説明

カメラ付ドアホン子機

【課題】 カメラをチルト操作する構造を簡素化し、且つ施工後もチルト操作が容易なカメラ付ドアホン子機を提供する。
【解決手段】 レンズフランジは左右に延びたチルト軸を備え、チルト軸にカメラをチルト操作するためのチルト調整ツマミと、チルト角度を段階的に保持するチルト保持突起とを設ける一方、ケース上1aにチルト軸の両端を支持する第1軸受け14、第2軸受け15と、チルト保持突起が係合する複数の係合溝16と、チルト調整ツマミを前方に露出させるチルト操作窓12とを設けた。また、ケース下にケース上1aの第1軸受14け及び第2軸受け15に対向する第1支持片及び第2支持片を設け、第1支持片及び第2支持片との間にチルト軸の後方への撓みを規制する規制片を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカメラ付ドアホン子機に関し、特にカメラにチルト機能を設けたカメラ付ドアホン子機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のチルト操作を可能としたメラ付ドアホン子機は、ドアホン子機の背面にチルト調整ツマミを設けて、カメラの撮像方向を上下に変更すことが可能であった(例えば、特許文献1参照)。このカメラのチルト角を変更可能とすることで、カメラ付ドアホン子機の取付位置や設置環境に合わせて撮像角度を調整でき、来訪者を的確に撮像することを可能とした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−16307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カメラ付ドアホン子機はケース前面付近にカメラが配置されているため、ケース背面から操作する従来の機構は複雑化していた。例えば、カメラをチルトさせるためのツマミはカメラを組み込んだカメラユニットとは別部品で構成され、カメラユニットとの連結構造が必要であった。
また、壁面に取り付けた状態のカメラ付ドアホン子機は、チルト操作ツマミが隠れてしまうため、チルト角度を変更したい場合はカメラ付ドアホン子機を壁面から外す作業が必要であり、操作が面倒であった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、カメラをチルト操作する構造を簡素化し、且つ施工後もチルト操作が容易なカメラ付ドアホン子機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、来訪者が居住者を呼び出すための呼出ボタンと、来訪者が居住者と通話するためのマイク及びスピーカと、来訪者を撮像するためのカメラとを有するカメラ付ドアホン子機であって、カメラ付ドアホン子機のケースは前面側を構成するケース上と、背面側を構成するケース下とからなり、カメラを備えたカメラユニットは、チルト動作を可能とするために左右に延びたチルト軸を備え、チルト軸にカメラをチルト操作するためのチルト調整ツマミと、チルト角度を段階的に保持するチルト保持突起とを設ける一方、ケース上は、チルト軸の両端を軸支する第1軸受け及び第2軸受けと、チルト保持突起が係合する複数の係合溝と、チルト調整ツマミを前方に露出させるチルト操作窓とを備え、ケース下は、ケース上の第1軸受け及び第2軸受けに対向する部位に、軸支したチルト軸を支持する第1支持片及び第2支持片を設け、更に第1支持片及び第2支持片との間にチルト軸の後方への撓み量を規制する規制片を設け、チルト調整ツマミが操作されると、チルト保持突起が複数の係合溝間を移動して係合することを特徴とする。
この構成によれば、チルト操作ツマミはカメラユニットと一体に形成されるので、チルト操作構造を簡素化できる。そして、ケース前面側からチルト調整するため、壁面からケースを外して調整する必要がないし、実際に撮像される映像を見ながらチルト調整ができ、利便性が良い。
また、規制片によりチルト軸の撓みすぎが規制されるので、撓みによりカメラユニットチルトや軸受けが破損するのを防止できる一方、操作時に撓むことでチルト保持突起が係合溝間を無理なく移動でき、チルト操作をスムーズに実施することが可能となる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、規制片のチルト軸当接部は、チルト軸の径に対して所定量大きな径で形成された凹部から成ることを特徴とする。
