説明

カチオン性に安定化されかつ水中に再分散可能なポリマー粉末組成物の製造法

1種以上のエチレン性不飽和モノマーを、場合により非イオン性保護コロイド及び/又は非イオン性乳化剤の存在で水性媒体中でラジカル重合させ、かつ引き続き乾燥させる、カチオン性に安定化されかつ水中に再分散可能なポリマー粉末組成物の製造法において、ここで得られる水性ポリマー分散液を乾燥助剤としてのカチオン性保護コロイドの存在で乾燥させることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種以上のエチレン性不飽和モノマーを、非イオン性保護コロイド及び/又は非イオン性乳化剤の存在で水性媒体中でラジカル重合させ、かつ引き続き乾燥させる、カチオン性に安定化されかつ水中に再分散可能なポリマー粉末組成物の製造法に関する。
【0002】
水性ポリマー分散液の安定化は、界面活性特性を有する分散剤により達成可能である。保護コロイド又は乳化剤の形の水溶性化合物により前記機能が実現される。この場合、安定化は、例えば非イオン性ポリマー及び乳化剤による立体的な相互作用により、又は、ポリマー又は乳化剤中のアニオン性又はカチオン性の官能基による静電相互作用により、又はこれらからの相応する組み合わせにより達成され得る。
【0003】
多岐にわたる用途で、例えば種々の異なる基体用の被覆剤又は接着剤として使用される、ビニルエステル、塩化ビニル、(メタ)アクリレートモノマー、スチレン、ブタジエン及び/又はエチレンのモノマーをベースとする再分散可能な分散粉末の製造の際に、ポリビニルアルコールは重合及び乾燥の際の保護コロイドとして有利であり、それというのも、ポリビニルアルコールは、粉末に早期の粒子凝集に対する有効な安定性を付与するためである。しかしながら、最終用途において多量の分散粉末が使用される場合、ポリビニルアルコール含分は不利な結果をもたらし得る。例えば、セメント又は石膏をベースとするポリマー改良された水硬性結合モルタル材の加工性は、高いコテ粘着性及び高い粘度に基づき、マイナスの影響を受ける。更に、高いポリビニルアルコール含分は、モルタル材を用いて製造された接着化合物の低いフレキシビリティーを引き起こす。
【0004】
乾燥助剤としてのポリビニルアルコールに対する可能な代替物として、メラミンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物(DE−A 2049114)、ナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物(DE−A 2445813)、フェノールスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物(EP−A 407889)が記載されており、又はジヒドロキシジフェニルスルホン酸の脂肪族アルデヒド縮合生成物(WO−A 2005080478)が使用されている。更に、リグニンスルホネート(EP−A 149098)又はアニオン性基で官能化された高分子電解質(EP−A 073807、EP−A 982351)が使用されている。前記代替物の場合、ブロック安定性でかつ迅速に再分散可能な粉末を得るのに必要な乾燥助剤の使用量が多いことが不利である。更に、スルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はリグニンスルホネートを用いた場合に生じるモルタル材の褐色の着色は、特定の用途において支障をきたす。
【0005】
カチオン性に安定化された分散粉末はすでに従来技術において記載されている:WO−A 00/05275の記載から、カチオン性モノマーを水性媒体中で重合させ、かつここでin−situで形成されるポリマーの存在で他のモノマーを重合させる方法は公知である。それにより得られるポリマー分散液は、更に、ポリビニルアルコールの存在で噴霧乾燥される。これと類似の方法がWO−A 00/05283に記載されており、その際、ここで、該方法の進行の際には不均一なモルホロジーを有するコポリマー粒子が形成される。しかしながら前記方法の欠点は、初めに得られたポリマー分散液を噴霧乾燥することによって分散粉末を製造するためには、噴霧乾燥保護コロイドとしてのポリビニルアルコールが多量に必要であるため、粉末の使用量が高い場合には上記の欠点が生じることである。
【0006】
EP−A 0770640には、水性ポリマー分散液を乾燥させ、その分散されたポリマー粒子が負又は正の表面電荷を有しており、その際、乾燥剤として、その表面電荷が、分散されたポリマー粒子の表面電荷と反対であるポリイオンを選択する、再分散可能なポリマー粉末の製造法が記載されている。前記方法の欠点は、噴霧乾燥処理の前に分散液及び保護コロイドを混合する際にポリマー粒子の部分的な凝結が生じることがあるため、得られた粉末は劣悪な再分散性を有し得ることである。
【0007】
WO−A 98/13411には、アニオン性基、有利にCOOH基を含む乳化重合体を、両性ポリマー、有利にカゼイン又はカゼインナトリウムを用いて噴霧乾燥させることにより得られる、再分散可能な分散粉末の製造が記載されている。噴霧乾燥の際の保護コロイドの使用量は2〜10質量%であると記載されているが、しかしながら10質量%でようやく完全に接着しない流動性の粉末が得られる。保護コロイドであるカゼインの欠点は、天然由来であること、及びこれに付随して生成物の品質が変動することであり、これは粉末品質の不変性に不利な影響を及ぼす。更に、カゼインは全てのタンパク質と同様にアルカリ性アンモニア中で分解し、これはVOC負荷(VOC= volatile organic Compounds、揮発性有機化合物)を招く。
