説明

カスパーゼ阻害剤およびそれらの用途

【課題】インビボでアポトーシスを効果的に阻止するために、強力で安定かつ膜を浸透する低分子カスパーゼ阻害剤を提供すること。
【解決手段】本発明は、医薬品化学の分野であり、細胞アポトーシスおよび炎症を媒介するカスパーゼを阻害する新規化合物およびそれらの薬学的組成物に関する。本発明はまた、本発明の化合物および薬学的組成物を使用して、カスパーゼ活性が関係した疾患を治療する方法に関する。本発明の化合物は、細胞モデルのアポトーシスにおいて、良好な効能と共に、ある範囲のカスパーゼ標的にわたって強力な阻害特性を有する。それに加えて、これらの化合物は、改良された細胞浸透性および薬物動態学的特性を有すると予想され、それらの効力の結果として、カスパーゼが関係している疾患に対して改良された効能を有すると予想される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2000年9月13日に出願された米国仮特許出願第60/232,573号に対する優先権を主張している。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、医薬品化学の分野であり、細胞アポトーシスおよび炎症を媒介するカスパーゼを阻害する新規化合物およびそれらの薬学的組成物に関する。本発明はまた、本発明の化合物および薬学的組成物を使用して、カスパーゼ活性が関係した疾患を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
アポトーシス、すなわち、プログラム化細胞死は、生物体が不要な細胞を排除する主な機構である。アポトーシスの調節解除は、過剰なアポトーシスまたはそれを受けることの減退のいずれであれ、多くの疾患(例えば、癌、急性炎症性および自己免疫性障害、虚血性疾患および特定の神経変性障害)に関係している(一般に、非特許文献1;非特許文献2を参照のこと)。
【0004】
カスパーゼは、システインタンパク質分解酵素のファミリーであり、アポトーシスおよび細胞分解のシグナル伝達経路における重要な媒介物である(非特許文献3)。これらのシグナル伝達経路は、細胞型および刺激物に依存して変わるが、全てのアポトーシス経路は、重要なタンパク質の分解を引き起こす共通エフェクター経路に集中すると思われる。カスパーゼは、このシグナル伝達経路のエフェクター相およびその開始時におけるさらに上流の両方に関与している。開始事象に関与している上流カスパーゼは、活性化し、次に、後のアポトーシス相に関与している他のカスパーゼを活性化させる。
【0005】
カスパーゼ−1は、最初に同定されたカスパーゼであるが、また、インターロイキン変換酵素(すなわち、「ICE」)としても知られている。カスパーゼ−1は、前駆体であるインターロイキン−1β(「pIL−1β」)をAsp−116とAla−117との間で特異的に開裂することにより、pIL−1βをそのプロ炎症性活性形状に変換する。カスパーゼ−1の他にも、また、11種の他の公知のヒトカスパーゼが存在しており、それらの全ては、アスパルチル残基において特異的に開裂する。それらはまた、その開裂部位のN−末端側にある少なくとも4個のアミノ酸残基に対するストリンジェントな要件を有することが観察されている。
【0006】
これらのカスパーゼは、好ましいか最初に認識されたアミノ酸配列に依存して、3つの群に分類されている。1つのカスパーゼ群は、カスパーゼ1、カスパーゼ4およびカスパーゼ5を含み、その開裂部位のN−末端側の4位にある疎水性芳香族アミノ酸を好むことが明らかとなっている。カスパーゼ2、カスパーゼ3およびカスパーゼ7を含む別の群は、その開裂部位のN−末端側の1位および4位の両方にあるアスパルチル残基を認識し、好ましくは、Asp−Glu−X−Aspの配列である。第三の群は、カスパーゼ6、カスパーゼ8、カスパーゼ9およびカスパーゼ10を含み、その主要認識配列にある多くのアミノ酸に耐性であるが、分枝脂肪族側鎖(例えば、4位にあるバリンおよびロイシン)を有する残基を好むと思われる。
【0007】
これらのカスパーゼはまた、それらの認知機能に従って分類されている。第一のサブファミリーは、カスパーゼ−1(ICE)、カスパーゼ4およびカスパーゼ5からなる。これらのカスパーゼは、プロ炎症性サイトカインプロセシングに関与しており、それにより、炎症で重要な役割を果たすことが示されている。カスパーゼ−1は、この種類の最も研究された酵素であるが、タンパク質分解性の開裂によって、IL−β前駆体を活性化する。この酵素は、従って、炎症性応答において重要な役割を果たす。カスパーゼ−1はまた、インターフェロン−γ誘発因子(IGIFまたはIL−18)のプロセシングに関与しており、これは、インターフェロン−γ(抗原提示、T−細胞活性化および細胞接着を調節する重要な免疫調節物)の産生を刺激する。
【0008】
残りのカスパーゼは、第二および第三のサブファミリーを構成する。これらの酵素は、アポトーシスを引き起こす細胞内シグナル伝達経路の中枢にあって重要である。一方のサブファミリーは、このアポトーシス経路での開始事象(これには、原形質膜からの信号の伝達が含まれる)に関与している酵素からなる。このサブファミリーのメンバーには、カスパーゼ−2、カスパーゼ8、カスパーゼ9およびカスパーゼ10が挙げられる。他のサブファミリーは、エフェクターカスパーゼ3、カスパーゼ6およびカスパーゼ7からなるが、最終下流開裂事象に関与しており、その結果、アポトーシスにより、その細胞の全身的な分解および死が起こる。この下流信号伝達に関与しているカスパーゼは、その下流カスパーゼを活性化し、次いで、DNA修復機構を無効にし、DNAを細分化し、その細胞の細胞骨格を解体し、最終的に、その細胞を細分化する。
【0009】
これらのカスパーゼによって主に認識される4つのアミノ酸配列の知見は、カスパーゼ阻害剤を設計するのに使用されている。CHCO−[P4]−[P3]−[P2]−CH(R)CHCOHの構造を有する可逆性テトラペプチド阻害剤が調製されており、ここで、P2〜P4は、最適アミノ酸認識配列を表わし、そしてRは、そのカスパーゼシステインスルフヒドリルに結合できるアルデヒド、ニトリルまたはケトンである。非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6を参照。類似のテトラペプチド認識配列に基づいた不可逆性阻害剤が調製されており、ここで、Rは、アシルオキシメチルケトン−COCHOCOR’である。R’は、必要に応じて置換されたフェニル(例えば、2,6−ジクロロベンゾイルオキシ)であり、ここで、Rは、COCHXであり、ここで、Xは、残基(例えば、FまたはCl)である。非特許文献7;非特許文献8
【0010】
細胞性アポトーシスの増大に関連した種々の哺乳動物疾患を治療するカスパーゼ阻害剤の有用性は、ペプチドカスパーゼ阻害剤を使用して証明されている。例えば、齧歯類モデルでは、カスパーゼ阻害剤は、梗塞のサイズを小さくして心筋梗塞後の心筋細胞アポトーシスを阻止すること、卒中から生じる傷害容量および神経欠陥を少なくすること、外傷性脳傷害における外傷後アポトーシスおよび神経欠陥を少なくすること、劇症肝炎破壊を治療する際に有効にすること、および内毒素ショック後の生存率を改善することが明らかとなっている。非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14
【0011】
一般に、上記ペプチド性阻害剤は、カスパーゼ酵素の一部に対して非常に有効である。しかしながら、この効力は、アポトーシスの細胞モデルで常に反映されている訳ではない。それに加えて、ペプチド性阻害剤は、典型的には、望ましくない薬理学的特性(例えば、乏しい経口吸収、乏しい安定性および急速な代謝)により、特徴付けられている。非特許文献15
【0012】
これらのペプチド性カスパーゼ阻害剤の薬理学的特性を改善する必要性を認識して、擬ペプチドおよび非天然アミノ酸ペプチド阻害剤が報告されている。
【0013】
WO96/40647は、次式のICE阻害剤を開示している:
【0014】
【化3】

ここで、Bは、HまたはN−末端ブロッキング基である;Rは、Pアミノ酸残基のアミノ酸側鎖であり、ここで、このPアミノ酸は、Aspではない;Pは、このアミノ酸のアミノ酸残基または複素環置換基である;Rは、ヒドロキシル、アルコキシル、アシル、水素、アルキルまたはフェニルである;mは、0または正の整数である;そしてXは、N、S、OまたはCHである。
【0015】
特許文献1は、インターロイキン−1βプロテアーゼを阻害する化合物を開示している。これらの阻害剤は、次式により表される:
【0016】
【化4】

ここで、各AAは、別個に、L−バリンまたはL−アラニンである;nは、0〜2である;Rは、特定の基である;そしてR、R、R10は、それぞれ別個に、水素、低級アルキル、ハロ置換メチル、カルボアルコキシ、ベンジル、フェニルまたは以下の基で一置換または二置換したフェニルである:フルオロ、ニトロ、メトキシ、クロロ、トリフルオロメチルまたはメタンスルホニル。
【0017】
特許文献2は、次式のインターロイキン−1β変換酵素のアスパラギン酸エステル阻害剤を開示している:
【0018】
【化5】

