間で変化する)からpH値で1以上離れたpHを有する、緩衝化液相を選択することが有利である。なぜならば、そのような条件はオレオソームと汚染物質の分離を容易にするからである。さらに、緩衝化液相は、(ii)オレオソームが安定しているpHを有する、すなわち、一般にやや塩基性のpH範囲(pH7.0〜9.0)にある、ことが有利である。
【0049】
本発明に適する緩衝液系は、塩化ナトリウムを0.01M〜2Mの濃度で含む系、25mM〜50mMの濃度の重炭酸ナトリウム緩衝液、および低塩濃度緩衝液(例えば、50mM Tris-HCl、pH7.5)によって例示される。ベニバナオレオソームを調製する場合には、45mM重炭酸ナトリウム緩衝液(pH8.2)が比較的純粋なオレオソーム調製物を得るのに特に適している。
【0050】
そのような緩衝液を用いて、例えば、非オイルボディタンパク質が2%以下のオレオソーム調製物を得ることができる。オレオソーム純度に影響を及ぼす別の条件は、本発明によれば、洗浄時間およびオレオソーム/液相の相対量である。プロセス工学の分野の当業者には理解されるように、洗浄時間を引き延ばしかつ/または洗浄回数を増やすことにより、また、大量の液相を用いることにより、収量は減るものの、一般的により高いオレオソーム純度を得ることが可能である。
【0051】
洗浄条件は調製されたオレオソームの供給源に応じて調整しうる。特に、緩衝液の組成、洗浄時間、pHなどの上記パラメーターは、汚染成分だけでなくオレオソーム調製物の構成にも影響を与えるように変えることができる。なぜならば、これらはオレオソームの供給源に応じて変化するからである。
【0052】
こうして、洗浄条件の関数として、「本質的に純粋な」オレオソーム調製物が得られる;すなわち、唯一存在するタンパク質はオイルボディタンパク質である。好ましい実施形態において、オレオソーム画分は非オイルボディタンパク質を30%(w/w)未満、より好ましくは20%(w/w)未満、より一層好ましくは10%(w/w)未満しか含まない。最も好ましい実施形態では、オレオソーム画分が2%(w/w)以下の非オイルボディタンパク質を含む。
【0053】
いくつかの異なるpH値で洗浄することは、汚染物質(特にタンパク質)の段階的除去を可能にするので、有益でありうる。オレオソーム洗浄時に種子タンパク質と他の汚染物質の除去をモニターするために、SDSゲル電気泳動または他の分析技術を用いることが便利である。さらに、洗浄工程を2回以上実施する場合には、異なる洗浄工程ごとに洗浄条件を変えてもよい。
【0054】
洗浄工程の間に全部の水相を取り除く必要はなく、また、最終洗浄済みオレオソーム調製物を水、緩衝液系(例えば、50mM Tris-HCl pH7.5)、または他の液相中に懸濁してもよい。そうすることが必要なら、pHをpH2.0〜11.0、好ましくはpH6.0〜9.0、最も好ましくはpH7.0〜8.5に調整する。オレオソーム調製物中の水の量は変えることができ、水の量に応じて、多かれ少なかれ粘性のオレオソーム調製物が本発明に従って得られる。かくして、本発明のオレオソーム調製物は、容量基準で、好ましくは10%より多く65%より少ない水、さらに好ましくは15%より多く50%より少ない水、最も好ましくは20%より多く50%より少ない水を含有する。
【0055】
本発明によれば、オレオソーム調製物を製造する方法はバッチ操作法または連続フロー法で行うことができる。特に、分離板型遠心分離機を用いる場合は、連続流を発生するようにポンプシステムを設定することが有利である。利用できるポンプの例は、空気圧作動型のダブルダイヤフラムポンプ(double-diaphragm pump)および油圧系の容積移送式真空ポンプ(positive-displacement pump)または蠕動ポンプ(peristaltic pump)である。
【0056】
デカンテーション遠心分離機および円筒型遠心分離機への均一なコンシステンシーの供給を維持するため、分離工程の合間にIKAホモジナイザーのようなホモジナイザーを加えることができる。また、オイルボディ調製物を洗浄するために用いる各種の遠心分離機またはサイズ排除型分離装置の合間に、インライン式ホモジナイザーを加えることもできる。リングダムのサイズ、緩衝液の組成、温度およびpHは各洗浄工程で異なっていてよい。
【0057】
前述に従って得られたオレオソーム調製物は、以下でより詳しく述べるアプローチによって用いることができる。
【0058】
放出制御剤
