説明

カウル構造

【課題】ウインドシールドガラスの支持剛性を向上できると共に衝突エネルギ吸収量を増す。
【解決手段】カウルアッパ28のガラス支持部28Aに作用するウインドシールドガラス24の荷重F1はカウルアッパ28の後壁部28Cに伝達されると共に、カウルアッパ28のフランジ28Bとカウルインナ32の前壁部32Fの傾斜部32Gとを直線状に連結する補強ブラケット42の上壁部42Aを介してカウルインナ32の前壁部32Fに伝達されるようになっている。また、衝突荷重F2が作用すると、カウルアッパ28のガラス支持部28Aとともに補強ブラケット42の平板形状とされたエネルギ吸収部42Qが衝突荷重F2の作用方向に容易に倒れるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカウル構造に係り、特に、自動車のウインドシールドガラスとフードとの間に設けたカウル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のウインドシールドガラスとフードとの間に設けたカウル構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、ウインドシールドガラス(フロントウインドウともいう)を支持するカウルトップアッパパネルの上壁部の前端からエアボックスの底面部に向けて前側縦壁部が延設されている。
【特許文献1】特開2004−249997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の技術では、前側縦壁部に車両上方からの衝突エネルギを吸収するためのV字状溝部が形成されている。このため、V字状溝部によって前側縦壁部のウインドシールドガラス支持剛性が低下する。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、ウインドシールドガラスの支持剛性を向上できると共に衝突エネルギ吸収量を増すことができるカウル構造を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明のカウル構造は、ウインドシールドガラスの前端縁部を支持するガラス支持部と、前記ガラス支持部から略車両下方へ向かって延設された後壁部と、前記後壁部の車両前方側に設けられ略車両上下方向へ延びる前壁部と、を備えたカウル本体と、前記カウル本体の後壁部と前壁部とを連結する前後壁連結部と、前記カウル本体の前壁部とガラス支持部とを直線状に連結する荷重伝達部と、荷重伝達部における前記ガラス支持部への連結側部を構成し衝突荷重で変形するエネルギ吸収部と、を備えた補強部材と、を有することを特徴とする。
【0006】
ウインドシールドガラスの前端縁部を支持するカウル本体のガラス支持部に作用するウインドシールドガラスの荷重は、カウル本体の前壁部とガラス支持部とを直線状に連結する補強部材の荷重伝達部を介してカウル本体の前壁部に伝達される。また、カウル本体の後壁部と前壁部とを連結する補強部材の前後壁連結部によってカウル本体の前壁部の後壁部に対する相対変形を抑制できる。このため、ウインドシールドガラスの支持剛性が向上する。一方、衝突体により、ウインドシールドガラスの前端縁部に衝突荷重が作用した場合には、カウル本体のガラス支持部に作用する衝突荷重によって、カウル本体のガラス支持部とともに、補強部材におけるガラス支持部への連結側部を構成するエネルギ吸収部が荷重の作用方向に変形することで、衝突エネルギを吸収する。
【0007】
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載のカウル構造において、前記補強部材の荷重伝達部は前記補強部材の上壁部を形成しており、前記補強部材の前後壁連結部は前記上壁部の車幅方向両端から車両下方に向かって延設された左右の側壁部であって、前記荷重伝達部のエネルギ吸収部は前記前後壁連結部と分離された平板形状であることを特徴とする。
【0008】
補強部材の荷重伝達部が補強部材の上壁部を形成しており、補強部材の前後壁連結部が上壁部の車幅方向両端から車両下方に向かって延設された左右の側壁部であって、荷重伝達部のエネルギ吸収部が前後壁連結部と分離された平板形状であるため、補強部材の構造が簡単である。
【0009】
請求項3記載の本発明は、請求項1、2の何れか1項に記載のカウル構造において、前記荷重伝達部における前記前壁部への連結側部を構成し前記前後壁連結部と結合された部位はワイパを取付けるワイパ支持部であることを特徴とする。
