説明

カップリング用触媒およびそれに用いる配位子、ならびにクロスカップリング反応によるビアリール構造を有する化合物の製造方法

【課題】クロスカップリング反応に有用な触媒の配位用新規ホスフィン化合物及びその金属錯体の提供。
【解決手段】式(I)で表されるホスフィン化合物。前記ホスフィン化合物を配位子として含むPd金属錯体。芳香族化合物とグリニヤール試薬とをクロスカップリング反応させてビアリール構造を有する化合物の製造を前記金属錯体存在下で行う。


[式(I)中、R1及びR2は、シクロアルキル基等、nは1〜3、mは1または2の整数。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップリング反応用触媒として有用な新規金属錯体およびそれに用いる配位子、ならびに前記金属錯体を使用するビアリール構造を有する化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種のホスフィン化合物とパラジウム等の金属との錯体が、グリニヤール試薬を用いるクロスカップリング反応において触媒として使用されている(例えば非特許文献1〜5参照)。
【非特許文献1】J. P. Wolfe, S. L. Buchwald, Angew. Chem. Int. Ed. 1999, 38, 2413.
【非特許文献2】C. A. Parrish, S. L. Buchwald, J. Org. Chem. 2001, 66, 3820.
【非特許文献3】Haber, A. Meudt, A. Noerenberg, S. Scherer, F. Vollmueller, Ger. Offen. DE 19920847 A1, 2000.
【非特許文献4】K. Tamao, K. Sumitani, M. Kumada, J. Am. Chem. Soc. 1972, 94, 4374.
【非特許文献5】M. Yamamura, I. Moritani, S. Murahashi, J. Organomet. Chem. 1975, 91, C39.
【非特許文献5】N. A. Bumagin, E. V. Luzikova, J. Organomet. Chem. 1997, 532, 271.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記非特許文献1〜5に記載の触媒等の従来使用されていたクロスカップリング反応用触媒は、反応条件下で脱プロトン化される置換基(OH, NH2, NHR(Rはアルキル基等)等)が直結したハロゲン化アリールに対しては、一般にクロスカップリング反応が遅い。また、分子内に2つのハロゲンを持つジハロゲン化アリールのクロスカップリング反応では、片方のハロゲンを位置選択的にグリニャール試薬と反応させることは、上記触媒では一般に困難である。
【0004】
本発明は、グリニヤール試薬を使用するクロスカップリング反応に有用な新規触媒を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための手段は、以下の通りである。
[1]下記一般式(I)で表されるホスフィン化合物。
【化1】

[一般式(I)中、R1およびR2は、各々独立に、アルキル基またはアリール基であり、nは1〜3の範囲の整数であり、mは1または2である。]
[2]一般式(I)中、R1およびR2はいずれもシクロヘキシル基である[1]に記載のホスフィン化合物。
[3][1]または[2]に記載のホスフィン化合物を配位子として含む金属錯体。
[4]金属は、パラジウムである[3]に記載の金属錯体。
[5][3]または[4]に記載の金属錯体からなるカップリング反応用触媒。
[6]下記一般式(II)で表される芳香族化合物とグリニヤール試薬とのクロスカップリング反応用触媒である[5]に記載のカップリング反応用触媒。
【化2】

[一般式(II)中、R3は置換または無置換の芳香族炭化水素基であり、Yはハロゲン原子またはOTf(Tfはトリフルオロメタンスルホニル基である)である。]
[7]一般式(II)で表される芳香族化合物は、
【化3】

である[6]に記載のカップリング反応用触媒。
[上記においてRaおよびRbは、各々独立にアルキル基またはアリール基であり、Y11、Y12、Y13、Y14およびY15は、各々独立にハロゲン原子であり、Z11、Z12、Z13、Z14およびZ15は、各々独立に置換基であり、p1、p2、p3、p4およびp5は、各々独立に1または2であり、q1は、0以上(5−p1)以下の整数であり、q2は0以上(5−p2)以下の整数であり、q3は、0以上(5−p3)以下の整数であり、q4は、0以上(5−p4)以下の整数であり、q5は、0以上(5−p5)以下の整数である。p1、p2、p3、p4、p5が2の場合に2つのY11、Y12、Y13、Y14、Y15は同一でも異なってもよく、q1、q2、q3、q4、q5が2以上の整数である場合に複数存在するZ11、Z12、Z13、Z14、Z15はそれぞれ同一でも異なってもよい。]
[8]下記一般式(II)で表される芳香族化合物とグリニヤール試薬とをクロスカップリング反応させてビアリール構造を有する化合物を製造する方法であって、
前記反応を[3]または[4]に記載の金属錯体存在下で行うことを特徴とする、前記製造方法。
【化4】

[一般式(II)中、R3は置換または無置換の芳香族炭化水素基であり、Yはハロゲン原子またはOTf(Tfはトリフルオロメタンスルホニル基である)である。]
[9]一般式(II)で表される芳香族化合物は、
【化5】

である[8]に記載の製造方法。
[上記においてRaおよびRbは、各々独立にアルキル基またはアリール基であり、Y11、Y12、Y13、Y14およびY15は、各々独立にハロゲン原子であり、Z11、Z12、Z13、Z14およびZ15は、各々独立に置換基であり、p1、p2、p3、p4およびp5は、各々独立に1または2であり、q1は、0以上(5−p1)以下の整数であり、q2は0以上(5−p2)以下の整数であり、q3は、0以上(5−p3)以下の整数であり、q4は、0以上(5−p4)以下の整数であり、q5は、0以上(5−p5)以下の整数である。p1、p2、p3、p4、p5が2の場合に2つのY11、Y12、Y13、Y14、Y15は同一でも異なってもよく、q1、q2、q3、q4、q5が2以上の整数である場合に複数存在するZ11、Z12、Z13、Z14、Z15はそれぞれ同一でも異なってもよい。]
【発明の効果】
【0006】
本発明の金属錯体は、グリニヤール試薬とハロゲン化芳香族化合物とのクロスカップリング反応用触媒として有用である。特に本発明によれば、クロスカップリング反応中に脱プロトン化する置換基とハロゲン原子がオルト位に置換したハロゲン化アリールとグリニヤール試薬とのクロスカップリング反応を良好に進行させることができ、また、分子内に2つのハロゲンを有するジハロゲン化アリールのクロスカップリングにおいて片方のハロゲンを位置選択的にグリニヤール試薬と反応させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[ホスフィン化合物]
本発明は、下記一般式(I)で表されるホスフィン化合物に関する。
【化6】

【0008】
本発明のホスフィン化合物は、金属と配位結合し得るホスフィノ基と、基質を捕捉し得るフェノール性水酸基とを有し、後述する本発明の金属錯体の配位子として有用である。
【0009】
以下に、一般式(I)について説明する。
一般式(I)中、R1およびR2は、各々独立に、アルキル基またはアリール基である。アルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基、シクロアルキル基を挙げることができ、触媒活性の点では分岐アルキル基およびシクロアルキル基が好ましい。好ましいアルキル基としては、シクロヘキシル基、ターシャリーブチル基を挙げることができ、シクロヘキシル基が特に好ましい、アリール基としては、置換または無置換の5〜6員のアリール基、具体的には、フェニル基、メトキシフェニル基を挙げることができ、触媒活性の点ではフェニル基が好ましい。R1およびR2は、同一であっても異なってもよいが合成の容易性の点等からは同一であることが好ましい。また、本発明のホスフィン化合物を後述するように分子内に2つのハロゲンを有するジハロゲン化アリールのクロスカップリング用触媒の配位子として使用する場合、片方のハロゲンをグリニヤール試薬と位置選択的に反応させる選択性の点では、R1およびR2はいずれもシクロヘキシル基であることが好ましい。
【0010】
一般式(I)中、nは1〜3の範囲の整数であり、好ましくは1である。mは1または2であり、好ましくは1である。
【0011】
一般式(I)中、nが2または3の場合に繰り返し単位に含まれるフェニレン基同士の置換位置は特に限定されるものではなく、また末端フェニル基に置換する水酸基の置換位置も特に限定されるものではない。
【0012】
本発明の化合物の具体例としては、後述する実施例に示す各種化合物を挙げることができる。但し、本発明の化合物は実施例に示す化合物に限定されるものではない。
【0013】
本発明の化合物は、例えば、2つのハロゲン原子をオルト位に有するジハロゲン化フェニルを出発原料として、反応性置換基(例えばジシクロヘキシルホスフィニル基)を導入したハロゲン化ベンゼン(例えばブロモベンゼン)から、ヒドロキシフェニルボロン酸を用いる鈴木−宮浦カップリングとトリフラート化を繰り返してアレーン鎖を伸長した後、最終的に還元を行う方法によって合成することができる。出発原料および反応に使用する触媒は公知の方法で合成可能であり、また市販品として入手可能なものもある。
以下に上記合成方法のスキームを示す。また合成条件の詳細は、後述する実施例を参照することができる。なお、下記スキームでは、リン置換基を有するベンゼン環に順次ベンゼン環を結合させアレーン鎖を伸長する方法を示すが、水酸基を有するベンゼン環に順次ベンゼン環を結合させアレーン鎖を伸長することもできる。その詳細についても後述する実施例を参照することができる。
【化7】

