説明

オーディオデバイスの改良

オーディオ機能を有する電子デバイスおよびそのラウドスピーカ構造が記載されている。電子デバイスは、外側ハウジングと、音響トランスデューサと、電子デバイスの外側ハウジングの一部を形成する音響放射体とを備えている。1つの実施形態において、外側ハウジングは、ピストン状の動きを受けるとともに、音響信号を補助表面に対して結合するためのヒドロゲルパッドを備えており、その結果、補助表面が分散モードで振動する。外側ハウジングに対して音声コイルが直接に接着されてもよい。外側ハウジングの一部のピストン状の動きを促進させるために形成体が設けられてもよい。動作方法および形成体も記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオデバイスおよび部品の分野に関し、特に、家庭用電子機器と共におよび家庭用電子機器で用いるラウドスピーカ構造に関する。本発明は、携帯電話、ラップトップコンピュータおよびミュージックプレーヤなどのポータブル電子デバイスに対して特定の用途を有している。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの消費者の間では、特に様々なポータブル電子デバイスからのマルチメディアコンテンツへのアクセスおよび再生が流行するようになるにつれて、オーディオコンポーネントからの高音質への期待が益々増大している。しかしながら、例えば携帯性、使用の便利さ、および、スタイルを向上させることにより、現代の消費者のライフスタイルにうまく溶け込む電子機器を提供する必要性が益々増大している。コスト、サイズ、および、音響性能の問題が重要になる。
【0003】
分散モードラウドスピーカ(DML)構造が様々な用途で使用される。例えば、国際特許出願公開WO2004/114717は、マグネットアセンブリに対して音声コイルを位置決めし且つ駆動アセンブリを放射部材に対して着脱可能に取り付けるための表面を形成するヒドロゲル保持要素を含むパネルラウドスピーカのためのドライバアセンブリを開示している。
【0004】
スピーカドライバを放射パネルに対して取り外し不能に固定する他のフラットパネル構造が提案されてきた。しかしながら、現在利用できる構造はそれらの用途の自由度が限られており、例えば、それらの構造は、小型の電子デバイスに適さない場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の究極の目的は、改良された分散モードラウドスピーカおよびその部品を提供することである。
【0006】
本発明の更なる目的は、家電製品と共に使用するのに適した改良されたラウドスピーカ構造を提供することである。
【0007】
本発明の更なる目的は、家庭用電子機器のための改良されたハウジング部品を提供することである。
【0008】
本発明の更なる究極の目的は、以下の説明を読むことにより明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、オーディオ機能を有する電子デバイスであって、
外側ハウジング部材と、
電気的な音声信号を受けて第1の音響信号を生成するように構成された音響トランスデューサと、
第1の音響トランスデューサに対して結合され、上記音響信号に応じて音響信号を放射するように作用する第1の音響放射体と
を備え、
第1の音響放射体が電子デバイスの外側ハウジングの一部を形成する、電子デバイスが提供される。
【0010】
好ましくは、電子デバイスは、オーディオ機能以外の第2の機能を有する家庭用電子デバイスである。例えば、電子デバイスは、携帯電話、ディスプレイスクリーン、携帯端末(PDA)、コンピュータドッキングステーション、MP3プレーヤ、CDプレーヤ、テレビ、コンピュータまたはラップトップコンピュータのうちの任意の1つであってもよい。電子デバイスがポータブルであってもよい。
【0011】
好ましくは、第1の音響放射体は、第1の使用モードでは第1の音響信号を自由空間へと放射するように構成されるとともに、第2の使用モードでは第2の音響放射体に対して結合されるように構成され、それにより、第2の音響放射体が第1の音響信号に応じて第2の音響信号を放射するように作用する。
【0012】
1つの実施形態では、第1の音響放射体がピストン状の動きを受けるように構成される。第1の動作モードにおいて、外側ハウジングの一部は、ピストン状の動きを受けるとともに、このピストン状の動きによって音響信号を自由空間へと放射する。
【0013】
外側ハウジングは、音響放射体としての外側ハウジングの一部の動作を促進させる機能を果たす形成体を備えていてもよい。形成体は、外側ハウジングの一部のピストン状の動きを促進させてもよい。形成体は、第1の音響放射体の境界を画成してもよい。