上述したように、放出制御剤は、本発明の組成物からの水の蒸発速度に影響を与えることによって、前記の放出動態に影響を及ぼすものである。これに関連して、「放出制御剤」とは、活性薬剤を含んでいるまたは「カプセル化」しているオレオソームの組成物と混合したとき、放出制御剤を欠く組成物に比べて、オレオソームからの活性薬剤の放出動態をモジュレートする物質を意味する。これに関する例は、水の沸点(蒸気圧)を変更し、それゆえに、本発明で用いたとき水の蒸発速度に影響を与える成分である。したがって、放出制御剤は放出速度を下げるものでも、上げるものでもよい。例えば、メチル、エチル、およびイソプロピルアルコールは蒸気圧を上げ、それによって放出を速めるが、グリセリン、エチレングリコール、およびプロピレングリコールは蒸気圧を下げて、放出を遅らせる。それゆえ、一般論として、異なる放出制御剤は、水の蒸発速度に異なった影響を及ぼすという理由で、異なる放出動態を示すことができる。
【0059】
好ましい実施形態において、放出制御剤は多価アルコールである。「多価アルコール」とは2個以上のヒドロキシル基をもつヒドロキシル含有有機化合物である。任意の適当な多価アルコールを用いることができるが、好ましくは、非ハロゲン化多価アルコールであって、できれば、低分子量から中間分子量まで(すなわち、50,000ダルトン未満)のものである。従って、適切には、多価アルコールは非芳香族のジオール、トリオール、またはポリオールである。
【0060】
多価アルコールがジオールである場合、それはグリコールまたは非芳香族グリコール誘導体でありうる。適当なグリコール誘導体はブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、へキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキサンジオール、またはポリブチレングリコールである。
【0061】
多価アルコールがトリオールである場合、それは1,2,6ヘキサントリオールまたはグリセロールでありうる。グリセロールのポリマー、例えば、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、セプタ、オクタ、ノナ、またはデカグリセロールを用いてもよく、同様にグリセロールの軽度置換誘導体およびそのポリマーを用いてもよい。
【0062】
多価アルコールがポリオールである場合、少なくとも1個の炭素原子はそれに結合されたヒドロキシル基をもたないことが好ましい。ヒドロキシル基がすべての炭素原子に結合されているポリオールの例はグリセロール、およびソルビトールのような糖類である。かかるポリオールのいくつかのエトキシレートは、それらが室温で液体であるかまたは水溶性であるという条件で、本発明の調製物中で使用するのに適しており、例えば、sorbeth 6、sorbeth 20、sorbeth 30、およびsorbeth 40が適している。本発明に従って使用できる他のポリオールの例としては、ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0063】
本発明においては多価糖類を用いることが可能であり、かかる多価糖類には、グルコースやフルクトースのような単糖類、スクロースのような二糖類、およびデンプンやセルロースのような複合多価糖類が含まれる。さらに、軽度に置換された糖エステルは、そうしたエステルが多価のままであるという条件で、使用することができる。
【0064】
本発明で用いる多価アルコールは好ましくは、グリセロールとその直鎖状および非直鎖状ポリマー類似体から選択される。プロセス工学に精通している当業者は、本開示に従って、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明において同様に使用できる多価アルコール(本明細書で特に挙げたもの以外を含む)および多価アルコールの混合物を特定することができる。
【0065】
活性薬剤
原則として、外因性の活性成分はいずれも本発明に従って用いることができる。本明細書で用いる「活性物質」、「活性薬剤」および「活性成分」とは、表面領域に送達したとき、その表面領域に対して検出可能な物理的または化学的効果(生物学的、生理学的、薬理学的、治療的、または予防的効果を含む)を有する化合物を示す。したがって、活性物質はどのような表面領域でもその外見、健康、適性、もしくは性能特性を増強または改善する可能性がある。
【0066】
特定の実施形態において、表面領域は人体または他の哺乳類の内部または外部であり、例えば、ヒトの皮膚、毛髪、頭皮、歯および爪である。
【0067】
オレオソーム内にカプセル化できる活性物質はいずれも用いることができる。これに関連して、「カプセル化」とは、活性物質が、全体的にまたは部分的に、オレオソームのトリアシルグリセリドコア内またはオレオソームの脂質膜内に存在することを意味する。
【0068】
