説明

カッター

【課題】 カッターの基板外周の凹状開口部の形状が、外側に開口していても、切刃部が飛散しにくいカッターを提供する。
【解決手段】 円板状の基板1の中央に電動工具のスピンドルに接続する接続用の軸孔2が設けられ、基板1の外周部3に所定間隔で凹状に形成した複数の凹状開口部4が設けられ、この凹状開口部4を埋めるように砥粒を有する切刃部5が形成されたカッター10であって、前記凹状開口部4の開口周縁部4aには、前記切刃部14を係止する凹凸部5が設けられたことを特徴とするカッターである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート、石材、瓦、タイル等のワークを切断するカッターに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、カッター(切断工具ともいう)は、円板状であり、電動工具であるディスクグラインダ等のハンドグラインダのスピンドルに装着され、ワークの切断加工に利用されている。従来のカッターを図7に示す。図7(a)は従来のカッターを示す平面図、(b)は(a)に示すE−E線の断面図、(c)は(a)に示すe部の拡大図である。
図7(a)に示すように、従来のカッター20は、円板状の基板21の外周部23に、切刃部(チップ)25が所定間隔で隙間を設けて接合されている。この切刃部25には、ダイヤモンド粒子等の超硬砥粒が混入されており、切断するワークに対し、充分な硬度を備えている(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、クーラント水をかけない乾式による切断加工の場合、従来のカッターの基板21の厚みを、より鋭いシャープな切れ味を求めてより薄くすると、切刃部25から伝達される切削熱により、外周部23の温度が上昇し、この外周部23の熱膨張によって基板21が延びてしまう。そのため、カッターは、熱応力によって外周部23が波打つようになって、使用できなくなるという問題があった。
そこで、従来、前記した問題を解決したものとして、基板の外周部に凹状開口部を設けたものが提案されている。
図8は外周部に凹状開口部を設けた基板を示す部分拡大図である。図8に示すように、基板21の外周部23に凹状開口部24を設け、その凹状開口部24に切刃部25を係合させ、基板21の外周にリング状の連続した切刃部25が形成されている。
【特許文献1】特開2003−159656号(段落番号0013〜0024、図1〜図4参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図8に示すカッターは、凹状開口部24が外側に開口しており、切刃部25に亀裂が生じた場合、切刃部25が飛散しやすいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、前記のような問題点を解決するために創案されたものであり、カッターの基板外周の凹状開口部の形状が外側に開口していても、切刃部が飛散しにくいカッターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決すべく創案された請求項1の発明に係るカッター(10)は、円板状の基板(1)の中央に電動工具のスピンドルに接続する接続用の軸孔(2)が設けられ、前記基板(1)の外周部(3)に所定間隔で凹状に形成した複数の凹状開口部(4)が設けられ、この凹状開口部(4)を埋めるように砥粒を有する切刃部(14)が形成されたカッター(10)であって、前記凹状開口部(4)の開口周縁部(4a)には、前記切刃部(14)を係止する凹凸部(5)が設けられたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のカッター(10)において、前記基板(1)の外周部(3)の所定位置に配置された前記凹状開口部(4)は、前記軸孔(2)の中心に向かって開口深さ(L2)を他の凹状開口部(4)の開口深さ(L1)より深く形成した凹状大深開口部(7)とし、
前記凹状大深開口部(7)の開口周縁部(7a)には、前記基板の外周端(3a)から所定深さにおいて、切刃部(17)を係止する凹凸部(5)が設けられたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のカッター(10)において、前記凹状大深開口部が複数設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、カッターは、凹状開口部の開口周縁部には、切刃部を係止する凹凸部が設けられたことから、この凹凸部に切刃部が噛み込み、加工中に切刃部に亀裂が発生し難くなると共に、この凹凸部が抜け止めとなって飛散を防止することができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、カッターは、凹状開口部と、開口深さが大きい凹状大深開口部が設けられたことにより、請求項1の効果と併せて、凹状大深開口部がワークとの接触の際、基板を保護する基板保護材の役目を果たすことができるので、ワークと基板とが常時接触をすることを避けることができる。そのため、カッターは、切削熱による基板の変形を防止することができる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、凹状大深開口部を複数設けたことにより、シャープな切削ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
<第1実施の形態>
