説明

カバー一体型の基板内蔵型コネクタユニット及びその製造方法

【課題】回路設計の自由度の向上、部品点数や工程数の低減もしくは抑制、組付け精度の向上、および外部からの物理的ストレスに対する耐性の向上を図ることができるカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニットを提供する。
【解決手段】カバー一体型の基板内蔵型コネクタユニット8は基板1、外部接続端子3、ケース5、及びカバー6を備える。基板1の一方の主面1a上には電子部品2(2a,2b)が搭載されてコーティング材4で封止される。端子3は基板1に電気的に接合されるとともに電線9が電気的に接続されて電子部品2を外部に電気的に接続する。ケース5は絶縁性を有し、基板1を内部に収容して基板1と一体に樹脂成形される。カバー6はケース5に収容された基板1及び端子3を覆うとともに端子3に接続された電線9を押さえる。カバー6は、ケース5にヒンジ7を介して連結されてケース5と一体に樹脂成形される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えば自動車などの移動体へ搭載されるエレクトロニクス製品に係り、特に電子部品が搭載された基板を内蔵したコネクタユニット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策として、CO2 排出削減のため、環境・エネルギー関連分野が世界的に注目されている。こうした中、自動車も化石燃料を動力とするガソリン車から電気を動力とするハイブリッド車や電気自動車が近い将来、主流になると考えられている。ハイブリッド車や電気自動車には、電気を充電するために電池パックが搭載されており、常に電圧監視が行われている。現在の電圧監視ユニットのシステムは、その多くが一点集中制御になっている。
【0003】
そして、前述した電圧監視ユニットにより監視される装置の一例として、図3に示すLED照明ランプ200が挙げられる。このLED照明ランプ200の主要部は、例えば以下に述べる方法により製造される。先ず、2つの端子金具100A,100Bと、これら各端子金具100A,100Bが埋設されるハウジング220とを、インサート成形する。これにより、コネクタ111が製造される。一方の端子金具100Aは、LED200の正極と接続される部品接続部110a(110)を有する。また、他方の端子金具100Bは、LED200の負極と接続される部品接続部110b(110)を有する。
【0004】
続けて、2本の電線170a,170bが取り付けられる圧接刃120(120a,120b)を、はんだ付け等によって各端子金具100A,100Bに接続する。各圧接刃120a,120bは、各端子金具100A,100Bにはんだ付けされるのに先立って予め成形しておく。また、各部品接続部110a,110bの上に電子部品としてのLED300を搭載して電気的に接続する。これまでの工程により、LED照明ランプ200の本体となるコネクタ111が作製される。そして、各端子金具100A,100Bに電気的に接続された各圧接刃120a,120bに各電線170a,170bを押し込んで電気的に接続する。最後に、各電線170a,170bが取り付けられたコネクタ111を覆ってカバー400を取り付ける。この際、各電線170a,170bは、各圧接刃120a,120bから外れないようにカバー400によって上方から押さえ付けられる。以上でLED照明ランプ200の主要部の製造工程は終了となる。
【0005】
しかし、図3に示す構造からなるLED照明ランプ200においては、いわゆるバスバーインサート構造であるため回路設計が制限され易く、複雑な回路を形成することができない。このため、図示しない制御回路が別途必要となる。また、電線170a,170bの押さえ付けを行うカバー400が別体の部品として必要になる。この結果、部品点数が増加するとともに、それらの組み付けに掛かる工程数が増加する。ひいては、材料費、加工費、工賃、人件費等が増大し、製造コストの高騰を招くおそれがある。
【0006】
また、圧接刃形状の各端子120a,120bを後工程で各端子金具100A,100Bに組み付けるため、精度が低くガタが発生し易い。また、組付け部となる各端子金具100A,100Bが露出しているため、外部からの物理的ストレスを受ける可能性がある。これらにより、製品としての品質や信頼性あるいは耐久性といった諸性能が低下するおそれが高くなる。
【0007】
さらに、ハウジング220に各端子金具100A,100Bを組み付けてなる組付け部は、その構造が複雑である。このため、組付け工程の後に行う、はんだ付け作業が困難になり易い。ひいては、作業効率が低下し易い。
