説明

カテーテル

【課題】不定形の瘤の塞栓にも容易かつ安全に対応でき、手術前の準備が容易であるとともに、手術の費用を削減できるカテーテルを提供する。
【解決手段】使用環境温度よりも高い融点を有する接着部11により、使用環境下において切り離される膨潤性高分子である投入材12が接着され、前記接着部11に光を照射して加熱することにより、前記投入材12が切り離されるカテーテル1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関し、特に、生体内に診断や治療用の材料を投入するために利用されるカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、脳動脈瘤等の破裂を防止するために、動脈瘤の内部にコイルを球状に充填する塞栓方法が行われている。例えば、特許文献1では、カテーテルを動脈瘤の入口近傍まで挿入し、カテーテルから動脈瘤の内部にコイルを充填する方法が開示されている。
【0003】
しかし、この方法では、動脈瘤が不定形であることから、コイルにより完全に塞栓することができず、再手術を必要とする虞がある。
【0004】
また、コイルの場合には、瘤の大きさがそのまま維持され、大きな瘤の場合に、周りの神経や動脈を圧迫し、頭痛やめまいの症状が出る可能性がある。
【0005】
また、脳動脈瘤の形状や大きさは場合によって異なるため、様々な種類のコイルを手術前に準備する必要がある。
【0006】
また、大きな動脈瘤の場合には、相当数のコイルを塞栓に用いなければならず、費用が高額となってしまう。
【特許文献1】特表2006−528030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、不定形の瘤の塞栓にも容易かつ安全に対応でき、手術前の準備が容易であるとともに、手術の費用を低減できるカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記(1)〜(9)に記載の発明により達成される。
【0009】
(1)使用環境温度よりも高い融点を有する接着部により使用環境下において切り離される投入材が接着され、前記接着部に光を照射して加熱することにより、前記投入材が切り離されるカテーテルである。
【0010】
(2)前記接着部に光を照射する光ファイバ部を更に有することを特徴とする上記(1)に記載のカテーテルである。
【0011】
(3)前記接着部は、生体適応性の高分子であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のカテーテルである。
【0012】
(4)前記投入材は、生体適応性の膨潤性高分子であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載のカテーテルである。
【0013】
(5)前記投入材は、生分解性の高分子であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のカテーテルである。
【0014】
(6)前記投入材は、被覆材により覆われることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載のカテーテルである。
【0015】
(7)前記投入材が接着される部位が、窪んで形成されることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載のカテーテルである。
【0016】
(8)直状に延びるルーメンを更に有することを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか1つに記載のカテーテルである。
【0017】
(9)前記投入材が、複数個搭載されていることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載のカテーテルである。
【発明の効果】
【0018】
上記(1)に記載の発明によれば、使用環境温度よりも高い融点を有する接着部により投入材が接着されているため、使用環境下においては接着部が溶融されることがなく、接着部に光を照射して加熱することによって、投入材を任意の場所で切り離すことができる。また、光を用いて接着部を溶融させるため、カテーテルに電流を流す必要がなく、生体に対して安全性が高い。
【0019】
また、上記(2)に記載の発明によれば、接着部に光を照射する光ファイバ部が設けられるため、光を照射することにより接着部を加熱し、投入材を切り離すことができる。
【0020】
また、上記(3)に記載の発明によれば、接着部が生体適応性の高分子であるため、溶融されて生体内に残留しても、生体に対して影響を与えない。
【0021】
また、上記(4)に記載の発明によれば、投入材が生体適応性の膨潤性高分子であるため、生体内で使用されても影響がなく、また、生体内の水分で膨張するため、例えば不定形の瘤等であっても容易に塞栓することができる。また、投入材が膨潤性高分子であるため、瘤等の大きさに応じて膨潤性高分子を任意の量に調整することが加能であり、1種類の膨潤性高分子を用意すればよいため、塞栓のための手術前の準備が容易である。また、瘤等を塞栓するためにコイルを使用しなくてもよいため、手術の費用を低減できる。