【0008】
前記の背景に対して、それ自体がバインダーとして作用するポリビニルアルコールの利点を利用するが、但し、分散粉末の使用量が多い場合に加工の欠点を低減させ、かつ水硬性結合材料における改善されたフレキシビリティーをもたらす分散粉末を開発するという課題が存在していた。
【0009】
本発明の対象は、1種以上のエチレン性不飽和モノマーを、非イオン性保護コロイド及び/又は非イオン性乳化剤の存在で水性媒体中でラジカル重合させ、かつ引き続き乾燥させる、カチオン性に安定化されかつ水中に再分散可能なポリマー粉末組成物の製造法において、ここで得られる水性ポリマー分散液を乾燥助剤としてのカチオン性保護コロイドの存在で乾燥させることを特徴とする方法である。
【0010】
適当なカチオン性保護コロイドは、カチオン電荷を有するポリマーである。そのようなポリマーは、例えばE.W. Flick, Water-Soluble Resins - an Industrial Guide, Noyes Publications, Park Ridge, N.J., 1991に記載されている。カチオン性モノマー単位を含むポリマーは有利であり、4級アンモニウム基、スルホニウム基及びホスホニウム基を有するモノマー単位は特に有利である。ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、ジアリルジエチルアンモニウムクロリド(DADEAC)、(3−メタクリルオキシ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド(MPTAC)、(3−メタクリルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド(METAC)、(3−メタクリルアミド)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド(MAPTAC)、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート又は3−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAEMA又はDMAPMA、プロトン化種がpH≦5である場合)を含む群からの1種以上のカチオン性モノマーのホモポリマー又は混合ポリマーは最も有利である。
【0011】
一般に、カチオン性保護コロイドは、カチオン性保護コロイドの全質量に対して20〜100質量%、有利に50〜100質量%、特に有利に100質量%の、カチオン性モノマー単位を含有する。適当な非イオン性の共重合性モノマーは、カルボン酸基中に1〜15個のC原子を有するビニルエステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ドデカン酸ビニル;アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メタクリル酸及びアクリル酸と4〜13個のC原子を有するアルコールとのエステル、C2〜C4アルキレン単位及び350〜2000g/モルの分子量を有するポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、並びにN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリルオキシプロピルトリアルコキシ−及びメタアクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン及びビニルメチルジアルコキシシラン及び/又は上記の非イオン性コモノマーの混合物である。
【0012】
カチオン性保護コロイドは、当業者に公知の重合法を用いて製造することができ、例えば、水溶液中、溶剤混合物中又は塩の存在でのフリーラジカル重合により、また例えば、沈殿重合で、溶液又は溶剤混合物中、例えば懸濁液中でのポリマー類似反応により、又は例えば逆乳化重合により製造することができる。開始剤はこの場合水溶性又は油溶性であってよく、過硫酸塩、過酸化物、アゾ化合物並びに酸化/還元開始剤対の群に由来する。とりわけ、最後に記載した逆乳化重合法ないし油中水型重合法を用いた場合、5000000g/モルを上回る分子量を有する極めて高分子のカチオン性ポリマーが達成される。ポリマー類似反応によりカチオン性保護コロイドを製造する場合、カチオン性モノマー単位を得るためには、相応する非イオン性保護コロイドとカチオン性化合物とを反応させる。これに関する一例は、ポリビニルアルコールとカチオン性アルデヒドとのアセタール化である。
【0013】
水中で、低い固体含分で(有利に≦40質量%)、水溶性開始剤、例えばアゾ開始剤又はレドックス開始剤の存在で、場合により分子量調節剤、例えばメルカプトプロピオン酸又は2−メルカプトエタノールの存在での溶液重合による製造は最も有利である。
【0014】
10〜250、特に有利に25〜130のK値(DIN 53726に準拠した測定、水中で1質量%、25℃、ウベローデ粘度計)を有するカチオン性保護コロイドは有利である。ウベローデ粘度計におけるPVCの粘度測定のための規格であるDIN 53726との相違点は、溶剤としてシクロヘキサノンの代わりに水を使用することである。カチオン性保護コロイドのヘプラー粘度は、1〜50mPas、有利に1〜25mPas、最も有利に1〜15mPasである(それぞれDIN 53015に準拠した20℃でのヘプラー法による測定)。
【0015】
