説明

カウルトップカバーの取付構造

【課題】合成樹脂で一体成形するカウルトップカバーのフロントウインドシールドパネルに取り付ける後端部の変形を抑える。
【解決手段】カウルトップカバー1の後端部27は、フロントウインドシールドパネル7の表面を覆うパネル部29と、フロントウインドシールドパネル7の裏面に接触してパネル部29との間でフロントウインドシールドパネル7を挟持するクリップ部33と、車幅方向に沿って複数設けたクリップ部33相互を接続する平板形状の薄板部33とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後端部をフロントウインドシールドパネルの下端部に取り付けるカウルトップカバーの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カウルトップカバーの後端部をフロントウインドシールドパネルの下端部に取り付ける構造としては、カウルトップカバーの後端部に車幅方向の全長にわたり設けたクリップや嵌合溝によって、フロントウインドシールドパネルの下端部における車幅方向のほぼ全長に対し上下両側から挟持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3919388号公報
【特許文献2】実開平1−144107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した従来のカウルトップカバーの取付構造では、カウルトップカバーを合成樹脂で一体成形する際に、成形時の一次収縮によって、車幅方向の全長にわたり延設されているクリップ部や嵌合溝部に歪みが発生しやすく、また温度変化時の体積収縮・膨張時や、単品での保管時や輸送時での自重による負荷を受ける状況下でも、これらクリップ部や嵌合溝部に変形が発生しやすいものとなっている。
【0005】
このようにフロントウインドシールドパネルの下端部に取り付けるカウルトップカバーの後端部が変形してしまうと、フロントウインドシールドパネルの曲率と合わなくなり、この曲率の差分によりカウルトップカバーとフロントウインドシールドパネルとの間に隙間が発生して車両品質が低下したり、隙間が発生したまま無理に取り付けると、フロントウインドシールドパネルが無理な負荷を受ける恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、合成樹脂で成形するカウルトップカバーのフロントウインドシールドパネルに取り付ける後端部の変形を抑えることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、後端部をフロントウインドシールドパネルの下端部に取り付けるカウルトップカバーの取付構造において、前記カウルトップカバーの後端部に、前記フロントウインドシールドパネルの下端部の表面を覆って車幅方向に延設される表面部と、この表面部の前記延設方向に沿った複数箇所にて前記フロントウインドシールドパネルの下端部を、前記表面部との間で挟持するクリップ部と、この複数のクリップ部相互を連結しつつ前記表面部よりも薄肉でかつ前記フロントウインドシールドパネルに対して離間している薄板部と、を設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のカウルトップカバーの取付構造において、前記薄板部は、外部から浸入する水を受ける水受け部を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載のカウルトップカバーの取付構造において、前記複数のクリップ部のうちの少なくとも一つに、前記水受け部に溜まった水を下方に排出する水排出孔を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載のカウルトップカバーの取付構造において、前記複数のクリップ部のうちの少なくとも一つの下端面を、前記薄板部の下端面よりも下方に突出させたことを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項2に記載のカウルトップカバーの取付構造において、前記複数のクリップ部のうちの少なくとも一つは、前記薄板部と別体に形成されて前記フロントウインドシールドパネルの下端部に接触する接触部を有するクリップ部本体と、前記薄板部に一体化されて前記クリップ部本体が取り付けられるクリップ部本体取付部とを有し、前記クリップ部本体の接触部は前記薄板部の水受け部側に突出し、前記クリップ部本体取付部は、前記水受け部の前記後端部側の開口と同方向に開口して該開口から前記クリップ部本体が挿入されることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項2に記載のカウルトップカバーの取付構造において、前記複数のクリップ部のうちの少なくとも一つは、前記薄板部に対し回動連結部を介して回動可能となるよう一体に形成されて前記フロントウインドシールドパネルの下端部に接触する接触部を有するクリップ部本体を備え、このクリップ部本体は、前記水受け部内の空間を形成する前記後端部側の開口側からスライド移動するスライド型によって成形されるとともに、この成形状態から前記回動連結部を介して前記水受け部内の空間側に回動させた状態で前記接触部が水受け部側に突出し、この突出状態の前記接触部と前記表面部とで前記フロントウインドシールドパネルの下端部を挟持するときのフロントウインドシールドパネルからの反力を受ける反力受け部を備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6に記載のカウルトップカバーの取付構造において、前記反力受け部は、前記薄板部に係合する係合爪部で構