説明

カバー材の製造方法

【課題】熱プレス成形型のほぼ全面が積層体表面に接触して成形される成形体であって、積層体表面に高低差の大きい凹凸を形成し、かつ、柔軟性のあるシート材の製造方法を提供しようとするものである。
【解決手段】少なくとも表皮材とポリウレタンフォームの積層体からなり、熱プレス成形により表面に凹凸が設けられており、該凹凸の最大高低差が2〜5mmで、熱プレス成形後の最小厚みが2mm以下であるカバー材の製造方法であって、前記積層体の裏面側に、少なくとも合成樹脂弾性体からなる熱プレス補助基材を重ね合わせ、熱プレス成形型のほぼ全面が積層体表面に接触するような熱プレス成形により積層体の表面に凹凸を形成した後、前記熱プレス補助基材を剥離することを特徴とするカバー材の製造方法とする。
【代表図】 図3

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の座席や椅子、ソファー等のカバー材の製造方法に関するものである。詳しくは、曲面を有する座席や椅子やソファー等のカバーとして使用するカバー材において、明瞭な凹凸意匠を有するカバー材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱プレス成形により積層体の表面に凹凸が形成された座席用シート材が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−326598
【0003】
上記特許文献1に記載されているようなシート材は、熱プレス成形型の一部が積層体表面に接触することにより、凹部が形成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに対して、熱プレス成形型の略全面が積層体表面に接触することにより、積層体表面に凹凸が形成する方法では、厚さの厚い物は成形しやすいが、厚さの薄い物は、凹凸がはっきり現れず、難しかった。
また、厚さの厚い物を熱プレス成形すると、熱プレス成形後のシート材の硬さが硬くなり、座席や椅子等の形状に追従できなかったり、風合いを損ねる等の問題があった。
【0005】
そこで、本発明では、熱プレス成形型のほぼ全面が積層体表面に接触して成形される成形体であって、積層体表面に高低差の大きい凹凸を形成し、かつ、柔軟性のあるシート材の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、少なくとも表皮材とポリウレタンフォームの積層体からなり、熱プレス成形により表面に凹凸が設けられており、該凹凸の最大高低差が2〜5mmで、熱プレス成形後のカバー材の最小厚みが、2mm以下であるカバー材の製造方法であって、
前記積層体の裏面側に、少なくとも合成樹脂弾性体からなる熱プレス補助基材を重ね合わせ、熱プレス成形型のほぼ全面が積層体表面に接触するような熱プレス成形により積層体の表面に凹凸を形成した後、前記熱プレス補助基材を剥離することを特徴とするカバー材の製造方法を採用することによって、高低差の大きい凹凸模様を呈し、且つ柔軟性のあるカバー材が得られることが分かった。
【0007】
本発明の製造方法は、熱プレス成形後の表面の凹凸の最大高低差が2〜5mmである場合に大きな効果を発揮する。
熱プレス成形後の表面の凹凸の最大高低差が2mm未満である場合には、本発明の製造方法を用いた場合と用いない場合で、凹凸の立体的な模様の鮮明さにさほど違いが見られない。また、熱プレス成形後の表面の凹凸の最大高低差が5mmを超えるものは、熱プレス成形では成形が困難である。
【0008】
また、本発明の製造方法は、熱プレス成形後の最小厚みが2mm以下である場合に大きな効果を発揮する。
熱プレス成形後の最小厚み、すなわち、カバー材表面の一番くぼんでいる部分の厚みが2mmを超えるものについては、熱プレス成形時に、熱プレス成形型と下加熱板との間にクリアランスをとって成形することができ、本発明の製造方法を利用することなく製造が可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のカバー材は、熱プレス成形補助材を使用して熱プレス成形されるため、熱プレス成形後の最小厚みが2mm以下とするために熱プレス成形型と下加熱板のクリアランスを小さくして熱プレス成形を行う場合においても、立体的な模様がくっきりと現れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で、カバー材としては、少なくとも表皮材とポリウレタンフォームを積層したものを使用する。前記積層体の裏面にさらに裏布を貼り合わせたものでも良い。
【0011】
