説明

カップリング化合物の製造方法

【課題】遷移金属触媒を使用しなくても、シンプルな反応系で、脱離基を有する有機化合物とグリニャール試薬とのカップリング化合物を製造できる方法を提供する。
【解決手段】脱離基を有する有機化合物(有機ハロゲン化物など)とグリニャール試薬とを、グリニャール試薬のマグネシウム原子に配位可能な配位性化合物(例えば、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)の存在下で反応させる。この反応は、さらに、アルコキシドなどの塩基の存在下で行ってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリニャール試薬とのカップリング反応において脱離可能な脱離基を有する有機化合物(例えば、ハロゲン化芳香族化合物など)とグリニャール試薬とがカップリングした化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グリニャール試薬は、有機ハロゲン化物とマグネシウムとを反応させることで得られる試薬であり、種々の反応において使用されている。そして、このようなグリニャール試薬をカップリング反応に使用する試みもなされている。例えば、熊田・玉尾・コリューカップリング反応は、ニッケル触媒(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン錯体、アセチルアセトナト錯体など)の存在下、臭化フェニルマグネシウムなどのグリニャール試薬と、塩化アリールやβ−ブロモスチレンなどとを反応させることで、クロスカップリング化合物を得る反応として知られている。
【0003】
このようなカップリング反応では、ニッケル触媒の他、他の遷移金属触媒を用いることも知られており、例えば、特開2008−247881号公報(特許文献1)には、特定のホスフィン化合物を配位子として含む金属錯体(パラジウム錯体など)が、芳香族ハロゲン化物と、グリニャール試薬とのクロスカップリング反応に利用できることが記載されている。
【0004】
また、特開2009−114078号公報(特許文献2)には、クラウンエーテル化合物および銅化合物の存在下、RMgX(式中、Rは炭素数1〜15のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表されるグリニャール化合物と、R−X’(式中、Rはカルボキシル基を有する炭素数1〜30のアルキル基を示し、X’はハロゲン原子を示す。)で表されるアルキルハロゲン化物を反応させて、R−R(式中、R及びRは、前記と同じ。)で表されるクロスカップリング化合物の製造方法が開示されている。
【0005】
上記のように、グリニャール試薬を用いたカップリング反応では、通常、遷移金属触媒や特殊な配位子の存在下で行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−247881号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2009−114078号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、遷移金属触媒を使用しなくても、脱離可能な脱離基を有する有機化合物(例えば、有機ハロゲン化物)とグリニャール試薬とのカップリング反応により、カップリング化合物を製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、グリニャール試薬を構成するマグネシウムに配位可能な化合物を用いる[特に、このような配位性化合物と、グリニャール試薬を構成するマグネシウムに配位しない溶媒(例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒)とを組み合わせる]と、意外にも、遷移金属触媒を使用しなくても、脱離基を有する有機化合物(有機ハロゲン化物など)とグリニャール試薬とのカップリング反応により、対応するカップリング化合物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の方法では、脱離基(例えば、ハロゲン原子)を有する有機化合物とグリニャール試薬とを、グリニャール試薬のマグネシウム原子に配位可能な配位性化合物の存在下、かつ遷移金属の非存在下で反応させ、前記有機化合物の脱離基とグリニャール試薬の基−MgX(式中、Xはハロゲン原子を示す。)とが分子間脱離して炭素−炭素結合を形成したカップリング化合物を製造する。
【0010】
前記有機化合物は、芳香族化合物であってもよい。また、前記グリニャール試薬は、芳香族グリニャール試薬であってもよい。
【0011】
前記配位性化合物は、例えば、ヘテロ原子を有する化合物(特に、中性化合物)であってもよい。配位性化合物は、代表的には、エーテル類、アミド類、およびリン酸エステル類から選択された少なくとも1種であってもよく、特に、環状エーテル類(例えば、テトラヒドロフランなどの4乃至10員環状エーテル類)を含んでいてもよい。このような配位性化合物の割合は、グリニャール試薬のマグネシウム原子1モルに対して、例えば、1モル以上であってもよい。
【0012】
本発明の方法では、さらに、塩基(例えば、アルコキシド)の存在下で反応させてもよい。このような塩基(例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシドなどのアルコキシド)と配位性化合物とを組み合わせると、反応性の低い脱離基を有する有機化合物(例えば、有機ハロゲン化物など)を用いる場合などであっても、より一層効率よく反応を進行させることができる。このような塩基の割合は、グリニャール試薬のマグネシウム原子1モルに対して、例えば、0.1〜1モル程度であってもよい。
【0013】
本発明の方法では、さらに、グリニャール試薬のマグネシウム原子に配位しない溶媒[例えば、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、低級アルキルベンゼンなど)など]の存在下で反応させてもよい。このような溶媒の割合は、例えば、配位性化合物1重量部に対して、1重量部以上であってもよい。
【0014】
また、本発明の方法において、反応温度は、例えば、50〜160℃程度であってもよい。
【0015】
なお、本明細書において、「配位性化合物」とは、実際に、反応において、グリニャール試薬におけるマグネシウムに配位しているか否かを問わず、マグネシウムを含む金属に配位(錯形成)しうる化合物を意味する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の方法では、グリニャール試薬を構成するマグネシウムに配位可能な化合物を用いると、遷移金属触媒を使用しなくても、脱離可能な脱離基を有する有機化合物(有機ハロゲン化物など)とグリニャール試薬とのカップリング反応により、カップリング化合物を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明では、脱離基(詳細には、グリニャール試薬とのカップリング反応において脱離可能な脱離基)を有する有機化合物とグリニャール(Grignard)試薬とを、グリニャール試薬のマグネシウム原子に配位可能な(又は配位可能な基(配位性基)を有する又は錯体を形成可能な)配位性化合物(非金属化合物)の存在下、かつ遷移金属の非存在下(実質的に遷移金属が存在しない)で反応させ、前記有機化合物の脱離基とグリニャール試薬の基−MgX(式中、Xはハロゲン原子を示す。)とが分子間脱離して炭素−炭素結合を形成したカップリング化合物を製造する。
【0018】
[脱離基を有する有機化合物]
脱離基を有する有機化合物(単に有機化合物ということがある)は、有機化合物(又は有機基又は有機骨格を構成する炭素原子)に結合し、グリニャール試薬とのカップリング反応において脱離可能な脱離基(単に脱離基ということがある)を少なくとも1つ有する(又は少なくとも1つの脱離基が置換した有機化合物である)。このような脱離基としては、特に限定されず、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、スルホン酸エステル基[例えば、アルカンスルホニルオキシ基(例えば、メタンスルホニルオキシ基(又はメシラート基)などのC1−4アルカンスルホニルオキシ基)、ハロアルカンスルホニルオキシ基(例えば、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基(又はトリフラート基)などのハロC1−4アルカンスルホニルオキシ基)などの脂肪族スルホン酸エステル基;アレーンスルホニルオキシ基(例えば、トシルオキシ基(又はトシラート基)などのC6−10アレーンスルホニルオキシ基)などの芳香族スルホン酸エステル基など]などが挙げられる。有機化合物は、これらの脱離基を単独で又は2種以上組み合わせて有していてもよい。これらのうち、代表的な脱離基は、ハロゲン原子(臭素原子、ヨウ素原子など)であり、特に、反応活性の点で、好ましい脱離基は、ヨウ素原子であるが、本発明では、ハロゲン原子として臭素原子などを有する有機化合物であっても、効率よくカップリング反応を行うことができる。
