説明

カウルルーバ構造

【課題】オーバーハング部を有しかつ車両幅方向に分割された場合にもエンジンルーム内への雨水等の浸入を効果的に抑制又は確実に防止することができるカウルルーバ構造を得る。
【解決手段】カウルルーバ10は左右に分割されかつオーバーハング部32、34を有しており、左右の合わせ部60に第1仕切り壁54A、58Aを隣接して配置し、右側流路52Aには第1排水孔56を設け、中間流路52Cには第3排水孔64を設け、左側流路52Bには第2排水孔62を設けた。従って、各流路52A、52B、52Cに溜まった雨水等は第1排水孔56、第3排水孔64、第2排水孔62からカウル内へ排水されると共に、合わせ部60からの雨水等の浸入を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインドシールドガラスの下端部からフードの後端部にかけて車両幅方向に配設されかつ車両幅方向に分割されたカウルルーバ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ウインドシールドガラスの下端部とフードの後端部との間には、カウルルーバが配設されている。かかるカウルルーバは車両幅方向に長尺状とされているため、左右分割構造とすることが多い(下記特許文献参照)。
【特許文献1】特開平10−119821号公報
【特許文献2】特開平10−45035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、車両デザインの観点からフードの後端部を車両前方側へずらした車両デザインが採用されることがある。その場合、カウルの前端部をフードの後端部まで延ばすオーバーハング構造にすることが検討されている。しかし、カウルルーバをオーバーハング構造にすると、左右合わせ部の隙間から雨水等がカウル内部に滴下せずに、エンジンルーム内に浸入し易くなる。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、オーバーハング部を有しかつ車両幅方向に分割された場合にもエンジンルーム内への雨水等の浸入を効果的に抑制又は確実に防止することができるカウルルーバ構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明に係るカウルルーバ構造は、ウインドシールドガラスの下端部からフードの後端部にかけて車両幅方向に配設されるカウルルーバ構造であって、前記カウルルーバは車両幅方向に複数個に分割されたものを相互に連結することにより構成されていると共に、カウル前部からフードの後端部にかけて車両前方側へ延出されかつ片持ち支持されたオーバーハング部を有し、前記オーバーハング部を構成する複数の分割体に車両幅方向に沿った流路をそれぞれ設け、さらに、当該分割体に当該流路とカウル内とを連通する排水手段を設けた、ことを特徴としている。
【0006】
請求項2記載の本発明に係るカウルルーバ構造は、請求項1記載の発明において、前記分割体の流路の合わせ部に車両上方側へ立ち上がる仕切り壁を互いに隣接するように設けた、ことを特徴としている。
【0007】
請求項3記載の本発明に係るカウルルーバ構造は、請求項2記載の発明において、前記合わせ部に互いに隣接して配置された左右一対の仕切り壁の一方の仕切り壁からは、他方の仕切り壁の上方を覆うように車両幅方向に張り出されてカウルルーバの上部側での分割位置を当該合わせ部に対して車両幅方向へずらす張り出し部が設けられている、ことを特徴としている。
【0008】
請求項4記載の本発明に係るカウルルーバ構造は、請求項3記載の発明において、前記他方の仕切り壁を有する分割体における前記カウルルーバの上部側での分割位置付近には車両下方側へ屈曲する屈曲部が形成されており、当該屈曲部の下方には当該分割体から車両上方側へ立ち上がり当該屈曲部に対して車両上下方向に略連続する別の仕切り壁を設けた、ことを特徴としている。
【0009】
請求項5記載の本発明に係るカウルルーバ構造は、請求項4記載の発明において、前記別の仕切り壁の近傍でかつ前記張り出し部の下方側に、前記他方の仕切り壁を有する分割体の前記排水手段を配置した、ことを特徴としている。
【0010】