[上記において、A1、A2は各々独立にヨウ素原子、臭素原子等のハロゲン原子であり、Tfはトリフルオロメタンスルホニル基であり、R1、R2、n、mは一般式(I)における定義と同義である。]
【0014】
合成反応後、適宜精製等を行い目的のホスフィン化合物を得ることができる。目的の化合物が得られたことは、元素分析、NMR等の公知の同定方法で確認することができる。また本発明のホスフィン化合物は、例えばテトラフルオロホウ酸塩等の塩として単離および精製した後、そのまま触媒反応に使用することも可能である。
【0015】
[金属錯体]
本発明の金属錯体は、本発明のホスフィン化合物を配位子として含む。本発明の金属錯体は、金属として、例えば、鉄族元素(鉄、コバルト、ニッケル)、白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金)を含むことができ、触媒活性の点ではパラジウムを含むことが好ましい。また金属錯体中、配位子である本発明のホスフィン化合物と金属は1対1で配位結合し得る。
【0016】
本発明の金属錯体は、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)等の適当な溶媒中、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム、酢酸パラジウム等の金属錯体と本発明のホスフィン化合物を混合することによって調製することができる。なお金属錯体と混合する本発明のホスフィン化合物は、前述のようにトリフルオロホウ酸塩等の塩の状態であってもよい。調製した本発明の金属錯体は、そのまま反応に使用することもでき、または溶媒を留去し、再結晶等を行って金属錯体を得てもよい。なお、塩の状態で反応に使用する場合は塩を中和するための塩基が必要となる。グリニヤール試薬とのカップリング反応では、過剰に存在するグリニヤール試薬の一部(例えばトリフルオロホウ酸と等モルのグリニヤール試薬)が塩基として作用し、これにより反応系中で錯体を形成することができる。
【0017】
[カップリング反応用触媒]
本発明のカップリング反応用触媒は、本発明の金属錯体からなる。本発明のカップリング用触媒は、各種カップリング反応に使用することができ、下記一般式(II)で表される芳香族化合物とグリニヤール試薬とのクロスカップリング反応に使用することが好ましい。
【化8】

【0018】
一般式(II)中、R3は置換または無置換の芳香族炭化水素基であり、好ましくは置換基を有するフェニル基、インドリル基である。
Yはハロゲン原子またはOTf(Tfはトリフルオロメタンスルホニル基である)であり、好ましくは臭素原子、ヨウ素原子、塩素原子およびOTfである。
【0019】
一般式(II)で表される芳香族化合物は、好ましくは下記一般式(a)〜(e)で表される化合物である。
【化9】

【0020】
上記においてRaおよびRbは、各々独立にアルキル基またはアリール基であり、Y11、Y12、Y13、Y14およびY15(以下、これらをまとめてY1とも呼ぶ)、各々独立にハロゲン原子であり、Z11、Z12、Z13、Z14およびZ15(以下、これらをまとめてZ1とも呼ぶ)は、各々独立に置換基であり、p1、p2、p3、p4およびp5(以下、これらをまとめてpとも呼ぶ)は、各々独立に1または2であり、q1、q2、q3、q4およびq5(以下、これらをまとめてqとも呼ぶ)は、各々独立に0以上(5−p)以下の整数である。pが2の場合に2つのY1は同一でも異なってもよく、qが2以上の整数である場合に複数存在するZ1はそれぞれ同一でも異なってもよい。
【0021】
aおよびRbで表されるアルキル基は、直鎖または分岐の置換基を有し得る炭素数1〜12のアルキル基であることができ、具体的にはメチル基等であることができる。
【0022】
aおよびRbで表されるアリール基は、置換基を有し得る6員のアリール基であることができ、具体的にはフェニル基、パラトリル基等であることができる。
【0023】
上記化合物(a)はOH基に含まれる水素原子が、上記化合物(b)〜(e)は窒素原子と結合した水素原子が、それぞれカップリング反応中に脱プロトン化し得る。このようにカップリング反応中に脱プロトン化する置換基を有するハロゲン化アリールは、一般にクロスカップリング反応が遅いことが知られている。これに対し、本発明のカップリング反応用触媒によれば、カップリング反応中に脱プロトン化する置換基を有するハロゲン化アリールとグリニヤール試薬とのクロスカップリング反応を良好に進行させることができる。置換基の置換位置は、Y1で表されるハロゲン原子のオルト位、メタ位、パラ位のいずれでもよいが、特に上記置換基がオルト位に置換している場合に本発明のカップリング用触媒の適用が有効である。
【0024】
また上記においてpが2であるジハロゲン化アリールにおける2つのハロゲン原子の置換位置は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれでもよい。特に本発明のカップリング用触媒は、上記のOH基等のカップリング反応中に脱プロトン化する置換基のオルト位に位置するハロゲン原子を位置選択的にグリニヤール試薬と反応させることができるという利点がある。この位置選択性は、従来の触媒では達成困難である。
【0025】
1で表されるハロゲン原子は、例えば臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子であることができ、臭素原子であることが好ましい。qは1または2である。
【0026】
1で表される置換基としては、メチル基等を挙げることができる。qは0以上(5−p)以下の整数であり0であることが好ましい。
【0027】
グリニヤール試薬としては、カップリング反応において一般に使用されるグリニヤール試薬を用いることができ、下記一般式(III)で表される化合物を使用することが好ましい。
【化10】

【0028】
一般式(III)中、R4は、炭化水素基であり、芳香族炭化水素基であることが好ましく、フェニル基であることが更に好ましい。Xはハロゲン原子であり、臭素原子またはヨウ素原子であることが好ましい。
【0029】
本発明のカップリング反応用触媒を使用するカップリング反応は、グリニヤール試薬を使用するカップリング反応における一般的な反応条件下で行うことができる。その詳細は、本発明のビアリール構造を有する化合物の製造方法について後述する通りである。
また、本発明のカップリング反応用触媒は、金属錯体として単離・精製した後に使用することもできるが、本発明のホスフィン化合物と先に説明した金属錯体を反応溶媒中に添加して反応系において金属錯体としてもよい。
【0030】
[ビアリール構造を有する化合物の製造方法]
本発明は、ハロゲン化芳香族化合物とグリニヤール試薬とをクロスカップリング反応させてビアリール構造を有する化合物を製造する方法に関する。本発明の製造方法では、前記反応を本発明の金属錯体存在下で行う。
前記ハロゲン化芳香族化合物、グリニヤール試薬、金属錯体の詳細は先に説明した通りである。前記クロスカップリング反応は、グリニヤール試薬を使用するクロスカップリング反応における一般的な反応条件下で行うことができる。具体的には、反応溶媒として、THF、DME等を使用することができ、反応温度は、25〜50℃程度とすることができ、反応時間は、1〜12時間程度とすることができる。
また、グリニヤール試薬とハロゲン化芳香族化合物は、質量基準で、グリニヤール試薬:ハロゲン化芳香族化合物=4:1〜2:1で反応溶媒に添加することができ、3:1の割合で添加することが最も好ましい。
ハロゲン化芳香族化合物の反応溶液中の濃度は、例えば0.1〜1M、好ましくは0.14〜0.5Mとすることができる。
金属錯体の添加量は、ハロゲン化芳香族化合物に対して、例えば0.005〜0.1当量、好ましくは0.01〜0.03当量とすることができる。本発明の金属錯体を得るための配位子と金属との混合割合は、金属原子換算で、例えば配位子:金属=1:1〜2:1とすることができ、1.2:1であることが最も好ましい。例えば、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウムは1分子中にパラジウム2原子を含むため、配位子と金属錯体のモル比が2:1である場合、金属原子換算では1:1となる。
【0031】
本発明の製造方法によって製造されるビアリール構造を有する化合物の構造は、使用するハロゲン化芳香族化合物とグリニヤール試薬の種類により定まるものである。例えば一般式(II)で表される化合物と一般式(III)で表されるグリニヤール試薬とのクロスカップリング反応により、下記一般式(IV)で表されるビアリール化合物が得られる。
【化11】

【0032】
一般式(IV)中のR3およびR4の定義およびその詳細は前述の通りである。前記化合物の具体例としては、実施例に記載の各種化合物を挙げることができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例に基づき本発明について更に詳細に説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。なお以下に記載の溶媒の混合割合は体積基準であり、その他の「%」および混合割合は、特に断りのない限り質量基準である。
【0034】
以下に化合物の合成例を示す。合成例1によれば、多種の化合物を順次合成することができる。一方、合成例2によれば、化合物13を効率的に合成することができる。
【0035】
合成例1
下記スキームにより化合物の合成を行った。
【化12】

【0036】
[化合物3の合成]
【化13】

【0037】
2-ブロモヨードベンゼン(2.67 mL, 20.8 mmol)をMurata, M.; Buchwald, S. L. Tetrahedron, 2004, 60, 7397に記載の方法によってジシクロヘキシルホスフィノ化して化合物2とし、これをフラスコに入れ、フラスコ中の空気をアルゴンに置換した。ジクロロメタン(430 mL)を入れて溶解させた後、0℃に冷却した。過酸化水素水(30%, 44 mL)を5分間かけて入れ、室温にして1時間撹拌した。水(200 mL)を入れて有機層を分離し、さらに水(200 mL)で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過・濃縮した。ヘキサン(90 mL)から再結晶し、母液をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン= 1/2→酢酸エチル/メタノール=10/1)で精製し、化合物3を得た(7.61 g, 99%)。
【0038】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.18-1.39 (10H, m), 1.63-1.75 (6H, m), 1.84-1.88 (2H, m), 2.08-2.12 (2H, m), 2.42-2.51 (2H, m), 7.34 (1H, dt, J = 1.8, 7.6 Hz), 7.47 (1H, dt, J = 0.8, 7.6 Hz), 7.59 (1H, ddd, J = 0.8, 3.4, 7.6 Hz), 8.13 (1H, ddd, J = 1.8, 7.6, 10.6 Hz) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 25.63, 26.07 (d, J = 3.3 Hz), 26.21 (d, J = 3.3 Hz), 26.39 (d, J = 13.3 Hz), 26.57 (d, J = 13.3 Hz), 36.88 (d, J = 66.2 Hz), 123.30 (d, J = 6.6 Hz), 127.21 (d, J = 8.2 Hz), 132.57, 132.66 (d, J = 81.0 Hz), 133.40 (d, J = 8.2 Hz), 137.17 (d, J = 4.9 Hz) ppm;
元素分析:理論値 C 58.54, H 7.10, 実測値 C 58.72, H 7.07 %
【0039】
[化合物9の合成]
【化14】