ここで、Rは、特に、RN(R)CHCO−である;Rは、特定の基である;Rは、H、C1〜6アルキル、−(CHアリール、−(CHCO、ヒドロキシル、置換C1〜6アルキル、またC1〜6アルキル置換イミダゾールである;そしてRは、別個に、水素、C1〜6アルキルまたは−(CHアリールである。
【0019】
特許文献3は、次式を有するジペプチドアポトーシス阻害剤を開示している:
【0020】
【化6】

ここで、Rは、N−末端保護基である;AAは、任意の天然α−アミノ酸またはβ−アミノ酸の残基である;そしてRおよびRは、本明細書中で定義されている。
【0021】
特許文献4は、次式を有する(置換)アシルジペプチドアポトーシス阻害剤を開示している:
【0022】
【化7】

ここで、nは、0、1または2である;qは、1または2である;Aは、任意の天然または非天然アミノ酸の残基である;Bは、水素原子、重水素原子、C1〜10直鎖または分枝アルキル、シクロアルキル、フェニル、置換フェニル、ナフチル、置換ナフチル、2−ベンゾキサゾリル、置換2−オキサゾリル、(CHシクロアルキル、(CHフェニル、(CH(置換フェニル)、(CH(1−または2−ナフチル)、(CHヘテロアリール、ハロメチル、CO13、CONR1415、CHZR16、CHOCOアリール、CHOCO(置換アリール)、CHOCO(ヘテロアリール)、CHOCO(置換ヘテロアリール)またはCHOPO(R17)R18であり、ここで、R13、R14、R15、R16、R17およびR18は、本明細書中で定義されている;Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、フェニル、置換フェニル、(CHNHを含む群から選択される;Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、フェニルアルキルまたは置換フェニルアルキルである;Xは、CH、C=O、O、S、NH、C=ONHまたはCHOCONHである;そしてZは、酸素原子またはイオウ原子である。
【0023】
特許文献5は、次式を有するジペプチドアポトーシス阻害剤を開示している:
【0024】
【化8】

ここで、Rは、必要に応じて置換したアルキルまたは水素基である;Rは、水素または必要に応じて置換したアルキルである;Yは、天然または非天然アミノ酸の残基であり、そしてRは、アルキル基、飽和炭素環基、部分飽和炭素環基、アリール基、飽和複素環式基、部分飽和複素環式基またはヘテロアリール基であり、ここで、該基は、必要に応じて、置換されている;Xは、O、S、NRまたは(CRであり、ここで、RおよびRは、各例において、別個に、水素、アルキルおよびシクロアルキルからなる群から選択され、そしてnは、0、1、2または3である;またはXは、NRであり、そしてRおよびRは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、飽和複素環式基、部分飽和複素環式基またはヘテロアリール基を形成し、ここで、該基は、必要に応じて、置換されているか、またはXは、CRであり、そしてRおよびRは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、飽和炭素環基、部分飽和炭素環基、アリール基、飽和複素環式基、部分飽和複素環式基または酸素含有ヘテロアリール基を形成し、ここで、該基は、必要に応じて、置換されている;但し、XがOであるとき、Rは、非置換ベンジルまたはt−ブチルではない;そしてXがCHであるとき、Rは、Hではない。
【特許文献1】米国特許第5,585,357号明細書
【特許文献2】国際公開第98/16502号パンフレット
【特許文献3】国際公開第99/18781号パンフレット
【特許文献4】国際公開第00/023421号パンフレット
【特許文献5】国際公開第00/061542号パンフレット
【非特許文献1】Science,1998,281,1283〜1312
【非特許文献2】Ellisら、Ann.Rev.Cell.Biol.,1991,7,663
【非特許文献3】Thornberry,Chem.Biol.,1998,5,R97〜R103
【非特許文献4】RanoおよびThornberry,Chem.Biol.4,149〜155(1997)
【非特許文献5】Mjalliら、Bioorg.Med.Chem.Lett.3,2689〜2692(1993)
【非特許文献6】Nicholsonら、Nature 376,37〜43(1995)
【非特許文献7】Thornberryら、Biochemistry 33,3934(1994)
【非特許文献8】Dolleら、J.Med.Chem.37,563〜564(1994)
【非特許文献9】Yaoitaら、Circulation,97,276(1998)
【非特許文献10】Endresら、J Cerebral Blood Flow and Metabolism,18,238,(1998)
【非特許文献11】Chengら、J.Clin.Invest.,101,1992(1998)
【非特許文献12】Yakovlevら、J Neuroscience,17,7415(1997)
【非特許文献13】Rodriquezら、J.Exp.Med.,184,2067(1996)
【非特許文献14】Grobmyerら、Mol.Med.,5,585(1999)
【非特許文献15】PlattnerおよびNorbeck,Drug Discovery Technologies,ClarkおよびMoos編、(Ellis Horwood,Chichester,England,1990)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
多数のカスパーゼ阻害剤が報告されているものの、それらが治療上有効な適当な薬理学的特性を持っているかどうかは、明らかではない。従って、インビボでアポトーシスを効果的に阻止するために、強力で安定かつ膜を浸透する低分子カスパーゼ阻害剤が引き続いて必要とされている。このような化合物は、カスパーゼ酵素が重要な役割を果たす前記疾患を治療する際に、非常に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0026】
(発明の要旨)
現在、本発明の化合物およびそれらの薬学的組成物は、カスパーゼおよび細胞性アポトーシスの阻害剤として特に有効であることが発見されている。これらの化合物は、一般式Iを有する:
【0027】
【化9】

ここで、
環Aは、必要に応じて置換したピペリジン環、テトラヒドロキノリン環またはテトラヒドロイソキノリン環である;
は、水素、CN、CHN、RまたはCHYである;
Rは、脂肪族基、アリール基またはアラルキル基から選択される必要に応じて置換した基である;
Yは、電気陰性脱離基である;
は、COH、CHCOH、またはそれらのエステル、アミドまたはイソエステルである;そして
は、水素、必要に応じて置換したアリール基、必要に応じて置換したアラルキル基または必要に応じて置換したC1〜6脂肪族基であり、Rは、アリール基またはヘテロサイクリル基から選択される必要に応じて置換した基であるか、またはRおよびRは、それらが結合する窒素と一緒になって、必要に応じて、置換または非置換の単環式、二環式または三環式の環である。
【0028】
本発明の化合物は、細胞モデルのアポトーシスにおいて、良好な効能と共に、ある範囲のカスパーゼ標的にわたって強力な阻害特性を有する。それに加えて、これらの化合物は、改良された細胞浸透性および薬物動態学的特性を有すると予想され、それらの効力の結果として、カスパーゼが関係している疾患に対して改良された効能を有すると予想される。
本願により、例えば、以下の発明が提供される:
(項目1) 式Iの化合物:
【化1】


ここで、
環Aは、必要に応じて置換したピペリジン環、テトラヒドロキノリン環またはテトラヒドロイソキノリン環である;
は、水素、CN、CHN、RまたはCHYである;
Rは、脂肪族基、アリール基またはアラルキル基から選択される必要に応じて置換した基である;
Yは、電気陰性脱離基である;
は、COH、CHCOH、またはそれらのエステル、アミドもしくはイソエステルである;そして
は、水素、必要に応じて置換したアリール基、必要に応じて置換したアラルキル基または必要に応じて置換したC1〜6脂肪族基であり、Rは、アリール基またはヘテロサイクリル基から選択される必要に応じて置換した基であるか、あるいはRおよびRは、それらが結合する窒素と一緒になって、必要に応じて、置換または非置換の単環式、二環式または三環式の環を形成する、
化合物。
(項目2) 以下からなる群から選択される1つ以上の特徴を有する、項目1に記載の化合物:
(a)Rは、CHYであり、ここで、Yは、電気陰性脱離基である;
(b)Rは、COH、それらのエステル、アミドまたはイソエステルである;そして
(c)Rは、水素原子、必要に応じて置換したアリール基、必要に応じて置換したアラルキル基または必要に応じて置換したC1〜6脂肪族基であり、Rは、アリール基またはヘテロサイクリル基から選択される必要に応じて置換した基であるか、あるいはRおよびRは、それらが結合する窒素と一緒になって、必要に応じて、インドール、イソインドール、インドリン、インダゾール、プリン、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、チアゾール、ピロール、ピロリジン、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、トリアゾール、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、カルバゾール、フェノチアジン、フェノキサジン、フェナントリジン、アクリジン、プリン、キノリジン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、プテリジン、キヌクリジンおよびフェナジンからなる群から選択される環を形成する、
化合物。
(項目3) 項目2に記載の化合物であって、ここで:
(a)Rが、CHYであり、ここで、Yが、電気陰性脱離基であり、
(b)Rが、COH、それらのエステル、アミドまたはイソエステルであり、そして
(c)Rが、水素原子、必要に応じて置換したアリール基、必要に応じて置換したアラルキル基または必要に応じて置換したC1〜6脂肪族基であり、Rが、アリール基またはヘテロサイクリル基から選択される必要に応じて置換した基であるか;あるいはRおよびRが、それらが結合する窒素と一緒になって、必要に応じて、インドール、イソインドール、インドリン、インダゾール、プリン、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、チアゾール、ピロール、ピロリジン、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、トリアゾール、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、カルバゾール、フェノチアジン、フェノキサジン、フェナントリジン、アクリジン、プリン、キノリジン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、プテリジン、キヌクリジンおよびフェナジンからなる群から選択される環を形成する、
化合物。
(項目4) −CHYが、−CHFである、項目3に記載の化合物。
(項目5) RおよびRが、それらが結合する窒素と一緒になって、インドール、イソインドール、インドリン、インダゾール、プリン、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、チアゾール、ピロール、ピロリジン、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、トリアゾール、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、カルバゾール、フェノチアジン、フェノキサジン、フェナントリジン、アクリジン、プリン、キノリジン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、プテリジン、キヌクリジンおよびフェナジンからなる群から選択される環を形成する、項目4に記載の化合物。
(項目6) 項目1〜5のいずれかに記載の化合物および薬学的に受容可能なキャリアを含有する、組成物。
(項目7) カスパーゼ阻害剤で治療することによって軽減される患者の疾患を治療するための方法であって、該方法は、このような治療が必要な患者に、式Iの化合物の治療有効量を投与する工程を包含する:
【化2】