【0008】
以上説明した問題は、例えば下記特許文献1に開示されている発明においても同様に起こり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−125929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述したように、これまでの車載装置においては、回路設計の制限、部品点数や工程数の増加、組付け精度の低下、および外部からの物理的ストレスに対する脆弱さといった課題が残されていた。
【0011】
本願発明は、以上説明した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、回路設計の自由度の向上、部品点数や工程数の低減もしくは抑制、組付け精度の向上、および外部からの物理的ストレスに対する耐性の向上を図ることができるカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニット及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決して目的を達成するために、本願の請求項1に係るカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニットは、一方の主面上に電子部品が搭載されてコーティング材で封止された基板と、該基板に電気的に接合されるとともに電線が電気的に接続されて前記電子部品を外部に電気的に接続する外部接続端子と、前記基板を内部に収容して前記基板と一体に成形された絶縁性のケースと、該ケースにヒンジを介して連結されて該ケースと一体に成形され、前記ケースに収容された前記基板及び前記外部接続端子を覆うとともに前記外部接続端子に電気的に接続された前記電線を押さえるカバーと、を具備することを特徴とするものである。
【0013】
このような構造からなる本願請求項1に係るカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニットにおいては、予め外部接続端子が電気的に接合された基板を内部に収容して基板と一体にケースが成形されている。それととともに、ケースに収容された基板及び外部接続端子を覆うカバーが、ヒンジを介してケースに連結されてケースと一体に成形されている。これにより、回路設計の自由度の向上、部品点数や工程数の低減もしくは抑制、組付け精度の向上、および外部からの物理的ストレスに対する耐性の向上が図られている。
【0014】
また、前記課題を解決して目的を達成するために、本願の請求項2に係るカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニットの製造方法は、基板の一方の主面上に電子部品を搭載し、前記電子部品を外部に電気的に接続する外部接続端子を前記基板に電気的に接合し、前記一方の主面上に搭載された前記電子部品をコーティング材で封止し、前記基板を内部に収容するケースを前記基板と一体に樹脂成形し、前記ケースに収容された前記基板及び前記外部接続端子を覆うとともに前記外部接続端子に電気的に接続される電線を押さえるカバーを、前記ケースにヒンジを介して連結して前記ケースと一体に樹脂成形する、ことを特徴とするものである。
【0015】
このような工程からなる本願請求項2に係るカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニットの製造方法においては、予め外部接続端子が電気的に接合された基板を内部に収容しつつ、基板と一体にケースを樹脂成形することができる。それととともに、ケースに収容された基板及び外部接続端子を覆うカバーを、ヒンジを介してケースに連結させてケースと一体に樹脂成形することができる。これにより、回路設計の自由度の向上、部品点数や工程数の低減もしくは抑制、組付け精度の向上、および外部からの物理的ストレスに対する耐性の向上を図ることができるカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニットを製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
前述したように、本願請求項1に係る発明によれば、回路設計の自由度の向上、部品点数や工程数の低減もしくは抑制、組付け精度の向上、および外部からの物理的ストレスに対する耐性の向上を図ることができるカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニットを提供することができる。
【0017】