請求項6記載の本発明に係るカウルルーバ構造は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記張り出し部は車両幅方向に階段状に形成されており、更に下面側に張り出し部の張り出し端側から浸入して当該下面を伝う雨水等を堰き止める水切り部を設けた、ことを特徴としている。
【0011】
請求項1記載の本発明では、カウルルーバは車両幅方向に複数個に分割されたものを相互に連結することにより構成されており、更にカウル前部からフードの後端部にかけて車両前方側へ延出されかつ片持ち支持されたオーバーハング部を有することを前提としている。
【0012】
ここで、本発明では、オーバーハング部を構成する複数の分割体に車両幅方向に沿った流路をそれぞれ設け、さらに、当該分割体に当該流路とカウル内とを連通する排水手段を設けたので、オーバーハング部に溜まった雨水等は分割体ごとに設けられた流路に沿って車両幅方向に流れ、各分割体に設けられた排水手段からカウル内へと排水される。つまり、分割体単位でカウルへの排水経路を確保することにより、オーバーハング部から雨水等がオーバーフローしてエンジンルーム内へ浸入するのを防止することができる。特に、各分割体の合わせ部に雨水等が集中するのを回避することができ、合わせ部からエンジンルーム内への雨水等の浸入を効果的に抑制することができる。
【0013】
請求項2記載の本発明によれば、分割体の流路の合わせ部に車両上方側へ立ち上がる仕切り壁を互いに隣接するように設けたので、オーバーハング部に溜まった雨水等は確実に仕切り壁で堰き止められて排水手段から排水される。
【0014】
請求項3記載の本発明によれば、分割体の合わせ部に互いに隣接して配置された左右一対の仕切り壁の一方の仕切り壁から、他方の仕切り壁の上方を覆うように車両幅方向に張り出してカウルルーバの上部側での分割位置を当該合わせ部に対して車両幅方向へずらす張り出し部を設けたので、オーバーハング部に降り注いだ雨水等はカウルルーバの上部側での分割位置から流路内へ入り込むことになる。すなわち、本発明によれば、合わせ部が雨水等を直接被水するのを避けることができる。
【0015】
請求項4記載の本発明によれば、他方の仕切り壁を有する分割体におけるカウルルーバの上部側での分割位置付近には、車両下方側へ屈曲する屈曲部が形成されている。そして、当該屈曲部の下方には、当該分割体から車両上方側へ立ち上がり当該屈曲部に対して車両上下方向に略連続する別の仕切り壁を設けたので、カウルルーバの上部側での分割位置から浸入した雨水等は、屈曲部を伝ってからこれと略連続する別の仕切り壁へと伝っていく。すなわち、屈曲部の内側へ雨水等が回り込むのを抑制することができる。
【0016】
請求項5記載の本発明によれば、上記別の仕切り壁の近傍で張り出し部の下方側に、他方の仕切り壁を有する分割体の排水手段を配置したので、屈曲部及び別の仕切り壁を伝った雨水等は、ダイレクトに排水手段へ流入してカウル内へ排水される。
【0017】
請求項6記載の本発明によれば、張り出し部は車両幅方向に階段状に形成されており、更に下面側に水切り部を設けたので、張り出し部の張り出し端側から浸入して当該張り出し部の下面を伝う雨水等は水切り部によって確実に堰き止められる。従って、当該張り出し部の下面を伝う雨水等が合わせ部に近づくのを阻止することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係るカウルルーバ構造は、カウルルーバは車両幅方向に複数個に分割されたものを相互に連結することにより構成されていると共に、カウル前部からフードの後端部にかけて車両前方側へ延出されかつ片持ち支持されたオーバーハング部を有しており、オーバーハング部を構成する複数の分割体に車両幅方向に沿った流路をそれぞれ設け、さらに、当該分割体に当該流路とカウル内とを連通する排水手段を設けたので、分割体単位でカウルへの排水経路を確保することができ、その結果、オーバーハング部を有しかつ車両幅方向に分割された場合にもエンジンルーム内への雨水等の浸入を効果的に抑制又は確実に防止することができるという優れた効果を有する。
【0019】