【0014】
形成体は、第1の音響放射体の移動性を高める外側ハウジングの別個の部分を備えていてもよい。形成体は、外側ハウジングの外面に対して垂直な第1の音響放射体の動きを容易にしてもよい。形成体は、外側ハウジングの隣接する部分よりも大きな柔軟性を有する外側ハウジングの部分であってもよい。形成体はハウジングの表面に形成される溝を備えてもよい。形成体は、第1の音響放射体を部分的に或いは完全に取り囲んでもよい。
【0015】
他の実施形態において、第1の音響放射体は、外側ハウジングの厚さと比べて減少された厚さの領域を有していてもよい。
【0016】
それに代えて或いはそれに加えて、第1の音響放射体は、低周波帯域の周波数においてピストンモードで振動するとともに高周波帯域の周波数において分散モードで振動するように構成される。実際には、外側ハウジング(または、その部品)は、特定の周波数において分散モードで振動する。デバイスは、第1の使用モードで動作する際にデバイスの音響応答を向上させるため、デバイスの特定の部分の分散モード振動を促進させるように構成されてもよい。デバイスには分散モード音響放射体が設けられてもよく、この分散モード音響放射体は、ディスプレイスクリーンなどのデバイスのフラットパネル部品であることが有益である。
【0017】
好ましくは、第1の音響放射体は、単にデバイスの外面上にあるだけでなく、音響振動を受けるようになっている或いは受けるように構成される外側ハウジングの一部である。第1の音響放射体は、内部機能部品を外面を用いて分離し且つ何らかの構造的および/または保護的な機能を与える外側ハウジングの部分であることが好ましい。第1の音響放射体は、電子デバイスの外面のかなりの割合、大部分、または、ほぼ全てを形成する外側ハウジング部材と一体であってもよい。
【0018】
外側ハウジングサブ部材は、携帯電話または携帯電話アクセサリのためのハウジングの一部であってもよい。
【0019】
第1の音響放射体は、外側ハウジング部材の一部の全体であってもよい。外側ハウジング部材は、補助表面が第2の音響放射体を形成できるように、使用中に上記補助表面上に都合良く位置決めできる電子デバイスの外面の一部であることが好ましい。外側ハウジング部材は、電子デバイスの下面、背面または底面の一部であってもよい。
【0020】
電子デバイスは携帯電話であってもよく、また、外側ハウジング部材は携帯電話のハウジングの後面または背面の一部であってもよい。これに関連して、携帯電話ハウジングの背面または後面は、電話が横たえられて置かれた場合に表面上に配置される面である。従来の携帯電話または「スライドフォン」において、この面は、ディスプレイスクリーンおよびメインキーパッドが配置される面と反対側の面である。
【0021】
「フリップフォン」または「クラムシェル」電話において、ハウジングは、電話が横たえられて置かれる際に一方側の面が表面上に優先的に配置されるように形成されてもよい。この場合、外側ハウジング部材が所定の「下」面であってもよい。しかしながら、外側ハウジングサブ部材は、電話が横たえられて置かれる際に表面上に配置されるように形成される側で電話の部品を形成してもよい。電話は、キーへのアクセスまたは電話ディスプレイの視認性を可能にするハウジングの側で横たえられて置かれることが有益である。
【0022】
好ましくは、電子デバイスには、第1の音響放射体を第2の音響放射体に対して音響結合するための結合手段が設けられる。好ましくは、第2の音響放射体が補助表面である。補助表面は、壁表面、テーブル、机の上、天井、および/または、段ボールシート、または、音を放射するように駆動され得る任意の表面のうちの任意の1つの形態を成していてもよい。
【0023】
第2の音響放射体は分散モードで振動することが好ましい。
【0024】
結合手段はエラストマー材料から形成されてもよい。エラストマー材料はシリコーンであってもよく或いはヒドロゲルであってもよい。好ましくは、結合手段は少なくとも1つのパッドまたはストリップを備える。少なくとも1つのパッドまたはストリップはシリコーンを備える材料から形成されてもよい。少なくとも1つのパッドまたはストリップがヒドロゲルから形成されてもよい。
【0025】
エラストマー材料が20未満のショアA硬さを有していてもよい。エラストマー材料が10未満のショアA硬さを有していてもよい。
【0026】
結合手段は、電子デバイスの外面に対して接着されるパッドまたはストリップを備えていてもよい。結合手段が複数の別個のパッドまたはストリップを備えていてもよい。
【0027】
好ましくは、結合手段は、電子デバイスのハウジングと補助表面との接触を防止するように形成される。
【0028】