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項6に記載のカウルトップカバーの取付構造において、前記反力受け部は、前記クリップ部本体が前記回動連結部を介して前記水受け部内の空間側に回動して前記薄板部上に載置されたときの薄板部に対向する対向面で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、カウルトップカバーは、車幅方向に延設される表面部と、クリップ部相互間を連結する薄板部とにより、車幅方向に連続する長尺状となって製品剛性を維持しつつ、クリップ部相互を、表面部よりも薄肉の薄板部により連結しているので、合成樹脂で成形するカウルトップカバーのフロントウインドシールドパネルに取り付ける後端部の変形、すなわち、成形時の一次収縮や、温度変化時の体積収縮・膨張時あるいは、単品での保管時,輸送時での自重による負荷を受ける状況下での変形を抑えることができる。
【0016】
カウルトップカバー後端部の変形を抑えることで、カウルトップカバーとフロントウインドシールドパネルとの間の隙間発生を抑え、車両品質の低下を防止しかつフロントウインドシールドパネルに無理な負荷がかからないようにすることができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、薄板部に備えられた水受け部が外部から浸入する水を受けることで、その下方に位置する他の部品が水を被ることを防止できる。
【0018】
請求項3の発明によれば、クリップ部を、下方の部品に対し水平方向にずれた位置となるように、カウルトップカバーの車幅方向適宜位置に設定することで、上記部品が水を被ることを防止できる。
【0019】
請求項4の発明によれば、水受け部に溜まった水は、薄板部の下端面よりも下方に突出させたクリップ部の水排出孔から、分散させることなくそのまま下方に落下させることができ、このため該クリップ部を下方の部品から水平方向にずれた位置に設定することで、上記部品が水を被ることをより確実に防止できる。
【0020】
請求項5の発明によれば、クリップ部本体を薄板部と別体に形成することで、成形時にクリップ部の設定部位に水排出孔となる貫通孔が形成されることなく、フロントウインドシールドパネルの下端部に接触する接触部が水受け部側に突出するクリップ部を構成することができる。
【0021】
上記接触部が水受け部側に突出した形状で薄板部と一体の場合には、薄板部と表面部との間の空間を形成するためのスライド型を、薄板部に対して上下方向に貫通する貫通孔を形成する方向にスライドさせる必要があり、クリップ部の設定部位に上下方向の貫通孔が形成されてしまう。
【0022】
このため、上記クリップ部設定部位の下方に、被水させたくない部品が配置してある場合に、クリップ部本体を薄板部に対して別体とする構成であれば、貫通孔を塞ぐためのテープなどの部品が不要となる。
【0023】
請求項6の発明によれば、接触部が水受け部側に突出する状態で、該水受け部内の空間を形成するためのスライド型によってクリップ部本体を成形することができる。成形後は、クリップ部本体を、回動連結部を中心として回動させて接触部を水受け部側に突出させ、この状態で反力受け部がフロントウインドシールドパネルからの反力を受けることになる。
【0024】
これにより、請求項5と同様に、クリップ部設定部位の下方に、被水させたくない部品が配置してある場合に、貫通孔を塞ぐためのテープなどの部品が不要となる。
【0025】
請求項7の発明によれば、係合爪部を薄板部に係合させることで、カウルトップカバー後端部の表面部とクリップ部本体の接触部とでフロントウインドシールドパネルの下端部を挟持するときに、フロントウインドシールドパネルからの反力を係合爪部で受けることができる。
【0026】
請求項8の発明によれば、クリップ部本体を薄板部上に載置することで、カウルトップカバー後端部の表面部とクリップ部本体の接触部とでフロントウインドシールドパネルの下端部を挟持するときに、フロントウインドシールドパネルからの反力を対向面で受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わるカウルトップカバーの取付構造を示す、図2のA−A断面図である。
【図2】図1のカウルトップカバーの取付構造周辺を示す車両の斜視図である。
【図3】図1のカウルトップカバー単品の平面図である。
【図4】(a)は図3のB−B断面図、(b)は図3のC−C断面図である。
【図5】図1のカウルトップカバーの一部を裏側から見た斜視図である。
【図6】(a)は図3のD−D断面図、(b)は(a)に対しカウルトップカバーの上面が凹曲面となるように変形した場合を示す作用説明図、(c)は(a)に対しカウルトップカバーの上面が凸曲面となるように変形した場合を示す作用説明図である。
【図7】カウルトップカバーの薄板部がパネル部に対して開くように荷重を受けて変形した状態を示す作用説明図である。
【図8】(a)は、雨水などの水がフロントウインドシールドパネルを伝わりカウルトップカバーの薄板部で受ける状態を示す作用説明図、(b)は薄板部で受けた水をクリップ部の貫通孔から排水する状態を示す作用説明図である。
【図9】クリップ部に排水用の貫通孔のない構造を第1例として示す、図4(a)に対応する断面図である。
【図10】(a)は図9に対応する第1例の斜視図、(b)は(a)の分解斜視図である。
【図11】図12の底面図である。
【図12】図9のクリップ部本体を外した状態の斜視図である。
【図13】(a)はクリップ部に排水用の貫通孔のない構造を第2例として示す、図4(a)に対応する断面図、(b)は第2例の成形後の状態を示す断面図、(c)は(b)のE矢視図である。