表皮材としては、織布、不織布、編布のいずれの種類の生地も使用できる。また、積層体表面により深い凹凸を設けたい場合には、伸びやすい生地を使用するのが好ましい。特にハーフトリコット等の編布やジャージ生地が好ましく用いられる。
【0012】
積層体に用いられるポリウレタンフォームは、一般のウレタンフォームが使用できる。ポリウレタンフォームの厚さとしては、5〜15mm程度が好ましい。
【0013】
上記積層体に主に使用されるポリウレタンフォームは、エステル型ポリオールとイソシアネートからなるポリウレタンフォームでも、エーテル型ポリオールとイソシアネートからなるポリウレタンフォームでもよい。
【0014】
また、積層体の裏面側に裏布を設けても良い。裏布としては、ナイロンやポリエステルのハーフトリコットを始め、不織布等、種々のものが使用できる。
裏布を設けることにより、本発明のカバー材を座席シートやソファー等のポリウレタン成型品に被せる際に、ポリウレタン成型品表面とカバー材裏面の摩擦を低減してカバー材を被せやすくすると共に、熱プレス成形時に積層体と熱プレス成形補助材が接着されるのを抑制することができる。
【0015】
表皮材とポリウレタンフォームおよび裏布とポリウレタンフォームの積層方法は、特に限定はされない。具体的には、接着剤による接着、ホットメルト系接着剤による接着、フレームラミネート、等が挙げられる。
ただし、積層体の製造において、フレームラミネート法を用いる場合は、難燃剤を配合したポリウレタンフォームを使用することが好ましい。
【0016】
熱プレス成形補助材は、少なくとも合成樹脂弾性体からなるものである。
熱プレス成形補助材を構成する合成樹脂弾性体とは、ゴム板等の板状エラストマーやポリウレタンフォームシート等の合成樹脂発泡体のような弾性体を指す。
熱プレス成形補助材の厚さは、3〜10mm程度が好ましい。
熱プレス成形補助材としてポリウレタンフォーム使用した場合の熱プレス成形補助材の硬さは、JIS K 6400 A法による測定値において、80〜250N程度が好ましい。熱プレス成形補助材の硬さが低すぎると、熱プレス成形補助材を用いてもくっきりとした凹凸模様が現れない場合がある。逆に熱プレス成形補助材の硬さが硬すぎると、熱プレス成形作業が行いにくかったり、熱プレス成形補助材がロール状に巻けない等取扱が難しくなる。
【0017】
熱プレス成形補助材として耐熱性の低いものを使用する場合、特に熱プレス成形補助材としてポリウレタンフォームを使用する場合は、ポリウレタンフォームの少なくとも片面に繊維基材を積層することが好ましい。これは、熱プレスによって上記積層体と熱プレス成形補助材が接着されるのを防ぐためである。
【0018】
熱プレス成形補助材に積層する繊維基材としては、織布、不織布、編布等種々の物が使用できる。
【0019】
熱プレス成形型は、例えば図3のように、アルミニウム等の熱伝導性の良好な素材を使用し、表面に、上記積層体に付形するための凹凸が設けられている。
ここで、図3a)は熱プレス成形型の一部の平面図を示し、図3b)はA−A’断面図を示す。図3の熱プレス成形型は、積層体表面に連続した四角錐形の凸を形成させるためのものであり、得られるカバー材は、山部と谷部のみから構成される凹凸を有することになる。また、図3では、見やすいように、熱プレス成形型には縦2列横3列の四角錐形凹部のみを示しているが、実際の場合は、例えば四角錐形の凹部が縦横数十列並ぶこととなる。
また、本発明のように、比較的深い凹凸模様を形成させるためには、熱プレス成形型の表面は高低差が高くシャープな凹凸が設けられているため、熱プレス成形時に、下加熱板により熱プレス成形型の凹凸付形面の凹凸が潰れてしまう虞がある。
そこで、熱プレス成形型の凹凸付形面には、凹凸の凸部の高さとほぼ同じ高さのリブを設けることが好ましい。リブの幅としては、3〜10mm程度が適当である。
【0020】
上記積層体と熱プレス成形補助材は、一緒に熱プレス成形機の下熱板と上熱板の間に挿入され、熱プレス成形される。
熱プレス成形時の成形条件としては、160〜185℃で30秒〜4分間熱プレスを行うのが好ましい。
熱プレス温度が160℃未満では、付形に長時間を要し、生産効率が悪くなる。また、熱プレス温度が185℃を超えると、表皮材が変色や硬化する等変質する危険がある。
熱プレス成形時の圧力としては、0.5〜10kg/cmが好ましい。
【0021】
上記のように、積層体と熱プレス成形補助材を一緒に熱プレス成形した後、積層体と熱プレス成形補助材が冷めないうちに、両者を剥離するのが好ましい。
冷めてから剥離しようとすると、うまく剥離できない場合がある。
【0022】