第1の使用モードにおいて、第1の音響放射体は、音響信号を自由空間へ放射するラウドスピーカの部品として機能する。しかしながら、本発明の実施形態によれば、電子デバイスを補助表面の形態を成す第2の音響放射体に対して結合することができ、それにより、音響エネルギが補助表面に対して伝えられる。補助表面は、音響信号を自由空間へ放射する分散モードラウドスピーカの一部となる。これにより、デバイスの音響性能全体が高められる。これは、例えばハンズフリーモードでの携帯電話の使用を容易にするとともに、大きな内部スピーカを使用することなく或いは外部スピーカに接続することなくオーディオコンテンツを高音質で再生できる様々な電子デバイスの能力を向上させる。また、本発明は、電子デバイスの音響応答が必ずしも電子デバイスの内部キャビティによって或いはキャビティ内に設けられる部品の容積および質量によって制限されない改良された構造も提供する。これは、電子デバイスの構造の更なる自由度を与える。
【0029】
音響トランスデューサは、第1の音響放射体に対して結合される音声コイルを備えることが好ましい。音声コイルは第1の音響放射体に対して強固に結合されることが好ましい。音声コイルは第1の音響放射体に対して接着されてもよい。
【0030】
第1の音響放射体には、音声コイルが結合される支持部材が設けられていることが好ましい。支持部材は第1の音響放射体の表面から隆起されることが好ましい。支持部材が音声コイルの寸法に合わせて形成されるリングであってもよい。支持部材が第1の音響放射体と一体であってもよい。
【0031】
好ましくは、ラウドスピーカアセンブリは、位置決め手段によって音声コイルに対して位置決めされるマグネットアセンブリを備えている。
【0032】
好ましくは、ラウドスピーカアセンブリは、保持手段によって音声コイルに対して保持されるマグネットアセンブリを備えている。
【0033】
好ましくは、位置決め手段および/または保持要素は、エラストマーであり、シリコーンまたはヒドロゲル材料から形成されてもよい。
【0034】
好ましくは、位置決め手段および保持手段はエラストマー要素である。
【0035】
好ましくは、エラストマー要素は、マグネットアセンブリを第1の音響放射体に対して結合する。
【0036】
場合により、エラストマー要素は0〜40の範囲のショアA硬さを有している。エラストマー要素は約20のショアA硬さを有していることが有益である。
【0037】
エラストマー要素は略管状であることが好ましい。エラストマー要素がマグネットアセンブリのための環状シートを形成してもよい。
【0038】
エラストマー要素は、音声コイルに対してマグネットアセンブリを保持して位置決めする機能を有している。したがって、音声コイルが磁束空間内に位置される。エラストマー要素に関して適切な構造、材料および硬さを選択することにより、外側ハウジング部材および音声コイルに対するマグネットアセンブリの相対的な動きが可能になる。
【0039】
本発明の第2の態様によれば、電子デバイスから音響信号を生成する方法であって、
a)電気的な音声信号を音響トランスデューサで受けて第1の音響信号を生成するステップと、
b)電子デバイスの外側ハウジングの一部が第1の音響信号に応じた応答を成して音響信号を放射するようにさせるステップと
を備える方法が提供される。
【0040】
好ましくは、方法は、第2の音響放射体が第1の音響信号に応じて第2の音響信号を放射するべく作用するように電子デバイスを第2の音響放射体に対して結合させるステップを含む。
【0041】
好ましくは、方法は、第1の使用モードにおいて第1の音響信号を自由空間へと放射するステップを含む。
【0042】
本発明の第2の態様の実施形態は、本発明の第1の態様およびその実施形態の1つ以上の特徴部を含んでいてもよい。
【0043】
本発明の第3の態様によれば、電子デバイス用のラウドスピーカ構造を形成する方法であって、
a)電子デバイスの外側ハウジングの一部に対して音声コイルを結合するステップと、
b)マグネットアセンブリをラウドスピーカ構造内に位置決めして音響トランスデューサを形成するステップと
を備え、
外側ハウジングの一部が使用時に第1の音響放射体として作用する方法が提供される。
【0044】
方法は、ラウドスピーカアセンブリの1つ以上の部品をエラストマー要素によって保持しおよび/または位置決めするステップを備えてもよい。
【0045】
方法は、電子デバイスの外面上に結合手段を設ける更なるステップを備えていてもよい。結合手段は、第2の音響放射体に対する電子デバイスの音響結合を可能にする機能を果たす。
【0046】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第3の態様の方法によって形成される電子デバイスまたはラウドスピーカ構造が提供される。