図1(a)はカッターの基板の平面図、(b)は(a)に示すA−A線の断面図、(c)は(a)に示すa部の詳細を示す拡大図である。図1(a)に示すように、ダイヤモンドカッターと呼ばれるカッター10は、円板状の基板1と、切刃部14(図2参照)とから構成されている。
基板1は、例えば、直径がφ106mm、厚みが0.8mm程の薄い鋼板であり、中央にはディスクグラインダのスピンドルに接続する接続用の軸孔2が形成されている。また、8個の孔9が設けられ、スリット9aが形成されている。さらに、円板状の基板1の外周部3には複数の凹状開口部4,4…が設けられている。ここでは円周方向に20分割された20ヶ所に、凹状開口部4が形成されている。
【0013】
凹状開口部4は、図1(c)に拡大して示すように、凹状開口部4の開口周縁部4aには、切刃部14を係止する凹凸部5が設けられている。この凹凸部5は、開口周縁部4aに複数の凸部を設けて凹凸部5を形成してもよいし、開口周縁部4aに複数の凹部を設けて凹凸部5を形成してもよい。所定間隔で凹凸部5を形成している。
凹状開口部4の大きさ(開口幅W×開口深さL1)は、例えば、12mm×8mmであり、この開口側壁となる位置である開口深さL1 の8mmの範囲に四角形をした凸部が、それぞれ2個ずつ、形成されている。つまり、凸部または凹部の大きさ(短辺×長辺)は、1mm×2mmであり、2mmの隙間である。
また、凹状開口部4の底部にも2個の凸部により凹凸部5が形成されている。この底部の凹凸部5を形成する凸部または凹部の大きさも前記した同じ大きさ(1mm×2mm)である。この凹凸部5を形成する凸部または凹部の形状は図1では四角形であるが、この四角形(正方形、ひし形、台形等)の形状以外の形であってもよい。
【0014】
図2(a)は第1実施の形態のカッターの平面図であり、(b)は(a)に示すB−B線の断面図、(c)は(a)に示すb部拡大図である。
切刃部14は、凹状開口部4を埋めるように、例えば、ダイヤモンド粒子を混入した切刃部14を接合し、熱処理によって、基板1の外周部3に融着して形成されている。
これにより、カッター10の凹状開口部4の形状が、外側に開口していても、この凹状開口部4の開口周縁部4aに形成した凹凸部5(図1(c)参照)に切刃部14が噛み込むため、切刃部14に亀裂が生じても飛散しにくくなる。
【0015】
また、図2(c)に示すように、凹凸部5の側面部5a,5a…により遠心力Fを受けるため、切刃部14は飛散することがない。その結果、カッター10の基板1外周の凹状開口部4の形状が、外側に開口していても、切刃部14の飛散はしない。
なお、凹状開口部4を埋めるように、とは、図2(c)に示すように、凹状開口部4の開口周縁部4aの回りの表面f(ハッチング部)を含めた領域を埋めることをいう。
【0016】
ここで、図5と図2を使用して、カッター10の動作を説明する。
図5はカッターの使用方法を示す斜視図である。図5に示すように、カッター10の装着用の軸孔にディスクグラインダ13のスピンドル11を挿入し、ナット12で固定する。ベース(図略)の上にタイル15を固定し、回転起動のスイッチを入れてカッター10を回転させる。
図2(a)に示すように、基板1の外周部3には凹状に形成した凹状開口部4が設けられ、この凹状開口部4を埋めるように砥粒18(図2(c)参照)を有する切刃部14が、凹状開口部4の表面fに融着されている。切刃部14がワークに接触して切断が開始すると、カッター10は切削する切刃の接線方向と送り方向に切削抵抗を受け、さらに、カッター10には切刃部14には外側に向かって回転速度Vの2乗に比例する遠心力Fが発生する。
そこで、ワークを切り込んで行く途中に、例えば、イレギュラーな操作によって、横荷重を受け、切刃部14に亀裂が発生した場合、この切刃部14の砥粒間結合による結合力は絶たれ、接着力は凹状開口部4の表面fに融着した融着力のみとなるが、凹凸部5の側面部5aがこの遠心力Fを受けるため、切刃部14は飛散することがない。
カッター10はダイヤモンドカッターであり、切刃部14は飛散する心配がないため、重切削ができ、しかも短時間で切断ができる。また、切刃が薄いため切れ味がシャープで、しかも、切断面の仕上りがきれいで体裁が良く、見栄えの良い切断ができる。
【0017】
<第2実施の形態>
図3(a)はカッターの基板の平面図、(b)は(a)に示すC−C線の断面図、(c)は(a)に示すc部の詳細を示す拡大図である。この第2実施の形態と前記第1実施の形態との相違点は、図3(a)に示すように、外周部3に形成された凹状開口部4の中に開口部の深さを深くした凹状大深開口部7が4個配置されている点である。
なお、すでに説明した構成には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
凹状大深開口部7は、図3(c)に示すように、凹状開口部4を基板1の中心に向かって掘り下げて深く開口したものである。凹状開口部7の大きさは、W×L2である。この凹状大深開口部7を形成する開口側壁となる開口周縁部7aの位置には、凹凸部5が設けられている。凹凸部5の凹部または凸部の大きさ(短辺×長辺)は、例えば、ここでは1.5mm×2mmである。凹凸部5を形成することによって、
凹状開口部4の開口幅W と開口深さL2 の大きさ(W×L2)は、例えば、12mm×21mmであり、この開口深さL3 の21mmの外周部寄りに四角形をした凸部が3個ずつ、形成されている。
また、凹状開口部7の底部にも2個の凸部が設けられ、凹凸部5が形成されている。
【0019】