被膜形成性のベースポリマーの水性ポリマー分散液の製造に好適なモノマーは、1〜15個のC原子を有する非分枝鎖又は分枝鎖アルキルカルボン酸のビニルエステル、1〜15個のC原子を有するアルコールのメタクリル酸エステル及びアクリル酸エステル、ビニル芳香族化合物、オレフィン、ジエン及びビニルハロゲン化物である。
【0016】
好ましいビニルエステルは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ビニル−2−エチルヘキサノエート、ビニルラウレート、1−メチルビニルアセテート、ビニルピバレート及び9〜13個のC原子を有するα−分枝鎖モノカルボン酸のビニルエステル、例えばVeoVa9(R)又はVeoVa10(R)(Resolution社の商標名)である。酢酸ビニルは特に有利である。有利なメタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノルボルニルアクリレートである。メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートは特に有利である。オレフィン及びジエンの例は、エチレン、プロピレン及び1,3−ブタジエンである。適当なビニル芳香族化合物は、スチレン及びビニルトルエンである。適当なビニルハロゲン化物は塩化ビニルである。
【0017】
場合により、ベースポリマーの全質量に対して、さらに0.05〜50質量%、好ましくは1〜10質量%の補助モノマーが共重合されることができる。補助モノマーの例は、エチレン系不飽和のモノカルボン酸及びジカルボン酸、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸及びマレイン酸;エチレン系不飽和カルボン酸アミド及び−ニトリル、好ましくはアクリルアミド及びアクリロニトリル;フマル酸及びマレイン酸のモノエステル及びジエステル、例えばジエチルエステル及びジイソプロピルエステル、並びに無水マレイン酸、エチレン系不飽和スルホン酸もしくはそれらの塩、好ましくはビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸である。更なる例は、予備架橋性コモノマー、例えば多エチレン性不飽和のコモノマー、例えばジビニルアジペート、ジアリルマレエート、アリルメタクリレート又はトリアリルシアヌレート、又は後架橋性コモノマー、例えばアクリルアミドグリコール酸(AGA)、メチルアクリルアミドグリコール酸メチルエステル(MAGME)、N−メチロールアクリルアミド(NMA)、N−メチロールメタクリルアミド(NMMA)、N−メチロールアリルカルバメート、アルキルエーテル、例えばイソブトキシエーテル又はN−メチロールアクリルアミドの、N−メチロールメタクリルアミドの及びN−メチロールアリルカルバメートのエステルである。エポキシド官能性コモノマー、例えばグリシジルメタクリレート及びグリシジルアクリレートも適している。更なる例は、ケイ素官能性コモノマー、例えばアクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)シラン及びメタクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)シラン、ビニルトリアルコキシシラン及びビニルメチルジアルコキシシランであり、その際、アルコキシ基として例えばメトキシ基、エトキシ基及びエトキシプロピレングリコールエーテル基が含まれていてよい。ヒドロキシ基又はCO基を有するモノマー、例えばメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル及びアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、例えばヒドロキシエチル−、ヒドロキシプロピル−又はヒドロキシブチルアクリレート又は−メタクリレート並びにジアセトンアクリルアミド及びアセチルアセトキシエチルアクリレート又は−メタクリレートのような化合物も挙げることができる。更に適当なモノマーは、ビニルアルキルエーテル、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルオクタデシルエーテルである。
【0018】
ベースポリマーとして適当なホモポリマー又は混合ポリマーの例は、酢酸ビニルホモポリマー、酢酸ビニルとエチレンとの混合ポリマー、酢酸ビニルとエチレンと1種以上の他のビニルエステルとの混合ポリマー、酢酸ビニルとエチレンとアクリル酸エステルとの混合ポリマー、酢酸ビニルとエチレンと塩化ビニルとの混合ポリマー、スチレン−アクリル酸エステル−コポリマー、スチレン−1,3−ブタジエン−コポリマーである。
【0019】
酢酸ビニルホモポリマー;
酢酸ビニルとエチレン1〜40質量%との混合ポリマー;
酢酸ビニルとエチレン1〜40質量%とカルボン酸基中に1〜15個のC原子を有するビニルエステル、例えばプロピオン酸ビニル、ドデカン酸ビニル、9〜13個のC原子を有するα−分枝鎖カルボン酸のビニルエステル、例えばVeoVa9(R)、VeoVa10(R)、VeoVa11(R)の群からの1種以上の他のコモノマー1〜50質量%との混合ポリマー;
酢酸ビニルとエチレン1〜40質量%と有利に1〜15個のC原子を有する非分枝鎖又は分枝鎖アルコールのアクリル酸エステル、特にn−ブチルアクリレート又は2−エチルヘキシルアクリレート1〜60質量%との混合ポリマー;
及び、酢酸ビニル30〜75質量%、ビニルラウレート又は9〜13個のC原子を有するα−分枝鎖カルボン酸のビニルエステル1〜30質量%、並びに1〜15個のC原子を有する非分枝鎖又は分枝鎖アルコールのアクリル酸エステル、特にn−ブチルアクリレート又は2−エチルヘキシルアクリレート1〜30質量%を有し、更にエチレン1〜40質量%を含有する混合ポリマー;