【0047】
本発明の第3の態様または第4の態様の実施形態は、本発明の第1または第2の態様およびその実施形態の1つ以上の特徴部を含んでいてもよい。
【0048】
本発明の第5の態様によれば、分散モードラウドスピーカのための音響放射体において、音響放射体がポータブル電子デバイスのための外側ハウジング部材を形成するようになっていることを特徴とする、音響放射体が提供される。
【0049】
本発明の第6の態様によれば、ラウドスピーカアセンブリと外側ハウジング部材とを有するポータブル電子デバイスにおいて、外側ハウジング部材がラウドスピーカアセンブリのための音響放射体を形成することを特徴とする、ポータブル電子デバイスが提供される。
【0050】
本発明の第7の態様によれば、ラウドスピーカアセンブリと外側ハウジング部材とを有する携帯電話であって、外側ハウジング部材がラウドスピーカアセンブリのための音響放射体を形成することを特徴とする携帯電話が提供される。
【0051】
本発明の第5、第6または第7の態様の実施形態は、本発明の第1または第2の態様およびその実施形態の1つ以上の特徴部を含んでいてもよい。
【0052】
次に、以下の図面を参照して、本発明の実施形態を単なる一例として説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
最初に図1および図2を参照すると、全体的に10で示され且つ補助表面12上に位置される携帯電話が示されている。電話10は、上面15および下面16を有するハウジング14を備えている。上面15にはディスプレイ17およびキーパッド18が設けられている。下面16にはパッド20の形態を成す結合手段が設けられている。この例において、パッド20は、下面の幅全体にほぼわたって延びる2つの別個のストリップである。パッド20は、補助表面とのハウジング14の直接的な接触を防止しつつ、補助表面12上に電話を支持するように形成されて位置されている。他の実施形態では、パッドがハウジングの形状にしたがって形成されて位置される。
【0054】
パッド20は、ハウジングの下面に接着されるとともに、エラストマーヒドロゲル材料から形成される。この例では、ヒドロゲルが10未満のショアA硬さを有している。
【0055】
図3Aおよび図3Bは、図2に示される領域Aにおける電話10の内部部品の断面を示している。
【0056】
ハウジングの内部には、全体的に30で示されるラウドスピーカアセンブリがある。ラウドスピーカアセンブリ30はマグネットアセンブリ32と音声コイル(または、界磁コイル)34とを備えており、音声コイル34は、マグネットアセンブリ32によって画成される環状の磁束空間35内に位置されている。この例では、マグネットアセンブリ32が内側円柱マグネットと外側環状マグネットとを備えている。上側プレートが内側マグネットと外側マグネットとを連結しており、また、環状空間を有する下側プレートが磁場空間を画成する。
【0057】
音声コイル34は、給電配線(図示せず)に接続された銅コイルであり、ハウジング14の一部を形成する外側ハウジング部材36に対して接着される。外側ハウジング部材には、音声コイルと同じ横方向寸法を有する隆起体または筋部(nerve)38が設けられている。音声コイルは、それが外側ハウジング部材36の内面から隆起されるように隆起体38上に接着されている。これは、環状の磁場空間内に音声コイルを位置決めするのに役立つ。この例では、隆起体が製造プロセス中に成形されて外側ハウジング部材36と一体を成す。音声コイル34は、外側ハウジング部材36に対して強固に結合される。
【0058】
外側ハウジング部材には、隆起体38と同軸な第2の隆起体40が設けられており、この第2の隆起体も保持要素42を位置決めするために外側ハウジング部材と一体を成している。要素42は、マグネットアセンブリを音声コイルと空間的に離間された関係を成して位置決めしおよび/または保持する機能を果たす。要素42は、マグネットアセンブリを音声コイルの軸方向および径方向軸に沿って位置決めして保持する機能を果たす。
【0059】
要素42は、側壁と、径方向に延びる保持体と、マグネットアセンブリのための環状シート44とを有する略管形状を成している。要素42は、約20のショアA硬さを有するヒドロゲルから形成されるエラストマーである。要素は、ラウドスピーカの音響作用に適したマグネットアセンブリと音声コイルとの相対的な動きを可能にする。
【0060】
外側ハウジング部材36は、略硬質であるとともに、音声コイル34と共にマグネットアセンブリ32に対して移動可能である。音声コイル内の電流は、マグネットアセンブリ32に対する音声コイルおよび外側ハウジング部材36の対応する動きを生み出す。ラウドスピーカアセンブリ30は、マグネットアセンブリ32に対する外側ハウジング部材36の「ピストン状の」動きを可能にする機能を果たす。この相対的な動きは、矢印46によって示されるように、ラウドスピーカアセンブリ30の中心軸45に沿って略軸方向に向けられる。