【0019】
脱離基を有する有機化合物は、少なくとも1つの脱離基を有していればよく、2以上の同一又は異なる脱離基を有していてもよい。2以上の脱離基を有する場合、同一の炭素原子(例えば、sp炭素原子)に脱離基が置換していてもよいが、通常、異なる炭素原子に脱離基が置換している場合が多い。なお、脱離基が異なる場合、脱離基の種類によって、順に(例えば、ハロゲン原子ではヨウ素、臭素、塩素の順に)脱離が生じてもよい。また、脱離基の数が複数である場合、このような脱離基の種類や脱離基の置換位置に応じて、一部の脱離基をカップリング反応に供することなく残存させてもよい。
【0020】
有機化合物(脱離基を有する有機化合物を構成する有機化合物、脱離基を有する有機化合物の脱離基を除く骨格)は、脂肪族化合物、芳香族化合物のいずれであってもよい。脱離基を有する有機化合物は、代表的には、脱離基を有する不飽和化合物、特に、炭素−炭素二重結合を構成する炭素原子[又はsp炭素原子(詳細には、sp混成軌道を構成する炭素原子)]に脱離基を有する(又は脱離基が結合している)化合物(不飽和化合物)であってもよい。なお、このような炭素−炭素二重結合には、芳香環を構成する炭素−炭素二重結合も含まれる。脱離基を有する不飽和化合物は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合(すなわち、少なくとも2つのsp炭素原子)を有していればよく、2以上の炭素−炭素二重結合を有していてもよい。
【0021】
このような脱離基を有する有機化合物(特に不飽和化合物)に対応する代表的な有機化合物(又は不飽和骨格)としては、例えば、脂肪族化合物{又は脂肪族骨格、例えば、アルケン[例えば、エチレン、プロピレン、ブテン(1−ブテン、2−ブテン、イソブテン)、ペンテン(1−ペンテンなど)、ヘキセン(1−ヘキセンなど)などのC2−40アルケン、好ましくはC2−30アルケン、さらに好ましくはC2−20アルケン]、シクロアルケン(例えば、シクロヘキセン、シクロオクテンなどのC5−10シクロアルケン)、アルカポリエン[例えば、アルカジエン(例えば、1,4−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエンなどの共役又は非共役C4−10アルカジエン)など]、シクロアルカポリエン[例えば、シクロアルカジエン(例えば、1,4−シクロヘキサジエンなどの共役又は非共役C5−10シクロアルカジエンなど)など]などの不飽和脂肪族化合物(又は不飽和脂肪族骨格)}、芳香族化合物などが挙げられる。
【0022】
芳香族化合物(芳香族骨格、芳香環骨格、芳香環を有する化合物)は、単環式芳香族化合物又は多環式芳香族化合物であってもよく、芳香族炭化水素化合物(アレーン化合物)又はヘテロ原子含有芳香族化合物(ヘテロ環式芳香族化合物)であってもよい。
【0023】
芳香族化合物を構成する芳香環(又は芳香族化合物)は、芳香族炭化水素環(芳香族炭化水素化合物)、芳香族複素環(又は芳香族複素間化合物)に大別できる。芳香族炭化水素環(又はアレーン環)としては、例えば、ベンゼン環、多環式芳香族炭化水素環{例えば、縮合多環式芳香族炭化水素環(例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、ピレン環、フルオランテン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ペリレン環、ベンゾ[a]ピレン環、ベンゾ[e]ピレン環などの縮合2乃至6環式芳香族炭化水素環など)、複数の芳香族炭化水素環が直接結合又は連結基[例えば、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、2−プロピリデン基などのC1−10アルキレン基(又はアルキリデン基))などの炭化水素基;エーテル基(−O−)、カルボニル基(−CO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、イミノ基(−NH−)、アミド基(−NHCOO−)、チオ基(−S−)、スルホニル基(−SO−)、スルフィニル基(−SO−)、オキシアルキレン基(例えば、オキシメチレン基、オキシエチレン基などのオキシC1−4アルキレン基)などのヘテロ原子含有連結基]を介して結合した芳香族炭化水素環(例えば、ビフェニル環、フェニルナフタレン環、ターフェニル環などの2乃至6個のC6−10アレーン環が直接結合した芳香族炭化水素環)などが挙げられる。
【0024】
芳香族複素環(又はヘテロアレーン環)としては、芳香環を構成する原子としてヘテロ原子(特に、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子)を含む芳香環であればよく、例えば、単環式芳香族複素環[又は単環式ヘテロアレーン環、例えば、ピロール環、ピリジン環、フラン環、チオフェン環、アゾール環(例えば、ジアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環など)、ピラジン環など]、縮合多環式芳香族複素環[又は縮合多環式ヘテロアレーン環、例えば、チエノ[2,3−b]チオフェン環、インドール環、ベンゾ[b]フラン環、3,4−エチレンジオキシチオフェン環、ベンゾ[b]チオフェン環、ベンゾピラン環、キノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、キサンテン環、チアントレン環などの縮合2乃至6環式芳香族複素環]、少なくとも芳香族複素環を含む複数の芳香環(芳香族炭化水素環を含む)が直接結合又は連結基(前記例示の連結基など)を介して結合した芳香環[例えば、複数の芳香族複素環同士が結合した芳香環(例えば、ビピリジル環、ビフリル環、ターピリジン環、ビチオフェン環、ターチオフェン環などの2乃至6個の芳香族複素環が直接結合した芳香環など)など]などが挙げられる。
【0025】
脱離基を有する有機化合物(又は有機化合物、特に、ハロゲン化不飽和化合物)は、脱離基(例えば、ハロゲン原子)を有している限り、さらに、置換基(脱離基以外の置換基)を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭化水素基[例えば、アルキル基(メチル、エチル、ブチル、t−ブチル基、ペンチル基などのC1−10アルキル基、好ましくはC1−6アルキル基、さらに好ましくはC1−4アルキル基)、ハロアルキル基(トリクロロメチル、トリフルオロメチル、テトラフルオロプロピル基などのハロC1−4アルキル基など)、アルケニル基(ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル基などのC2−6アルケニル基、好ましくはC2−4アルケニル基)、アリール基(フェニル基などのC6−14アリール基)、アラルキル基(ベンジル、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基)など]、ヒドロキシル基、メルカプト基、(チオ)エーテル基[例えば、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、ブトキシ、t−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基などのC1−10アルコキシ基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基などの上記アルコキシ基に対応するC1−10アルキルチオ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基)など]、ヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基などのヒドロキシC1−10アルキル基)、アシル基[ホルミル基、アルキルカルボニル基(例えば、アセチル、プロピオニル基などのC1−6アルキル−カルボニル基)、アロイル基(例えば、ベンゾイル基など)など]、カルボキシル基、エステル基[例えば、アルコキシ−カルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル基などのC1−6アルコキシ−カルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル基など)など]、アミノ基、置換アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのアルキルアミノ基)、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、これらの置換基同士が結合した置換基[例えば、アルコキシアリール基(例えば、メトキシフェニル基などのC1−4アルコキシC6−10アリール基)など]などが挙げられる。脱離基を有する有機化合物(又は有機化合物)は、これらの置換基を単独で又は2種以上組み合わせて有していてもよい。