【0010】
荷重伝達部における前壁部への連結側部を構成し、前後壁連結部と結合された部位がワイパを取付けるワイパ支持部であるため、ワイパからの荷重を補強部材を介して、カウル本体の前壁部、後壁部、ガラス支持部に伝達できる。この結果、ワイパ支持部の振動を抑制できるため、ワイパ支持部の耐久性が向上する。
【0011】
請求項4記載の本発明のカウル構造は、ウインドシールドガラスの前端縁部を支持するガラス支持部と、前記ガラス支持部から略車両下方へ向かって延設された後壁部と、前記後壁部の車両前方側に設けられ略車両上下方向へ延びる前壁部と、を備えたカウル本体と、前記カウル本体に結合され前記カウル本体とで車両側面視閉断面部を形成する補強部と、前記補強部と前記カウル本体のガラス支持部とを直線状に連結し衝突荷重で変形するエネルギ吸収部と、を備えた補強部材と、を有することを特徴とする。
【0012】
ウインドシールドガラスの前端縁部を支持するカウル本体のガラス支持部に作用するウインドシールドガラスの荷重は、カウル本体のガラス支持部と補強部材の補強部とを直線状に連結する補強部材のエネルギ吸収部によって、カウル本体に結合されカウル本体とで車両側面視閉断面部を形成する補強部材の補強部に伝達される。このため、ウインドシールドガラスの支持剛性が向上する。一方、衝突体により、ウインドシールドガラスの前端縁部に衝突荷重が作用した場合には、カウル本体のガラス支持部に作用する衝突荷重によって、補強部材の補強部とカウル本体のガラス支持部とを直線状に連結するエネルギ吸収部が荷重の作用方向に変形することで、衝突エネルギを吸収する。
【0013】
請求項5記載の本発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載のカウル構造において、前記荷重伝達部のエネルギ吸収部は前記ウインドシールドガラスの面方向と垂直方向との中間位置に配置されていることを特徴とする。
【0014】
荷重伝達部のエネルギ吸収部がウインドシールドガラスの面方向と垂直方向との中間位置に配置されているため、エネルギ吸収部が変形する際に、衝突荷重を受け易く、ウインドシールドガラスに干渉し難い。この結果、変形ストロークを大きくできる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の本発明は、ウインドシールドガラスの支持剛性を向上できると共に衝突
エネルギ吸収量を増すことができる。
【0016】
請求項2記載の本発明は、補強部材を簡単な構造にできる。
【0017】
請求項3記載の本発明は、ワイパ支持部の耐久性を向上できると共に衝突エネルギ吸収量を増すことができる。
【0018】
請求項4記載の本発明は、ウインドシールドガラスの支持剛性を向上できると共に衝突
エネルギ吸収量を増すことができる。
【0019】
請求項5記載の本発明は、エネルギ吸収部の変形ストロークを大きくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明におけるカウル構造の一実施形態を図1〜図4に従って説明する。
【0021】
なお、図中矢印UPは車両上方方向を示し、図中矢印FRは車両前方方向を示している。
【0022】
図4には、本実施形態におけるカウル構造が適用された車両の前部が車両斜め前方から見た斜視図で示されている。
【0023】
図4に示される如く、本実施形態における車両(自動車)10の前部上面を構成するフード(エンジンフード)12の後端部12Aは、カウル本体としてのカウル14の上方へ延設されている。
【0024】
図1には、図4の1−1断面線に沿った拡大断面図が示されている。
【0025】
図1に示される如く、フード12は、アウタパネル16の内側(裏面側)にインナパネル18を備えており、フード12の後部には、車幅方向に沿ってアウタパネル16とインナパネル18とで閉断面20が形成されている。また、閉断面20を構成するインナパネル18の後部22は、側面視において車体上方に開口した逆台形状となっており、閉位置(図1の位置)にあるフード12の後端部12Aから所定距離前方の部位には車幅方向に沿って屈曲部22Aが形成されている。また、インナパネル18の後部22における屈曲部22Aの車体後方側において、アウタパネル16の後端部16Aとインナパネル18の後端部18Aとがヘミング加工により結合されている。