【0061】
図3Aにおいて、外側ハウジング部材36は、ヒドロゲルパッド20を介して補助表面12に対して結合される。ヒドロゲルパッド20により、ラウドスピーカアセンブリ30および筐体14を補助表面12から取り外すことができる。また、ヒドロゲルパッド20により、外側ハウジング部材36は、補助表面12に対して移動することができ、これにより、ラウドスピーカアセンブリによって生成された音響信号を外側ハウジング部材により補助表面へと伝送することができる。このように、略硬質な外側ハウジング部材36は、振動して補助表面に対して移動できるとともに、パッド20を介して圧力信号を補助表面に対して及ぼすことができる。
【0062】
ヒドロゲルの物理的特性は、効果的な音響結合と、補助表面に対する圧力信号の効率的な伝送とをもたらす。補助表面の局所部でこのようにして生成される圧力信号は補助表面12内に分散モードを形成し、また、補助表面は、分散モードラウドスピーカのパネル型音響放射体としての機能を果たす。
【0063】
図3Bにおいては、図3Aのラウドスピーカアセンブリが補助表面に対して全く結合されず、外側ハウジング部材36がピストン形式で移動する。この形態において、ハウジング部材は、従来のラウドスピーカにおけるスピーカコーンと同様の様態で機能する。
【0064】
図4には、携帯電話ハウジングに対して適用されるラウドスピーカアセンブリ70の更なる実施形態が示されている。
【0065】
この例において、ラウドスピーカアセンブリ70は、マグネットアセンブリ132と、保持部材142と、前述した図3A,3Bの実施形態に類似する外側ハウジング部材136の内面に対して強固に結合された音声コイル134とを備えている。
【0066】
しかしながら、この場合、ハウジング114には、外側ハウジング部材136の周囲に形成体172が設けられている。形成体は、外側ハウジング部材136をハウジング114の残りの部分から構造的に画定する機能を果たす。外側ハウジング部材136は、形成体によってハウジング114に対して結合されたままである。したがって、形成体は、外側ハウジング部材136とハウジング114との間の接続領域を形成する。
【0067】
この例では、形成体172は、対向する円形溝173a,173bをハウジング114の上面および下面にそれぞれ備えている。形成体の場所では、ハウジングの厚さが他の場所におけるよりも薄く、したがって、より柔軟であり且つより簡単に変形できる。これにより、ハウジング114に対する外側ハウジング部材136の移動が容易となる。つまり、形成体172は、外側ハウジング部材136のピストン状の動きを助ける機能を果たす。
【0068】
図5は、他の実施形態に係るラウドスピーカアセンブリ90を示している。この実施形態において、アセンブリは、図3A,3Bおよび図4のアセンブリに類似しているが、ラウドスピーカアセンブリ90が薄壁外側ハウジング部材236を備え、部材236の厚さが全体としてハウジング214の他の領域と比べて減少されるという点で異なる。ヒドロゲルパッド220は、アセンブリを補助表面に対して結合して取り付けるために薄壁外側ハウジング部材236に対して取り付けられる。
【0069】
図4および図5の実施形態では、電話のハウジング214に形成体すなわち薄肉化領域を設けることにより、外側ハウジング部材136,236の移動の応答性および自由度が高められる。
【0070】
上記実施形態は携帯電話装置に言及しているが、本発明が他の電子デバイスを対象とし得ることは言うまでもない。一例が図6Aおよび図6Bに示されており、これらの図はフラットパネルディスプレイスクリーンを参照符号300で全体的に示している。
【0071】
この例において、スクリーン300は、スクリーンハウジング314と、前述した実施形態のアセンブリ30,130,230に類似するラウドスピーカアセンブリ330とを備えている。ラウドスピーカアセンブリ330は、ハウジング314の一部を形成し且つハウジング314と一体の外側ハウジング部材336を備えている。ラウドスピーカアセンブリ330の他の部品はハウジング314内の狭いキャビティに位置されている。
【0072】
アセンブリの外側ハウジング部材はハウジングの一体部分であり、このことは、ラウドスピーカアセンブリが比較的コンパクトで、突出が少なく、利用可能な空間が限られるデバイス内でそれを使用できることを意味している。
【0073】