【0040】
化合物3(3.72 g, 10.1 mmol)および4-ヒドロキシフェニルボロン酸(2.78 g, 20.1 mmol)、フッ化カリウム(1.93 g, 33.2 mmol)、市販の配位子4(アルドリッチ製)(140 mg, 0.483 mmol;Xiaohua Huang, Kevin W. Anderson, Danilo Zim, Lei Jiang, Artis Kiapars, and Stephen L. Buchwald, J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 6653-6655参照)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム(184 mg, 0.201 mmol)をフラスコに入れ、フラスコ中の空気をアルゴンに置換した。室温でテトラヒドロフラン(20 mL)を入れ、60℃で17時間撹拌した。水を添加し、析出した固体をガラスフィルターでろ取した。これをジクロロエタン/メタノールから再結晶して二番晶まで採取し、化合物9を得た(3.23 g, 84%)。
【0041】
1H NMR (400 MHz, CDCl3/CD3OD = 10/1) δ 0.97-1.79 (22H, m), 6.81 (2H, d, J = 8.8 Hz), 6.95 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.13-7.16 (1H, m), 7.38-7.45 (2H, m), 7.86-7.94 (1H, m) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl3/CD3OD = 10/1) δ 25.47, 26.11-26.27 (not resolved), 37.76 (d, J = 66.1 Hz), 114.68, 126.99 (d, J = 9.8 Hz), 129.06 (d, J = 82.6 Hz), 129.75, 130.76 (d, J = 3.2 Hz), 131.56 (d, J = 9.9 Hz), 132.66 (d, J = 3.3 Hz), 133.32 (d, J = 6.6 Hz), 143.90 (d, J = 8.2 Hz), 156.85 ppm;
【0042】
[化合物10の合成]
【化15】

【0043】
化合物9 (276 mg, 0.723 mmol)をシールドチューブに入れ、チューブ中の空気をアルゴンに置換した。トルエン(10.8 mL)を添加し、−78℃に冷却した。トリエチルアミン(3.02 mL, 21.7 mmol)とトリクロロシラン(1.09 mL, 10.8 mmol)を添加し、0 ℃で30分間撹拌した後、110℃に昇温して24時間撹拌した。室温まで冷却した後、飽和重曹水とメタノールを添加し、セライトろ過して酢酸エチルで洗浄した。ろ液から水層を分離し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン= 1/5)で精製し、生成物を得た。これをジクロロメタン(9.95 mL)に溶解させ、これにテトラフルオロホウ酸水溶液(42 wt%, 0.73 mL)を添加し、室温で15分間撹拌した。ジクロロメタンを添加し、水層を分離し、ジクロロメタン層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。ベンゼン/ジエチルエーテル/ジクロロメタンから再結晶し、化合物10を得た(258 mg, 78%)。
【0044】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.15-1.47 (10H, m), 1.68-1.91 (10H, m), 2.62-2.72 (2H, m), 6.17 (1H, dt, J = 473.2, 7.6 Hz), 7.03 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.10 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.32 (1H, brs), 7.52 (1H, dd, J = 4.8, 7.6 Hz), 7.68 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.76 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.92 (1H, dd, J = 7.6, 12.2 Hz)ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 24.89, 25.58 (d, J = 3.3 Hz), 25.72 (d, J = 4.9 Hz), 27.00 (d, J = 3.3 Hz), 27.93, 29.73 (d, J = 39.4 Hz), 112.31 (d, J = 79.3 Hz), 116.56, 128.88 (d, J = 13.2 Hz), 129.33 (d, J = 4.9 Hz), 130.26, 132.11 (d, J = 8.3 Hz), 133.66 (d, J = 11.5 Hz), 134.46, 148.85 (d, J = 4.9 Hz), 157.76 ppm;
元素分析:理論値 C 75.37, H 8.17, 実測値 C 75.42, H 8.05 %
【0045】
[化合物11の合成]
【化16】

【0046】
化合物9(1.40 g, 3.66 mmol)をフラスコに入れ、フラスコ中の空気をアルゴンに置換した。ジクロロメタン(3.66 mL)、ピリジン(0.74 mL, 9.15 mmol)を添加し、0 ℃に冷却した。トリフルオロメタンスルホン酸無水物(1.23 mL, 7.32 mmol)をゆっくりと入れた後、室温まで昇温させ1時間撹拌した。塩酸水溶液(10%, 20mL)を入れ、酢酸エチル(40 mL)で抽出した後、有機層を水(20 mL x 2)と飽和食塩水(20 mL)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン= 1/2→4/1)で精製し、化合物11を得た(1.84 g, 98%)。
【0047】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.06-1.87 (22H, m), 7.22-7.25 (1H, m), 7.30 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.35 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.48-7.55 (2H, m), 7.81-7.86 (1H, m) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 25.61, 25.66, 26.02 (d, J = 3.3 Hz), 26.29 (d, J = 13.3 Hz), 26.42 (d, J = 13.2 Hz), 37.58 (d, J = 66.1 Hz), 118.73 (q, J = 320.5 Hz), 120.29, 127.55 (d, J = 9.9 Hz), 129.26 (d, J = 79.3 Hz), 130.64 (d, J = 3.3 Hz), 131.00, 131.57 (d, J = 8.3 Hz), 132.64 (d, J = 8.2 Hz), 142.21, 144.02 (d, J = 6.6 Hz), 148.91 ppm;
元素分析:理論値 C 58.36, H 5.88, 実測値 C 58.34, H 5.90 %
【0048】
[化合物12の合成]
【化17】

【0049】
トリフルオロメタンスルホン酸エステル11(713 mg, 1.39 mmol)および2-ヒドロキシフェニルボロン酸無水物(216 mg, 1.80 mmol)、フッ化カリウム(266 mg, 4.57 mmol)、配位子4(15.9 mg, 0.0333 mmol)、酢酸パラジウム (6.1 mg, 0.0277 mmol)をフラスコに入れ、フラスコ中の空気をアルゴンに置換した。水・テトラヒドロフラン混合溶媒(1:4, 1.39 mL)を添加し、室温で13時間撹拌した。水(10 mL)を添加し、有機物を酢酸エチル(20 mL)とジクロロメタン(20 mL x 2)で抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。ヘキサン/ジクロロメタン/メタノールから再結晶し、さらに母液を分取薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム/メタノール= 30/1)で精製し、化合物12を得た(603 mg, 95%)。
【0050】
1H NMR (400 MHz, CDCl3/CD3OD = 10/1) δ 1.09-1.84 (22H, m), 6.89 (1H, t, J = 7.6 Hz), 6.94 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.15-7.28 (3H, m), 7.20 (2H, d, J = 8.0 Hz), 7.41-7.50 (2H, m), 7.49 (2H, d, J = 8.0 Hz), 7.67 (1H, dd, J = 7.6, 10.8 Hz) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl3/CD3OD = 10/1) δ 25.52, 25.53, 25.86 (d, J = 3.3 Hz), 26.20 (d, J = 11.5 Hz), 26.25 (d, J = 11.5 Hz), 37.30 (d, J = 67.7 Hz), 116.46, 119.77, 126.94 (d, J = 9.8 Hz), 127.88 (d, J = 82.6 Hz), 128.12, 128.4, 128.70, 130.23, 130.69, 131.62 (d, J = 8.2 Hz), 131.74 (d, J = 8.2 Hz), 137.78, 139.92, 139.94, 146.17 (d, J = 6.6 Hz), 153.91 ppm;
元素分析:理論値 C 78.57, H 7.69, 実測値 C 78.55, H 7.72 %
【0051】
[化合物13の合成]
【化18】

【0052】
化合物12(306 mg, 0.668 mmol)をシールドチューブに入れ、チューブ中の空気をアルゴンに置換した。トルエン(10.0 mL)を添加し、−78 ℃に冷却した。トリエチルアミン(2.79 mL, 20.0 mmol)とトリクロロシラン(1.01 mL, 10.0 mmol)を添加し、0℃で30分間撹拌した後、110℃に昇温して24時間撹拌した。室温まで冷却した後、飽和重曹水とメタノールを添加し、セライトろ過して酢酸エチルで洗浄した。ろ液から水層を分離し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン= 1/5)で精製し、生成物を得た。これをジクロロメタン(7.92 mL)に溶解させ、これにテトラフルオロホウ酸水溶液(42 wt%, 0.56 mL)を添加し、室温で15分間撹拌した。ジクロロメタンを添加し、水層を分離し、ジクロロメタン層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。ヘキサン/ジクロロメタンから再結晶し、結晶をメタノールに溶解させて再度濃縮・乾燥し、化合物13を得た(174 mg, 49%)。
【0053】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 1.18-1.47 (10H, m), 1.70-1.89 (10H, m), 2.72-2.81 (2H, m), 6.91-6.95 (2H, m), 7.20 (1H, dt, J = 1.2, 7.6 Hz), 7.33 (2H, d, J = 8.2 Hz), 7.32-7.34 (1H, m), 7.65 (1H, dd, J = 4.6, 7.6 Hz), 7.75 (2H, d, J = 8.2 Hz), 7.74-7.78 (1H, m), 7.89 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.99 (1H, dd, J = 7.6, 12.2 Hz) ppm;
13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 26.16, 26.70, 26.85, 27.76 (d, J = 3.3 Hz), 28.63, 30.33 (d, J = 41.1 Hz), 116.97, 121.12, 128.56, 130.07 (d, J = 13.2 Hz), 130.19, 130.30, 131.12, 131.55, 133.25 (d, J = 8.2 Hz), 134.61 (d, J = 9.9 Hz), 135.75, 137.94 (d, J = 4.9 Hz), 141.41, 150.51 (d, J = 6.6 Hz), 155.51 ppm (one carbon signal (C-P) was not observed due to broadening);
元素分析:理論値 C 67.94, H 6.84, 実測値 C 67.90, H 6.93 %
【0054】
[化合物14の合成]
【化19】