また、本願請求項2に係る発明によれば、回路設計の自由度の向上、部品点数や工程数の低減もしくは抑制、組付け精度の向上、および外部からの物理的ストレスに対する耐性の向上を図ることができるカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニットの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)〜(e)は、本願発明の一つの実施形態に係るカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニットの製造工程を示す側面図である。
【図2】図1に示す製造工程により製造されたカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニットを示す斜視図である。
【図3】図2中破断線A−A’に沿って示す断面図である。
【図4】従来の技術に係るLED照明ランプを分解して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願発明の一つの実施形態に係るカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニット及びその製造方法について、図1〜図3を参照しつつ、製造工程の順番に沿って一括して説明する。
【0020】
先ず、図1(a)に示すように、基板1の一方の主面1a上に電子部品2を搭載する。ここでは、薄肉の平板形状に形成されたガラスエポキシ基板1の表面1aの中央部に予め設定されている電子部品搭載箇所1bに、複数個の電子部品2を表面実装する。具体的には、先ず、ガラスエポキシ基板1の電子部品搭載箇所1bに、図示しない導電性の接合材をスクリーン印刷やディスペンサ等によって適量塗布する。導電性の接合材としては、例えば半田、導電性ペースト、あるいは半田ペーストと導電性ペーストとの混合物等を用いる。続けて、接合材が塗布された電子部品搭載箇所1bに、図示しないマウンタ等を用いて3個の電子部品2を搭載する。これにより、ガラスエポキシ基板1に所望の各種電子部品2が表面実装される。
【0021】
基板1に搭載される各電子部品2には、大別すると、増幅作用や整流作用等の能動作用を有する能動部品2aと、能動作用を有しない受動部品2bとの2種類がある。能動部品2aとしては、例えばトランジスタ、リレー、及びIC等が挙げられる。また、受動部品2bとしては、抵抗、コンデンサ、及びコイル等が挙げられる。
【0022】
次に、図1(b)に示すように、各種電子部品2a,2bを外部に電気的に接続する外部接続端子3をガラスエポキシ基板1に電気的に接合する。ここでは、ガラスエポキシ基板1の縁部に予め設定されている外部接続端子接合箇所1cに、複数個の外部接続端子3を接合する。ただし、図1(b)〜(c)においては、図面を見易くするために複数個の外部接続端子3のうちの1個のみを図示することとする。また、外部接続端子3としては、いわゆる圧接刃クリップ端子を用いることとする。この圧接刃クリップ端子3は、図示しない電線が電気的に接続される電線接続箇所3aが圧接刃形状に形成されている。それとともに、基板1に接合される基板接合部3bが、基板1をその板厚方向において狭持するクリップ形状に形成されている。
【0023】
各圧接刃クリップ端子3は、先ず、それらの基板接合部としてのクリップ部3bによって基板1の縁部を狭持して配置される。続けて、例えばレーザー、引き半田付け、あるいは抵抗溶接等によって、各クリップ部3bを外部接続端子接合箇所1cに電気的に接合する。これにより、各種電子部品2a,2bが表面実装されたガラスエポキシ基板1に各圧接刃クリップ端子3が電気的に接合される。
【0024】
なお、図示は省略するが、ガラスエポキシ基板1の表面1a上には、電子部品2や圧接刃クリップ端子3を取り付けるのに先立って、所定の回路パターンからなる表面配線が予め複数本形成されている。各種電子部品2a,2bと各圧接刃クリップ端子3とは、これら各表面配線を介して適正な導伝経路で電気的に接続される。各表面配線は、例えば電子部品搭載箇所1bである基板中央部から外部接続端子接合箇所1cである基板縁部に向けて延ばされて形成されている。そして、各表面配線の一方の端部である基板中央部側(電子部品搭載側)の端部には、電子部品2の端子が電気的に接合される電子部品用のランドが形成されている。同様に、各表面配線の他方の端部である基板縁部側(外部接続端子接合側)の端部には、圧接刃クリップ端子3のクリップ部3bが電気的に接合される外部接続端子接合用のランドが形成されている。
【0025】
