説明

オレフィン性モノマーの(共)重合用遷移金属触媒

本発明は、遷移金属と、少なくとも1種の、式Ia又はIb:
【化1】


で表される多座配位子とから構成されている金属錯体、その金属錯体の製造方法、多座配位子それ自体及びその製造方法、本発明の金属錯体を含む触媒活性組成物、本発明の触媒活性組成物をオレフィンの重合又は共重合に使用する方法及び本発明の触媒活性組成物が使用されるオレフィンの重合法又は共重合法、並びに本発明の方法により製造された重合体又は共重合体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属と少なくとも1種の多座配位子とから構成されている金属錯体、該金属錯体の製造方法、多座配位子それ自体及びその製造方法、金属錯体を含む触媒活性組成物、触媒活性組成物をオレフィンの重合又は共重合に使用する方法及び触媒活性組成物が使用されるオレフィンの重合法又は共重合法、並びにこの方法により製造された重合体又は共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィンの重合体又は共重合体は、経済的に極めて重要である。なぜなら、多量のモノマーが容易に入手可能であり、そしてポリマーは、製造方法又は処理パラメータを変更することによって広範囲にて変更可能だからである。重合体又は共重合体の製造方法において、使用される触媒が特に重要である。チーグラ−ナッタ触媒に加えて、遷移金属、例えばZr(例えば、メタロセン触媒中で用いられる)、Ni、Pd、Fe又はCoを中心原子として使用する種々のシングルサイト触媒が益々重要となっている。
【0003】
詳細に研究されているメタロセン触媒は、工業的に使用する場合に課題を有している。最も頻繁に使用されるメタロセンは、加水分解に対して極めて不安定なジルコノセン及びハフノセンである。更に、殆どのメタロセンは、多くの触媒毒、例えばアルコール、エーテル又は一酸化炭素(モノマーとして使用されるオレフィンを注意して精製する必要がある)に対して不安定である。
【0004】
特許文献1は、1種以上の二座配位子を含む遷移金属化合物を有する重合触媒に関するものである。遷移金属錯体は、サリチルアルジミンを含むTi錯体であるのが好ましい。このTi錯体において、アルジミンの窒素は、フェニル置換基を有していても良く、又は6員環に導入されていても良い。この触媒により、材料として殆ど望ましくない低分子量のポリエチレンを形成するのが一般的である。
【0005】
特許文献2も同様に、1種以上の二座配位子を含む遷移金属化合物を有する重合触媒に関するものである。遷移金属への配位は、少なくとも1個の窒素原子及び芳香族基に結合する少なくとも1個の原子を間に介して行われる。実施例によると、遷移金属としてはチタン及びジルコニウムが好ましい。
【0006】
Richard F. Jordan等による非特許文献1は、二座の8−キノリノラト配位子を含む第IV族の遷移金属を有する遷移金属錯体に関するものである。この金属錯体は、エチレンの重合に使用される。しかしながら、錯体の活性は極めて低いものである。
【0007】
特許文献3は、エチレンの重合用触媒として使用される、2,6−ピリジンカルボキシアルデヒドビス(イミン)及び2,6−ジアシルピリジンビス(イミン)の鉄及びコバルト錯体に関するものである。この触媒は、3個の窒素原子を間に介して遷移金属に配位する三座の配位子を含む。
【0008】
ポリオレフィンは経済的に非常に重要であることから、活性遷移金属錯体による用途の極めて広い重合について、研究を継続するのは極めて重要である。遷移金属触媒は高い活性だけでなく、良好な安定性を有することが特に重要である。多くの単座又は二座の配位子は、種々の遷移金属塩を有する活性重合触媒を形成する。しかしながら、このような触媒は、重合中に活性種の濃度の低減を屡々示す。
【0009】
【特許文献1】EP−A0874005
【特許文献2】EP−A0950667
【特許文献3】WO98/27124
【非特許文献1】Organometallics 1997, 16, 3282-3302頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、配位子、その配位子を含む遷移金属錯体及び該遷移金属錯体を含む安定化された重合触媒を提供して、重合中の活性種の濃度低減に関する課題を解決することにある。
【0011】
本発明者は、上記目的が式(Ia)又は(Ib):
【0012】
【化1】

【0013】
[但し、式Iaにおいて
1がO、S、Se、Te、NR、CR2又はPRを表し、O又はSを表すのが好ましく、Sを表すのが特に好ましく、
2、E3がそれぞれCR、N又はPを表し、CRを表すのが好ましく、
4がN又はPを表し、Nを表すのが好ましく、
5がOH、SH、NHR、OR’、SR’又はNRR’を表し、
6がNH又はPHを表し、NHを表すのが好ましく、或いはNR’又はPR’を表し、
5、R6がそれぞれ水素、直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、又はアリール基を表し、
1、R2、R3、R4がそれぞれ水素、直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、アリール基、ハロゲン又はニトロ基を表し、
Rが水素、直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、又はアリール基を表し、
R’が直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、又はアリール基を表し、且つ
5及びE6の少なくとも一方が水素原子を含み、E5及びE6の両方がそれぞれ水素原子を含むのが好ましく、
式Ibにおいて
1、E4、E5、E6、R5、R6、R1、R2、R3、R4、R及びR’が式Iaと同義であり、
2’、E3’がそれぞれO、S、Se、Te、NR、CR2又はPRを表し、CR2を表すのが好ましい。]
で表される化合物により達成されることを見出した。
【0014】
式Ia又はIbで表される本発明の化合物において、E1がO又はSを表し、Sであるのが好ましく、E4がNであるのが好ましい。E1がO又はSを表し、好ましくはSであり、E4がNであり、そしてE6がNHであるのが特に好ましい。
【0015】
これらの化合物は、遷移金属錯体の配位子として極めて有用である。本発明の化合物は、多くの配位部位を有している。よって、遷移金属錯体の遷移金属中心は、追加的な供与体−受容体相互作用によって安定化可能である。そして、これらの遷移金属錯体は、オレフィンの重合で使用するのに極めて好適である。
【0016】
E1、E2、E3、E4及びその他の炭素原子によって形成される5員の複素環における置換基(電子供与(electron-push)又は電子吸引)を選択することにより、式Ia又はIbで表される新規な化合物を含む遷移金属錯体における中心金属の求核性を調節することが可能となる。遷移金属錯体をオレフィンの重合で使用する場合、このようにして配位子(リガンド)を、それぞれで用いられる遷移金属原子又は重合で使用されるモノマーに適合させることが可能となる。
【0017】
好適な直鎖又は分岐のアルキル基は、炭素原子数1〜30個、好ましくは1〜20個のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ネオペンチル及びn−ヘキシルである。
【0018】
好適な環状アルキル基は、炭素原子数3〜30個、好ましくは3〜20個の環状の飽和炭化水素基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びアダマンチルである。
【0019】
好適なアリール基は、炭素原子数6〜30個、好ましくは6〜20個のアリール基、例えばフェニル、ベンジル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、フェナントリル及びアントラセニルである。アリール基は、アルキル置換されていても良い。好適なアルキル置換アリール基は、トリル、イソプロピルフェニル、t−ブチルフェニル、ジメチルフェニル及びジ−t−ブチルフェニルである。
【0020】
上述のアルキル基及びアリール基において、個々の水素原子を、ハロゲン原子で置換しても良い。かかるハロゲン化アルキル基及びアリール基の例は、トリフルオロメチル、ペンタフルオロフェニル及びクロロフェニルである。
【0021】
アルキル基及びアリール基中の1個以上の水素原子を、他の炭化水素基で置換することも可能であり、例えば、ベンジル及びクミル等のアリール置換アルキル基である。
【0022】
1、R2、R3、R4はそれぞれ水素、ハロゲン、ニトロ基、又は炭素原子数1〜20個の直鎖若しくは分岐のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ネオペンチル及びn−ヘキシルを表すのが特に好ましい。特に好ましいアルキル基は、炭素原子数1〜4個であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル又はtert−ブチルである。その他に好ましい基R1、R2、R3、R4は、炭素原子酢6〜20個のアリール基であり、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、フェナントリル及びアントラセニルであり、フェニル及びナフチルが特に好ましく、そして更に置換アリール基、例えばトリル及びクミルである。
【0023】
基R1、R2、R3、R4の少なくとも1個は、水素原子を有しているのが極めて好ましく;上述の基の2個が水素原子を有しているのが特に好ましい。残りの基は、上述のように、アルキル基及び/又はアリール基であるのが好ましく、アルキル基であるのが特に好ましい。
【0024】
基R1、R2、R3、R4についての上記の定義に対応して、基R5及びR6、更にRについても同様の定義が適用される。上述の好ましいアルキル基及びアリール基の定義についても同様にR’に適用される。
【0025】
E1、E2、E2’、E3’、E4、E5及びE6の好ましい定義についても上記と同義である。式Ia又はIbで表される化合物において、E1がS又はOであり、Sであるのが好ましく、これと同時にE4がNであるのが特に好ましい。式Iaで表される化合物のE2及びE3は、CRを表すのが好ましく、且つRの好ましい定義は、上記と同義である。化合物Ibにおいて、E2’及びE3’は、CR2を表すのが好ましく、Rの好ましい定義についても上記と同義であり、E2’又はE3’における炭素原子に結合する2個の基は、同一でも又は異なっていても良い。
【0026】
下記の構造:
【0027】
【化2】

【0028】
[但し、R1、R2、R3、R4、R5及びR6、更にRは上記と同義である。]
を有する化合物Ia及びIbが極めて好ましい。
【0029】
式Ia及びIbで表される化合物は、当業者等に公知の方法で製造可能である。好ましい実施の形態において、これらの化合物を、式IIa又はIIbで表される化合物を式IIIで表される化合物と反応させて、式IVa又はIVbで表される化合物を形成することによって製造する。式IVa及びIVbで表される化合物、そして更にこれらの式で表わされる好ましい化合物についても、本発明の主題である。
【0030】
式IVa及びIVbで表される化合物から式Ia及びIbで表される新規な化合物を得るために、式IVa及びIVbで表される化合物を還元する。
【0031】
従って、本発明は、式Ia及びIbで表される化合物を製造する方法であって、式IIa又はIIbで表される化合物を式IIIで表される化合物と反応させて、式IVa又はIVbで表される化合物を形成する(工程a))製造方法を提供する。次いで、式IVa又はIVbで表される化合物を還元して、式Ia又はIbで表される化合物を得る(工程b))。
【0032】
反応工程a)及びb)を、以下の図に示す:
【0033】
【化3】