酢酸ビニルとエチレン1〜40質量%と塩化ビニル1〜60質量%との混合ポリマー;
は有利であり、その際、前記ポリマーは更に上記の補助モノマーを上記の量で含有してよく、かつ質量%表示の合計はそれぞれ100質量%である。
【0020】
(メタ)アクリル酸エステルポリマー、例えばn−ブチルアクリレート又は2−エチルヘキシルアクリレートの混合ポリマー又はメチルメタクリレートとn−ブチルアクリレート及び/又は2−エチルヘキシルアクリレート及び場合によりエチレンとのコポリマー;
メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートの群からの1種以上のモノマーを有するスチレン−(メタ)アクリル酸エステルコポリマー;
メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート及び場合によりエチレンの群からの1種以上のモノマーを有する酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステルコポリマー;
スチレン−1,3−ブタジエンコポリマー;
も有利であり、その際、前記ポリマーは更に上記の補助モノマーを上記の量で含有してよく、かつ質量%表示の合計はそれぞれ100質量%である。
【0021】
モノマーの選択あるいはコモノマーの質量割合の選択は、この場合に、一般に−50℃〜+50℃、有利には−30℃〜+10℃のガラス転移温度Tgが得られるように行われる。ポリマーのガラス転移温度Tgは、示差走査熱量測定法(DSC)を用いて公知方法で算出されることができる。TgはFox式を用いて近似的に見積もられることもできる。Fox T.G.,Bull.Am.Physics Soc.1,3,第123頁(1956)によれば、
1/Tg=x1/Tg1+x2/Tg2+…+xn/Tgn
[式中、
xnは、モノマーnの質量分率(質量%/100)を表し、かつ
Tgnは、モノマーnのホモポリマーのケルビンでのガラス転移温度である]
が成り立つ。ホモポリマーについてのTg値は、Polymer Handbook 第2版,J.Wiley&Sons,New York(1975)に挙げられている。
【0022】
ホモポリマー及び混合ポリマーの製造は有利に乳化重合法に従って行われ、その際、重合温度は、一般に、しかしながら必須ではないが100℃未満である。
【0023】
重合は、重合法に関係なく、シードラテックスを使用して又はシードラテックスを用いずに、反応混合物の全て又は個々の成分の装入下に、又は反応混合物の成分又は個々の成分の部分的な装入及び後計量供給下に、又は装入せずに計量供給法により実施されることができる。分散液の製造の際、コモノマーを全て装入してもよいし(バッチ式)、モノマーの一部を装入し、残分を計量供給してもよい(セミバッチ式)。
【0024】
重合の開始は、乳化重合に一般に用いられる水溶性の開始剤又はレドックス開始剤組合せを用いて行われる。水溶性開始剤の例は、ペルオキソ二硫酸のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩、過酸化水素、t−ブチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ペルオキソ二リン酸カリウム、t−ブチルペルオキソピバレート、クメンヒドロペルオキシド、イソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリルである。前記の開始剤は、一般に、それぞれモノマーの全質量に対して0.001〜0.02質量%、有利には0.001〜0.01質量%の量で使用される。レドックス開始剤として、還元剤との組合せで挙げた開始剤からの組合せ物が使用される。適した還元剤は、アルカリ金属及びアンモニウムの亜硫酸塩及び重亜硫酸塩、例えば亜硫酸ナトリウム、スルホキシル酸の誘導体、例えば亜鉛ホルムアルデヒドスルホキシレート又はアルカリ金属ホルムアルデヒドスルホキシレート、例えばナトリウムヒドロキシメタンスルフィネート、及びアスコルビン酸である。還元剤量は、モノマーの全質量に対してそれぞれ、一般に0.001〜0.03質量%、好ましくは0.001〜0.015質量%である。
【0025】
分子量の制御のために、重合中に調節する物質が使用されることができる。調節剤が使用される場合には、これらは通常、重合すべきモノマーに対して0.01〜5.0質量%の量で使用され、かつ別個にか又はまた反応成分と予め混合されて計量供給される。そのような物質の例はn−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸メチルエステル、イソプロパノール及びアセトアルデヒドである。
【0026】
重合は有利に非イオン性保護コロイドの存在で行われる。適当な非イオン性保護コロイドは、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、水溶形の多糖類、例えばデンプン(アミロース及びアミロペクチン)、セルロース及びそのメチル−、ヒドロキシエチル−、ヒドロキシプロピル−誘導体、ポリ(メタ)アクリルアミドである。
【0027】