各種電子部品2a,2bは、それらの端子を前述した方法によって所定の各電子部品用ランドに電気的に接続される。同様に、各圧接刃クリップ端子3は、それらのクリップ部3bを前述した方法によって所定の外部接続端子接合用ランドに電気的に接続される。これにより、各種電子部品2a,2bと各圧接刃クリップ端子3の電線接続箇所としての圧接刃3aとが適正に導通される。
【0026】
次に、図1(c)に示すように、ガラスエポキシ基板1の表面1a上に搭載された各種電子部品2a,2bをコーティング材4で封止する。具体的には、基板1の表面1a上に各種電子部品2a,2bを覆って、絶縁性を有する封止樹脂等の所定のモールディング材をコーティング材4として設ける。これにより、ガラスエポキシ基板1に表面実装された各種電子部品2a,2bがモールディング材4によってコーティングされる。
【0027】
モールディング材4としては、例えば所定の防湿材や、あるいはエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等のポッティング材を用いることが好ましい。後述するように、本実施形態においては、各種電子部品2a,2bが表面実装されたガラスエポキシ基板1を収納するケースを、熱可塑性樹脂を用いて基板1と一体にインサート成形する。このため、モールディング材4としては、絶縁性のみならず、シリコーン樹脂等の弾性及び耐熱性を有する材料を用いることが特に好ましい。
【0028】
次に、図1(d)に示すように、ガラスエポキシ基板1を内部に収容するケース5と、ケース5に収容されたガラスエポキシ基板1を覆うカバー6とを成形する。ここでは、表面実装された各種電子部品2a,2bがコーティングされたガラスエポキシ基板1を図示しない所定の金型に入れて、絶縁性を有する熱可塑性樹脂を用いたインサート成形を行う。これにより、絶縁性を有するケース5がガラスエポキシ基板1と一体に樹脂成形される。それとともに、絶縁性を有するカバー6が、ヒンジ7を介してケース5に連結されてケース5と一体に、且つ同時に樹脂成形される。ヒンジ7は、ケース5およびカバー6に比べて十分に薄肉形状に形成されている。このため、ヒンジ7は、カバー6を閉じる際に曲げられても割れたり切れたりしない程度の可撓性及び柔軟性を備えている。ヒンジ7が一体に成形されたカバー6は、ヒンジ付きカバーとも称される。
【0029】
ケース5およびヒンジ付きカバー6は、ガラスエポキシ基板1と一体に樹脂成形された状態で金型から取り出される。なお、本実施形態においては、ガラスエポキシ基板1と各圧接刃クリップ端子3のクリップ部3bとの接合部である外部接続端子接合箇所1cは、ケース5を形成している熱可塑性樹脂の内部に埋め込まれる。ケース5は、インサートブロックとも称される。これまでの工程により、本実施形態に係るカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニット8が製造される。すなわち、カバー一体型の基板内蔵型コネクタユニット8の製造工程が完了する。
【0030】
この後、図1(e)に示すように、各圧接刃クリップ端子3の圧接刃3aに複数本の電線9を1本ずつ圧接する。ただし、図1(e)においては、図面を見易くするために複数本の電線9のうちの1本のみを図示することとする。これにより、ガラスエポキシ基板1に表面実装された各種電子部品2a,2bと各電線9とが、表面配線および各圧接刃クリップ端子3を介して適正な導伝経路で電気的に接続される。すなわち、各種電子部品2a,2bがコネクタユニット8の外部の図示しない様々な電子装置や電気装置あるいは電源等に電気的に接続される。
【0031】
続けて、ヒンジ付きカバー6を閉じて、インサートブロック5に収容されたガラスエポキシ基板1及び各圧接刃クリップ端子3をインサートブロック5及びカバー6で覆う。この際、併せて圧接刃3aに圧接された各電線9をインサートブロック5とカバー6との間に挟んで押さえる。
【0032】
各電線9のうちの一部は、図1(e)に示すように、インサートブロック5のヒンジ7側の端部5aとは反対側の端部5bからインサートブロック5の内部に引き込まれる。そして、インサートブロック5の内部に引き込まれた電線9は、インサートブロック5とカバー6との隙間を通されて、インサートブロック5のヒンジ側端部5aからインサートブロック5の外部に引き出される。なお、図示は省略するが、インサートブロック5のヒンジ側端部5aとは反対側の端部5bには、電線引き込み用の孔もしくはスリットが複数個形成されている。同様に、インサートブロック5のヒンジ側端部5aには、電線引き出し用の孔もしくはスリットが複数個形成されている。インサートブロック5のヒンジ側端部5aは、引き出し側端部とも称される。これに対して、インサートブロック5のヒンジ側端部5aとは反対側の端部5bは、引き込み側端部あるいはインサート部とも称される。
【0033】