【図14】(a)は図13(a)に対応する第3例の断面図、(b)は(a)のF矢視図である。
【図15】(a)は第3例の成形後の状態を示す断面図、(b)は(a)のG矢視図である。
【図16】(a)は図13(b)に対応する第4例の断面図、(b)は第4例の斜視図である。
【図17】(a)は第4例の組み立て後の斜視図、(b)は同断面図である。
【図18】(a)は図13(b)に対応する第5例の断面図、(b)は第5例の斜視図である。
【図19】(a)は第5例の組み立て後の斜視図、(b)は(a)のU−U断面図である。
【図20】(a)は図13(b)に対応する第6例の断面図、(b)は第6例の斜視図である。
【図21】(a)は第6例の組み立て途中の斜視図、(b)は組み立て後の車両セット時の断面図である。
【図22】クリップ部の貫通孔をテープにより塞いだ状態を示す斜視図である。
【図23】本発明の第2の実施形態に係わるカウルトップカバーの取付構造を示す、図6(a)に相当する断面図である。
【図24】本発明の第3の実施形態に係わるカウルトップカバーの取付構造を示す、図22に相当する斜視図である。
【図25】本発明の第4の実施形態に係わるカウルトップカバーの取付構造を示すもので、(a)は図4(b)に相当する断面図、(b)は図5に相当する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0029】
図1は、本発明の第1の実施形態に係わるカウルトップカバーの取付構造を示す、図2のA−A断面図であり、以後説明する各図において矢印FRで示す方向が車両前方、矢印UPで示す方向が車両上方、矢印LHで示す方向が車両左方である。
【0030】
カウルトップカバー1は、合成樹脂で一体成形され、エンジンルーム3の上部開口を覆うフード5と、フロントウインドシールドパネル7との間に位置して車幅方向に延設され、エアボックスとして機能するカウルトップパネル9の上部開口を覆っている。カウルトップパネル9は、エンジンルーム3と車室内空間11とを仕切るダッシュパネル13に車両後端部9aを取り付け、車両前端部9bをカウルトップカバー1の車両前方側の下方突出部15に取り付けている。
【0031】
また、カウルトップカバー1の下方突出部15よりも車両前方側の端部19上にはシール用ラバー21を取り付け、そのシール用ラバー21上に閉時のフード5が圧接する。なお、図中の符号22はワイパであり、また図2では図1に示してあるフード5を省略している。
【0032】
一方、フロントウインドシールドパネル7は、シール剤23を介してダッシュパネル13の上部に圧接され、下端部7aを除く周縁が車体に固定されている。なお、図2中の符号25はフェンダカバーであり、このフェンダカバー25は、下端部がカウルトップカバー1の車幅方向両端における車両後端側の上部を覆うようにして車体に取り付けてある。
【0033】
次に、上記したカウルトップカバー1における、フロントウインドシールドパネル7の下端部7aに取り付けられる後端部27の形状について説明する。
【0034】
図3は、カウルトップカバー1単品の平面図で、図3のB−B断面図が図4(a)であり、図4(a)は、図1の後端部27を拡大した図に相当する。図4(b)は、図3のC−C断面図である。ただし、図4(a),(b)ともに、図3のB−B断面図,C−C断面図を時計方向にほぼ90度回転した状態で示し、車両上下方向に合わせている。
【0035】
図4(a)に示すように、カウルトップカバー1の後端部27は、車両後方側が前方側よりも上下方向で高い位置となるように、全体がフロントウインドシールドパネル7とほぼ平行に傾斜する表面部としてのパネル部29を備えている。このパネル部29は、車幅方向全長にわたり延設されており、その後端29a付近が内側にやや屈曲してフロントウインドシールドパネル7の表面に接触している。その際、この接触部近傍のパネル部29とフロントウインドシールドパネル7との間に、シール材31を設けている。
【0036】
パネル部29における車幅方向適宜位置の複数箇所の下方には、パネル部29との間でフロントウインドシールドパネル7の下端部7aを挟持するようにして該下端部7aに取り付けられるクリップ部33を一体的に備えている。クリップ部33は、上記したパネル部29の下面に連続して下方に延びる前壁35と、前壁35よりも車両後方に位置してフロントウインドシールドパネル7の裏面に先端の接触部37aが接触する後壁37と、これら前壁35及び後壁37の下部側相互の車幅方向両端を車両前後方向に接続して一体化する左右一対の側壁部39とを、備えている。
【0037】
上記したクリップ部33は、これら前壁35,後壁37及び一対の側壁部39により、カウルトップカバー1の一部を裏側から見た斜視図である図5に示すように、内部に直方体形状の水排出孔としての貫通孔41が上下方向に貫通して形成される。また、これら前壁35,後壁37及び一対の側壁部39の下端面は、互いに同一面となる底面43を形成しており、この同一面となる底面43は、段差がなく滑らかで車両前方側が後方よりも下方となるよう傾斜している。
【0038】
なお、図4(a)及び図5中の符号45は補強用リブである。
【0039】
そして、このようなクリップ部33は車幅方向に沿って適宜間隔で複数設定してあり、これら各クリップ部33相互間には、互いに隣接する各クリップ部33相互を連結するように、パネル部29よりも薄肉で形成した薄板部47を設けている。薄板部47は、パネル部29の下面からクリップ部33の前壁35とほぼ平行に下方に向けて延びる薄板前壁47aと、薄板前壁47aの下端からクリップ部33の底面43とほぼ平行に車両後方に向けて延びる薄板底壁47bとを備えて、断面ほぼL字形状を呈している。この薄板底壁47bの後端47b1は、薄板底壁47b全体を含めて図4(b)に示すようにフロントウインドシールドパネル7に対して離間している。