【0034】
【化4】

【0035】
記号E1、E2、E3、E2’、E3’、E4、E5、E6、R5、R6、R1、R2、R3、R4、R及びR’は上記と同義である。
【0036】
式Ia及びIbで表される化合物の製造は、2工程、即ち、上述のように工程a)及び工程b)で行われるのが好ましい。
【0037】
[工程a)]
工程a)は、溶液中で行われるのが一般的である。好適な溶剤は、アルコール、例えばメタノール、エタノール及びイソプロパノール、そして芳香族炭化水素、例えばトルエンである;エタノールを使用するのが好ましい。この工程では、式IIa又はIIbで表される化合物を上述の溶剤のいずれかと一緒に、反応用器に導入し、そして撹拌しながら、式IIIで表されるアルデヒドを添加する、好ましくは滴下するのが一般的である。好ましい実施の形態において、式IIIで表されるアルデヒドについても同様に上述の溶剤のいずれかに溶解し、好ましくは、式IIa又はIIbで表される化合物を最初に溶解させた溶剤と同一の溶剤を使用する。
【0038】
添加後、触媒量の塩基又は酸、好ましくはピペリジン、ピリジン若しくはトリエチルアミン又はギ酸、硫酸若しくはトルエンスルホン酸を添加する。次いで、反応溶液を、一般に10〜150℃、好ましくは20〜80℃、特に好ましくは40〜60℃に加熱する。反応溶液は0.5〜36時間、好ましくは1〜16時間、特に好ましくは1〜4時間に亘って加熱されるのが一般的である。次いで、反応混合物を−60〜+30℃、好ましくは10〜20℃に冷却する。これにより、好ましくはろ過によって分離除去される固体の沈殿を得るのが一般的である。更に生成物を、蒸発によるろ過後に得られる母液の体積を低減し、そしてもう一度、一般に−60〜+30℃、好ましくは10〜20℃に冷却することによって得る。固体を集めて、好ましくは減圧下に乾燥する。
【0039】
続く工程b)において、得られた式IVa及びIVbで表される化合物を還元する。
【0040】
[工程b)]
式IVa又はIVbで表される化合物の還元は、当業者等に公知の方法で行われるのが一般的である。この還元を行う場合、3つの異なる基本経路が考えられる:
i)還元して、R5及びR6がそれぞれ水素である式Ia及びIbで表される化合物を形成する経路、
ii)還元して、R5及びR6の一方が水素であり、他方が直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基又はアリール基である式Ia及びIbで表される化合物を形成する経路、
iii)還元して、R5及びR6が両方共に相互に独立して、直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基又はアリール基である式Ia及びIbで表される化合物を形成する経路。
【0041】
[経路i)]
この還元は、当業者等に公知の還元剤を用いて行われるのが一般的である。好適な還元剤は、NaBH4及びLiAlH4である。還元は、溶剤、好ましくはメタノール、テトラヒドロフラン又はジエチルエーテル中で行われるのが一般的である。式IVa又はIVbで表される化合物の、使用される還元剤に対するモル比は、1:1〜1:1000の範囲が一般的であり、1:2〜1:20の範囲が好ましい。還元時間は、0.5〜12時間の範囲が一般的であり、1〜2時間の範囲が好ましい。反応混合物を後処理して、所望の生成物を単離するのは、当業者等に公知の方法で行われる。
【0042】
[経路ii)]
式Ia及びIbで表される化合物を経路ii)によって製造するために、式IVa及びIVbで表される化合物を、アルキル金属と反応させる。好適なアルキル金属は、所望の基R5及びR6に応じて異なる。メチルリチウム又はブチルリチウムを使用するのが好ましい。一般に、反応は溶剤、好ましくはテトラヒドロフラン又はジエチルエーテル中で行われる。式IVa又はIVbで表される化合物のアルキル金属に対するモル比は、1:0.5〜1:100の範囲が一般的であり、1:1〜1:2の範囲が好ましい。反応は、−80℃〜+80℃で行われるのが一般的であり、−30〜+20℃の範囲であるのが好ましい。アルキル金属の溶液を、式IVa又はIVbで表される化合物の溶液に滴下するのが一般的である。その後、反応混合物を室温までゆっくりと暖め、更に1〜8時間、好ましくは1〜2時間撹拌するのが一般的である。次いで、好ましくは氷中で冷却しながら、等モル量のアルコール、好ましくはメタノールを用いて加水分解する。次いで、式Ia又はIbで表される所望の化合物を、当業者等に公知の方法で単離する。次いで、これにより得られた粗生成物を、好ましくは非極性溶剤、例えばペンタンから再結晶化させる。
【0043】
[経路iii)]
5及びR6が両方共にそれぞれ直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基又はアリール基である式Ia及びIbで表される化合物を形成するために、式IV’a及びIV’bで表される化合物を、式IVa及びIVbで表される化合物の代わりに出発材料として使用する。式IV’a及びIV’bで表される化合物を、下記の式IIa及びIIbで表される化合物と下記の式III’で表されるケトンとの反応によって得ることができる:
【0044】
【化5】

【0045】
[但し、R””が直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基又はアリール基を表し、直鎖のC1〜C4アルキル基を表すのが好ましい。]。
【0046】
同様に本願発明の主要な事項をである式IV’a及びIV’bで表される化合物を、他のアルキル金属と反応させる。反応は、経路ii)に記載されているように行われるのが好ましい。
【0047】
本発明のリガンドは、金属錯体に製造に適当である。本発明のリガンドは、基E4により、通常用いられるリガンド中には存在することのない追加的な配位部位をリガンド中に形成する点において有効である。これにより、追加的な供与体−受容体相互作用が得られ、対応の金属錯体中の中心金属を安定化することが可能となる。中心金属の求核性を、基E1、E2若しくはE2’、E3若しくはE3’及びE4(電子供与又は電子吸引)を選択することによって調節可能となる。このようにして、リガンドを特定の金属原子に対して適合可能となる。
【0048】
従って、本発明は、金属錯体を製造するための式Ia又はIbで表される新規な化合物の使用法を提供するものである。
【0049】
更に本発明は、式V:
【0050】
【化6】

【0051】
[但し、Lが、本発明の式Ia又はIbで表される化合物から誘導されたモノアニオン性又はジアニオン性リガンドを表し、
Lがジアニオン性リガンドを表す場合には、
5がO、S又はRNを表し、O-を表すのが好ましく、
6がN又はPを表し、Nを表すのが好ましく、
Lがモノアニオン性リガンドを表す場合には、
5がO、S又はRNを表し、Oを表すのが好ましく、
6がNR又はPRを表し、NRを表すのが好ましく、或いは
5がOR、SR又はNRR’を表し、SRを表すのが好ましく、
6がN又はPを表し、Nを表すのが好ましく、
式I及びIIにおける他の記号E1、E2、E2’、E3、E3’、E4、R5、R6、R1、R2、R3、R4、R及びR’は、上記と同義であり、そして
Lがジアニオン性リガンドを表す場合には、
MがTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo又はWを表し、Ti、Zr又はHfを表すのが好ましく、
R”が水素、炭化水素基、好ましくは直鎖、分岐若しくは環状の、上記と同義のアルキル基、NR”’2(但し、R”’が水素又は直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、又はアリール基を表し、好適な直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基及びアリール基は上記と同義である。)、OR”’、ハロゲン又はアセチルアセトネートを表し、ハロゲン又はOR”’を表すのが好ましく、
Yがテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ピリジン及びトリエチルアミンからなる群から選択されるルイス塩基を表し、
xが1又は2を表し、1を表すのが好ましく、
yが1〜4を表し、2を表すのが好ましく、
zが0〜2を表し、0を表すのが好ましく、且つ
R”及びYが合体して、例えば、アルキレン基を間に介して合体基を形成しても良く、そして2x+yがMの原子価に相当し、或いは
Lがモノアニオン性リガンドを表す場合には、
MがTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ni、Pd、Co、Fe、Cu、Ru又はRhを表し、Ti、Zr、Hf、Ni又はPdを表すのが好ましく、
R”が水素、炭化水素基、好ましくは直鎖、分岐若しくは環状の、上記と同義のアルキル基、NR”’2(但し、R”’が水素又は直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、又はアリール基を表し、好適な直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基及びアリール基は上記と同義である。)、OR”’、ハロゲン又はアセチルアセトネートを表し、ハロゲン又はOR”’を表すのが好ましく、
Yがテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ピリジン及びトリエチルアミンからなる群から選択されるルイス塩基を表し、
xが1、2又は3を表し、1又は2であるのが好ましく、
yが1〜4を表し、
zが0〜2を表し、0を表すのが好ましく、且つ
R”及びYが合体して、例えば、アルキレン基を間に介して合体基を形成しても良く、そしてx+yがMの原子価に相当する。]
で表される金属錯体を提供する。
【0052】
本発明の金属錯体中のリガンドLは、ジアニオン性リガンドであるのが特に好ましく、そして金属錯体は、リガンドLがジアニオン性リガンドであり、MがTi、Zr又はHf(Ti、Zr及びHfは酸化状態IVで存在するのが極めて好ましい。)である錯体が特に好ましい。好ましい実施の形態において、Lがジアニオン性リガンドであり、MがTi、Zr又はHf(酸化状態IVであるのが極めて好ましい。)であり、xが1であり、yが2であり、zが0である金属錯体が極めて好ましい。
【0053】
本発明の方法における他の実施の形態において、本発明の金属錯体は、少なくとも1種のモノアニオン性リガンドLを有し、そしてMがTi、Zr、Hf又はPdを表すのが好ましい。MがTi、Zr又はHf(酸化状態IVであるのが好ましい。)である場合、好ましくはxが2であり、yが2であり、zが0であるか、又は好ましくはxが1であり、yが3であり、zが0である。MがNi又はPd(酸化状態2であるのが好ましい。)である場合、xが1であり、yが1であり、zが0であるのが好ましい。
【0054】
下式:
【0055】
【化7】