部分鹸化又は完全鹸化された、加水分解度80〜100モル%を有するポリビニルアルコール、特に、部分鹸化された、加水分解度80〜95モル%を有し、かつヘプラー粘度(4%の水溶液中)1〜30mPas(20℃でのヘプラー法、DIN 53015)を有するポリビニルアルコールが好ましい。80〜95モル%の加水分解度及び1〜30mPasの4%水溶液中ヘプラー粘度を有する、部分鹸化され、疎水変性されたポリビニルアルコールも好ましい。これらの例は、酢酸ビニルと、疎水性コモノマー、例えばイソプロペニルアセテート、ビニルピバレート、ビニルエチルヘキサノエート、5又は9〜13個のC原子を有する飽和α−分枝鎖モノカルボン酸のビニルエステル、ジアルキルマレイネート及びジアルキルフマレート、例えばジイソプロピルマレイネート及びジイソプロピルフマレート、塩化ビニル、ビニルアルキルエーテル、例えばビニルブチルエーテル、オレフィン、例えばエテン及びデセンとの部分鹸化されたコポリマーである。疎水性単位の割合は、好ましくは、部分鹸化されたポリビニルアルコールの全質量に対して0.1〜10質量%である。上記のポリビニルアルコールの混合物も使用されることができる。
【0028】
85〜94モル%の加水分解度及び3〜15mPasの4%水溶液中ヘプラー粘度(20℃でのヘプラーによる方法、DIN 53015)を有するポリビニルアルコールが最も好ましい。上記の保護コロイドは当業者に公知の方法を用いて入手可能であり、かつ一般的に、モノマーの全質量に対して全部で1〜20質量%の量で重合の際に添加される。
【0029】
重合は、非イオン性乳化剤の存在で行われてもよいし、非イオン性乳化剤と組み合わされた上記の非イオン性保護コロイドの存在で行われてもよい。適当な非イオン性乳化剤は、界面活性剤、例えば8〜40個のアルキレンオキシド単位を有するアルキルポリグリコールエーテル又はアルキルアリールポリグリコールエーテルである。C2〜C4アルキレンオキシド、特にエチレンオキシド及びプロピレンオキシド又はその混合物でアルコキシル化されたアルコキシル化C8〜C16アルカノールは有利である。非イオン性乳化剤は一般にモノマーの全質量に対して0.05〜10質量%の量で重合の際に添加される。
【0030】
重合の終了後に、残存モノマー除去のために公知の方法を適用して、一般的にレドックス触媒を用いて開始された後重合により、後重合されることができる。揮発性の残留モノマーは、蒸留によって、有利には減圧下で、かつ場合により、空気又は水蒸気又は不活性キャリヤーガス、例えば窒素を中に又は上に導きつつ除去することもできる。こうして得られた水性分散液は、30〜75質量%、有利には50〜60質量%の固体含分を有する。
【0031】
水中に再分散可能なポリマー粉末を製造するために、水性分散液は、乾燥助剤としてのカチオン性保護コロイドの添加後に乾燥される。カチオン性保護コロイドは、この場合非イオン性保護コロイドと組み合わせて、又は非イオン性乳化剤と組み合わせて使用されてもよい。これに適した非イオン性保護コロイド及び非イオン性乳化剤は、既に重合の際に適当であるとして挙げた非イオン性保護コロイド及び非イオン性乳化剤である。
【0032】
乾燥は、例えば流動層乾燥、凍結乾燥又は噴霧乾燥により行われる。好ましくは、分散液は噴霧乾燥される。噴霧乾燥はその場合に常用の噴霧乾燥装置中で行われ、その際に噴霧は、一流体ノズル、二流体ノズル又は多流体ノズルを用いて又は回転円板を用いて行われることができる。出口温度は、一般に、装置と所望の乾燥度に応じて、45℃〜120℃の範囲、有利には60℃〜90℃の範囲で選択される。
【0033】
通常、カチオン性保護コロイドは、場合により非イオン性保護コロイド及び/又は非イオン性乳化剤と組み合わせて、それぞれ分散液のポリマー成分に対して合計で0.1〜20質量%、有利に1〜7質量%の量で使用される。
【0034】
乾燥の際、しばしば、ベースポリマーに対して2質量%までの消泡剤含分が有利であることが判明した。ブロッキング安定性の改善により、特に低いガラス転移温度を有する粉末の場合の、貯蔵性を増大させるために、得られた粉末は、有利にポリマー成分の全質量に対して30質量%までのブロッキング防止剤(凝結防止剤)で仕上げ加工されることができる。ブロッキング防止剤の例は、有利に10nm〜100μmの範囲内の粒径を有する炭酸Caないし炭酸Mg、滑石、石膏、ケイ酸、カオリン、メタカオリン、シリケートである。
【0035】
粉末化及び乾燥すべき混合物の粘度は、<1000mPas(20r.p.m.及び23℃でのブルックフィールド粘度)、有利に<500mPas、とりわけ有利に<250mPasの値が得られるように固体分に関して調節される。
【0036】
応用技術的特性の改善のために、乾燥の前又は間又は後に、他の添加剤を添加することができる。分散粉末組成物の有利な実施態様に含まれる他の成分は、例えば顔料、充填剤、発泡安定剤、疎水化剤、可塑剤である。
【0037】
カチオン性に安定化されかつ水中に再分散可能なポリマー粉末組成物は、該組成物に典型的な適用範囲内で使用されることができる。カチオン性に安定化された分散粉末と慣用の分散粉末との混合物を使用することもできる。
【0038】
適用の例は、建築化学製品における、場合により水硬性結合剤、例えばセメント(ポルトランドセメント、アルミン酸塩セメント、トラスセメント、スラグセメント、マグネシアセメント、ホスフェートセメント)、石膏及び水ガラスと組み合わせた、建築用接着剤、特にタイル用接着剤(例えば高フレキシビリティ接着剤)及び完全耐熱性接着剤、プラスター、目止め剤、床用目止め剤、レベリング材、封止スラリー、目地モルタル及びペイントの製造のための適用である。有利な適用範囲は、封止スラリー及びタイル用接着剤であり、更には特に木材下地のためのタイル用接着剤である。他の可能な適用は、接着剤分野及びコーティング分野における使用によってもたらされ、後者の場合には例えば紙及びテキスタイルのための使用である。