図1には、ロール状に巻かれた長尺物の積層体と同じくロール状に巻かれた長尺物の熱プレス成形補助材を使用する場合を記載している。特に熱プレス成形補助材としてポリウレタンフォームを使用する場合には、熱プレス成形により、積層体と熱プレス成形補助材が粘着した状態になりやすいため、積層体と熱プレス成形補助材を同じスピードで送り出し、熱プレス成形後に熱プレス成形補助材を剥離するのが好ましい。
しかし、熱プレス成形補助材の使用方法は上記方法に限定されず、積層体と熱プレス成形補助材が粘着しないのであれば、積層体と熱プレス成形補助材の送り出すスピードを変えても良い。また、長尺物の熱プレス成形補助材ではなく、矩形状の熱プレス成形補助材を使用して、熱プレス成形補助材は下加熱板上に固定しておき、積層体のみを移動させて熱プレス成形しても良い。
【0023】
(実施例1)
表皮材として編布(厚さ0.7mm)を使用し、これに難燃剤を添加したポリウレタンフォーム(厚さ5mm)をフレームラミネート法にて積層し、積層体を得た。
また、厚さ3mmの発泡ゴムを熱プレス成形補助材として、図1のように、熱プレス成形した後、熱プレス成形補助材を剥離し、熱プレス成形後の積層体を冷却して巻き取った。
この際の熱プレス成形条件は、上熱板2が175℃であり、プレス時間は2分間、熱プレス成形型と下加熱板のクリアランスは0mmで行った。
【0024】
得られた熱プレス成形品は、熱プレス成形品の最大厚が3mm、最小厚が0.4mmであり、厚さが薄く且つシボの深さの深いものであった。
【0025】
(実施例2)
表皮材として編布21(厚さ0.7mm)を使用し、これに難燃剤を添加したポリウレタンフォーム22(厚さ10mm)をフレームラミネート法にて積層し、ポリウレタンフォームの他方の面にナイロンハーフトリコットの裏布23(厚さ0.1mm)をフレームラミネート法にて積層し、積層体を得た。
また、ポリウレタンフォーム25(厚さ5mm)の表面にナイロンハーフトリコット24(厚さ0.1mm)をフレームラミネート法にて積層し、熱プレス成形補助材を得た。
【0026】
得られた積層体と熱プレス成形補助材は、図2のように積層されて熱プレス成形機1に運ばれ、熱プレス成形型4によって、表面に凹凸を付与した。
この際の熱プレス成形条件は、上熱板2が175℃であり、プレス時間は2分間、熱プレス成形型と下加熱板のクリアランスは0mmで行った。
【0027】
(比較例1)
熱プレス成形補助材を用いずに、実施例2の積層体を同じ条件で熱プレス成形した。
その結果、積層体表面には、不鮮明な凹凸模様が形成された。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のカバー材の製造工程の一例を示す図である。
【図2】本発明において、積層体と熱プレス成形補助材の組み合わせの一例を示す図である。
【図3】本発明のカバー材の製造方法において使用される熱プレス成形型の一例の一部を示す図である。a)は平面図、b)はA−A’断面図
【符号の説明】
【0029】
1 熱プレス成形機
2 上加熱板
3 下加熱板
4 熱プレス成形型
5 熱プレス成形前の積層体をロール状に巻いたもの
6 熱プレス成形前の熱プレス成形補助材をロール状に巻いたもの
7 熱プレス成形後の積層体(カバー材)をロール状に巻いたもの
8 熱プレス成形に使用した後の熱プレス成形補助材をロール状に巻いたもの
21 表皮材
22 ポリウレタンフォーム
23 裏布
24 繊維基材
25 合成樹脂弾性体
A 積層体
B 熱プレス成形補助材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表皮材とポリウレタンフォームの積層体からなり、熱プレス成形により表面に凹凸が設けられており、該凹凸の最大高低差が2〜5mmで、熱プレス成形後の最小厚みが2mm以下であるカバー材の製造方法であって、
前記積層体の裏面側に、少なくとも合成樹脂弾性体からなる熱プレス補助基材を重ね合わせ、熱プレス成形型のほぼ全面が積層体表面に接触するような熱プレス成形により積層体の表面に凹凸を形成した後、前記熱プレス補助基材を剥離することを特徴とするカバー材の製造方法。
【請求項2】
熱プレス成形により設けられる凹凸が、山部と谷部のみから構成されることを特徴とする請求項1記載のカバー材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−21416(P2006−21416A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201234(P2004−201234)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】