【0040】
上記した薄板部47の車幅方向端部は、クリップ部33の側壁部39の上端39aに連続しており、したがって、図4(b)に示す薄板部47の上部空間48はクリップ部33の貫通孔41に連続している。
【0041】
次に、上記したカウルトップカバー1の機能について説明する。図6(a)は、図3のD−D断面図で、カウルトップカバー1に負荷が作用していない自然な状態を示す。この状態から、例えば、温度変化時の体積収縮・膨張時あるいは、単品での保管時,輸送時での自重による負荷を受ける状況下において、図6(b)に示すようにパネル部29の上面が凹曲面となるように、カウルトップカバー1全体が反り方向に負荷を受けて変形しようとした場合には、薄板部47がクリップ部33相互間で突っ張るようにして材料の圧縮強度により上記変形に対抗して変形を防ぐことができる。
【0042】
材料の特性上引っ張り方向の力に対しては、強い特性を有しているため、薄肉とした薄板部47であっても、上記した変形に対抗する充分な力を発揮することができる。
【0043】
一方、図6(c)に示すようにパネル部29の上面が凸曲面となるように、上記反り方向と反対の閉じ方向に、上記した理由により負荷を受けて変形しようとした場合には、薄板部47がクリップ部33相互間でつっかえ棒のように機能し、材料の圧縮強度によって上記変形に対抗して変形を防ぐことができる。
【0044】
この場合には、薄板部47を薄板前壁47aと薄板底壁47bとで断面ほぼL字形状に形成することで座屈強度を高めており、上記した変形に対抗する充分な力を発揮することができる。
【0045】
薄板部47は、以上の機能を発揮することで、カウルトップカバー1のフロントウインドシールドパネル7に対する合わせ部の形状を維持することができ、後端部27の変形を抑えることができる。
【0046】
また、本実施形態によるカウルトップカバー1は、合成樹脂で一体成形する際に、クリップ部33相互を、薄板部47により接続して車幅方向に連続する長尺状となって製品剛性を維持しつつ、薄板部47をパネル部29より薄肉としているので、薄板部47に対応する部位もパネル部29と同様に厚肉とした場合に比較して、後端部27における成形時の一次収縮を抑えることができる。
【0047】
すなわち、本実施形態によるカウルトップカバー1は、車幅方向に延設されてフロントウインドシールドパネル7の表面を覆うパネル部29と、クリップ部33相互間を連結する薄板部47とにより、車幅方向に連続する長尺状となって製品剛性を維持しつつ、クリップ部33相互を、パネル部29よりも薄肉の薄板部47により連結しているので、合成樹脂で成形するカウルトップカバー1のフロントウインドシールドパネル7に取り付ける後端部27の変形、すなわち、成形時の一次収縮や、温度変化時の体積収縮・膨張時あるいは、単品での保管時,輸送時での自重による負荷を受ける状況下での変形を抑えることができる。
【0048】
したがって、本実施形態では、カウルトップカバー1の後端部27の変形を抑えているので、カウルトップカバー1とフロントウインドシールドパネル7との間の隙間発生を回避でき、車両品質の低下を防止できるとともに、フロントウインドシールドパネル1に無理な負荷がかからないようにすることができる。
【0049】
また、本実施形態のカウルトップカバー1は、図7に示すように、薄板部47がパネル部29に対して離れるように開く方向(矢印Eで示す方向)に荷重を受けたときには、二点鎖線で示すように容易に変形する。このため、各グリップ部33が部分的にフロントウインドシールドパネル7を挟持する力に、薄肉部47の剛性が影響を与えることはほとんどなく、薄肉部47が後述する水受け部となる樋の機能があっても、フロントウインドシールドパネル7に対する嵌合力が過大となることはなく、フロントウインドシールドパネル7にかかる負荷を小さく抑えることができる。
【0050】
次に、薄板部47の樋の機能について説明する。図8(a)のように、雨水などの水Wがフロントウインドシールドパネル7を流下し、外部からフロントウインドシールドパネル7とカウルトップカバー1のパネル部29との隙間を通り、後端部27内に入り込んでしまった場合には、薄板前壁47aと薄板底壁47bとを有する薄板部47が樋のようにして上部空間48で水Wを受ける。すなわち、薄板部47は、外部から浸入する水を受ける水受け部を備えていることになる。
【0051】
そして、薄板部47が受けた水Wは、図8(b)に示すように、上部空間48に連続するクリップ部33の貫通孔41から下方に落下し、図1に示すカウルトップパネル9とカウルトップカバー1との間に形成されるエアボックス空間49内に排水される。この際、クリップ部33の下端面である底面43は、薄板部47の下端面である薄板底壁47bよりも下方に突出しているため、エアボックス空間49に排水された水Wが周囲に分散することなく、貫通孔41から確実に真下に落下させることができる。
【0052】
すなわち、カウルトップカバー1においてクリップ部33を設定した位置がそのまま排水位置となるので、エアボックス空間49に配置した、例えば外気導入用のブロワユニットやワイパ駆動装置などの他の部品である電装部品に対して、クリップ部33の設定位置を車幅方向にずらすことで、これら電装部品が水Wを被ることを回避でき、電装部品の故障を防ぐことができる。
【0053】
したがって、本実施形態では、カウルトップカバー1とは別に、別途専用の水受け部を設けることなく、カウルトップカバー1に一体化した薄板部47によって、電装部品の被水を避けることができ、別途専用の水受け部を設ける場合に比較して、コスト増大及び質量増加を抑えることができる。
【0054】
次に、部品レイアウトの都合上、クリップ部33の真下に電装部品を置かざるを得ないような場合の各種構造例を以下に説明する。