【0055】
トリフルオロメタンスルホン酸エステル11 (1.00 g, 1.94 mmol)および3-ヒドロキシフェニルボロン酸無水物(303 mg, 2.53 mmol)、フッ化カリウム(373 mg, 6.41 mmol)、配位子4(22.2 mg, 0.0466 mmol)、酢酸パラジウム (8.7 mg, 0.0389 mmol)をフラスコに入れ、フラスコ中の空気をアルゴンに置換した。水・テトラヒドロフラン混合溶媒(1:4, 1.94 mL)を添加し、室温で13時間撹拌した。水(20 mL)を添加し、有機物を酢酸エチル(30 mL)とジクロロメタン(30 mL x 2)で抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。ヘキサン/ジクロロメタン/メタノールから再結晶し、さらに母液を分取薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム/メタノール= 20/1)で精製し、化合物14を得た(860 mg, 97%)。
【0056】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.04-1.19 (6H, m), 1.32-1.88 (16H, m), 6.92-6.94 (1H, m), 7.10 (1H, d, J = 8.2 Hz), 7.18-7.20 (1H, m), 7.24-7.29 (4H, m), 7.48-7.54 (2H, m), 7.60 (2H, dd, J = 3.2, 8.4 Hz), 8.04-8.10 (1H, m), 8.88 (1H, brs) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 25.58, 26.29-26.39 (not resolved), 26.45, 37.97 (d, J = 66.2 Hz), 114.43, 115.17, 117.87, 126.43, 127.38 (d, J = 9.8 Hz), 129.08, 129.20 (d, J = 80.9 Hz), 129.72, 130.84, 131.28 (d, J = 9.9 Hz), 133.67 (d, J = 6.5 Hz), 140.43, 141.09, 141.29, 144.01 (d, J = 8.2 Hz), 158.05 ppm;
元素分析:理論値 C 78.57, H 7.69, 実測値 C 78.40, H 7.69 %
【0057】
[化合物15の合成]
【化20】

【0058】
化合物14(363 mg, 0.791 mmol)をシールドチューブに入れ、チューブ中の空気をアルゴンに置換した。トルエン(11.9 mL)を入れ、−78 ℃に冷却した。トリエチルアミン(3.31 mL, 23.7 mmol)とトリクロロシラン(1.20 mL, 11.9 mmol)を添加し、0℃で30分間撹拌した後、110℃に昇温して24時間撹拌した。室温まで冷却した後、飽和重曹水とメタノールを添加し、セライトろ過して酢酸エチルで洗浄した。ろ液から水層を分離し、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン= 1/5)で精製し、生成物を得た。これをジクロロメタン(7.63 mL)に溶解させ、これにテトラフルオロホウ酸水溶液(42 wt%, 0.56 mL)を添加し、室温で15分間撹拌した。ジクロロメタンを添加し、水層を分離し、ジクロロメタン層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。ヘキサン/ジクロロメタンから再結晶し、化合物15を得た(253 mg, 52%)。
【0059】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 1.17-1.46 (10H, m), 1.70-1.85 (10H, m), 2.73-2.81 (2H, m), 5.48 (2H, s), 6.82 (1H, dd, J = 2.0, 8.0 Hz), 7.11 (1H, t, J = 2.0 Hz), 7.16 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.29 (1H, t, J = 8.0 Hz), 7.38 (2H, d, J = 8.0 Hz), 7.65 (1H, dd, J = 4.6, 7.2 Hz), 7.75-7.80 (1H, m), 7.78 (2H, d, J = 8.0 Hz), 7.89 (1H, dd, J = 7.2, 8.4 Hz), 7.99 (1H, dd, J = 8.4, 11.4 Hz) ppm;
13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 26.19, 26.77 (d, J = 3.3 Hz), 26.92, 27.77, 28.63, 30.39 (d, J = 42.8 Hz), 54.79, 114.83, 115.94, 119.29, 128.64, 130.11 (d, J = 11.5 Hz), 131.09, 131.21, 133.29 (d, J = 8.2 Hz), 134.54 (d, J = 8.3 Hz), 135.71, 138.69, 142.58, 143.37, 150.33 (d, J = 8.3 Hz), 159.15 ppm (one carbon signal (C-P) was not observed due to broadening);
元素分析:理論値 C 60.51, H 6.22, 実測値 C 60.55, H 6.06 %
【0060】
[化合物16の合成]
【化21】

【0061】
化合物14(191.1 mg, 0.417 mmol)をフラスコに入れ、フラスコ中の空気をアルゴンに置換した。ジクロロメタン(0.42 mL)、ピリジン(0.42 mL)を入れ、0℃に冷却した。トリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.14 mL, 0.834 mmol)をゆっくりと入れた後、室温まで昇温させ1時間撹拌した。塩酸水溶液(10%, 15mL)を入れ、酢酸エチル(20 mL)で抽出した後、有機層を水(5 mL x 2)と飽和食塩水(5 mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。分取薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、アセトン/ヘキサン= 1/1、ジクロロメタン/メタノール= 40/1)で精製し、化合物16を得た(185 mg, 75%)。
【0062】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.07-1.88 (22H, m), 7.24-7.30 (2H, m), 7.36 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.49-7.58 (4H, m), 7.63 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.70 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.96-8.01 (1H, m) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 25.56, 25.91 (d, J = 3.3 Hz), 26.14 (d, J = 3.3 Hz), 26.37 (d, J = 13.1 Hz), 26.44 (d, J = 13.1 Hz), 37.8 (d, J = 66.1 Hz), 118.70 (q, J = 322.1 Hz), 119.86, 119.93, 126.20, 126.97, 127.27 (d, J = 9.9 Hz), 129.60 (d, J = 79.3 Hz), 129.72, 130.51, 130.54, 131.31 (d, J = 8.2 Hz), 133.19 (d, J = 6.6 Hz), 138.18, 142.09 (d, J = 3.3 Hz), 143.23, 144.19 (d, J = 8.3 Hz), 149.96 ppm;
【0063】
[化合物17の合成]
【化22】

【0064】
トリフルオロメタンスルホン酸エステル16 (1.10 g, 1.86 mmol)および3-ヒドロキシフェニルボロン酸無水物(289 mg, 2.41 mmol)、フッ化カリウム(356 mg, 6.13 mmol)、配位子4 (21.2 mg, 0.0445 mmol)、酢酸パラジウム (8.3 mg, 0.0371 mmol)をフラスコに添加し、フラスコ中の空気をアルゴンに置換した。水・テトラヒドロフラン混合溶媒(1:4, 1.86 mL)を添加し、室温で17時間撹拌した。水(20 mL)を入れ、有機物を酢酸エチル(20 mL x 3)で抽出し、有機層を飽和食塩水(20 mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。分取薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/アセトン= 1/1)で精製し、化合物17を得た(695 mg, 70%)。
【0065】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.00-1.17 (6H, m), 1.30-1.70 (14H, m), 1.87-1.89 (2H, m), 6.91 (1H, dd, J = 2.4, 8.4 Hz), 7.08 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.23-7.28 (4H, m), 7.30 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.46-7.58 (4H, m), 7.66 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.77 (1H, s), 8.04-8.09 (1H, m), 8.82 (1H, brs) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 25.55, 26.26-26.44 (not resolved), 37.97 (d, J = 66.1 Hz), 114.68, 115.01, 118.14, 125.77, 125.95, 126.51, 126.56, 127.47 (d, J = 9.8 Hz), 129.08, 129.12 (d, J = 81.0 Hz), 129.26, 129.65, 130.84, 131.32 (d, J = 9.9 Hz), 133.64 (d, J = 6.6 Hz), 140.51, 140.71, 140.91, 142.18, 142.27, 143.86 (d, J = 8.2 Hz), 157.99 ppm;
【0066】
[化合物18の合成]
【化23】

【0067】
化合物17(135.3 mg, 0.253 mmol)をシールドチューブに入れ、チューブ中の空気をアルゴンに置換した。トルエン(3.8 mL)を入れ、−78℃に冷却した。トリエチルアミン(1.06 mL, 7.59 mmol)とトリクロロシラン(0.38 mL, 3.80 mmol)を添加し、0℃で30分間撹拌した後、110℃に昇温して24時間撹拌した。室温まで冷却した後、飽和重曹水とメタノールを添加し、セライトろ過して酢酸エチルで洗浄した。ろ液から水層を分離し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン= 1/2)で精製し、生成物を得た。これをジクロロメタン(3.42 mL)に溶解させ、これにテトラフルオロホウ酸水溶液(42 wt%, 0.25 mL)を添加し、室温で15分間撹拌した。ジクロロメタンを添加し、水層を分離し、ジクロロメタン層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。リサイクリング高速液体クロマトグラフィー(クロロホルム)で精製し、化合物18を得た(61.9 mg, 56%)。
【0068】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 1.17-1.42 (10H, m), 1.70-1.83 (10H, m), 2.60-2.88 (2H, m), 6.80 (1H, dd, J = 2.4, 7.6 Hz), 7.09 (1H, s), 7.14 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.27 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.41 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.52-8.01 (10H, m) ppm;
13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 26.28, 26.85, 26.98, 27.87, 28.78, 30.54, 114.97, 115.53, 119.41, 126.73, 127.06, 127.65, 128.79, 130.04, 130.55, 130.98, 131.40, 133.15, 134.50 (d, J = 8.3 Hz), 135.60, 138.92, 141.79, 143.20, 143.42, 143.69, 150.36, 159.03 ppm (one carbon signal (C-P) was not observed due to broadening);
元素分析:理論値 C 71.29, H 6.65, 実測値 C 71.48, H 6.85 %
【0069】
[化合物19の合成]
【化24】