【0026】
ウインドシールドガラス24の前端縁部24Aはカウル14の上部を構成するカウルアッパ28のガラス支持部28Aの上面に接着剤30によって固定されている。
【0027】
カウル14はカウルアッパ28と、カウル14の車室内側部を構成するカウルインナ32を備えている。また、カウルアッパ28のガラス支持部28Aはウインドシールドガラス24の前端縁部24Aと平行に配置されており、ガラス支持部28Aの前端からは車両斜め前方下側に向かってフランジ28Bが形成されている。一方、ガラス支持部28Aの後端からは車両斜め後方下側に向かって後壁部28Cが形成されており、後壁部28Cの後端からは車両斜め後方上側に向かってフランジ28Dが形成されている。
【0028】
カウルインナ32の後壁部32Aの下部32Bの上端からは車両斜め後方上側に向かって後壁部32Aの上部32Cが延設されており、後壁部32Aの上部32Cの上端からは車両斜め後方上側に向かってフランジ32Dが形成されている。また、カウルインナ32のフランジ32Dとカウルアッパ28のフランジ28Dとが溶接等によって結合されている。
【0029】
カウルインナ32の後壁部32Aの下部32Bの下端からは車両前方へ向かって下壁部32Eが形成されており、下壁部32Eの前端からは車両斜め前方上側へ向かって前壁部32Fが形成されている。また、カウルインナ32の前壁部32Fはカウルインナ32の後壁部32Aの車両前方側に設けられ略車両上下方向へ延びており、カウルインナ32の前壁部32Fと後壁部32Aは、車両前後方向において互いに対向した位置となっている。
【0030】
カウルインナ32の前壁部32Fの上下方向中間部には、車両前方上側から車両後方下側に向かう傾斜部32Gが形成されており、前壁部32Fの上端からは車両前方へ向かってフランジ32Hが形成されている。また、カウルインナ32のフランジ32Hとウインドシールドガラス24との間にはカウルルーバ36が架設されている。
【0031】
カウルルーバ36の前側固定部36Aは、クッション38を介してカウルインナ32のフランジ32Hの上面に取付けられている。一方、カウルルーバ36の後側固定部36Bはウインドシールドガラス24に取付けられている。
【0032】
なお、カウルルーバ36の前側固定部36Aからは、車両斜め前方上側に向かって縦壁部36Cが形成されており、縦壁部36Cの上端からは車両前方へ向かってシール部36Dが延設されている。また、カウルルーバ36のシール部36Dと、フード12の閉断面20の底部22Bとの間には、カウルシールゴム38が配置されている。
【0033】
図2には、本実施形態におけるカウル構造が車両斜め前方から見た斜視図で示されている。
【0034】
図2に示される如く、カウル14の車幅方向中央におけるカウル内部40には補強部材としての補強ブラケット42が設けられている。
【0035】
補強ブラケット42は荷重伝達部としての上壁部42Aを備えている。また、補強ブラケット42における上壁部42Aの前部と車両前後方向中央部との車幅方向両端からは、車両下方に向かって前後壁連結部としての左右の側壁部42B、42Cがプレス加工等によって形成されている。
【0036】
図1に示される如く、補強ブラケット42の上壁部42Aは車両前方下側から車両後方上側へ向かって直線状に延びており、上壁部42Aの前端部には車両斜め前方上側に向かってフランジ42Dが形成されている。また、補強ブラケット42のフランジ42Dは、カウルインナ32の前壁部32Fの傾斜部32Gの後側面に溶接等によって結合されている。
【0037】
一方、補強ブラケット42の上壁部42Aの上端部42Eは、カウルアッパ28のフランジ28Bの下面に溶接等によって結合されている。
【0038】
なお、直線状とは、車両側方から見て直線又は略直線となっており、直線方向に荷重が作用した場合に、曲げ変形の起点となる部位が無い形状である。
【0039】
従って、ウインドシールドガラス24の前端縁部24Aを支持するカウルアッパ28のガラス支持部28Aに作用するウインドシールドガラス24の荷重(図1の矢印F1)は、カウルアッパ28の後壁部28Cに伝達される(図1の矢印F3)と共に、カウルアッパ28のフランジ28Bとカウルインナ32の前壁部32Fの傾斜部32Gとを直線状に連結する補強ブラケット42の上壁部42Aを介してカウルインナ32の前壁部32Fに伝達される(図1の矢印F4)ようになっている。