【0022】
また、上記(5)に記載の発明によれば、投入材が生分解性の高分子であるため、この高分子によって瘤出口の器質化が進み、血液が瘤内に流れ込むのを防ぐと同時に、瘤内の高分子の分解とともに、瘤自身の体積も減少していく。
【0023】
また、上記(6)に記載の発明によれば、投入材が被覆材により覆われるため、投入材を使用環境下から保護することができる。したがって、例えば投入材が膨潤性高分子である場合に、膨潤性高分子の膨潤を、膨潤性高分子が切り離されるまで抑制することができる。
【0024】
また、上記(7)に記載の発明によれば、投入材が接着される部位が窪んで形成さるため、投入材へ作用する外力を低減させ、投入材が誤って切り離されることを抑制できる。
【0025】
また、上記(8)に記載の発明によれば、直状に延びるルーメンを有するため、ルーメンによる様々な作業が可能となる。例えば、ルーメンから瘤の塞栓に使用するワイヤを挿入することができ、従って、例えば膨潤性高分子とコイルを併用して瘤を塞栓することができる。また、ルーメンに、光ファイバを挿入することも加能である。
【0026】
また、上記(9)に記載の発明によれば、投入材が複数搭載されているため、例えば複数種類の高分子や薬剤等を同時に投入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
図1は、本実施形態に係るカテーテルの平面図、図2は、本実施形態に係るカテーテルの先端を示す部分断面図、図3は、図2のIII−III線に沿う断面図、図4は、同カテーテルの先端部を示す斜視図である。
【0029】
本実施形態に係るカテーテル1は、人体の血管や器官等に入り込み、生体内に診断や治療用の材料を投入するために利用される医療用のカテーテルである。カテーテルとしては、例えば、外径が1Fr〜9Fr(1mm=3Fr)、長さが約0.9m〜3.5m、屈曲度が20度〜180度の、ガイディングカテーテル、動脈瘤カテーテルまたはマイクロカテーテル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
カテーテル1は、図1〜4に示すように、光ファイバ部4および、光ファイバ部4を覆う長尺なカテーテル本体2を有している。
【0031】
カテーテル本体2は、一端側で基体部5に連結される。この基体部5に設けられるレーザ光出射部6(光出射部)には、光ファイバ部4の一端が、例えばフェルール等からなる接続部10を介して接続される。レーザ光出射部6は、光ファイバ部4にレーザ光を供給する装置であり、制御部3に接続されて制御される。
【0032】
レーザ光出射部6は、公知のレーザ発振器であるため詳細は省略するが、例えば半導体レーザ素子を備え、このレーザ素子からレーザ光を発生させて光ファイバ部4に入射させる。また、レーザ光出射部6に、例えば固体レーザ素子を用いることも加能である。なお、本実施の形態と異なり、レーザ光出射部6を基体部5の外部、例えば制御部3内に配置する構成を採用してもよい。
【0033】
レーザ光が進行する光ファイバ部4は硬質性の光ファイバであり、たとえば、SiO2(石英ガラス)系光ファイバまたはプラスチック光ファイバを用いて構成される。光ファイバ部4は、たとえば、中心軸に位置してレーザ光が通過するコア7と、それを取り囲むクラッド8と、を含む二層構造で成り立っている。
【0034】
カテーテル本体2には、生体内にバルーンやワイヤ等を挿入するために、直状の空間部であるルーメン9が形成される。本実施形態では、ルーメンは1つであるが、2つ以上が形成されてもよい。カテーテル本体2は、例えばポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネイト、ポリサルフォンやシリコーンのような柔軟性に優れた高分子材料等で形成される。
【0035】
光ファイバ部4の先端は、カテーテル本体2から露出されており、この光ファイバ部4のコア7が露出される部位に、接着部11によって投入材12が接着される。なお、光ファイバ部4の先端を露出させるのではなく、例えば光ファイバ部4の先端に光を透過する部材を設け、この部材に投入材12を接着してもよい。
【0036】
接着部11は、使用環境温度において溶融しないように、使用環境温度よりも高い融点を有する必要がある。本実施形態に係るカテーテル1は、生体内で使用されるため、生体温度よりも高い融点を有しており、また生体適応性を有している。生体への影響をできるだけ少なくするために、融点が生体温度よりも高すぎないことが望ましく、例えば45℃〜60℃程度の融点を有する低融点の高分子が選定される。
【0037】
投入材12は、本実施形態では、水分に触れることにより膨潤する膨潤性高分子であり、生体内で使用されるため、生体適応性を有している。投入材12が接着されている際に投入材12が水分に触れないよう、投入材12の接着部11と接する部位以外が、被覆材13で覆われている。被覆材13は、生体適応性を有する例えばポリマーであり、生分解性であることが望ましい。