で表される金属錯体を使用するのが極めて好ましい。
【0056】
本発明の金属錯体は、
式Ia又はIbで表される化合物を塩基で脱プロトン化し、次いで金属化合物と反応させるか、或いは
式Ia又はIbで表される化合物を金属化合物と直接反応させる、ことによって得るのが一般的であり、且つ
上記の金属化合物は、Lがジアニオン性リガンドである場合、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo及びWからなる群から選択される金属M、好ましくはTi、Zr、Hfから選択される金属Mであり、或いはLがモノアニオン性リガンドである場合、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ni、Pd、Co、Fe、Cu、Ru及びRhからなる群から選択される金属M、好ましくはTi、Zr、Hf、Ni、Pdから選択される金属Mを含む。
【0057】
好適な金属化合物は、式VI:
【0058】
【化8】

で表される化合物である。
【0059】
この式中、リガンドLとして、ジアニオン性リガンドを使用する場合、Mは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo及びWからなる群から選択され、好ましくはTi、Zr、Hfから選択され、或いはLがモノアニオン性リガンドである場合、Mは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ni、Pd、Co、Fe、Cu、Ru及びRhからなる群から選択され、好ましくはTi、Zr、Hf、Ni、Pdから選択される。
【0060】
kは、Mの酸化状態に対応する数字であり、特に0〜6までの数字である。よって、例えば、酸化状態IIの金属を使用する場合、kは2であり、酸化状態IIIの金属を使用する場合、kは3であり、酸化状態IVの金属を使用する場合、kは4であり、以下同様である。Ti(IV)、Zr(IV)又はHf(IV)を使用する場合、k=4であり、Ti(III)を使用する場合、k=3であるのが特に好ましい。Ni(II)又はPd(II)を使用する場合、kは2であるのが好ましい。
【0061】
式VIにおけるXは、水素、ハロゲン、炭化水素、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、複素環基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基又はスズ含有基である。
【0062】
好適なハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素である。
【0063】
好適な炭化水素基は、R1、R2、R3及びR4について上述したのと同じ意味を有する基である。
【0064】
好適な複素環基は、窒素含有複素環、例えばピロール、ピリジン、ピリミジン、キノリン及びトリアジン、酸素含有化合物、例えばフラン及びピラン、硫黄含有化合物、例えばチオフェンであり、且つこれらの複素環式化合物における1個以上の水素原子をアルキル基又はアルコキシ基で置換することが可能である。
【0065】
好適な酸素含有基は、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ及びブトキシ、アリールオキシ基、例えばフェノキシ、メチルフェノキシ、ジメチルフェノキシ及びナフトキシ、アリールアルコキシ基、例えばフェニルメトキシ及びフェニルエトキシ、アセトキシ基並びにカルボニル基である。
【0066】
好適な硫黄含有基は、例えば、スルホナト基、例えばメチルスルホナト、トリフルオロメタンスルホナト、フェニルスルホナト、ベンジルスルホナト、p−トルエンスルホナト、トリメチルベンゼンスルホナト、トリイソブチルベンゼンスルホナト、p−クロロベンゼンスルホナト及びペンタフルオロベンゼンスルホナト、スルフィナト基、例えばメチルスルフィナト、フェニルスルフィナト、ベンジルスルフィナト、p−トルエンスルフィナト、トリメチルベンゼンスルフィナト及びペンタフルオロベンゼンスルフィナト、アルキルチオ基並びにアリールチオ基である。
【0067】
好適な窒素含有基は、例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、例えばメチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ及びジシクロヘキシルアミノ、並びにアリールアミノ基又はアルキルアリールアミノ基、例えばフェニルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ、ジナフチルアミノ及びメチルフェニルアミノである。
【0068】
好適なホウ素含有基は、例えば、BR””4(但し、R””は例えば水素、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子である。)である。
【0069】
好適なリン含有基は、トリアルキルホスフィン基、例えばトリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン及びトリシクロヘキシルホスフィン、トリアリールホスフィン基、例えばトリフェニルホスフィン及びトリトリルホスフィン、ホスフィット基、例えばメチルホスフィット、エチルホスフィット及びフェニルホスフィット、ホスホン酸基、並びにリン酸基である。
【0070】
好適なケイ素含有基は、例えば、炭化水素置換シリル基、例えばフェニルシリル、ジフェニルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリシクロヘキシルシリル、トリフェニルシリル、メチルジフェニルシリル、トリトリルシリル及びトリナフチルシリル、炭化水素置換シリルエーテル基、例えばトリメチルシリルエーテル、ケイ素置換アルキル基、例えばトリメチルシリルメチル、並びにケイ素置換アリール基、例えばトリメチルシリルフェニルである。
【0071】
好適なゲルマニウム含有基は、例えば、上述のケイ素含有化合物におけるケイ素をゲルマニウムに置換した基である。
【0072】
好適なスズ含有基は、例えば、上述のケイ素含有化合物におけるケイ素をスズに置換した化合物である。
【0073】
好適なハロゲン含有基は、フッ素含有基、例えばPF6、塩素含有基、例えばClO4及びSbCl6、並びにヨウ素含有基、例えばIO4である。
【0074】
好適なアルミニウム含有化合物は、AlR””’4(但し、R””’は、例えば水素、アルキル基又は置換されていても良いアリール基である。)である。
【0075】
特に好ましい基Xは、ハロゲン原子、例えば塩素及び臭素、好ましくは塩素、アルキル基、例えばメチル、アルコキシ基、例えばプロポキシ(特に、i−プロポキシ)、アルキルアミノ基、例えばジメチルアミノ並びに炭化水素基、例えばシクロペンタジエニル基(1個以上のアルキル基、特にメチル又はtert−ブチルで置換されていても良い。)である。
【0076】
金属化合物は、上述したものの中から複数の相互に異なる基Xを含むことが可能である。特に好ましい金属化合物は、Ti(NMe24、(tert−BuCp)TiCl3、Ti(NMe22Cl2、Ti(Oi−Pr)4並びに対応するHf及びZr化合物(Cp=シクロペンタジエニル)である。その他に好適な化合物は、TiCl3、TiCl4、Ti(CH2654、Ti(NMe34並びに対応のZr及びHf化合物である。NiCl2、NiBr2、PdCl2及びPdBr2も適当である。上述の金属化合物とTHF(テトラヒドロフラン)、アセトニトリル又はジエチルエーテルとの錯体を使用することも可能である。
【0077】
本発明により使用される式Ia又はIbで表される化合物の、式VIで表される金属化合物に対するモル比は、0.5〜2:1が一般的であり、1〜1.2:1であるのが好ましい。
【0078】
[式Ia及びIbで表される化合物の脱プロトン化、続く金属化合物との反応による式Vで表される新規な金属錯体の製造]
式Ia又はIbで表される化合物の脱プロトン化に使用される塩基は、アルキル金属、例えばn−ブチルリチウム、及び金属水素化物、例えば水素化ナトリウムからなる群から選択される。使用される塩基の量は、モノアニオン性リガンド又はジアニオン性リガンドが式Ia又はIbで表される化合物から製造されるのかに応じて異なる。モノアニオン性リガンドを製造する場合、式Ia又はIbで表される化合物の、使用される塩基に対する割合(モル比)は、1:0.5〜1.5であるのが一般的であり、1:1であるのが好ましい。ジアニオン性リガンドを製造する場合、式Ia又はIbで表される化合物の、使用される塩基に対する割合(モル比)は、1:1〜3であるのが一般的であり、1:1〜2であるのが好ましい。
【0079】
脱プロトン化は、不活性ガス雰囲気中で当業者等に公知の方法によって行われる。脱プロトン化は、エーテル、テトラヒドロフラン及びトルエンからなる群から選択される溶剤中で行われるのが一般的である。必要とされる溶剤を、使用前に乾燥するのが一般的である。通常、塩基を、一般に−60〜+10℃の範囲、好ましくは−20℃に冷却された式Ia又はIbの化合物の溶液に滴下する。次いで、混合物を室温までゆっくりと暖める。次の後処理は、当業者等に公知の方法で行われる。
【0080】
これにより得られた金属塩、好ましくはリチウム塩を、式VIで表される上述の金属化合物のいずれかと反応させる。金属塩の金属化合物に対する割合は、1:1〜1:4の範囲が一般的であり、1:1〜1:2の範囲が好ましい。反応は、当業者等に公知の方法で行われ、一般的には、使用される金属塩及び金属化合物を反応用基に導入し、次いで、非極性溶剤、例えばペンタンを、一般に−60〜+20℃、好ましくは−20〜0℃に冷却しながら添加することによって行われる。次いで、反応混合物を室温まで暖め、所定時間撹拌した後、これにより形成した沈殿金属塩を、ろ過し、そして所望の金属塩を単離するのが一般的である。
【0081】
[式Ia又はIbで表される化合物と金属化合物との直接反応]
直接反応において、式VIで表される金属化合物を、溶剤、例えばトルエンに取り込むのが一般的であり、そして同様に溶剤に溶解した式Ia又はIbで表される化合物を、一般に−60〜+60℃、好ましくは−20〜+20℃で滴下する。次いで、混合物を、一般に1〜16時間、好ましくは1〜4時間に亘って更に撹拌する。当業者等に公知の方法で後処理を行う。反応全体は、不活性ガス雰囲気中で行われる。
【0082】
本発明のリガンドに起因して、特に高い安定性を示す本発明の金属錯体は、重合触媒、特にオレフィンの重合用の触媒として極めて有用である。従って、本発明は、本発明の金属錯体をオレフィンの重合に使用する方法を提供する。
【0083】
本発明の金属錯体が、オレフィンの重合において十分に高い触媒活性を有するようにするために、金属錯体を助触媒と一緒に使用するのが一般的であり、これにより、触媒活性種を金属錯体において‘その場’で形成する。
【0084】
従って、本発明は、
a)成分Aとして本発明の式Vで表される金属錯体と、
b)成分Bとして、下記の(b1)〜(b3):
(b1)成分B1として有機金属化合物、
(b2)成分B2として有機アルミニウムオキシ化合物、及び
(b3)成分B3として金属錯体と反応して対イオンを形成する化合物、
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、を含む触媒活性組成物を提供する。
【0085】
[成分B]
成分B1:有機金属化合物
本発明の触媒活性組成物に使用可能である好適な有機金属化合物(B1)は、少なくとも1種の、元素周期表第I、II、XII及びXIII族の金属を含む有機金属化合物である。
【0086】
有機金属化合物の適例は、下式:
【0087】
【化9】