【0040】
このため、荷重F1をカウルアッパ28の後壁部28Cとカウルインナ32の前壁部32Fとで分散して支持することができるので、ウインドシールドガラス24の前端縁部24の支持剛性を向上できるようになっている。
【0041】
図2に示される如く、補強ブラケット42の左側の側壁部42Bの後端部には車幅方向外側に向かってフランジ42Fが形成されており、フランジ42Fはカウルインナ32の後壁部32Aの下部32Bにおける上部32Cの近傍の前側面に溶接等によって結合されている。同様、補強ブラケット42の右側の側壁部42Cの後端部には車幅方向外側に向かってフランジ42Gが形成されており、フランジ42Gはカウルインナ32の後壁部32Aの下部32Bにおける上部32Cの近傍の前側面に溶接等によって結合されている。
【0042】
また、補強ブラケット42の左側の側壁部42Bの前端部には車幅方向外側に向かってフランジ42Hが形成されており、フランジ42Hはカウルインナ32の前壁部32Fの傾斜部32Gの後側面に溶接等によって結合されている。同様に、補強ブラケット42の右側の側壁部42Cの前端部には車幅方向外側に向かってフランジ42Jが形成されており、フランジ42Jはカウルインナ32の前壁部32Fの傾斜部32Gの後側面に溶接等によって結合されている。
【0043】
また、補強ブラケット42の左の側壁部42Bの下端からは車幅方向外側に向かって、左の側壁部42Bを補強するためのフランジ42Kが形成されており、補強ブラケット42の右の側壁部42Cの下端からは車幅方向外側に向かって、右の側壁部42Cを補強するためのフランジ42Lが形成されている。
【0044】
更に、補強ブラケット42の左の側壁部42Bの後部42Mの上下方向中間部には、補強手段としての凸部46が車両前後方向に沿って形成されており、補強ブラケット42の右の側壁部42Cの後部42Nの上下方向中間部には、補強手段としての凸部48が車両前後方向に沿って形成されている。
【0045】
図1に示される如く、補強ブラケット42はカウルインナ32とで車両側面視閉断面部41を形成しており、補強ブラケット42はカウルインナ32とで高剛性の部位を形成している。また、カウルインナ32の後壁部32Aと前壁部32Fとを連結する補強ブラケット42の左右の側壁部42B、42Cによって、カウルインナ32の前壁部32Fと、カウルインナ32の後壁部32Aとの車両前後方向への相対変形を抑制できるようになっている。
【0046】
更に、補強ブラケット42の上端部42Eがカウルアッパ28のフランジ28Bに結合されている
このため、補強ブラケット42の車両上下方向の剛性を向上できると共に、補強ブラケット42の車幅方向の揺れ(横倒れ)に対する剛性も向上できるようになっている。
【0047】
この結果、ウインドシールドガラス24の前端縁部24の振動やノイズ発生を抑制できる。特に、車両アイドリング時に発生するウインドシールドガラス24の前端縁部24Aの上下方向及び前後方向の振動や、捩れを抑制することができ、アイドリング時のこもり音を低減できるようになっている。
【0048】
図2に示される如く、補強ブラケット42の上壁部42Aにおける前壁部32Fへの連結側部を構成する部位はワイパユニットを取付けるワイパ支持部42Pとなっており、ワイパ支持部42Pの後部には、円形の貫通孔50が形成されている。
【0049】
図1に示される如く、補強ブラケット42のワイパ支持部42Pの後部には、貫通孔50に挿通されたボルト等の締結部材54によってワイパモジュール52が取付けられている。
【0050】
このため、ワイパモジュール52を取付けるワイパ支持部42Pの剛性を向上できるようになっている。
【0051】
なお、図1の符号52Aはワイパモジュール52のリンクを示しており、補強ブラケット42の左右の側壁部42B、42Cの下端部は、ワイパモジュール52のリンク52Aとの干渉を防止するため車両上方向へ凸のアーチ状となっている。
【0052】
図2に示される如く、補強ブラケット42の上壁部42Aにおけるカウルアッパ28のガラス支持部28Aへの連結側部となるワイパ支持部42Pより上方側の部位はエネルギ吸収部42Qとなっており、補強ブラケット42におけるエネルギ吸収部42Qを除く部位は補強部となっている。また、エネルギ吸収部42Qは、左右の側壁部42B、42Cと分離され、カウルアッパ28のフランジ28Bに向かって延設されており、帯状の平板形状となっている。