好ましい実施形態において、活性物質は疎水性の化合物であり、すなわち、水のような極性溶媒には容易に溶解しない化合物である。化合物の相対的疎水性を定量するために用いられる一般的尺度はLogP値であり、これは、化合物を水/オクタノールの2相系中に溶解したとき、オクタノールおよび水に溶解した化合物の相対濃度の比を示す。好ましい実施形態では、本発明に従って用いられる活性物質のLogP値は0〜8の範囲である;より好ましい実施形態では、活性物質のLogP値は1〜7の範囲であり、最も好ましい実施形態では、LogP値が2〜7の範囲である。一般的に、化合物のLogP値は実験的に決定することができ、例えば、逆相HPLCを用いることにより(Yagam and Haraguchi, 2000, Chem. Pharm. Bulletin (Tokyo): 1973-7を参照)、またはKowWinプログラムのようなソフトウェアモデルを用いることにより(例えば、Meylan and Howard. 1995, J. Pharm. Sci. 84: 83-92に記載)決定される。
【0069】
本発明はまた、「両親媒性」の活性薬剤、すなわち、溶媒に対する親和性が異なっている2つの区別される部分を有する分子、の使用を包含する。その分子の一方の部分は極性溶媒に対する親和性を示して、親水性であるとされ、また、その分子の他方の部分は非極性溶媒に対する親和性を示して、疎水性であるとされる。これらの分子を分類するために、両親媒性分子の疎水性部分と親水性部分のバランス(「疎水性-親油性バランス」または「HLB」)が利用される。よく用いられる両親媒性分子のHLB値は、例えばHANDBOOK OF PHARMACEUTICAL EXCIPIENTS (Pharmaceutical Press, 1994)から、簡単に入手できる。本発明で用いる両親媒性活性物質のHLBは1〜15、より好ましくは5〜13、最も好ましくは7〜11の範囲でありうる。
【0070】
活性物質を含むオレオソーム調製物は、活性成分とオレオソームとの単純な混合により、またはMurrayらがPCT出願第2005/030169号に記載するような、オレオソームへの活性成分の選択的分配をもたらす最適化方法により、得ることができる。
【0071】
活性薬剤と放出制御剤を含むオレオソーム調製物
これに関連して用いられるオレオソーム調製物は、容量基準で、少なくとも5%のオレオソームを含む。さらに好ましくは、オレオソーム調製物は、容量基準で、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%または75%のオレオソームを含む。
【0072】
そのようなオレオソーム調製物に放出制御剤を、オレオソームへの活性薬剤の分配後に、本発明に従って添加することが好ましい。その添加後に、放出制御剤を、単純な混合または撹拌により、例えば、低速せん断(一般には500rpm以下)のオーバーヘッド型スターラーまたはマグネチックスターラーと撹拌子を用いて、オレオソーム調製物中に分散させる。より大規模な操業では、標準インライン式ミキサーまたはホモジナイザーを使用することができ、均質混合物を得るために必要とされる他の手段、例えば、Cowlesブレードを3000rpmで15〜20分用いるピグメントミルなども同様に使用できる。ただし、混合装置は、混合または撹拌プロセスで発生するせん断力が適度であって、オレオソームが無傷のままで存在するように、選択されなくてはならない。
【0073】
上で述べたように、オレオソーム調製物に含まれる水相の量はさまざまでありうる。放出制御剤は好ましくはオレオソーム調製物の水相の部分を形成し、その濃度は好ましくはオレオソーム調製物の水相の容量で1%〜99%の範囲である。放出制御剤の濃度は希望する放出動態に応じて選択され、それ相応に変化しうる。
【0074】
本発明によれば、活性物質の放出制御動態は、特に望ましい放出動態を示す(最適化された)調製物を得るように調整することができる。かかる調製物は、複数のオレオソーム調製物に分散された放出制御剤のさまざまな濃度で活性薬剤の放出動態を評価することによって得られる。したがって、本発明はさらに、活性薬剤の放出動態が最適化された、活性薬剤を含むオレオソーム調製物を得るための方法を包含する。この方法は、
(i) 活性薬剤と放出制御剤を含む複数のオレオソーム調製物を調製すること、ここで、各オレオソーム調製物は異なる濃度の放出制御剤を含むこと、
(ii) 各オレオソーム調製物中の活性薬剤の放出動態を評価すること、および
(iii) 複数のオレオソーム調製物から、活性薬剤の放出動態が最適化されたオレオソーム調製物を選択すること、
を含む。
【0075】