請求項2記載の本発明に係るカウルルーバ構造は、請求項1記載の発明において、分割体の流路の合わせ部に車両上方側へ立ち上がる仕切り壁を互いに隣接するように設けたので、オーバーハング部に溜まった雨水等を確実に仕切り壁で堰き止めて排水手段から排水することができ、その結果、合わせ部における止水機能を強化することができるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項3記載の本発明に係るカウルルーバ構造は、請求項2記載の発明において、分割体の合わせ部に互いに隣接して配置された左右一対の仕切り壁の一方の仕切り壁から、他方の仕切り壁の上方を覆うように車両幅方向に張り出してカウルルーバの上部側での分割位置を当該合わせ部に対して車両幅方向へずらす張り出し部を設けたので、合わせ部が雨水等を直接被水するのを避けることができ、その結果、合わせ部における防水機能を強化することができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項4記載の本発明に係るカウルルーバ構造は、請求項3記載の発明において、他方の仕切り壁を有する分割体におけるカウルルーバの上部側での分割位置付近には車両下方側へ屈曲する屈曲部が形成されており、当該屈曲部の下方には当該分割体から車両上方側へ立ち上がり当該屈曲部に対して車両上下方向に略連続する別の仕切り壁を設けたので、屈曲部の内側へ雨水等が回り込むのを抑制することができ、予め設定した排水経路が変更されるのを防止することができるという優れた効果を有する。
【0022】
請求項5記載の本発明に係るカウルルーバ構造は、請求項4記載の発明において、上記別の仕切り壁の近傍で張り出し部の下方側に、他方の仕切り壁を有する分割体の排水手段を配置したので、屈曲部及び別の仕切り壁を伝った雨水等をダイレクトに排水手段へ流入させてカウル内へ排水することができ、その結果、オーバーハング部から雨水等がオーバーフローする可能性を一段と低くすることができるという優れた効果を有する。
【0023】
請求項6記載の本発明に係るカウルルーバ構造は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の発明において、張り出し部は車両幅方向に階段状に形成されており、更に下面側に張り出し部の張り出し端側から浸入して当該下面を伝う雨水等を堰き止める水切り部を設けたので、当該張り出し部の下面を伝う雨水等が合わせ部に近づくのを阻止することができ、その結果、合わせ部における防水機能をより一層強化することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図1〜図6を用いて、本発明に係るカウルルーバ構造の一実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0025】
図4には、本実施形態に係るカウルルーバ10の分解斜視図が示されている。この図に示されるように、カウルルーバ10は、車両幅方向に沿って長尺状に形成された分割体としての右側ルーバ12と、右側ルーバ12の内端部に連結されて一体を成す分割体としての左側ルーバ14と、左側ルーバ14の前部に爪嵌合により被嵌されるカバー16と、各々長尺状に形成されて右側ルーバ12及び左側ルーバ14の上部にそれぞれビス締めにより固定される左右一対の雨樋18、20と、によって構成されている。なお、カウルルーバ10は、樹脂材料を用いてインジェクション成形することにより一体に形成されている。
【0026】
図3には、上記カウルルーバ10の組付状態の縦断面図が示されている。また、図2には、上記カウルルーバ10の構成部品の内、特に重要な右側ルーバ12及び左側ルーバ14の分割部分及び関連部品を簡略化して描いた拡大斜視図が示されている。これらの図に示されるように、カウルルーバ10は車両幅方向に長尺状とされており、ウインドシールドガラス22の下端部からエンジンルーム24を覆うフード26の後端部26Aにかけて配置されている。また、カウルルーバ10の右側ルーバ12、左側ルーバ14は、本体部28、30と、本体部28、30の前部下端側からフード26の後端部26Aの下面側へ向けて(フード26の後端部26Aを下から受けるように)車両前方側へ延出されると共に本体部28、30に片持ち支持されたオーバーハング部32、34と、によって構成されている。