【0070】
化合物17(417 mg, 0.780 mmol)をフラスコに入れ、フラスコ中の空気をアルゴンに置換した。ジクロロメタン(0.78 mL)、ピリジン(0.16 mL, 1.95 mmol)を添加し、0℃に冷却した。トリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.26 mL, 1.56 mmol)をゆっくりと入れた後、室温まで昇温させ1時間撹拌した。塩酸水溶液(10%, 10mL)を添加し、酢酸エチル(30 mL)で抽出した後、有機層を水(10 mL x 2)と飽和食塩水(10 mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アセトン/ヘキサン= 1/1→2/1)で精製し、化合物19を得た(346 mg, 67%)。
【0071】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.04-1.88 (22H, m), 7.27-7.31 (2H, m), 7.36 (2H, d, J = 8.2 Hz), 7.51-7.61 (4H, m), 7.68-7.72 (2H, m), 7.71 (2H, d, J = 8.0 Hz), 7.84 (1H, s), 8.04-8.09 (1H, m) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 25.61, 26.12 (d, J = 3.3 Hz), 26.26 (d, J = 3.3 Hz), 26.40-26.52 (not resolved), 37.98 (d, J = 64.5 Hz), 118.73 (q, J = 320.5 Hz), 120.00, 120.11, 126.00, 126.36, 126.40, 127.10, 127.19, 127.28 (d, J = 9.9 Hz), 129.54, 129.59, 130.53, 130.58, 131.22 (d, J = 9.9 Hz), 133.62 (d, J = 6.6 Hz), 139.74, 140.09, 141.42, 143.82, 143.96 (d, J = 8.3 Hz), 149.98 ppm (two signals are overlapped);
【0072】
[化合物20の合成]
【化25】

【0073】
トリフルオロメタンスルホン酸エステル19(329 mg, 0.494 mmol)および2-ヒドロキシフェニルボロン酸無水物(77.0 mg, 0.642 mmol)、フッ化カリウム(94.7 mg, 1.63 mmol)、配位子4 (5.7 mg, 0.0119 mmol)、酢酸パラジウム (2.2 mg, 0.0099 mmol)をフラスコに添加し、フラスコ中の空気をアルゴンに置換した。水・テトラヒドロフラン混合溶媒(1:4, 0.49 mL)を添加し、室温で16時間撹拌した。10%塩酸水(10 mL)を入れ、有機物をジクロロメタン(10 mL x 3)で抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。分取薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/アセトン= 1/2)で精製し、化合物20を得た(244 mg, 81%)。
【0074】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.98-1.84 (22H, m), 6.98 (1H, dt, J = 1.2, 7.2 Hz), 7.10 (1H, dd, J = 1.2, 8.4 Hz), 7.23-7.31 (2H, m), 7.30 (2H, d, J = 8.0 Hz), 7.34 (1H, dd, J = 1.4, 7.4 Hz), 7.48-7.65 (8H, m), 7.70 (2H, d, J = 8.0 Hz), 7.84 (1H, s), 7.87 (1H, s), 8.07-8.12 (1H, m) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 25.55, 26.21 (d, J = 3.3 Hz), 26.29 (d, J = 3.2 Hz), 26.35, 26.49, 38.00 (d, J = 64.5 Hz), 116.28, 120.14, 126.08, 126.22, 126.54, 126.68, 127.45 (d, J = 9.9 Hz), 128.35 (d, J = 3.3 Hz), 129.01, 129.21, 129.36, 130.31, 130.81, 131.20 (d, J = 9.9 Hz), 133.87 (d, J = 5.0 Hz), 138.62, 140.69, 140.79, 140.97, 141.52, 141.98, 143.66 (d, J = 9.9 Hz), 153.61 (five signals are overlapped) ppm;
【0075】
[化合物21の合成]
【化26】

【0076】
化合物20(184.3 mg, 0.302 mmol)をシールドチューブに入れ、チューブ中の空気をアルゴンに置換した。トルエン(4.5 mL)を入れ、−78℃に冷却した。トリエチルアミン(1.26 mL, 9.05 mmol)とトリクロロシラン(0.46 mL, 4.53 mmol)を入れ、0℃で30分間撹拌した後、110℃に昇温して24時間撹拌した。室温まで冷却した後、飽和重曹水とメタノールを添加し、セライトろ過して酢酸エチルで洗浄した。ろ液から水層を分離し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン= 1/2)で精製し、生成物を得た。これをジクロロメタン(4.01 mL)に溶解させ、これにテトラフルオロホウ酸水溶液(42 wt%, 0.29 mL)を入れ、室温で15分間撹拌した。ジクロロメタンを添加し、水層を分離し、ジクロロメタン層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。リサイクリング高速液体クロマトグラフィー(クロロホルム)で精製し、化合物21を得た(51.9 mg, 25%)。
【0077】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.21-1.95 (20H, m), 2.81 (2H, m), 5.66 (1H, brs), 5.69-6.90 (1H, m), 7..00-7.06 (2H, m), 7.23-7.34 (6H, m), 7.49-8.04 (16H, m) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 24.91, 25.68 (d, J = 6.6 Hz), 25.81 (d, J = 6.6 Hz), 27.06, 27.95, 29.90 (d, J = 41.3 Hz), 111.78, 112.56, 116.18, 120.65, 126.33, 126.40, 126.81, 127.88, 128.11, 128.27, 129.19, 129.39, 129.49, 129.56, 129.67, 130.21, 131.95 (d, J = 8.2 Hz), 134.15 (d, J = 9.9 Hz), 134.46, 136.94 (d, J = 3.3 Hz), 138.06, 140.28, 141.4,0 141.58, 142.24, 148.17 (d, J = 6.6 Hz), 152.82 ppm (one carbon signal (C-P) was not observed due to broadening, one signal is overlapped);
【0078】
[化合物22の合成]
【化27】

【0079】
化合物3(2.95 g, 7.98 mmol)および3-ヒドロキシフェニルボロン酸無水物(1.91 g, 16.0 mmol)、フッ化カリウム(1.53 g, 26.3 mmol)、配位子4(111.1 mg, 0.383 mmol)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム (146 mg, 0.160 mmol)をフラスコに入れ、フラスコ中の空気をアルゴンに置換した。室温でテトラヒドロフラン(16 mL)を添加し、60℃で14時間撹拌した。水(30 mL)を添加し、析出した固体をガラスフィルターでろ取した。これをジクロロエタン/メタノールから再結晶し、化合物22を得た(1.94 g, 63%)。
【0080】
1H NMR (400 MHz, CDCl3/CD3OD = 10/1) δ 1.00-1.76 (22H, m), 6.58 (1H, d, J = 7.2 Hz), 6.61 (1H, t, J = 2.0 Hz), 6.84 (1H, ddd, J = 0.8, 2.4, 8.4 Hz), 7.16 (1H, t, J = 8.0 Hz), 7.16 (1H, dd, J = 1.4, 8.4 Hz), 7.38-7.45 (2H, m), 7.87-7.93 (1H, m) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl3/CD3OD = 10/1) δ 25.47, 25.99-26.24 (not resolved), 37.67 (d, J = 64.5 Hz), 114.91, 116.19, 119.75, 127.10 (d, J = 9.9 Hz), 128.54 (d, J = 80.9 Hz), 128.83, 130.71, 130.87 (d, J = 9.9 Hz), 133.22 (d, J = 5.0 Hz), 142.72, 143.87 (d, J = 9.8 Hz), 156.51 ppm;
【0081】
[化合物23の合成]
【化28】

【0082】
化合物22(275 mg, 0.720 mmol)をシールドチューブに入れ、チューブ中の空気をアルゴンに置換した。トルエン(10.8 mL)を添加し、−78℃に冷却した。トリエチルアミン(3.01 mL, 21.6 mmol)とトリクロロシラン(1.09 mL, 10.8 mmol)を添加し、0℃で30分間撹拌した後、110℃に昇温して24時間撹拌した。室温まで冷却した後、飽和重曹水とメタノールを添加し、セライトろ過して酢酸エチルで洗浄した。ろ液から水層を分離し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン= 1/5)で精製し、生成物を得た。これをジクロロメタン(9.62 mL)に溶解させ、これにテトラフルオロホウ酸水溶液(42 wt%, 0.70 mL)を添加し、室温で15分間撹拌した。ジクロロメタンを添加し、水層を分離し、ジクロロメタン層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。ベンゼン/アセトンから再結晶し、化合物23を得た(262 mg, 68%)。
【0083】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 1.16-1.47 (10H, m), 1.70-1.88 (10H, m), 2.70-2.79 (2H, m), 6.69 (1H, t, J = 2.4 Hz), 6.73 (1H, d, J = 8.0 Hz), 6.94 (1H, dd, J = 2.4, 8.0 Hz), 7.32 (6H, s), 7.36 (1H, t, J = 8.0 Hz), 7.59 (1H, dd, J = 4.6, 7.6 Hz), 7.71-7.76 (1H, m), 7.85 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.96 (1H, dd, J = 7.6, 11.6 Hz) ppm;
13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 26.18, 26.75, 26.89, 27.80, 28.70, 30.38 (d, J = 41.2 Hz), 117.17, 117.43, 121.55, 129.31, 130.05 (d, J = 11.5 Hz), 131.50, 132.88 (d, J = 8.3 Hz), 134.46 (d, J = 9.9 Hz), 135.67, 141.09 (d, J = 4.9 Hz), 150.49 (d, J = 9.8 Hz), 159.21 ppm (one carbon signal (C-P) was not observed due to broadening);
元素分析:理論値 C 67.68, H 7.19, 実測値 C 67.41, H 7.00 %
【0084】
[化合物24の合成]
【化29】