ここで、
環Aは、必要に応じて置換したピペリジン環、テトラヒドロキノリン環またはテトラヒドロイソキノリン環である;
は、水素、CN、CHN、RまたはCHYである;
Rは、脂肪族基、アリール基またはアラルキル基から選択される必要に応じて置換した基である;
Yは、電気陰性脱離基である;
は、COH、CHCOH、またはそれらのエステル、アミドまたはイソエステルである;そして
は、水素、必要に応じて置換したアリール基、必要に応じて置換したアラルキル基または必要に応じて置換したC1〜6脂肪族基であり、Rは、アリール基またはヘテロサイクリル基から選択される必要に応じて置換した基であるか、あるいはRおよびRは、それらが結合する窒素と一緒になって、必要に応じて、置換または非置換の単環式、二環式または三環式の環を形成する、方法。
(項目8) 前記化合物が、以下の1つ以上の特徴を有する、項目7に記載の方法:
(a)環Aは、必要に応じて置換したピペリジン環であり、
(b)Rは、CHYであり、ここで、Yが、電気陰性脱離基であり、
(c)Rは、COH、それらのエステル、アミドまたはイソエステルであり、そして
(d)Rは、水素原子、必要に応じて置換したアリール基、必要に応じて置換したアラルキル基または必要に応じて置換したC1〜6脂肪族基であり、Rは、アリール基またはヘテロサイクリル基から選択される必要に応じて置換した基であるか、あるいはRおよびRは、それらが結合する窒素と一緒になって、必要に応じて、インドール、イソインドール、インドリン、インダゾール、プリン、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、チアゾール、ピロール、ピロリジン、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、トリアゾール、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、カルバゾール、フェノチアジン、フェノキサジン、フェナントリジン、アクリジン、プリン、キノリジン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、プテリジン、キヌクリジンおよびフェナジンからなる群から選択される環を形成する、
方法。
(項目9) 項目8に記載の方法であって、ここで:
(a)環Aが、必要に応じて置換したピペリジン環であり、
(b)Rが、CHYであり、ここで、Yが、電気陰性脱離基であり、
(c)Rが、COH、それらのエステル、アミドまたはイソエステルであり、そして
(d)Rが、水素原子、必要に応じて置換したアリール基、必要に応じて置換したアラルキル基または必要に応じて置換したC1〜6脂肪族基であり、Rが、アリール基またはヘテロサイクリル基から選択される必要に応じて置換した基であるか、あるいはRおよびRが、それらが結合する窒素と一緒になって、必要に応じて、インドール、イソインドール、インドリン、インダゾール、プリン、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、チアゾール、ピロール、ピロリジン、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、トリアゾール、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、カルバゾール、フェノチアジン、フェノキサジン、フェナントリジン、アクリジン、プリン、キノリジン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、プテリジン、キヌクリジンおよびフェナジンからなる群から選択される環を形成する、
方法。
(項目10) 項目7〜9のいずれかに記載の方法であって、前記化合物が、IL−1媒介疾患、アポトーシス媒介疾患、炎症性疾患、自己免疫性疾患、破壊性骨障害、増殖性障害、感染症疾患、変性疾患、壊死性疾患、過剰な食用アルコール摂取疾患、ウイルス媒介疾患、ブドウ膜炎、炎症性腹膜炎、骨関節炎、膵炎、喘息、成人性呼吸窮迫症候群、糸球体腎炎、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、硬皮症、慢性甲状腺炎、グレーヴス病、自己免疫性胃炎、糖尿病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性好中球減少症、血小板減少症、慢性活性肝炎、重症筋無力症、炎症性腸疾患、クローン病、乾癬、アトピー性皮膚炎、瘢痕、移植片対宿主病、臓器移植拒絶反応、骨粗鬆症、白血病および関連疾患、脊髄形成異常症候群、多発性骨髄腫関連骨障害、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、転移性メラノーマ、カポジ肉腫、多発性骨髄腫、出血性ショック、敗血症、敗血症ショック、火傷、志賀菌赤痢、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、ケネディ病、プリオン病、脳虚血、癲癇、心筋虚血、急性および慢性心臓病、心筋梗塞、鬱血性心不全、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈バイパス移植、脊椎筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、HIV関連脳炎、老化、脱毛症、脳卒中による神経学的損傷、潰瘍性大腸炎、外傷性脳傷害、脊髄傷害、B型肝炎、C型肝炎、G型肝炎、黄熱病、デング熱または日本脳炎、種々の形態の肝臓病、腎臓病、ポリアプティック腎臓病、H幽門関連胃潰瘍および十二指腸潰瘍、HIV感染、結核、髄膜炎、冠状動脈バイパス移植に関連した合併症の治療、または種々の形態の癌治療用の免疫療法から選択される疾患を治療するのに使用される、
方法。
(項目11) 前記化合物が、冠状動脈バイパス移植に関連した合併症を治療するのに使用される、項目7〜9のいずれかに記載の方法。
(項目12) 前記化合物が、細胞の保存に使用され、前記方法が、該細胞を該化合物またはその薬学的に受容可能な誘導体の溶液中に浸す工程を包含する、項目7〜9のいずれかに記載の方法。
(項目13) 前記化合物が、臓器移植または血液産物の保存に使用される、項目7〜9のいずれかに記載の方法。
(項目14) 前記化合物が、癌治療用の免疫療法の1成分として使用される、項目7〜9のいずれかに記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(発明の詳細な説明)
本発明は、カスパーゼ阻害剤として特に有効な新規化合物およびそれらの薬学的に受容可能な誘導体を提供する。本発明はまた、これらの化合物を使用して哺乳動物におけるカスパーゼ媒介疾患を治療する方法を提供する。これらの化合物は、一般式Iを有する:
【0030】
【化10】