【0055】
まず、第1例として、クリップ部に対応する部位を図9に示すような構造とする。ここで図9は図4(a)に対応する断面図、図10(a)はフロントウインドシールドパネル7を省略した斜視図、図10(b)は図10(a)の分解斜視図である。
【0056】
上記第1例は、図4(a)に示すクリップ部33に設けたような水排出孔となる貫通孔41を設けずに、薄板部47の薄板底壁47bに、薄板部47とは別体のクリップ部本体63を、薄板部47と一体化しているクリップ部本体取付部65に取り付けている。
【0057】
クリップ部本体取付部65は、車両後方側が開口するボックス部を構成しており、薄板底壁47bの薄板前壁47a近傍から薄板前壁47aとほぼ平行に下方に延びる前壁65aと、車幅方向両側の側壁65bと、薄板底壁47bと平行に形成されて該薄板底壁47b及び左右の側壁65bとの間にボックス空間65cを形成する底壁65dとを備えている。
【0058】
そして、底壁65dには、上記車両後方の開口側から切り欠かれた切欠孔65eを設けてある。この切欠孔65eは、図11の底面図に示すように、開口側のガイド部65e1の奥側の端部にガイド部65e1の幅寸法より内径の大きな半円弧形状の固定部65e2を備えている。
【0059】
一方、クリップ部本体63は、図4(a)のクリップ部33における接触部37aに対応する接触部63aを備える突出部63bと、クリップ部本体取付部65のボックス空間65c内に入り込む挿入部63cと、切欠孔65eのガイド部65e1にガイドされて固定部65e2に入り込む軸部63dと、軸部63dの先端部に形成してある円形のフランジ部63eとをそれぞれ備えている。
【0060】
したがって、クリップ部本体63の軸部63dは、ガイド部65eに沿ってスライド移動させて固定部65e2に押し込むことで、固定部65e2に入り込み、これと同時に挿入部63cがボックス空間65c内に収容され、この状態で図9(a)のように突出部63bの接触部63aがフロントウインドシールドパネル7の裏面に接触した状態となる。この際、クリップ部本体63は、フロントウインドシールドパネル7の下端部7aに接触する接触部63aが、水受け部内の上部空間48に突出していることになる。
【0061】
このように、薄板部47の薄板底壁47bに一体化しているクリップ部本体取付部65に、薄板部47と別体のクリップ部本体63を取り付ける構造とすることで、部品レイアウトの都合上、クリップ部の真下に電装部品を置かざるを得ないような場合であっても、
該電装部品は水Wを被ることを回避できて故障を防ぐことができる。
【0062】
また、上記図9の構造を備えるカウルトップカバー1は、上部空間48側に突出する接触部63aを備えるクリップ部本体63を薄板部47と別体にしているので、カウルトップカバー1を樹脂成形する際に、図12に示すように、上部空間48を成形するスライド型67を利用して矢印P方向にスライドさせることで、水排出孔となる貫通孔を設けることなく、クリップ部本体63を取り付けるためのボックス空間65cも同時に成形することができる。
【0063】
前記した図4(a)の例では、薄板部47と一体のクリップ部33の接触部37aが、上部空間48側に突出しているので、上部空間48側の空間を成形するためにスライド型を下方に引き抜くようにスライドさせる必要があり、これにより水排出孔となる貫通孔41を形成している。
【0064】
図13は、上記図9の第1例に代わる第2例を示している。これは、クリップ部本体69が、その一部位である薄肉とした回動連結部としてのヒンジ部71を介して回動可能となるよう一体化している。なお、図13(a)におけるクリップ部本体69は、カウルトップカバー1の成形時には二点鎖線で示す位置にあり、成形後にヒンジ部71を中心として矢印Q方向に回動させて実線位置とすることで、使用状態となる。
【0065】
図13(b),(c)は成形時の状態を示しており、薄板部47の薄板底壁47bに厚肉部73を形成するとともに、厚肉部73の薄板前壁47aに対応する位置に薄板前壁47aと反対側の下方に突出する突起75を形成し、この突起75の先端に前記したヒンジ部71を設けている。また、図13(c)に示すように、厚肉部73の両側部には、突起75と先端部がほぼ同一位置ななる側壁部77を形成している。
【0066】
クリップ部本体69は、成形時にてヒンジ部71に突起75の突出方向と同方向に延設して連続する底板部69aを備え、底板部69aの先端には、フロントウインドシールドパネル7の裏面に接触する接触部69bを備える突出部69cを設けている。また、突出部69cの図13(b)中で上部の薄板部47側には、薄板底壁47bの先端47b1に係合する反力受け部としての係合爪部69dを設けている。
【0067】
図13(b)の形状となるようカウルトップカバー1を成形する際には、上部空間48を成形するスライド型79を前記図12のスライド型67と同様に矢印P方向にスライド移動させるとともに、係合爪部69dを成形するための下部スライド型81を下部の矢印R方向にスライド移動させることで、水排出孔となる貫通孔を設けることなく、クリップ部本体69を同時に成形することができる。
【0068】
このようにして成形したクリップ部本体69は、図13(a)に示したように、二点鎖線で示す成形時の位置から矢印Q方向にヒンジ部71を中心として90度回動させることで、係合爪部69dが薄板底壁47bの先端47b1に係合し、図13(a)の実線で示す使用状態となる。この際、クリップ部本体69は、フロントウインドシールドパネル7の下端部7aに接触する接触部69aが、水受け部内の上部空間48に突出することになる。
【0069】