【0085】
水素化ナトリウム(60%, 133 mg, 3.33 mmol)をフラスコに入れ、フラスコ中の空気をアルゴンに置換する。テトラヒドロフラン(27.7 mL)を入れて懸濁液とし、そこに化合物22 (1.06 g, 2.77 mmol)を添加し、室温で30分間撹拌した。0℃に冷却してN-フェニルビストリフルオロメタンスルホニルイミド(1.19 g, 3.33 mmol)を添加し、室温に昇温して1時間撹拌した。 酢酸エチル(100 mL)を添加し、有機層を水(25 mL)と飽和食塩水(25 mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン= 1/1)で精製し、化合物24を得た(1.40 g, 98%)。
【0086】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.10-1.88 (22H, m), 7.17 (1H, t, J = 1.8 Hz), 7.21-7.24 (1H, m), 7.28-7.34 (2H, m), 7.48 (1H, t, J = 7.8 Hz), 7.50-7.53 (2H, m), 7.83-7.88 (1H, m) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 25.63, 25.71 (d, J = 3.3 Hz), 26.06 (d, J = 3.3 Hz), 26.24 (d, J = 13.2 Hz), 26.32 (d, J = 13.3 Hz), 37.49 (d, J = 66.1 Hz), 118.69 (q, J = 320.5 Hz), 120.19, 121.97, 127.74 (d, J = 11.5 Hz), 129.18, 129.32 (d, J = 79.2 Hz), 129.65, 130.69, 131.55 (d, J = 8.2 Hz), 132.84 (d, J = 8.3 Hz), 143.46 (d, J = 6.6 Hz), 144.42, 148.49 ppm;
元素分析:理論値 C 58.36, H 5.88, 実測値 C 58.38, H 5.95 %
【0087】
[化合物25の合成]
【化30】

【0088】
トリフルオロメタンスルホン酸エステル24 (915 mg, 1.78 mmol)および2-ヒドロキシフェニルボロン酸無水物(277 mg, 2.31 mmol)、フッ化カリウム(341 mg, 5.87 mmol)、配位子4(20.4 mg, 0.0427 mmol)、酢酸パラジウム (8.0 mg, 0.0357 mmol)をフラスコに入れ、フラスコ中の空気をアルゴンに置換した。水・テトラヒドロフラン混合溶媒(1:4, 1.78 mL)を室温で入れ、50℃で15時間撹拌した。水(30 mL)を添加し、析出した固体をガラスフィルターでろ取した。これをヘキサン/ジクロロメタンから再結晶し、さらに母液を分取薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム/メタノール= 20/1)で精製し、化合物25を得た(750 mg, 92%)。
【0089】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.77-2.14 (22H, m), 6.89 (1H, t, J = 8.0 Hz), 7.00 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.19-7.29 (3H, m), 7.36-7.48 (5H, m), 7.53-7.57 (2H, m), 9.09 (1H, brs) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 24.86, 25.75, 26.26, 26.39, 26.52, 26.63, 117.30, 119.12, 126.59 (d, J = 9.8 Hz), 126.76, 127.24 (d, J = 79.3 Hz), 127.76, 128.29, 128.50, 128.80, 129.84, 130.32 (d, J = 11.6 Hz), 130.79, 131.87 (d, J = 8.2 Hz), 132.40, 135.82, 139.35 (d, J = 3.3 Hz), 149.10 (d, J = 3.3 Hz), 155.24 ppm;
【0090】
[化合物26の合成]
【化31】

【0091】
化合物25(288 mg, 0.627 mmol)をシールドチューブに入れ、チューブ中の空気をアルゴンに置換した。トルエン(9.4 mL)を添加し、−78℃に冷却した。トリエチルアミン(2.62 mL, 18.8 mmol)とトリクロロシラン(0.95 mL, 9.41 mmol)を添加し、0℃で30分間撹拌した後、110℃に昇温して24時間撹拌した。室温まで冷却した後、飽和重曹水とメタノールを添加し、セライトろ過して酢酸エチルで洗浄した。ろ液から水層を分離し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン= 1/5)で精製し、生成物を得た。これをジクロロメタン(7.6 mL)に溶解させ、これにテトラフルオロホウ酸水溶液(42 wt%, 0.55 mL)を添加し、室温で15分間撹拌した。ジクロロメタンを添加し、水層を分離し、ジクロロメタン層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。リサイクリング高速液体クロマトグラフィー(クロロホルム)で精製し、化合物26を得た(188 mg, 56%)。
【0092】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 1.18-1.45 (10H, m), 1.69-1.82 (10H, m), 2.72-2.81 (2H, m), 6.93 (1H, t, J = 8.0 Hz), 6.94 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.20 (1H, dt, J = 1.6, 8.0 Hz), 7.27 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.30 (1H, dt, J = 1.6, 8.0 Hz), 7.52 (1H, s), 7.60 (1H, t, J = 8.0 Hz), 7.64 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.67 (1H, dd, J = 4.4, 8.0 Hz), 7.75 (1H, t, J = 8.0 Hz), 7.88 (1H, t, J = 8.0 Hz), 7.99 (1H, dd, J = 8.0, 11.4 Hz) ppm;
13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 26.16, 26.75, 26.89, 27.82, 28.76, 30.37 (d, J = 39.7 Hz), 117.04, 121.25, 128.66, 128.94, 130.06 (d, J = 11.8 Hz), 130.30, 130.88, 131.62, 131.81, 133.21 (d, J = 8.2 Hz), 134.61 (d, J = 9.9 Hz), 135.78, 139.29, 141.16, 150.54 (d, J = 6.6 Hz), 155.48 ppm (one carbon signal (C-P) was not observed due to broadening, one signal is overlapped);
元素分析:理論値 C 67.94, H 6.84, 実測値 C 67.54, H 6.97 %
【0093】
[化合物27の合成]
【化32】

【0094】
トリフルオロメタンスルホン酸エステル24(772 mg, 1.50 mmol)および3-ヒドロキシフェニルボロン酸無水物(234 mg, 1.95 mmol)、フッ化カリウム(288 mg, 4.95 mmol)、市販の配位子5(アルドリッチ製)(14.8 mg, 0.0360 mmol)、酢酸パラジウム (6.7 mg, 0.0300 mmol)をフラスコに入れ、フラスコ中の空気をアルゴンに置換した。水・テトラヒドロフラン混合溶媒(1:4, 1.50 mL)を室温で添加し、50℃で15時間撹拌した。水(25 mL)を添加し、析出した固体をガラスフィルターでろ取した。これをジクロロメタン/メタノールから再結晶して二番晶まで採取し、さらに母液を分取薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム/メタノール= 10/1)で精製し、化合物27を得た(555 mg, 81%)。
【0095】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.86-1.83 (22H, m), 6.93 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.10 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.15 (1H, d, J = 7.2 Hz), 7.42-7.49 (4H, m), 7.66 (1H, d, J = 7.6 Hz) 8.10-8.15 (1H, m) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 25.61, 26.12-26.52 (not resolved), 37.95 (d, J = 66.1 Hz), 114.20, 115.34, 117.91, 126.54, 127.24, 127.44 (d, J = 8.3 Hz), 127.81, 128.22, 129.19 (d, J = 82.5 Hz), 129.77, 130.90 (d, J = 3.3 Hz), 131.12 (d, J = 9.8 Hz), 134.02 (d, J = 5.0 Hz), 141.20, 141.29, 142.04, 143.88 (d, J = 8.2 Hz), 158.10 ppm;
【0096】
[化合物28の合成]
【化33】

【0097】
化合物27(304 mg, 0.663 mmol)をシールドチューブに入れ、チューブ中の空気をアルゴンに置換した。トルエン(9.94 mL)を添加し、−78℃に冷却した。トリエチルアミン(2.44 mL, 19.9 mmol)とトリクロロシラン(1.00 mL, 9.94 mmol)を添加し、0℃で30分間撹拌した後、110℃に昇温して24時間撹拌した。室温まで冷却した後、飽和重曹水とメタノールを添加し、セライトろ過して酢酸エチルで洗浄した。ろ液から水層を分離し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン= 1/5)で精製し、生成物を得た。これをジクロロメタン(8.5 mL)に溶解させ、これにテトラフルオロホウ酸水溶液(42 wt%, 0.62 mL)を添加し、室温で15分間撹拌した。ジクロロメタンを添加し、水層を分離し、ジクロロメタン層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。リサイクリング高速液体クロマトグラフィー(クロロホルム)で精製し、化合物28を得た(185 mg, 53%)。
【0098】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 1.17-1.43 (10H, m), 1.69-1.82 (10H, m), 2.69-2.78 (2H, m), 6.81 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.06 (1H, s), 7.11 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.27 (1H, t, J = 8.0 Hz), 7.29 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.51 (1H, s), 7.62 (1H, t, J = 8.0 Hz), 7.67 (1H, dd, J = 4.4, 7.6 Hz), 7.76 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.75-7.77 (1H, m), 7.87-7.91 (1H, m), 8.00 (1H, dd, J = 8.4, 11.2 Hz) ppm;
13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 26.19, 26.77 (d, J = 3.3 Hz), 26.90 (d, J = 3.3 Hz), 27.91, 28.71, 30.57 (d, J = 43.0 Hz), 114.85, 115.99, 119.24, 128.67, 129.15, 129.46, 130.18 (d, J = 11.6 Hz), 130.76, 131.17, 133.19 (d, J = 8.2 Hz), 134.69 (d, J = 9.9 Hz), 135.71, 140.47, 142.58, 143.30, 150.38 (d, J = 8.2 Hz), 159.19 ppm (one carbon signal (C-P) was not observed due to broadening);
元素分析:理論値 C 67.94, H 6.84, 実測値 C 67.62, H 6.94 %
【0099】
合成例2
下記スキームにより化合物13の合成を行った。
【化34】