【0039】
意外にも、本発明による方法において、乾燥助剤としてのカチオン性ポリマーが有利に1〜7質量%のわずかな割合であっても、ブロック安定性でかつ極めて良好に再分散可能である粉末をもたらす分散粉末が得られる。意外にも、カチオン性ポリマーは、ポリマー改良された材料、例えば封止スラリー、タイル用接着剤、プラスターにおける加工に対してプラスの影響を及ぼすだけでなく、そのような材料の、例えばポリマー改良された封止スラリーの破断点伸びに関するフレキシビリティーの改善をももたらすことも見出された。
【0040】
実施例:
分散液1(D1):
出発分散液として、88モル%の鹸化度及び4mPasのヘプラーによる粘度を有するポリビニルアルコール6質量%を用いて製造された、50質量%の固体含分及び−7℃のTgを有するビニルアセテート−エチレン−コポリマー分散液を利用した。
【0041】
分散液2(D2):
出発分散液として、88モル%の鹸化度及び4mPasのヘプラーによる粘度を有するポリビニルアルコール5質量%を用いて製造された、52質量%の固体含分及び−15℃のTgを有するビニルアセテート−エチレン−VeoVa10−コポリマー分散液を利用した。
【0042】
分散液3(D3):
出発分散液として、88モル%の鹸化度及び4mPasのヘプラーによる粘度を有するポリビニルアルコール6質量%を用いて製造された、50質量%の固体含分及び−24℃のTgを有するビニルアセテート−エチレン−ビニルドデカノエート−コポリマー分散液を利用した。
【0043】
分散液4(D4):
出発分散液として、88モル%の鹸化度及び4mPas及び13mPasのヘプラーによる粘度を有するポリビニルアルコール2.5質量%ずつを用いて製造された、51質量%の固体含分及び−13℃のTgを有するエチルヘキシルアクリレート−メチルメタクリレート−コポリマー分散液を利用した。
【0044】
分散液5(D5):
出発分散液として、88モル%の鹸化度及び4mPasのヘプラーによる粘度を有するポリビニルアルコール8質量%を用いて製造された、55質量%の固体含分及び16℃のTgを有するビニルアセテート−エチレン−コポリマー分散液を利用した。
【0045】
分散液6(D6):
出発分散液として、88モル%の鹸化度及び4mPasのヘプラーによる粘度を有するポリビニルアルコール10質量%を用いて製造された、55質量%の固体含分及び5℃のTgを有するビニルアセテート−エチレン−VeoVa10−コポリマー分散液を利用した。
【0046】
分散液7(D7):
出発分散液として、88モル%の鹸化度及び4mPasのヘプラーによる粘度を有するポリビニルアルコール10質量%を用いて製造された、55質量%の固体含分及び20℃のTgを有するスチレン−ブチルアクリレート−コポリマー分散液を利用した。
【0047】
保護コロイド1(SK 1):(ポリ−METAC)
水795gと2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド201gとからの混合物を重合容器中に装入し、73℃に加熱した。180分以内で、10%開始剤溶液(VA−044:2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド)20.12gを連続的に供給した。反応溶液を73℃で更に30分間撹拌し、その後冷却した。19.8質量%及び3.1のpH値を有する帯黄色の澄明な溶液が得られた。水中の1%ポリマー溶液のK値は75.9であった。4%水溶液のヘプラー粘度は7.8mPasであった。
【0048】
保護コロイド2(SK 2):(ポリ−MAPTAC)
水988gと50%酢酸水溶液6.8gとからの混合物を80℃に加熱した。温度平衡に達した後、同時に、180分にわたって、7%開始剤溶液(VA−044:2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド)96g並びに2−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドの50%水溶液910gを連続的に供給した。反応溶液を80℃で更に60分間撹拌し、その後冷却した。25.4質量%及び3.4のpH値を有する帯黄色の澄明な溶液が得られた。水中の1%ポリマー溶液のK値は29であった。4%水溶液のヘプラー粘度は1.9mPasであった。
【0049】
保護コロイド3(SK 3):(ポリ−DMAEMA/METAC)
水778gと2−ジメチルアミノエチルメタクリレート179gと2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド18gとからの混合物を重合容器中に装入し、73℃に加熱した。180分以内で、10%開始剤溶液(VA−044:2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド)22.1gを連続的に供給した。反応溶液を73℃で更に30分間撹拌し、その後冷却した。18.2質量%及び9.2のpH値を有する帯黄色の澄明な溶液が得られた。水中の1%ポリマー溶液のK値は48.1であった。4%水溶液のヘプラー粘度は5.8mPasであった。
【0050】
市販のポリ−DADMACをベースとする保護コロイド、例えばBASF社製のCatiofast(R) CS又はCytec社製のSuperfloc(R)C-592も同様に、カチオン性分散粉末の製造に適当な保護コロイドである。
【0051】
保護コロイド4(SK 4):