【0088】
[但し、Ra及びRbが、相互に独立してそれぞれ炭素原子数1〜15個、好ましくは1〜4個の炭化水素基を表し、Zがハロゲン原子を表し、m、n、p及びqが、0<m≦3、0≦n<3、0≦p<3、0≦q<3で且つm+n+p+q=3に従う。]
で表される有機アルミニウム化合物である。
【0089】
その他に好適な化合物は、第I族の金属を含み、そして下式:
【0090】
【化10】

【0091】
[但し、M2がLi、Na又はKを表し、Raが炭素原子数1〜15個、好ましくは1〜4個の炭化水素基を表す。]
を有するアルキル錯体である。
【0092】
その他に好適な化合物は、下式:
【0093】
【化11】

【0094】
[但し、Ra及びRbが、相互に独立してそれぞれ炭素原子数1〜15個、好ましくは1〜4個の炭化水素基を表し、M3がMg、Zn又はCdを表す。]
を有し、元素周期表第II族及び第XII族の金属からなるアルキル化合物である。
【0095】
有機アルミニウム化合物の適例は、以下に示した群から選択される有機アルミニウム化合物である:
トリ−n−アルキルアルミニウム、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム及びトリデシルアルミニウム、
分岐のトリアルキルアルミニウム化合物、例えばトリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−sec−ブチルアルミニウム、トリ−tert−ブチルアルミニウム、トリ−2−メチルブチルアルミニウム、トリ−3−メチルブチルアルミニウム、トリ−2−メチルペンチルアルミニウム、トリ−3−メチルペンチルアルミニウム、トリ−4−メチルペンチルアルミニウム、トリ−2−メチルヘキシルアルミニウム、トリ−3−メチルヘキシルアルミニウム及びトリ−2−エチルヘキシルアルミニウム、
トリシクロアルキルアルミニウム化合物、例えばトリシクロヘキシルアルミニウム及びトリシクロオクチルアルミニウム、
トリアリールアルミニウム化合物、例えばトリフェニルアルミニウム及びトリトリルアルミニウム、
ジアルキルアルミニウムヒドリド、例えばジエチルアルミニウムヒドリド及びジイソブチルアルミニウムヒドリド、
トリアルケニルアルミニウム化合物、例えば式(i−C49xAly(C5102[但し、x、y及びzがそれぞれ正数であり、zが2x以上である。]で表される化合物、例えばイソプレニルアルミニウム、
アルキルアルミニウムアルコキシド、例えばイソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド及びイソブチルアルミニウムイソプロポキシド、
ジアルキルアルミニウムアルコキシド、例えばジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド及びジブチルアルミニウムブトキシド、 アルキルアルミニウムセスキアルコキシド、例えばエチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシド、及び式Ra2.5Al(ORb0.5[但し、Ra及びRbが上記と同義である。]に対応する平均組成を有する部分的にアルコキシル化されたアルキルアルミニウム化合物、
ジアルキルアルミニウムアリールオキシド、例えばジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド、エチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド及びイソブチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、
ジアルキルアルミニウムハライド、例えばジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド及びジイソブチルアルミニウムクロリド、
アルキルアルミニウムセスキハライド、例えばエチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド及びエチルアルミニウムセスキブロミド、
部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム化合物、例えばエチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド及びブチルアルミニウムジブロミド、
ジアルキルアルミニウムヒドリド、例えばジエチルアルミニウムヒドリド及びジブチルアルミニウムヒドリド、
部分的に水素化されたアルキルアルミニウム化合物、例えば、エチルアルミニウムジヒドリド及びプロピルアルミニウムジヒドリド等のアルキルアルミニウムジヒドリド、並びに
部分的にアルコキシル化され且つハロゲン化されたアルキルアルミニウム化合物、例えばエチルアルミニウムエトキシドクロリド、ブチルアルミニウムブトキシドクロリド及びエチルアルミニウムエトキシドブロミド。
【0096】
その他に好適な有機アルミニウム化合物は、2個のアルミニウム化合物を例えば窒素原子を間に介して組み合わせた化合物、例えば(C252AlN(C25)Al(C252である。
【0097】
第I族の金属とアルミニウムを含む好適なアルキル錯体は、LiAl(C254及びLiAl(C7154である。
【0098】
その他に好適な有機アルミニウム化合物(B1)は、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、プロピルマグネシウムブロミド、プロピルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリド、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム及びブチルエチルマグネシウムである。
【0099】
その他に好適な化合物は、重合中に上述の有機アルミニウム化合物を形成する化合物、例えば、ハロゲン化アルミニウム化合物とアルキルマグネシウムとの組み合わせである。
【0100】
有機アルミニウム化合物を有機金属化合物(B1)として使用するのが特に好ましい。
【0101】
有機金属化合物(B1)を、個々に、或いは2種以上の化合物の組み合わせとして使用可能である。
【0102】
B2:有機アルミニウムオキシ化合物
本発明の触媒活性組成物に使用可能な有機アルミニウムオキシ化合物(B2)は、一般的なアルミノキサン又は例えばJP−A78687/1990に開示されているようなベンゼン不溶性有機アルミニウムオキシ化合物であっても良い。
【0103】
一般的なアルミノキサンは、例えば、下記の方法で製造可能であり、そして炭化水素の溶液として得られる。
【0104】
(i)トリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物を、吸着水含有化合物又は結晶化による水を含む塩、例えば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物又は塩化セリウム水和物を炭化水素に懸濁させた懸濁液に添加し、これにより、有機アルミニウム化合物が吸着水又は結晶化の水と反応可能である。
【0105】
(ii)トリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物を水、氷又は水蒸気と、溶剤、例えばベンゼン、トルエン、エチルエーテル又はテトラヒドロフラン中で反応させる。
【0106】
(iii)ジメチルスズオキシド又はジブチルスズオキシド等のオルガノスズオキシドを、トリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物と、溶剤、例えばデカン、ベンゼン又はトルエン中で反応させる。
【0107】
アルミノキサンは、少量の有機金属化合物を含んでいても良い。更に、溶剤又は未反応有機アルミニウム化合物を、得られたアルミノキサン溶液から蒸留し、そして残留物を、溶剤に再溶解させるか、又はアルミノキサン用貧溶剤である液体に懸濁させることが可能である。
【0108】
アルミノキサンの製造に使用可能である好適な有機アルミニウム化合物は、有機アルミニウム化合物(B1)として上述したのと同一の化合物である。トリアルキルアルミニウム化合物及びトリシクロアルキルアルミニウム化合物が好ましい。トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
【0109】
有機アルミニウム化合物は、個々に、又は2種以上の相互に異なる化合物の組み合わせで使用可能である。
【0110】
アルミノキサンの製造に好適な溶剤は、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クメン及びシメン、脂肪族炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン及びオクタデカン、脂環式炭化水素、例えばシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン及びメチルシクロペンタン、石油留分、例えばガソリン、灯油及びガスオイル、並びにこれらの芳香族、脂肪族及び脂環式炭化水素のハロゲン化合物、特にこれらの塩化物及び臭化物である。その他に好適な溶剤は、エーテル、例えばジエチルエーテル及びテトラヒドロフランである。芳香族炭化水素及び脂肪族炭化水素を使用するのが特に好ましい。
【0111】
ベンゼン不溶性有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼン中に、Al原子に対して、10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下の量で溶解するAl成分を含む有機アルミニウムオキシ化合物であるのが好ましい。これは、ベンゼン不溶性有機アルミニウムオキシ化合物がベンゼンに対して好ましくは不溶性であるか、又は実質的に不溶性であることを意味するものである。
【0112】
更に、例えば、EP−A0950667に記載されているように、ホウ素を含む有機アルミニウムオキシ化合物を使用することが可能である。
【0113】
上述の有機アルミニウムオキシ化合物(B2)は、個々に、又は2種以上の相互に異なる化合物の組み合わせで使用可能である。
【0114】
B3:金属錯体と反応して対イオンを形成する化合物
好適な化合物は、遷移金属錯体(A)との接触時に対イオンを形成する全ての化合物である。好適な化合物は、ルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物及びカーボネート化合物であり、JP−A501950/1989、JP−A502036/1989、JP−A179005/1991、JP−A179006/1991、JP−A207703/1991及びJP−A207704/1991並びにUS5321106に開示されている。更に、ヘテロポリ化合物及びイソポリ化合物を使用することが可能である。
【0115】
好適なルイス酸は、例えば、式BR3[但し、Rがフッ素、又はフッ素、メチル、トリフルオロフェニルで置換されていても良いフェニル基である。]で表される化合物である。好適な化合物の例は、トリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン及びトリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロンである。
【0116】
好適なイオン性化合物は、式VII:
【0117】
【化12】