ここで、
環Aは、必要に応じて置換したピペリジン環、テトラヒドロキノリン環またはテトラヒドロイソキノリン環である;
は、水素、CN、CHN、RまたはCHYである;
Rは、脂肪族基、アリール基またはアラルキル基から選択される必要に応じて置換した基である;
Yは、電気陰性脱離基である;
は、COH、CHCOH、またはそれらのエステル、アミドまたはイソエステルである;そして
は、水素、必要に応じて置換したアリール基、必要に応じて置換したアラルキル基または必要に応じて置換したC1〜6脂肪族基であり、Rは、アリール基またはヘテロサイクリル基から選択される必要に応じて置換した基であるか、またはRおよびRは、それらが結合する窒素と一緒になって、必要に応じて、置換または非置換の単環式、二環式または三環式の環である。
【0031】
他に指示がなければ、本明細書中で使用する以下の定義を適用する。「必要に応じて置換した」との語句は、「置換または非置換」との語句または「(非)置換」との用語と交換可能に使用され得る。他に指示がなければ、必要に応じて置換した基は、別個に選択された1個またはそれ以上の置換基を有し得る。
【0032】
本明細書中で使用する「脂肪族」との用語は、直鎖、分枝または環状C〜C12炭化水素を意味し、これらは、完全に飽和されているか、または1個またはそれ以上の不飽和単位を含有する。例えば、適当な脂肪族基には、置換または非置換の直鎖、分枝または環状アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基およびそれらの混成体(例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニル)が挙げられる。単独でか基または大きい部分の一部として使用される「アルキル」との用語は、1個〜12個の炭素原子を含有する直鎖および分枝鎖の両方を意味する。
【0033】
「ハロゲン」との用語は、F、Cl、BrまたはIを意味する。「ヘテロ原子」との用語は、窒素、酸素またはイオウを意味する。
【0034】
「アリール」との用語は、単環式または多環式の芳香族基、および単環式または多環式のヘテロ芳香族基(これらは、1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有する)を意味し、これらは、5個〜14個の原子を有する。このような基には、フェニル、ナフチル、アントリル、フラニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリジニル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリニル、キノリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、1,8−ナフチリジニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロフラニル、フタルイミジニル、テトラゾリルおよびクロマニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
「複素環式基」との用語は、1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有する飽和および部分的に不飽和の単環式または多環式環系を意味し、ここで、単環式の環は、好ましくは、5個〜7個の環原子を有し、そして多環式の環は、好ましくは、8個〜14個の環原子を有する。このような基には、アジラニル、オキシラニル、アゼチジニル、テトラヒドロフラニル、ピロリニル、ピロリジニル、ジオキソラニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピラニル、ピペリジニル、ジオキサニル、モルホリニル、ジチアニル、チオモルホリニル、ピペラジニル、トリチアニル、キヌクリジニル、オキセパニルおよびチエパニルが挙げられるが、これらに限定されない。「複素環」との用語は、飽和であれ不飽和であれ、また、必要に応じて置換した環を意味する。
【0036】
アリール基(ヘテロアリール基を含めて)またはアラルキル基(例えば、ベンジルまたはフェネチル)は、1個またはそれ以上の置換基を含有し得る。アリール基の不飽和炭素原子上の適当な置換基の例には、ハロゲン、−R、−OR、−SR、1,2−メチレンジオキシ、1,2−エチレンジオキシ、保護したOH(例えば、アシルオキシ)、フェニル(Ph)、置換Ph、−O(Ph)、置換−O(Ph)、−CH(Ph)、置換−CH(Ph)、−CHCH(Ph)、置換−CHCH(Ph)、−NO、−CN、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−NRCO、−NRNRC(O)R、−NRNRC(O)N(R、−NRNRCO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−CO、−C(O)R、−C(O)N(R、−OC(O)N(R、−S(O)、−SON(R、−S(O)R、−NRSON(R、−NRSO、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R、−(CHNHC(O)R、−(CHNHC(O)CH(V−R)(R)が挙げられ;ここで、Rは、H、置換または非置換脂肪族基(これは、好ましくは、1個〜3個の炭素を有する)、非置換ヘテロアリールまたは複素環、フェニル(Ph)、置換Ph、−O(Ph)、置換−O(Ph)、−CH(Ph)または置換−CH(Ph)である;yは、0〜6である;そしてVは、リンカー基である。この脂肪族基またはフェニル環上の置換基の例には、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノカルボニル、ハロゲン、アルキル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノカルボニルオキシ、ジアルキルアミノカルボニルオキシ、アルコキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、ヒドロキシ、ハロアルコキシまたはハロアルキルが挙げられる。
【0037】
脂肪族基または非芳香族複素環は、1個またはそれ以上の置換基を含有し得る。脂肪族基または非芳香族複素環の飽和炭素上の適当な置換基の例には、不飽和炭素について上で列挙したものたけでなく、以下が挙げられる:=O、=S、=NNHR、=NN(R、=N−、=NNHC(O)R、=NNHCO(アルキル)、=NNHSO(アルキル)または=NRが挙げられ、ここで、各Rは、別個に、水素、非置換脂肪族基または置換脂肪族基から選択される。この脂肪族基上の置換基の例には、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノカルボニル、ハロゲン、アルキル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノカルボニルオキシ、ジアルキルアミノカルボニルオキシ、アルコキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、ヒドロキシ、ハロアルコキシまたはハロアルキルが挙げられる。
【0038】
芳香族または非芳香族複素環上の置換可能な窒素は、必要に応じて、置換され得る。この窒素上の適当な置換基には、−R、−N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−SO、−SON(R、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(Rおよび−NRSOが挙げられる;ここで、Rは、H、脂肪族基、置換脂肪族基、フェニル(Ph)、置換Ph、−O(Ph)、置換−O(Ph)、−CH(Ph)、置換−CH(Ph)または非置換ヘテロアリールまたは複素環である。この脂肪族基またはフェニル環上の置換基の例には、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノカルボニル、ハロゲン、アルキル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノカルボニルオキシ、ジアルキルアミノカルボニルオキシ、アルコキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、ヒドロキシ、ハロアルコキシまたはハロアルキルが挙げられる。窒素およびイオウは、それらの酸化形状であり得、また、窒素は、四級化形状であり得る。
【0039】
「電気陰性脱離基」との用語は、当業者に公知の定義を有する(March,Advanced Organic Chemistry,4版、John Wiley & Sons,1992を参照)。電気陰性脱離基の例には、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)、アリール基およびアルキルスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、−SR、−OPO(R)(R)(ここで、Rは、脂肪族基である)、アリール基、アラルキル基、カルボサイクリル基、カルボサイクリルアルキル基、ヘテロサイクリル基またはヘテロサイクリルアルキル基であり、そしてRおよびRは、別個に、RまたはORから選択される。
【0040】
このR基がエステルまたはアミド形状のとき、本発明の化合物は、代謝開裂を受けて、対応するカルボン酸になり、これらは、活性カスパーゼ阻害剤である。それらが代謝開裂を受けるので、このエステル基またはアミド基の正確な性質は、本発明の作用には重要ではない。このR基の構造は、比較的に簡単なジエチルアミドからステロイド性エステルまで及び得る。Rカルボン酸のエステルアルコール部分の例には、C1〜12脂肪族基(例えば、C1〜6アルキルまたはC3〜10シクロアルキル)、アリール基(例えば、フェニル)、アラルキル基(例えば、ベンジルまたはフェネニル)、ヘテロサイクリル基またはヘテロサイクリルアルキル基が挙げられるが、これらに限定されない。適当なRヘテロサイクリル基の例には、1個または2個のヘテロ原子を有する5員〜6員の複素環(例えば、ピペリジニル、ピペラジニルまたはモルホリニル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
カルボン酸のアミドは、第一級、第二級または第三級であり得る。このアミド窒素上の適当な置換基には、Rエステルアルコールについて上で記述した脂肪族基、アリール基、アラルキル基、ヘテロサイクリル基またはヘテロサイクリルアルキル基から別個に選択された1個またはそれ以上の基が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、他のプロドラッグは、本発明の範囲内に含まれる。Bradley D.Anderson,「Prodrugs for Improved CNS Delivery」 in Advanced Drug Delivery Reviews(1996),19,171〜202を参照。
【0042】
カルボン酸とエステルまたはアミドとのアイソスターまたはバイオアイソスターは、親カルボン酸またはエステルと類似の生体特性を備えた新規化合物を作成するために、ある原子または原子の基との交換から得られる。このバイオアイソスター交換は、物理化学的または位相幾何学的なベースであり得る。カルボン酸の等量交換の一例には、CONHSO(アルキル)(例えば、CONHSOMe)がある。
【0043】
本発明の化合物(ここで、Rは、それぞれ、COHまたはCHCOH、γ−ケト酸またはδ−ケト酸である)は、開放形状(a)または環化ヘミケタール形状(b)のいずれかとして溶液中に存在し得る(γ−ケト酸に対してy=1、δ−ケト酸に対してy=2)。いずれかの異性体形状の本明細書中での描写は、他のものを含むことを意味する。
【0044】
【化11】

同様に、本発明の特定の化合物が互変異性形状または水和形状で存在し得ることは当業者に明らかであり、これらの化合物のこのような形状の全ては、本発明の範囲内である。他に述べられていなければ、本明細書中で描写した構造はまた、その構造の全ての立体化学形状(すなわち、各非対称中心のR配置およびS配置)を含むことを意味している。従って、本発明の化合物の単純立体化学的異性体だけでなく、鏡像異性体およびジアステレオマーの混合物もまた、本発明の範囲内である。他に述べられていなければ、本明細書中で描写した構造はまた、1個またはそれ以上の同位体に富んだ原子の存在だけが異なる化合物を含むことを意味する。例えば、水素を重水素または三重水素と交換するか炭素を13Cまたは14Cに富んだ炭素と交換すること以外は本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。
【0045】
本発明の他の実施形態は、環Aが必要に応じて置換したピペリジン環である式Iの化合物に関し、これは、式Iaで表される:
【0046】
【化12】