この凹状大深開口部7を中心に向かって深く開口する理由は、中心部付近まで切刃部17を設けることによって、ワークと基板1とが接触しようとした際、基板1が接触する前に切刃部17が接触して基板1の保護をするためである。したがって、基板1の厚み(例えば、0.8mm)に対して、切刃部17の厚み(図4(b)参照)は1.2mmと若干厚くなっている。凹状大深開口部7の配置は4等分割にして4個を配置したが、それ以外の分割であってもよい。
【0020】
図4(a)は第2実施の形態のカッターの平面図であり、(b)は(a)に示すD−D線の断面図、(c)は(a)に示すd部拡大図である。図4(a)に示すように、この第2実施の形態においては、凹状開口部4が4個置きに凹状大深開口部7が1個ずつ配置され、切刃部17が形成されている。
切刃部14は、前記同様であり、個々の凹状開口部4に、例えば、ダイヤモンド粒子を混入した切刃部14を接合し、熱処理によって、融着されて形成されている。
切刃部17もまた、個々の凹状大深開口部7に、ダイヤモンド粒子を混入した切刃部17を接合し、熱処理によって、融着されて形成されている。
これにより、中心部に延びた切刃部17は、ワークとの接触の際、ワークが基板1と接触する前に切刃部17が接触するため、基板1を保護する基板保護材の役目を果たすことができるので、ワークとの常時接触を避けることができる。
【0021】
図4(c)に示すように、凹凸部5に切刃部17が噛み込み、凹凸部5の側面部5a,5a…によりこの遠心力Fを受けるため、切刃部17は飛散することがない。その結果、カッター10の基板1外周の凹状開口部7の形状が、外側に開口していても、切刃部17の飛散はしない。
【0022】
なお、本発明はその技術思想の範囲内で種々の改造、変更が可能である。
図6(a)〜(h)は、凹状開口部に設けられた凹凸部の変形例を示す拡大図である。図6(a)に示すように、丸型の凸部から形成された凹凸部51とすることや、図6(b)に示すように、丸型の凹部から形成された凹凸部52であってもよい。また、図6(c)に示すように、三角形の凸部から形成された凹凸部53とすることや、図6(d)に示すように、三角形を上下に反転した凸部から形成された凹凸部54としても構わない。さらに、図6(e)に示すように、二等辺三角形の凸部から形成された凹凸部55とすることや、図6(f)に示すように、二等辺三角形の頂部が丸まめ、底部を丸めた凹凸部56としてもよい。また、図6(g)に示すように、台形の凸部から形成された凹凸部57とすることや、図6(h)に示すように、T溝、L字状から形成された凹凸部58としてもよい。
このように、本願発明の凹凸部の形状は四角形状に限定するものではなく、この他の形状であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)はカッターの基板の平面図、(b)は(a)に示すA−A線の断面図、(c)は(a)に示すa部拡大図である。
【図2】(a)は第1実施の形態のカッターの平面図であり、(b)は(a)に示すB−B線の断面図、(c)は(a)に示すb部拡大図である。
【図3】(a)はカッターの基板の平面図、(b)は(a)に示すC−C線の断面図、(c)は(a)に示すc部拡大図である。
【図4】(a)は第2実施の形態のカッターの平面図であり、(b)は(a)に示すD−D線の断面図、(c)は(a)に示す変形例の拡大図である。
【図5】カッターの使用方法を示す斜視図である。
【図6】(a)〜(h)は、凹状開口部に設けられた凹凸部の変形例を示す拡大図である。
【図7】(a)は従来のカッターを示す平面図、(b)は(a)に示すE−E線の断面図、(c)は(a)に示すe部拡大図である。
【図8】外周部に凹状開口部を設けた基板を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
【0024】
1 基板
2 軸孔
3 外周部
3a 外周端
4 凹状開口部
4a 開口周縁部
5 凹凸部
5a 側面部
9 孔
9a スリット
7 凹状大深開口部
7a 開口周縁部
10 カッター
14,17 切刃部
18 砥粒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の基板の中央に電動工具のスピンドルに接続する接続用の軸孔が設けられ、前記基板の外周部に所定間隔で凹状に形成した複数の凹状開口部が設けられ、この凹状開口部を埋めるように砥粒を有する切刃部が形成されたカッターであって、
前記凹状開口部の開口周縁部には、前記切刃部を係止する凹凸部が設けられたことを特徴とするカッター。
【請求項2】
前記基板の外周部の所定位置に配置された前記凹状開口部は、前記軸孔の中心に向かって開口深さを他の凹状開口部の開口深さより深く形成した凹状大深開口部とし、
前記凹状大深開口部の開口周縁部には、前記基板の外周端から所定深さにおいて、切刃部を係止する凹凸部が設けられたことを特徴とする請求項1に記載のカッター。
【請求項3】
前記凹状大深開口部が複数設けられたことを特徴とする請求項2に記載のカッター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−30111(P2007−30111A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218504(P2005−218504)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000142919)株式会社呉英製作所 (21)
【Fターム(参考)】