【0118】
[但し、R7がH+、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン又はフェロセニウムカチオン(遷移金属を含む)を表す。]
で表される化合物である。R8〜R11は、相互に独立してそれぞれ有機基、好ましくはアリール基又は置換アリール基を表す。
【0119】
7は、カルボニウムカチオン又はアンモニウムカチオンであるのが特に好ましく、トリフェニルカルボニウム、N,N−ジメチルアニリニウム又はN,N−ジエチルアニリニウムであるのが極めて好ましい。その他に好適なイオン性化合物は、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩及びトリアリールホスホニウム塩である。
【0120】
好適なトリアルキル置換アンモニウム塩は、トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート及びトリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(o−トリル)ボレートである。
【0121】
好適なN,N−ジアルキルアニリニウム塩は、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボレート及びN,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボレートである。
【0122】
好適なジアルキルアンモニウム塩は、ジ(1−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート及びジシクロアンモニウムテトラ(フェニル)ボレートである。
【0123】
その他に好適なイオン性化合物は、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、及びフェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0124】
金属錯体と反応して対イオンを形成するその他の好適な化合物は、EP−A0950667に開示されている。トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを使用するのが極めて好ましい。
【0125】
成分A及びBを含む本発明の触媒活性組成物は、成分C)として担体材料を更に含んでいても良い。このように担持された触媒活性組成物は、特に、気相重合法に適当であり、気相流動床重合法に用いるのが極めて好ましい。
【0126】
[担体材料C]
無機化合物及び有機化合物の両方が担体材料として適当である。
【0127】
好ましい無機化合物は、多孔質酸化物、無機塩化物、クレイ、粘土鉱物及びシート状化合物である。
【0128】
好適な多孔質酸化物は、SiO2、Al23、MgO、ZrO、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaO、ThO2及びこれらの酸化物が存在する化合物の混合物、例えば天然又は合成のゼオライト、SiO2−MgO、SiO2−Al23、SiO2−TiO2、SiO2−V25、SiO2−Cr23及びSiO2−TiO2−MgOである。SiO2及び/又はAl23を主成分として含む多孔質酸化物が特に好ましい。
【0129】
無機酸化物は、少量の炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩又は酸化物を含んでいても良い。
【0130】
本発明により用いられる多孔質酸化物は、好ましくは10〜300μm、特に好ましくは20〜200μmの粒径、一般に50〜1000m2/g、好ましくは100〜700m2/gの比表面積及び一般に0.3〜3cm3/gの細孔容積を有しているのが好ましい。担体材料を、使用前に適宜、一般的には100〜1000℃、好ましくは150〜700℃でか焼することが可能である。
【0131】
好適な無機酸化物、クレイ、粘土鉱物及びシート状化合物は、例えばEP−A0950667号公報に開示されている。
【0132】
好適な有機担体材料は、例えば、一般に10〜300μmの範囲の粒径を有する顆粒状又は粒子状の固体化合物である。かかる化合物の例は、2〜14個の炭素原子を有する主モノマーとしてのα−オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン又は4−メチル−1−ペンテンの反応により調製された(共)重合体、主モノマーとしてのビニルシクロヘキサン又はスチレンの反応により調製された(共)重合体及びこれらの(共)重合体の誘導体である。
【0133】
本発明の触媒活性組成物は、オレフィンの重合及び共重合に極めて有用である。多くの方法で変更可能であり且つ製造することが容易なリガンドに起因して、多くの異なる金属錯体及びこれによる多くの異なる触媒活性組成物を得ることが可能となり、かかる触媒活性組成物を使用して、目標の重合体又は共重合体を製造することが可能となる。
【0134】
従って、本発明は、本発明の触媒活性組成物をオレフィンの重合又は共重合に使用する方法を提供する。
【0135】
更に本発明は、オレフィンの重合法又は共重合法であって、オレフィンを本発明の触媒活性組成物の存在下に重合するか、或いは少なくとも2種の相互に異なるオレフィンを本発明の触媒活性組成物の存在下に共重合する重合法又は共重合法を提供する。
【0136】
重合又は共重合を行う手順並びに重合又は共重合を行うのに適当な装置及び好適なオレフィンは、当業者等に知られている。
【0137】
オレフィンとして下記の中から選択されるものを使用するのが好ましい:炭素原子数2〜20個のα−オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン及び1−オクタデセン、炭素原子数3〜20個のシクロオレフィン、例えばシクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン及びテトラシクロドデセン、α,β−不飽和カルボン酸等の極性モノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸及びビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、これらの酸の金属塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩及びカルシウム塩、α,β−不飽和カルボン酸エステル、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート及びイソブチルメタクリレート、ビニルエステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル及びトリフルオロ酢酸ビニル、不飽和グリシジルエステル並びにハロゲン化オレフィン、例えば塩化ビニル、フッ化ビニル及びフッ化アリルである。
【0138】
ビニルシクロヘキサン、ジエン及びポリエンも同様にオレフィンとして使用可能である。好適なジエン及びポリエンは、環状又は直鎖で且つ4〜30個、好ましくは4〜20個の炭素原子を有し、そして2個以上の二重結合を有しているものである。好適な化合物の例は、ブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン及び1,3−ヘキサジエンである。
【0139】
芳香族ビニル化合物も同様にオレフィンとして使用可能である。好適な芳香族ビニル化合物の例は、スチレン、モノアルキルスチレン及びポリアルキルスチレン、例えばメチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン及びp−エチルスチレン、官能基を含むスチレン誘導体、例えばメトキシスチレン、エトキシスチレン、ヒドロキシスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン及びジビニルベンゼン、並びに他の化合物、例えば3−フェニルプロピレン、4−フェニルプロピレン及びβ−メチルスチレンである。
【0140】
他の好適なα−オレフィンは、例えばEP−A0950667号公報に開示されている。
【0141】
α−オレフィンとして、エチレン及びプロピレンを使用するのが好ましく、エチレンを使用するのが特に好ましい。α−オレフィンを、単独で、又は2種以上の相互に異なるα−オレフィンの組み合わせで使用することが可能である。その他に好ましいオレフィンは、スチレン、イソブテン、内部オレフィン、例えば2−ブテン、環状オレフィン、例えばノルボルネン又はシクロペンテン、及び極性オレフィン、例えばアクリレートである。
【0142】
α−オレフィンと極性オレフィン、例えば上述したオレフィンを共重合することも可能である。
【0143】
上述したα−オレフィンと非共役ジエン又はポリエンとを共重合することも可能である。非共役ジエン及びポリエンの例は、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン及び1,4−ヘキサジエンである。
【0144】
α−オレフィンとの共重合において上述したものの中から選択されるモノマーを更に使用することも可能である。
【0145】
重合又は共重合は、当業者等に公知の方法によって行うことが可能である。好適な添加の順序及び処理方法は、例えば、EP−A0950667号公報に記載されている。よって、成分(A)(金属錯体)及び少なくとも1種の、有機金属化合物(B1)、有機アルミニウムオキシ化合物(B2)及び金属錯体と反応して対イオンを形成する化合物(B3)からなる群から選択される成分(B)を、任意の順序で重合反応器に導入することが可能である。成分(A)及び(B)を相互に接触させることによって触媒を最初に調製し、次いで触媒を重合反応器に導入することも可能である。更に、成分(A)及び(B)を相互に接触させることにより調製された触媒を、最初の成分(B)と異なっていても良い他の成分(B)と一緒に重合反応器へ任意の順序で導入することが可能である。更に、担体材料(C)に施された金属錯体(A)、及び成分(B)を重合反応器へ任意の順序で導入することが可能である。同様に、成分(A)及び(B)を一緒に担体材料(C)に施し、この形で重合反応器へ導入することも可能である。
【0146】
更に、その他に非常に多くの変形も望ましく、例えばEP−A0950667号公報に開示されている変形である。
【0147】
更に、本発明の触媒活性組成物を単独で用いるだけでなく、同種の他の触媒活性組成又は他の重合触媒、例えばフィリップス触媒、チーグラ触媒及び/又はメタロセン触媒(担持された形又は非担持の形で同様に存在していても良い)との組み合わせで使用することが可能である。
【0148】
本発明の他の好ましい実施の形態において、オレフィンを、金属錯体(A)及び必要により成分(B)を担体(C)に施して、固体触媒成分に予備重合することが可能である。
【0149】
重合は、溶液重合、懸濁重合又は気相重合として行うことが可能である。
【0150】
溶液重合に好適な溶剤は、下記の炭化水素、例えば脂肪族炭化水素、例えばプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン及びケロシン、脂環式炭化水素、例えばシクロペンタン、シクロヘキサン及びメチルシクロペンタン、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン及びキシレン、ハロゲン化炭化水素、例えば塩化エチレン、クロロベンゼン及びジクロロメタン、並びに上述の炭化水素の混合物である。オレフィンそれ自体を溶剤として使用することも可能である。
【0151】
金属錯体(A)は、通常、反応体積1L(リットル)あたり、10-12〜10-2モル、好ましくは10-10〜10-3モルの量で用いられる。本発明によると、オレフィンを、金属錯体(A)が比較的低濃度で使用された場合であっても高い重合活性で重合可能である。
【0152】
成分(B1)は、この成分(b1)の、金属錯体(A)における遷移金属原子(M)に対するモル比が0.01〜100000の範囲、好ましくは0.05〜50000の範囲となるような量で使用されるのが一般的である。
【0153】
成分(B2)を、この成分(B2)におけるアルミニウムの、金属錯体(A)における遷移金属原子(M)に対するモル比が一般に10〜500000の範囲、好ましくは20〜100000の範囲となるような量で用いることが可能である。
【0154】
成分(B3)を、この成分(B3)の、金属錯体(A)における遷移金属原子(M)に対するモル比が1〜10の範囲、好ましくは1〜5の範囲となるような量で使用することが可能である。
【0155】
本発明の方法での重合温度は、−50〜200℃の範囲が一般的であり、0〜170℃の範囲が好ましい。重合圧は、大気圧〜100バールの範囲が一般的であり、大気圧〜50バールの範囲が好ましい。重合は、バッチ式、半連続的又は連続的に行うことが可能である。相互に異なる反応条件下で2工程以上の別々の工程にて重合することも可能である。
【0156】
これにより得られるオレフィンの(共)重合体の分子量は、重合系における水素の存在によって、又は重合温度を変更することによって調節可能である。成分(B)の種類を変更することによって分子量を調節することも可能である。
【0157】
よって、本発明の方法により、使用される触媒活性組成物の種類及び反応条件に応じて物性が異なる非常に多くの重合体及び共重合体を得ることが可能となる。従って、更に本発明は、本発明の方法によって製造された重合体又は共重合体を提供する。
【0158】
以下の実施例で本発明を説明する。
【実施例】
【0159】
1.総説
金属錯体が酸化及び加水分解に対して不安定であることから、金属錯体の調製時における全ての実験、そして更に重合試験は、シュレンク技術を用いて不活性ガス雰囲気下で行った。このために必要とされる溶剤を使用前に乾燥した。リガンドの調製の用いられる出発化合物、そして更にNaBH4、(TiOi−Pr)4並びにBuLi、MeLi及びMgCl(CH2Ph)溶液は、Acros社製又はAldrich社製であり、これらを、更なる精製工程に付すことなく使用した。使用される他の金属前駆体を、文献に記載されている方法で調製した。重合実験用の錯体の活性化は、トルエン中でアルミニウム含有率10%又は7%のMAO溶液を用いて行った。
【0160】
2.リガンドの合成
2.1 チアゾリルイミノメチルフェノールの調製
ヒドロキシベンズアルデヒドをエタノールに溶解した溶液を、室温条件下、アミノチアゾールをエタノールに溶解した溶液に撹拌しながら滴下した。添加終了後、数滴のピペリジンを添加し、そして反応溶液を2時間還流した。次いで、0℃まで冷却した。沈殿した黄色の固体をろ過した。母液を少量の体積まで蒸発させ、そして−30℃まで冷却することにより、更に生成物を沈殿させた。断片を集めて減圧下に乾燥した。
【0161】
2.1.1
4,6−ジ−tert−ブチル−2−(チアゾール−2’−イルイミノメチル)フェノール(1)
【0162】
【化13】