【0053】
なお、帯状とは幅W1に対して長さL1が長い形状であり、平板形状とは補強用の折り曲げフランジ等が形成されていない平らな板形状である。また、エネルギ吸収部42Qはウインドシールドガラス24の面方向(図1の矢印S方向)と垂直方向(図1の矢印F1)との中間位置に配置されており、エネルギ吸収部42Qが変形する際に、衝突荷重F1を受け易く、ウインドシールドガラス24に干渉し難くなっている。このため、変形ストロークを大きくできるようになっている。
【0054】
なお、ウインドシールドガラス24の面方向(図1の矢印S方向)と垂直方向(図1の矢印F1)との中間位置とは、ウインドシールドガラス24の面方向(図1の矢印S方向)と垂直方向(図1の矢印F1)との成す各β1における、略3等分の中央範囲とする。
【0055】
図1に示される如く、補強ブラケット42のエネルギ吸収部42Qは、カウルインナ32の後壁部32Aの上部32Cと略並行に配置されており、車両を側面から見た側面視において、エネルギ吸収部42Qと左右の側壁部42B、42Cとの成す角度α1及びカウルアッパ28の後壁部28Cとカウルインナ32の後壁部32Aの上部32Cとの成す角度α2とが鋭角となっている。また、カウルアッパ28とカウルインナ32と補強ブラケット42とで、カウルアッパ28のガラス支持部28Aの下方側に車幅方向から見た形状(車両側面視形状)が略ひし形の閉断面構造43が形成されている。
【0056】
従って、図3に示される如く、衝突体Kにより、ウインドシールドガラス24の前端縁部24Aに車両前方斜め上方から車両後方斜め下方に向かって衝突荷重(図3の矢印F2)が作用した場合には、エネルギ吸収部42Qに対する衝突荷重F2の入力角度θ1が、エネルギ吸収部42Qに対するウインドシールドガラス24の荷重F2の入力角度θ2に比べて垂直方向(90度)に近づく。このため、衝突荷重F2によって、カウルアッパ28のガラス支持部28Aとともに補強ブラケット42の平板形状のエネルギ吸収部42Qが衝突荷重F2の作用方向(図3の矢印A方向)に容易に倒れるようになっている。この際、角度α1が小さくなると同時に、角度α2が小さくなりつつカウルアッパ28のフランジ28Dとカウルインナ32のフランジ32Dの結合部が車両斜め上側後方(図3の矢印B方向)へ移動するようになっている。
【0057】
即ち、衝突体Kにより、ウインドシールドガラス24の前端縁部24Aに車両前方斜め上方から車両後方斜め下方に向かって衝突荷重(図3の矢印F2)が作用した場合には、閉断面構造43が車両上下方向へ潰れるようになっている。
【0058】
このため、補強ブラケット42のエネルギ吸収部42Qの変形と、カウルアッパ28、カウルインナ32の変形とによって、衝突エネルギの吸収量を増すことができるようになっている。
【0059】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0060】
図1に示される如く、車両10の悪路走行等によって、ウインドシールドガラス24の前端縁部24Aを支持するカウルアッパ28のガラス支持部28Aにウインドシールドガラス24の荷重(図1の矢印F1)が作用した場合には、荷重F1はカウルアッパ28の後壁部28Cに伝達される(図1の矢印F3)と共に、カウルアッパ28のフランジ28Bとカウルインナ32の前壁部32Fの傾斜部32Gとを直線状に連結する補強ブラケット42の上壁部42Aを介してカウルインナ32の前壁部32Fに伝達される(図1の矢印F4)。
【0061】
このため、荷重F1をカウルアッパ28の後壁部28Cとカウルインナ32の前壁部32Fとで分散して支持することができるので、ウインドシールドガラス24の前端縁部24の支持剛性を向上できる。
【0062】
また、カウルインナ32の後壁部32Aと前壁部32Fとを連結する補強ブラケット42の左右の側壁部42B、42Cによって、カウル14におけるカウルインナ32の前壁部32Fの後壁部32Aに対する車両前後方向への相対変形を抑制できる。更に、補強ブラケット42の上端部42Eがカウルアッパ28のフランジ28Bに結合されているため、補強ブラケット42の車両上下方向の剛性を向上できると共に、補強ブラケット42の車幅方向の揺れ(横倒れ)に対する剛性も向上できる。
【0063】