これに関連して活性物質の放出動態を評価するために、オレオソーム調製物に含まれるオレオソームの粒子径を、Malvern Instruments社(Westborough, マサチューセッツ州)製のパーチクルアナライザーのような、粒子径分析装置を使って測定することができる。オレオソーム調製物を表面領域に適用し、異なる時点で、粒子の平均径とサンプル中の粒子分布パターンについてサンプルを分析することができる。一般的に、粒子の平均径および/またはオレオソーム調製物内に存在する粒子の分布プロファイルの変化は、オレオソームの崩壊を示しており、それゆえ、オレオソームからの活性薬剤の放出を示している。揮発性の活性薬剤の場合は、オレオソーム調製物からの活性薬剤の放出動態を評価するために、分析ツールとしてガスクロマトグラフ装置を用いるヘッドスペース分析を利用することができる。あるいはまた、ヘキサンのような溶媒を用いる抽出はオレオソームから放出された活性物質を選択的に取得して、分光光度測定技術または他の定量的技術による定量を可能にする。
【0076】
放出制御剤としてグリセリンを用いる場合、5〜20容量%のグリセリン濃度はオレオソームからの活性薬剤の放出を、放出制御剤を含まない対照調製物と比較して、1時間以上遅らせるが、これは表面領域、外部条件および適用量に左右される。
【0077】
一般に、さまざまな濃度の放出制御剤は、放出制御剤を含まないオレオソーム調製物と比較して、異なる放出動態をもたらすと予想される。例えば、PEG 200の濃度を増加させていくと、より遅い放出動態が観察される(実施例6参照)。好ましい実施形態では、オレオソームからの活性薬剤の平均放出速度が、放出制御剤の非存在下での活性薬剤の平均放出速度と比較したとき、放出制御剤の存在下では少なくとも15%低下する。
【0078】
本発明はさらに新規なオレオソーム調製物を包含する。したがって、別の態様では、本発明はさらに、(i)オレオソーム、(ii)活性薬剤、および(iii)放出制御剤を含む組成物を提供する。上で述べたように、放出制御剤は好ましくは多価アルコールである。
【0079】
活性薬剤の放出
本発明のオレオソーム調製物はどのような表面領域にも適用することができる。これに関する表面領域の選択は、主に、オレオソームを含む所与の完成製剤の希望する有用性によって決まる(以下のさらなる考察を参照されたい)。完成製剤を表面領域に適用すると、オレオソーム構造が実質的に崩壊して活性薬剤を放出するまで、その構造は徐々に弱体化する。活性薬剤の放出の動態は、オレオソームの崩壊速度の関数であり、ひいては表面領域にオレオソームを適用するのに用いた物理的力の関数であり、さらに表面領域の物理的・化学的性質および暴露条件の関数でもある。本発明による多価アルコール放出制御剤を含むオレオソーム調製物では、一般にオレオソームの安定性が増加し、結果的にオレオソームの崩壊速度の低下を招き、そのため、放出制御剤を欠くオレオソーム調製物よりもゆっくりとした活性薬剤の放出動態をもたらす。
【0080】
活性薬剤の放出は、例えば、オレオソーム調製物を皮膚や他の表面領域に塗りこむことにより、またはオレオソーム調製物を表面領域に塗布した後でそれを乾燥させることにより、オレオソーム調製物を適用するときに物理的な力が加わることに起因しうる。香料のような、揮発性の活性物質を用いる場合、その活性物質の放出は活性物質の蒸発という結果になるだろう。活性物質の放出はまた、オレオソーム調製物の表面への適用後に、その表面領域に物理的力または化学物質を加えることによっても起こりうる。後者の場合には、そのような化学物質がオレオソームと反応して、オレオソーム構造の崩壊と活性物質の放出をもたらすと考えられる。特定のフィルム形成またはコーティングに応用する場合は、例えば、活性物質の放出が、フィルムもしくはコーティングを磨耗することにより、またはフィルムもしくはコーティングを化学物質(オレオソームからの活性物質の放出を開始させる能力があるもの)と接触させることにより、開始される。
【0081】
放出動態は、活性物質の放出速度により、または放出された活性薬剤の量により特徴づけることができる。後者の量は、所定の時点でオイルボディの外部の活性薬剤の量を測定するヘキサン抽出のような分析方法により測定可能である。活性薬剤の放出速度は、粒子径分布の経時的変化(サンプルにおける粒子径の分布を反映する)を評価するといった分析方法を介して測定することができる。サンプルの粒子径の変化はオレオソームの崩壊、それゆえに活性薬剤の放出を示す。経時的な放出の量または速度を算出することで、平均放出速度が得られる。
【0082】
活性物質の放出動態に加えて、オレオソーム調製物のいくつかの他の特性を本発明に従って変更することができる。こうした特性の例としては、電気伝導性、表面張力、およびフィルムまたはコーティングを形成する能力が挙げられる。これらは変更可能であり、繊維や毛髪などの表面上での吸湿速乾作用(wicking action)または毛管作用の速度も同様に変えられる。