【0163】
出発物質:30mlのEtOHにおける2.71g(27.1ミリモル)の2−アミノチアゾール、40mlのEtOHにおける6.35g(27.1ミリモル)の3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒド、80mgのピペリジン、
収率:68%(5.87g、18.5ミリモル)
【0164】
【数1】

【0165】
2.1.2
4,6−ジ−tert−ブチル−2−(4’−メチルチアゾール−2’−イルイミノメチル)フェノール(2)
【0166】
【化14】

【0167】
出発物質:30mlのEtOHにおける3.90g(34.1ミリモル)の2−アミノ−4−メチルチアゾール、40mlのEtOHにおける8.00g(34.1ミリモル)の3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒド、100mgのピペリジン、
収率:76%(8.56g、25.9ミリモル)
【0168】
【数2】

【0169】
2.1.3
4,6−ジ−tert−ブチル−2−(5’−メチルチアゾール−2’−イルイミノメチル)フェノール(3)
【0170】
【化15】

【0171】
出発物質:30mlのEtOHにおける3.90g(34.1ミリモル)の2−アミノ−5−メチルチアゾール、40mlのEtOHにおける8.00g(34.1ミリモル)の3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒド、100mgのピペリジン、
収率:80%(9.00g、27.2ミリモル)
【0172】
【数3】

【0173】
2.1.4
4,6−ジ−tert−ブチル−2−(ベンゾチアゾール−2’−イルイミノメチル)フェノール(4)
【0174】
【化16】

【0175】
出発物質:30mlのEtOHにおける5.13g(34.1ミリモル)の2−アミノベンゾチアゾール、40mlのEtOHにおける8.00g(34.1ミリモル)の3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒド、100mgのピペリジン、
収率:71%(8.87g、24.2ミリモル)
【0176】
【数4】

【0177】
2.2 チアゾリルイミノメチルフェノールの還元
NaBH4を、室温条件下で、チアゾリルイミノメチルフェノールをメタノールに溶解した溶液に撹拌しながら一度に少しずつ添加した。添加終了後、混合物を更に1時間撹拌した。この時間中に、反応混合物が脱色し、そして無色の固体が沈殿した。生成物をろ過し、そして減圧下に乾燥した。
【0178】
2.2.1
[Lig1]H2(5)(実施例2.1.1から得られた化合物(1)の還元)
【0179】
【化17】

【0180】
出発物質:10mlのMeOHにおける1.47g(4.64ミリモル)の(1)、292mg(7.72ミリモル)のNaBH4
収率:85%(1.26g、3.96ミリモル)
【0181】
【数5】

【0182】
2.2.2
[Lig2]H2(6)(実施例2.1.2から得られた化合物(2)の還元)
【0183】
【化18】

【0184】
出発物質:80mlのMeOHにおける8.31g(25.1ミリモル)の(2)、1.6g(42.3ミリモル)のNaBH4
収率:81%(6.79g、20.4ミリモル)
【0185】
【数6】

【0186】
2.2.3
[Lig3]H2(7)(実施例2.1.3から得られた化合物(3)の還元)
【0187】
【化19】

【0188】
出発物質:80mlのMeOHにおける8.89g(26.9ミリモル)の(3)、1.63g(43.1ミリモル)のNaBH4
収率:82%(7.30g、21.9ミリモル)
【0189】
【数7】

【0190】
2.2.4
[Lig4]H2(8)(実施例2.1.4から得られた化合物(4)の還元)
【0191】
【化20】

【0192】
出発物質:40mlのMeOHにおける5.85g(15.9ミリモル)の(4)、0.97g(25.6ミリモル)のNaBH4
収率:68%(3.98g、10.8ミリモル)
【0193】
【数8】

【0194】
2.3 チアゾリルイミノメチルフェノールとアルキル金属との反応
アルキル金属の溶液を、−70℃でイミンの溶液に撹拌しながら滴下した。反応混合物を室温までゆっくりと暖め、更に15時間撹拌した。その後、等モル量のメタノールを用いて氷中で冷却しながら注意して加水分解した。次いで、希薄なNH4Cl水溶液を添加した。相分離を行った。エーテル相をMgSO4で乾燥した後、溶剤を減圧下に除去した。粗生成物をペンタンから再結晶化させた。
【0195】
2.3.1
[Lig5]H2(9)(実施例2.1.1から得られた化合物(1)の反応)
【0196】
【化21】

【0197】
出発物質:35mlのEt2Oにおける0.50g(1.58ミリモル)の(1)、Et2Oにおける2.0ml(3.20ミリモル)の1.6MのMeLi溶液
収率:92%(422mg、1.46ミリモル)
【0198】
【数9】

【0199】
2.3.2
[Lig6]H2(10)(実施例2.1.1から得られた化合物(1)の反応)
【0200】
【化22】

【0201】
出発物質:35mlのEt2Oにおける1.00g(3.16ミリモル)の(1)、Et2Oにおける7.0ml(7.0ミリモル)の1MのMgCl(CH2Ph)溶液
収率:85%(1.10g、2.69ミリモル)
【0202】
【数10】

【0203】
2.3.3
[Lig6]H2(11)(実施例2.1.4から得られた化合物(4)の反応)
【0204】
【化23】

【0205】
【数11】

【0206】
3.錯体の合成
3.1
[Lig1]Ti(NMe22(12)(実施例2.2.1から得られた化合物(5)の反応)
【0207】
【化24】

【0208】
リガンド[Lig1]H2(5)(86mg、270μモル)を5mlのトルエンに溶解した溶液を、室温条件下、Ti(NMe24(60mg、268μモル)を5mlのトルエンに溶解した黄色の溶液に撹拌しながら滴下した。この添加中に、反応溶液の色が暗赤色に変化した。添加終了後、溶液を更に1時間撹拌した。次いで、反応混合物の揮発性成分を減圧下に除去し、そして残留物をペンタンに取り込み、15分間撹拌した。溶剤の除去後、生成物を減圧下に乾燥した。これにより、計量可能な[Lig1]Ti(NMe22(12)を赤みがかった褐色固体の形で得られた。
【0209】
【数12】

【0210】
3.2
[Lig2]TiCl(tert−BuCp)(14)(実施例2.2.2から得られた化合物(6)の反応)
3.2.1
[Lig2]Li2(Et2O)2(13)
エーテル中における0.56ml(13.8ミリモル)の2.5MのBuLi溶液を、−70℃で、リガンド[Lig2]H2(6)(230mg、692μモル)の溶液に撹拌しながら滴下した。添加終了後、混合物を室温までゆっくりと暖めた。その後、反応溶液の揮発性成分を減圧下に除去し、残留物をペンタンに取り込んだ。−70℃に冷却することにより、[Lig2]Li2(Et2O)2(13)を無色の結晶の形で得られた。
【0211】
収率:81%(275mg、558μモル)
【0212】
【数13】

【0213】
3.2.2
[Lig2]TiCl(tert−BuCp)(14)
リチウム塩(13)(89mg、181μモル)及び(tert−BuCp)TiCl3(50mg、181μモル)を反応容器に導入した。氷中で冷却し、そして撹拌しながら、10mlの予め冷却したペンタンを添加した。次いで、反応混合物を室温条件下で2時間撹拌した。沈殿したLiClを分離し、その後、溶剤を減圧下に溶液から除去した。これにより、94mg(176μモル、97%)の生成物を暗赤色の固体の形で得られた。
【0214】
【数14】

【0215】
3.3
{[Lig1]H}2TiCl2(15)(実施例2.2.1から得られた化合物(5)の反応)
リガンド[Lig1]H2(5)(154mg、483μモル)を8mlのEt2Oに溶解した溶液を、−70℃で、Ti(NMe22Cl2(100mg、483μモル)を8mlのEt2Oに溶解した橙色の溶液に撹拌しながら滴下し、これにより反応溶液の色が暗赤色となった。反応混合物を室温までゆっくりと暖め、そしてこの時間中に、混合物の揮発性成分を減圧下に除去した。暗赤色の固体を5mlの低温ペンタンで洗浄し、次いで減圧下に乾燥した。
【0216】
収率(NMRによる):217mg(228μモル、94%)
【0217】
【数15】

【0218】
3.4
[Lig2]TiCl2(16)(実施例2.2.2から得られた化合物(6)の反応)
リガンド[Lig1]H2(6)(120mg、361μモル)を10mlのTHFに溶解した溶液を、室温条件下、Ti(NMe22Cl2(75mg、362μモル)を10mlのTHFに溶解した溶液に撹拌しながら滴下した。添加終了後、反応混合物を更に30分間撹拌し、その後、混合物の揮発性成分を減圧下に除去した。暗赤色の固体を5mlの低温ペンタンで洗浄し、次いで、減圧下に乾燥した。
【0219】
収率(NMRによる):217mg(228μモル、94%)
【0220】
【数16】