【0038】
接着部11である高分子には、例えばポリカプロラクトン、ポリカーボネイト等が用いられる。
【0039】
投入材12である膨潤性高分子には、例えば非分解性のものとして、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリメチルビニルエーテル、ポリアクリル酸等ある。生分解性のものとしては、カルボキシメチルセルロース等の多糖類、ポリグルタミン酸、ポリリジン、ポリアスパラギン酸等のポリアミノ酸系高分子が用いられる。
【0040】
被覆材13であるポリマーには、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン等が用いられる。
【0041】
図5は、本実施形態に係るカテーテルの変形例の先端を示す部分断面図である。図5に示すように、光ファイバ部4を、カテーテル本体2の外面から窪んで設けることもできる。この場合には、この凹部17に投入材12が位置するため、投入材12へ作用する外力を低減させ、投入材12が誤って切り離されることを抑制できる。
【0042】
次に、本実施形態に係るカテーテル1の使用方法について説明する。
【0043】
<第1の使用例>
まず、本実施形態に係るカテーテル1を、動脈瘤Bを塞栓するために使用する第1の使用例を示す。
【0044】
図6は、本実施形態に係るカテーテルにより動脈瘤を塞栓する際の第1の使用例を示す断面図であり、(A)はガイドワイヤが挿入された際、(B)はカテーテルが挿入された際、(C)は瘤が塞栓された際を示す。
【0045】
初めに、血管内にガイドワイヤGを挿入し、図6(A)に示すように、先端を動脈瘤の近傍まで移動させる。
【0046】
次に、図6(B)に示すように、カテーテル1の先端が動脈瘤Bの入口の近傍まで達するまで、カテーテル1をガイドワイヤGに沿って移動させる。このとき、カテーテル1の先端には投入材12が接着されている。投入材12を接着している接着部11は、融点が生体温度よりも高いため、生体内で接着部11が溶融されることなく、したがって投入材12が移動中に切り離されずに動脈瘤Bの近傍に達することができる。投入材12が動脈瘤Bの近傍に達すると、ガイドワイヤGが引き抜かれる。
【0047】
この後、制御部3によりレーザ光出射部6を制御してレーザ光を出射する。レーザ光出射部6から出射されたレーザ光は、光ファイバ部4のコア7を通って先端部まで導かれ、接着部11に照射される。レーザ光を受けた接着部11は、融点以上まで加熱されて溶融し、投入材12が被覆材13と同時にカテーテル1から切り離される。接着部11の上昇温度は、制御部3によってレーザ光出射部6からのレーザ光の時間密度、照射時間および強度を制御することにより、任意に設定することができる。また、レーザ光の照射により温度が上昇しやすいように、接着部11に色素を混入させることも有効である。
【0048】
投入材12は膨潤性高分子であり、接着部11が溶融したために生体内の水分と接触し、生体内の水分を吸収して膨潤する。これにより、動脈瘤Bの内部が膨潤性高分子で充填されて塞栓され、弱くなった血管を血圧の脈動等に晒さずに保護することができる。
【0049】
投入材12が確実に瘤内を塞栓したことを確認した後、カテーテル1を抜去する。
【0050】
この切り離しにおいて、融点が生体温度からあまり高すぎない接着部11が使用されるため、生体内への影響を極力抑えることができる。また、接着部11、投入材12および被覆材13は、生体内に残存することになるが、これらが生体適応性を有し、かつ高分子であるため、生体への影響を抑えることができる。
【0051】
従来の塞栓方法として、例えばコイルを動脈瘤の内部で球状として充填し、このコイルの周りに凝血や塊の形成を促して動脈瘤を塞栓する方法があるが、この方法では、動脈瘤が不定形であるため、完全に塞栓できずに再手術する必要性が生じる場合がある。また、動脈瘤の形状や大きさは場合によって異なるため、様々な長さや太さのコイルを手術前に予め準備する必要がある。また、大きな動脈瘤の塞栓においては、相当な量のコイルが必要となり、費用が高額となってしまう。
【0052】
しかし、本実施形態に係るカテーテル1を用いれば、動脈瘤Bを最適な量の投入材12で充填することができるため、不定形な動脈瘤Bにも対応することができる。
【0053】
また、投入材12である膨潤性高分子が動脈瘤Bに密に充填されるため、不定形の動脈瘤でも確実に塞栓でき、再手術の虞を抑えることができる。
【0054】
また、一種類の投入材12があれば、量を調整することで多様な瘤に対応することができ、費用を削減することができる。
【0055】
また、光を用いて接着部11を溶融させるため、カテーテル1に電流を流す必要がなく、生体に対して安全性が高い。
【0056】
また、生分解性高分子を投入材12として用いれば、瘤の体積の減少が期待できる。
【0057】
<第2の使用例>