したがって、この第2例においても、前記した第1例と同様に、部品レイアウトの都合上、クリップ部の真下に電装部品を置かざるを得ないような場合であっても、該電装部品は水Wを被ることを回避できて故障を防ぐことができる。その際、本第2例では、第1例のクリップ部本体63のように別部品として成形する必要がないので、製造コストを低く抑えることができるとともに、部品管理も容易となり、また成形後にクリップ部本体69を回動させるだけでよいので組み付け作業性も優れている。
【0070】
図14は、上記図13に示した第2例の変形例である第3例を示している。これは、クリップ部本体83が、カウルトップカバー1の成形時に二点鎖線で示す位置にあり、成形後に、図14(b)に示すように、回動連結部としてのヒンジ部85を中心として矢印Sの方向に回動させて実線位置とすることで、使用状態となる。
【0071】
図15(a),(b)は成形時の状態を示しており、薄板部47の薄板底壁47bに下方に突出する突起87を形成し、この突起87の先端に前記したヒンジ部85を設けている。
【0072】
クリップ部本体83は、図15の成形時にてヒンジ部85に突起87の突出方向と同方向に延設して連続する底板部83aを備え、底板部83aの先端には、フロントウインドシールドパネル7の裏面に接触する接触部83bを備える突出部83cを設けている。
【0073】
一方、薄板部47の薄板底壁47bには、上記突出部83cが挿入される嵌合孔47b2を設けてあり、嵌合孔47b2に突出部83cを挿入した状態で、嵌合孔47b2の周縁に係合する反力受け部としての係合爪部83dを、突出部83cの図15中で上部の薄板部47側に設けている。
【0074】
図15の形状となるようカウルトップカバー1を成形する際には、上部空間48を成形するスライド型89を前記図12のスライド型67と同様に矢印P方向にスライド移動させることで、水排出孔となる貫通孔を設けることなく、クリップ部本体83を同時に成形することができる。
【0075】
このようにして成形したクリップ部本体83は、図14(b)に示したように、二点鎖線で示す成形時の位置から矢印S方向にヒンジ部85を中心として90度回動させることで、係合爪部83dが嵌合孔47b2の周縁に係合し、図14の実線で示す使用状態となる。この際、クリップ部本体83は、フロントウインドシールドパネル7の下端部7aに接触する接触部83bが、水受け部内の上部空間48に突出することになる。
【0076】
したがって、この第3例においても、前記した第2例と同様に、部品レイアウトの都合上、クリップ部の真下に電装部品を置かざるを得ないような場合であっても、該電装部品は水Wを被ることを回避できて故障を防ぐことができ、また、第1例のクリップ部本体63のように別部品として成形する必要がないので、製造コストを低く抑えることができるとともに、部品管理も容易となり、成形後にクリップ部本体83を回動させるだけでよいので組み付け作業性も優れている。
【0077】
図16,図17は、上記図13に示した第2例の他の変形例である第4例を示しており、図16はカウルトップカバー1の成形時の状態を示し、図17は成形後の使用状態を示している。この例は、薄板部47の薄板底壁47bの先端縁に、薄板底壁47bからさらに前方(車両後方)に膨出する膨出部91を形成し、この膨出部91に、図16に示すように回動連結部としてのヒンジ部93を介してクリップ部本体95を一体化して設けている。
【0078】
成形後は、クリップ部本体95を図16中の矢印Tで示す方向にヒンジ部93を中心として回動させることで、図17に示す使用状態となる。このとき、膨出部91の上面に形成してある凹部91aにクリップ部本体95の一部が入り込むとともに、凹部91aに形成してある係合孔91bにクリップ部本体95の係合爪部95aが係合し、図17の使用状態となる。
【0079】
図17の使用状態でのクリップ部本体95は、同図(b)に示すように係合爪部95aと反対側の外周面を円弧形状としてあり、この円弧形状部95bの上端付近が、フロントウインドシールドパネル7の下端部7aに接触する接触部95cとなり、この接触部95cは水受け部内の上部空間48に突出することになる。また、上記図17の状態でクリップ部本体95は、上記した円弧形状部95bのヒンジ部93側の一側縁に連続する平面部95dが凹部91aの底面に対向する対向面となる。
【0080】
したがって、この第4例においても、前記した第2例及び第3例と同様の効果を有するほか、これら第2例及び第3例に比較してクリップ部本体95をコンパクトにできるので、成形後のカウルトップカバー1の取り扱い性が向上するとともに、組立作業性も向上する。
【0081】
図18,図19は、前記図13に示した第2例のさらに他の変形例である第5例を示しており、図18はカウルトップカバー1の成形時の状態を示し、図19は成形後の使用状態を示している。この例は、クリップ部本体97の全体の形状が、図16,図17に示した第4例のクリップ部本体95とほぼ同等である。
【0082】
第4例と異なる点は、クリップ部本体97が係合爪部95aに代わる係合凹部となるあり溝97aを備えていることである。あり溝97aは車両前後方向に延設しており、これに対応して薄板部47の薄板底壁47b及び膨出部91上に係合凸部99を形成している。
【0083】
そして、図19の使用状態でのクリップ部本体97は、前記図16,図17のクリップ部本体95と同様に、あり溝97aと反対側の外周面を円弧形状としてあり、この円弧形状部97bの上端付近が、フロントウインドシールドパネル7の下端部7aに接触する接触部97cとなり、この接触部97cは水受け部内の上部空間48に突出することになる。
【0084】
また、上記図19の使用状態でのクリップ部本体97は、上記した円弧形状部97bのヒンジ部93側の一側縁に連続する平面部97dが膨出部91や薄板底壁47bの上面に対向する対向面となる。