【0083】
オレオソーム調製物の有用性
本明細書で用いる「完成製剤」とは、その意図した最終用途にすぐ使用できるような製剤を意味する。本発明に従って得られるオレオソーム調製物は、そのオレオソーム調製物に1種以上の追加の化合物を添加することによって、例えばDeckers特許やPCT出願第2005/030169号および第2005/097059号に概説されるような、多くの完成製剤を製造するための一成分として用いることができる。
【0084】
かかる製剤は、クリーム、ジェル、ローション、ろう様固体、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ペースト、スプレー、または乳液を含めて、幅広い剤形のいずれかをとることができる。有利には、そのような製品の処方を外因的な乳化剤を用いないで実施する。本発明による完成製剤は、哺乳類の表面領域に局所適用される製剤、例えば、パーソナルケア製品、化粧品、外用医薬品、スキンケア製品、薬用化粧品、皮膚用医薬品、および動物用外用医薬品により例示される。本発明に従って得られたオレオソーム調製物を用いて処方できる他の製品は、食品、機能性食品、および栄養補助食品、ならびに農産品、家庭用品、インク、塗料、ペンキ、医薬品および工業製品である。
【実施例】
【0085】
実施例1. ベニバナからのオレオソーム調製物の取得
本実施例では、ベニバナからのオレオソーム画分の回収について記載する。得られた調製物は洗浄済みの無傷のオレオソームを含む。
【0086】
種子汚染物質の除去 全量45kgの乾燥ベニバナ(Carthamus tinctorius)種子を65℃の水道水120Lほどで2回、約15℃の水道水120Lほどで1回洗浄した。廃水を分離するために、スクリーンメッシュを備えたバレルの中で洗浄を行った。
【0087】
種子の破砕 洗浄した種子を、MZ-130交差状歯付きローター/ステーター粉砕セットとトップローディング型ホッパーが装備されたコロイドミル(Colloid Mill, MZ-130 (Fryma社); 処理能力: 350 kg/hr)に、そのホッパーから流し込み、同時に、粉砕に先立って約100Lの45mM重炭酸ナトリウム緩衝液(pH8.2)を外部接続ホースから供給した。ミルの運転は1Rの間隙設定で行ったが、これは18℃および30℃で粒子径が100ミクロン未満となるように選ばれた。45kgの種子すべてを10分で粉砕した。
【0088】
均質化および固形分の除去 得られたスラリーをインライン式ナイフホモジナイザー(Dispax Reactor(登録商標) DR 3-6/A, IKA(登録商標)Works社)に約7L/分の速度でポンプ移送した。得られたスラリーを、デカンテーション遠心分離機(NX-314B-31, Alfa-Laval社)を3250rpmの運転速度に上げてから、直接その遠心分離機に送り込んだ。25分で、約160kgの種子粉砕スラリーがデカントされた。この工程でのスラリー移送のためWatson-Marlow (モデル704)蠕動ポンプを使用した。
【0089】
オレオソームの分離 オレオソーム画分の分離は、3相分離・自己排出型ボウルと取り外し可能なリングダムシリーズを装備した分離板型遠心分離機(SB 7, Westfalia社) (最大処理能力: 83L/分; リングダム: 69mm)を用いて行った。運転速度は〜8520rpmであった。Watson-Marlow (モデル704)蠕動ポンプを用いて、デカントされた液相(DL)を、運転速度に上げた後の遠心分離機に送り込んだ。これにより、デカントされた液相が、水と可溶性種子タンパク質を含む重相(HP1)およびオイルボディを含む軽相(LP1)に分離する。遠心分離機を1回通過させた後に得られたオレオソーム画分は未洗浄オレオソーム調製物と呼ばれる。その後、この未洗浄オレオソーム画分を、45mM重炭酸ナトリウム緩衝液(pH8.2, 35℃, 4L/分)と混合しながらインライン式スタティックミキサーに通して、第2の分離板型遠心分離機(SA 7, Westfalia社) (最大処理能力: 83L/分; リングダム: 73mm)に送った。運転速度は〜8520rpmであった。次に、分離されたオレオソームを含む軽相(LP2)を、45mM重炭酸ナトリウム緩衝液(pH8.2, 35℃, 4L/分)と混合しながら別のインライン式スタティックミキサーに通して、第3の分離板型遠心分離機(SA 7, Westfalia社) (最大処理能力: 83L/分; リングダム: 75mm)に送った。運転速度は〜8520rpmであった。全手順を室温で実施した。2回目以後の分離で得られた調製物はすべて洗浄済みオレオソーム調製物と呼ばれる。