本発明の他の実施形態は、環Aが必要に応じて置換したテトラヒドロキノリン環である式Iの化合物に関し、これは、式Ibで表される:
【0047】
【化13】

本発明の他の実施形態は、環Aが必要に応じて置換したテトラヒドロイソキノリン環である式Iの化合物に関し、これは、式Icで表される:
【0048】
【化14】

環Aは、置換または非置換であり得る。適当な環A置換基の例には、ハロゲン、−R、−OR、−OH、−SR、保護したOH(例えば、アシルオキシ)、フェニル(Ph)、置換Ph、−O(Ph)、置換−O(Ph)、−NO、−CN、−NH、−NHR、−N(R)、NHCOR、−NHCONHR、−NHCON(R)、−NRC(O)R、−NHCOR、−COR、−COH、−COR、−CONHR、−CON(R)、−S(O)R、−SONH、−S(O)R、−SONHR、−NHS(O)R、=O、=S、=NNHR、=NNR、=N−OR、=NNHCOR、=NNHCOR、=NNHSORまたは=NRから選択される1個またはそれ以上の基が挙げられ、ここで、Rは、脂肪族基または置換脂肪族基である。好ましくは、Rは、C1〜6脂肪族基である。
【0049】
好ましいR基は、CHYであり、ここで、Yは、電気陰性脱離基である。最も好ましくは、Yは、Fである。
【0050】
およびRは、それらが結合する窒素と一緒になって、置換または非置換の単環式、二環式または三環式の環を形成し得る。このRN環系は、芳香族または非芳香族であり得、酸素、窒素またはイオウから選択される1個〜6個のヘテロ原子を有する。好ましくは、このRN環系の各環は、5個〜7個の環原子を有する。このような環の例には、インドール、イソインドール、インドリン、インダゾール、プリン、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、チアゾール、ピロール、ピロリジン、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、トリアゾール、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、カルバゾール、フェノチアジン、フェノキサジン、フェナントリジン、アクリジン、キノリジン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、プテリジン、キヌクリジンおよびフェナジンが挙げられる。
【0051】
本発明の好ましい化合物は、以下からなる群から選択される1つ以上の特徴、さらに好ましくは、全ての特徴を有する:
(a)Rは、CHYであり、ここで、Yは、電気陰性脱離基である;
(b)Rは、COH、それらのエステル、アミドまたはイソエステルである;そして
(c)Rは、水素原子、必要に応じて置換したアリール基、必要に応じて置換したアラルキル基または必要に応じて置換したC1〜6脂肪族基であり、Rは、アリール基またはヘテロサイクリル基から選択される必要に応じて置換した基であるか、またはRおよびRは、それらが結合する窒素と一緒になって、必要に応じて、インドール、イソインドール、インドリン、インダゾール、プリン、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、チアゾール、ピロール、ピロリジン、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、トリアゾール、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、カルバゾール、フェノチアジン、フェノキサジン、フェナントリジン、アクリジン、キノリジン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、プテリジン、キヌクリジンおよびフェナジンからなる群から選択される環を形成する。好ましいRまたはRアリール基は、フェニルまたは5員〜6員のヘテロ芳香族環(これは、窒素、酸素またはイオウから選択される1個〜3個のヘテロ原子を含有する)である。好ましいRアラルキル基は、好ましいアリール基で置換したC1〜3アルキリデン鎖である。好ましいRヘテロサイクリル基には、窒素、酸素またはイオウから選択される1個〜3個のヘテロ原子を含有する5員〜6員環が挙げられる。
【0052】
YがFであり、そしてRおよびRがそれらが結合する窒素と一緒になって必要に応じて以下からからなる群から選択される環を形成する化合物は、さらに好ましい:インドール、イソインドール、インドリン、インダゾール、プリン、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、チアゾール、ピロール、ピロリジン、ピロリン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、トリアゾール、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、カルバゾール、フェノチアジン、フェノキサジン、フェナントリジン、アクリジン、キノリジン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、プテリジン、キヌクリジンおよびフェナジン。RN−環系が、カルバゾール、ピペリジン、インドール、ジヒドロインドール、フェノチアジン、ジヒドロフェナントリジン、フェノキサジン、アクリジン、アクリジン−9−オン、β−カルボリンまたは9−チア−2,10−ジアザ−アントラセンである化合物は、さらに好ましい。RN−環系が、カルバゾール、フェノチアジンまたはジヒドロフェナントリジンである化合物は、最も好ましい。
【0053】
このRN−環系は、必要に応じて、置換され得る。このRN−環上の適当な置換基の例には、ハロゲン、−R、−OR、−OH、−SR、保護したOH(例えば、アシルオキシ)、フェニル(Ph)、置換Ph、−OPh、置換−OPh、−NO、−CN、−NH、−NHR、−N(R)、NHCOR、−NHCONHR、−NHCON(R)、−NRCOR、−NHCOR、−COR、−COH、−COR、−CONHR、−CON(R)、−S(O)R、−SONH、−S(O)R、−SONHR、−NHS(O)R、=O、=S、=NNHR、=NNR、=N−OR、=NNHCOR、=NNHCOR、=NNHSORまたは=NRから選択される1個以上の基が挙げられ、ここで、Rは、脂肪族基または置換脂肪族基である。好ましくは、Rは、C1〜6脂肪族基である。
【0054】
本発明の化合物の代表的な例は、表1で、以下で示されている
【0055】
【表1】




本発明の化合物は、一般に、以下の一般図式Iおよびそれに続く調製実施例により説明されているように、類似の化合物について当業者に公知の一般方法により、調製され得る。
【0056】
【化15】

薬剤:(a)H−(Ring A)−COR;(b)NaOH、THF、HO;(c)HNCH(CH)CH(OH)R;EDC、N,N−ジメチルアミノピリジン、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール;(d)i.Dess−Martinパーヨージナン(periodinane);ii.トリフルオロ酢酸、ジクロロメタン。
【0057】
上記図式Iは、本発明の化合物を調製する一般的な経路を示す。カルバモイルクロライド1(または類似のイソシアネート)は、アミノ酸エステルH−(Ring A)−CORでカップリングされて、尿素2が生じ得る。エステル2の加水分解により、酸3が得られる。もし、このエステルが第三級ブチルエステルであるなら、それは、トリフルオロ酢酸のような酸と水和され得る。酸3は、次いで、適当なアミノアルコールHNCH(CH)CH(OH)Rとカップリングされて、4が生じ得る。工程cでは、「EDC」は、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミドである。Rの性質に依存して、このアミノアルコールに代えて、アミノケトンが使用され得、それにより、引き続く酸化工程が回避される。RがCOtBuであるフルオロメチルケトンの場合、このアミノアルコールは、Reveszらの方法に従って、得ることができる。Tetrahedron Lett.,1994,35,9693。化合物4中の水酸基は、化合物Iに酸化され、これは、さらに、類似の化合物について当該技術分野で一般に公知の方法に従って、Rの性質に依存して、変性され得る。例えば、もし、生成物Iには、Rがカルボン酸である必要があるなら、4中のRは、好ましくは、エステルであり、それから先の工程は、そのエステル基の加水分解である。
【0058】
本発明の化合物を製造する特定の有用な中間体は、以下のようにして得ることができる。置換フェノチアジンは、市販されているか、J.I.G.Cadogan,S.Kulik,C.Thomson and M.J.Todd,J.Chem.Soc.,1970,2437〜2441で記述されているように調製され得るか、いずれかである。9,10−ジヒドロフェナントリジンは、G.M.Badger,J.H.Seidler and B.Thomson,J.Chem.Soc,1951,3207〜3211に従って調製した。カルバモイルクロライドは、市販されているか、R.Dahlbom and B.Bjorkqvist,Acta Chem.Scand.,15,1961,2043〜2046で記述されているように調製され得るか、いずれかである。
【実施例】
【0059】
(合成実施例)
(実施例1)
([3S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−オキソ−3−{[1−(フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタン酸)
【0060】
【化16】

方法A:(S)−(1−フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボン酸メチルエステル
【0061】
【化17】

ピペコリン酸メチル塩酸塩(1g、5.57mmol)のTHF(10ml)攪拌溶液に、フェノチアジンカルボニルクロライド(1.457g、5.57mmol)を添加し、続いて、ジイソプロピルエチルアミン(2.02mL、11.68mmol)を添加した。得られた溶液を、16時間攪拌した後、酢酸エチルと飽和NHCl水溶液との間で分配した。その有機層をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、そして蒸発させた。その残留物をフラッシュクロマトグラム(ヘキサン中の15%酢酸エチル)で精製して、無色のオイルとして、副表題化合物を得、これは、放置すると、結晶化した(1.823g、89%):
【0062】
【化18】

方法B:(S)−(1−フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボン酸
【0063】
【化19】

(S)−(1−フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボン酸メチルエステル(0.912g)のTHF(15ml)および水(8ml)の攪拌溶液に、2M NaOH(3.71mL)を添加し、その反応混合物を、16時間攪拌した。この反応混合物を炭酸水素ナトリウム(50ml)溶液に注ぎ、そして酢酸エチル(40ml)で抽出した。水相を酸性にし、そして酢酸エチル(2×75ml)で抽出した。有機抽出物を合わせ、乾燥し(MgSO)、そして濃縮して、白色固形物として、副表題化合物を得た(0.709g、81%):
【0064】
【化20】

方法C:[3S/R,4S/R (2S)]−5−フルオロ−4−ヒドロキシ−3−{[1−(フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタン酸第三級ブチルエステル:
【0065】
【化21】

(S)−(1−フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボン酸(233mg、0.658mmol)、3−アミノ−5−フルオロ−4−ヒドロキシペンタン酸第三級ブチルエステル(150mg、0.724mmol)、HOBt(98mg、0.724mmol)、DMAP(88mg、0.724mmol)および無水THF(10mL)の攪拌混合物を、0℃まで冷却し、次いで、EDC(139mg、0.724mmol)を添加した。この混合物を15時間にわたって室温まで暖め、次いで、減圧下にて濃縮した。その残留物をフラッシュクロマトグラム(ヘキサン中の50%酢酸エチル)で精製して、薄ピンク色発泡体として、副表題化合物を得た(294mg、82%):
【0066】
【化22】

方法D:[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−オキソ−3−{[1−(フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタン酸第三級ブチルエステル:
【0067】
【化23】

[3S/R,4S/R (2S)]−5−フルオロ−4−ヒドロキシ−3−{[1−(フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタン酸第三級ブチルエステル(294mg、0.541mmol)の無水DCM(10mL)攪拌溶液を、0℃で、1,1,1−トリアセトキシ−1,1−ジヒドロ−1,2−ベンズヨードキソール−3(1H)−オン(344mg、0.812mmol)で処理した。得られた混合物を、2時間にわたって、室温まで暖め、酢酸エチルで希釈し、次いで、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液の1:1混合物に注いだ。その有機層を除去し、その水層を酢酸エチルで再抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥し(NaSO)、そして濃縮した。その残留物をフラッシュクロマトグラム(ヘキサン中の30%酢酸エチル)で精製して、薄いピンク色発泡体として、副題化合物を得た(220mg、75%):
【0068】
【化24】