【0085】
したがって、この第5例においても、前記した第2例及び第3例と同様の効果を有するほか、これら第2例及び第3例に比較してクリップ部本体97をコンパクトにできるので、成形後のカウルトップカバー1の取り扱い性が向上するとともに、組立作業性も向上する。
【0086】
図20,図21は、前記図13に示した第2例のさらに別の他の変形例である第6例を示しており、図20はカウルトップカバー1の成形時の状態を示し、図21は成形後の使用状態を示している。この例は、図16,図17に示した第4例のクリップ部本体95と、クリップ部本体101の全体の形状がほぼ同等である。
【0087】
第4例と異なる点は、係合爪部95aに代えて仮保持部となる舌片状の仮保持アーム101aを備えていることである。仮保持アーム101aは、図20の成形時で示すように、薄板部47の薄板底壁47bに対して同一平面上にて前方(車両後方)に延出している。
【0088】
成形後は、クリップ部本体101を図20中の矢印Tで示す方向にヒンジ部93を中心として回動させて図21(a)の状態とする。このとき仮保持アーム101aは、カウルトップカバー1のパネル部29の裏面に押し付けられて弾性変形しつつ、薄板部47の薄板前壁47a近傍のパネル部29裏面に当接した仮保持状態となる。
【0089】
その後、図21(b)に示すように、フロントウインドシールドパネル7をカウルトップカバー1に組み付けるべく、その下端部7aを上部空間48内に挿入することで、仮保持アーム101aが押圧されて薄板底壁47b上にほぼ密着した使用状態となる。すなわち、このとき、クリップ部本体101の円弧形状部101bの上端付近が、フロントウインドシールドパネル7の下端部7aに接触する接触部101cとなり、この接触部101cは水受け部内の上部空間48に突出することになる。
【0090】
また、上記図21(b)の状態でクリップ部本体101は、上記した円弧形状部101bのヒンジ部93側の一側縁に連続する平面部101dが膨出部91や薄板底壁47bの上面に対向する対向面となる。
【0091】
したがって、この第6例においても、前記した第2例及び第3例と同様の効果を有するほか、これら第2例及び第3例に比較してクリップ部本体101をコンパクトにできるので、成形後のカウルトップカバー1の取り扱い性が向上するとともに、組立作業性も向上する。
【0092】
図22は、前記した部品レイアウトの都合上、クリップ部33の真下に電装部品を置かざるを得ないような場合の他の実施形態を示している。これは、該当する前記図1のクリップ部33の底面43に、テープ51などを貼付して貫通孔41を塞いでいる。クリップ部33の底面43は段差のない滑らかな平面となっているので、テープ51などの密着性が高く、容易かつ安価に貫通孔41を塞ぐことができる。
【0093】
図23は、本発明の第2の実施形態に係わるカウルトップカバーの取付構造を示す、前記図6(a)に相当する断面図である。この実施形態は、複数のクリップ部33の高さを変化させ、最も高さの高いクリップ部33の貫通孔41から排水するようにしている。
【0094】
すなわち、ここでは、図23に示されているカウルトップカバー1の一部における4つのクリップ部33のうち右から2番目のクリップ部33の高さ寸法αを最も高くし、その両側に位置する各クリップ部33の高さについては、車幅方向外側のものほど低くなるように、高さを徐々に変化させている。
【0095】
これに伴い、薄板部47の薄板底壁47bは、高さ寸法αが最も高いクリップ部33を中心として車幅方向外側ほど上方位置となるよう傾斜している。
【0096】
そして、この高さ寸法αが最も高いクリップ部33の貫通孔41を水排出孔として利用し、その他のクリップ部33の貫通孔41は前記図22に示したテープ51などで塞いておく。これにより、エアボックス空間49内に排水した水Wは、傾斜している薄板部47を流れて高さ寸法αが最も高いクリップ部33に集中し、該クリップ部33の貫通孔41から確実に排水することができる。
【0097】
したがって、この場合には、高さ寸法αが最も高いクリップ部33を、電装部品に対してずれた位置に設定することで、電装部品の被水を確実に防止することができる。
【0098】
図24は、本発明の第3の実施形態に係わるカウルトップカバーの取付構造を示す、前記図22に相当する斜視図である。この実施形態は、クリップ部33の下部周囲に底面43よりも下方に突出するとともに車幅方向両側に突出する膨出部53を一体的に設け、この膨出部53の円形の開口部53aをクリップ部33の貫通孔41に連通させる。
【0099】
そして、上記した膨出部53の車両後方側の縁部に薄肉ヒンジ55を介して蓋57を一体成形して設け、貫通孔41を水排出孔として使用しないクリップ部33については、該蓋57により開口部53aを塞ぐ一方、貫通孔41を水排出孔として使用するクリップ部33については、図24のように蓋57を開放しておく。
【0100】
しがたって、この実施形態においては、図22のテープ51を使用する例に比較して、貫通孔41を塞ぐ作業が容易となり、テープ51を使用しない分部品点数を削減できる。
【0101】
なお、上記膨出部53と一体の蓋57に代えて、部品点数の削減効果はなくなるが、別体の蓋59を用いてもよい。
【0102】
図25は、本発明の第4の実施形態に係わるカウルトップカバーの取付構造を示すもので、(a)は前記図4(b)に相当する断面図、(b)は前記図5に相当する裏面斜視図である。この実施形態は、薄板部47の薄板前壁47aとパネル部29との間に隙間61を設けている。
【0103】
隙間61を設けることで、カウルトップカバー1全体の剛性を低くし、クリップ部33によるフロントウインドシールドパネル7を押さえ付ける力を弱くして、フロントウインドシールドパネル7に作用する負荷を小さくすることができる。