Catiofast(R) CS:30%水溶液;水中の1%ポリマー溶液のK値は72である。4%水溶液のヘプラー粘度は7.5mPasである。
【0052】
保護コロイド5(SK 5):
Superfloc(R)C-592:39%水溶液;水中の1%ポリマー溶液のK値は92である。4%水溶液のヘプラー粘度は12.2mPasである。
【0053】
粉末:
出発分散液D1〜D7と、保護コロイドSK1〜SK5とを、第1表に示された質量比で、被膜形成性のポリマーの固体含分に対して0.5質量%の消泡剤の添加下に混合し、30分間撹拌し、かつ濾別した。第1表に示す組み合わせのいずれも、凝結を生じなかった。混合物を、分散液の固体含分に対して12質量%のブロッキング防止剤の添加下に噴霧乾燥させ、粉末P1〜P11とした。
【0054】
比較例1(P12):
出発分散液2と、88モル%の鹸化度及び4mPasのヘプラーによる粘度を有するポリビニルアルコール9質量%と混合した。消泡剤0.5質量%の添加後、混合物を30分間撹拌し、かつ濾別した。混合物を、分散液の固体含分に対して12質量%のブロッキング防止剤の添加下に噴霧乾燥させた。
【0055】
比較例2(P13):
出発分散液(D8)として、Catiofast(R) CS 12質量%を用いて製造された、49質量%の固体含分及び−5℃のTgを有するビニルアセテート−エチレン−コポリマー分散液を利用した。より低い<10質量%の保護コロイド含分を有する分散液を得ようと試みたが、失敗した。分散液(D8)と、88モル%の鹸化度及び4mPasのヘプラーによる粘度を有するポリビニルアルコール6質量%とを混合した。消泡剤0.5質量%の添加後、混合物を30分間撹拌し、かつ濾別した。混合物を、分散液の固体含分に対して12質量%のブロッキング防止剤の添加下に噴霧乾燥させた。この場合、ブロック安定性の粉末は得られなかった。
【0056】
比較例3(P14):
出発分散液として、88モル%の鹸化度及び4mPasのヘプラーによる粘度を有するポリビニルアルコール6質量%を用いて製造された、55質量%の固体含分及び10℃のTgを有するビニルアセテート−エチレン−コポリマー分散液を利用した(D9)。該分散液と、88モル%の鹸化度及び4mPasのヘプラーによる粘度を有するポリビニルアルコール8質量%とを混合した。混合物を30分間撹拌し、かつ濾別した。混合物を、分散液の固体含分に対して12質量%のブロッキング防止剤の添加下に噴霧乾燥させ、粉末P14とした。
【0057】
試験:
得られた粉末をその粉末特性に及び封止スラリーにおける加工に関して試験した。
【0058】
ブロック安定性(BF)の測定:
ブロック安定性の測定のために、分散粉末をねじ蓋付き鉄管中に充填し、その後金属スタンプを用いて負荷した。負荷下に乾燥棚中で50℃で16時間貯蔵した。室温に冷却後、粉末を管から取り出し、かつ粉末を圧砕することによってブロック安定性を定性的に測定した。ブロック安定性を次のように分類した:
1=極めて良好なブロック安定性、塊状物の形成なし
2=良好なブロック安定性
3=十分なブロック安定性
4=ブロック安定性でなく、圧砕後の粉末はもはや流動性ではない。
【0059】
沈降挙動(管沈降、RA)の測定:
再分散液の沈降挙動は、粉末の再分散可能性の尺度に利用される。再分散液を水中50%で、強いせん断力の作用により製造した。
【0060】
ついで沈降挙動を、希釈した再分散液(固体含分0.5%)について測定した。このためにこの分散液100mlを目盛り付きの管中へ充填し、固体の沈降高さを測定した。24時間後の沈降[mm]を記載する。7より大きい値は粉末の不十分な再分散を示す。
【0061】
分散粉末のブロック安定性(BF)及び沈降挙動(RA)の結果を第1表にまとめる。
【0062】
【表1】

【0063】
比較例P13は、カチオン性保護コロイドを重合の間に使用する方法の場合、再分散不可能でありかつブロック安定性でない生成物が得られることを示す。
【0064】
セメント状封止スラリーの製造のために、以下の配合を考慮した:
ケイ砂 665部
ポルトランドセメント 50部
セルロース 5部
分散粉末 280部
水 400部
加工挙動(VA)の評価を、乾燥成分と水との混合の間に行う。封止スラリーの加工挙動は加工者の主観的な感覚である。加工挙動を以下のように分級した:
1=極めて良好な柔軟な加工、コテ粘着性なし
2=やや困難な加工、わずかなコテ粘着性
3=不十分な加工、粘性かつ粘着性
間隙幅2mmのブレードを用いて、セメント状の封止シーラントを伸ばして薄膜にし、該薄膜を標準雰囲気(23℃、相対湿度50%)で7日間乾燥させた。得られた薄膜をそのフレキシビリティー及び変形性に関して評価した。これらを以下のように分級した:
1=極めて良好に変形可能な均質で平滑な薄膜
2=良好に変形可能な平滑な薄膜
3=あまり変形可能でない平滑な薄膜
4=変形性が不十分である脆い薄膜
試験体の引裂強さ(MPasでのRF)及び破断点伸び(%でのRD)の測定をDIN 53455による引張試験で行った。
【0065】
標準雰囲気での28日間の貯蔵後の加工性、フレキシビリティー並びに引裂強さ及び破断点伸びに関する結果を第2表に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
セメント状の高フレキシビリティ接着剤の製造のために、以下の配合を考慮した:
ケイ砂 576部
セメント(ポルトランドセメントとアルミン酸塩セメントとからの混合物) 300部
セルロースエーテル 4部
分散粉末 120部
水 240部
加工挙動(VA)(上記のような段階)の評価を、乾燥成分と水との混合の間に行い、第3表に示す。
【0068】