【0026】
このような置換基を有する有機化合物において、置換基の数は、有機化合物骨格(例えば、芳香族骨格)の種類などにもよるが、例えば、1〜8、好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜4程度であってもよい。特に、置換基を有する単環式芳香環(ベンゼン環又は単環式芳香族複素環)において、置換基の置換数は、1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2程度であってもよい。
【0027】
なお、置換基を有する有機化合物において、置換基と脱離基(ハロゲン原子など)との位置関係は特に限定されず、例えば、ベンゼン環であれば、オルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよい。本発明では、オルト位のような脱離基に隣接又は近接する位置に置換基を有する有機化合物であっても、効率よくカップリング化合物を得ることができる。
【0028】
代表的な脱離基を有する有機化合物としては、ハロゲン化脂肪族化合物[例えば、ハロアルケン(例えば、塩化ビニルなどのハロC2−20アルケンなど)、ハロシクロアルケン(例えば、1−ヨードシクロヘキセン)などのハロゲン化脂肪族炭化水素(特にハロゲン化不飽和脂肪族炭化水素);これらのハロゲン化炭化水素にさらに置換基を有する化合物(例えば、クロロマレイン酸、β−クロロスチレンなど)]、ハロゲン化芳香族化合物などの有機ハロゲン化物(又はハロゲン化有機化合物)、これらの有機ハロゲン化物に対応し、ハロゲン原子がスルホン酸エステル基に置換した化合物(有機トリフラート化合物、有機トシラート化合物など)などが挙げられる。脱離基を有する芳香族化合物(特に、ハロゲン化芳香族化合物)を使用すると、カップリング反応により、効率よくポリアリール化合物(例えば、ビスアリール化合物など)を得ることができる。
【0029】
ハロゲン化芳香族化合物としては、ハロゲン化芳香族炭化水素化合物、ハロゲン化芳香族複素環化合物などが挙げられる。ハロゲン化芳香族炭化水素化合物(又は置換基を有していてもよいハロゲン化芳香族炭化水素)としては、例えば、ハロベンゼン(例えば、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、4−クロロ−1−ヨードベンゼン、4−クロロ−1−ブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1,3,5−トリブロモベンゼンなどのモノ乃至テトラハロベンゼン)、置換基を有するハロベンゼン[例えば、アルキルハロベンゼン(例えば、ブロモトルエン、ヨードトルエン、ヨードキシレン、エチルヨードベンゼンなどのモノ乃至テトラC1−10アルキルハロベンゼン、好ましくはモノ乃至テトラC1−6アルキルハロベンゼン)、ハロアルキルハロベンゼン(例えば、トリフルオロメチルブロモベンゼン、トリフルオロメチルヨードベンゼンなどのモノ乃至テトラハロC1−10アルキルハロベンゼン、好ましくはモノ乃至テトラハロC1−6アルキルハロベンゼン)、シアノハロベンゼン(例えば、シアノヨードベンゼンなど)、ニトロハロベンゼン(例えば、クロロニトロベンゼン、1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼンなど)、アルコキシハロベンゼン(例えば、ヨードアニソール、ヘキシルオキシヨードベンゼンなどのモノ乃至テトラC1−10アルコキシハロベンゼン、好ましくはモノ乃至テトラハロC1−6アルコキシベンゼン)、アシルベンゼン(例えば、クロロベンズアルデヒド、クロロアセトフェノンなどのC1−10アシルハロベンゼン)、ヒドロキシハロベンゼン(例えば、クロロフェノールなど)、アルキルヒドロキシハロベンゼン(例えば、クロロクレゾールなどのC1−10アルキル−ヒドロキシハロベンゼン)、カルボキシハロベンゼン(例えば、クロロ安息香酸、クロロサリチル酸など)、アルコキシカルボニルベンゼン(例えば、クロロ安息香酸メチルなどのC1−10アルコキシ−カルボニルハロベンゼン)、ハロアニリン(例えば、クロロアニリンなど)など]、ハロゲン化多環式芳香族炭化水素化合物{又は置換基を有していてもよいハロゲン化多環式芳香族炭化水素、例えば、ハロゲン化縮合多環式芳香族炭化水素[例えば、ハロナフタレン(例えば、クロロナフタレン、ヨードナフタレン、ジクロロナフタレン)などのハロゲン化縮合2乃至6環式芳香族炭化水素など)、ハロゲン化環集合芳香族炭化水素(例えば、クロロビフェニルなどハロゲン化ビス乃至テトラキスアリールなど)、複数の芳香族炭化水素が直接結合又は連結基を介して結合した化合物のハロゲン化物[例えば、ヨードビフェニルなどの2乃至6個のC6−10アレーンが直接結合した化合物(ビス乃至テトラキスアリールなど)のハロゲン化物など]、前記置換基を有するハロベンゼンに対応する置換基を有する多環式芳香族炭化水素(例えば、1−クロロ−4−ニトロナフタレンなど)など]など}などが挙げられる。
【0030】
ハロゲン化芳香族複素環化合物としては、芳香環を構成する原子としてヘテロ原子(特に、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子)を含むハロゲン化芳香族化合物、例えば、置換基を有していてもよいハロゲン化単環式芳香族複素環化合物(例えば、ヨードピリジン、クロロチオフェン、ヨードチオフェンなど)、置換基を有していてもよいハロゲン化多環式芳香族複素環化合物{例えば、ハロゲン化縮合多環式芳香族複素環化合物[例えば、2−クロロキノリンなどの前記例示の置換基を有していてもよいハロゲン化縮合2乃至6環式芳香族ヘテロ環化合物など]など}などが挙げられる。
【0031】
[グリニャール試薬]
グリニャール試薬(グリニャール反応剤)は、有機化合物(又は有機基又は有機骨格を構成する炭素原子)に結合した基−MgX(式中、Xはハロゲン原子を示す。)を少なくとも1つ有する化合物である(又は少なくとも1つの基−MgXが置換した有機化合物である)。なお、基Xで表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。このようなグリニャール試薬において、基−MgXの数は、1以上であればよく、複数個(例えば、2〜4個)であってもよい。特に、基−MgXの数は、1個であってもよい。なお、グリニャール試薬は、通常、有機ハロゲン化物と金属マグネシウムとを反応させることにより得られるが、このような有機ハロゲン化物が、複数のハロゲン原子を有している場合、これらのハロゲン原子の一部又は全部が、基−MgXを形成してもよい。このようなハロゲン原子を有する(又はハロゲン原子が残存した)グリニャール試薬は、ハロゲン原子の種類やハロゲン原子の置換位置によって、基−MgX(グリニャール試薬)の形成しやすさが異なることなどを利用して得ることができる。
【0032】
グリニャール試薬を構成する有機化合物(グリニャール試薬から基−MgXを除いた骨格)は、脂肪族化合物、芳香族化合物のいずれであってもよい。このような脂肪族化合物(脂肪族基)や芳香族化合物(芳香族基)としては、前記脱離基を有する有機化合物の項で例示の化合物が挙げられる。なお、グリニャール試薬において、基−MgXの置換位置としては、限定されないが、特に、芳香環に直接結合しているのが好ましい(すなわち、芳香族グリニャール試薬であるのが好ましい)。
【0033】
また、グリニャール試薬を構成する有機化合物は、前記脱離基を有する有機化合物の項で例示の置換基(基−MgX以外の置換基、特に、炭化水素基、アルコキシ基などのグリニャール試薬に対して不活性な置換基)の他、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)などの置換基を有していてもよい。このような置換基の数は、有機化合物骨格(例えば、芳香族骨格)の種類などにもよるが、例えば、1〜8、好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜4程度であってもよい。特に、置換基を有する単環式芳香環(ベンゼン環又は単環式芳香族複素環)において、置換基の置換数は、1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2程度であってもよい。
【0034】