次に、本実施形態に係るカテーテル1を、動脈瘤Bを塞栓するために使用する第2の使用例を示す。
【0058】
図7は、本実施形態に係るカテーテルにより動脈瘤を塞栓する際の第2の使用例を示す断面図であり、(A)はガイドワイヤに沿ってカテーテルが挿入された際、(B)はカテーテルによりコイルが瘤内に充填された際、(C)は瘤が塞栓された際を示す。
【0059】
初めに、血管内にガイドワイヤGを挿入し、先端を動脈瘤Bの近傍まで移動させた後、図7(A)に示すように、ガイドワイヤGに沿ってカテーテル1を動脈瘤Bの入口の近傍まで移動させる。この後、ガイドワイヤGは引き抜かれる。
【0060】
次に、図7(B)に示すように、金属性のコイル15がカテーテル1のルーメン9を通って動脈瘤B内へ導かれ、コイル15が球状に充填される。
【0061】
この後、制御部3によりレーザ光出射部6を制御してレーザ光を出射し、接着部11に照射する。レーザ光を受けた接着部11は、融点以上まで加熱されて溶融し、投入材12が被覆材13と同時にカテーテル1から切り離される。
【0062】
投入材12は膨潤性高分子であり、接着部11が溶融したために生体内の水分と接触し、生体内の水分を吸収して膨潤する。用いられる膨潤性高分子の種類と量で、膨潤の程度を調整できる。第2の使用例は、第1の使用例と異なり、投入材12である膨潤性高分子が動脈瘤Bの入口のみを覆うように膨潤する。このように、コイル15を使用すると共に瘤Bの入口を膨潤性高分子で覆うことにより、動脈瘤Bを塞栓しつつ、コイル15の端部が親動脈へ落ちることを抑制できる。
【0063】
<第3の使用例>
次に、本実施形態に係るカテーテル1を、動脈瘤Bを塞栓するために使用する第3の使用例を示す。
【0064】
図8は、本実施形態に係るカテーテルにより動脈瘤を塞栓する際の第3の使用例を示す断面図であり、(A)はガイドワイヤに沿ってカテーテルが挿入された際、(B)はカテーテルによりコイルが瘤内に充填された際、(C)は瘤が塞栓された際を示す。
【0065】
初めに、血管内にガイドワイヤGを挿入し、先端を動脈瘤Bの近傍まで移動させた後、図8(A)に示すように、ガイドワイヤGに沿ってカテーテル1を動脈瘤Bの入口の近傍まで移動させる。この後、ガイドワイヤGは引き抜かれる。
【0066】
次に、図8(B)に示すように、金属性のフレーム用コイル16がカテーテル1のルーメン9を通って動脈瘤B内へ導かれる。フレーム用コイル16は、動脈瘤Bの形状を保持するフレームとしての機能を果す。したがって、フレーム用コイル16は、動脈瘤B内に密に充填される必要はない。
【0067】
この後、制御部3によりレーザ光出射部6を制御してレーザ光を出射し、接着部11に照射する。レーザ光を受けた接着部11は、融点以上まで加熱されて溶融し、投入材12が被覆材13と同時にカテーテル1から切り離される。
【0068】
投入材12は膨潤性高分子であり、接着部11が溶融したために生体内の水分と接触し、生体内の水分を吸収して膨潤する。第3の使用例は、第1、2の使用例と異なり、膨潤性高分子がフレーム用コイル16の隙間を埋めるように、動脈瘤B内に充填される。このように、フレーム用コイル16と膨潤性高分子を併用することにより、コイルの量を減らして費用を削減することができる。また、フレーム用コイル16の隙間が膨潤性高分子で満たされるため、最適な量の投入材12で充填することにより、不定形な動脈瘤Bにも対応することができる。
【0069】
また、投入材12である膨潤性高分子が動脈瘤Bに密に充填されるため、不定形の動脈瘤でも確実に塞栓でき、再手術の虞を抑えることができる。
【0070】
<第4の使用例>
次に、本実施形態に係るカテーテル1を、動脈を塞栓するために使用する第4の使用例を示す。第4の使用例は、癌細胞Cに栄養を供給する動脈を塞栓して癌細胞Cへの血液の流れを遮断する例であり、例えば肝動脈塞栓術や子宮動脈塞栓術として適用される。
【0071】
図9は、本実施形態に係るカテーテルにより動脈を塞栓する際の第4の使用例を示す断面図であり、(A)はカテーテルが挿入された際、(B)は動脈が塞栓された際を示す。
【0072】
初めに、血管内にガイドワイヤGを挿入し、先端を、癌細胞Cに血液を供給している血管の癌細胞Cに対する上流側から、癌細胞Cの近傍まで移動させた後、図9(A)に示すように、ガイドワイヤGに沿ってカテーテル1を癌細胞Cの上流側の近傍まで移動させる。この後、ガイドワイヤGは引き抜かれる。
【0073】
次に、制御部3によりレーザ光出射部6を制御してレーザ光を出射して接着部11に照射する。レーザ光を受けた接着部11は、融点以上まで加熱されて溶融し、投入材12がカテーテル1から切り離される。
【0074】
投入材12は膨潤性高分子であり、接着部11が溶融したために生体内の水分と接触するため、生体内の水分を吸収して膨潤し、図9(B)に示すように、動脈が塞栓される。これにより、癌細胞Cに栄養を供給している血管が閉塞されて、癌細胞Cへの栄養の供給が停止され、癌細胞Cを死滅させることができる。