引張接着値(N/mm2)の測定を、EN12004により行った(試験規格EN 1348)。
貯蔵A:標準雰囲気28日;
貯蔵B:標準雰囲気7日/水貯蔵21日;
貯蔵C:標準雰囲気14日/70℃で熱貯蔵14日/標準雰囲気1日;
貯蔵D:標準雰囲気7日/水貯蔵21日/凍結融解交互変化25回、5日;
結果を第3表に示す。
【0069】
変形性(mm)の測定をEN 12002により実施した。種々の分散粉末の結果を第3表に示す。
【0070】
【表3】

【0071】
上記データから、本発明による生成物の製造の場合、分散液及びカチオン性保護コロイド及び添加剤の混合物製造の間に凝結に関して何ら問題が生じないことが明らかである。更に、極めて少量のカチオン性保護コロイドを用いた場合であっても、極めて良好な再分散特性を有するブロック安定な粉末が得られる。更に、例えば封止スラリーの配合又はタイル用接着剤の配合のようにポリマー割合が高い場合であっても、極めて良好な加工特性が達成される。
【0072】
第2表及び第3表は、専らポリビニルアルコールのみで安定化されているP12及びP14のような慣用の粉末に対して、本発明により製造された粉末が、多量の分散粉末が使用される適用において、改善された弾性及び加工性を示すことを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のエチレン性不飽和モノマーを、場合により非イオン性保護コロイド及び/又は非イオン性乳化剤の存在で水性媒体中でラジカル重合させ、かつ引き続き乾燥させる、カチオン性に安定化されかつ水中に再分散可能なポリマー粉末組成物の製造法において、ここで得られる水性ポリマー分散液を乾燥助剤としてのカチオン性保護コロイドの存在で乾燥させることを特徴とする方法。
【請求項2】
カチオン性保護コロイドとして、4級アンモニウム基を有するモノマー単位を含むポリマーを使用する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、ジアリルジエチルアンモニウムクロリド(DADEAC)、(3−メタクリルオキシ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド(MPTAC)、(3−メタクリルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド(METAC)、(3−メタクリルアミド)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド(MAPTAC)、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート又は3−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAEMA又はDMAPMA)を含む群からの1種以上のカチオン性モノマーのホモポリマー又は混合ポリマーを使用する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
10〜250のK値(DIN 53726に準拠した測定、水中で1質量%、25℃、ウベローデ粘度計)を有するカチオン性保護コロイドを使用する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
1〜50mPasのヘプラー粘度(DIN 53015に準拠した20℃でのヘプラー法による測定)を有するカチオン性保護コロイドを使用する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
カチオン性保護コロイドを、水性ポリマー分散液のポリマー成分に対して0.1〜20質量%の量で使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
エチレン性不飽和モノマーとして、1〜15個のC原子を有する非分枝鎖又は分枝鎖アルキルカルボン酸のビニルエステル、1〜15個のC原子を有するアルコールのメタクリル酸エステル及びアクリル酸エステル、ビニル芳香族化合物、オレフィン、ジエン及びビニルハロゲン化物を含む群からの1種以上を重合させる、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
1種以上のエチレン性不飽和モノマーを、場合により非イオン性保護コロイド及び/又は非イオン性乳化剤の存在で水性媒体中でラジカル重合させ、ここで得られる水性ポリマー分散液を乾燥助剤としてのカチオン性保護コロイドの存在で引き続き乾燥させることにより得られる、カチオン性に安定化されかつ水中に再分散可能なポリマー粉末組成物。
【請求項9】
建築用接着剤、プラスター、目止め剤、床用目止め剤、レベリング材、封止スラリー、目地モルタル及びペイントの製造のための建築化学製品における、請求項8記載のカチオン性に安定化されかつ水中に再分散可能なポリマー粉末組成物の使用。
【請求項10】
接着剤分野及びコーティング分野における、請求項8記載のカチオン性に安定化されかつ水中に再分散可能なポリマー粉末組成物の使用。

【公表番号】特表2009−526885(P2009−526885A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554746(P2008−554746)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051209
【国際公開番号】WO2007/093551
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】