【0100】
[化合物100の合成]
【化35】

【0101】
アルゴン下、2-ブロモフェノール(867 mg, 5.01 mmol)をTHF (10 mL)に溶かし、−78 ℃に冷却した。このTHF溶液に、t-BuLiのペンタン溶液 (3.32 M, 4.50 mL, 14.9 mmol)を6分かけて滴下した。その後、同温度で30分撹拌した。この溶液に、無水ZnCl2 (692 mg, 5.08 mmol)のTHF(10 mL)溶液を3分かけて加え、4分間−78 ℃で撹拌した後、室温で1時間撹拌した。この溶液に、4-ブロモ-1-ヨードベンゼン(1.42 g, 5.02 mmol)とPd(PPh3)4 (112 mg, 0.0969 mmol)とをTHF(5 mL)に溶かした溶液を1.5分かけて加え、その後、24時間室温で撹拌した。この溶液に、10%塩酸(30 mL)を加え、酢酸エチル(50 mL, 10 mL) で抽出した。抽出物を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過し、減圧濃縮した。得られた混合物をカラムクロマトグラフィーで精製した(silica gel 〜100 g, AcOEt/hexane 1/20-1/10)。得られた固体を50℃で真空乾燥し(12時間)、化合物100(4'-bromobiphenyl-2-ol)960 mg(収率77%)を得た。
【0102】
Mp 57.9-58.6 ℃;
1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ 5.01 (1H, brs), 6.95 (1H, d, J = 7.6 Hz), 6.99 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.22 (1H, d, J = 7.2 Hz), 7.26 (1H, dd, J = 7,6, 7.2 Hz), 7.36 (2H, d, J = 8.0 Hz), 7.60 (2H, d, J = 8.0 Hz);
13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ 116.05, 121.08, 121.97, 127.00, 129.41, 130.18, 130.79, 132.20, 136.09, 152.21;
IR (ATR) 3519, 1585, 1479, 1448 cm-1;
HRMS (ESI) m/z calcd for C12H8BrO ([M-H]-) 246.9753; found: 246.9757;
Anal. calcd. for C12H9BrO: C, 57.86; H, 3.64, found: C, 57.77; H, 3.75 %.
【0103】
[化合物101の合成]
【化36】

【0104】
アルゴン下、化合物100(1.08 g, 4.34 mmol) をTHF (11 mL)に溶かし、−78 ℃に冷却した。このTHF溶液に、n-BuLiのヘキサン溶液 (1.59 M, 5.60 mL, 8.90 mmol)を3.5分かけて滴下した。その後、同温度で30分撹拌した。この溶液に、無水ZnCl2 (601 mg, 4.41 mmol)のTHF(5 mL)溶液を2分かけて加え、1分間−78 ℃で撹拌した後、室温で1時間撹拌した。この溶液に、2-ブロモ-1-ヨードベンゼン(0.61 mL, 4.75 mmol)とPd(PPh3)4 (98.8 mg, 0.0855 mmol)とをTHF(5 mL)に溶かした溶液を1分かけて加え、その後、36時間室温で撹拌した。減圧濃縮後、10%塩酸(10 mL)を加え、酢酸エチル (50 mL) で抽出した。抽出物を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過し、減圧濃縮した。得られた混合物をカラムクロマトグラフィーで精製した(silica gel〜100 g, AcOEt/hexane 1/20-1/15)。得られた固体を50 ℃で真空乾燥し(7時間)、化合物101(2"-bromo-(1,1':4',1"-terphenyl)-2-ol) 954 mg(68%)を得た。
【0105】
Mp 112.6-113.6 ℃;
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.26 (1H, brs), 6.99-7.03 (2H, m), 7.20-7.40 (5H, m), 7.54 (4H, s), 7.69 (1H, d, J = 8.4 Hz);
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 115.93, 120.93, 122.50, 127.48, 127.66, 128.65, 128.93, 129.24, 130.26, 130.31, 131.30, 133.24, 136.32, 140.51, 141.86, 152.43;
IR (ATR) 3527, 1481, 1464, 1178 cm-1;
Anal. calcd. for C18H13BrO: C, 66.48; H, 4.03, found: C, 66.31; H, 4.09 %.
【0106】
[化合物13の合成]
【化37】

【0107】
アルゴン下、化合物101(324 mg, 0.995 mmol) をEt2O (2 mL)に溶かし、−78 ℃に冷却した。この溶液に、n-BuLiのヘキサン溶液(1.59 M, 1.25 mL, 1.99mmol)を3分かけて滴下した。その後、同温度で10分撹拌した。この溶液に、THF (2 mL)を加え、−78 ℃で30分撹拌した。この溶液に、クロロジシクロヘキシルホスフィン(0.22 mL, 0.996 mmol)を2分かけて加え、−78 ℃で1時間撹拌し、さらに室温で20分撹拌した。溶媒を減圧溜去し(反応容器に減圧ポンプをつなぎ、撹拌しながら溶媒を溜去した)、白色アモルファス状固体を得た。HBF4塩にするまではホスフィンが酸化されやすいため、ここまでの操作は空気に触れないように行った。得られたアモルファス状固体にHBF4水溶液(42%, 1.2 mL)を加え、塩化メチレン(25 mL)で抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。その後、再結晶(CH2Cl2〜6 mL + Hexane〜3 mL)し、無色針状晶(含CH2Cl2結晶)488 mgを得た。これをメタノール(5 mL)に溶かし、不溶物をろ去後、ろ液を減圧濃縮し、固体を得た。得られた固体を100 ℃で真空乾燥し(3時間)、白色固体(13) 426 mg(81%)を得た。
【0108】
Mp 111.4-138.7℃;
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 1.18-1.47 (10H, m), 1.70-1.89 (10H, m), 2.72-2.81 (2H, m), 6.91-6.95 (2H, m), 7.20 (1H, dt, J = 1.2, 7.6 Hz), 7.33 (2H, d, J = 8.2 Hz), 7.32-7.34 (1H, m), 7.65 (1H, dd, J = 4.6, 7.6 Hz), 7.75 (2H, d, J = 8.2 Hz), 7.74-7.78 (1H, m), 7.89 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.99 (1H, dd, J = 7.6, 12.2 Hz) ppm;
13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 26.16, 26.70, 26.85, 27.76 (d, J = 3.3 Hz), 28.63, 30.33 (d, J = 41.1 Hz), 116.97, 121.12, 128.56, 130.07 (d, J = 13.2 Hz), 130.19, 130.30, 131.12, 131.55, 133.25 (d, J = 8.2 Hz), 134.61 (d, J = 9.9 Hz), 135.75, 137.94 (d, J = 4.9 Hz), 141.41, 150.51 (d, J = 6.6 Hz), 155.51 ppm (one carbon signal (C-P) was not observed due to broadening);
IR (ATR) 3406, 2935, 2854, 1448, 1061, 1005, 768 cm-1;
HRMS (ESI) m/z calcd for C30H34OP ([M-H]-) 441.2342; found: 441.2346;
Anal. calcd. for C30H36BF4OP: C, 67.94; H, 6.84, found: C, 67.90; H, 6.93 %.
【0109】
ビアリール化合物の合成
[ビフェニル−2−オールの合成]
【化38】

【0110】
2-ブロモフェノール(82.6 mg, 0.477 mmol)および配位子13(6.1 mg, 11.5 μmol)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム (4.4 mg, 4.77 μmol)をフラスコに入れ、フラスコ中の空気をアルゴンに置換した。テトラヒドロフラン(0.48 mL)を添加し、室温で5分間撹拌した後、−78℃に冷却した。フェニルマグネシウムブロミド(1.08 M THF sol., 1.33 mL, 1.43 mmol)を添加し、−78℃で10分間撹拌した後、50℃に昇温して1時間撹拌した。塩酸水溶液(10%, 5 mL)を添加し、有機物を酢酸エチル(5 mL x 3)で抽出し、有機層を水飽和食塩水(5 mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。分取薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/ジクロロメタン= 2/1)で精製し、ビフェニル−2−オールを得た(72.6 mg, 89%)。
【0111】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.18 (1H, s), 6.99 (1H, d, J = 8.0 Hz), 6.98-7.02 (1H, m), 7.23-7.29 (2H, m), 7.38-7.42 (1H, m), 7.45-7.52 (4H, m) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 115.77, 120.82, 127.86, 128.13, 129.06, 129.13, 129.26, 130.20, 137.01, 152.36 ppm;
【0112】
配位子13に代えて下記表1に示す化合物を使用した以外は上記と同様の方法でビフェニル−2−オールを合成した。いずれの場合も上記同様の同定を行いビフェニル−2−オールが得られたことを確認した。なおPd2(dba)3はトリスジベンジリデンアセトンジパラジウム、Cyはシクロヘキシル基を表す。
【0113】
【表1】

(PCy3:アルドリッチ製、配位子4:アルドリッチ製、配位子29:STREM製、配位子30:Alfa Aesar社製)
【0114】
表1に示すように、化合物13、15、26、28を配位子として使用した例1−6〜1−9では、例1−1〜1−5と比べて良好な収率で目的物質を得ることができた。特に化合物13を使用した例1−6、1−11では1時間以内に反応が完結した。なお市販の配位子PCy3は反応温度50℃での収率は良好であったが25℃では収率が大きく低下した(例1−12)。
【0115】
[ビフェニル−3−オールの合成]
【化39】

【0116】
3-ブロモフェノール(78.1 mg, 0.451 mmol)および配位子15(6.7 mg, 10.8 μmol)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム (4.1 mg, 4.51 μmol)をフラスコに入れ、フラスコ中の空気をアルゴンに置換した。テトラヒドロフラン(0.45 mL)を入れ、室温で5分間撹拌した後、−78℃に冷却した。フェニルマグネシウムブロミド(1.08 M THF sol., 1.25 mL, 1.35 mmol)を添加し、−78℃で10分間撹拌した後、50℃に昇温して3時間撹拌した。塩酸水溶液(10%, 5 mL)を添加し、有機物を酢酸エチル(5 mL x 3)で抽出し、有機層を水飽和食塩水(5 mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。分取薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン= 1/5)で精製し、ビフェニル−3−オールを得た(67.3 mg, 88%)。
【0117】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.96 (1H, brs), 6.81 (1H, dd, J = 2.4, 8.0 Hz), 7.05 (1H, t, J = 2.4 Hz), 7.17 (1H, d, J = 7.2 Hz), 7.30 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.34 (1H, dd, J = 7.2, 8.0 Hz), 7.42 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.55 (1H, d, J = 7.6 Hz) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 114.06, 114.15, 119.8, 127.07, 127.47, 128.73, 129.98, 140.65, 142.98, 155.68 ppm;
【0118】
配位子15に代えて下記表2に示す化合物を使用した以外は上記と同様の方法でビフェニル−3−オールを合成した。いずれの場合も上記同様の同定を行いビフェニル−3−オールが得られたことを確認した。
【0119】
【表2】