【0221】
3.5
[Lig3]Ti(Oi−Pr)2(17)(実施例2.2.3から得られた化合物(7)の反応)
リガンド[Lig3]H2(7)(56mg、169μモル)を4mlのEt2Oに溶解した溶液を、室温条件下、49mg(169ミリモル)のTi(Oi−Pr)4を4mlのEt2Oに溶解した溶液に撹拌しながら滴下した。添加終了後、混合物を更に2時間撹拌した。次いで、反応混合物の揮発性成分を減圧下に除去した。次いで、残留物をペンタンに取り込み、−70℃に冷却した。約20時間後、55mg(111μモル、66%)の錯体(17)を橙色の固体の形で得られた。
【0222】
【数17】

【0223】
3.6
{[Lig3]H}2Ti(Oi−Pr)2(18)(実施例2.2.3から得られた化合物(7)の反応)
【0224】
【化25】

【0225】
リガンド[Lig3]H2(7)(145mg、436μモル)を4mlのEt2Oに溶解した溶液を、室温条件下、62mg(218μモル)のTi(Oi−Pr)4を4mlのEt2Oに溶解した溶液に撹拌しながら滴下した。添加終了後、混合物を更に2時間撹拌した。次いで、反応混合物の揮発性成分を減圧下に除去した。これにより、計量可能な錯体(18)を黄色の固体の形で得られた。
【0226】
【数18】

【0227】
3.7
[Lig5]Ti(Oi−Pr)2(19)(実施例2.3.1から得られた化合物(9)の反応)
【0228】
【化26】

【0229】
リガンド[Lig5]H2(9)(115mg、346μモル)の溶液を、0℃で、Ti(Oi−Pr)4(130mg、457μモル)を15mlのEt2Oに溶解した溶液に撹拌しながら滴下した。添加終了後、反応混合物を室温条件下で更に2時間撹拌し、その後、混合物の揮発性成分を減圧下に除去した。残留物をペンタンに取り込み、−70℃に冷却した。沈殿した橙色の固体を冷却しながらろ過し、減圧下に乾燥した。
【0230】
収率:71%(122mg、246μモル)
【0231】
【数19】

【0232】
3.8
[Lig1]Hf(NMe22(20)(実施例2.2.1から得られた化合物(5)の反応)
リガンド[Lig1]H2(5)(41mg、129μモル)を8mlのEt2Oに溶解した溶液を、−70℃で、Hf(NMe24(46mg、130μモル)を8mlのEt2Oに溶解した溶液に撹拌しながら滴下した。反応混合物を室温までゆっくりと暖め、そして混合物の揮発性成分を減圧下に除去した。残留物を5mlのペンタンに取り込み、室温条件下で15分間撹拌し、次いで減圧下に乾燥した。
【0233】
収率(NMRによる):69mg(118μモル、91%)
【0234】
【数20】

【0235】
4. エテンの重合
チタン錯体、トルエン及びMAO(メチルアルミノキサン)溶液を反応器に導入した。エテンを撹拌しながら通過させた。この反応中に、圧力を一定に保持した。重合時間の最後に、エテン圧を抜くことによって反応を停止させた。反応混合物を、10%濃度のHCl/メタノール溶液に注いだ。沈殿した無色の固体及び反応中に溶液に懸濁させた生成物を、沈殿溶液中で2時間撹拌した。その後、ポリマーをろ過し、メタノール及びヘキサンで洗浄し、真空オイルポンプ中で60℃にて2時間乾燥し、次いで、解析した。
【0236】
4.1
[Lig3]Ti(Oi−Pr)2(17)/MAO
条件:2mg(4.0μモル)の[Lig3]Ti(Oi−Pr)2(17)、1.54g(4.0ミリモル)の7%濃度MAO溶液、40mlのトルエン、T=50℃、t=30分、p(エテン)=4バール
収率/活性:55mgに対して27.5kgPE/(時・モルTi)。
【0237】
4.2
[Lig3]Ti(Oi−Pr)2(17)/i−Bu3Al/MAO
条件:2mg(4.0μモル)の[Lig3]Ti(Oi−Pr)2(17)、39mg(197μモル)のi−Bu3Al、1.54g(4.0ミリモル)の7%濃度MAO溶液、40mlのトルエン、T=50℃、t=30分、p(エテン)=4バール
収率/活性:64mgに対して32.0PE/(時・モルTi)。
【0238】
4.3
{[Lig3]H}2Ti(Oi−Pr)2(18)/MAO
条件:5mg(6.0μモル)の{[Lig3]H}2Ti(Oi−Pr)2(18)、567mg(2.1ミリモル)の10%濃度MAO溶液、40mlのトルエン、T=50℃、t=30分、p(エテン)=4バール
収率/活性:79mgに対して26.3kgPE/(時・モルTi)。
【0239】
4.4
{[Lig1]H}2TiCl2(15)/MAO
条件:5mg(6.5μモル)の{[Lig1]H}2TiCl2(15)、883mg(2.29ミリモル)の7%濃度MAO溶液、40mlのトルエン、T=25℃、t=30分、p(エテン)=4バール
収率/活性:237mgに対して72.9kgPE/(時・モルTi)。
【0240】
4.5
[Lig5]Ti(Oi−Pr)2(19)/MAO
条件:2mg(4.0μモル)の[Lig5]Ti(Oi−Pr)2(19)、1.54g(4.0ミリモル)の7%濃度MAO溶液、40mlのトルエン、T=50℃、t=30分、p(エテン)=4バール
収率/活性:136mgに対して68.0kgPE/(時・モルTi)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Ia又はIb:
【化1】

[但し、式Iaにおいて
1がO、S、Se、Te、NR、CR2又はPRを表し、
2、E3がそれぞれCR、N又はPを表し、
4がN又はPを表し、
5がOH、SH、NHR、OR’、SR’又はNRR’を表し、
6がNH、PH、NR’又はPR’を表し、
5、R6がそれぞれ水素、直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、又はアリール基を表し、
1、R2、R3、R4がそれぞれ水素、直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、アリール基、ハロゲン又はニトロ基を表し、
Rが水素、直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基を表し、
R’が直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基を表し、且つ
5及びE6の少なくとも一方が水素原子を含み、
式Ibにおいて
1、E4、E5、E6、R5、R6、R1、R2、R3、R4、R及びR’が式Iaと同義であり、
2’、E3’がそれぞれO、S、Se、Te、NR、CR2又はPRを表す。]
で表される化合物。
【請求項2】
1がSである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
4がNである請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
6がNHである請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
下記の式IIa又はIIbで表される化合物を下記の式IIIで表される化合物と反応させて、下記の式IVa又はIVbで表される化合物を形成する工程(工程a))、次いで下記の式IVa又はIVbで表される化合物を還元して、式Ia又はIbで表される化合物を得る工程(工程b)):
【化2】

【化3】

[但し、上記の各々の式中において、
1がO、S、Se、Te、NR、CR2又はPRを表し、Sを表すのが好ましく、
2、E3がそれぞれCR、N又はPを表し、
2’、E3’がそれぞれO、S、Se、Te、NR、CR2又はPRを表し、
4がN又はPを表し、Nが好ましく、
5がOH、SH、NHR、OR’、SR’又はNRR’を表し、
6がNH又はPHを表し、NHを表すのが好ましく、或いはNR’又はPR’を表し、
5、R6がそれぞれ水素、直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、又はアリール基を表し、
1、R2、R3、R4がそれぞれ水素、直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、アリール基、ハロゲン又はニトロ基を表し、
Rが水素、直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基を表し、
R’が直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基を表し、且つ
5及びE6の少なくとも一方が水素原子を含む。]
を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物を金属錯体の製造に使用する方法。
【請求項7】
式V:
【化4】