図6Bから分かるように、スクリーン300は、ケーシングの外面に貼り付けられるヒドロゲルパッド320を有している。特に、パッドは、ラウドスピーカアセンブリ330と対向する領域におけるハウジング314の外面に対して、すなわち、外側ハウジング部材336に対して貼り付けられる。パッドはヒドロゲルから形成されており、これらのパッドによりスクリーンを壁面340に対して取り付けることができる。ヒドロゲルパッドは、ラウドスピーカアセンブリ330を壁面に対して音響結合するための手段としての機能を果たす。
【0074】
壁面は、外側ハウジング部材336によって駆動される分散モードパネル型音響放射体としての機能を果たす。ヒドロゲルは、ラウドスピーカアセンブリからの振動を壁面に対して効率的に伝送して、壁に分散モードを形成する。
【0075】
本発明は、同様の様態で、テレビディスプレイ、MP3プレーヤ、または、他のミュージックプレーヤ、あるいは、ラップトップコンピュータに対して適用されてもよい。また、本発明は、ミュージックプレーヤまたはラップトップコンピュータのためのドッキングステーションに対して適用されてもよい。
【0076】
第1の使用モードにおいて、上記実施形態の電子デバイスが補助表面に対して接触して位置されない場合には、ラウドスピーカの動作により、外側ハウジング部材36が通常の動作において許容できる可聴音響信号を発する。ハウジング部材36は、通常の動作で許容できる音質を与える分散モードラウドスピーカの部品として機能する。ハウジング部材は、低周波帯域の周波数においてピストンモードで振動するとともに、高周波帯域の周波数において分散モードで振動する。実際には、外側ハウジング(または、その部品)は、特定の周波数において分散モードで振動する。
【0077】
パッド20は、補助表面12上に配置されると、ラウドスピーカアセンブリ30を外側部材を介して補助表面12に対して音響結合するという効果を有する。外側ハウジング部材は、補助表面内に分散モードを形成し、それにより、特に低周波においてオーディオ再生の音質を高める。これにより、電話のハンズフリー動作が容易になるとともに、オーディオコンテンツの再生が向上される。
【0078】
前述した実施形態は主に携帯電話に関するものであるが、本発明は様々な電子デバイスに対して適用できる。これらの電子デバイスとしては、ディスプレイスクリーン、テレビ、ラップトップコンピュータ、PDA、ゲームコンソール、MP3プレーヤ、ドッキングステーション、ポータブルビデオデバイスが挙げられるが、これらに限定されない。本発明は、ポータブル電子デバイスなどの空間が限られる電子デバイスにおいて特定の利点を与える。
【0079】
本明細書中で意図される本発明の範囲から逸脱することなく前述した実施形態に対して様々な変更および改良が成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施形態に係る携帯電話の平面図である。
【図2】図1の携帯電話の側面図である。
【図3A】内部部品を示す図2の携帯電話の一部の断面図である。
【図3B】部品の移動性を示す図3Aの携帯電話の一部の断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る携帯電話の一部の断面図である。
【図5】本発明の更なる実施形態に係る電子デバイスの一部の断面図である。
【図6A】本発明の更なる実施形態に係るラウドスピーカアセンブリを有するLCDスクリーンの断面図である。
【図6B】図6AのラウドスピーカアセンブリおよびLCDスクリーンの斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ機能を有する電子デバイスであって、
外側ハウジング部材と、
電気的な音声信号を受けて第1の音響信号を生成するように構成された音響トランスデューサと、
前記第1の音響トランスデューサに対して結合され且つ前記音響信号に応じて音響信号を放射するように作用する第1の音響放射体と
を備え、
前記第1の音響放射体が電子デバイスの前記外側ハウジングの一部を形成する、電子デバイス。
【請求項2】
前記第1の音響放射体が、第1の使用モードでは前記第1の音響信号を自由空間へと放射するように構成されるとともに、第2の使用モードでは第2の音響放射体に対して結合されるように構成され、それにより、前記第2の音響放射体が前記第1の音響信号に応じて第2の音響信号を放射するように作用する、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
前記第1の音響放射体がピストン状の動きを受けるように構成される、請求項1または2に記載の電子デバイス。
【請求項4】