【0120】
表2に示すように、化合物13、15、26、28を配位子として使用することにより、従来既知の触媒使用時と同等以上の収率で、上記カップリング反応を良好に進行させることができた。特に化合物15の使用により、目的物質を高収率で得ることができた。
【0121】
[ビフェニル−4−オールの合成]
【化40】

【0122】
4-ブロモフェノール(76.9 mg, 0.445 mmol)および配位子15(6.6 mg, 10.7 μmol)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム (4.1 mg, 4.45 μmol)をフラスコに入れ、フラスコ中の空気をアルゴンに置換した。テトラヒドロフラン(0.45 mL)を添加し、室温で5分間撹拌した後、−78℃に冷却した。フェニルマグネシウムブロミド(1.08 M THF sol., 1.23 mL, 1.33 mmol)を添加し、−78℃で10分間撹拌した後、50℃に昇温して3時間撹拌した。塩酸水溶液(10%, 5 mL)を添加し、有機物を酢酸エチル(5 mL x 3)で抽出し、有機層を水飽和食塩水(5 mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。分取薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン= 1/5)で精製し、ビフェニル−4−オールを得た(51.9 mg, 69%)。
【0123】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.78 (1H, s), 6.90 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.30 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.41 (2H, t, J = 7.6 Hz), 7.48 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.54 (2H, d, J = 7.6 Hz) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 115.60, 126.69, 128.39, 128.70, 134.03, 140.71, 154.98 ppm (one signal is overlapped);
【0124】
配位子15に代えて下記表3に示す化合物を使用した以外は上記と同様の方法でビフェニル−4−オールを合成した。いずれの場合も上記同様の同定を行いビフェニル−3−オールが得られたことを確認した。
【0125】
【表3】

【0126】
表3に示すように、化合物113、15、26、28を配位子として使用することにより、PCy3使用時の収率には及ばないものの従来既知の触媒使用時と同等以上の収率で、上記カップリング反応を良好に進行させることができた。
【0127】
[ビフェニル−2−アミンの合成]
【化41】

【0128】
2-ブロモアニリン(80.1 mg, 0.466 mmol)および配位子13(5.9 mg, 11.2 μmol)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム (4.3 mg, 4.66 μmol)をフラスコに入れ、フラスコ中の空気をアルゴンに置換した。テトラヒドロフラン(0.47 mL)を添加し、室温で5分間撹拌した後、−78℃に冷却した。フェニルマグネシウムブロミド(1.08 M THF sol., 1.29 mL, 1.40 mmol)を添加し、−78℃で10分間撹拌した後、50℃に昇温して6時間撹拌した。塩酸水溶液(10%, 5 mL)を添加し、有機物を酢酸エチル(5 mL x 3)で抽出し、有機層を水飽和食塩水(5 mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。分取薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン= 1/5)で精製し、ビフェニル−2−アミンを得た(71.4 mg, 91%)。
【0129】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.70 (2H, brs), 6.74 (1H, dd, J = 1.2, 7.6 Hz), 6.81 (1H, dt, J = 1.2, 7.2 Hz), 7.11-7.16 (2H, m), 7.30-7.35 (1H, m), 7.40-7.46 (4H, m) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 115.55, 118.60, 127.12, 127.58, 128.45, 128.77, 129.05, 130.41, 139.46, 143.44 ppm;
【0130】
配位子13に代えて下記表4に示す化合物を使用した以外は上記と同様の方法でビフェニル−2−アミンを合成した。上記同様の同定を行いビフェニル−2−アミンが得られたことを確認した。
【0131】
【表4】

【0132】
表4に示すように、化合物13を配位子として含むパラジウム触媒の使用により、カップリング反応中に脱プロトン化する置換基(NH2)をオルト位に有する化合物とグリニヤール試薬とのクロスカップリング反応を良好に行うことができた。
【0133】
[5−ブロモ−4’−メトキシビフェニル−2−オールの選択的合成]
【化42】

【0134】
2,4-ジブロモフェノール(108 mg, 0.429 mmol)および配位子13(5.5 mg, 10.3 μmol)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム (3.9 mg, 4.29 μmol)をフラスコに入れ、フラスコ中の空気をアルゴンに置換した。テトラヒドロフラン(0.43 mL)を添加し、室温で5分間撹拌した後、−78℃に冷却した。4-メトキシフェニルマグネシウムブロミド(0.50 M THF sol., 2.57 mL)を添加し、−78℃で10分間撹拌した後、25℃に昇温して2時間撹拌した。塩酸水溶液(10%, 5 mL)を添加し、有機物を酢酸エチル(5 mL x 3)で抽出し、有機層を水飽和食塩水(5 mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過・濃縮した。分取薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/ヘキサン= 2/1)で精製し、5−ブロモ−4’−メトキシビフェニル−2−オールを得た(70.8 mg, 59%)。
【0135】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.86 (3H, s), 5.16 (1H, s), 6.85 (1H, d, J = 8.4 Hz), 7.02 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.32 (1H, dd, J = 2.4, 8.4 Hz), 7.33 (1H, d, J = 2.4 Hz), 7.35 (2H, d, J = 8.8 Hz) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 55.38, 112.67, 114.86, 117.43, 127.71, 129.79, 130.13, 131.43, 132.63, 151.70, 159.70 ppm;
【0136】
上記反応による3−ブロモ−4’−メトキシビフェニル−4−オールの収率は2%未満であった。
【0137】
上記結果から、化合物13を配位子として含むパラジウム錯体の使用により、2つのブロモ基の中で、反応中に脱プロトン化する置換基(OH)のオルト位のブロモ基が反応した生成物が優先的に得られることが示された。この選択性は、従来の配位子を使用して実現することは困難である。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明により、各種ビアリール化合物の効率的合成が可能となることが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるホスフィン化合物。
【化1】

[一般式(I)中、R1およびR2は、各々独立に、アルキル基またはアリール基であり、nは1〜3の範囲の整数であり、mは1または2である。]
【請求項2】
一般式(I)中、R1およびR2はいずれもシクロヘキシル基である請求項1に記載のホスフィン化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のホスフィン化合物を配位子として含む金属錯体。
【請求項4】
金属は、パラジウムである請求項3に記載の金属錯体。
【請求項5】
請求項3または4に記載の金属錯体からなるカップリング反応用触媒。
【請求項6】
下記一般式(II)で表される芳香族化合物とグリニヤール試薬とのクロスカップリング反応用触媒である請求項5に記載のカップリング反応用触媒。
【化2】

[一般式(II)中、R3は置換または無置換の芳香族炭化水素基であり、Yはハロゲン原子またはOTf(Tfはトリフルオロメタンスルホニル基である)である。]
【請求項7】
一般式(II)で表される芳香族化合物は、
【化3】

である請求項6に記載のカップリング反応用触媒。
[上記においてRaおよびRbは、各々独立にアルキル基またはアリール基であり、Y11、Y12、Y13、Y14およびY15は、各々独立にハロゲン原子であり、Z11、Z12、Z13、Z14およびZ15は、各々独立に置換基であり、p1、p2、p3、p4およびp5は、各々独立に1または2であり、q1は、0以上(5−p1)以下の整数であり、q2は0以上(5−p2)以下の整数であり、q3は、0以上(5−p3)以下の整数であり、q4は、0以上(5−p4)以下の整数であり、q5は、0以上(5−p5)以下の整数である。p1、p2、p3、p4、p5が2の場合に2つのY11、Y12、Y13、Y14、Y15は同一でも異なってもよく、q1、q2、q3、q4、q5が2以上の整数である場合に複数存在するZ11、Z12、Z13、Z14、Z15はそれぞれ同一でも異なってもよい。]
【請求項8】
下記一般式(II)で表される芳香族化合物とグリニヤール試薬とをクロスカップリング反応させてビアリール構造を有する化合物を製造する方法であって、
前記反応を請求項3または4に記載の金属錯体存在下で行うことを特徴とする、前記製造方法。
【化4】

[一般式(II)中、R3は置換または無置換の芳香族炭化水素基であり、Yはハロゲン原子またはOTf(Tfはトリフルオロメタンスルホニル基である)である。]
【請求項9】
一般式(II)で表される芳香族化合物は、
【化5】

である請求項8に記載の製造方法。
[上記においてRaおよびRbは、各々独立にアルキル基またはアリール基であり、Y11、Y12、Y13、Y14およびY15は、各々独立にハロゲン原子であり、Z11、Z12、Z13、Z14およびZ15は、各々独立に置換基であり、p1、p2、p3、p4およびp5は、各々独立に1または2であり、q1は、0以上(5−p1)以下の整数であり、q2は0以上(5−p2)以下の整数であり、q3は、0以上(5−p3)以下の整数であり、q4は、0以上(5−p4)以下の整数であり、q5は、0以上(5−p5)以下の整数である。p1、p2、p3、p4、p5が2の場合に2つのY11、Y12、Y13、Y14、Y15は同一でも異なってもよく、q1、q2、q3、q4、q5が2以上の整数である場合に複数存在するZ11、Z12、Z13、Z14、Z15はそれぞれ同一でも異なってもよい。]

【公開番号】特開2008−247881(P2008−247881A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191526(P2007−191526)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】