この結果、ウインドシールドガラス24の前端縁部24の振動やノイズ発生を抑制できる。特に、車両アイドリング時に発生するウインドシールドガラス24の前端縁部24Aの上下方向及び前後方向の振動や、捩れを抑制することができ、アイドリング時のこもり音を低減できる。
【0064】
また、本実施形態では、補強ブラケット42の上壁部42Aにおける前壁部32Fへの連結側部を構成する部位が、ワイパユニット52を取付けるワイパ支持部42Pとなっている。このため、補強ブラケット42によって、ワイパモジュール52を取付けるワイパ支持部42Pの剛性を向上できる。
【0065】
この結果、ウインドシールドガラス24上の雪だまり等によってワイパモジュール52に作用する大きな負荷に対してワイパ支持部42Pの耐久性を向上できる。また、補強ブラケット42によってカウル14全体の剛性も向上するため、車両が悪路を走行した場合にカウル14に作用する変形荷重に対するカウル14の耐久性も向上できる。
【0066】
また、本実施形態では、図1に示される如く、ウインドシールドガラス24の前端縁部24Aに衝突体Kが衝突し、図3に示される如く、衝突体Kにより、ウインドシールドガラス24の前端縁部24Aに車両前方斜め上方から車両後方斜め下方に向かって衝突荷重(図3の矢印F2)が作用した場合には、カウルアッパ28のガラス支持部28Aに車両前方斜め上方から車両後方斜め下方に向かって衝突荷重F2が作用する。
【0067】
この際、本実施形態では、エネルギ吸収部42Qに対する衝突荷重F2の入力角度θ1が、エネルギ吸収部42Qに対するウインドシールドガラス24の荷重F2の入力角度θ2に比べて垂直方向(90度)に近づくため、衝突荷重F2によって、カウルアッパ28のガラス支持部28Aとともに補強ブラケット42の平板形状のエネルギ吸収部42Qが衝突荷重F2の作用方向(図3の矢印A方向)に容易に倒れ、角度α1が小さくなると共に、カウルアッパ28の後壁部28Cとカウルインナ32の後壁部32Aの上部32Cとの成す角度α2が小さくなりつつカウルアッパ28のフランジ28Dとカウルインナ32のフランジ32Dの結合部が車両斜め上側後方(図3の矢印B方向)へ移動する。このため、カウルアッパ28のガラス支持部28Aが車両前方斜め上方から車両後方斜め下方に向かって変位する際の、補強ブラケット42のエネルギ吸収部42Qの変形と、カウルアッパ28、カウルインナ32の変形とによって、衝突エネルギの吸収量を増すことができる。
【0068】
また、本実施形態では、補強ブラケット42によって、ウインドシールドガラス24とワイパモジュール52との支持剛性を向上できる。このため、ウインドシールドガラス24の支持剛性を向上するためのブラケットと、ワイパモジュール52との支持剛性を向上するためのブラケットを別部品とする場合に比べて、部品点数が少なくなる上、組付け工数、歩留まり等も大幅に改善できる。
【0069】
また、本実施形態では、補強ブラケット42の荷重伝達部が上壁部42Aを形成しており、補強ブラケット42の前後壁連結部が上壁部42Aの車幅方向両端から車両下方に向かって延設された左右の側壁部42B、42Cであって、エネルギ吸収部42Qが前後壁連結部と分離された平板形状であるため、補強ブラケット42の構造が簡単である。
【0070】
また、本実施形態では、補強ブラケット42のエネルギ吸収部42Qがウインドシールドガラス24の面方向(図1の矢印S方向)と垂直方向(図1の矢印F1)との中間位置に配置されている。この結果、エネルギ吸収部42Qが変形する際に、衝突荷重F1を受け易く、ウインドシールドガラス24に干渉し難いため、エネルギ吸収部42Qの変形ストロークを大きくできる。
【0071】
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、補強ブラケット42の左右の側壁部42B、42Cとワイパモジュール52のリンク52Aとの干渉を防止するため、左右の側壁部42B、42Cの下端部をアーチ状にしたが、ワイパモジュール52のリンク52Aの位置を車両下方へ移動し、左右の側壁部42B、42Cの下端部を車両前後方向に延びる直線状としてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、補強ブラケット42の上壁部42Aにおけるカウルアッパ28のガラス支持部28Aへの連結側部となるワイパ支持部42Pより上方側の部位がエネルギ吸収部42Qとなっており、上壁部42Aのエネルギ吸収部42Qと上壁部42Aの他の部位とが直線状となっているが、上壁部42Aのエネルギ吸収部42Qと上壁部42Aの他の部位とは必ずしも直線状である必要はない。