方法E:[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−オキソ−3−{[1−(フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタン酸:
【0069】
【化25】

[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−オキソ−3−{[1−(フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタン酸第三級ブチルエステル(130mg、0.24mmol)の無水DCM(5mL)攪拌氷冷溶液に、トリフルオロ酢酸(5mL)を添加した。この混合物を、0℃で、0.5時間攪拌し、次いで、室温で、0.5時間攪拌した。この混合物を減圧下にて濃縮し、次いで、その残留物を無水DCMに溶解した。過剰なトリフルオロ酢酸を除去するために、この工程を7回繰り返した。その粘性物質を、HPLC等級の水で2回凍結乾燥して、白色粉末として、表題化合物を得た(77mg、66%):
【0070】
【化26】

(実施例2)
([3S/R,(2S)]−3−{[1−(2−クロロフェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−4−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸)
【0071】
【化27】

これは、方法A〜Eで上記の手順と類似の手順を使用して、2−クロロフェノチアジンカルボニルクロライドから調製した(73mg、69%):
【0072】
【化28】

(実施例3)
([3S/R,(2S)]−3−{[1−(3−クロロフェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−4−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸)
【0073】
【化29】

これを、方法A〜Eで上記の手順と類似の手順を使用して、3−クロロフェノチアジンカルボニルクロライドから調製した(108mg、65%):
【0074】
【化30】

(実施例4)
([3S/R,(2S)]−3−{[1−(3,4−ジクロロフェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−4−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸)
【0075】
【化31】

この表題化合物を、方法A〜Eで上記の手順と類似の手順を使用して、3,4−ジクロロフェノチアジンカルボニルクロライドから調製した(91mg、66%):
【0076】
【化32】

(実施例5)
([3S/R,(2S)]−3−{[1−(2,6−ジクロロフェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−4−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸)
【0077】
【化33】

この表題化合物を、方法A〜Eで上記の手順と類似の手順を使用して、2,7−ジクロロフェノチアジンカルボニルクロライドから調製した(91mg、70%):
【0078】
【化34】

(実施例6)
([3S/R,(2S)]−3−{[1−(カルバゾール−9−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−4−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸)
【0079】
【化35】

この表題化合物を、方法A〜Eで上記の手順と類似の手順を使用して、9−カルバゾールカルボニルクロライドから調製した(180mg、75%):
【0080】
【化36】

(実施例7)
([3S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−オキソ−3−{[1−(6H−フェナントリジン−5−カルボニル)−ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタン酸)
【0081】
【化37】

この表題化合物を、方法A〜Eで上記の手順と類似の手順を使用して、9,10−ジヒドロフェナントリニンカルボニルクロライドから調製した(115mg、61%):
【0082】
【化38】

(実施例8)
([3S/R,(2S)]−3−{[1−(2−メチルフェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−4−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸)
【0083】
【化39】

この表題化合物を、方法A〜Eで上記の手順と類似の手順を使用して、2−メチルフェノチアジンカルボニルクロライドから調製した(3.7mg、17%):
【0084】
【化40】

(実施例9)
([3S/R,(2S)]−3−{[1−(2−トリフルオロメチルフェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−4−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸)
【0085】
【化41】

この表題化合物を、方法A〜Eで上記の手順と類似の手順を使用して、2−トリフルオロメチルフェノチアジンカルボニルクロライドから調製した(1.78g、98%):
【0086】
【化42】

(実施例10)
([3S/R,(2S)]−3−{[1−(2−メトキシフェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−4−フルオロ−4−オキソ−ペンタン酸)
【0087】
【化43】

この表題化合物を、方法A〜Eで上記の手順と類似の手順を使用して、2−メトキシフェノチアジンカルボニルクロライドから調製した(21mg、4%):
【0088】
【化44】

(実施例11)
([3S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−オキソ−3−{[1−(フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタミド)
【0089】
【化45】

無水THF(4ml)中の[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−オキソ−3−{[1−(フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタン酸(200mg、0.4mmol)(これは、実施例1のように調製した)の攪拌混合物に、EDC(84mg、0.44mmol)と、アンモニアの1,4−ジオキサン溶液(0.5M溶液0.8ml、4mmol)とを添加した。この混合物を、室温で、16時間攪拌し、次いで、減圧下にて、濃縮した。その残留物をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン中の6%メタノール)で精製して、白色固形物として、表題化合物を得た(35.5mg、18%):
【0090】
【化46】

(実施例12)
([3S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−オキソ−3−{[1−(フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタン酸エチルアミド)
【0091】
【化47】

無水DCM(8ml)中の[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−オキソ−3−{[1−(フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタン酸(196mg、0.4mmol)(これは、実施例1のように調製した)の攪拌混合物に、重合体結合EDC(400mg、0.8mmol)と、エチルアミンのTHF溶液(2M溶液0.6ml、12mmol)とを添加した。この混合物を、室温で、16時間攪拌し、次いで、減圧下にて、濃縮した。その残留物をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン中の2.5%メタノール)で精製して、白色固形物として、表題化合物を得た(22.7mg、11%):
【0092】
【化48】

(実施例13)
([3S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−オキソ−3−{[1−(フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタン酸ジエチルアミド)
【0093】
【化49】

無水DCM(4ml)中の[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−オキソ−3−{[1−(フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタン酸(200mg、0.4mmol)(これは、実施例1のように調製した)の攪拌混合物に、カルボジイミド(74mg、0.44mmol)およびジエチルアミン(0.62ml、6mmol)を添加した。この混合物を、室温で、16時間攪拌し、次いで、減圧下にて、濃縮した。その残留物をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン中の2.5%メタノール)で精製して、白色固形物として、表題化合物を得た(25.3mg、11%):
【0094】
【化50】

(実施例14)
([3S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−オキソ−3−{[1−(フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタン酸N,N−ジメチルアミノエチルアミド)
【0095】
【化51】

無水DCM(5ml)中の[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−オキソ−3−{[1−(フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタン酸(100mg、0.2mmol)(これは、実施例1のように調製した)の攪拌混合物に、重合体結合EDC(300mg、0.6mmol)およびN,N−ジメチルプロピルアミド(0.88ml、6mmol)を添加した。この混合物を、室温で、16時間攪拌し、次いで、減圧下にて、濃縮した。その残留物をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン中の2%メタノール)で精製して、白色固形物として、表題化合物を得た(16.5mg、14%):
【0096】
【化52】

(実施例15)
([3S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−オキソ−3−{[1−(フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタン酸N−メチルピペラジンアミド)
【0097】
【化53】

無水THF(4ml)中の[3S/R,(2S)]−5−フルオロ−4−オキソ−3−{[1−(フェノチアジン−10−カルボニル)ピペリジン−2−カルボニル]アミノ}−ペンタン酸(200mg、0.4mmol)(これは、実施例1のように調製した)の攪拌混合物に、EDC(84mg、0.44mmol)およびN−メチルピペラジン(0.88ml、8mmol)を添加した。この混合物を、室温で、16時間攪拌し、次いで、減圧下にて、濃縮した。その残留物をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン中の2%メタノール)で精製して、白色固形物として、表題化合物を得た(33mg、14%):
【0098】
【化54】