【0104】
なお、上記した隙間61を設ける領域を車幅方向に沿って適宜変更することで、カウルトップカバー1全体の剛性を調整でき、クリップ部33によるフロントウインドシールドパネル7を押さえ付ける力を調整することができる。
【0105】
また、本発明の実施形態において、さらに変形(バリエーション)が可能である。例えば図25におけるほぼ一定の板厚に形成したパネル部29からフロントウインドシールドパネル7に向けて屈曲する先端部29a部分に変形可能な構造を適用することもできる。
【0106】
すなわち、先端部29aの例えば屈曲点にV字状のノッチを設け、そのノッチよりも先端の部分を、パネル部29の一般部よりも薄くかつノッチのボトム部の残厚みよりいくらか厚肉のリップ片として、ノッチから先の部分を屈曲変形部としてフロントウインドシールドパネル7に弾接させるようにしてもよい。あるいは、パネル部29の一般部に対して先端部29aを薄肉の一定厚として同様に弾接させるようにしてもよい。
【0107】
これにより、フロントウインドシールドパネル7と先端部29aとの隙間調整が容易となって、外観品質(見栄え)を向上できる。
【符号の説明】
【0108】
1 カウルトップカバー
7 フロントウインドシールドパネル
7a フロントウインドシールドパネルの下端部
27 カウルトップカバーの後端部
29 カウルトップカバーのパネル部(表面部)
33 カウルトップカバーのクリップ部
41 クリップ部の貫通孔(水排出孔)
43 クリップ部の底面(クリップ部の下端面)
47 カウルトップカバーの薄板部
47a 薄板前壁(水受け部)
47b 薄板底壁(水受け部,薄板部の下端面)
48 上部空間(水受け部内の空間)
63 薄板部と別体のクリップ部本体
63a クリップ部本体の接触部
65 クリップ部本体取付部
69,83,95,97,101 薄板部と一体のクリップ部本体
69b,83b,95c,97c,101c クリップ部本体の接触部
69d,83d 係合爪部(反力受け部)
71,85,93 ヒンジ部(回動連結部)
79,89 スライド型
95d,97d,101d 平面部(対向面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端部をフロントウインドシールドパネルの下端部に取り付けるカウルトップカバーの取付構造において、前記カウルトップカバーの後端部に、前記フロントウインドシールドパネルの下端部の表面を覆って車幅方向に延設される表面部と、この表面部の前記延設方向に沿った複数箇所にて前記フロントウインドシールドパネルの下端部を、前記表面部との間で挟持するクリップ部と、この複数のクリップ部相互を連結しつつ前記表面部よりも薄肉でかつ前記フロントウインドシールドパネルに対して離間している薄板部と、を設けたことを特徴とするカウルトップカバーの取付構造。
【請求項2】
前記薄板部は、外部から浸入する水を受ける水受け部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のカウルトップカバーの取付構造。
【請求項3】
前記複数のクリップ部のうちの少なくとも一つに、前記水受け部に溜まった水を下方に排出する水排出孔を設けたことを特徴とする請求項2に記載のカウルトップカバーの取付構造。
【請求項4】
前記複数のクリップ部のうちの少なくとも一つの下端面を、前記薄板部の下端面よりも下方に突出させたことを特徴とする請求項3に記載のカウルトップカバーの取付構造。
【請求項5】
前記複数のクリップ部のうちの少なくとも一つは、前記薄板部と別体に形成されて前記フロントウインドシールドパネルの下端部に接触する接触部を有するクリップ部本体と、前記薄板部に一体化されて前記クリップ部本体が取り付けられるクリップ部本体取付部とを有し、前記クリップ部本体の接触部は前記薄板部の水受け部側に突出し、前記クリップ部本体取付部は、前記水受け部の前記後端部側の開口と同方向に開口して該開口から前記クリップ部本体が挿入されることを特徴とする請求項2に記載のカウルトップカバーの取付構造。
【請求項6】
前記複数のクリップ部のうちの少なくとも一つは、前記薄板部に対し回動連結部を介して回動可能となるよう一体に形成されて前記フロントウインドシールドパネルの下端部に接触する接触部を有するクリップ部本体を備え、このクリップ部本体は、前記水受け部内の空間を形成する前記後端部側の開口側からスライド移動するスライド型によって成形されるとともに、この成形状態から前記回動連結部を介して前記水受け部内の空間側に回動させた状態で前記接触部が水受け部側に突出し、この突出状態の前記接触部と前記表面部とで前記フロントウインドシールドパネルの下端部を挟持するときのフロントウインドシールドパネルからの反力を受ける反力受け部を備えていることを特徴とする請求項2に記載のカウルトップカバーの取付構造。
【請求項7】
前記反力受け部は、前記薄板部に係合する係合爪部で構成されていることを特徴とする請求項6に記載のカウルトップカバーの取付構造。
【請求項8】
前記反力受け部は、前記クリップ部本体が前記回動連結部を介して前記水受け部内の空間側に回動して前記薄板部上に載置されたときの該薄板部に対向する対向面で構成されていることを特徴とする請求項6に記載のカウルトップカバーの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−167952(P2010−167952A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13412(P2009−13412)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】