【0073】
また、上記実施形態では、カウル14の上部を構成するカウルアッパ28とカウル14の車室内側部を構成するカウルインナ32とを別部材にしたが、これに代えて、カウルアッパ28とカウルインナ32とを一部品とした構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図4の1−1断面線に沿った拡大断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るカウル構造を示す車両斜め前方から見た斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るカウル構造における衝突体による変形状態を示す図1に対応する断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るカウル構造を適用した車両の前部を示す車両斜め前方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0075】
10 車両
12 フード
14 カウル(カウル本体)
24 ウインドシールドガラス
28 カウルアッパ
28A カウルアッパのガラス支持部
28C カウルアッパの後壁部
32 カウルインナ
32A カウルインナの後壁部
32B カウルインナの後壁部の下部
32C カウルインナの後壁部の上部
32E カウルインナの下壁部
32F カウルインナの前壁部
32G カウルインナの前壁部の傾斜部
40 カウル内部
41 車両側面視閉断面部
42 補強ブラケット(補強部材)
42A 補強ブラケットの上壁部(荷重伝達部)
42B 補強ブラケットの側壁部(前後壁連結部)
42C 補強ブラケットの側壁部(前後壁連結部)
42Q 補強ブラケットのエネルギ吸収部
43 閉断面構造
50 貫通孔
52 ワイパモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドシールドガラスの前端縁部を支持するガラス支持部と、前記ガラス支持部から略車両下方へ向かって延設された後壁部と、前記後壁部の車両前方側に設けられ略車両上下方向へ延びる前壁部と、を備えたカウル本体と、
前記カウル本体の後壁部と前壁部とを連結する前後壁連結部と、前記カウル本体の前壁部とガラス支持部とを直線状に連結する荷重伝達部と、前記荷重伝達部における前記ガラス支持部への連結側部を構成し衝突荷重で変形するエネルギ吸収部と、を備えた補強部材と、
を有することを特徴とするカウル構造。
【請求項2】
前記補強部材の荷重伝達部は前記補強部材の上壁部を形成しており、前記補強部材の前後壁連結部は前記上壁部の車幅方向両端から車両下方に向かって延設された左右の側壁部であって、前記荷重伝達部のエネルギ吸収部は前記前後壁連結部と分離された平板形状であることを特徴とする請求項1に記載のカウル構造。
【請求項3】
前記荷重伝達部における前記前壁部への連結側部を構成し前記前後壁連結部と結合された部位はワイパを取付けるワイパ支持部であることを特徴とする請求項1、2の何れか1項に記載のカウル構造。
【請求項4】
ウインドシールドガラスの前端縁部を支持するガラス支持部と、前記ガラス支持部から略車両下方へ向かって延設された後壁部と、前記後壁部の車両前方側に設けられ略車両上下方向へ延びる前壁部と、を備えたカウル本体と、
前記カウル本体に結合され前記カウル本体とで車両側面視閉断面部を形成する補強部と、前記補強部と前記カウル本体のガラス支持部とを直線状に連結し衝突荷重で変形するエネルギ吸収部と、を備えた補強部材と、
を有することを特徴とするカウル構造。
【請求項5】
前記荷重伝達部のエネルギ吸収部は前記ウインドシールドガラスの面方向と垂直方向との中間位置に配置されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のカウル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−201314(P2008−201314A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−41121(P2007−41121)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】