この構成によれば、チルト軸は撓んでもスムーズに回動するため、チルト操作をスムーズに実施できる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の構成において、チルト保持突起は、チルト調整ツマミ近傍に配置されて成ることを特徴とする。
この構成によれば、チルト保持突起はチルト調整ツマミ付近に配置されるので、チルト操作を受けてチルト軸の捻れ作用を受けることなくチルト保持突起が移動でき、スムーズに操作できる。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の構成において、ケース上の前面に覆設される化粧パネルを有し、化粧パネルの装着によりチルト操作窓は隠蔽されることを特徴とする。
この構成によれば、通常使用時は化粧パネルによりチルト操作窓は隠蔽されるので、チルト調整ツマミを表側に設けても表面には現れない。よって、来訪者等が操作する心配がないし、美観上も悪化することがない。更に、化粧パネルで覆うことでチルト操作窓から雨水の浸入を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、チルト操作ツマミはカメラユニットと一体に形成されるので、チルト操作構造を簡素化できる。そして、ケース前面側からチルト調整するため、壁面からケースを外して調整する必要がないし、実際に撮像される映像を見ながらチルト調整ができ、利便性が良い。
また、規制片によりチルト軸の撓みすぎが規制されるので、撓みによりカメラユニットチルトや軸受けが破損するのを防止できる一方、操作時に撓むことでチルト保持突起が係合溝間を無理なく移動でき、チルト操作をスムーズに実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るカメラ付ドアホン子機の一例を示す正面図である。
【図2】図1のカメラ付ドアホン子機ケースの斜視図であり、ケース上とケース下とを分離した状態を示している。
【図3】ケース上の背面構造を示す斜視図である。
【図4】カメラユニットの一部であるレンズフランジを示し、(a)は表側斜視図、(b)は裏側斜視図である。
【図5】レンズフランジをケース上に組み付ける様子を示す背面側斜視図である。
【図6】レンズフランジを組み付けたケース上の斜視図であり、(a)は表側斜視図、(b)は背面側視斜視図を示している。
【図7】ケース上に組み付けたレンズフランジとケース下の関係を示し、(a)はケース下の斜視図、(b)は一部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係るカメラ付ドアホン子機の正面図、図2はカメラ付ドアホン子機ケースの分解斜視図を示し、1はケース、2は化粧パネル、3はカメラ部、4はカメラカバー、5はマイク部、6はスピーカ部、7は呼出ボタンである。
【0013】
ケース1は、前面側を構成するケース上1aと背面側を構成するケース下1bとから成り、前面側と背面側とが分離形成されている。ケース上1aにおいて、11は図示しないカメラが組み込まれるカメラユニットを露出させるカメラユニット収容窓、12はカメラの上下方向の撮像角度の調整(チルト調整)を行うためのチルト操作窓、13は呼出ボタン7を配置する呼出ボタン窓である。
また、図3のケース上1aの背面図に示すように、ケース上1a背面にはカメラユニットを回動可能に支持するための第1軸受け14、第2軸受け15、チルト角度を保持するための複数の溝を有する係合溝16が形成されている。第1軸受け14はチルト操作窓12の周囲に形成された半円筒形状の曲面で構成され、第2軸受け15はU字状の凹部を有する舌状の突起片である。
【0014】
図4は、カメラやレンズを備えたカメラユニットの一部を成すレンズフランジ20を示している。レンズフランジ20はこの図4に示すように、略四角形に形成されてカメラやレンズ等を収容するカメラ収容部21を有し、その左右に回動軸であるチルト軸22が突設されている。
チルト軸22には、チルト調整ツマミ23、設定したチルト角を保持するためのチルト保持突起24が形成されている。何れもケース上1a側となる前方に向けて突設され、チルト調整ツマミ23はチルト軸22の左端に形成されている。チルト保持突起24は、チルト調整ツマミ23とカメラ収容部21の間にチルト調整ツマミ23に隣接するよう形成されている。
【0015】