また、図示は省略するが、本実施形態においては、インサートブロック5のインサート部5bにロック構造を設ける。これにより、閉じたヒンジ付きカバー6が不用意に開いたりしないようにインサートブロック5に適宜固定する。
【0034】
図2には、本実施形態に係るカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニット8に複数本の電線9を取り付けてヒンジ付きカバー6を閉じた状態の斜視図を示す。また、図3には、図2中破断線A−A’に沿った断面図を示す。
【0035】
図2に示すように、圧接刃クリップ端子3は、前述した接合方法により、薄肉の直方体形状に形成されたガラスエポキシ基板1が有する4辺の縁部1d,1e,1f,1gのうち、ヒンジ7と対向する側の縁部1dを除く残りの3辺の縁部1e,1f,1gに合計15個取り付けられている。具体的には、ガラスエポキシ基板1のヒンジ側縁部1dとは反対側の縁部1eには、3個の圧接刃クリップ端子3が取り付けられている。以下、この3個の圧接刃クリップ端子3が取り付けられている縁部1eを、インサート側縁部と称することとする。また、ガラスエポキシ基板1のヒンジ側縁部1d及びインサート側縁部1eを除く残りの2辺の縁部1f,1gには、それぞれ6個の圧接刃クリップ端子3が取り付けられている。以下、これら6個の圧接刃クリップ端子3が取り付けられている2辺の縁部1f,1gのうち、ガラスエポキシ基板1の表面1aを正面に見て向かって右側の縁部1fを右側縁部と称することとする。そして、2辺の縁部1f,1gのうち、右側縁部1fを除く残りの1辺の縁部1gを左側縁部と称することとする。
【0036】
ガラスエポキシ基板1に取り付けられた15個の圧接刃クリップ端子3には、前述した接続方法により、それぞれ電線9が1本ずつ接続されている。図2及び図3に示すように、ガラスエポキシ基板1のインサート側縁部1eの3個の圧接刃クリップ端子3に接続された3本の電線9は、前述したように、インサートブロック5のインサート部5bからインサートブロック5の内部に引き込まれて、インサートブロック5のヒンジ側端部5aからインサートブロック5の外部に引き出される。これに対して、ガラスエポキシ基板1の左右各縁部1f,1gの12個の圧接刃クリップ端子3に接続された12本の電線9は、図2に示すように、インサートブロック5を貫通することなく、各圧接刃クリップ端子3の圧接刃3aにおいて終端されている。なお、図示は省略するが、ガラスエポキシ基板1の左右各縁部1f,1gに対向するインサートブロック5の左右各端部5c,5dにも、ヒンジ側端部5a及びインサート部5bと同様に、電線引き込み用もしくは電線引き出し用の孔やスリットが複数個形成されている。
【0037】
なお、本実施形態に係るカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニット8は、基板1の内外に配線される回路パターンや基板1に搭載される各種電子部品2などを、使用目的に応じて適宜、適正に設計変更して様々な機能をもたせることができる。このため、コネクタユニット8は、ヒンジ付きカバー6を有した機能コネクタユニットとも称することができる。特に、基板1にECU機能を持たせた場合、コネクタユニット8は、ヒンジ付きカバー6を有したECU搭載基板1を内蔵した一体成形コネクタユニットとも称することができる。このように、本実施形態に係るカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニット8によれば、電線の省線化や製品の小型化を狙った分散制御を実現することができる。
【0038】
以上説明した製造工程及び構造からなる本実施形態に係るカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニット8によれば、前述した従来の技術に係るLED照明ランプ200と異なり、基板1をケース5の内部にインサート成形している。これにより、回路設計に対する制限を大幅に緩和して、バスバーインサート構造では実現困難であった複雑な回路を形成することができる。図示は省略するが、例えば基板1の回路内に制御回路等の複雑且つ高機能な回路を組み込むこともできる。
【0039】
また、基板1をインサート成形する際に、併せてカバー6をケース5と一体に成形している。これにより、カバー6をケース5とは別体の部品として形成する必要が無くなるので、コネクタユニット8に要する部品点数及びそれらの組み付けに掛かる工程数を抑制もしくは削減することができる。ひいては、コネクタユニット8の製造に掛かる作業効率を向上させることができるとともに、材料費、加工費、工賃、人件費等を抑制もしくは削減することができる。この結果、最終的なコネクタユニット8の製造コストを抑制もしくは削減することができる。