【0090】
実施例2. 放出制御剤を含むベニバナオレオソーム調製物の調製
75%固形分のベニバナオレオソーム分散体100gに、低せん断混合を用いて、25gの純粋なグリセリン(純度>99%)を加えた。これにより、全オレオソームレベルが60%に低下した。この分散体のpHは典型的には>8.5である。この分散体に、低せん断撹拌しながら、市販の防腐剤Geogard Ultra(グルコノデルタラクトンと安息香酸のブレンドからなる)1.25gを添加すると、分散体のpHが4.2〜4.5に下がる。この分散体は微生物チャレンジ試験に合格し、また、25℃で6ヶ月経過後でさえもオレオソームの漏出がまったく観察されなかった。
【0091】
実施例3. 放出制御剤を含むおよび含まないベニバナオレオソーム調製物の物理的安定性の比較
放出制御剤としてグリセリンを含むおよび含まないベニバナオレオソーム調製物100μl全量を50ml遠心分離管の蓋の内面に広げた。そのサンプルを室温でさまざまな長さの時間にわたり空気乾燥させた。次に、サンプルを20mlの0.025M重炭酸塩緩衝液中に再懸濁し、1mLアリコートをレーザー回折で分析して粒子径を評価した。標準オイルボディは重炭酸塩緩衝液を含む当初の調製物であり、防腐剤NeoloneおよびGlycacilを加えて保存される。グリセリンオイルボディはグリセリンと防腐剤Geogard Ultraを用いて処方される。
【0092】
図1に示すように、オレオソームと放出制御剤としてのグリセリンを含む調製物では、粒子径分布が90分の乾燥期間にわたり変化していない。これに対して、オレオソームを含むがグリセリンを含まない調製物では、90分の乾燥期間中に粒子径が徐々に変化し、より大きな径の粒子がより小さい径の粒子を犠牲にして出現する。このことは、オレオソーム構造の崩壊とオレオソームの親油性内容物の放出を示している。
【0093】
実施例4. 放出制御剤を含むおよび含まないオレオソーム調製物からのOMCの放出動態の比較
75%オレオソーム分散体のサンプル90gに、十分なOMC(trans-4-メトキシ-ケイ皮酸2-エチルヘキシル、Sigma Aldrich社)を添加して、15%乾燥重量または10%サンプル重量のOMCを含む最終混合物を得た。次に、この混合物を、低速ミキサーを使って室温で2分間撹拌し、オレオソームへのOMCの吸収を促進した。
【0094】
そのサンプルを2つの5gサンプルに分配した。第1のサンプルは、0.5gの蒸留水で希釈して5分間混合した。装填オレオソームと希釈剤の最終比は68/32である。
【0095】
第2のサンプルは0.5gの純粋グリセリンで希釈し、最終混合物を得るために5分間混合した。この最終混合物におけるオレオソーム/グリセリン/水の比率は、それぞれ68%/9%/23%である。
【0096】
2つのサンプルのそれぞれからアリコート(90〜92mg)を取り出して、スズ製ホイルの1.2cm2領域の上に広げた。サンプルを含むスズ製ホイル片をインキュベーター内で35℃に1、2、3または4時間暴露した。そのスズ製ホイルをガラス抽出管に入れ、オレオソームが視覚的に再懸濁されるまで10mLの純粋ヘキサンで抽出した。そのサンプルを遠心分離して、抽出物を新しい管に移した。
【0097】
OMCは310nmの波長を用いる分光光度法により検出することができる。分光光度法による評価のためには、抽出物のいくつかの希釈物が必要であった。その後、希釈を考慮するために、得られた吸光度値を補正した。ヘキサン抽出物の結果を表1に示す。ヘキサン抽出を用いて経時的に放出されたOMCの濃度を追跡することにより(下記参照)、放出制御剤としてグリセリンを用いて処方されたオレオソームサンプルは、水で希釈されたサンプルよりも著しく長い時間にわたってOMCを保持することが明らかになった。
【表1】

【0098】
オレオソームを35℃で0〜4時間の放出条件にさらし、その後ヘキサンにより抽出した。ヘキサン抽出物のOMC含有量は310nmで分光光度法により評価した。サンプルの希釈を反映するように吸光度値を調整した。
【0099】
実施例5. オレオソーム調製物からのOMCの放出動態に関するグリセリンとPEG 200の比較
15%乾燥重量のOMCを含むサンプルを実施例4に記載した方法に従って調製した。次に、この装填オレオソームを15重量%のグリセリンまたはPEG 200(ポリエチレングリコール180〜210MW, Sigma Aldrich社)と混合した。各オレオソーム調製物のサンプル(90〜92mg)を1.2cm2のスズ製ホイルの上にむらなく広げて、35℃で2時間インキュベートした。
【0100】