なお、置換基を有するグリニャール試薬(有機化合物)において、置換基と基−MgXとの位置関係は特に限定されず、例えば、ベンゼン環であれば、オルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよい。本発明では、オルト位のような基−MgXに隣接又は近接する位置に置換基を有するグリニャール試薬であっても、効率よくカップリング化合物を得ることができる。
【0035】
代表的なグリニャール試薬としては、前記例示の脱離基を有する有機化合物において、脱離基(例えば、ハロゲン原子)を基−MgX(又はハロマンガニオ基)に置換した化合物(例えば、脂肪族グリニャール試薬、芳香族グリニャール試薬)などが挙げられる。好ましいグリニャール試薬は、芳香族グリニャール試薬(例えば、前記ハロゲン化芳香族化合物において、ハロゲン原子を基―MgXに置換した化合物など)である。
【0036】
具体的な芳香族グリニャール試薬としては、例えば、フェニルマグネシウムハライド類{例えば、フェニルマグネシウムハライド(例えば、フェニルマグネシウムブロミドなど)、置換基を有するフェニルマグネシウムハライド[例えば、アルキルフェニルマグネシウムハライド(例えば、メチルフェニルマグネシウムブロミドなどのモノ乃至テトラC1−10アルキルフェニルマグネシウムハライド、好ましくはモノ乃至テトラC1−6アルキルフェニルマグネシウムハライド)、ハロアルキルフェニルマグネシウムハライド(例えば、トリフルオロメチルフェニルマグネシウムブロミドなどのモノ乃至テトラハロC1−10アルキルフェニルマグネシウムハライド、好ましくはモノ乃至テトラハロC1−6アルキルフェニルマグネシウムハライド)、アルコキシフェニルマグネシウムハライド(例えば、メトキシフェニルマグネシウムブロミドなどのモノ乃至テトラC1−10アルコキシフェニルマグネシウムハライド、好ましくはモノ乃至テトラハロC1−6アルコキシフェニルマグネシウムハライド)など]など}、多環式アリールマグネシウムハライド類{又は置換基を有していてもよい多環式アリールマグネシウムハライド、例えば、縮合多環式アリールマグネシウムハライド類[例えば、ナフチルマグネシウムハライド(例えば、ナフチルマグネシウムブロミド)などの縮合2乃至6環式アリールマグネシウムハライドなど)など]など}などのアリールマグネシウムハライド類(又は置換基を有していてもよいアリールマグネシウムハライド);単環式ヘテロアリールマグネシウムハライド類(例えば、チオフェニルマグネシウムブロミドなど)などのヘテロアリールマグネシウムハライド類(又は)などが挙げられる。
【0037】
なお、グリニャール試薬は、市販品を用いてもよく、慣用の方法[例えば、有機ハロゲン化物と金属マグネシウムとを、適当な溶媒(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類)中で反応させる方法など]により合成したものを用いてもよい。
【0038】
反応において、脱離基を有する有機化合物とグリニャール試薬との割合は、脱離基の数、グリニャール試薬の基−MgXの数などに応じて適宜選択できる。例えば、グリニャール試薬の使用割合は、脱離基を有する有機化合物の脱離基1モルに対して、1モル以上(例えば、1〜5モル)、好ましくは1.1〜4モル、好ましくは1.2〜3モル(例えば、1.3〜2.5モル)程度であってもよい。
【0039】
[配位性化合物]
配位性化合物は、グリニャール試薬のマグネシウム原子に対して親和性を有する化合物であればよく、通常非金属化合物であってもよい。このような配位性化合物は、ヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子など)を有している場合が多い。配位性化合物は、ヘテロ原子を単独で又は2種以上組み合わせて有していてもよい。なお、配位性化合物は、中性、酸性、アルカリ性のいずれであってもよいが、特に中性(又は弱酸又は弱塩基性)の化合物であるのが好ましい。また、配位性化合物は、グリニャール試薬に対して、活性(グリニャール試薬と反応可能)であってもよいが、不活性であるのが好ましい。
【0040】
代表的な配位性化合物には、窒素原子含有配位性化合物{例えば、アミド類[例えば、アルカン酸アミド(例えば、ホルムアミド、アセトアミドなどのC1−6アルカン酸アミド)、N−置換アルカン酸アミド(例えば、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのN−モノ又はジC1−6アルキルC1−6アルカン酸アミド)など]、ニトリル類[例えば、シアノアルカン類(アセトニトリル、プロピオニトリルなど)、スクシノニトリル、ベンゾニトリルなど)など]など}、酸素原子含有配位性化合物{例えば、エーテル類[例えば、鎖状エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのジアルキルエーテル類;1,2−ジメトキシエタン、ジグライムなどの(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類;アニソールなどのアルキルアリールエーテル類など)、環状エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサンなどの4乃至10員環状エーテル;クラウンエーテル類など)など]など}、硫黄原子含有配位性化合物[例えば、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド、スルホランなど)など]、リン原子含有配位性化合物{例えば、リン酸エステル類[例えば、リン酸トリアルキルエステル類(リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチルなど)、リン酸トリアリールエステル類(リン酸トリクレシルなど)などのリン酸トリエステル類;リン酸ジアルキルエステル類(例えば、リン酸ジ(2−エチルヘキシル)など)などのリン酸ジエステル類]、リン酸アミド類[例えば、リン酸トリアミド類(例えば、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどのN−置換リン酸トリアミド)など]など}などが挙げられる。
【0041】
配位性化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0042】
これらの配位性化合物のうち、特に、アミド類、エーテル類、リン酸エステル類などを好適に使用することができ、特に、環状エーテル類(例えば、テトラヒドロフランなどの4乃至10員環状エーテル)を好適に使用してもよい。
【0043】
反応において、配位性化合物の割合は、グリニャール試薬のマグネシウム原子(又は基−MgX)1モルに対して、例えば、1モル以上(例えば、1.2〜100モル)、好ましくは1.5モル以上(例えば、1.7〜50モル)、さらに好ましくは2モル以上(例えば、2.2〜30モル)程度であってもよく、通常1.5〜20モル(例えば、2〜15モル、さらに好ましくは2.5〜10モル)程度であってもよい。なお、配位性化合物が液状成分である場合には、反応溶媒として使用することもできるが、配位性化合物の種類によっては、反応収率を低下させる場合もあるため、配位性化合物の使用割合は過剰すぎないのが(さらには反応溶媒として後述の溶媒を併用するのが)好ましい。特に、配位性化合物を反応溶媒として使用する場合には、配位性化合物と同等か配位性化合物よりも過剰の後述の溶媒を使用し、これらの混合溶媒として使用することが好ましい。
【0044】
なお、配位性化合物は、反応系において存在させることができればよく、反応系において、反応基質(脱離基を有する有機化合物、グリニャール試薬)と混合してもよく、予め反応基質に混合又は含有させてもよく、これらの双方であってもよい。例えば、配位性化合物を、グリニャール試薬の合成時の溶媒として用い、配位性化合物を溶媒として含むグリニャール試薬を反応に用いてもよい。なお、このような場合、配位性化合物は、反応系において適当な量的割合とするため、適宜、濃縮などにより濃度又は含有量を低減させて反応系に適用してもよい。
【0045】
[塩基]
本発明では、反応(カップリング反応)において、塩基の存在下で反応させてもよい。配位性化合物とこのような塩基とを組み合わせる(併用する)ことにより、カップリング反応における反応性をより一層向上できる場合がある。
【0046】