【0027】
また、右側ルーバ12の本体部28の内端部の裏面には前後一対の樹脂クリップ36が一体に形成されており、これに対応して左側ルーバ14の本体部30の内端部には樹脂クリップ36が挿入可能な前後一対の係止孔38が形成されている。そして、右側ルーバ12の樹脂クリップ36が左側ルーバ14の係止孔38内へ車両上方側から差し込まれることにより、右側ルーバ12と左側ルーバ14とが車両幅方向に連結されている。
【0028】
さらに、右側ルーバ12、左側ルーバ14のオーバーハング部32、34は車両幅方向を長手方向とする略樋状に形成されており、その上部前端側のフランジ部32A、34Aの上面にはフード26の裏面に圧接されるシール材40(図3参照)が取り付けられている。また、オーバーハング部32、34の上部前端側のフランジ部32A、34Aの裏面は、ボディー側構成要素であるカウル40のカウルインナパネル44のフランジ部44Aの上面に、両面テープであるエプトシール46(図2参照)によって固着されている。
【0029】
なお、エプトシール46は、広義にはエプトシール46以外の接着材(剤)も含む概念である「接着材」として把握される要素である。さらに、オーバーハング部32、34の底部裏面側には樹脂クリップ48(図3参照)が一体に形成されており、カウルインナパネル44のフランジ部44Aに形成された左右一対の係止孔50(図2参照)内へ弾性的に係止されている。
【0030】
また、上記オーバーハング部32、34は、全体として樋状に形成されており、流入した雨水等を排水するための流路52とされている。流路52は、大別して右側ルーバ12側に形成される右側流路52Aと、左側ルーバ14側に形成される左側流路52Bと、左側ルーバ14の内端部に形成される中間流路52Cと、によって構成されている。
【0031】
ここで、図1及び図2に示されるように、上述した右側ルーバ12の内端部には、階段形状の右側仕切り部54が一体に形成されている。より詳しく説明すると、右側仕切り部54は、右側流路52Aの最内側から車両上方側へ(水勾配がつく程度に若干斜めに)立ち上げられた「一方の仕切り壁」としての第1仕切り壁54Aと、この第1仕切り壁54Aの上端部から左側ルーバ14側へ略水平に延出された第1延出部54Bと、この第1延出部54Bの左側ルーバ14側の端部から(水勾配がつく程度に若干斜めに)立ち上げられた第2仕切り壁54Cと、この第2仕切り壁54Cの上端部から左側ルーバ14側へ略水平に延出された第2延出部54Dと、によって構成されている。
【0032】
さらに、右側ルーバ12の奥側(車両後方側)のオーバーハング部32の後部壁32Bには、第1仕切り壁54Aに隣接する位置に、カウル40内へ連通する排水手段としての第1排水孔56が形成されている。この第1排水孔56は、右側流路52A内に溜まった雨水等の排水用に使用される。
【0033】
一方、左側ルーバ14の内端部には、右側仕切り部54の下側へ潜り込むように配置されかつ前述した中間流路52Cを形成する左側仕切り部58が一体に形成されている。より詳しく説明すると、左側仕切り部58は図2に示される如く略箱型形状に形成されており、組付状態で、右側ルーバ12の第1仕切り壁54Aと(エプトシール46の端末部46Aを介して)隣接して配置された「他方の仕切り壁」としての第1仕切り壁58Aと、この第1仕切り壁58Aから車両幅方向外側へ所定距離だけオフセットされた位置に立設された別の仕切り壁としての第2仕切り壁58Bと、第1仕切り壁58A及び第2仕切り壁58Bの前端部同士及び後端部同士を繋ぐ前部壁58C及び後部壁58D(図2参照)と、第2仕切り壁58Bの上端部から略水平に延出された第1延出部58Eと、この第1延出部58Eの外側の端部から略垂直に配置された第3仕切り壁58Fと、によって構成されている。
【0034】
右側ルーバ12の第1仕切り壁54Aと左側ルーバ14の第1仕切り壁58Aとは、右側及び左側のエプトシール46の各端末部46Aを二枚重ねの状態で挟持するようにして接合されており、この部分が右側ルーバ12に形成される右側流路52Aと左側ルーバ14に形成される中間流路52C(及び左側流路52B)との合わせ部60を構成している。