オレオソームの分解、つまりOMCの放出は、レーザー回折粒子径分析を用いて評価した。サンプルを含むスズ製ホイルをサンプルと共に内側に少しだけ折りたたみ、10mLの25mM重炭酸ナトリウム緩衝液を含む15mLコニカルチューブに入れた。オレオソームがスズ製ホイルから取り除かれるのを視覚的分析で確認するまで、このサンプルを振とうした。その後、Mastersizer 2000 (Malvern Instruments社)粒子径分析装置を用いて粒子径分布についてサンプルを分析した。
【0101】
結果を表2および図2に要約して示す。パラメーター「d (0.5)」は、粒子分布の50%が下回っている粒子径(μm)を示す。これらの結果は、用いる放出制御剤の種類がオレオソーム調製物からの活性薬剤の放出動態に影響を及ぼすことを示している。より重い重量の分子であるグリセリン(〜1.26の比重、これに対してPEG 200の比重は〜1.13)は装填オレオソームを分解からうまく保護し、PEGよりも遅いオレオソームからのOMCの放出をもたらす。
【表2】

【0102】
「2008-094」サンプルは未装填オレオソームから構成され、15%OMCは放出制御剤を添加する前の装填オレオソームの出発原料であった。両対照とも放出条件にさらさなかった。
【0103】
実施例6. さまざまな濃度のPEG 200を放出制御剤として含むオレオソーム調製物からのOMCの放出動態の比較
15%乾燥重量のOMCを含むサンプルを実施例4に記載した方法に従って調製した。次に、装填オレオソームを5、10、15または20重量%のPEG 200 (ポリエチレングリコール180〜210MW, Sigma Aldrich社)または蒸留水(対照)と混合した。各オレオソーム調製物のサンプル(90〜92mg)を1.2cm2のスズ製ホイルの上にむらなく広げて、35℃で2時間インキュベートした。
【0104】
オレオソーム分解はレーザー回折粒子径分析を用いて上記のように評価した。結果を表3および図3にまとめた。前述同様に、「d (0.5)」は、粒子分布の50%が下回っている粒子径(μm)である。
【0105】
これらの結果から、放出制御剤の使用濃度はオレオソーム調製物からのOMCの放出動態に影響を及ぼすことが実証される。放出制御剤(PEG)のより高い濃度はより低いd (0.5)値をもたらし、これはオレオソームの崩壊が少ししかなく、それゆえに、OMCの放出速度がより遅いことを示している。最低濃度(5%)の放出制御剤を含むサンプルのd (0.5)値は最も高く、オレオソームの損傷が最もひどかったことを示している。
【表3】

【0106】
実施例7. グリセリンまたはPEG 200を放出制御剤として含むオレオソーム調製物からのOMCの放出速度
15%乾燥重量のOMCを含むサンプルを実施例4に記載した方法に従って調製した。次に、この装填オレオソームを10重量%のグリセリンまたはPEG 200(ポリエチレングリコール180〜210MW, Sigma Aldrich社)のいずれかと混合した。オレオソーム調製物のサンプル(90〜92mg)を1.2cm2のスズ製ホイルの上にむらなく広げて、35℃で1、2、3または4時間インキュベートした。
【0107】
オレオソームの分解を前述同様に評価した。表4、表5および図4に要約された結果から、PEG 200の存在下では、オレオソーム調製物からのOMCの平均放出速度が、放出制御剤を含まないオレオソーム調製物からの放出速度より約18%低下したことが示される。グリセリンの存在下では、オレオソーム調製物からのOMCの平均放出速度が、放出制御剤を含まないオレオソーム調製物からの放出速度より93%ほど低下した(表4参照)。より長いインキュベーション時間は、結果的に、より高いd (0.5)値および粒子径分布曲線の右シフトをもたらし(表5、図4参照)、これは時間とともに調製物中のオレオソームの崩壊が増加することを示している。
【表4】

【0108】
オレオソームを35℃で0〜4時間の放出条件にさらし、その後ヘキサンで抽出した。ヘキサン抽出物のOMC含有量は310nmで分光光度法により評価した。サンプルの希釈を反映するように吸光度の結果を調整した。パラメーター「放出%」は、対照の水中に放出されたOMC(これを100%とみなす)との比較により算出した。「平均放出速度」は、時間とともに放出された活性物質の平均的な量である。
【表5】

【0109】
目下好ましい実施例であると考えられるものに関連して本発明を説明してきたが、本発明は開示した実施例に限定されないことを理解すべきである。それどころか、本発明は、添付の特許請求の範囲および精神に含まれるさまざまな変更および同等の構成を包含するものとする。
【0110】