塩基(前記配位性化合物の範疇に属さない塩基)としては、例えば、無機塩基{例えば、金属水酸化物、金属炭酸塩(例えば、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ又はアルカリ土類金属炭酸塩)、金属炭酸水素塩(例えば、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなど)、アンモニアなど}、有機塩基{例えば、アルコキシド、有機金属化合物(例えば、ブチルリチウムなど)、有機酸塩(例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウムなどの有機酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩など)、アミン類など}などが例示できる。塩基は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0047】
好ましい塩基には、アルコキシド(金属アルコキシド)が含まれる。そのため、塩基は、少なくともアルコキシドで構成してもよい。アルコキシドは、アルコール類のヒドロキシル基の水素を金属で置換した化合物である。このようなアルコキシドに対応するアルコール類としては、例えば、アルカノール(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソペンチルアルコール、t−ペンチルアルコールなどのC1−14アルカノール、好ましくはC1−10アルカノール、さらに好ましくはC1−6アルカノール)などの脂肪族アルコールが挙げられる。
【0048】
また、アルコキシドの金属としては、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなど)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなど)、遷移金属(例えば、チタン、ジルコニウムなどの周期表第4族金属)、周期表第13族金属(例えば、アルミニウムなど)などが挙げられる。好ましい金属は、アルカリ金属である。
【0049】
代表的なアルコキシドとしては、例えば、アルカリ金属アルコキシド(例えば、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、リチウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシドなどのアルカリ金属C1−10アルコキシド、好ましくはアルカリ金属C1−6アルコキシド、さらに好ましくはアルカリ金属C1−4アルコキシド)などが挙げられる。
【0050】
好ましいアルコキシドには、アルカリ金属アルコキシド(特に、ナトリウムアルコキシド)が含まれる。また、第3級アルコール[例えば、第3級アルカノール(例えば、t−ブタノール、t−ペンタノールなどの第3級C4−10アルカノール、好ましくは第3級C4−6アルカノール)など]のアルコキシドも好ましい。特に好ましいアルコキシドには、ナトリウム第3級アルコキシド(例えば、ナトリウムt−ブトキシドなどのナトリウムC4−8第3級アルコキシド)などが含まれる。なお、アルコキシドは単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0051】
塩基(アルコキシドなど)の割合は、グリニャール試薬のマグネシウム原子1モルに対して、例えば、0.1〜1モル、好ましくは0.2〜0.8モル、さらに好ましくは0.3〜0.7モル程度であってもよい。
【0052】
[溶媒]
反応は、さらに、溶媒[配位性化合物の範疇に属さない溶媒(グリニャール試薬のマグネシウム原子に配位しない溶媒)]の存在下で行ってもよい。溶媒は、通常、反応において不活性であってもよく、例えば、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなど)、脂環族炭化水素類(シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンなど)、芳香族炭化水素類[例えば、ベンゼン;トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼンなどの置換ベンゼン]などの炭化水素類などが挙げられる。なお、ヘテロ原子を含む溶媒を使用してもよいが、グリニャール試薬のマグネシウムに対する配位力を有しない溶媒であるのがよい。
【0053】
これらの溶媒のうち、特に、芳香族炭化水素類[特に、ベンゼン、アルキルベンゼン[例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼンなどの低級アルキルベンゼン(例えば、C1−4アルキルベンゼン)などのベンゼン類(又はベンゼン系溶媒)]などが好ましい。
【0054】
溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0055】
溶媒の割合は、配位性化合物1重量部に対して、0.5重量部以上(例えば、0.7〜100重量部)の範囲から選択でき、例えば、1重量部以上(例えば、1.5〜80重量部)、好ましくは2重量部以上(例えば、2.5〜50重量部)、さらに好ましくは3重量部以上(例えば、3.5〜30重量部)であってもよく、通常1〜50重量部(例えば、2〜30重量部、さらに好ましくは3〜20重量部)程度であってもよい。
【0056】
また、溶媒の割合は、配位性化合物1モルに対して、0.5モル以上(例えば、0.7〜100モル)の範囲から選択でき、例えば、1モル以上(例えば、1.3〜80モル)、好ましくは1.5モル以上(例えば、1.8〜50モル)、さらに好ましくは2モル以上(例えば、2.2〜30モル)であってもよく、通常1.5〜50モル(例えば、2〜30モル、さらに好ましくは3〜20モル)程度であってもよい。
【0057】
反応温度は、特に限定されないが、例えば、30〜200℃(例えば、40〜180℃)、好ましくは50〜160℃、さらに好ましくは60〜150℃(例えば、70〜130℃)程度であってもよく、通常50〜150℃(例えば、60〜130℃、好ましくは70〜120℃)程度であってもよい。なお、反応時間は、使用する基質の種類、塩基の種類やその使用の有無、反応温度などに応じて適宜選択でき、ガスクロマトグラフィーなどを利用してカップリング化合物の生成の程度を確認しながら調整してもよい。
【0058】
反応は、常圧下、加圧下、又は減圧下のいずれで行ってもよく、また、還流させて行ってもよい。なお、反応は、非酸化性雰囲気中[例えば、窒素ガス、希ガス(ヘリウム、アルゴンなど)中など]で行ってもよい。
【0059】
反応終了後、慣用の分離精製手段、例えば、濃縮、乾固、晶析、再結晶、濾過、抽出、蒸留、クロマトグラフィなどの方法を利用して、生成物を単離してもよい。
【0060】
[カップリング化合物]
上記のようにして、脱離基を有する有機化合物の脱離基(ハロゲン原子など)とグリニャール試薬の基−MgXとの間で分子間脱離が生じ、対応するカップリング化合物が得られる。すなわち、下記式(I)で表されるカップリング反応により、脱離基を有する有機化合物(1)と、グリニャール試薬(2)との間で、少なくとも1つの炭素−炭素結合が形成されたカップリング化合物(3)が得られる。
【0061】
【化1】

【0062】
[式中、Rは有機化合物(又は脱離基を有する有機化合物から脱離基を除いた残基)、Rはグリニャール試薬を構成する有機化合物(又はグリニャール試薬から基−MgXを除いた残基)、Eは脱離基(ハロゲン原子など)を示し、Xはハロゲン原子を示す。]
なお、カップリング化合物は、脱離基を有する有機化合物の脱離基と、グリニャール試薬の基−MgXとの間で分子間脱離が生じ、少なくとも1つの炭素−炭素結合が形成していればよく、複数の炭素−炭素結合を形成してもよい。例えば、分子間脱離可能であれば、(Ia)脱離基を有する有機化合物が複数の脱離基を有している場合、下記式(Ia)で表されるように、1つの脱離基を有する有機化合物(化合物(1a))と複数のグリニャール試薬(化合物(2a))との間で、分子間脱離させて、カップリング化合物(化合物(3a))を得てもよく、(Ib)下記式(Ib)で表されるように、グリニャール試薬が、複数の基−Mg基を有している場合、1つのグリニャール試薬と複数の脱離基を有する有機化合物との間で分子間脱離させて、カップリング化合物(化合物(3b))を得てもよい。
【0063】
【化2】

【0064】
(式中、nは2以上の整数を示し、R、R、EおよびXは前記と同じ。)
なお、炭素−炭素結合の数は、脱離基を有する有機化合物における脱離基の種類や置換位置、グリニャール試薬との反応割合、反応条件などを調整することにより調整できる。本発明では、代表的には脱離基を有する有機化合物とグリニャール試薬(1つの基−MgXを有するグリニャール試薬)との間で、上記炭素−炭素結合が1つ形成されたカップリング化合物を得る場合が多い。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