【0035】
また、左側ルーバ14のオーバーハング部34の奥側(車両後方側)の後部壁34Bには、第3仕切り壁58Fに隣接する位置に、カウル40内へ連通する排水手段としての第2排水孔62が形成されている。この第2排水孔62は、左側流路52B内に溜まった雨水等の排水用に使用される。さらに、左側ルーバ14の後部壁54Dには、第2仕切り壁58Bに隣接する位置に、カウル40内へ連通する排水手段としての第3排水孔64が形成されている。この第3排水孔64は、中間側流路52内に溜まった雨水等の排水用に使用される。
【0036】
また、組付状態では、左側ルーバ14の第1仕切り壁58Aの上方は、右側ルーバ12の第1延出部54Bによって覆われている。さらに、左側ルーバ14の左側流路52Bには、カバー16が被嵌されている。カバー16の内端部はL字状に形成されて屈曲部(水切りリブ)16Aとされており、左側ルーバ14の第2仕切り壁58Bの直上に僅かな隙間68をあけて車両上下方向に連続的に配置されている。さらに、右側ルーバ12の第2延出部54Dの延出端部は、カバー16の屈曲部16Aの近傍付近に僅かな隙間66をあけて車両幅方向に連続的に配置されている。これにより、カウルルーバ10の上部側での分割位置が、左右の第1仕切り壁54A、58Aによって構成された合わせ部60に対して車両幅方向(外側)へ所定距離だけずらされている(オフセットされている)。
【0037】
なお、右側ルーバ12の第1延出部54B、第2仕切り壁54C、第2延出部54Dが、本発明における「張り出し部」に相当する。
【0038】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0039】
本実施形態に係るカウルルーバ10は、右側ルーバ12と左側ルーバ14とに車両幅方向に二分割されており、更に本体部28、30からフード26の後端部26Aにかけて車両前方側へ延出されかつ片持ち支持されたオーバーハング部32、34を有することを前提としている。
【0040】
ここで、本実施形態に係るカウルルーバ構造では、右側ルーバ12の内端部と左側ルーバ14の内端部とを相互に連結してカウルインナパネル44に組付けることにより、双方のオーバーハング部32、34によって右側流路52A、左側流路52B、中間流路52Cから成る流路52が形成される。各右側流路52A、左側流路52B、中間流路52Cには、カウル40内へ連通された第1排水孔56、第2排水孔62、第3排水孔64が形成されているため、図1に示されるように、右側流路52Aに降り注いだ雨水等は第1排水孔56からカウル40内へ排水され(図1にこの場合の排水経路を矢印Aで示す)、左側流路52Bに降り注いだ雨水等は第2排水孔62からカウル40内へ排水され(図1にこの場合の排水経路を矢印Bで示す)、中間側流路52に降り注いだ雨水等は第2排水孔62からカウル40内へ排水される(図1にこの場合の排水経路を矢印Cで示す)。
【0041】
すなわち、本実施形態に係るカウルルーバ構造では、カウルルーバ10の分割体単位でカウル40への排水経路が確保される(右側ルーバ12であれば第1排水孔56、左側ルーバ14であれば第3排水孔64及び第2排水孔62)。さらに言及すると、流路52全体を右側流路52A、左側流路52B、及び中間流路52Cの三つの要素から成ると観た場合、流路単位でカウル40への排水経路が確保される。
【0042】
その結果、本実施形態によれば、オーバーハング部32、34から雨水等がオーバーフローしてエンジンルーム24内へ浸入するのを防止することができる。特に、流路ごとに排水孔がそれぞれ設置されているため、右側ルーバ12と左側ルーバ14との合わせ部60に雨水等が集中するのを回避することができ、合わせ部60からエンジンルーム24内への雨水等の浸入を効果的に抑制又は確実に防止することができる。
【0043】
また、本実施形態に係るカウルルーバ構造では、右側ルーバ12の内端部と左側ルーバ14の内端部との合わせ部60に車両上方側へ立ち上がる第1仕切り壁54A、58Aを互いに隣接するように設けたので、オーバーハング部32、34に溜まった雨水等は確実に第1仕切り壁54A、58Aで堰き止められて対応する第1排水孔56、第3排水孔64から排水される。その結果、本実施形態によれば、合わせ部60における止水機能を強化することができる。