あらゆる刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許および特許出願が参照によりそのまま組み込まれることを具体的にかつ個別に示されるのと同程度に、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレオソームから活性薬剤を放出させるための方法であって、
(i) カプセル化活性薬剤と放出制御剤とを含むオレオソーム調製物を用意すること、および
(ii) 活性薬剤がオレオソーム製剤から放出されるように、そのオレオソーム製剤を表面に適用すること、
を含む上記方法。
【請求項2】
オレオソームからの活性薬剤の平均放出速度が、放出制御剤の非存在下での活性薬剤の平均放出速度と比較して、放出制御剤の存在下では少なくとも15%低下する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
放出制御剤が多価アルコールである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
多価アルコールが非芳香族ジオール、非芳香族トリオール、非芳香族ポリオール、または非ハロゲン化多価アルコールである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
放出制御剤がグリセリンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
放出制御剤がPEGである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
グリセリンまたはPEGが前記製剤中に5〜20容量%の量で存在する、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
表面領域が皮膚である。請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
オレオソーム中にカプセル化された活性薬剤と、放出制御剤とを含有する制御放出オレオソーム製剤。
【請求項10】
オレオソームからの活性薬剤の平均放出速度が、放出制御剤の非存在下での活性薬剤の平均放出速度と比較して、放出制御剤の存在下では少なくとも15%低下する、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
放出制御剤が多価アルコールである、請求項9または10に記載の製剤。
【請求項12】
多価アルコールが非芳香族ジオール、非芳香族トリオール、非芳香族ポリオール、または非ハロゲン化多価アルコールである、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
放出制御剤がグリセリンである、請求項9〜12のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項14】
放出制御剤がPEGである、請求項9〜12のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項15】
グリセリンまたはPEGが前記製剤中に5〜20容量%の量で存在する、請求項13または14に記載の製剤。
【請求項16】
請求項9〜15のいずれか1項に記載の組成物を含有する完成製剤。
【請求項17】
完成製剤がパーソナルケア製品、化粧品、外用医薬品、スキンケア製品、薬用化粧品、皮膚用医薬品、動物用外用医薬品、食品、または工業製品である、請求項16に記載の完成製剤。
【請求項18】
活性薬剤の放出動態が最適化された、活性薬剤を含むオレオソーム調製物を得るための方法であって、
(i) それぞれが活性薬剤と放出制御剤とを含む複数のオレオソーム調製物を調製すること、ここで、各オレオソーム調製物は異なる濃度の放出制御剤を含むこと、
(ii) 各オレオソーム調製物中の活性薬剤の放出動態を評価すること、および
(iii) 複数のオレオソーム調製物から、活性薬剤の放出動態が最適化されたオレオソーム調製物を選択すること、
を含む上記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−516548(P2011−516548A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504002(P2011−504002)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/002242
【国際公開番号】WO2009/126301
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(505371014)セムバイオシス ジェネティクス インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】