フェニルマグネシウムブロミド0.40mmol(脱離基を有する有機化合物に対して2当量)を含むテトラヒドロフラン(THF)溶液0.39mL(濃度1.03M)を、0.02mmHgの減圧下で15分間濃縮し、THFを除去したのち、THF1.2mmol(97μL、86mg、グリニャール試薬に対して3当量)を加えて、20mLのシュレンク管に移した後、さらに、2−ヨードナフタレン0.20mmol(50.8mg)およびトルエン0.50mL[433mg(THF1重量部に対して5重量部)、4.7mmol(THF1モルに対して3.9モル)]を加え、窒素雰囲気中、撹拌下、110℃で3時間加熱し、反応させた。冷却後、反応混合物を2mLの水に加え、10mLのジエチルエーテルで3回抽出した。得られた有機層(エーテル層)を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、得られた濾液を濃縮した。濃縮残分をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)に供し、対応するカップリング化合物を得た。カップリング化合物の収量は38.1mgであり、収率は93%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
H−NMR(600MHz,CDCl)δ7.40(t,J=7.2Hz,1H),7.47−7.55(m,4H),7.74(d,J=7.5Hz,2H),7.77(dd,J=8.1,2.0Hz,1H),7.88(d,J=7.5Hz,1H),7.92(d,J=8.8Hz,1H),7.93(d,J=8.8Hz,1H),8.06(s,1H)。
【0067】
(実施例2)
実施例1において、フェニルマグネシウムブロミドを0.30mmol(脱離基を有する有機化合物に対して1.5当量)に代えたこと以外は、実施例1と同様にしてカップリング化合物を、収率96%で得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0068】
(実施例3)
実施例1において、フェニルマグネシウムブロミドに代えて、4−クロロフェニルマグネシウムブロミド0.40mmolを用いたこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は95%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
H−NMR(600MHz,CDCl)δ7.46(d,J=8.9Hz,2H),7.50(t,J=6.8Hz,1H),7.52(t,J=6.8Hz,1H),7.65(d,J=8.9Hz,2H),7.70(dd,J=8.2,2.0Hz,1H),7.87(d,J=7.5Hz,1H),7.90(d,J=7.5Hz,1H),7.92(d,J=8.9Hz,1H),8.01(s,1H)。
【0069】
(実施例4)
実施例3において、4−クロロフェニルマグネシウムブロミドを0.30mmol(脱離基を有する有機化合物に対して1.5当量)に代えたこと以外は、実施例3と同様にしてカップリング化合物を、収率97%で得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0070】
(実施例5)
実施例1において、フェニルマグネシウムブロミドに代えて、4−メトキシフェニルマグネシウムブロミド0.40mmolを用いたこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は81%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
H−NMR(600MHz,CDCl)δ3.88(s,3H),7.03(d,J=8.9Hz,2H),7.47(t,J=6.8Hz,1H),7.50(t,J=6.8Hz,1H),7.67(d,J=8.9Hz,2H),7.73(dd,J=8.1,2.1Hz,1H),7.86(d,J=7.5Hz,1H),7.89(d,J=8.2Hz,1H),7.90(d,J=8.1Hz,1H),8.00(s,1H)。
【0071】
(実施例6)
実施例5において、4−メトキシフェニルマグネシウムブロミドを0.30mmol(脱離基を有する有機化合物に対して1.5当量)に代えたこと以外は、実施例5と同様にしてカップリング化合物を、収率95%で得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0072】
(実施例7)
実施例1において、フェニルマグネシウムブロミドに代えて、3−メトキシフェニルマグネシウムブロミド0.40mmolを用いたこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は86%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
H−NMR(600MHz,CDCl)δ3.91(s,3H),6.95(dd,J=8.1,2.0Hz,1H),7.28(t,J=2.0Hz,1H),7.33(d,J=7.5Hz,1H),7.42(t,J=7.8Hz,1H),7.50(t,J=6.8Hz,1H),7.53(t,J=6.8Hz,1H),7.76(dd,J=8.1,1.4Hz,1H),7.88(d,J=8.1Hz,1H),7.91(d,J=7.5Hz,1H),7.93(d,J=8.2Hz,1H),8.06(s,1H)。
【0073】
(実施例8)
実施例7において、3−メトキシフェニルマグネシウムブロミドを0.30mmol(脱離基を有する有機化合物に対して1.5当量)に代えたこと以外は、実施例7と同様にしてカップリング化合物を、収率90%で得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0074】
(実施例9)
実施例1において、フェニルマグネシウムブロミドに代えて、2−メチルフェニルマグネシウムブロミド0.40mmolを用いたこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は98%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
H−NMR(600MHz,CDCl)δ2.35(s,3H),7.28−7.38(m,4H),7.48−7.56(m,3H),7.80(s,1H),7.88(d,J=6.8Hz,1H),7.91(d,J=8.1Hz,2H)。
【0075】
(実施例10)
実施例9において、2−メチルフェニルマグネシウムブロミドを0.30mmol(脱離基を有する有機化合物に対して1.5当量)に代えたこと以外は、実施例9と同様にしてカップリング化合物を、収率96%で得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0076】
(実施例11)
実施例1において、フェニルマグネシウムブロミドに代えて、2−チオフェニルマグネシウムブロミド0.40mmolを用いたこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は98%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
H−NMR(600MHz,CDCl)δ7.13(dd,J=4.8,3.4Hz,1H),7.33(dd,J=4.8,1.4Hz,1H),7.45(dd,J=3.4,1.4Hz,1H),7.46(t,J=7.5Hz,1H),7.49(t,J=7.5Hz,1H),7.76(dd,J=8.1,2.0Hz,1H),7.82(d,J=8.1Hz,1H),7.85(d,J=8.8Hz,1H),7.86(d,J=8.8Hz,1H),8.06(d,J=1.4Hz,1H)。
【0077】
(実施例12)
実施例1において、2−ヨードナフタレンに代えて、1−ヨード−4−メチルベンゼン0.20mmolを用いたこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は96%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
H−NMR(600MHz,CDCl)δ2.42(s,3H),7.27(d,J=8.1Hz,2H),7.34(t,J=7.5Hz,1H),7.45(t,J=7.8Hz,2H),7.52(d,J=8.1Hz,2H),7.60(d,J=8.1Hz,2H)。
【0078】
(実施例13)
実施例12において、フェニルマグネシウムブロミドを0.30mmol(脱離基を有する有機化合物に対して1.5当量)に代えたこと以外は、実施例12と同様にしてカップリング化合物を、収率97%で得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0079】
(実施例14)