【0044】
さらに、本実施形態に係るカウルルーバ構造では、右側ルーバ12と左側ルーバ14との合わせ部60に互いに隣接して配置された第1仕切り壁54A、58Aの内、右側ルーバ12側の第1仕切り壁54Aの上端部から第1延出部54B、第2仕切り壁54C、第2延出部54Dを階段状に車両幅方向へ延出させ、左側ルーバ14の第1仕切り壁58Aの上方を覆うと共に、第2延出部54Dの延出端部を左側ルーバ14側に配設されるカバー16の屈曲部16Aに近接して配置することでカウルルーバ10の上部側での分割位置を当該合わせ部60に対して車両幅方向へずらしたので、合わせ部60に直接雨水等が降り注ぐのを防止することができると共に、カウルルーバ10の上部側での分割位置に降り注いだ雨水等は第2延出部54Dと屈曲部16Aとの僅かな隙間66から中間流路52C内へ入り込むことになる。すなわち、合わせ部60が、雨水等を直接被水するのを避けることができる。その結果、本実施形態によれば、合わせ部60における防水機能を強化することができる。
【0045】
また、本実施形態に係るカウルルーバ構造では、左側ルーバ14側に配設されるカバー16の内端部をL字状に屈曲させて屈曲部16Aを設け、かつ左側ルーバ14の第2仕切り壁58Bに対して車両上下方向に連続的に配置したので、カウルルーバ10の上部側での分割位置の隙間66から浸入した雨水等は、車両走行時に中間流路52C内へ入り込んだ気流の影響がなければ、屈曲部16Aを伝ってからこれと略連続する第2仕切り壁58Bへと伝っていく。すなわち、図5の矢印Dで示される如き屈曲部16Aの内側へ雨水等が回り込むのを抑制することができる。その結果、本実施形態によれば、予め設定した排水経路が変更されるのを防止することができ、安定した排水を促すことができる。
【0046】
さらに、本実施形態に係るカウルルーバ構造では、中間流路52Cを形成する第2仕切り壁58Bの隣接位置に第3排水孔64を設けたので、カウルルーバ10の上部側の分割位置の隙間68から屈曲部16A及び第2仕切り壁58Bを伝った雨水等は、ダイレクトに第3排水孔64へ流入してカウル40内へ排水される。その結果、本実施形態によれば、左側ルーバ14のオーバーハング部34から雨水等がオーバーフローする可能性を一段と低くすることができる。
【0047】
(本実施形態の補足説明)
なお、上述した本実施形態では、右側仕切り部54を階段形状に形成するのみの構成としたが、これに限らず、図6に示されるように、水切り部を設定してもよい。簡単に説明すると、この実施形態では、右側ルーバ12の第2延出部54Dの下面側で延出端部から若干控えた位置に断面視で下向きの突起(リブ)状の第1水切り部70が設定されている。また、第1延出部54Bの下面側で延出端部となる位置には、第2仕切り壁54Cの傾斜面と面一になるように第2水切り部72が設定されている。
【0048】
上記構成によれば、カウルルーバ10の上部側の分割位置の隙間68から浸入した雨水等が第2延出部54Dの下面側を伝ってきた場合、当該雨水等は第1水切り部70で堰き止められて第3排水孔64側へ落下される(図6に矢印Eでその流れを示す)。さらに、第1水切り部70を乗り越えて第2延出部54Dの下面を当該雨水等が伝ってきた場合には、第2仕切り壁54Cの裏面を流れてその勢いでそのまま第2水切り部72で堰き止められて中間流路52Cの中間部(つまり、合わせ部60の第1仕切り壁58Aから遠ざかった位置)に落下され、第3排水孔64から排水される(図6に矢印Fでその流れを示す)。
【0049】
従って、隙間68から浸入しかつ階段形状の右側仕切り部54側に入り込んだ雨水等を確実に堰き止めて、合わせ部60に近づくのを阻止することができる。その結果、この実施形態によれば、合わせ部60における防水機能をより一層強化することができる。
【0050】
また、上述した本実施形態では、カウルルーバ10を車両幅方向に左右二分割したが、これに限らず、車両幅方向に複数個に分割されていればよく、三分割以上に分割する構成を採ってもよい。
【0051】