【0075】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。例えば、上述のカテーテル1に、用途によって必要となる他の構成を設けることが加能である。また、投入材12は膨潤性高分子に限定されず、例えば抗癌剤等の薬剤、造影剤等、生体内に投入される種々のものを適用できる。また、光出射部には、レーザ発振器ではなく、全色光(多色光)を出射する例えばランプ等を用いてもよい。また、カテーテル1は、例えば形状記憶合金や形状記憶ポリマー等が用いられて能動的に屈曲されるカテーテル1であってもよい。また、カテーテル本体2を、光ファイバ部4を覆うように形成するのではなく、カテーテル本体2に光ファイバを挿入加能なルーメンを形成し、このルーメンに、先端に投入材12を接着した光ファイバを挿入可能に形成してもよい。また、上述の実施形態に係るカテーテル1は医療用のカテーテルであるが、必ずしも医療用に限られない。また、投入材12を光ファイバの先端に接着するのではなく、光ファイバの側面のクラッド8からコア7を露出させて、この露出部から投入材12にレーザ光を照射してもよい。投入材12が、複数個搭載されてもよい。この場合には、例えば抗癌剤と膨潤性高分子を同時に投入する等、複数種類の投入材12を同時に投入することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本実施形態に係るカテーテルの平面図である。
【図2】本実施形態に係るカテーテルの先端を示す部分断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】同カテーテルの先端部を示す斜視図である。
【図5】本実施形態に係るカテーテルの変形例の先端を示す部分断面図である。
【図6】本実施形態に係るカテーテルにより動脈瘤を塞栓する際の第1の使用例を示す断面図であり、(A)はガイドワイヤが挿入された際、(B)はカテーテルが挿入された際、(C)は瘤が塞栓された際を示す。
【図7】本実施形態に係るカテーテルにより動脈瘤を塞栓する際の第2の使用例を示す断面図であり、(A)はガイドワイヤに沿ってカテーテルが挿入された際、(B)はカテーテルによりコイルが瘤内に充填された際、(C)は瘤が塞栓された際を示す。
【図8】本実施形態に係るカテーテルにより動脈瘤を塞栓する際の第3の使用例を示す断面図であり、(A)はガイドワイヤに沿ってカテーテルが挿入された際、(B)はカテーテルによりコイルが瘤内に充填された際、(C)は瘤が塞栓された際を示す。
【図9】本実施形態に係るカテーテルにより動脈を塞栓する際の第4の使用例を示す断面図であり、(A)はカテーテルが挿入された際、(B)は動脈が塞栓された際を示す。
【符号の説明】
【0077】
1 カテーテル、
2 カテーテル本体、
3 制御部、
4 光ファイバ部、
5 基体部、
6 レーザ光出射部、
7 コア、
8 クラッド、
9 ルーメン、
10 接続部、
11 接着部、
12 投入材、
13 被覆材、
15 コイル、
16 フレーム用コイル、
17 凹部、
B 動脈瘤、
C 癌細胞、
W ガイドワイヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用環境温度よりも高い融点を有する接着部により使用環境下において切り離される投入材が接着され、前記接着部に光を照射して加熱することにより、前記投入材が切り離されるカテーテル。
【請求項2】
前記接着部に光を照射する光ファイバ部を更に有することを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記接着部は、生体適応性の高分子であることを特徴とする請求項1または2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記投入材は、生体適応性の膨潤性高分子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記投入材は、生分解性の高分子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記投入材は、被覆材により覆われることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記投入材が接着される部位が、窪んで形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項8】
直状に延びるルーメンを更に有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記投入材が、複数個搭載されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−253516(P2008−253516A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98744(P2007−98744)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】