[但し、Lが、請求項1〜4のいずれか1項に記載の式Ia又はIbで表される化合物から誘導されたモノアニオン性又はジアニオン性リガンドを表し、
Lがジアニオン性リガンドを表す場合には、
5がO-、S-又はRN-を表し、O-を表すのが好ましく、
6がN-又はP-を表し、N-を表すのが好ましく、
Lがモノアニオン性リガンドを表す場合には、
5がO-、S-又はRN-を表し、O-を表すのが好ましく、且つ
6がNR又はPRを表すか、或いは
5がOR、SR又はNRR’を表し、且つ
6がN又はPを表し、Nを表すのが好ましく、そして
式I及びIIにおける他の記号E1、E2、E2’、E3、E3’、E4、R5、R6、R1、R2、R3、R4、R及びR’は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の対応する記号と同義であり、そして
Lがジアニオン性リガンドを表す場合には、
MがTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo又はWを表し、Ti、Zr又はHfを表すのが好ましく、
R”が水素、炭化水素基、好ましくは直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、NR”’2(但し、R”’が水素又は直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基を表す)、OR”’、ハロゲン又はアセチルアセトネートを表し、ハロゲン又はOR”’を表すのが好ましく、
Yがルイス酸を表し、
xが1又は2を表し、1を表すのが好ましく、
yが1〜4を表し、2を表すのが好ましく、
zが0〜2を表し、0を表すのが好ましく、且つ
R”及びYが合体して、合体基を形成しても良く、そして2x+yがMの原子価に相当し、或いは
Lがモノアニオン性リガンドを表す場合には、
MがTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ni、Pd、Co、Fe、Cu、Ru又はRhを表し、Ti、Zr、Hf、Ni又はPdを表すのが好ましく、
R”が水素、炭化水素基、好ましくは直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、NR”’2(但し、R”’が水素又は直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基を表す)、OR”’、ハロゲン又はアセチルアセトネートを表し、ハロゲン又はOR”’を表すのが好ましく、
Yがルイス酸を表し、
xが1、2又は3を表し、
yが1〜4を表し、
zが0〜2を表し、0を表すのが好ましく、且つ
R”及びYが合体して、合体基を形成しても良く、そしてx+yがMの原子価に相当する。]
で表される金属錯体。
【請求項8】
リガンドLがジアニオン性リガンドであり、MがTi、Zr又はHfである請求項7に記載の金属錯体。
【請求項9】
xが1であり、yが2であり、そしてzが0である請求項8に記載の金属錯体。
【請求項10】
リガンドLがモノアニオン性リガンドであり、MがTi、Zr、Hf、Ni又はPdである請求項7に記載の金属錯体。
【請求項11】
MがTi、Zr又はHfであり、xが2であり、yが2であり、zが0であるか、又はxが1であり、yが3であり、zが0であり、そしてMがNi又はPdである場合には、xが1であり、yが1であり、zが0である請求項10に記載の金属錯体。
【請求項12】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物を、塩基を用いて脱プロトン化し、次いで金属化合物と反応させるか、或いは請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物を金属化合物と直接反応させることによって請求項7〜11のいずれか1項に記載の金属錯体を製造する方法であって、
金属化合物が、Lがジアニオン性リガンドである場合、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo及びWからなる群から選択される金属M、好ましくはTi、Zr、Hfから選択される金属Mであり、或いはLがモノアニオン性リガンドである場合、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ni、Pd、Co、Fe、Cu、Ru及びRhからなる群から選択される金属M、好ましくはTi、Zr、Hf、Ni、Pdから選択される金属Mであることを特徴とする方法。
【請求項13】
a)成分Aとして請求項7〜11のいずれか1項に記載の式Vで表される金属錯体と、
b)成分Bとして、下記の(b1)〜(b3):
(b1)成分B1として有機金属化合物、
(b2)成分B2として有機アルミニウムオキシ化合物、及び
(b3)成分B3として金属錯体と反応して対イオンを形成する化合物、
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、を含む触媒活性組成物。
【請求項14】
成分A及びBに加えて、更に担体材料(成分C)を含む請求項13に記載の触媒活性組成物。
【請求項15】
請求項7〜11のいずれか1項に記載の式Vで表される金属錯体(成分A)を、下記の(b1)〜(b3):
(b1)成分B1として有機金属化合物、
(b2)成分B2として有機アルミニウムオキシ化合物、及び
(b3)成分B3として金属錯体と反応して対イオンを形成する化合物、
からなる群から選択される化合物(成分B)及び必要により担体材料(成分C)と接触させる工程を含む請求項13又は14に記載の触媒活性組成物を製造する方法。
【請求項16】
請求項13又は14に記載の触媒活性組成物をオレフィンの重合又は共重合に使用する方法。
【請求項17】
請求項13又は14に記載の触媒活性組成物の存在下でオレフィンを重合するか、又は請求項13又は14に記載の触媒活性組成物の存在下で少なくとも2種の相互に異なるオレフィンを共重合する工程を含む、オレフィンの重合法又は共重合法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法により製造された重合体又は共重合体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Ia又はIb:
【化1】

[但し、式Ia中において、
1がO、S、Se、Te、NR、CR2又はPRを表し、
2、E3がそれぞれCR、N又はPを表し、
4がN又はPを表し、
5がOH、SH、NHR、OR’、SR’又はNRR’を表し、
6がNH、PH、NR’又はPR’を表し、
5、R6がそれぞれ水素、直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、又はアリール基を表し、
1、R2、R3、R4がそれぞれ水素、直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、アリール基、ハロゲン又はニトロ基を表し、
Rが水素、直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基を表し、
R’が直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基を表し、且つ
5及びE6の少なくとも一方が水素原子を含み、
式Ib中において、
1、E4、E5、E6、R5、R6、R1、R2、R3、R4、R及びR’が式Iaと同義であり、
2’、E3’がそれぞれO、S、Se、Te、NR、CR2又はPRを表す。]
で表される化合物。
【請求項2】
1がSである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
4がNである請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
6がNHである請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
下記の式IIa又はIIbで表される化合物を下記の式IIIで表される化合物と反応させて、下記の式IVa又はIVbで表される化合物を形成する工程(工程a))、次いで下記の式IVa又はIVbで表される化合物を還元して、式Ia又はIbで表される化合物を得る工程(工程b)):
【化2】

【化3】

[但し、上記の各々の式中において、
1がO、S、Se、Te、NR、CR2又はPRを表し、Sを表すのが好ましく、
2、E3がそれぞれCR、N又はPを表し、
2’、E3’がそれぞれO、S、Se、Te、NR、CR2又はPRを表し、
4がN又はPを表し、Nが好ましく、
5がOH、SH、NHR、OR’、SR’又はNRR’を表し、
6がNH又はPHを表し、NHを表すのが好ましく、或いはNR’又はPR’を表し、
5、R6がそれぞれ水素、直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、又はアリール基を表し、
1、R2、R3、R4がそれぞれ水素、直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、アリール基、ハロゲン又はニトロ基を表し、
Rが水素、直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基を表し、
R’が直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基を表し、且つ
5及びE6の少なくとも一方が水素原子を含む。]
を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物を金属錯体の製造に使用する方法。
【請求項7】
式V:
【化4】

[但し、Lが、請求項1〜4のいずれか1項に記載の式Ia又はIbで表される化合物から誘導されたモノアニオン性又はジアニオン性リガンドを表し、
Lがジアニオン性リガンドを表す場合には、
5がO-、S-又はRN-を表し、O-を表すのが好ましく、
6がN-又はP-を表し、N-を表すのが好ましく、
Lがモノアニオン性リガンドを表す場合には、
5がO-、S-又はRN-を表し、O-を表すのが好ましく、且つ
6がNR又はPRを表すか、或いは
5がOR、SR又はNRR’を表し、且つ
6がN又はPを表し、Nを表すのが好ましく、そして
式I及びIIにおける他の記号E1、E2、E2’、E3、E3’、E4、R5、R6、R1、R2、R3、R4、R及びR’は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の対応する記号と同義であり、そして
Lがジアニオン性リガンドを表す場合には、
MがTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo又はWを表し、Ti、Zr又はHfを表すのが好ましく、
R”が水素、炭化水素基、好ましくは直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、NR”’2(但し、R”’が水素又は直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基を表す)、OR”’、ハロゲン又はアセチルアセトネートを表し、ハロゲン又はOR”’を表すのが好ましく、
Yがルイス酸を表し、
xが1又は2を表し、1を表すのが好ましく、
yが1〜4を表し、2を表すのが好ましく、
zが0〜2を表し、0を表すのが好ましく、且つ
R”及びYが合体して、合体基を形成しても良く、そして2x+yがMの原子価に相当し、或いは
Lがモノアニオン性リガンドを表す場合には、
MがTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ni、Pd、Co、Fe、Cu、Ru又はRhを表し、Ti、Zr、Hf、Ni又はPdを表すのが好ましく、
R”が水素、炭化水素基、好ましくは直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、NR”’2(但し、R”’が水素又は直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基を表す)、OR”’、ハロゲン又はアセチルアセトネートを表し、ハロゲン又はOR”’を表すのが好ましく、
Yがルイス酸を表し、
xが1、2又は3を表し、
yが1〜4を表し、
zが0〜2を表し、0を表すのが好ましく、且つ
R”及びYが合体して、合体基を形成しても良く、そしてx+yがMの原子価に相当する。]
で表される金属錯体。
【請求項8】
リガンドLがジアニオン性リガンドであり、MがTi、Zr又はHfである請求項7に記載の金属錯体。
【請求項9】
xが1であり、yが2であり、そしてzが0である請求項8に記載の金属錯体。
【請求項10】
リガンドLがモノアニオン性リガンドであり、MがTi、Zr、Hf、Ni又はPdである請求項7に記載の金属錯体。
【請求項11】
MがTi、Zr又はHfであり、xが2であり、yが2であり、zが0であるか、又はxが1であり、yが3であり、zが0であり、そしてMがNi又はPdである場合には、xが1であり、yが1であり、zが0である請求項10に記載の金属錯体。
【請求項12】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物を、塩基を用いて脱プロトン化し、次いで金属化合物と反応させるか、或いは請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物を金属化合物と直接反応させることによって請求項7〜11のいずれか1項に記載の金属錯体を製造する方法であって、
金属化合物が、Lがジアニオン性リガンドである場合、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo及びWからなる群から選択される金属M、好ましくはTi、Zr、Hfから選択される金属Mであり、或いはLがモノアニオン性リガンドである場合、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ni、Pd、Co、Fe、Cu、Ru及びRhからなる群から選択される金属M、好ましくはTi、Zr、Hf、Ni、Pdから選択される金属Mであることを特徴とする方法。
【請求項13】
a)成分Aとして請求項7〜11のいずれか1項に記載の式Vで表される金属錯体と、
b)成分Bとして、下記の(b1)〜(b3):
(b1)成分B1として有機金属化合物、
(b2)成分B2として有機アルミニウムオキシ化合物、及び
(b3)成分B3として金属錯体と反応して対イオンを形成する化合物、
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、を含む触媒活性組成物。
【請求項14】
成分A及びBに加えて、更に担体材料(成分C)を含む請求項13に記載の触媒活性組成物。
【請求項15】
請求項7〜11のいずれか1項に記載の式Vで表される金属錯体(成分A)を、下記の(b1)〜(b3):
(b1)成分B1として有機金属化合物、
(b2)成分B2として有機アルミニウムオキシ化合物、及び
(b3)成分B3として金属錯体と反応して対イオンを形成する化合物、
からなる群から選択される化合物(成分B)及び必要により担体材料(成分C)と接触させる工程を含む請求項13又は14に記載の触媒活性組成物を製造する方法。
【請求項16】
請求項13又は14に記載の触媒活性組成物をオレフィンの重合又は共重合に使用する方法。
【請求項17】
請求項13又は14に記載の触媒活性組成物の存在下でオレフィンを重合するか、又は請求項13又は14に記載の触媒活性組成物の存在下で少なくとも2種の相互に異なるオレフィンを共重合する工程を含む、オレフィンの重合法又は共重合法。

【公表番号】特表2006−516954(P2006−516954A)
【公表日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548848(P2004−548848)
【出願日】平成15年11月3日(2003.11.3)
【国際出願番号】PCT/EP2003/012200
【国際公開番号】WO2004/041796
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(500585878)バーゼル、ポリオレフィン、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (35)
【Fターム(参考)】