さらに、上述した本実施形態では、左側流路52Bと中間流路52Cとの間に距離をおくべく、第2仕切り壁52Bに対して離間した位置に第1延出部58Eを介して第3仕切り壁58Fを設けたが、第1延出部58E及び第3仕切り壁58Fは省略してもよい。この場合、第2仕切り壁52Bに隣接した位置に第2排水孔62を設定するのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態に係るカウルルーバ構造の要部を拡大して示す横断面図である。
【図2】本実施形態に係るカウルルーバの要部を分解して周辺部品と共に示す分解斜視図である。
【図3】本実施形態に係るカウルルーバの車両組付状態の縦断面図である。
【図4】本実施形態に係るカウルルーバの分解斜視図である。
【図5】本実施形態の作用・効果を説明するための説明図である。
【図6】水切り部を設定した別の実施形態を示す図1に対応する横断面図である。
【符号の説明】
【0053】
10 カウルルーバ
12 右側ルーバ(分割体)
14 左側ルーバ(分割体)
16A 屈曲部
22 ウインドシールドガラス
24 エンジンルーム
26 フード
26A 後端部
32 オーバーハング部
34 オーバーハング部
42 カウル
52 流路
52A 右側流路
52B 左側流路
52C 中間流路
54 右側仕切り部
54A 第1仕切り壁(一方の仕切り壁)
54B 第1延出部(張り出し部)
54C 第2仕切り壁(張り出し部)
54D 第2延出部(張り出し部)
56 第1排水孔(排水手段)
58 左側仕切り部
58A 第1仕切り壁(他方の仕切り壁)
58B 第2仕切り壁(別の仕切り壁)
60 合わせ部
70 第1水切り部(水切り部)
72 第2水切り部(水切り部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドシールドガラスの下端部からフードの後端部にかけて車両幅方向に配設されるカウルルーバ構造であって、
前記カウルルーバは車両幅方向に複数個に分割されたものを相互に連結することにより構成されていると共に、カウル前部からフードの後端部にかけて車両前方側へ延出されかつ片持ち支持されたオーバーハング部を有し、
前記オーバーハング部を構成する複数の分割体に車両幅方向に沿った流路をそれぞれ設け、
さらに、当該分割体に当該流路とカウル内とを連通する排水手段を設けた、
ことを特徴とするカウルルーバ構造。
【請求項2】
前記分割体の流路の合わせ部に車両上方側へ立ち上がる仕切り壁を互いに隣接するように設けた、
ことを特徴とする請求項1記載のカウルルーバ構造。
【請求項3】
前記合わせ部に互いに隣接して配置された左右一対の仕切り壁の一方の仕切り壁からは、他方の仕切り壁の上方を覆うように車両幅方向に張り出されてカウルルーバの上部側での分割位置を当該合わせ部に対して車両幅方向へずらす張り出し部が設けられている、
ことを特徴とする請求項2記載のカウルルーバ構造。
【請求項4】
前記他方の仕切り壁を有する分割体における前記カウルルーバの上部側での分割位置付近には車両下方側へ屈曲する屈曲部が形成されており、
当該屈曲部の下方には当該分割体から車両上方側へ立ち上がり当該屈曲部に対して車両上下方向に略連続する別の仕切り壁を設けた、
ことを特徴とする請求項3記載のカウルルーバ構造。
【請求項5】
前記別の仕切り壁の近傍でかつ前記張り出し部の下方側に、前記他方の仕切り壁を有する分割体の前記排水手段を配置した、
ことを特徴とする請求項4記載のカウルルーバ構造。
【請求項6】
前記張り出し部は車両幅方向に階段状に形成されており、更に下面側に張り出し部の張り出し端側から浸入して当該下面を伝う雨水等を堰き止める水切り部を設けた、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のカウルルーバ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−205918(P2006−205918A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21441(P2005−21441)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】