本発明の化合物は、カスパーゼを阻害するように設計されている。従って、本発明の化合物は、それらがアポトーシスを阻害する能力、IL−1βの放出を阻害する能力またはカスパーゼ活性を直接阻害する能力について、アッセイされ得る。これらの活性の各々のアッセイは、当該分野で公知であり、試験の節で以下で詳述されている。
【0099】
他の実施形態によれば、本発明は、上記のような本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な塩と、薬学的に受容可能なキャリアとを含有する組成物を提供する。
【0100】
本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩が、これらの組成物中で使用される場合、それらの塩は、好ましくは、有機または無機の酸および塩基から誘導される。このような酸性塩には、以下が挙げられる:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモエート、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシレートおよびウンデカン酸塩。塩基性塩には、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩およびマグネシウム塩)、有機塩基を有する塩(例えば、ジシクロヘキシルアミン塩)、N−メチル−D−グルカミン、およびアミノ酸(アルギニン、リシン)を有する塩などが挙げられる。
【0101】
また、この塩基性窒素含有基は、低級アルキルハロゲン化物(塩化、臭化およびヨウ化メチル、エチル、プロピル、およびブチル);硫酸ジアルキル(例えば、硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチルおよびジアミル);長鎖ハロゲン化物(例えば、塩化、臭化およびヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリル)、ハロゲン化アラルキル(例えば、臭化ベンジルおよびフェネチル)などのような薬剤で四級化され得る。それにより、水溶性または油溶性あるいは水分散性または油分散性の生成物が得られる。
【0102】
本発明の組成物および方法で使用する化合物はまた、選択的な生物学的特性を高める適切な官能性を付加することにより、改変され得る。このような改変は、当該技術分野で公知であり、一定の生物学的系(例えば、血液、リンパ系、中枢神経系)への生物学的浸透を高めること、経口利用可能性を高めること、注射による投与ができるように溶解性を高めること、代謝を変えることおよび排出速度を変えることを含む。
【0103】
これらの組成物で使用され得る薬学的に受容可能なキャリアには、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝液基質(例えば、リン酸塩)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン)、リン酸二ナトリウム水素、リン酸カリウム水素、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの基質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリラート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロック重合体、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。
【0104】
好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、哺乳動物(好ましくは、ヒト)に製薬投与するために製剤される。
【0105】
本発明のこのような薬学的組成物は、経口的、非経口的、吸入スプレーにより、局所的、経直腸的、経鼻的、経頬的、経膣的、あるいは移植されたレザバを介して、投与され得る。本明細書中で使用する「非経口」との用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液内、胸骨内、くも膜下腔内、肝臓内、病巣内および頭蓋内の注射あるいは注入技術を含む。好ましくは、これらの組成物は、経口投与または静脈内投与される。
【0106】
本発明の組成物の無菌の注射可能な形状は、水性または油性の懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、適当な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて、当該技術分野で公知の方法に従って、製剤され得る。この無菌の注射可能な製剤はまた、例えば、1,3−ブタノール中の溶液として、非毒性の非経口的に適当な希釈剤または溶媒中の無菌の注射可能な溶液または懸濁液であり得る。使用され得る適当なビヒクルおよび溶媒には、水、リンガー溶液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、従来、溶媒または懸濁媒体として、無菌の固定油が使用されている。この目的には、いずれかのブランドの固定油が使用され得、これには、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドが含まれる。脂肪酸(例えば、オレイン酸)およびそのグリセリド誘導体は、天然の薬学的に受容可能なオイル(例えば、オリーブ油またはひまし油、特に、それらのポリオキシエチレン化した型)と同様に、注射可能物の調製に有用である。これらのオイル溶液または懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤または分散剤(例えば、カルボキシメチルセルロースまたは類似の分散剤(これらは、通例、乳濁液および懸濁液を含有する薬学的に受容可能な投薬形態の処方物で、使用される))を含有し得る。他の一般に使用される界面活性剤(例えば、Tweens、Spanおよび他の乳化剤またはバイオアベイラビリティー向上剤(これらは、通例、薬学的に受容可能な固体、液体または他の投薬形態の製造で使用される))もまた、この処方目的に使用され得る。
【0107】
本発明の薬学的組成物は、任意の経口的に受容可能な投薬形態(これにはカプセル、錠剤、ならびに水性懸濁液または溶液が挙げられるが、これらに限定されない)で経口投与され得る。経口用途の錠剤の場合、通常使用されるキャリアには、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤もまた、典型的には、添加される。カプセル形態での経口投与のために有用な希釈剤には、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁液が経口使用のために必要とされる場合には、活性成分は乳化剤および懸濁剤と組み合わされる。所望であれば、特定の甘味剤、着香剤または着色剤もまた添加され得る。
【0108】
他方、本発明の薬学的組成物はまた、直腸投与用の座剤の形態で、投与され得る。これらの組成物は、この薬剤と、適当な非刺激性の賦形剤(これは、室温で固体であるが、直腸温では液体であり、従って、直腸で融けて薬物を放出する)とを混合することにより、調製され得る。このような物質には、ココアバター、密ろうおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0109】
本発明の薬学的組成物はまた、特に、治療の標的が、局所的な適用により容易にアクセスできる領域または器官(目、皮膚または下部腸道の疾患を含めて)を包含する場合、局所的に投与され得る。これらの領域または器官のそれぞれに適当な局所処方物は、容易に調製される。
【0110】
下部腸道に対する局所適用は、直腸座剤処方物(上記)により、または適当な浣腸処方物にて、行なわれ得る。局所的な皮膚間パッチもまた、使用され得る。
【0111】
局所的に適用するためには、この薬学的組成物は、1種またはそれ以上のキャリアに懸濁するかまたは溶解した活性成分を含む適当な軟膏で、処方され得る。本発明の化合物の局所投与用のキャリアには、鉱油、液状ペトロラタム、ホワイトペトロラタム、プロピレングリコール、ポリエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。他方、この薬学的組成物は、1種またはそれ以上の薬学的に受容可能なキャリアに懸濁するかまたは溶解した活性成分を含む適当なローションまたはクリームで処方され得る。適当なキャリアには、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
眼科用途には、この薬学的組成物は、防腐剤(例えば、ベンジルアルコニウムクロライド)と共にまたはそれなしのいずれかで、等張性のpHを調整した無菌生理食塩水の微細化懸濁液として、または、好ましくは、等張性のpHを調整した無菌生理食塩水の溶液として、処方され得る。他方、眼科用途には、この薬学的組成物はまた、軟膏(例えば、ペトロラタム)に処方され得る。
【0113】
本発明の薬学的組成物はまた、鼻エアロゾルまたは鼻吸入により、投与され得る。このような組成物は、薬学的処方物の当該技術分野で周知の技術に従って、調製され、生理食塩水の溶液として、ベンジルアルコールまたは他の適当な防腐剤、バイオアベイラビリティーを高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または他の通常の可溶化剤または分散剤を使用して、調製され得る。
【0114】
上記組成物は、IL−1媒介疾患、アポトーシス媒介疾患、炎症性疾患、自己免疫性疾患、破壊性骨障害、増殖性障害、感染症疾患、変性疾患、細胞死に関連する疾患、過剰な食用アルコール摂取疾患、ウイルス媒介疾患、ブドウ膜炎、炎症性腹膜炎、骨関節炎、膵炎、喘息、成人性呼吸窮迫症候群、糸球体腎炎、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、硬皮症、慢性甲状腺炎、グレーヴス病、自己免疫性胃炎、糖尿病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性好中球減少症、血小板減少症、慢性活性肝炎、重症筋無力症、炎症性腸疾患、クローン病、乾癬、アトピー性皮膚炎、瘢痕、移植片対宿主病、臓器移植拒絶反応、骨粗鬆症、白血病および関連疾患、脊髄形成異常症候群、多発性骨髄腫関連骨障害、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、転移性メラノーマ、カポジ肉腫、多発性骨髄腫、出血性ショック、敗血症、敗血症ショック、火傷、細菌性赤痢、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、ケネディ病、プリオン病、脳虚血、癲癇、心筋虚血、急性および慢性心臓病、心筋梗塞、鬱血性心不全、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈バイパス移植、脊髄筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、HIV関連脳炎、老化、脱毛症、脳卒中による神経学的損傷、潰瘍性大腸炎、外傷性脳傷害、脊髄傷害、B型肝炎、C型肝炎、G型肝炎、黄熱病、デング熱または日本脳炎、種々の形態の肝臓病、腎臓病、ポリアプティック腎臓病(polyaptic kidney disease)、H幽門関連胃潰瘍および十二指腸潰瘍、HIV感染、結核および髄膜炎に関連した治療用途で、特に有用である。これらの化合物および組成物はまた、冠状動脈バイパス移植に関連した合併症の処置、および種々の形態の癌処置用の免疫療法の1成分として、有用である。
【0115】
上記組成物中で存在している化合物の量は、実施例で記述したアッセイのいずれかで測定されるように、疾患の重症度またはカスパーゼ活性および/または細胞アポトーシスを検出可能な減少を引き起こすのに十分であるべきである。
【0116】