前記外側ハウジングが、当該外側ハウジングの一部のピストン状の動きを促進させる機能を果たす形成体を備えている、請求項3に記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記形成体が、前記第1の音響放射体の移動性を高める前記外側ハウジングの別個の部分を備えている、請求項4に記載の電子デバイス。
【請求項6】
前記形成体が、前記ハウジングの表面に形成された溝を備えている、請求項4または5に記載の電子デバイス。
【請求項7】
前記形成体が前記第1の音響放射体を部分的に或いは完全に取り囲む、請求項4〜6のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項8】
前記第1の音響放射体が、前記外側ハウジングの厚さと比べて減少された厚さの領域を有している、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項9】
前記第1の音響放射体が、低周波帯域の周波数においてピストンモードで振動するとともに高周波帯域の周波数において分散モードで振動するように構成される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項10】
デバイスには分散モード音響放射体が設けられている、請求項9に記載の電子デバイス。
【請求項11】
前記外側ハウジング部材が、補助表面が第2の音響放射体を形成できるように、使用中に前記補助表面上に都合良く位置決めできる電子デバイスの外面の一部である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項12】
分散モードで振動するように前記第2の音響放射体を駆動させるようになっている、請求項2〜11のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項13】
前記第1の音響放射体を第2の音響放射体に対して音響結合するための結合手段を更に備える、請求項2〜12のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項14】
前記結合手段が電子デバイスの外面に対して接着される、請求項13に記載の電子デバイス。
【請求項15】
前記結合手段がエラストマー材料から形成される、請求項13または14に記載の電子デバイス。
【請求項16】
前記エラストマー材料がヒドロゲルである、請求項15に記載の電子デバイス。
【請求項17】
前記結合手段が少なくとも1つのパッドまたはストリップを備える、請求項13〜16のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項18】
前記結合手段が複数の別個のパッドまたはストリップを備える、請求項17に記載の電子デバイス。
【請求項19】
前記結合手段が、電子デバイスの前記ハウジングと補助表面との接触を防止するように形成される、請求項13〜18のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項20】
前記エラストマー材料が20未満のショアA硬さを有している、請求項15〜18のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項21】
前記エラストマー材料が10未満のショアA硬さを有している、請求項20に記載の電子デバイス。
【請求項22】
前記音響トランスデューサが、前記第1の音響放射体に対して結合される音声コイルを備える、請求項1〜21のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項23】
前記音声コイルが前記第1の音響放射体に対して強固に結合される、請求項22に記載の電子デバイス。
【請求項24】
前記音声コイルが前記第1の音響放射体に対して接着される、請求項23に記載の電子デバイス。
【請求項25】
前記第1の音響放射体には、前記音声コイルが結合される支持部材が設けられている、請求項22〜24のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項26】
前記支持部材が前記第1の音響放射体の表面から隆起される、請求項25に記載の電子デバイス。
【請求項27】
前記支持部材が前記音声コイルの寸法に合わせて形成されるリングである、請求項25または26に記載の電子デバイス。
【請求項28】
前記支持部材が前記第1の音響放射体と一体である、請求項25〜27のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項29】
前記音響トランスデューサが、マグネットアセンブリを前記音声コイルに対して保持し或いは位置決めするための少なくとも1つのエラストマー要素を備える、請求項1〜28のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項30】