そして、チルト調整ツマミ23の周囲曲面が、ケース上1aに形成された第1軸受け14に係合する前側第1支持部26であり、他のチルト軸22に対比して大きな径の円筒形状となっている。一方、チルト軸22の他端となる右端は、ケース上1aの第2軸受け15に係合する前側第2支持部27である。
【0016】
また、チルト軸22の前側第1支持部26の裏側は、ケース下1bに支持される後側第1支持部28が前側第1支持部26と異なり細径で形成されている。一方、前側第2支持部27の裏側はケース下1bに支持される後側第2支持部29であり、前側第2支持部27と同一径で形成されている。
そして、チルト調整ツマミ23とチルト保持突起24の間のチルト軸22は、ケース下1bに支持される後側第3支持部30となっている。この後側第3支持部30は、後側第2支持部29と同一径で形成されている。
【0017】
一方、ケース下1bには、図2に示すようにケース上1aに形成された第1軸受け14に対向するようチルト軸22を支持するための第1支持片32が配置され、第2軸受け15に対向するようチルト軸22を支持するための第2支持片33が配置されている。そして、チルト軸22の第3支持部30を支持する第3支持片34を備えている。
第1支持片32及び第2支持片33は、支持するチルト軸22と同一径で形成された凹形状の支持部を備えているが、第3支持片34は支持するチルト軸22より所定量大きな径で形成された凹形状の支持部を有し、通常状態で隙間を有するよう形成されている。
【0018】
以下、上記構成のカメラ付ドアホン子機のチルト機構の作用を具体的に説明する。図5はレンズフランジ20をケース上1aに組み付ける途中を示し、図6は組み付け後の状態を示している。図5に示すように、レンズフランジ20はレンズカバー36が装着されてケース上1aに組み付けられる。尚、レンズカバー36は透明合成樹脂材で形成されたレンズフランジ20の必要部位のみ露出させるための部材であり、レンズフランジ20と一体化してもよい。
【0019】
この結果、カメラ収容部21の前面がカメラユニット収容窓11から露出し、来訪者の撮像が可能となる。また、チルト調整ツマミ23もケース上1aのチルト操作窓12から前面側に露出し、ケース前面側からチルト調整が可能となる。
そして、チルト軸22の両端は第1軸受け14及び第2軸受け15に係合し、チルト保持突起24はケース上1aの複数形成された係合溝16の一つと嵌合する。
【0020】
図7はレンズフランジ20をケース上1aに組み付けた後、ケース下1bをケース上1aに嵌合した際のレンズフランジ20とケース下1bの関係を示している。レンズフランジ20を組み付けたケース上1aにケース下1bを嵌合すると、上述した図4に示すチルト軸22の後側第1支持部28、後側第2支持部29が、図7に示すようにそれぞれ第1支持片32、第2支持片33により支持される。その結果、チルト軸22は第1軸受け14と第2軸受け15に回動可能に軸支される。
但し、この時チルト軸22の後側第3支持部30は、図7(b)の拡大図に示すようにケース下の第3支持片34から隙間H(例えば、H=1.0mm)を開けて通常状態では接しないように配置された状態となる。
【0021】
このようにカメラユニットを構成するレンズフランジ20が組み付けられた状態で化粧パネル2をケース上1aに装着すると、正面から見た状態は概略図1に示すようになり、チルト調整ツマミ23は隠蔽される。但し、図1は呼出ボタン7等を組み付けたカメラ付ドアホン子機として使用可能な状態を示している。
【0022】
施工後はこの状態で使用され、施工後にチルト角を変更する場合は化粧パネル2を外すことで実施される。使用時は、カメラ付ドアホン子機が壁面に取り付けられた状態であるため、チルト調整ツマミ23が操作される場合、壁面方向に押しながら操作される。そのため、チルト軸22の中心部分が後方に撓み、チルト調整ツマミ23付近に配置されているチルト保持突起24は、適度に後方に移動して係合溝16との係合が緩み、チルト保持突起24が複数の係合溝16間をスムーズに移動する。
【0023】
このとき、チルト調整ツマミ23の押し込み量が大きくなると、チルト軸22の撓みが大きくなり、チルト軸22と第3支持片34の間に設けた隙間Hが無くなり接触する。そのため、チルト軸22は所定量以上に撓むことがない。また、第3支持片34はチルト軸22より所定量大きな径で形成された凹部でチルト軸22を支持することで、チルト軸22は撓んでもスムーズに回動でき、チルト操作をスムーズに実施できる。
【0024】