本発明の化合物はまた、臓器移植で必要とされ得るような細胞を保存する方法、または血液産物を保存する方法でも、有用である。カスパーゼ阻害剤の同様の用途は、(Schierleら、Nature Medicine,1999,5,97)で報告されている。この方法は、このカスパーゼ阻害剤を含有する溶液で保存される細胞または組織を治療する工程を包含する。必要なカスパーゼ阻害剤の量は、所定の細胞型に対するその阻害剤の有効性および細胞をアポトーシス細胞死から保護するのに必要な時間長に依存している。
【0117】
別の実施形態によれば、本発明の組成物は、さらに、別の治療剤を含有する。このような薬剤には、血栓溶解剤(例えば、組織プラスミノーゲン活性剤およびストレプトキナーゼ)が挙げられるが、これらに限定されない。第二の薬剤を使用するとき、この第二の薬剤は、別の投薬形状として、または本発明の化合物または組成物との単一投薬形状の一部として、いずれかで投与され得る。
【0118】
任意の特定の患者に対する特定の投薬量および治療レジメンは、種々の要因に依存し、これには、使用する特定の化合物の活性、その患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別および常食、この化合物の投与時間および排出速度、特定の薬剤の組合せ、および治療する医師の判断および治療すべき特定の疾患の発病度が含まれることも、当然理解されるはずである。活性成分の量はまた、もしあれば、この成分と共に投与される特定の化合物および他の治療剤に依存する。本明細書中で使用する「患者」との用語は、温血動物(例えば、ラット、マウス、イヌ、ネコ、モルモット、および霊長類(例えば、ヒト))を意味する。
【0119】
好ましい実施形態では、本発明は、前記疾患の1つに罹った哺乳動物を治療する方法を提供し、この方法は、該哺乳動物に、上記薬学的に受容可能な組成物を投与する工程を包含する。この実施形態では、もし、患者がまた別の治療剤またはカスパーゼ阻害剤を投与されるなら、それは、単一投薬形状で、または別々の投薬形状で、本発明の化合物と共に送達され得る。別々の投薬形状で投与される場合、他のカスパーゼ阻害剤または薬剤は、本発明の化合物を含有する薬学的に受容可能な組成物の投与前、投与と同時または投与に続いて、投与され得る。
【0120】
本発明をさらに充分に理解するために、以下の成体試験の実施例を示す。これらの実施例は、例示の目的だけのためのものであり、いずれの様式でも、本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【0121】
(生体試験の実施例)
(実施例16)
(酵素アッセイ)
カスパーゼ阻害アッセイは、精製した組換えヒトカスパーゼ−1、−3または−8による蛍光発生基質の開裂に基づいている。これらのアッセイは、各酵素に特異的な基質を使用して、Garcia Calvoら(J.Biol.Chem.273(1998),32608〜32613)が報告した様式とほぼ同じ様式で、実行される。カスパーゼ−1用の基質は、Acetyl−Tyr−Val−Ala−Asp−アミノ−4−メチルクマリンである。カスパーゼ−3および−8用の基質は、Acetyl−Asp−Glu−Val−Asp−アミノ−4−メチルクマリンである。
【0122】
特定の阻害剤濃度で観察された酵素不活性化速度(kobs)は、非線形最小二乗分析コンピュータープログラム(PRISM 2.0;GraphPadソフトウェア)を使用して、Thornberryら(Biochemistry
33(1994),3943〜3939)により誘導された等式にデータを直接当てはめることにより、算出される。二次速度定数kinactを得るために、kobs値を、それらの各阻害剤濃度に対してプロットし、そしてkinact値を、引き続いて、算出した線形回帰により、計算する。
【0123】
実施例16で試験した化合物は、カスパーゼ−1、カスパーゼ−3およびカスパーゼ−8に対して、kinact>50000M−1−1を有する。
【0124】
(実施例17)
(末梢血単核細胞(PBMC)の混合集団からのIL−1β分泌の阻害)
カスパーゼ−1によるプレ−IL−1βのプロセシングは、種々の細胞源を使用して、細胞培養物で測定され得る。健康なドナーから得たヒトPBMCは、リンパ球および単核細胞の混合集団を提供し、これは、多くの種類の生理学的刺激物に応答して、一連のインターロイキンおよびサイトカインを生じる。
【0125】
(実験手順)
その試験化合物を、ジメチルスルホキシド(DMSO,Sigma #D−2650)に溶解して、100mMのストック溶液を得る。これを、以下からなる完全培地で希釈する:10%熱不活性化FCS(Gibco BRL #10099−141)を含有するRPMI、2mMのL−グルタミン(Sigma,#G−7513)、100Uのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシン(Sigma #P−7539)。試験化合物の最終濃度範囲は、8回の希釈工程にわたって、100μMから6nMである。試験化合物の最高濃度は、このアッセイでの0.1%DMSOに等しい。
【0126】
ヒトPBMCを、Ficoll−Paque白血球分離媒体(Amersham,#17−1440−02)上での遠心分離を使用して、血液バンクから得たBuffy Coatsから単離し、その細胞アッセイを、無菌96ウェル平底プレート(Nunc)で実行する。各ウェルは、50ng/mlの最終濃度で、100μlの細胞懸濁液(1×10個の細胞)、50μlの化合物希釈物および50μlのLPS(Sugma #L−3012)を含有する。対照は、細胞+/−LPS刺激物およびDMSO連続希釈物(これは、化合物と同じ様式で希釈した)からなる。これらのプレートを、37℃で、5%COおよび95%湿度の雰囲気中にて、16〜18時間インキュベートする。
【0127】
16〜18時間後、これらのプレートを、100×gで、18℃で、15分間遠心分離した後、これらの上澄み液を収集し、それらのIL−1β含量についてアッセイする。この上澄み液中の成熟IL−1βの測定は、業者の使用説明書に従って、Quantikineキット(R & D System)を使用して、実行する。陽性コントロールウェル中のRBMCについて、約600〜1500pg/mlの成熟IL−1βレベルを測定する。
【0128】
これらの化合物の阻害効力は、IC50値で表わされ得、これは、陽性コントロールと比べて、この成熟IL−1β分泌の50%が上澄み液で検出される阻害剤の濃度である。
【0129】
表1から選択した化合物を、実施例17に従って試験したところ、PBMCからのIL−1βの阻害について、2μM未満のIC50値を生じることが分かった。
【0130】
(実施例18)
(抗−Fas誘発アポトーシスアッセイ)
細胞アポトーシスは、Fas配位子(FasL)をそのレセプタであるCD95(Fas)に結合することにより、誘発され得る。CD95は、関連レセプタ(これは、デスレセプタとして知られている)の1ファミリーの1つであり、これは、このカスパーゼ酵素カスケードの活性化によって、細胞でのアポトーシスを誘発し得る。この過程は、アダプタ分子であるFADD/MORT−1がCD−95レセプタリガンド複合体の細胞質ドメインに結合することにより、開始される。カスパーゼ−8は、次いで、FADDに結合し、そして活性化されて、下流カスパーゼの活性化および引き続く細胞アポトーシスを含む事象のカスケードを開始する。アポトーシスはまた、抗体を使用して、FasLよりもむしろ、CD95、を発現している細胞(例えば、Jurkat E6.1 T細胞のリンパ腫細胞系)において、細胞表面CD95を架橋することにより、誘発し得る。抗−Fas誘発アポトーシスはまた、カスパーゼ−8の活性化により、誘発される。これにより、カスパーゼ−8媒介アポトーシス経路の阻害用のスクリーン化合物に対する細胞ベースアッセイの基礎が得られる。
【0131】
(実験手順)
Jurkat E6.1細胞を、完全培地(これは、RPMI−1640(Sigma No)+10%ウシ胎児血清(Gibco BRL No.10099−141)+2mM L−グルタミン(Sigma No.G−7513)からなる)中で培養する。これらの細胞を、対数期の成長で収集する。100mlの細胞を、5〜8×10個の細胞/mlで、無菌50ml Falcon遠心管に移動して、室温で、100×gで、5分間遠心分離する。その上澄み液を除去し、合わせた細胞ペレットを、完全培地25ml中に懸濁させる。これらの細胞を数え、その密度を、完全培地を使って、2×10個の細胞/mlに調節する。
【0132】
この試験化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)(Sigma No.D−2650)に溶解して、100mMストック溶液を得る。これを、完全培地中にて、400μMまで希釈し、次いで、その細胞アッセイプレートに添加する前に、96ウェルプレートで連続希釈する。
【0133】
この細胞懸濁液(2×10個の細胞)100μlを、無菌96ウェル丸底クラスタープレート(Costar No.3790)の各ウェルに添加する。これらのウェルに、適切な希釈率の化合物溶液50μlおよび抗−Fas抗体50μl、最終濃度10ng/mlのクローンCH−11(Kamiya No.MC−060)を添加する。コントロールウェルは、ビヒクルコントロールとしてDNSOの連続希釈物を使ったこと以外は、抗体および化合物を差し引いて設定する。これらのプレートを37℃で5% COおよび95%湿度雰囲気中で、16〜18時間インキュベートする。
【0134】
これらの細胞のアポトーシスを、Boehringer−Mannheim製の「Cell Death Detection Assay」、No.1544 675を使用して、DNA断片化の定量により、測定する。16〜18時間のインキュベーション後、これらのアッセイプレートを、室温で、5分間100×gで遠心分離する。この上澄み液の150μlを除去し、そして150μlの新鮮完全培地で置き換える。これらの細胞を、次いで、収集し、各ウェルに、そのアッセイキットで供給して溶解緩衝液200μlを添加する。これらの細胞を粉砕して、完全な溶解を確認し、そして4℃で、30分間インキュベートする。これらのプレートを、次いで、1900×gで、10分間遠心分離し、その上澄み液を、供給したインキュベーション緩衝液中にて、1:20で希釈する。この溶液100μlを、次いで、このキットに同梱された業者の使用説明書に従って、正確にアッセイする。その最終基質を添加した後、SPECTRAmax Plusプレート読み取り装置(Molecular Devices)で、OD405nmを20分間測定する。化合物の濃度に対して、OD405nmをプロットし、そして、その曲線適合プログラムSOFTmax Pro(Molecular Devices)を使用して、4つのパラメータフィットオプションを使って、これらの化合物に対するIC50を計算する。表1から選択した化合物を、実施例18に従って試験したところ、FAS誘発アポトーシスアッセイにおける活性について、100nM未満のIC50値を生じることが分かった。
【0135】
本発明者は、本発明の多数の実施形態を記述したものの、本発明の基本的な例示は、本発明の化合物および方法を使用する他の実施形態を提供するために、変更し得ることが明らかである。従って、本発明の範囲は、例として先に提示した特定の実施形態よりもむしろ、添付した請求の範囲により規定されることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の化合物。

【公開番号】特開2008−297321(P2008−297321A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198860(P2008−198860)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【分割の表示】特願2002−526864(P2002−526864)の分割
【原出願日】平成13年9月12日(2001.9.12)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】