実施例1において、2−ヨードナフタレンに代えて、1−ヨード−4−メトキシベンゼン0.20mmolを用いたこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は97%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
H−NMR(600MHz,CDCl)δ3.87(s,3H),7.00(d,J=8.1Hz,2H),7.33(t,J=7.2Hz,1H),7.44(t,J=7.5Hz,2H),7.56(d,J=8.1Hz,2H),7.58(d,J=7.5Hz,2H)。
【0080】
(実施例15)
実施例14において、フェニルマグネシウムブロミドを0.30mmol(脱離基を有する有機化合物に対して1.5当量)に代えたこと以外は、実施例14と同様にしてカップリング化合物を、収率96%で得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0081】
(実施例16)
実施例1において、2−ヨードナフタレンに代えて、1−ヨード−3−メトキシベンゼン0.20mmolを用いたこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は86%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
H−NMR(600MHz,CDCl)δ3.88(s,3H),6.91(dd,J=8.2,2.7Hz,1H),7.14(bs,1H),7.20(d,J=7.5Hz,1H),7.36(t,J=7.5Hz,1H),7.37(t,J=7.8Hz,1H),7.45(t,J=7.8Hz,2H),7.60(d,J=6.8Hz,2H)。
【0082】
(実施例17)
実施例16において、フェニルマグネシウムブロミドを0.30mmol(脱離基を有する有機化合物に対して1.5当量)に代えたこと以外は、実施例16と同様にしてカップリング化合物を、収率93%で得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0083】
(実施例18)
実施例1において、2−ヨードナフタレンに代えて、1−ヨード−4−トリフルオロメチルベンゼン0.20mmolを用いたこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は57%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
H−NMR(600MHz,CDCl)δ7.41(t,J=7.5Hz,1H),7.48(t,J=7.5Hz,2H),7.60(d,J=8.1Hz,2H),7.70(bs,4H)。
【0084】
(実施例19)
実施例18において、フェニルマグネシウムブロミドを0.30mmol(脱離基を有する有機化合物に対して1.5当量)に代えたこと以外は、実施例18と同様にしてカップリング化合物を、収率55%で得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0085】
(実施例20)
実施例1において、2−ヨードナフタレンに代えて、1−ヨード−2−メチルベンゼン0.20mmolを用いたこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は93%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
H−NMR(600MHz,CDCl)δ2.28(s,3H),7.22−7.30(m,4H),7.31−7.37(m,3H),7.42(t,J=7.8Hz,2H)。
【0086】
(実施例21)
実施例20において、フェニルマグネシウムブロミドを0.30mmol(脱離基を有する有機化合物に対して1.5当量)に代えたこと以外は、実施例20と同様にしてカップリング化合物を、収率91%で得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0087】
(実施例22)
実施例1において、2−ヨードナフタレンに代えて、2−ヨードビフェニル0.20mmolを用いたこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は88%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
H−NMR(600MHz,CDCl)δ7.14−7.16(m,4H),7.17−7.25(m,6H),7.41−7.48(m,4H)。
【0088】
(実施例23)
実施例22において、フェニルマグネシウムブロミドを0.30mmol(脱離基を有する有機化合物に対して1.5当量)に代えたこと以外は、実施例22と同様にしてカップリング化合物を、収率93%で得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0089】
(実施例24)
実施例1において、2−ヨードナフタレンに代えて、1−ヨード−2,6−ジメチルベンゼン0.20mmolを用いたこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は87%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
H−NMR(600MHz,CDCl)δ2.03(s,6H),7.11(d,J=7.5Hz,2H),7.15(d,J=7.5Hz,2H),7.16(t,J=8.2Hz,1H),7.33(t,J=7.5Hz,1H),7.42(t,J=7.8Hz,2H)。
【0090】
(実施例25)
実施例24において、フェニルマグネシウムブロミドを0.30mmol(脱離基を有する有機化合物に対して1.5当量)に代えたこと以外は、実施例24と同様にしてカップリング化合物を、収率91%で得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0091】
(実施例26)
実施例1において、フェニルマグネシウムブロミドに代えて2−メチルフェニルマグネシウムブロミド0.40mmol、2−ヨードナフタレンに代えて1−ヨード−2−エチルベンゼン0.20mmolを用いたこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は89%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
H−NMR(600MHz,CDCl)δ1.03(t,J=7.5Hz,3H),2.05(s,3H),2.34(dq,J=14.8,7.4Hz,1H),2.42(dq,J=14.8,7.4Hz,1H),7.08(d,J=7.5Hz,1H),7.12(d,J=6.8Hz,1H),7.18−7.24(m,2H),7.24−7.28(m,2H),7.30(d,J=4.1Hz,2H).
13C−NMR(125MHz,CDCl)δ15.3,20.2,26.2,125.5,125.6,127.3,127.5,128.4,129.6,129.7,129.9,136.1,141.1,141.6,142.0.
HRMS(APCI) Calcd for C1516:M,196.1247. Found:m/z 196.1246。
【0092】
(実施例27)
実施例26において、2−メチルフェニルマグネシウムブロミドを0.30mmol(脱離基を有する有機化合物に対して1.5当量)に代えたこと以外は、実施例26と同様にしてカップリング化合物を、収率89%で得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0093】
(実施例28)
実施例1において、フェニルマグネシウムブロミドに代えて4−メトキシフェニルマグネシウムブロミド0.40mmol、2−ヨードナフタレンに代えて1−ヨード−4−ヘキシルオキシベンゼン0.20mmolを用いたこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は84%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
H−NMR(600MHz,CDCl)δ0.91(t,J=6.8Hz,3H),1.31−1.39(m,4H),1.48(quint,J=7.5Hz,2H),1.80(quint,J=7.1Hz,2H), 3.84(s,3H),3.99(t,J=6.4Hz,2H),6.94(d,J=8.9Hz,2H),6.95(d,J=8.9Hz,2H),7.46(d,J=8.9Hz,2H),7.47(d,J=8.9Hz,2H).
13C−NMR(125MHz,CDCl)δ14.2,22.8,25.9,29.4,31.8,55.5,68.3,114.3,114.9,127.8,127.9,133.4,133.7,158.4,158.8.