【0040】
また、基板1をインサート成形するのに先立って、圧接刃クリップ端子3を予め基板1に接合する。これにより、基板とハウジングとの組み付け後に端子を基板に接合する従来の方法に比べて、端子3の半田付けや溶接作業が容易となる。この結果、コネクタユニット8の製造に掛かる手間や時間を抑制もしくは削減して、作業効率を向上させることができる。この結果、最終的なコネクタユニット8の製造コストを抑制もしくは削減することができる。この作用及び効果は、基板1と圧接刃クリップ端子3との接合部の形状やその周辺の構造、あるいは基板1を収納するケース5の大きさや形状などがより複雑且つ微細になるにつれて大きくなる。
【0041】
また、基板1をインサート成形するのに先立って、基板1に表面実装された各電子部品2をコーティング材4で封止する。これにより、熱可塑性樹脂を用いてインサート成形する際に基板1や各電子部品2に掛かる圧力をポッティング材4等で分散もしくは吸収させて緩和させることができる。この結果、基板1及び各電子部品2は、外部からの物理的なストレスに対する耐性が強くなっている。特に、コーティング材4にシリコーン樹脂等の弾性及び耐熱性を有する材料を用いることにより、基板1及び各電子部品2に加えられる外力や熱をより効果的に緩和することができる。これにより、基板1及び各電子部品2に掛かる物理的なストレスに対する耐性をより強くすることができる。
【0042】
また、圧接刃クリップ端子3を基板1と共にインサート成形しているので、端子を後工程で組み付ける構造と異なって組み付け精度が高い。このためガタが発生し難く、発生してもガタは極めて小さい。それとともに、基板1と端子3との接合部がケース5を形成している熱可塑性樹脂の内部に埋め込まれている。これにより、電線9を圧接する際などに圧接刃3aに掛かる物理的ストレスを樹脂で分散もしくは吸収させて緩和させることができる。これらの結果、基板1と端子3との接合部は、外部からの物理的なストレスに対する耐性が強くなっている。
【0043】
また、圧接刃クリップ端子3の圧接刃3aに圧接された電線9は、ケース5とカバー6とによって圧接刃3aから外れないように押さえられる。これにより、電線9が圧接された圧接刃3aに掛かる物理的ストレスを熱可塑性樹脂で分散もしくは吸収させて緩和させることができる。この結果、圧接刃クリップ端子3は、その圧接刃3aを含めて外部からの物理的なストレスに対する耐性が強くなっている。
【0044】
このように、コネクタユニット8は、これを構成する各部品に掛かる外部からの物理的なストレスに対する耐性が強くなっている。このため、コネクタユニット8は、製品としての品質や信頼性あるいは耐久性といった諸性能が低下するおそれが従来の技術に比べて大きく抑制もしくは防止されている。さらには、コネクタユニット8は、それらの諸性能が従来の技術に比べて大きく向上されている。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係るカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニット8及びその製造方法によれば、回路設計の自由度の向上、部品点数や工程数の低減もしくは抑制、組付け精度の向上、および外部からの物理的ストレスに対する耐性の向上を図ることができるコネクタユニット8を提供することができる。
【0046】
なお、本願発明に係るカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニット8及びその製造方法は、前述した一実施形態には制約されない。本願発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば、その構成や形状、設定、あるいは工程等々を種々様々に変更したり、あるいは組み合わせたりして実施して構わない。
【0047】
例えば、ガラスエポキシ基板1に搭載される電子部品2の数は3個には限定されない。ガラスエポキシ基板1に搭載される電子部品2の数は1個あるいは4個以上でも構わない。同様に、ガラスエポキシ基板1に接合される圧接刃クリップ端子3の数も15個には限定されない。ガラスエポキシ基板1に接合される圧接刃クリップ端子3の数は1個あるいは16個以上でも構わない。
【0048】
また、ガラスエポキシ基板1への圧接刃クリップ端子3の接合位置は、前述したヒンジ側縁部5aを除く3辺の縁部5b,5c,5dには限定されない。圧接刃クリップ端子3はガラスエポキシ基板1のヒンジ側縁部5aに接合されても構わない。また、ガラスエポキシ基板1に接合される外部接続端子3は、圧接刃クリップ端子には限定されない。外部接続端子3には、電線9を電気的に接続して保持できるものであれば、圧接刃クリップ端子以外の様々な端子を用いることができる。