このように、チルト操作ツマミ23はカメラユニットを構成するレンズフレーム20と一体に形成されるので、チルト操作構造を簡素化できる。そして、ケース前面側からチルト調整するため、壁面からケースを外して調整する必要がないし、実際に撮像される映像を見ながらチルト調整ができ、利便性が良い。
また、規制片としての第3支持片34によりチルト軸22の撓みすぎが規制されるので、過度の撓みが規制され、チルト軸22やレンズフランジ20が破損するのを防止できる一方、操作時に撓むことでチルト保持突起24が係合溝16間を無理なく移動でき、チルト操作をスムーズに実施できる。
更に、チルト保持突起24はチルト調整ツマミ23とカメラ収容部21との間、即ちチルト調整ツマミ23付近に配置されるので、チルト操作を受けてチルト軸22の捻れ作用を受けることなくチルト保持突起24を移動させることができ、スムーズに操作できる。
また、通常使用時は化粧パネル2によりチルト操作窓12は隠蔽されるので、チルト調整ツマミ23を表側に設けても表面には現れない。よって、来訪者等が操作する心配がないし、美観上も悪化することがない。更に、化粧パネル2で覆うことでチルト操作窓12から雨水の浸入を防ぐことができる。
【0025】
尚、上記実施形態では、チルト軸22の後方への撓みを規制する規制片としての第3支持片は、チルト軸22より僅かに大きな径の凹部を設けてチルト軸22を把持するよう構成されているが、当接部は平坦であっても良い。
また、チルト軸22の前側第1支持部26を大きな径で形成しているが、前側第1支持部は、チルト操作窓12の気密性を上げるため大きな径としているもので、前側第1支持部26と後側第1支持部28は同一径としても良い。
【符号の説明】
【0026】
1・・ケース、1a・・ケース上、1b・・ケース下、2・・化粧パネル、3・・カメラ、5・・マイク部、6・・スピーカ部、7・・呼出ボタン、12・・チルト操作窓、14・・第1軸受け、15・・第2軸受け、16・・係合溝、20・・レンズフランジ(カメラユニット)、22・・チルト軸、23・・チルト調整ツマミ、24・・チルト保持突起、32・・第1支持片、33・・第2支持片、34・・第3支持片(規制片)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
来訪者が居住者を呼び出すための呼出ボタンと、来訪者が居住者と通話するためのマイク及びスピーカと、来訪者を撮像するためのカメラとを有するカメラ付ドアホン子機であって、
カメラ付ドアホン子機のケースは前面側を構成するケース上と、背面側を構成するケース下とからなり、
前記カメラを備えたカメラユニットは、チルト動作を可能とするために左右に延びたチルト軸を備え、前記チルト軸に前記カメラをチルト操作するためのチルト調整ツマミと、チルト角度を段階的に保持するチルト保持突起とを設ける一方、
前記ケース上は、前記チルト軸の両端を軸支する第1軸受け及び第2軸受けと、前記チルト保持突起が係合する複数の係合溝と、前記チルト調整ツマミを前方に露出させるチルト操作窓とを備え、
前記ケース下は、前記ケース上の第1軸受け及び第2軸受けに対向する部位に、軸支したチルト軸を支持する第1支持片及び第2支持片を設け、更に前記第1支持片及び第2支持片との間に前記チルト軸の後方への撓み量を規制する規制片を設け、
前記チルト調整ツマミが操作されると、前記チルト保持突起が前記複数の係合溝間を移動して係合することを特徴とするカメラ付ドアホン子機。
【請求項2】
前記規制片の前記チルト軸当接部は、前記チルト軸の径に対して所定量大きな径で形成された凹部から成ることを特徴とする請求項1記載のカメラ付ドアホン子機。
【請求項3】
前記チルト保持突起は、前記チルト調整ツマミ近傍に配置されて成ることを特徴とする請求項1又は2記載のカメラ付ドアホン子機。
【請求項4】
前記ケース上の前面に覆設される化粧パネルを有し、化粧パネルの装着により前記チルト操作窓は隠蔽されることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のカメラ付ドアホン子機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−9239(P2013−9239A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141693(P2011−141693)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】