HRMS(ESI) Calcd for Cl924Na:[M+Na],307.1669. Found: m/z 307.1667。
【0094】
(実施例29)
実施例20において、4−メトキシフェニルマグネシウムブロミドを0.30mmol(脱離基を有する有機化合物に対して1.5当量)に代えたこと以外は、実施例28と同様にしてカップリング化合物を、収率91%で得た。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0095】
(実施例30)
実施例1において、2−ヨードナフタレンに代えて2−ブロモナフタレン0.20mmolを用いるとともに、さらに、ナトリウムt−ブトキシド0.20mmol(グリニャール試薬に対して0.5当量、芳香族ハロゲン化物に対して1当量)の存在下で、反応を行ったこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は82%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0096】
(実施例31)
実施例1において、フェニルマグネシウムブロミドに代えて4−メトキシフェニルマグネシウムブロミド0.40mmol、2−ヨードナフタレンに代えて2−ブロモナフタレン0.20mmolを用いるとともに、さらに、ナトリウムt−ブトキシド0.20mmolの存在下で、反応を行ったこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は87%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0097】
(実施例32)
実施例1において、フェニルマグネシウムブロミドに代えて2−メチルフェニルマグネシウムブロミド0.40mmol、2−ヨードナフタレンに代えて2−ブロモナフタレン0.20mmolを用いるとともに、さらに、ナトリウムt−ブトキシド0.20mmolの存在下で、反応を行ったこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は96%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0098】
(実施例33)
実施例1において、2−ヨードナフタレンに代えて1−ブロモ−4−トリフルオロメチルベンゼン0.20mmolを用いるとともに、さらに、ナトリウムt−ブトキシド0.20mmolの存在下で、反応を行ったこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は92%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0099】
(実施例34)
実施例1において、2−ヨードナフタレンに代えて1−ヨード−4−メチルベンゼン0.20mmolを用いるとともに、さらに、ナトリウムt−ブトキシド0.18mmol(グリニャール試薬に対して0.9当量、芳香族ハロゲン化物に対して1.8当量)の存在下、80℃で24時間反応を行ったこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は91%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0100】
(実施例35)
実施例1において、2−ヨードナフタレンに代えて1−ヨード−4−メトキシベンゼン0.20mmolを用いるとともに、さらに、ナトリウムt−ブトキシド0.18mmolの存在下、80℃で24時間反応を行ったこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は95%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0101】
(実施例36)
実施例1において、2−ヨードナフタレンに代えて1−ヨード−2−メトキシベンゼン0.20mmolを用いるとともに、さらに、ナトリウムt−ブトキシド0.18mmolの存在下、80℃で24時間反応を行ったこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は80%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0102】
(実施例37)
実施例1において、フェニルマグネシウムブロミドに代えて4−メトキシフェニルマグネシウムブロミド0.40mmolを用いるとともに、さらに、ナトリウムt−ブトキシド0.18mmolの存在下、80℃で48時間反応を行ったこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は95%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0103】
(実施例38)
実施例1において、フェニルマグネシウムブロミドに代えて4−トリフルオロメチルフェニルマグネシウムブロミド0.40mmolを用いるとともに、さらに、ナトリウムt−ブトキシド0.18mmolの存在下、80℃で60時間反応を行ったこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は94%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0104】
(実施例39)
実施例1において、フェニルマグネシウムブロミドに代えて4−クロロフェニルマグネシウムブロミド0.40mmolを用いるとともに、さらに、ナトリウムt−ブトキシド0.18mmolの存在下、80℃で60時間反応を行ったこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は95%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0105】
(実施例40)
実施例1において、フェニルマグネシウムブロミドに代えて2−メチルフェニルマグネシウムブロミド0.40mmolを用いるとともに、さらに、ナトリウムt−ブトキシド0.18mmolの存在下、80℃で12時間反応を行ったこと以外は、実施例1と同様にして対応するカップリング化合物を得た。なお、収率は96%であった。表に、生成物(カップリング化合物)の構造や収率をまとめて示す。
【0106】
【表1】

【0107】
【表2】

【0108】
【表3】

【0109】
【表4】

【0110】
【表5】

【0111】
【表6】

【0112】
【表7】

【0113】
【表8】

【0114】
【表9】

【0115】
【表10】

【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明では、遷移金属触媒を使用しなくても、シンプルな反応系で、脱離基を有する有機化合物(有機ハロゲン化物など)とグリニャール試薬とのカップリング化合物を製造できる。このような本発明の方法では、基質として、置換基(電子供与性置換基、電子求引性置換基など)を有する化合物、無置換の化合物によらず、幅広い化合物を用いることができる。特に、グリニャール試薬のマグネシウムや有機化合物の脱離基に対して隣接する位置(オルト位など)に置換基を有する基質などであっても反応が短時間で完結するなど、基質適用性が広い。このような本発明の方法(又は本発明の方法により得られるカップリング化合物)は、各種化学品(液晶材料、有機EL材料など)、薬品、医薬品などに利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱離基を有する有機化合物とグリニャール試薬とを、グリニャール試薬のマグネシウム原子に配位可能な配位性化合物の存在下、かつ遷移金属の非存在下で反応させ、前記有機化合物の脱離基とグリニャール試薬の基−MgX(式中、Xはハロゲン原子を示す。)とが分子間脱離して炭素−炭素結合を形成したカップリング化合物を製造する方法。
【請求項2】
有機化合物が、芳香族化合物である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
グリニャール試薬が、芳香族グリニャール試薬である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
配位性化合物が、ヘテロ原子を有する中性化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
配位性化合物が、エーテル類、アミド類、およびリン酸エステル類から選択された少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
配位性化合物が、環状エーテル類を含む請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
配位性化合物が、4乃至10員環状エーテル類を含む請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
配位性化合物の割合が、グリニャール試薬のマグネシウム原子1モルに対して1モル以上である請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
さらに、塩基の存在下で反応させる請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
塩基が、アルコキシドを含む請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
塩基の割合が、グリニャール試薬のマグネシウム原子1モルに対して0.1〜1モルである請求項9又は10記載の製造方法。
【請求項12】
さらに、グリニャール試薬のマグネシウム原子に配位しない溶媒の存在下で反応させる請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
溶媒が、芳香族炭化水素類である請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
溶媒の割合が、配位性化合物1重量部に対して1重量部以上である請求項12又は13記載の製造方法。
【請求項15】
反応温度が50〜160℃である請求項1〜14のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2013−56853(P2013−56853A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196298(P2011−196298)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 刊行物名:日本化学会第91春季年会(2011) 講演予稿集IV、発行所:社団法人 日本化学会、発行日:平成23(2011)年3月11日 刊行物名:予稿集 第44回 有機金属若手の会 夏の学校、発行所:大阪大学大学院工学研究科生越研究室、発行日:平成23(2011)年7月11日 研究集会名:第44回 有機金属若手の会 夏の学校、主催者(共催者)名:社団法人 近畿化学協会有機金属部会、社団法人 有機合成化学協会、開催日(発明を発表した日):平成23(2011)年7月12日
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】