【0049】
さらに、コネクタユニット8を貫通する電線9が接続されるのは、ガラスエポキシ基板1のインサート側縁部1eに接合された圧接刃クリップ端子3には限定されない。ガラスエポキシ基板1の左右各縁部1f,1gに接合された圧接刃クリップ端子3に接続された電線9にコネクタユニット8を貫通させても構わない。また、これとは反対に、ガラスエポキシ基板1のインサート側縁部1eに接合された圧接刃クリップ端子3に接続された電線9を、コネクタユニット8を貫通させずに圧接刃3aで終端させても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本願発明に係るカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニットにおいては、予め外部接続端子が電気的に接合された基板を内部に収容して基板と一体にケースが樹脂成形されている。それととともに、ケースに収容された基板及び外部接続端子を覆うカバーが、ヒンジを介してケースに連結されてケースと一体に樹脂成形されている。また、本願発明に係るカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニットの製造方法においては、前述した本願発明に係るカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニットを製造することができる。したがって、本願発明に係るカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニット及びその製造方法によれば、回路設計の自由度の向上、部品点数や工程数の低減もしくは抑制、組付け精度の向上、および外部からの物理的ストレスに対する耐性の向上を図るために利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 ガラスエポキシ基板(基板)
1b 電子部品搭載箇所
1c 外部接続端子接合箇所
1d ヒンジ側縁部
1e インサート側縁部
1f 右側縁部
1g 左側縁部
2 電子部品
2a 能動部品(電子部品)
2b 受動部品(電子部品)
3 圧接刃クリップ端子(外部接続端子)
3a 圧接刃(外部接続端子の電線接続箇所)
3b クリップ部(外部接続端子の基板接合部)
4 モールディング材(コーティング材)
5 インサートブロック(ケース)
5a 引き出し側端部(インサートブロックのヒンジ側端部)
5b 引き込み側端部(インサート部、インサートブロックのヒンジ側端部とは反対側の端部)
5c インサートブロックの右側端部
5d インサートブロックの左側端部
6 ヒンジ付きカバー(カバー)
7 ヒンジ
8 カバー一体型の基板内蔵型コネクタユニット
9 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面上に電子部品が搭載されてコーティング材で封止された基板と、
該基板に電気的に接合されるとともに電線が電気的に接続されて前記電子部品を外部に電気的に接続する外部接続端子と、
前記基板を内部に収容して前記基板と一体に成形された絶縁性のケースと、
該ケースにヒンジを介して連結されて該ケースと一体に成形され、前記ケースに収容された前記基板及び前記外部接続端子を覆うとともに前記外部接続端子に電気的に接続された前記電線を押さえるカバーと、
を具備することを特徴とするカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニット。
【請求項2】
基板の一方の主面上に電子部品を搭載し、
前記電子部品を外部に電気的に接続する外部接続端子を前記基板に電気的に接合し、
前記一方の主面上に搭載された前記電子部品をコーティング材で封止し、
前記基板を内部に収容するケースを前記基板と一体に樹脂成形し、
前記ケースに収容された前記基板及び前記外部接続端子を覆うとともに前記外部接続端子に電気的に接続される電線を押さえるカバーを、前記ケースにヒンジを介して連結して前記ケースと一体に樹脂成形する、
ことを特徴とするカバー一体型の基板内蔵型コネクタユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−33596(P2013−33596A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167964(P2011−167964)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】