前記エラストマー要素がシリコーンまたはヒドロゲル材料から形成される、請求項29に記載の電子デバイス。
【請求項31】
前記エラストマー要素が前記マグネットアセンブリを前記第1の音響放射体に対して結合する、請求項29または30に記載の電子デバイス。
【請求項32】
前記エラストマー要素が0〜40の範囲のショアA硬さを有している、請求項29〜31のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項33】
前記エラストマー要素が約20のショアA硬さを有している、請求項32に記載の電子デバイス。
【請求項34】
前記エラストマー要素が略管状である、請求項29〜33のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項35】
前記エラストマー要素が前記マグネットアセンブリのための環状シートを形成する、請求項34に記載の電子デバイス。
【請求項36】
電子デバイスが携帯電話であり、前記外側ハウジング部材が前記携帯電話のハウジングの背面または後面の一部である、請求項1〜35のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項37】
電子デバイスから音響信号を生成する方法であって、
電気的な音声信号を音響トランスデューサで受けて第1の音響信号を生成するステップと、
前記電子デバイスの外側ハウジングの一部が前記第1の音響信号に応じた応答を成して音響信号を放射するようにさせるステップと
を備える方法。
【請求項38】
第2の音響放射体が前記第1の音響信号に応じて第2の音響信号を放射するべく作用するように前記電子デバイスを前記第2の音響放射体に対して結合させる更なるステップを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
第1の使用モードにおいて前記第1の音響信号を自由空間へと放射する更なるステップを含む、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記電子デバイスが請求項1〜36のいずれか一項に記載の電子デバイスである、請求項37〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
電子デバイス用のラウドスピーカ構造を形成する方法であって、
前記電子デバイスの外側ハウジングの一部に対して音声コイルを結合するステップと、
マグネットアセンブリをラウドスピーカ構造内に位置決めして音響トランスデューサを形成するステップと
を備え、
前記外側ハウジングの一部が使用時に第1の音響放射体として作用する方法。
【請求項42】
ラウドスピーカアセンブリの1つ以上の部品をエラストマー要素によって保持しおよび/または位置決めする更なるステップを備える、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記電子デバイスの外面上に結合手段を設ける更なるステップを含む、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
請求項41〜43のいずれか一項に記載の方法によって形成されるラウドスピーカ構造。
【請求項45】
請求項44のラウドスピーカ構造を組み込む電子デバイス。
【請求項46】
ラウドスピーカアセンブリと外側ハウジング部材とを有するポータブル電子デバイスにおいて、前記外側ハウジング部材が前記ラウドスピーカアセンブリのための音響放射体を形成することを特徴とする、ポータブル電子デバイス。
【請求項47】
ラウドスピーカアセンブリと外側ハウジング部材とを有する携帯電話において、前記外側ハウジング部材が前記ラウドスピーカアセンブリのための音響放射体を形成することを特徴とする、携帯電話。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2009−513051(P2009−513051A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536129(P2008−536129)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003929
【国際公開番号】WO2007/045908
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(508122057)エスエフエックス テクノロジーズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】